特許第5874993号(P5874993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874993
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】バイオマスの前処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20160218BHJP
   C12P 19/02 20060101ALN20160218BHJP
【FI】
   B09B3/00 304Z
   !C12P19/02ZAB
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-235045(P2010-235045)
(22)【出願日】2010年10月20日
(65)【公開番号】特開2012-86154(P2012-86154A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年10月17日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人科学技術振興機構 研究成果最適展開支援事業 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】仁宮 一章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲司
(72)【発明者】
【氏名】清水 宣明
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−189277(JP,A)
【文献】 特開2009−179913(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/133269(WO,A1)
【文献】 特表2005−506401(JP,A)
【文献】 特表2009−520846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
C08B 16/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系バイオマスを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドから選択される少なくとも1種からなるイオン液体に浸漬し、前記イオン液体に浸漬された木質系バイオマスに対し連続して15分以上の超音波照射による前処理を行い、前記前処理後の木質系バイオマスから前記イオン液体を取り除くことで、その後の糖化反応を促進させることを特徴とするバイオマスの前処理方法。
【請求項2】
前記超音波照射は、加熱をせずに室温で最大120分間照射することを特徴とする請求項1記載のバイオマスの前処理方法。
【請求項3】
前記木質バイオマスは、ケナフであり、前記イオン液体は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートであることを特徴とする請求項1または2記載のバイオマスの前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマスを糖化、発酵する際の前処理方法に関するものであり、イオン液体と超音波照射とを組み合わせた新規な前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルな資源であるリグノセルロース系バイオマスから糖化酵素反応により糖を取り出し、その糖からエタノールを微生物発酵により生産するという、いわゆるバイオエタノール生産が期待されている。特に、前記バイオエタノール原料としては、ケナフが注目されており、その利用法が検討されている。ケナフは、暖地型一年草植物であり、生育が早く、広範囲の気候・土壌で生育する。
【0003】
ところで、前記ケナフは、靱皮部と芯部とからなり、前者はリグニン含有量が少なく製紙原料等に使用されるが、後者はリグニン含有量が多いリグノセルロース系バイオマスであり、これを有効利用するには課題が多い。リグノセルロース系バイオマスの主成分は、セルロースやヘミセルロース等の糖成分と、リグニンからなるものであり、セルロースの構成単糖であるグルコースは、酵母によるエタノール発酵を行う際の原料となるが、セルロース・ヘミセルロース繊維を取り巻くリグニン構造や、セルロース繊維同士の水素結合による結晶化が、糖化酵素によるセルロース糖化反応の障壁となっている。
【0004】
したがって、リグノセルロース系バイオマスを効率的に糖化するには、セルロース繊維を覆っているリグニン構造の緩和、セルロースやヘミセルロースの非結晶化が進むような糖化前処理が必要となり、リグノセルロース系バイオマスの糖化前処理に関する検討が各方面で進められている。
【0005】
具体的には、バイオマスを水溶液中に懸濁させて超音波を照射する方法(特許文献1等を参照)や、バイオマスをイオン液体に溶解させ加熱することで後の糖化反応を促進する方法(特許文献2や特許文献3等を参照)等が既に提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、バイオマスをアンモニアを含む水溶液と接触させ(ステップa)、得られた生成物を発酵性糖を生成せしめるのに適切な条件下で糖化酵素コンソーシアムと接触させ(ステップb)、さらに適切な発酵条件下で適切な生体触媒と接触させてエタノールを生成せしめる(ステップc)ことを含んでなるエタノールの製造方法が開示されている。特許文献1には、ステップaの前または間等に、超音波等のエネルギーを適用することも記載されている。
【0007】
一方、特許文献2には、セルロース含有材料の処理方法であって、前記セルロース含有材料と疎水性イオン液体とを、前記セルロース含有材料中に前記疎水性イオン液体を浸透させるように接触させる工程を備える処理方法が開示されており、特許文献3には、木質系バイオマスをイオン液体に混合することで、主として当該木質系バイオマス由来のセルロース及び/又はヘミセルロースを当該イオン液体に溶解させる工程と、当該イオン液体から残査成分を分離する工程とを含む木質系バイオマスの処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008−535524号公報
【特許文献2】特開2010−220490号公報
【特許文献3】特開2009−189277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記各特許文献記載の方法では糖化反応促進効果(前処理バイオマスからのグルコースの可溶化率等)が十分とは言えず、リグノセルロース系バイオマスの有効利用が十分に果たされているとは言えないのが実情である。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、木質バイオマスの前処理後の糖化反応促進効果を飛躍的に高めることができ、リグノセルロース系バイオマス等の木質系バイオマスを十分に有効利用し得る新規なバイオマスの前処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために種々の研究を重ねてきた。その結果、イオン液体と超音波照射の組み合わせにおいて、特異的に糖化反応促進効果が向上し、従来法を大きく上回る糖化反応促進効果が得られることを見出すに至った。
【0012】
本発明は、前記知見に基づいて完成されたものであり、木質系バイオマスを1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドから選択される少なくとも1種からなるイオン液体に浸漬し、前記イオン液体に浸漬された木質系バイオマスに対し連続して15分以上の超音波照射による前処理を行い、前記前処理後の木質系バイオマスから前記イオン液体を取り除くことで、その後の糖化反応を促進させることを特徴とする。本発明は、前記超音波照射は、加熱をせずに室温で最大120分間照射することを特徴とする。本発明は、前記木質バイオマスは、ケナフであり、前記イオン液体は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェートであることを特徴とする。
【0013】
木質系バイオマスをイオン液体に浸漬し、超音波照射による前処理を行うと、超音波によりキャビテーションバブルが生成し、このキャビテーションバブルの圧壊時に物理的なエネルギーが加わって局所的な高温・高圧場が形成され、リグニン構造が緩和する。また、イオン液体がリグノセルロースを溶解し、アニオンとセルロースの間に新たな結合が形成され、非結晶化リグノセルロースとなる。これらの現象により、結果として高い糖化反応促進効果が得られ、その後の糖化反応において糖化効率が向上するものと考えられる。
【0014】
このように、木質系バイオマス(リグノセルロース系バイオマス等)の糖化前処理として、イオン液体に溶解させ、超音波を照射し続ける方法について報告されたことはなく、ましてや、それによる酵素糖化促進効果について報告されたことはない。なお、前記特許文献2の段落0045や特許文献3の段落0029に超音波処理に関する記載があるが、いずれも前処理を開始するに先立ってイオン液体とバイオマスとを均一に混合するために一時的に超音波を用いたに過ぎず、超音波を継続的に照射し前処理を行うことに関しては、いずれの特許文献にも記載されていない。また、連続超音波照射による糖化促進効果についても何ら認識されていない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、木質バイオマスの前処理後の糖化反応促進効果を飛躍的に高めることができ、その後の糖化反応において糖化効率を大幅に向上することができる。したがって、本発明によれば、リグノセルロース系バイオマス等の木質系バイオマスを十分に有効利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例で使用した処理装置の概略構成を示す図である。
図2】実施例で使用した各イオン液体のカチオンとアニオンを示す表である。
図3】前処理時間と前処理後のセルロースの回収率の関係を示す図あり、(a)はイオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EmimOAc)を用いた場合、(b)はイオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EmimCl)を用いた場合、(c)はイオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(EmimDEP)を用いた場合、(d)はイオン液体として1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)を用いた場合、(e)はイオン液体として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(BmimCl)を用いた場合、(f)はリン酸緩衝液を用いた場合である。
図4】前処理時間と前処理バイオマスからのグルコースの可溶化率の関係を示す図あり、(a)はイオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EmimOAc)を用いた場合、(b)はイオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EmimCl)を用いた場合、(c)はイオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(EmimDEP)を用いた場合、(d)はイオン液体として1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)を用いた場合、(e)はイオン液体として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドを(BmimCl)用いた場合、(f)はリン酸緩衝液を用いた場合である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用したバイオマスの前処理方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明は、木質バイオマスを糖化、発酵によりエタノールを生産する際の前処理方法に関するものである。したがって、前処理の対象となる木質バイオマスとしては、バイオエタノールの原料となるバイオマス全般に適用することが可能であるが、ケナフの芯部のように、リグニン含有量の多いリグノセルロース系バイオマスに適用して好適である。リグノセルロース系バイオマスは、セルロース繊維を覆っているリグニン構造の緩和、セルロースやヘミセルロースの非結晶化が難しく、このことが糖化を促進するための障壁となるが、本発明を適用することで、前記リグニン構造の緩和や、セルロース、ヘミセルロースの非結晶化を円滑に推進することが可能になる。
【0019】
本発明の前処理方法においては、先ず、リグノセルロース系バイオマス等の木質バイオマスをイオン液体に浸漬する必要がある。木質バイオマスを浸漬するイオン液体は、イオンのみからなり、100℃以下の温度(例えば常温)で液体の物質であり、常温融解塩とも称されるものである。本発明では、100℃以下で融解しているものであれば使用可能であり、有機塩、無機塩のいずれも使用可能である。具体的には、リグノセルロース系バイオマスに対して溶解性を示すイミダゾリウム塩(イミダゾリウム系イオン液体)が好適であり、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート等を例示することができる。
【0020】
ただし、後述の超音波照射を室温で行うことを考慮すると、使用するイオン液体は室温で液体であることが好ましい。前記1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテートや1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート等は、室温で液体のイオン液体である。また、前記1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドや1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド等は、室温では固体であるが、例えば80℃程度に加熱すると粘性の高い液体となるので、超音波照射の際にはこの状態にして使用する。なお、前記粘性の高い液体状態は、加熱後、数時間は維持されるので、超音波照射に際に積極的に加熱する必要はない。
【0021】
イオン液体に対する木質バイオマスの割合も任意であり、例えば木質バイオマスの含有量が5質量%程度となるようにイオン液体に木質バイオマスを浸漬すればよい。イオン液体に木質バイオマスを浸漬する際には、常温で融解しているイオン液体の場合、特に加熱する必要はないが、融解温度が常温より高いイオン液体では、イオン液体の融解温度まで加熱することも可能である。
【0022】
木質バイオマスをイオン液体に浸漬した後、イオン液体に浸漬された木質系バイオマスに対し超音波を照射して前処理を行う。超音波は市販の超音波照射装置を用いて行えばよく、例えば出力200W、周波数24kHzの超音波を木質バイオマスに連続的に照射する。勿論、前記出力や周波数は任意に設定することができる。
【0023】
前記超音波照射による前処理時間も任意に設定することができるが、前処理時間が長いほど糖化促進効果が高いことから、15分以上とすることが好ましい。ただし、あまり前処理時間が長くなると生産性の低下に繋がり、また前処理時間を過剰に長くしても糖化促進効果がそれほど変わらなくなることから、120分以下とすることが好ましい。例えば、イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテートを用いた場合、最適前処理時間は30分間である。
【0024】
前記超音波処理による前処理は、室温(25℃)で行うことができ、この点が特許文献2記載の発明や特許文献3記載の発明との大きな相違である。特許文献2記載の発明や特許文献3記載の発明では、前処理は40℃以上150℃以下、あるいは100℃〜120℃程度の加熱により行っており、超音波処理は、イオン液体とバイオマスの混合の際に利用しても良いことが記載されているに過ぎない。本発明では、前処理を室温において超音波の連続照射により行い、加熱を必要としていない。
【0025】
以上の前処理の後、木質系バイオマスからイオン液体を取り除く。イオン液体には毒性が高いものもあり、この段階で取り除くことが好ましい。
【0026】
イオン液体に浸漬された木質バイオマスからイオン液体を取り除くには、例えば10倍量の水を加え、イオン液体に溶解していたバイオマスを水中に析出させる。次いで、遠心分離等により固液分離を行い、イオン液体水溶液を取り除く。1回の操作で不十分な場合、固液分離(遠心分離)の操作を複数回繰り返し行っても良い。
【0027】
イオン液体を取り除いた後、前処理済みバイオマスを乾燥し、糖化反応、さらにはエタノール発酵へと供する。糖化反応の方法としては、公知の技術をいずれも採用することができ、例えば酵素糖化等によればよい。酵素糖化は、前処理済みバイオマスを糖化酵素を用いてグルコースへと加水分解する方法である。この酵素糖化により得られたグルコースを未糖化残渣から分離し、エタノール発酵に用いる。エタノール発酵の方法も、公知の技術をいずれも採用することができる。
【0028】
前述の通り、本発明のバイオマスの前処理方法では、加熱を必要とすることなくリグノセルロース系バイオマス等の木質バイオマスを効率的に前処理することができ、しかも、従来法に比べて大きく上回る糖化反応促進効果を得ることが可能である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
【0030】
原料バイオマス
以下の各実験においては、約0.5mmに粉砕したパウダー状のケナフの芯部を用いた。原料バイオマス中の成分組成は、リグニン40質量%、セルロース35質量%、ヘミセルロース25質量%である。
【0031】
糖化前処理
(実施例1)
前記原料バイオマス0.25gをイオン液体5gに懸濁させ、超音波照射による前処理を行った。本実施例で使用したイオン液体は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EmimOAc)である。また、超音波照射は、図1に示すように、原料バイオマスを含むイオン液体(被処理物1)を入れた容器2にホーンタイプの超音波プロセッサ3を取り付け、前記容器2を水浴4中に設置して温度を室温(25℃)に保って行った。超音波プロセッサ3は、ヒールッシャーウルトラソニックス社製、商品名UP200S(ソノトロードS14)である。また、超音波照射における装置出力は200W、周波数は24kHzとし、超音波照射時間は0〜120分とした。
【0032】
(実施例2)
イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EmimCl)を用い、他は実施例1と同様にして糖化前処理を行った。
(実施例3)
イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(EmimDEP)を用い、他は実施例1と同様にして糖化前処理を行った。
(実施例4)
イオン液体として1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)を用い、他は実施例1と同様にして糖化前処理を行った。
(実施例5)
イオン液体として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(BmimCl)を用い、他は実施例1と同様にして糖化前処理を行った。
【0033】
各イオン液体のカチオン及びアニオンを図2に示す。
【0034】
(比較例1)
前記原料バイオマス0.25gをイオン液体5gに懸濁させ、加熱による前処理を行った。すなわち、原料バイオマスを含むイオン液体を入れた容器を110℃に保ったインキュベータに入れて加熱処理を行った。この時、撹拌速度は1200rpm、反応時間は0〜120分とした。使用したイオン液体は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EmimOAc)である。
【0035】
(比較例2)
イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EmimCl)を用い、他は比較例1と同様にして糖化前処理を行った。
(比較例3)
イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(EmimDEP)を用い、他は比較例1と同様にして糖化前処理を行った。
(比較例4)
イオン液体として1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)を用い、他は比較例1と同様にして糖化前処理を行った。
(比較例5)
イオン液体として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(BmimCl)を用い、他は比較例1と同様にして糖化前処理を行った。
【0036】
(比較例6)
本比較例では、イオン液体を用いず、原料バイオマス0.25gを5mMリン酸緩衝液(pH5.0)5mLに懸濁させ、実施例1〜5と同様の超音波処理を行った。
(比較例7)
本比較例では、イオン液体を用いず、原料バイオマス0.25gを5mMリン酸緩衝液(pH5.0)5mLに懸濁させ、比較例1〜5と同様の加熱処理を行った。
【0037】
イオン液体の分離回収
糖化前処理後のサンプルに、蒸留水を50ml添加し、イオン液体に溶解しているバイオマスを析出させた。その後、遠心分離(80×g,10分間)によって上清のイオン液体水溶液を取り除いた。これらの操作を3回行った後に得られる沈殿物を、90℃で一昼夜乾燥させ、前処理バイオマスとした。この前処理バイオマスを用いて、前処理の評価(組成解析ならびに酵素による糖化反応)を行なった。
【0038】
前処理済みバイオマスの組成解析
糖化前処理で得られた前処理バイオマスに含まれるセルロースの量を測定し、糖化前処理を施していない原料バイオマスに含まれるセルロース量に対する百分率として「セルロース回収率」を評価した。結果を図3に示す。
【0039】
なお、図3(a)〜(e)は、それぞれ同一のイオン液体を用いた場合の超音波照射と加熱によるセルロース回収率の相違を示すものであり、例えば、図3(a)は実施例1におけるセルロース回収率と比較例1におけるセルロース回収率の相違を対比して示す図である。また、図3(f)は、イオン液体を用いないコントロールに相当する比較例6,7のセルロース回収率を示す図である。
【0040】
これらの図面からも明らかなように、前処理後の「セルロース回収率」は、各実施例ならびに各比較例ともに、70〜80%あった。すなわち、糖化前処理工程でのセルロースのロスについては、本発明法(イオン液体中での超音波照射)と従来法(加熱処理やリン酸緩衝液中での処理)とで同等と言うことができる。
【0041】
前処理済みバイオマスの酵素糖化反応
糖化前処理で得られた前処理済みバイオマスを基質とした酵素糖化反応を行なった。糖化酵素にはメイセラーゼ(明治製菓社製,6200U/g)を用いた。糖化反応は、酢酸緩衝液(pH=5.0)5mlに基質濃度0.6(g/L),酵素濃度60U/mLになるように前記前処理済みバイオマス及び糖化酵素を加え、温度50℃,撹拌速度130rpmとし、48時間反応させることで行った。また、雑菌増殖を防ぐために、酵素反応液中にトルエンを1%加えた。
【0042】
酵素糖化反応により生じたグルコースをグルコースオキシダーゼ法(比色法)で測定し、前処理済バイオマスに含まれるセルロース量に対する百分率として「前処理バイオマスからのグルコースの可溶化率」を評価した。なお、バイオマス原料に含まれる全セルロース量は、バイオマス原料に濃度72w/v%の硫酸(HSO)を反応させ、蒸留水を適量加え、オートクレーブにかけた後、遠心分離した上清をグルコースオキシダーゼ法によりグルコース当量で測定した。結果を図4に示す。
【0043】
なお、図4(a)〜(e)は、それぞれ同一のイオン液体を用いた場合の超音波照射と加熱によるグルコースの可溶化率の相違を示すものであり、例えば、図4(a)は実施例1におけるセルロース回収率と比較例1におけるグルコースの可溶化率の相違を対比して示す図である。また、図4(f)は、イオン液体を用いないコントロールに相当する比較例6,7のグルコースの可溶化率を示す図である。
【0044】
図4に示すように、試験したいずれのイオン液体の場合でも、本発明を適用した各実施例では、120分の前処理で「前処理バイオマスからのグルコースの可溶化率」が50〜100%に達しており、コントロールである比較例6,7(リン酸緩衝液中ので超音波処理や加熱処理)やイオン液体中での加熱処理である比較例1〜5のそれを大きく上回っていた。
【0045】
従来、イオン液体中での加熱処理においても後の糖化反応が促進することが報告されていたが、その場合、約110℃で12時間程度加熱する必要があった。本発明の前処理法では、処理時間が1〜2時間程度でも「前処理バイオマスからのグルコースの可溶化率」が約80%に達しており、イオン液体と超音波照射を組み合わせた効果は極めて大きいと言える。
【符号の説明】
【0046】
1 被処理物(原料バイオマスを含むイオン液体)、2 容器、3 超音波プロセッサ、4 水浴
図1
図2
図3
図4