特許第5874946号(P5874946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社光波の特許一覧 ▶ 独立行政法人物質・材料研究機構の特許一覧

特許5874946スイッチング制御装置及びショットキーダイオード
<>
  • 特許5874946-スイッチング制御装置及びショットキーダイオード 図000002
  • 特許5874946-スイッチング制御装置及びショットキーダイオード 図000003
  • 特許5874946-スイッチング制御装置及びショットキーダイオード 図000004
  • 特許5874946-スイッチング制御装置及びショットキーダイオード 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874946
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】スイッチング制御装置及びショットキーダイオード
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20160218BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20160218BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20160218BHJP
   H02M 7/5387 20070101ALI20160218BHJP
【FI】
   H02M7/12 L
   H01L29/48 D
   H01L29/48 M
   H02M7/5387 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-80503(P2009-80503)
(22)【出願日】2009年3月27日
(65)【公開番号】特開2010-233406(P2010-233406A)
(43)【公開日】2010年10月14日
【審査請求日】2012年3月7日
【審判番号】不服2014-14284(P2014-14284/J1)
【審判請求日】2014年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153236
【氏名又は名称】株式会社光波
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】青木 和夫
(72)【発明者】
【氏名】氏家 建和
(72)【発明者】
【氏名】島村 清史
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ビジョラ エンカルナシオン アントニア
(72)【発明者】
【氏名】倉又 朗人
【合議体】
【審判長】 飯田 清司
【審判官】 小野田 誠
【審判官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−282881(JP,A)
【文献】 特開2008−92663(JP,A)
【文献】 特開2010−192770(JP,A)
【文献】 特開2009−130013(JP,A)
【文献】 特開2010−10357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/478
H01L29/872
H02M7/12
H02M7/5387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショットキーダイオードとトランジスタとを含んで構成されるスイッチング回路であって、
前記ショットキーダイオードは、
n型導電性のβ−Ga系単結晶からなる半導体基板と、
前記n型導電性のβ−Ga系単結晶からなる前記半導体基板の第1の面上に直接形成されたショットキー電極と、
前記半導体基板の前記第1の面に対して反対側の第2の面上に形成されたオーミック電極と、
を備えるスイッチング回路。
【請求項2】
前記ショットキー電極は、Au、Pd、Pt、Ni、Mo、W、Ta、Nb、Cr、Ag、In、及びAlの群から選択された1つを含み、
前記オーミック電極は、前記第2の面上に形成された第1の膜と、この第1の膜上に形成された第2の膜を有し、
前記第1の膜は、Tiを含む請求項1に記載のスイッチング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング制御装置及びショットキーダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、ショットキーダイオードを含むスイッチング素子を有するDC/DCコンバータ及びトラクションインバータと、スイッチング素子の温度を測定する素子温度測定部と、車両の速度を測定する車速測定部と、車両の速度、及びスイッチング素子の温度に基づいてスイッチング周波数を変更する制御部と、を備えた電動車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この電動車両の制御装置によれば、車両の速度、及びスイッチング素子の温度が基準値以上の場合には、スイッチング周波数を通常よりも低周波側へと切り替えるので、スイッチング素子の過熱を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−312279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電動車両の制御装置は、車両に配置されることから高温になりやすく、スイッチング周波数を低周波側に切り替えることが多くなり、車両の性能が低下する可能性がある。また、従来の電動車両の制御装置は、車両の性能向上のため、大型のモータを搭載するには、スイッチング素子が高耐圧であることが求められている。
【0006】
本発明の目的は、高温動作が可能で、かつ、高耐圧を達成するスイッチング制御装置及びショットキーダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、ショットキーダイオードとトランジスタとを含んで構成されるスイッチング回路であって、前記ショットキーダイオードは、n型導電性のβ−Ga系単結晶からなる半導体基板と、前記n型導電性のβ−Ga系単結晶からなる前記半導体基板の第1の面上に直接形成されたショットキー電極と、前記半導体基板の前記第1の面に対して反対側の第2の面上に形成されたオーミック電極と、を備えるスイッチング回路提供する。
【0008】
本発明の他の形態は、前記ショットキー電極は、Au、Pd、Pt、Ni、Mo、W、Ta、Nb、Cr、Ag、In、及びAlの群から選択された1つを含み、前記オーミック電極は、前記第2の面上に形成された第1の膜と、この第1の膜上に形成された第2の膜を有し、前記第1の膜は、Tiを含む請求項1に記載のスイッチング回路を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温動作が可能で、かつ、高耐圧を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るモータ制御装置のブロック図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの要部断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの順方向特性を示すグラフである。
図4図4は、本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの逆方向特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
(モータ制御装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ制御装置のブロック図である。このモータ制御装置1は、スイッチング制御装置の応用の一例である。このモータ制御装置1は、例えば、電気自動車又はハイブリッドカーといった車両に搭載された高出力な電動モータ2を制御するものである。
【0012】
モータ制御装置1は、図1に示すように、主に、交流電力を供給する交流電源としての三相交流電源3と、三相交流電源3から出力される交流電力を直流電力に変換するコンバータ部4と、コンバータ部4によって変換された直流電力を整流する整流部5と、整流部5によって整流された直流電力を任意の周波数及び電圧に変換して電動モータ2に供給するインバータ部6と、を備えて概略構成されている。
【0013】
電動モータ2は、例えば、電圧がAC200〜6600V、出力容量が数百〜数MVA、スイッチング周波数が数百Hz〜20KHzのACモータである。
【0014】
コンバータ部4は、例えば、トランジスタ7とショットキーダイオード8からなる複数のスイッチング回路部10から構成される。
【0015】
整流部5は、例えば、平滑コンデンサ50から構成される。
【0016】
インバータ部6は、例えば、トランジスタ7とショットキーダイオード8からなる複数のスイッチング回路部10から構成される。
【0017】
トランジスタ7は、ゲート制御機能を有するトランジスタであり、例えば、絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ(IGBT:Inerted Gate Bipolar Transistor)である。なお、トランジスタ7は、IGBTに限定されず、GTO(Gate Turn Off Thyristor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のトランジスタであっても良い。また、トランジスタ7は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行う図示しないマイコンによってゲートが制御され、高速にスイッチング動作を行うことができる。
【0018】
(ショットキーダイオードの構成)
図2は、本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの要部断面図である。このショットキーダイオード8は、一例として、寸法が10×10mmであり、図2に示すように、n型Ga基板80と、オーミック電極81と、ショットキー電極82と、を備えて概略構成されている。
【0019】
n型Ga基板80は、例えば、Ga系の半導体基板から構成され、その厚さは、一例として、100μmである。
【0020】
このGa系の半導体基板が、n型導電性を示すためには、半導体基板中のGaがn型ドーパントと置換されるか、半導体基板中の酸素がn型ドーパントと置換されるか、またはβ−Ga23単結晶中の酸素欠陥によらなければならない。Gaがn型ドーパントと置換されるガリウム置換型n型ドーパントとして、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Ru、Rh、Ir、C、Sn、Si、Ge、Pb、Mn、As、Sb及びBi等が挙げられる。酸素がn型ドーパントと置換される酸素置換型n型ドーパントとして、F、Cl、Br、I等が挙げられる。
【0021】
また、n型Ga基板80は、室温におけるバンドギャップがおよそ4.8eVであり、Siのバンドギャップ(およそ1.1eV)、SiC(4H)のバンドギャップ(およそ3.0eV)、及びGaNのバンドギャップ(およそ3.4eV)に比べて大きいバンドギャップを有することが知られている。
【0022】
バンドギャップは、ショットキーダイオードの動作温度に関係し、バンドギャップが大きいほど、動作温度は高くなる。また、バンドギャップは、ショットキーダイオードの絶縁破壊電解強度に関係し、バンドギャップが大きいほど、絶縁破壊強度が大きくなる。よって、本実施の形態におけるショットキーダイオード8は、SiC(4H)及びGaNから作られるショットキーダイオードに比べて高温動作が可能で、かつ、高耐圧であるので、このショットキーダイオード8を含むスイッチング回路部10は、高温動作が可能で、かつ、高耐圧である。
【0023】
オーミック電極81は、n型Ga基板80の下面に形成された第1の膜83と、第1の膜83上に形成された第2の膜84と、を有して概略構成される。
【0024】
この第1の膜83は、例えば、スパッタ法等によって形成されたTi膜である。
【0025】
また、第2の膜84は、第1の膜83の酸化を防止する導電性を有する材料からなり、例えば、スパッタ法等によって形成されたAl膜である。なお、第2の膜84は、Alに限定されず、Pd、Pt、Ni、Au、Mo、W、Ta及びNbの群から選択された少なくとも1つの金属を含んで形成されても良い。
【0026】
なお、オーミック電極81は、上記の例に限定されず、例えば、第1の膜83と第2の膜84の間にPt等の高融点材料からなる膜を形成しても良く、また、複数の膜から形成されても良い。
【0027】
ショットキー電極82は、n型Ga基板80の上面に形成される。また、ショットキー電極82は、例えば、スパッタ法によって形成されたAu膜である。なお、ショットキー電極82は、n型Ga基板80との間でショットキー接触する限りAuに限定されず、Pd、Pt、Ni、Mo、W、Ta、Nb、Cr、Ag、In及びAlの群から選択された少なくとも1つを含んで形成されても良い。
【0028】
(ショットキーダイオードの製造方法)
以下に、本実施の形態のショットキーダイオード8の製造方法の一例について説明する。まず、β−Ga単結晶からなるGa基板をFZ(フローティングゾーン)法により作製する。最初に、β−Ga種結晶とβ−Ga多結晶素材を準備する。
【0029】
β−Ga2種結晶は、β−Ga単結晶から劈開面の利用等により切り出した断面正方形の角柱状を有し、その軸方向は、a軸<100>方位、b軸<010>方位、あるいはc軸<001>方位にある。
【0030】
β−Ga2多結晶素材は、例えば、純度4NのGaの粉末をゴム管に充填し、それを500MPaで冷間圧縮し、1500℃で10時間焼結することにより得られる。
【0031】
次に、石英管中において、全圧が1〜2気圧の窒素と酸素の混合気体(100%窒素から100%酸素の間で変化)の雰囲気の下、β−Ga種結晶とβ−Ga多結晶との先端を互いに接触させ、その接触部分を加熱溶融する。次に、β−Ga多結晶の溶解物を冷却し、β−Ga単結晶を生成する。β−Ga単結晶は、b軸<010>方位に結晶成長させた場合は、(100)面の劈開性が強くなるので、(100)面に平行な面と垂直な面で切断してβ−Ga基板を作製する。なお、a軸<100>方位あるいはc軸<001>方位に結晶成長させた場合は、(100)面および(001)面の劈開性が弱くなるので、全ての面の加工性が良くなり、上記のような切断面の制限はない。
【0032】
次に、60℃の硝酸水溶液中で数分間ボイリングすることによりGa基板をエッチングし、このGa基板をエタノールに浸して10分間超音波洗浄し、さらに超純水に浸して10分間超音波洗浄した後、乾燥し、Ga基板の表面を清浄化させ、Ga基板を得る。
【0033】
なお、エッチング後に超純水に浸して超音波洗浄してもよい。また、エタノールの代りにアセトンを用いてもよい。また、エタノール、アセトン等に浸して行う超音波洗浄を省略してもよい。また、超音波洗浄する場合、Ga基板を超純水、エタノール、アセトンに漬ける場合について説明したが、超純水等を吹き付けてもよく、流れる超純水等に晒してもよい。また、必ずしも洗浄を行わなくても良い。
【0034】
上記の製造方法によりGa基板がn型導電性を示すことになるのは、β−Ga23単結晶中の酸素欠陥によるため、あるいは、n型のドーパントによるためである。
【0035】
次に、スパッタ法によってn型Ga基板80上に第1の膜83及び第2の膜84を形成する。
【0036】
具体的には、スパッタ装置によってDCPowerが150W、ガス種がAr、圧力が2.0×10−1Paの条件で、n型Ga基板80上に第1の膜83としてのTi膜を膜厚200nmで形成する。続いて、スパッタ装置によってDCPowerが150W、ガス種がAr、圧力が2.0×10−1Paの条件で、第1の膜83上に第2の膜84としてのAl膜を膜厚200nmで形成する。
【0037】
次に、n型Ga基板80を裏返し、スパッタ法によってn型Ga基板80上にショットキー電極82を形成してショットキーダイオード8を得る。
【0038】
具体的には、スパッタ装置によってショットキー電極82としてのAu膜を膜厚200nmで形成する。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの順方向特性を示すグラフであり、図4は、本発明の実施の形態に係るショットキーダイオードの逆方向特性を示すグラフである。図3及び図4は、縦軸が電流(A)、横軸が電圧(V)である。
【0040】
上記した製造方法によって製造したショットキーダイオードに対してカーブトレーサーによる電流及び電圧測定を行い、図3及び図4に示す順方向特性及び逆方向特性の結果を得た。つまり、このショットキーダイオードは、図3及び図4に示すような整流特性を示した。なお、図3を参照すると、約3.5V程度の順電圧で電流が流れ始めることがわかる。また、図4を参照すると、約46V程度の逆電圧で電流が流れ始めることがわかる。
【0041】
(モータ制御装置の動作)
以下に、本実施の形態に係るモータ制御装置の動作について説明する。
【0042】
まず、三相交流電源3は、コンバータ部4に交流電力を供給する。続いて、コンバータ部4は、交流電力を直流電力に変換し、整流部5は、変換された直流電力を平滑コンデンサ50によって整流する。続いて、インバータ部6は、図示しないマイコンによるPWM制御に基づいてトランジスタ7を介してスイッチング動作を行い、直流電力を任意の周波数及び電圧に変換して電動モータ2に供給する。電動モータ2は、回転力を車両の駆動部に伝達する。
【0043】
(実施の形態の効果)
本実施の形態におけるモータ制御装置によれば、以下の効果が得られる。
(1)コンバータ部4及びインバータ部6のスイッチング回路部10に含まれるショットキーダイオード8は、Si、SiC(4H)及びGaNに比べて大きいバンドギャップを有するn型Ga基板80から形成されるので、高温動作が可能で、また、高耐圧である。よってこのコンバータ部4及びインバータ部6を含んで構成されるモータ制御装置1は、高温となる環境下にあっても、安定して動作することが可能であり、車両の性能を向上させることができる。
(2)また、ショットキーダイオード8は、高耐圧であることから、小型化することができるので、モータ制御装置1を小型化することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形および組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…モータ制御装置、2…電動モータ、3…三相交流電源、4…コンバータ部、5…整流部、6…インバータ部、7…トランジスタ、8…ショットキーダイオード、10…スイッチング回路部、50…平滑コンデンサ、80…n型Ga基板、81…オーミック電極、82…ショットキー電極、83…第1の膜、84…第2の膜
図1
図2
図3
図4