(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874962
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20160218BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
F16K31/06 305K
F16K51/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-235736(P2011-235736)
(22)【出願日】2011年10月27日
(65)【公開番号】特開2013-92229(P2013-92229A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】林 裕矢
(72)【発明者】
【氏名】宮西 俊二
(72)【発明者】
【氏名】吉井 一博
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−028339(JP,A)
【文献】
特開2009−156312(JP,A)
【文献】
特開2000−046221(JP,A)
【文献】
特開平09−096394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11;51/00
F16L 55/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定鉄芯と、
前記固定鉄芯の回りに設けられたソレノイドコイルと、
前記固定鉄芯と前記ソレノイドコイルの吸引力により変位する可動鉄芯と、
前記可動鉄芯により流体の流れを制御するようにされたシートホルダと、
前記シートホルダの内径に嵌挿されたシート弁座部材と、
前記シートホルダの内径に嵌挿されて前記シート弁座部材に係合するシートリングと、
を備えたソレノイドバルブの製造方法において、
前記シートホルダの内径に前記シート弁座部材を固定するに際し、前記シートホルダの先端側には凹状穴を有し、前記凹状穴に前記シート弁座部材及び前記シートリングを嵌挿した後、ストレーナおよびリングを嵌挿し、
前記シートホルダの先端側を加締めて、
前記シートホルダの凹状穴に前記シート弁座部材、前記シートリング、前記ストレーナおよび前記リングを固着することを特徴とするソレノイドバルブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATまたはCVT等の自動車の自動変速機に用いられるソレノイドバルブに関し、さらに詳細には弁部の入力ポートにストレーナを装着してなるソレノイドバルブ
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のソレノイドバルブは油圧部に異物の侵入を防止するストレーナ20(特許文献1に記載する番号を示す、以下同じ)をシートホルダ2の円筒状の先端34に設けられている入力ポートに加締めあるいは装着されている(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、作動油(ATF)の流れを開閉する弁座部材、第1弁座27、第2弁座28(特許文献2に記載する番号を示す、以下同じ)をシートホルダである弁部14内に配置し、ソレノイドコイル12側からローリング加締めにて固定していた(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−28339号公報
【特許文献2】特開2009−156312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2では、シートホルダにストレーナを装着する場合、シートホルダの先端に配置してストレーナを加締め
ると、シートホルダと弁座部材との加締めを別々に行うようになるので、コスト増加に繋がる。
また、弁座部材と一緒に内部に装着しようとするとストレーナ、シートホルダの形状変更の必要があるという問題があった。
本発明は係る課題を解決するためになされたもので、シートホルダの先端開口側を凹部形状とし、該凹部形状にボールを挟んで2個の弁座部材と共にストレーナとを一体に加締めて固定強度の向上を図るリング部材を設け、弁座部材を一体でシートホルダ先端部で加締める構造としたソレノイドバルブ
の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、
固定鉄芯と、
前記固定鉄芯の回りに設けられたソレノイドコイルと、
前記固定鉄芯と前記ソレノイドコイルの吸引力により変位する可動鉄芯と、
前記可動鉄芯により流体の流れを制御するようにされたシートホルダと、
前記シートホルダの内径に嵌挿されたシート弁座部材と、
前記シートホルダの内径に嵌挿されて前記シート弁座部材に係合するシートリングと、
を備えたソレノイドバルブ
の製造方法において、
前記シートホルダの内径に
前記シート弁座部材を固定するに際し、
前記シートホルダの先端側には凹状穴を有し、前記凹状穴に前記シート弁座部材及び前記シートリングを嵌挿した後、ストレーナおよびリングを嵌挿し、
前記シートホルダの先端側を加締めて、
前記シートホルダの凹状穴に前記シート弁座部材、前記シートリング、前記ストレーナおよび前記リングを固着することを特徴とする
ソレノイドバルブの製造方法とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、多数の部品を一括して一側の加締めにより固定することができるので加工工程を減らすことができ、加締めの際にリングをシートホルダの先端側の凹部形状に嵌挿するので、シートホルダの先端側の強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明を実施の形態に係るソレノイドバルブの略縦断面図である。
【
図2】
図1のシートホルダの先端側の要部拡大図である。
【
図3】
図1のシートホルダの先端側を加締めた要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のソレノイドバルブにつき好適な実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブ10の略縦断面図で、ソレノイド(コイル)の非励磁状態を示す。
【0009】
図1に示すように、固定鉄芯11は断面凹状の空間部15を有する円筒部16と、前記空間部15の開口端17に設けられた鍔部18と、を備える。空間部15の円筒部16の底部19にはドレーン用の貫通穴20が設けられている。固定鉄芯11の円筒部16の外側16a及び鍔部18の円筒部外周面18aに接するようにソレノイドコイル12が嵌挿されている。ソレノイドコイル12はプラスチック製のボビン12aに巻き線12bが巻かれている。ボビン12aの上端12cが鍔部18に対向して配置され、ボビン12aの内径12dが円筒部外周面18aに嵌挿されている。ボビン12aの下端には断面L字状で円筒状の鉄製のヨーク21が固定されている。ボビン12aの下方から端子部22が半径方向に突出し外部から電力が供給される。
【0010】
固定鉄芯11の下端11a及びボビン12aの内径12dに沿って移動可能に可動鉄芯13が設けられている。固定鉄芯11と可動鉄芯13との間にはスペーサ23が設けられ、固定鉄芯11と可動鉄芯13とが直接接触しないようにされている。可動鉄芯13は凹状穴13aを有する中空円筒状であり、底部にピン13bが固定されている。凹状穴13aにはばね部材24が設けられ、該ばね部材24の上部が固定鉄芯11の下端11aにスペーサ23を介して当接し、ばね部材24の弾発力により可動鉄芯13と固定鉄芯11が離隔するようにされている。可動鉄芯13及びヨーク21の下部にシートホルダ14が設けられている。シートホルダ14は上部に鍔14aを有し、鍔14a、ヨーク21、ソレノイドコイル12、固定鉄芯11の鍔部18がカバー25の両端部25a、25bで挟持するように加締め固定されている。
【0011】
シートホルダ14には凹状穴14bにタンク穴27を有するシート弁座部材28、圧力ポート29を有するシートリング30、ストレーナ31及びリング32がこの順序で嵌挿されている。
シート弁座部材28、シートリング30、ストレーナ31及びリング32の結合は、
図2に示すように凹状穴14bにシート弁座部材28、シートリング30、ストレーナ31及びリング32を嵌挿した後に、
図3に示すようにシートホルダ14の先端部33を加締めると、該先端部33の塑性変形によりシートホルダ14の凸状の環状鍔14cにより前記シート弁座部材28、シートリング30、ストレーナ31及びリング32が凹状穴14bに固着される。
この場合、リング32はストレーナ31を押えてシートホルダ14の凹状穴14bにシート弁座部材28、シートリング30、ストレーナ31を一体に結合する際の加締め強度を高める機能を有する。
【0012】
図1は3方向2位置ノーマルクローズ弁であり、シートホルダ14の凹状穴14bに嵌挿されたシートリング30には圧力ポート29が穿設され、上方に開口する圧力ポート側弁座34、該圧力ポート側弁座34に離着座するボール35が設けられている。ボール35の上側には下方に開口するタンクポート側弁座36が設けられ、ボール35が離着座可能に配置されている。圧力ポート側弁座34とタンクポート側弁座36間に連通して負荷ポート37が設けられ、図示しない供給路に接続されている。タンクポート側弁座36はタンク穴27を経由して図示しないタンクポートに連通し、ソレノイドバルブ10の外部に排出される。
【0013】
可動鉄芯13のピン13bはその先端(
図1で上端)がばね部材24の弾発力によりボール35に当接可能にされており、巻き線12bに通電することにより、固定鉄芯11側に吸引されボール35と接触しないようにされる。
ソレノイドコイル12が非励磁の場合には、ボール35はばね部材24の弾発力によりピン13bに押し圧されて圧力ポート側弁座34に着座し、圧力ポート29と負荷ポート37を遮断し、負荷ポート37とタンクポートとを連通させる。
ソレノイドコイル12が励磁されピン13bがボール35と離れているときは、ボール35は圧力ポート29の圧力に押され、タンクポート側弁座36に着座し、圧力ポート29と負荷ポート37を連通し、負荷ポート37とタンクポートを遮断させる。これにより、ソレノイドコイル12のON−OFFにより流路を切り換える3方向2位置のノーマルクローズ弁を提供する。
【0014】
本発明
の製造方法に係るソレノイドバルブ10において、シートホルダ14の凹状穴14bにシート弁座部材28、シートリング30、ストレーナ31及びリング32を嵌挿した後に、シートホルダ14の先端部33を加締める構造とした。これにより、ストレーナ付きであっても一側の加締め工程にてシート弁座部材28、シートリング30、ストレーナ31及びリング32の固定が完了するので、ソレノイドバルブ10のコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0015】
10 ソレノイドバルブ 11 固定鉄芯
12 ソレノイドコイル 13 可動鉄芯
14 シートホルダ 27
タンク穴