【0005】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る層数決定装置21の構成について、
図1〜4を参照して説明する。
図1に示すように、層数決定装置21は、2次元原子層薄膜に電子線を照射し、発生した反射電子または2次電子の強度を測定する測定部23と、測定部23が測定した2次電子の強度を元に2次元原子層薄膜の層数を決定する層数決定部25を有しており、測定部23と層数決定部25で層数決定機構を構成している。
測定部23は例えばSEM(走査型電子顕微鏡)であり、
図2に示すように、電子線を照射する照射部31、反射電子または2次電子を検出して電子像を取得する検出部33、および測定部23を外部と接続する外部接続部35を有し、照射部31、検出部33、外部接続部35はバス37等で接続されている。
層数決定部25は例えばコンピュータであり、層数決定部25をケーブル19等で外部と接続するための外部接続部41、各構成要素を駆動制御するためのCPU、ROM、RAM等を備えた制御部43、各構成要素を動作させるためのプログラムを有する記憶部45、測定条件等の入力を行うための、マウス、キーボード等の入力部47、測定結果を出力するための出力部48を有し、各構成要素はバス50で接続されている。
図3に示すように、記憶部45は、層数決定装置21を動作させるための層数決定プログラム49および層数決定に用いる検量線のデータである検量線データ51を有している。
図4に示すように、検量線データ51は、反射電子または2次電子の強度(ここでは基板との相対強度)と層数の関係を示すデータであり、
図4に示すように直線関係を有している。なお、後述するように、この直線関係は特定の条件(特に加速電圧)で電子線を照射した場合にのみ得られる。
次に、層数決定装置21を用いた2次元原子層薄膜の層数決定方法について、
図5〜
図13を参照して説明する。
なお、ここでは2次元原子層薄膜として、グラフェンを例にして説明する。
まず、層数決定方法の概略について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、まず、層数決定装置21は、測定部23を用いて層数未知のグラフェンに電子線(1次電子)を照射する(S1)。
次に、
図5に示すように、層数決定装置21は、層数決定部25を用いて、電子線の照射によって生じた反射電子または2次電子の強度から層数未知のグラフェンの層数を決定する(S2)。
次に、層数決定方法の詳細について、
図6〜
図13を参照して説明する。
まず、
図6に示すように、制御部43は、記憶部45に格納された層数決定プログラム49を起動し、グラフェンの検量線データ51を取得する(S101、検量線データ51の取得方法は後述する)。
ここで、検量線データ51が
図4に示すような直線性を有する理由について
図7を参照して説明する。
図7において、1は基板、2はグラフェンを表し、10はグラフェンがない場合の2次電子発生の過程を表すのに対し、11、12、13、14は、それぞれグラフェンが1層、2層、3層、4層ある場合の2次電子発生の過程を示す。S1で説明したように、基板1上に(1次)電子線3が照射されると、1次電子は基板表層内部4で衝突を繰り返し2次電子が発生し、その一部が基板1から抜け出し、2次電子5、6、7、8、9となって検出部33の図示しない検知器へ到達し、2次電子が計数される。1次電子の運動エネルギーは1000eV(電子ボルト)程度と、2次電子の運動エネルギー(数eV)と比較して大きいため、グラフェンによる遮蔽の影響を殆ど受けずに基板表層内部4まで到達する。これに対し、2次電子の運動エネルギーは前述のように数eVであり、1次電子の運動エネルギーより小さいため、グラフェンによる遮蔽効果が大きく、2次電子の強度はグラフェンを通過すると減衰する。2次電子強度が減衰する箇所はグラフェンが1層、2層、3層、4層の場合、それぞれ15、16、17、18であり、減衰は層が増えるに従い増加する。これらの関係を数式で表すと以下となる。まず、簡単のため、グラフェンがない場合10の2次電子5の強度を1に規格化する。また、グラフェン2と基板1の2次電子発生能は一般に相違するので、グラフェン2と基板1の2次電子発生能の比をαとする。すると、先程述べたグラフェン通過に伴う減衰量はグラフェン層数に比例すると考えられるので、この減衰量をΔとすると、グラフェンが1層、2層、3層、4層の場合の11、12、13、15では、2次電子6、7、8、9の強度は、それぞれ、α−1Δ、α−2Δ、α−3Δ、α−4Δとなる。さらに、グラフェン層数がn層ならば、その2次電子強度はα−nΔ(nは自然数)である。これにより、グラフェンSEM像の2次電子強度とグラフェン層数の間の直線性が現れる理由が説明される。
なお、検量線データ51が既に取得済みの場合はS101は不要である。
次に、
図6に示すように、層数未知のグラフェン、即ち層数を決定したいグラフェンを基板上に配置する(S102)。
グラフェンは、例えば、天然グラファイトを粘着テープで薄く剥がすことによって得られる。グラフェンの原料としては上記の天然グラファイトのほか、HOPG(Highly Oriented Pyroritic Graphite)、Kish(キッシュ)グラファイト、CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長)グラフェン、SiC(炭化ケイ素)熱分解エピタキシャル成長グラファイトを用いることができる。
また、基板には、Si基板、GaAs(ガリウムヒ素)など半導体基板、サファイヤ、マイカ、ガラスなどの絶縁体基板、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリエチレンなどのプラスチック基板、銅、スチール、アルミニウムなどの金属基板を用いることができる。また、観察の妨げにならないように、基板は予め、洗浄や酸素プラズマなどで清浄化することが望ましい。CVDグラフェン、SiC熱分解エピタキシャル成長グラファイトの場合、基板機械的な剥離・貼り付けのプロセスなしに成長基板をそのまま用いることも可能である。
次に、制御部43は層数決定プログラム49に基づき、所定の条件にて基板および基板上に配置されたグラフェンに電子線を照射するように指示し、照射部31は電子線を照射する(S103、(a)、電子像取得部)。
この際、2次電子加速電圧は反射電子または2次電子の強度に影響するため、検量線データ51のように、グラフェンの層数と反射電子または2次電子の間に直線関係が得られる範囲の加速電圧を選択する。
一例として、グラフェン・グラファイトSEM像の1次電子加速電圧依存性をグラフにしたものを
図8に示す。
図8の縦軸は下地のSiO
2に対するグラフェン片(2層)およびグラファイト片(>>10層)のSEM像の相対2次電子強度、横軸はSEM観察に用いた1次電子の加速電圧(V
acc)である。なお、グラフェン等の2次電子強度を基板表面の2次電子強度で除し、相対値として規格化することで、1次電子の絶対強度や2次電子検知器の感度特性などの装置関数の影響を排除している。
図8中の(a)に示すように、V
accが約2kV以下でグラフェンは2次電子強度の相対値が1以上であり(斜線部)、(b)で示すように、グラファイト片はどのV
accでも相対値が1より小さい。また、加速電圧が低い程、2次電子強度の相対値が高くなる様子が見て取れる。上記の例ではグラフェンの層数は1層と2層の場合のみであるが、別の観察によると、V
acc<2.0kVの場合、グラフェンの層数が十数層程度までグラフェンは下地のSiO
2と比較して2次電子強度が相対的に高い。SEM観察時にグラフェンが一際明るく観察されるので、グラフェンとグラファイトとが共存している状況で、グラフェンをひと目で識別できる。
グラフェンのSEM像で重要な点は、ある特定の1次電子加速電圧の範囲でグラフェンをSEM観察する場合、グラフェンの層数が増加するに従い、グラフェンSEM像の2次電子強度が減少することである。これはグラフェンの2次電子強度を指標とすることで、グラフェンの層数を決定できること、具体的には
図4に示すような検量線データ51が得られることを意味する。詳細は後述するが、
図4に示す検量線データ51のように、グラフェンSEM像の2次電子強度と層数の間に直線関係が見られるのは、例えば、グラフェンを配置する基板がSiO
2膜付Si基板の場合は0.5kV<V
acc<1.6kV、サファイヤ基板の場合は0.5kV<V
acc≦2.0kV、マイカ基板の場合は0.5kV≦V
acc≦2.0kV、の範囲の1次電子加速電圧を用いる場合である。他の基板でも、1次電子の加速電圧が概ね、0.5kV<V
acc<2.0kVの範囲にある場合に直線関係が見られる。即ち、S103では、制御部43はV
accが上記範囲内になるように加速電圧を制御する。
次に、制御部43は検出部33を制御してグラフェンの2次電子または反射電子像(以下、SEM像と略す)を取得する(S104、(a)、電子像取得部)。
90nm膜厚のSiO
2膜で覆われたSi基板上のグラフェン片(1層グラフェン1、1層グラフェン2、2層グラフェン)ならびにグラファイト片の電子像を模した図の例を
図9に示す、また、参考のため、同じグラフェンを光学顕微鏡で観察した際の光学顕微鏡像を模した図を
図10に示す。
なお、
図9の左肩の数値はSEM取得時の1次電子加速電圧を示し、(a)はV
acc=0.5kV、(b)はV
acc=0.7kV、(c)はV
acc=1.0kV、(d)はV
acc=1.2kV、(e)はV
acc=1.5kV、(f)はV
acc=2.0kV、(g)はV
acc=3.0kV、(h)はV
acc=5.0kV、(i)はV
acc=10kVの場合である。
図9から明らかなように、SEM像(電子像)の顕著な点は、V
acc<2.0kVの場合、グラフェン片が下地のSiO
2より明るく観察される一方で、グラファイト片はどのV
accでも下地のSiO
2より暗く観察されることである。なお、ここで述べる明るさとはSEMの2次電子(反射電子を含む、以下同じ)強度のことを指す。
また、
図10(a)および(c)に示すように、相対反射光強度(グラフェン層数に相当)と相対頻度の関係から、
図10(b)の左端の白色の点線で囲まれた部分のグラフェンは1層、
図10(b)の左端から2番目の白色の点線で囲まれた部分のグラフェンは2層と同定される。なお、光学的グラフェン層数の決定には、下地のSiO
2の反射光強度を100%とした時、グラフェンの反射光強度は層数が1層増える毎に6.45%ずつ減少することを用いている。
図9と
図10から明らかなように、
図10(b)の光学顕微鏡像を模した図の場合、1層グラフェン2付近には3本の1層グラフェンしか視認できないが、
図9(a)〜(f)のSEM像を模した図の場合では、上記3本に加え、少なくとも5本の細いグラフェン片(幅:〜500nm以下)が確認できる。この観察結果は光学顕微鏡では光学限界のために光の波長以下のグラフェンを評価できないが、SEMならばナノサイズのグラフェンも評価できることを物語る。本発明に依れば、後述の画像解析を行うことで、ナノサイズのグラフェンの層数決定を行うことも可能である。また、
図9は同じグラフェン試料を様々な1次電子加速電圧で取得しているが、グラフェン試料に損傷は見られず、非破壊でグラフェンを評価できることを示している。
次に、
図6に示すように、基板と層数未知のグラフェンの電子像の相対強度比を求める(S105、(b)、強度比解析部)。
具体的には、グラフェンの2次電子強度を基板表面の2次電子強度で除し、相対値として規格化することによりグラフェンの電子像の相対強度比を求める。
このように、相対強度比を用いることで、1次電子の絶対強度や2次電子検知器の感度特性などの装置関数の影響を排除することができる。
次に、
図6に示すように、相対強度比を検量線に当てはめ、グラフェンの層数を決定する(S106、(c)、層数決定部)。
具体的には、
図4に示す検量線データ51のグラフ線上における、相対強度比に対応する層数をグラフェンの層数とする。
以上が層数決定方法である。
ここで、S101の検量線データ51の取得方法について、
図11を参照して説明する。
まず、層数が異なる複数のグラフェンを用意し、これらを基板に貼り付ける(S201)。基板は層数未知のグラフェンを貼り付ける基板と同じ材料のものを用いる。
次に、可能な場合は、光学測定、ラマン測定、AFM測定等により各グラフェンの層数を決定する(S202、(g)、標準層数決定部)。
具体的には、光学測定の場合、基板とグラフェンの反射光強度から層数を決定する。
例えば、基板をSiO
2とした場合、SiO
2の反射光強度を100%とした時、グラフェンの反射光強度は層数が1層増える毎に6.45%ずつ減少するため、グラフェンの反射光強度のSiO
2の反射光強度に対する減少の度合いからグラフェンの層数を決定する。
なお、S202は、検量線データ51の取得を簡略化するための予備的なプロセスなので、行わなくても良い。
次に、
図11に示すように、制御部43は層数決定プログラム49に基づき、S103と同じ条件にて基板および基板上に配置されたグラフェンに電子線を照射するように指示し、照射部31は電子線(1次電子)を照射する(S203、(d)、標準電子像取得部)。
次に、制御部43は検出部33を制御してグラフェンの反射電子または2次電子像(SEM像)を取得する(S204、(d)、標準電子像取得部)。
次に、
図11に示すように、基板とグラフェンの電子像の相対強度比を求める(S205、(e)、標準強度比解析部)。相対強度比を求める方法はS105と同様である。
次に、
図11に示すように、制御部43はグラフェン層数が既知か否か(即ちS202を行っているか)を判断し、既知の場合はS207に進み、未知の場合S208に進む(S206)。
グラフェン層数が既知の場合は、制御部43はグラフェン層数と相対強度比の関係をプロットして最小2乗方法等でフィッティングすることにより検量線データ51を作成し、記憶部45に保存する(S207、(f)、検量線作成部)。
グラフェン層数が未知の場合、制御部43は相対強度比の減衰量Δを求める(S208、(f)、検量線作成部)。
具体的には、各グラフェンについて、各々の2次電子相対強度を1から順に自然数で除し、ある共通の値を抽出し、それを減衰量Δとする。
例えば、減衰量Δの値は、基板がSiO
2膜付Si基板の場合で約5.8×10
−2、サファイヤ基板の場合で約1.8×10
−2、マイカ基板の場合で約3.3×10
−2である。Δの値を求める際、基板表面の2次電子強度に対するグラフェンの2次電子強度の相対値を用いることで、SEMの1次電子の絶対強度、2次電子の捕捉効率、2次電子検知器の感度特性などの装置関数の影響を排除することができるので、他のSEMを用いても同じ結果が得られる。この点は本発明の一般性・汎用性を証明する重要な証拠である。
次に、
図11に示すように、制御部43は減衰量Δからグラフェンの層数を決定する(S209、(f)、検量線作成部)。
具体的には以下のようにして、グラフェンの層数を決定する。
まず、グラフェン2と基板1の2次電子発生能の比をαとすると、前述のように、グラフェン通過に伴う減衰量Δはグラフェン層数に比例するため、グラフェンが1層、2層、3層、4層…n層の場合の2次電子の強度は、それぞれ、α−1Δ、α−2Δ、α−3Δ、α−4Δ…α−nΔとなる。
αは基板の種類が決まれば決まるため、α−nΔより、グラフェンの層数を決定する。
グラフェンの層数が決定されると、制御部43はグラフェン層数と相対強度比の関係をプロットして最小2乗方法等でフィッティングすることにより検量線データ51を作成し、記憶部45に保存する(S207、(f)、検量線作成部)。
以上が検量線の作成方法である。
このように、本実施形態によれば、層数決定装置21は、グラフェンに電子線を照射し、発生した反射電子または2次電子の強度を測定する測定部23と、測定部23が測定した2次電子の強度を元に2次元原子層薄膜の層数を決定する層数決定部25を有し、グラフェンに電子線を照射し、発生した反射電子または2次電子の強度からグラフェンの層数を決定している。
そのため、層数決定装置21は、従来よりも汎用的にグラフェンの層数を決定することができる。
【実施例】
【0006】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
SEMを用いたグラフェン層数の決定方法(本発明)と光学的手法によるグラフェン層数決定法(従来例)により層数未知のグラフェンの層数の決定を試みた。
まず、SEMを用いたグラフェン層数の決定を以下の手順で行った。
まず、グラファイトからグラフェンを粘着テープで剥ぎ取り、300nm膜厚のSiO
2膜付Si基板上に貼り付けた。
次に、グラフェンのSEM像を取得し、層数の決定を行った。
なお、画像解析を行うため、SEM像はデジタルデータとして取得し、画像ピクセルごとの256階調の輝度が2次電子強度に相当するようにした。
結果を
図12に示す。
なお、
図12(a)はSEM像を模した図、
図12(b)、(c)はそれぞれ
図12(a)の矩形で囲んだ部分に対する、横軸が2次電子強度、縦軸が頻度のヒストグラムである。また、
図12(d)は下地のSiO
2表面の2次電子強度に対するグラフェンの2次電子強度の相対値とグラフェン層数の関係であり、図中の直線は検量線を表す。この検量線は、様々な層数のグラフェンSEM像の解析から、減衰量:Δを見積もることにより得たものである。
図12(a)から明らかなように、定性的には、グラフェンは明瞭なSEM像として観察された。また、
図12(b)、(c)から、グラフェンの強度が層数毎に離散的に分布し、異なる層数のグラフェンは明瞭に分離されたヒストグラムとして、定量的に評価できることが分かった。すなわち、
図12(d)の検量線を用いると、
図12(a)のグラフェン1において矩形で囲まれた部分には層数が2層、3層のグラフェンが含まれ、グラフェン2において矩形で囲まれた部分には1層、3層、5層のグラフェンが含まれていることが分かる。
次に、上記の試料の光学顕微鏡を取得し、層数の決定を行った。
結果を
図13に示す。
図13(a)は光学顕微鏡像を模した図、
図13(b)、(c)はそれぞれ
図13(a)の矩形で囲んだ部分の反射光強度の頻度、
図13(d)は下地のSiO
2表面の反射光強度に対するグラフェンの反射強度の相対値とグラフェン層数の関係を示す。
図13(d)に示すように、従来技術の光学的手段ではグラフェンが6層程度までしか評価できないことが分かった。
以上の結果より、本発明のSEM像を用いた層数の決定方法では10層以上のグラフェン層数の評価が可能であり、SEM像を用いるグラフェン層数の決定方法の、光学的手法によるグラフェン層数決定法に対する有効性・優位性が証明された。
(実施例2)
SiO
2膜付きSi基板上で、SEMを使用してグラフェン層数を決定する際に、使用すべき1次電子加速電圧の有効範囲を特定するため、様々な1次電子加速電圧:V
accを用いて、グラフェンの基板表面に対する2次電子強度の相対値とグラフェン層数の関係を調べた。グラフェン試料は実施例1と同様の方法で用意し、SEM測定は、SiO
2膜厚が300nm、グラフェン層数が1層から11層、V
acc=0.5〜20kVの条件で行った。上記方法でグラフェンSEM像の解析を行い、
図14に示す結果を得た。
図14に示すように、グラフェンの2次電子強度の相対値とグラフェン層数の間に広い層数範囲で直線性が確保できるのはV
acc=0.8kV、1.0kV、1.2kV、1.4kVの場合であった。一方、V
acc=0.5kVでは非線形性が強く現れ、V
acc=1.6kVではグラフェンが6層程度まで線形であるが、7層以上で非線形となっていた。従って、SEMのみで検量線データ51を求める場合、減衰量:Δは層数無依存を仮定しているので、V
accの有効範囲は0.5kV<V
acc<1.6kVとなった。しかしながら、光学的測定・ラマン測定・AFM測定を併用して層数を既知として検量線データ51を求める場合、Δを直接求める必要がないので、低加速電圧領域のV
acc<2.0kVがV
accの有効範囲であった。
(実施例3)
サファイヤ基板上で、SEMを使用してグラフェン層数を決定する際に、使用すべき1次電子加速電圧の有効範囲を特定するため、様々なV
accを用いて、グラフェンの基板表面に対する2次電子強度の相対値とグラフェン層数の関係を調べた。グラフェン試料は実施例1と同様の方法で用意し、SEM測定はグラフェン層数が1層から12層、V
acc=0.5〜20kVの条件で行った。上記方法でグラフェンSEM像の解析を行い、
図15に示す結果を得た。
図15に示すように、グラフェンの2次電子強度の相対値とグラフェン層数の間に直線性が確保できるのはV
acc=1.0kV、2.0kVの場合であった。V
acc=0.5kVでは2次電子強度の相対値は層数に殆んど依存しない。従って、サファイヤ基板を用いる場合、V
accの有効範囲は0.5kV<V
acc≦2.0kVであることが分かった。
(実施例4)
マイカ基板上で、SEMを使用してグラフェン層数を決定する際に、使用すべき1次電子加速電圧の有効範囲を特定するため、様々なV
accを用いて、グラフェンの基板表面に対する2次電子強度の相対値とグラフェン層数の関係を調べた。グラフェン試料は実施例1と同様の方法で用意し、SEM測定はグラフェン層数が1層から20層、V
acc=0.5〜20kVの条件で行った。上記方法でグラフェンSEM像の解析を行い、
図16に示す結果を得た。
図16に示すように、グラフェンが12層までの範囲で、グラフェンの2次電子強度の相対値とグラフェン層数の間に直線性が現れるが、12層を越えると、層数依存性が見られなくなっていた。従って、マイカ基板を用いる場合、V
accの有効範囲は0.5kV≦V
acc≦2.0kVであることが分かった。
以上、本発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、本実施形態および実施例では2次元原子層薄膜として、グラフェンを例にして説明および実験を行ったが、2次元原子層薄膜であれば、グラフェン以外の材料にも本発明を適用可能である。
また、本実施形態では層数決定装置21として、SEMとコンピュータを有する装置を例示したが、電子線を照射して2次電子または反射電子の強度を解析可能なものであれば、上記構成には限定されない。
また、本出願は、2010年6月25日に出願された、日本国特許出願第2010−145314号からの優先権を基礎として、その利益を主張するものであり、その開示はここに全体として参考文献として取り込む。