特許第5874971号(P5874971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874971
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】ウレタン塗料組成物および樹脂部材
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20160218BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20160218BHJP
   C09D 101/12 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D7/12
   C09D101/12
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-2948(P2012-2948)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-142119(P2013-142119A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 恵里香
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−228834(JP,A)
【文献】 特開2002−180000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00;
101/00−201/10
C08G 18/00−18/87;
71/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアセテートブチレート(b)と、シリカ粒子(c)と、ポリイソシアネート(d)と、低分子ポリオール(a)を含有するウレタン塗料組成物であって、
前記低分子ポリオール(a)が、1分子あたり少なくとも2つ以上の水酸基を有し、その分子量が60〜500であり、かつ水酸基価が500〜2,000mg・KOH/gであり、
前記(a)〜(d)成分の合計重量に対し、前記低分子ポリオール(a)を0.5〜30重量%、前記セルロースアセテートブチレート(b)を0.5〜20重量%、前記シリカ粒子(c)を20〜70重量%含有すると共に、
前記ポリイソシアネート(d)を、NCO/(セルロースアセテートブチレート(b)+低分子ポリオール(a)の合計OH)の当量比が0.5〜2.0の割合で配合することを特徴とする、ウレタン塗料組成物。
【請求項2】
前記(a)〜(d)成分100重量部に対し、紫外線吸収剤(e)を1〜10重量部含有することを特徴とする、請求項1に記載のウレタン塗料組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塗料組成物を硬化してなる硬化塗膜を有することを特徴とする樹脂部材。
【請求項4】
前記樹脂部材が車輌外装品である、請求項3に記載の樹脂部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン塗料組成物と、これがコーティングされた樹脂部材に関する。さらに詳しくは、樹脂成形体の表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性および耐侯性などに優れた硬化塗膜を形成することができるウレタン塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂およびABS樹脂などの合成樹脂は、成形加工が容易、軽量かつ耐衝撃性に優れており、様々な分野で使用されている。しかしながら、これらの樹脂からなる成形品はガラスなどと比較して、その表面の耐擦傷性、耐磨耗性などに劣るため、爪での引っ掻き、砂塵および小石等の接触や衝撃によって傷や凹みが生じることにより、美観や機能が損なわれ易い。これを解決するべく、樹脂成形体の表面を耐擦傷性に優れる塗膜で被覆し、保護する方法が一般的に行われており、このような機能を有する様々な塗料が提案されてきた。なかでも、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応を利用した硬化塗料は、樹脂成形体の熱変形が生じない低温での熱硬化および短時間硬化に適しており、種々の塗料が提案されてきた。
【0003】
例えば特許文献1および特許文献2では、ゴム弾性を有するウレタン樹脂塗料を用いた樹脂成形体が記載されている。これらのウレタン樹脂塗料は、水酸基価が10〜200mg・KOH/gのポリオールを含んでいる。また、特許文献3および特許文献4では、アクリルポリオールとポリイソシアネートに、シリカ微粒子をウレタン樹脂塗料の補強材として利用した樹脂成形体が記載されている。特許文献3で使用するアクリルポリオールの水酸基価は10〜200mg・KOH/g程度であり、特許文献4で使用するアクリルポリオールの水酸基価は50〜100mg・KOH/g程度である。一方、特許文献5では、低分子多分岐ポリエーテルポリオールを用いたウレタン塗料の利用可能性が記載されている。このポリエーテルポリオールの分子量(Mn)は1,000〜4,000であり、かつ水酸基価が150〜350mg・KOH/gである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−258601号公報
【特許文献2】特開平11−228719号公報
【特許文献3】特開2002−327146号公報
【特許文献4】特開2008−296539号公報
【特許文献5】特開2008−94907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2のゴム弾性を有する塗膜は、その弾性回復力により擦り傷や凹み傷を復元する効果があるため、塗膜の耐擦傷性が向上する。しかしながら、使用するポリオールの水酸基価が10〜200mg・KOH/g程度であり、塗膜中の架橋密度が低い。そのため、比較的弱い擦れに対しては十分な特性を有するが、小石や砂など硬い物質によって磨耗されるような屋外で長時間使用される条件(例えば、車輌内外装品に適用した場合など)で耐え得るような塗膜硬度や耐摩耗性を有しない。また、使用するポリオールの極性が比較的高いため、例えば得られた塗膜は極性の低いガソリンや灯油などには抵抗性を有するが、ブレーキ油など極性が比較的高い油に対しては汚染され易いといった課題があった。
【0006】
また、特許文献3では、塗膜硬度および各種耐薬品性が改善されているものの、使用するアクリルポリオールの水酸基価が低く、やはり車輌内外装品など高度な耐擦傷性や耐摩耗性が要求される部材で使用し得るような十分な特性は有しない。特許文献4でもアクリルポリオールの水酸基価が低いため、上記と同様の課題を有する。特許文献5では、アクリルポリオールを用いる場合よりも塗膜中の架橋密度が向上することが期待されるが、何らその塗膜特性については記載がない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、その目的とするところは、車輌外装品など屋外で長時間使用される条件下でも、塗膜の耐擦傷性、耐磨耗性、耐薬品性および耐侯性などの特性を担保し得るウレタン塗料組成物と、これがコーティングされた樹脂部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の手段により解決できる。
[1]セルロースアセテートブチレート(b)と、シリカ粒子(c)と、ポリイソシアネート(d)と、低分子ポリオール(a)を含有するウレタン塗料組成物であって、前記低分子ポリオール(a)が、1分子あたり少なくとも2つ以上の水酸基を有し、その分子量が60〜500であり、かつ水酸基価が500〜2,000mg・KOH/gであり、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対し、前記低分子ポリオール(a)を0.5〜30重量%、前記セルロースアセテートブチレート(b)を0.5〜20重量%、前記シリカ粒子(c)を20〜70重量%含有すると共に、前記ポリイソシアネート(d)を、NCO/(セルロースアセテートブチレート(b)+低分子ポリオール(a)の合計OH)の当量比が0.5〜2.0の割合で配合することを特徴とする、ウレタン塗料組成物。
[2]前記(a)〜(d)成分100重量部に対し、紫外線吸収剤(e)を1〜10重量部含有することを特徴とする、[1]に記載のウレタン塗料組成物。
[3][1]または[2]に記載の塗料組成物を樹脂成形体の表面にコーティングし、該塗料組成物を硬化してなる硬化塗膜を有することを特徴とする樹脂部材。
[4]前記樹脂部材が車輌外装品である、[3]に記載の樹脂部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン塗料組成物によれば、屋外で長時間使用される条件下でも、塗膜の耐擦傷性、耐磨耗性、耐薬品性および耐侯性などの特性を担保し得る。また、ブレーキ油など極性が比較的高い油に対しても汚染され難い。したがって、例えば車輌外装品などの樹脂成形体へ本発明のウレタン塗料組成物を硬化途膜として適用することで上記効果を最大限発揮でき、車輌外装品などの耐擦傷性、耐磨耗性、耐薬品性および耐侯性などを向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のウレタン塗料組成物は、セルロースアセテートブチレート(b)と、シリカ粒子(c)と、ポリイソシアネート(d)と、低分子ポリオール(a)を含有する。
【0011】
(a)低分子ポリオール
本発明に用いられる低分子ポリオールは、形成される塗膜の架橋密度を向上させる成分であり、塗膜表面の耐擦傷性および耐磨耗性を向上させる作用を有する。本発明に用いられる低分子ポリオールは、1分子あたり少なくとも2つ以上の水酸基を有する。1分子あたりの水酸基の数が1つでは、形成される塗膜の架橋密度が十分でなく、塗膜の耐擦傷性および耐摩耗性の低下をまねく恐れがある。また、その分子量は60〜500と低分子量にする。但し、分子量が60未満では、塗料組成物中での溶解性の低下や塗膜への可とう性の付与が低下する恐れがある。一方、分子量が500を超えると、架橋間距離が長くなるため、塗膜としての必要な架橋密度が得られずに、耐擦傷性の低下や耐磨耗性の低下をまねく恐れがある。好ましくは70〜400であり、より好ましくは80〜300であり、さらに好ましくは90〜200である。また、水酸基価は500〜2,000mg・KOH/gとする。水酸基価が500mg・KOH/g未満では、塗膜としての必要な架橋密度が得られずに、耐擦傷性の低下や耐磨耗性や耐溶剤性の低下をまねく恐れがある。一方、水酸基価が2,000mg・KOH/gを超えると、塗料組成物中での溶解性の低下や塗膜への可とう性の付与が低下する恐れがある。好ましくは600〜1900であり、より好ましくは700〜1800であり、さらに好ましくは800〜1700である。
【0012】
本発明における低分子ポリオールの配合量は、塗料組成物の塗膜形成成分(a)〜(d)の合計重量に対し、少なくとも0.5〜30重量%の範囲であることが必要であり、特に1〜20重量%が好ましい。低分子ポリオールの配合量が0.5重量%未満では耐擦傷性向上の効果が小さく、30重量%を超えると、塗膜の内部応力が大きくなり、密着性の低下や塗膜クラックといった欠陥が生じ易くなるので、好ましくない。
【0013】
本発明における上記低分子ポリオールの具体例としては、エタンジオール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール、メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリカプロラクトントリオール、ジトリメリロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンテトラオール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、などが挙げられる。 これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、ポリカプロラクトントリオールの市販品としては、例えばPerstorp社製のPolyol3940やR3600、及びダイセル化学社製のプラクセル303などがある。また、ポリカプロラクトンテトラオールの市販品としては、Perstorp社製のPolyol4525やPolyol4800などがある。
【0014】
(b)セルロースアセテートブチレート
本発明に用いられるセルロースアセテートブチレートは、主に塗膜に可とう性や、基材である樹脂成形体との密着性を付与、塗料粘性を発現する成分であり、セルロースを酢酸および酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られ、公知のものを用いることができる。塗料組成物との相溶性の観点から、数平均分子量(Mn)が、5,000〜100,000のものが好ましい。さらに、塗料粘性の発現性から、ASTM−D−817に記載された測定法によるアセチル化度が1〜34重量%、ブチリル化度が16〜60重量%、ASTM−D−1343に記載された測定法による粘度が0.005〜20ポイズの範囲に入るものが好ましい。
【0015】
セルロースアセテートブチレートの市販品(イーストマンケミカルプロダクト社製)としては、「CAB−551−0.01」、「CAB−551−0.2」、「CAB−553−0.4」、「CAB−531−1」、「CAB−500−5」、「CAB−321−0.1」、「CAB−381−0.1」、「CAB−381−0.5」、「CAB−381−2」、「CAB−321−20」などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明におけるセルロースアセテートブチレートの配合量は、塗料組成物の塗膜形成成分(a)〜(d)の合計重量に対し、少なくとも0.5〜20重量%の範囲とする。セルロースアセテートブチレートの配合量が0.5%未満では添加効果が小さく、配合量が20重量%を超えると、耐擦傷性および耐摩耗性が低下するので好ましくない。好ましくは1〜15であり、より好ましくは2〜15であり、さらに好ましくは5〜10である。
【0017】
本発明で用いられるセルロースアセテートブチレートとしては、樹脂基準で水酸基価が1〜200mgKOH/gのものが好ましい。樹脂基準で水酸基価が5より低いセルロースアセテートブチレートは、塗膜中の架橋密度が小さくなり、耐溶剤性などに好ましくない影響がある。また、水酸基価が200よりも大きいセルロースアセテートブチレートを用いると、塗膜の伸展性に好ましくない影響を与える。なお、樹脂基準による水酸基価は、理論値またはJISK−1557の6.4に準じて測定した値である。
【0018】
(c)シリカ粒子
本発明に用いられるシリカ粒子は、硬化塗膜の耐磨耗性を向上する作用がある。シリカ粒子の平均粒子径は、硬化性樹脂の光線透過率の観点からできるだけ小さいことが好ましい。具体的には、シリカ粒子の平均粒子径を300nm以下とすることが好ましい。より好ましくは100nm以下の微粒子であり、さらに好ましくは50nm以下の微粒子である。当該シリカ粒子は、有機溶媒に分散したシリカゾルの状態で塗料組成物へ添加される。有機溶媒に分散された状態において、シリカ粒子の表面は、通常、各種のシラン化合物(シランカップリング剤)などによって予め表面処理されている。表面処理することで、硬化性樹脂の長期保存安定性をより高めるとともに、得られる成形品の耐薬品性、耐候性もより良好となる。
【0019】
シリカ粒子の配合量は、塗膜形成成分(a)〜(d)の合計重量に対して少なくとも20〜70重量%とする。35〜70重量%の範囲が特に好ましい。このような配合量であれば、添加効果による塗膜の耐磨耗性が十分に発現するとともに、塗膜の硬化収縮によるクラックを抑制することができる。
【0020】
有機溶媒に分散されているシリカ粒子(シリカゾル)、及びその市販品(日産化学社製)としては、例えば、メタノール分散シリカゾル(商品名:MA−ST)、イソプロピルアルコール分散シリカゾル(商品名:IPA−ST)、n−ブタノール分散シリカゾル(商品名:NBA−ST)、エチレングリコール分散シリカゾル(商品名:EG−ST)、キシレン/ブタノール分散シリカゾル(商品名:XBA−ST)、エチルセロソルブ分散シリカゾル(商品名:ETC−ST)、ブチルセロソルブ分散シリカゾル(商品名:BTC−ST)、ジメチルホルムアミド分散シリカゾル(商品名:DBF−ST)、ジメチルアセトアミド分散シリカゾル(商品名:DMAC−ST)、メチルエチルケトン分散シリカゾル(商品名:MEK−ST)、メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(商品名:MIBK−ST)、酢酸エチル分散シリカゾル(商品名:EAC−ST)などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
(d)ポリイソシアネート
本発明で用いられるポリイソシアネートとしては、公知のものを用いることができ、2官能以上のイソシアネート化合物である。2官能のイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1−3ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4−ジシクロヘキシルジイソシアネートなどが挙げられる。特に、塗膜の架橋密度を増加させ、塗膜の耐候性、耐汚染性を向上させる観点からは、3官能以上のイソシアネート化合物が好ましい。3官能以上のイソシアネート化合物とは、上記ジイソシアネートを出発原料として合成されたもので、ビュレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体などがある。また、これらのブロック型イソシアネートを用いることもできる。市販されているものとして、例えば旭化成ケミカルズ社製のヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体(商品名:デュラネート24A−100)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(商品名:デュラネートP−301−75E)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デュラネートTPA−100)、ブロック型イソシアネート(商品名:デュラネートMF−K60X)や、三井化学社製の1−3ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネートD−120N)、1−3ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート体(商品名:タケネートD−127N)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネートD−140N)や、住化バイエルウレタン社製のヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(商品名:デスモジュールXP2679)などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
本発明においては、ポリイソシアネートを、NCO/(セルロースアセテートブチレート(b)+低分子アクリルポリオール(a)の合計のOH)の当量比が0.5〜2.0の割合になるように混合して用いられる。上記当量比が0.5より小さいと、塗膜の架橋密度が低くなり、耐溶剤性、耐水性、耐候性が不良となる。一方、2.0を超えてポリイソシアネートが過剰になると、塗膜が脆くなり耐候性が低下するばかりでなく、乾燥性において満足しうる結果が得られない場合がある。なお、ポリイソシアネート化合物は、NCO基含有率(%)が、理論値または実測値(JISK1603−1)などで規定されるので、これらの値を用いて下記式(1)で必要量を算出することができる。
【数1】
【0023】
本発明におけるポリイソシアネートとポリオールとの硬化反応には、必要に応じてトリエチルアミン、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどの硬化促進触媒を加えることができる。これら触媒を用いる場合の使用量は、前記ポリイソシアネート100質量部に対して通常0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部、最も好ましくは0.1〜3質量部である。これらの硬化促進触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種またはそれ以上を組み合わせて使用することもできる。
【0024】
本発明では、塗料組成物の固形分調製などのために、塗料組成物を有機溶媒で希釈することができる。有機溶媒としては、アルコール系、カルボン酸エステル系、ケトン系、アミド系、エーテル系、脂肪族および芳香族炭化水素系の溶媒が用いられる。例えば、アルコール系溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ターシャリーアミルアルコールなど;カルボン酸エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチルなど;ケトン系溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなど;アミド系溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど;エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど;脂肪族および芳香族炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、ペンタンキシレン、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種またはそれ以上を組み合わせて使用することもできる。これら成分のうち、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのカルボン酸エステルおよびケトン系溶媒を主成分し、これらにアルコールなどの極性溶媒を混合させた溶剤が、溶解性、揮発性および密着性の観点から好ましい。
【0025】
(e)紫外線吸収剤
また、本発明の塗料組成物には、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤は、形成される塗膜の耐候性を向上させると共に、塗膜を透過した紫外線によって基材となる樹脂成形体の表面の劣化を防止するため、透過紫外線を該塗膜に吸収せしめる作用を有する。その配合量は、塗膜形成成分(a)〜(d)の合計重量に対し1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%、さらに好ましくは4〜6重量%である。紫外線吸収剤の使用量が1重量%未満では、塗膜に対する耐候性の向上効果が小さく、10重量%を超えると塗膜の耐候性改善および基材(樹脂成形体)の劣化防止に有効であるが、塗膜の密着性や耐擦傷性が低下するので、好ましくない。
【0026】
本発明において好適な紫外線吸収剤は、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物などである。ベンゾフェノン系化合物としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン;サリシレート系化合物としては、フェニルサリシレート、p−tert.−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート;ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert.−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert.−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)ベンゾトリアゾール;ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。これら紫外線吸収剤は、それぞれ単独であるいは2種以上混合して用いることができる。特に、塗膜形成成分(a)〜(d)との相溶性が良く、紫外線領域における吸光係数が大きいものが塗膜および樹脂成形体の耐侯性における劣化を防ぐには好ましい。このような紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0027】
市販されているものとしては、例えばBASF社製の、TINUVIN−PS、TINUVIN99−2、TINUVIN109、TINUVIN328、TINUVIN384−2、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130(以上、ベンゾトリアゾール系)、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477、TINUVIN479(以上、ヒドロキシフェニルトリアジン系)などが挙げられる。特に、塗膜形成成分(a)〜(d)との相溶性が良いものとしては、TINUVIN99−2、TINUVIN384−2、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130、TINUVIN400、TINUVIN477、TINUVIN479などが挙げられる。
【0028】
本発明の塗料組成物は、上記低分子ポリオール(a)、セルロースアセテートブチレート(b)、シリカ粒子(c)、ポリイソシアネート(d)および必要に応じて紫外線吸収剤(e)の所定量を有機溶媒中で均一になるように混合することによって製造することができる。また、必要に応じ塗料業界で慣用されているその他種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、艶消し剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系化合物等)、染料、顔料等を、本発明の作用効果を阻害しない範囲で適宜慣用量用いることができる。
【0029】
本発明に用いられる樹脂成形体としては、その種類は問わず、公知の樹脂が使用可能である。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を問わず種々の樹脂が使用可能である。具体的にはポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特にポリカーボネート樹脂のように、それ自体に耐候性がなく、屋外で使用すると変色、変質、劣化等を生じ易い樹脂の成形品であれば、本発明の効果を最大限に発揮できる。
【0030】
本発明の塗料組成物を樹脂成形体表面へコーティングする方法としては、特に限定がなく、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコートなど、公知の方法が採用できる。
【0031】
本発明の塗料組成物を硬化してなる硬化塗膜の膜厚は、1〜30μmが好ましい。硬化塗膜の膜厚が1μm未満では、特に基材である樹脂成形体の表面劣化の防止効果が小さく、30μmを超えると基材との密着性の低下やクラックの発生が見られるようになるので好ましくない。
【0032】
本発明の塗料組成物の硬化手段としては、加熱処理によって行う。加熱処理温度としては、室温以上200℃以下、好ましくは40℃以上150℃以下であるが、使用する基材樹脂の耐熱性や熱変形性等に応じて適宜調整すればよい。加熱時間は、加熱温度により異なるが、数分から数時間程度である。
【0033】
本発明の塗料用組成物を採用すると、従来のウレタン塗膜よりも、耐擦傷性、耐磨耗性、耐薬品性および耐侯性などの各種特性におけるバランスに優れたウレタン塗膜を提供することができる。しかも、長期間屋外に晒されていても、これらの耐性は良好に担保される。したがって、適用対象である樹脂成形体の劣化を長期かつ屋外での使用環境下においても防止できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定さない。なお、各表において各成分の配合割合は、重量部で示した。
【0035】
各実施例及び比較例で使用した各成分は次の通りである。
<(a)低分子ポリオール>
a−1;トリメチロールプロパン(固形分100%、水酸基数3、分子量135、水酸基価1,254mg・KOH/g)
a−2;シクロヘキシルジメタノール(固形分100%、水酸基数2、分子量144、水酸基価778mg・KOH/g)
a−3;グリセリン(固形分100%、水酸基数3、分子量92、水酸基価1,800mg・KOH/g)
a−4;ポリカプロラクトンテトラオール(固形分100%、水酸基数4、分子量426、水酸基価525mg・KOH/g、Perstorp社製Polyol4525)
<(b)セルロースアセテートブチレート>
b−1; セルロースアセテートブチレート(固形分100%、数平均分子量(Mn)57,000、理論水酸基価33mg・KOH/g、イーストマン社製CAB−500−5)
b−2; セルロースアセテートブチレート(固形分100%、数平均分子量(Mn)70,000、理論水酸基価59mg・KOH/g、イーストマン社製CAB−381−20)
<(c)シリカ粒子>
c−1;メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(固形分30%、平均粒子径10〜20nm、日産化学社製MIBK−ST)
c−2;酢酸エチル分散シリカゾル(固形分30%、平均粒子径10〜20nm、日産化学社製EAC−ST)
<(d)ポリイソシアネート>
d−1;ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(固形分100%、NCO基含有率23.0%、旭化成ケミカル社製デュラネートTPA−100)
d−2;ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(固形分80%、有効NCO基含有率15.5%、住化バイエルウレタン社製デスモジュールXP2679)
<(e)紫外線吸収剤>
e−1;ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製TINUVIN479)
e−2;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製TINUVIN384−2)
<(A)水酸基価または/および分子量基準を満たさない低分子ポリオール>
A−1;ポリカーボネートポリオール(固形分100%、水酸基数2、数平均分子量(Mn)500、水酸基価224mg・KOH/g、旭化成ケミカルズ社製T5650E)
A−2;ポリエステルポリオール(固形分100%、水酸基数2、数平均分子量(Mn)387、水酸基価290mg・KOH/g、日本ポリウレタン工業社製ニッポラン800)
A−3;ポリカプロラクトントリオール(固形分100%、水酸基数2、分子量795、水酸基価215mg・KOH/g、Perstorp社製PolyolR3215)
<希釈溶剤>
メチルイソブチルケトン/ジアセトンアルコール=1/1(重量比)
【0036】
(実施例1〜19、比較例1〜13)
上記(a)〜(e)成分、(A)成分および希釈溶剤を表1〜4に示す割合で配合し、さらにそれぞれ添加剤として硬化触媒のジラウリル酸ジ−n−ブチルスズ0.06g(成分(d)の0.6重量%)、光安定化剤(BASF社製TINUVIN152)0.5g、およびレベリング剤(ビックケミー社製BYK375)0.8gを加えて実施例1〜19、比較例1〜13の塗料組成物を調整した。各塗料組成物を、ポリカーボネート樹脂板(三菱ガス化学社製ユーピロン)上に、硬化後の膜厚が10μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、115℃に設定したオーブンにて20分間熱硬化した。作製した試験片を室温下で数日放置し、下記の試験方法にて評価を行った。それぞれの評価結果を表5〜8に示す。
【0037】
(1)透明性;ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製NDH5000)により測定したヘイズ(%)により透明性の評価基準とした。
(2)密着性;JIS K 5400 8.5.2に準じ、碁盤目テープ法にて試験片の塗膜を貫通して素地面に達する切り傷を間隔1mmで碁盤目状につけて、ます目の数100とし、この碁盤目の上に粘着テープを貼り、次いでこのテープを剥がした後の塗膜の密着状態を目視により観察し、塗膜が剥離せずに残存しているます目の数で密着性の評価基準とした。
(3)耐擦傷性;荷重13.7KPaを載せたスチールウール(#000)を試験片の塗膜面上に置き、ラビングテスターで11往復させる試験条件で試験した後、上記(1)の透明性試験と同様にヘイズ(%)を測定すると共に、下記の評価基準で外観を評価した。
○;試験前のヘーズから試験後のヘーズを引いた値が3以下
×;試験前のヘーズから試験後のヘーズを引いた値が3よりも大きい
(4)耐摩耗性;テーバー磨耗試験機を用い、磨耗輪にCS10F、500回転×500g荷重の条件で磨耗試験を行い、上記(1)の透明性試験と同様にヘイズ(%)を測定した。
(5)鉛筆硬度;JISK5400に基づき、鉛筆引っかき硬度試験機(安田製作所製No.553)を用い、荷重1kgをかけて塗膜面に鉛筆をスライドさせ、塗膜に傷が付かない一番硬い鉛筆の硬度を調べた。尚、膜が裂けた場合は傷と判断し、それ以外の凹みや線跡は傷ではないと判断した。
(6)耐熱性;試験片を120℃の雰囲気中に240時間放置し、塗膜クラックの有無を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。また、観察終了後の試験片の塗膜について、上記(2)塗膜の密着性試験法により試験し、密着性を評価した。
○;クラックが認められない ×;クラックが認められる
(7)耐薬品性;試験片の塗膜面上に、耐酸性試験用試薬(0.1mol/lのHCl水溶液)および耐アルカリ性試験用試薬(0.1mol/lのNaOH水溶液)のそれぞれを滴下し、25℃の雰囲気中で24時間放置した後塗膜の外観変化を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。試験片の塗膜表面上に、ハイオクガソリンを滴下し、50℃の雰囲気中で1時間放置した後塗膜の外観変化を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。試験片の塗膜表面上に、ブレーキ油(ブレーキフルード2500H,TOYOTA)を滴下し、25℃の雰囲気中で24時間放置した後塗膜の外観変化を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。
○;塗膜に変化が認められない ×;塗膜にふくれ、曇り等の変化がみられる
(8)耐候性;促進耐候性試験機(スガ試験機社製、メタリングウエザーメーターM6T型)を用い、照射強度1kW/m2、ブラックパネル温度63±3℃、湿度50%RH、60分中に降雨9分を含む条件で試験し、塗膜およびプラスチック樹脂板の外観、および塗膜クラックの有無を下記の評価基準で評価した。
外観:○;塗膜およびポリカーボネート樹脂板に黄変等の異常が認められない
×;塗膜およびポリカーボネート樹脂板に黄変等の異常が認められる
クラック:○;塗膜クラックが認められない ×;塗膜クラックが認められる
また、評価終了後の試験片について、MINOLTAスペクトロフォトメーターCM3500dを用いて試験片のYI値(黄色度)を測定し、黄色度の変化を評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
表5〜8の結果から、セルロースアセテートブチレート、シリカ粒子、ポリイソシアネートおよび特定の低分子ポリオールとを特定量組み合わせたウレタン塗料組成物によって、従来のウレタン塗料よりも、耐擦傷性、鉛筆硬度、耐磨耗性および耐薬品性などの各種特性におけるバランスに優れた硬化膜を提供できることがいえる。さらに、塗膜形成成分と所定量の紫外線吸収剤の配合により、人工的に材料劣化を促進させる耐侯性試験機を用いた場合においても、良好な外観や透明性が維持されており、適用対象である樹脂成形体の劣化を長期かつ屋外での使用環境下においても防止できることが確認された。