【実施例】
【0029】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
【0030】
原料バイオマス
以下の各実験においては、約0.5mmに粉砕したパウダー状のケナフの芯部を用いた。原料バイオマス中の成分組成は、リグニン40質量%、セルロース35質量%、ヘミセルロース25質量%である。
【0031】
糖化前処理
(実施例1)
前記原料バイオマス0.25gをイオン液体5gに懸濁させ、超音波照射による前処理を行った。本実施例で使用したイオン液体は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EmimOAc)である。また、超音波照射は、
図1に示すように、原料バイオマスを含むイオン液体(被処理物1)を入れた容器2にホーンタイプの超音波プロセッサ3を取り付け、前記容器2を水浴4中に設置して温度を室温(25℃)に保って行った。超音波プロセッサ3は、ヒールッシャーウルトラソニックス社製、商品名UP200S(ソノトロードS14)である。また、超音波照射における装置出力は200W、周波数は24kHzとし、超音波照射時間は0〜120分とした。
【0032】
(実施例2)
イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EmimCl)を用い、他は実施例1と同様にして糖化前処理を行った。
(実施例3)
イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(EmimDEP)を用い、他は実施例1と同様にして糖化前処理を行った。
(実施例4)
イオン液体として1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)を用い、他は実施例1と同様にして糖化前処理を行った。
(実施例5)
イオン液体として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(BmimCl)を用い、他は実施例1と同様にして糖化前処理を行った。
【0033】
各イオン液体のカチオン及びアニオンを
図2に示す。
【0034】
(比較例1)
前記原料バイオマス0.25gをイオン液体5gに懸濁させ、加熱による前処理を行った。すなわち、原料バイオマスを含むイオン液体を入れた容器を110℃に保ったインキュベータに入れて加熱処理を行った。この時、撹拌速度は1200rpm、反応時間は0〜120分とした。使用したイオン液体は1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EmimOAc)である。
【0035】
(比較例2)
イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EmimCl)を用い、他は比較例1と同様にして糖化前処理を行った。
(比較例3)
イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート(EmimDEP)を用い、他は比較例1と同様にして糖化前処理を行った。
(比較例4)
イオン液体として1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AmimCl)を用い、他は比較例1と同様にして糖化前処理を行った。
(比較例5)
イオン液体として1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(BmimCl)を用い、他は比較例1と同様にして糖化前処理を行った。
【0036】
(比較例6)
本比較例では、イオン液体を用いず、原料バイオマス0.25gを5mMリン酸緩衝液(pH5.0)5mLに懸濁させ、実施例1〜5と同様の超音波処理を行った。
(比較例7)
本比較例では、イオン液体を用いず、原料バイオマス0.25gを5mMリン酸緩衝液(pH5.0)5mLに懸濁させ、比較例1〜5と同様の加熱処理を行った。
【0037】
イオン液体の分離回収
糖化前処理後のサンプルに、蒸留水を50ml添加し、イオン液体に溶解しているバイオマスを析出させた。その後、遠心分離(80×g,10分間)によって上清のイオン液体水溶液を取り除いた。これらの操作を3回行った後に得られる沈殿物を、90℃で一昼夜乾燥させ、前処理バイオマスとした。この前処理バイオマスを用いて、前処理の評価(組成解析ならびに酵素による糖化反応)を行なった。
【0038】
前処理済みバイオマスの組成解析
糖化前処理で得られた前処理バイオマスに含まれるセルロースの量を測定し、糖化前処理を施していない原料バイオマスに含まれるセルロース量に対する百分率として「セルロース回収率」を評価した。結果を
図3に示す。
【0039】
なお、
図3(a)〜(e)は、それぞれ同一のイオン液体を用いた場合の超音波照射と加熱によるセルロース回収率の相違を示すものであり、例えば、
図3(a)は実施例1におけるセルロース回収率と比較例1におけるセルロース回収率の相違を対比して示す図である。また、
図3(f)は、イオン液体を用いないコントロールに相当する比較例6,7のセルロース回収率を示す図である。
【0040】
これらの図面からも明らかなように、前処理後の「セルロース回収率」は、各実施例ならびに各比較例ともに、70〜80%あった。すなわち、糖化前処理工程でのセルロースのロスについては、本発明法(イオン液体中での超音波照射)と従来法(加熱処理やリン酸緩衝液中での処理)とで同等と言うことができる。
【0041】
前処理済みバイオマスの酵素糖化反応
糖化前処理で得られた前処理済みバイオマスを基質とした酵素糖化反応を行なった。糖化酵素にはメイセラーゼ(明治製菓社製,6200U/g)を用いた。糖化反応は、酢酸緩衝液(pH=5.0)5mlに基質濃度0.6(g/L),酵素濃度60U/mLになるように前記前処理済みバイオマス及び糖化酵素を加え、温度50℃,撹拌速度130rpmとし、48時間反応させることで行った。また、雑菌増殖を防ぐために、酵素反応液中にトルエンを1%加えた。
【0042】
酵素糖化反応により生じたグルコースをグルコースオキシダーゼ法(比色法)で測定し、前処理済バイオマスに含まれるセルロース量に対する百分率として「前処理バイオマスからのグルコースの可溶化率」を評価した。なお、バイオマス原料に含まれる全セルロース量は、バイオマス原料に濃度72w/v%の硫酸(H
2SO
4)を反応させ、蒸留水を適量加え、オートクレーブにかけた後、遠心分離した上清をグルコースオキシダーゼ法によりグルコース当量で測定した。結果を
図4に示す。
【0043】
なお、
図4(a)〜(e)は、それぞれ同一のイオン液体を用いた場合の超音波照射と加熱によるグルコースの可溶化率の相違を示すものであり、例えば、
図4(a)は実施例1におけるセルロース回収率と比較例1におけるグルコースの可溶化率の相違を対比して示す図である。また、
図4(f)は、イオン液体を用いないコントロールに相当する比較例6,7のグルコースの可溶化率を示す図である。
【0044】
図4に示すように、試験したいずれのイオン液体の場合でも、本発明を適用した各実施例では、120分の前処理で「前処理バイオマスからのグルコースの可溶化率」が50〜100%に達しており、コントロールである比較例6,7(リン酸緩衝液中ので超音波処理や加熱処理)やイオン液体中での加熱処理である比較例1〜5のそれを大きく上回っていた。
【0045】
従来、イオン液体中での加熱処理においても後の糖化反応が促進することが報告されていたが、その場合、約110℃で12時間程度加熱する必要があった。本発明の前処理法では、処理時間が1〜2時間程度でも「前処理バイオマスからのグルコースの可溶化率」が約80%に達しており、イオン液体と超音波照射を組み合わせた効果は極めて大きいと言える。