(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載の排ガス浄化装置では、固体還元剤加熱手段で固体還元剤を常時加熱するため、固体還元剤加熱手段を稼働させるための燃料の消費量が多くなってしまう。一般的に、固体還元剤加熱手段を稼働させるための燃料は、内燃機関に供給される燃料としても用いられているため、固体還元剤加熱手段で燃料を消費すると、燃費が低下してしまうという問題点があった。
また、内燃機関の高負荷時等には、排ガスの量が増加するため、必要となる還元剤の量も増加する。したがって、固体還元剤の加熱温度を高くして大量の還元剤を昇華させる必要がある。そこで、固体還元剤加熱手段の加熱出力を増加させると、燃料の消費量も増加するために、燃費が大幅に低下してしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決するものであって、排ガスの温度を利用して固体還元剤を加熱することにより、固体還元剤加熱手段による燃料の消費を低減可能な内燃機関の
排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明に係る内燃機関の排ガス浄化装置は、内燃機関に接続された排ガス通路に設けられ、排ガスに含まれるNOxを還元する還元触媒と、
一端が前記内燃機関の直下流の前記排ガス通路に接続され、且つ他端が前記一端と前記還元触媒との間の前記排ガス通路に接続されて、前記排ガス通路を流れる前記排ガスの一部を分岐可能な迂回流路と、
前記排ガス通路に接続され、前記迂回流路に流入する前記排ガスの温度を計測する第1温度センサと、
前記迂回流路に流入する排ガスの流れを調整する排ガス調整手段と、
前記迂回流路に設けられ、固体還元剤を貯蔵する固体還元剤貯蔵手段と、
前記固体還元剤を加熱して流体還元剤を放出させる固体還元剤加熱手段と、
前記迂回流路の前記他端よりも下流で、且つ前記還元触媒よりも上流の前記排ガス通路を流れる排ガスの温度を計測する第2温度センサと、
前記第2温度センサよりも下流で、且つ前記還元触媒よりも上流の前記排ガス通路内に液体還元剤を供給する液体還元剤供給手段と、
前記迂回流路の前記他端よりも下流で、且つ前記還元触媒よりも上流の前記排ガス通路を流れる排ガス中のNOx濃度を計測する第1NOx濃度センサと、
前記迂回流路の前記他端よりも下流で、且つ前記液体還元剤供給手段よりも上流の前記排ガス通路を流れる排ガス中の酸素濃度を計測する酸素濃度センサと、
前記第1温度センサによる計測結果に応じて、前記排ガス調整手段及び前記固体還元剤加熱手段を制御して前記迂回流路に排ガスを流すとともに、前記第2温度センサによる計測結果
及び前記第1NOx濃度センサと前記酸素濃度センサの計測結果に基づく排ガス中に含まれるNOx量の還元に要する量の流体還元剤が排ガス中に含まれるか否かの判断に応じて前記液体還元剤供給手段から前記排ガス中への液体還元剤の供給を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記内燃機関の排ガス浄化装置によれば、迂回流路に排ガスを流入させて当該排ガスの温度を利用して固体還元剤から流体還元剤を放出させるため、固体還元剤加熱手段の加熱出力を低減又は固体還元剤加熱手段による加熱を停止することができる。これにより、固体還元剤加熱手段を加熱させるために必要な燃料の消費量を低減することができる。特に、固体還元剤加熱手段を加熱させるための燃料が、内燃機関に供給される燃料としても用いられている場合に、固体還元剤加熱手段の燃料の消費量を低減させることで、燃費への影響を低減することができる。
また、迂回流路を内燃機関の直下流に設けたため、高温の排ガスを固体還元剤に供給することができる。例えば、内燃機関から離れた位置に固体還元剤を設けた場合、排ガスの温度が低下するため、固体還元剤を十分に加熱することが出来ないときがあるが、本発明によれば、固体還元剤を効率良く加熱することができる。
また、固体還元剤加熱手段を備えているため、排ガスの温度が低い場合でも固体還元剤から流体還元剤を放出させることができる。これにより、排ガスの温度が低い場合でも流体還元剤を排ガス中に供給できるため、NOxを確実に浄化することができる。
さらに、液体還元剤供給手段を備えているため、固体還元剤を加熱して放出させた流体還元剤だけではNOxを還元するための還元剤の量が不足する場合、例えば高負荷時等でも、液体還元剤の供給を行うことで還元剤を補給することができる。これにより、内燃機関の高負荷時等でも排ガス中に含まれるNOxを確実に還元することができる。
そして、排ガス調整手段で排ガスの流れを調整することで、固体還元剤から流体還元剤を取り出す必要の無いとき等に迂回流路への排ガスの流入を防止できるため、排圧低減が可能となる。
【0008】
また、前記制御手段は、
前記第2温度センサによる計測結果が、前記液体還元剤が加水分解する加水分解温度未満の場合に、前記固体還元剤加熱手段を制御して前記固体還元剤を加熱して前記流体還元剤を放出させて、
前記第2温度センサによる計測結果が、前記加水分解温度以上
であって、前記酸素濃度センサにより推測された排ガス中の流体還元剤量が排ガス中に含まれるNOx量の還元に要する流体還元剤量に対して不足している場合に、前記液体還元剤供給手段を制御して前記液体還元剤を排ガス中に供給してもよい。
【0009】
このように、液体還元剤が加水分解する加水分解温度以上の場合に、排ガス中に液体還元剤を供給するため、排ガスの温度を利用して液体還元剤を気体にすることができる。これにより、液体還元剤が気化せずに液体のまま還元触媒に流入してしまい、還元剤としての役割を果たさずに液体のまま大気に排出されることを防止できる。
【0010】
また、前記制御手段は、
前記第1温度センサによる計測結果が、前記固体還元剤から前記流体還元剤が放出される放出温度以上の場合に、前記排ガス調整手段を制御して前記排ガスを前記迂回流路へ流入させ
るとともに、前記放出温度未満の場合に、前記排ガス調整手段を制御して、前記排ガスを前記迂回流路へ流入不可としてもよい。
【0011】
このように、温度センサによる計測結果が、固体還元剤の加熱により流体還元剤が放出される放出温度以上の場合に、排ガスを迂回流路へ流入させるため、排ガスの温度を利用して固体還元剤から流体還元剤を放出させることができる。また、流体還元剤の放出温度以上の排ガスを固体還元剤に供給するため、固体還元剤加熱手段により加熱されていた固体還元剤を、流入する排ガスにより冷却することがない。
【0012】
また、前記制御手段は、
前記第1温度センサによる計測結果が、前記固体還元剤から前記流体還元剤が放出される放出温度以上で、且つ
排ガスを前記固体還元剤に接触させた際に、前記還元触媒に流入する単位時間当たりのNOxを全て還元できる量の前記流体還元剤を単位時間当たりに発生させることができる所定温度値未満の場合に、前記固体還元剤加熱手段の加熱出力を低下させ
てもよい。
【0013】
このように、温度センサによる計測結果が流体還元剤の放出温度以上で、且つ予め設定された所定温度値未満の場合に、固体還元剤に排ガスを接触させることにより、排ガスの温度を利用して固体還元剤から流体還元剤を放出させることができる。これにより、固体還元剤加熱手段の加熱出力を低下させることが可能となるため、燃料の消費量を低減することができる。したがって、燃費への影響を低減することができる。なお、排ガスの所定温度とは、当該所定温度の排ガスを固体還元剤に接触させた際に、還元触媒に流入する単位時間当たりのNOxを全て還元できる量の流体の還元剤を単位時間当たりに発生させることができる温度をいい、予め設計等により決定されるものである。
【0014】
また、前記制御手段は、前記第1温度センサによる計測結果が
、前記固体還元剤から前記流体還元剤が放出される放出温度以上で、且つ排ガスを前記固体還元剤に接触させた際に、前記還元触媒に流入する単位時間当たりのNOxを全て還元できる量の前記流体還元剤を単位時間当たりに発生させることができる所定温度値以上の場合に、前記固体還元剤加熱手段による加熱を停止してもよい。
【0015】
このように、温度センサによる計測結果が予め設定された所定温度値以上の場合に、固体還元剤に排ガスを接触させることにより、排ガスの温度を利用して固体還元剤から流体還元剤を放出させることができる。さらに、所定温度以上の排ガスを接触させることにより、排ガスに含まれるNOxを全て還元できる量の流体還元剤を放出させることができる。これにより、固体還元剤加熱手段による加熱を停止することができる。即ち、固体還元剤加熱手段を加熱するための燃料を大幅に低減することができる。したがって、燃費への影響を大幅に低減することができる。
【0016】
また、前記内燃機関は、当該内燃機関からの排ガスにより駆動する過給機のタービンを有しており、
前記迂回流路は、前記タービンの直下流の前記排ガス通路に配設されていてもよい。
【0017】
このように、迂回流路を過給機のタービンの直下流に設けたため、高温の排ガスを固体還元剤に供給することができる。例えば、タービンから離れた位置に固体還元剤を設けた場合、排ガスの温度が低下するため、固体還元剤を十分に加熱することが出来ないときがあるが、本発明によれば、固体還元剤を効率良く加熱することができる。
【0018】
【0019】
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、排ガスの温度を利用して固体還元剤を加熱することにより、固体還元剤加熱手段による燃料の消費を低減可能な内燃機関の
排ガス浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る内燃機関の
排ガス浄化装置について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。また、内燃機関としてディーゼルエンジンを用いた場合について説明するが、これに限定されるものではなく、筒内直接噴射式のリーン・バーン・ガソリンエンジン等にも適用可能である。
【0023】
図1は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の構成を示す概略図である。また、
図2は、本実施形態に係る排ガス通路に接続された機器を示す概略図である。そして、
図3は、本実施形態に係る還元剤制御手段とその周辺機器との関係を示す概略図である。
図1〜
図3に示すように、ディーゼルエンジン(以下、エンジン1という)の排ガス浄化装置3は、DOC(Diesel Oxidation Catalyst;酸化触媒)6と、DPF(Diesel Particulate Filter;ディーゼルパティキュレートフィルター)8と、SCR(Selective Catalyst Reduction;選択還元触媒)触媒10と、を備え、これらは排ガス通路2に配設されている。
【0024】
エンジン1は、燃料の噴射時期及び噴射量がECU(Electronic Control Unit、図示しない)によって電子制御されており、かかる噴射時期及び噴射量にてシリンダ毎に設けられた燃料噴射弁5から燃焼室7内に燃料が噴射される。
ECUは、図示しないCPU、ROM及びRAMから構成されるマイクロコンピューターを備えている。ECUは、エンジン1の運転条件や運転者の要求に応じてエンジン1の運転状態を制御する。
【0025】
また、排ガス浄化装置3は、エンジン1とDOC6との間に設けられ、排ガス通路2を迂回する迂回流路14と、後述する固体還元剤38の加熱及び尿素水の噴射等を制御する還元剤制御手段16と、を備えている。
【0026】
迂回流路14は、その一端14aがエンジン1の直下流の排ガス通路2に接続され、他端14bがDOC6の直上流の排ガス通路2に接続されている。エンジン1から排出された排ガスの一部は迂回流路14に流入し、当該迂回流路14を通過して再び、排ガス通路2に流入する。
【0027】
エンジン1の直下流の排ガス通路2には、迂回流路14に流入する排ガスの温度を計測する第1温度センサ20が設けられている。第1温度センサ20は、迂回流路14の一端14aが排ガス通路2に接続された位置よりも上流側に設けられている。第1温度センサ20は、計測結果を電気信号として還元剤制御手段16へ出力する。
【0028】
また、迂回流路14には、還流制御弁32と、固体還元剤38を収容するための収納容器34と、固体還元剤38を加熱するコイルヒータ36と、が設けられている。
還流制御弁32は、迂回流路14の一端側端部に設けられており、迂回流路14に流入する排ガスの流れを調整する。還流制御弁32の開閉は、還元剤制御手段16の固体還元剤制御部18により制御される。固体還元剤制御部18は、第1温度センサ20により計測された排ガスの温度が、固体還元剤38から流体還元剤を放出可能な放出温度以上の場合に還流制御弁32を開き、放出温度未満の場合に還流制御弁32を閉じる。
【0029】
収納容器34は、還流制御弁32よりも下流側の迂回流路14内に設けられている。収納容器34内には、固体還元剤38が収納されている。迂回流路14に流入した排ガスは収納容器34内の固体還元剤38と接触する。固体還元剤38として、アンモニアを吸着する吸着剤あるいはアンモニアを化学的に含有する錯体を用いることができる。例えば、アンモニアが固体還元剤38に吸着されている場合、排ガスの熱によって吸着剤からアンモニアが脱離する。また、アンモニアを含む錯体で構成されている場合、排ガスの熱によって錯体が分解または錯体からの昇華によってアンモニアが発生する。
【0030】
固体還元剤38は、高温の排ガスと接触することによって加熱されてアンモニアを発生させる。発生するアンモニアの量は、加熱される温度によって変化する。具体的には、温度が高くなるにつれてアンモニアの量は増大する。
【0031】
コイルヒータ36は、収納容器34の外方の排ガス通路2を囲むように設置されており、加熱することにより収納容器34内の固体還元剤38からアンモニアを放出させることができる。これにより、排ガスを迂回流路14に通過させない場合でも、固体還元剤38からアンモニアを放出させることができる。
【0032】
コイルヒータ36の加熱出力は、還元剤制御手段16の固体還元剤制御部18により制御される。固体還元剤制御部18は、第1温度センサ20により計測された排ガスの温度を加味して、コイルヒータ36の加熱出力を調整する。
【0033】
固体還元剤制御部18は、第1温度センサ20による計測結果が、予め設定された所定温度以上の場合、コイルヒータ36を停止する。排ガスの所定温度とは、排ガスを固体還元剤38に接触させた際に、SCR触媒10に流入する単位時間当たりのNOxを全て還元できる量のアンモニアを単位時間当たりに発生させることができる温度をいい、予め設計等により決定されている。なお、所定温度は放出温度よりも大きい値であり、SCR触媒10の還元能力、第1温度センサ20から収納容器34まので長さ、迂回流路14の径等に基づいて決定される。
固体還元剤制御部18は、第1温度センサ20による計測結果が、放出温度以上、且つ所定温度未満の場合、コイルヒータ36の加熱出力を低減する。これにより、コイルヒータ36を加熱するために必要な燃料の消費量を低減することができる。係る場合には、燃費への影響を低減することができる。
また、固体還元剤制御部18は、第1温度センサ20による計測結果が所定温度以上の場合にコイルヒータ36を停止する。これにより、コイルヒータ36を加熱するための燃料を消費しなくなる。コイルヒータ36を加熱させるための燃料は、エンジン1に供給される燃料としても用いられているため、燃料の消費量を低減させることで、燃費への影響を大幅に低減することができる。
【0034】
収納容器34よりも下流側の迂回流路14の他端部側には、アンモニアを含む排ガスを下流側へ供給するアンモニア供給用ポンプ40と、逆止弁42と、が設けられている。
アンモニア供給用ポンプ40が設けられているため、発生したアンモニアを含む排ガスを排ガス通路2に確実に供給することができる。アンモニア供給用ポンプ40の稼働及び停止は、固体還元剤制御部18により制御される。固体還元剤制御部18は、還流制御弁32を開くと同時にアンモニア供給用ポンプ40を稼働させ、還流制御弁32を閉じると同時にアンモニア供給用ポンプ40を停止させる。
【0035】
逆止弁42は、アンモニア供給用ポンプ40よりも下流側に設けられている。逆止弁42は、排ガス通路2から迂回流路14の他端側端部内へ排ガスが流入することを防止し、且つアンモニア供給用ポンプ40側から供給されたアンモニアを含む排ガスを排ガス通路2へ送給する機能を有している。
【0036】
アンモニア供給用ポンプ40から供給されたアンモニアを含む排ガスは、逆止弁42を通過して排ガス通路2内に流入し、排ガス通路2を通過してきた排ガスと合流してDOC6に流入する。
【0037】
迂回流路14の他端14bと排ガス通路2との合流部と、DOC6との間の排ガス通路2には、酸素濃度センサ26が設けられている。酸素濃度センサ26は、計測結果を電気信号として還元剤制御手段16へ出力する。還元剤制御手段16の尿素水制御部45は、酸素濃度センサ26による排ガス中の酸素濃度に基づいて、排ガス中に含まれるアンモニア量を推測する。
【0038】
DOC6では、排ガス中に含まれるNOが酸化されてNO
2が生成される。DOC6を通過した後のNO
2を含む排ガスは、続いてDPF8に流入する。DPF8では、排ガス中に含まれるPM(Paticulate Matter:粒子状物質)が捕捉される。DOC6とDPF8は、一つのケース9内に収納されている。これにより、DPF8に捕捉されたPM量が所定量を超えたときには、燃料の後噴射等によって排ガス温度を上昇させ、PMを燃焼することができる。
DPF8に入る排ガスの温度は、DPF8の上流側のケース9に取り付けられた第2温度センサ22にて計測される。
【0039】
DPF8を通過した排ガスは、SCR触媒10内に流入する。DPF8とSCR触媒10との間の排ガス通路2には、排ガスの温度を計測する第3温度センサ24が設けられている。これにより、SCR触媒10に流入する排ガスの温度を正確に把握することができる。
第2温度センサ22及び第3温度センサ24は、それぞれ計測結果を電気信号として還元剤制御手段16へ出力する。
【0040】
DPF8とSCR触媒10との間の排ガス通路2には、排ガス中に含まれるNOxの濃度を計測する第1NOx濃度センサ28が設けられている。また、SCR触媒10よりも下流側の排ガス通路2には、排ガス中に含まれるNOxの濃度を計測する第2NOx濃度センサ30が設けられている。第1NOx濃度センサ28及び第2NOx濃度センサ30は、それぞれ計測結果を電気信号として還元剤制御手段16へ出力する。
このように、SCR触媒10の上流側及び下流側にそれぞれ第1NOx濃度センサ28、第2NOx濃度センサ30が設けられているため、SCR触媒10に流入する排ガスに含まれるNOxの濃度及びSCR触媒10を通過した後の排ガスに含まれるNOxの濃度を正確に把握することができる。これにより、NOx浄化率(第1NOx濃度センサ28により計測されたNOx濃度/第2NOx濃度センサ30により計測されたNOx濃度)を算出することができる。
【0041】
また、排ガス浄化装置3は、SCR触媒10の直上流に液体還元剤である尿素水を噴射する噴射装置44を備えている。噴射装置44は、第1NOx濃度センサ28とSCR触媒10との間に位置する排ガス通路2に設けられた噴射ノズル46と、噴射ノズル46に尿素水を供給する尿素水供給用ポンプ47と、尿素水を貯留する尿素水タンク48と、を備えている。
【0042】
尿素水供給用ポンプ47は、尿素水の供給量を調整可能な可変機構を有している。尿素水供給用ポンプ47の可変機構は、還元剤制御手段16の尿素水制御部45により制御される。
尿素水供給用ポンプ47から供給された尿素水は、噴射ノズル46から排ガス中に噴射される。
【0043】
一般的に、DPF8と通過した排ガスの温度が約200℃未満の場合、噴射した尿素水の分解反応が進み難く、アンモニアスリップが生じる場合がある。したがって、尿素水制御部45は、第3温度センサ24により計測された排ガスの温度が約200℃以上の場合、尿素水供給用ポンプ47を稼働させて尿素水を噴射する。排ガスに吹き付けられた尿素水は、分解してアンモニアが生成される。
【0044】
尿素水の分解によって生成されたアンモニア及び固体還元剤38を昇華して生成されたアンモニアを含む排ガスはSCR触媒10に流入する。SCR触媒10では、排ガス中に含まれるNOxがアンモニアによって還元される。そして、NOxを含まない排ガスは、排ガス通路2を通って大気中へ放出される。
【0045】
NOxの濃度が少ない場合に大量のアンモニアを供給するとアンモニアスリップを生じるため、尿素水制御部45は、NOxの濃度にも応じて尿素水の噴射量を調整する。
具体的に、尿素水制御部45は、酸素濃度センサ26による酸素濃度から、排ガス中に含まれているアンモニア量を推定する。続いて、当該アンモニア量及び第3温度センサ24による排ガスの温度を加味して、排ガス中のNOxを還元するために必要な量(以下、所定量という)のアンモニアが排ガス中に含まれていると判断した場合には、尿素水の噴射を行わない。一方、尿素水制御部45は、排ガス中に含まれるアンモニア量
及び排ガスの温度を加味して、所定量のアンモニアが排ガス中に含まれておらずアンモニアが不足していると判断した場合には、その不足分のアンモニアを発生するために必要な尿素水の供給量を算出する。そして、尿素水制御部45は、尿素水供給用ポンプ47を稼働させるとともに、算出された尿素水を供給するように尿素水供給用ポンプ47を制御して、当該必要な量の尿素水を排ガス中に供給する。
【0046】
SCR触媒10内に流入する排ガス中にはアンモニアが含まれているため、排ガス中に含まれるNOxがSCR触媒10内で還元される。そして、NOxを含まない浄化された排ガスが、排ガス通路2を通って大気中へ放出される。
【0047】
次に、上記の構成による排ガス浄化装置3の排ガス浄化フローについて
図4を用いて説明する。
図4に示すように、まず、エンジン1を稼働させた直後等の排ガスの温度が比較的低い状態のときは、固体還元剤38を加熱してアンモニアを発生させる(ステップS1)。その後、エンジン1が温まって排ガスの温度が高い状態のときは、尿素水を供給することによりアンモニアを発生させる(ステップS20)。
【0048】
固体還元剤38によってアンモニアを発生させる詳細なフローについて
図5を用いて説明する。
図5に示すように、まず、還元剤制御手段16の固体還元剤制御部18は、冷態運転状態であることを検出したら(ステップS2)、コイルヒータ36で固体還元剤38を加熱する(ステップS4)。続いて、アンモニア供給用ポンプ40を稼働させる。コイルヒータ36によって固体還元剤38を加熱することにより、アンモニアが発生する。発生したアンモニアは、アンモニア供給用ポンプ40により排ガス通路2に送給され、排ガス通路2を通過してきた排ガスと合流してDOC6、DPF8、SCR触媒10に流入する。これにより、排ガス中に含まれるNOxが浄化される。
【0049】
次に、固体還元剤制御部18は、エンジン1が温まって冷態運転状態が終了したことを検出したら(ステップS6)、第1温度センサ20から取得した排ガスの温度T
1が上記放出温度以上か否かを判定する(ステップS8)。
【0050】
固体還元剤制御部18は、ステップS8において、排ガスの温度T
1が放出温度未満の場合、排ガスを迂回流路14に流すことは不可であると判定する(ステップS10)。係る場合には、すべての排ガスを排ガス通路2内に流す。
一方、固体還元剤制御部18は、ステップS8において、排ガスの温度T
1が放出温度以上の場合、排ガスを迂回流路14に流すことが可能であると判定する(ステップS12)。係る場合に、固体還元剤制御部18は、還流制御弁32を開放する(ステップS14)。また、アンモニア供給用ポンプ40を稼働させる。これにより、迂回流路14にはエンジン1から排出された高温の排ガスの一部が流入する。高温の排ガスが迂回流路14を通過する際に、固体還元剤38を加熱することにより、アンモニアが発生する。発生したアンモニアは、アンモニア供給用ポンプ40により排ガス通路2に送給される。
【0051】
次に、固体還元剤制御部18は、排ガスの温度T
1が、予め設定された上記所定温度以上か否かを判定する(ステップS16)。
固体還元剤制御部18は、ステップS16において、排ガスの温度T
1が所定温度以上であると判定すると、コイルヒータ36による加熱を停止する(ステップS18)。これにより、コイルヒータ36を稼働させるための燃料の消費量を大幅に低減することができる。
【0052】
ところで、ステップS16において、固体還元剤制御部18は、排ガスの温度T
1が所定温度未満であると判定すると、コイルヒータ36の加熱出力を低減する(ステップS17)。これにより、コイルヒータ36を稼働させるための燃料の消費量を低減することができる。
【0053】
次に、尿素水によってアンモニアを発生させる詳細なフローについて
図6を用いて説明する。
図6に示すように、まず、第3温度センサにより排ガスの温度T
3を計測する(ステップS21)。続いて、尿素水制御部45は、排ガスの温度T
3が加水分解可能温度、例えば200℃以上か否かを判定する(ステップS22)。
【0054】
尿素水制御部45は、ステップS22において、排ガスの温度T
3が200℃未満の場合、尿素水の噴射は不可能であると判定する(ステップS24)。
一方、尿素水制御部45は、ステップS22において、排ガスの温度T
3が200℃以上の場合、尿素水の噴射は可能であると判定する(ステップS26)。尿素水の噴射は可能であると判定したら、尿素水制御部45は、続いて、酸素濃度センサ26から取得した酸素濃度により、排ガス通路2を流れるアンモニア量を推定する(ステップS28)。
【0055】
次に、尿素水制御部45は、ステップS28で推定したアンモニア量が、上記所定量未満か否かを判定する(ステップS30)。
尿素水制御部45は、ステップS30において、アンモニアの量が所定量未満であると判定すると、尿素水供給用ポンプ47を稼働させて、NOxを還元するために必要な量の尿素水を噴射する(ステップS32)。これにより、排ガスに含まれるNOxをSCR触媒にて効率良く還元することができる。
また、尿素水制御部45は、ステップS30において、アンモニアの量が所定量以上であると判定すると、尿素水を使用しない(ステップS34)。これにより、アンモニアスリップを防止することができる。
【0056】
冷態運転状態が終了した後、エンジン1が稼働している間、上述したステップS8からステップS34までを繰り返し実施して、排ガス中にアンモニアを供給し続ける。
【0057】
上述したように、本実施形態に係る排ガス浄化装置3によれば、第1温度センサ20による計測結果、即ち排ガスの温度T
1が固体還元剤38の放出温度以上の場合に、排ガスを迂回流路14へ流入可能とするため、排ガスの温度を利用して固体還元剤38からアンモニアを放出させることができる。そして、排ガスの温度を利用して固体還元剤38からアンモニアを放出させるため、コイルヒータ36からの加熱出力を低減することができる。これにより、コイルヒータ36を加熱させるために必要な燃料の消費量を低減することができる。コイルヒータ36を加熱させるための燃料は、内燃機関に供給される燃料と併用されているため、コイルヒータ36用の燃料の消費量を低減させることで、燃費への影響を低減することができる。
そして、排ガスの温度T
1が所定温度値以上の場合には、コイルヒータ36を停止するため、燃料の消費量を大幅に低減することができる。これにより、燃費への影響を大幅に低減することができる。
【0058】
また、迂回流路14をエンジン1の直下流に設けたため、高温の排ガスを固体還元剤38に供給することができる。エンジン1から離れた位置に固体還元剤38を設けた場合、排ガスの温度が低下するため、固体還元剤38を十分に加熱することが出来ないときがあるが、本発明によれば、固体還元剤38を効率良く加熱することができる。
【0059】
さらに、迂回流路14にアンモニア供給用ポンプ40を備えているため、アンモニアを排ガス通路2へ確実に供給することができる。排ガスの圧力損失による圧力差や排ガスの脈動では、アンモニアを排ガス通路2に供給することが出来ない場合に有効である。
【0060】
また、固体還元剤38を加熱するためのコイルヒータ36を備えているため、排ガスの温度が放出温度未満でも固体還元剤38を加熱してアンモニアを放出させることができる。これにより、SCR触媒10によるNOx浄化効率を向上させることができる。そして、コイルヒータ36の加熱出力を調整することで、アニモニアの発生量を調整することができる。
【0061】
また、SCR触媒10の上流側及び下流側にそれぞれ第1NOx濃度センサ28、第2NOx濃度センサ30が設けられているため、NOx浄化率を算出することができる。さらに、排ガス通路2に酸素濃度センサ26を配設しているため、排ガス中に含まれるアンモニア量を把握することができる。NOx浄化率が予め設定された値よりも低い(浄化率が悪い)場合は、コイルヒータ36の加熱出力を調整して排ガス中に含まれるアンモニアの量を調整することで、NOx浄化率を高くすることができる。
【0062】
還流制御弁32で排ガスの流れを調整することで、固体還元剤38からアンモニアを取り出す必要の無いとき等に迂回流路14への排ガスの流入を防止できるため、排圧低減が可能となる。
【0063】
そして、固体還元剤38から発生させたアンモニアだけではNOxを全て還元することができない場合に、尿素水の噴射を行うことで、アンモニアを補給することができる。これにより、エンジン1の高負荷時等でも排ガス中に含まれる全てのNOxを還元することができる。これにより、SCR触媒10によるNOx浄化効率を向上させることができる。
【0064】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。第二実施形態のエンジンはターボ過給機を有している。
【0065】
図7は、本発明の第二実施形態に係る排ガス浄化装置3の配置箇所を示す概略図である。
図7に示すように、エンジン11の直下流の排ガス通路2には、ターボ過給機4のタービン4aが配設されている。また、ターボ過給機4のタービン4aとDOC6との間に、排ガス通路2を迂回する迂回流路14が設けられている。
【0066】
迂回流路14は、その一端14aがタービン4aの直下流の排ガス通路2に接続され、他端14bがDOC6の直上流の排ガス通路2に接続されている。タービン4aを通過した排ガスの一部は迂回流路14に流入し、当該迂回流路14を通過して再び、排ガス通路2に合流する。
【0067】
タービン4aの直下流の排ガス通路2には、排ガスの温度を計測する第1温度センサ20が設けられている。第1温度センサ20は、迂回流路14の一端が接続された位置よりも上流側に設けられている。これにより、迂回流路14に流入する排ガスの温度を把握することができる。
【0068】
また、迂回流路14には、第一実施形態と同様に、還流制御弁32と、固体還元剤38を収容するための収納容器34と、固体還元剤38を加熱して昇華させるコイルヒータ36と、が設けられている。
【0069】
上述したように、本実施形態によれば、迂回流路14をタービン4aの直下流に設けたため、高温の排ガスを固体還元剤38に供給することができる。タービン4aから離れた位置に固体還元剤38を設けた場合、排ガスの温度が低下するため、固体還元剤38を十分に加熱することが出来ないときがあるが、本実施形態によれば、固体還元剤38を効率良く加熱することができる。また、排ガス浄化装置3によれば、第一実施形態で説明した効果も得ることができる。