(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記清掃具は板状構造であり、かつ、回動方向に凸になるような湾曲部及び上記拭き取り部と接触して付着物を除去する鋭角部を有しており、上記鋭角部は、回動する中心から見て上記湾曲部より外側にあり、上記湾曲部の先端はテーパ状になっていることを特徴とする請求項4に記載の保守装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の液体噴射装置では払拭部材に付着した液体を拭き取る機構が複雑であるという問題を有する。即ち、特許文献1の液体噴射装置では払拭部材はノズル面に沿って移動した後、さらに液体拭き取り部が液体を拭き取る方向に払拭部材を動かす必要があり、駆動機構が複雑であり、また、払拭部材の移動する範囲が広くなるため装置が大型になる。
【0005】
また、特に乾燥による増粘が発生しやすいインクの場合、ノズル面を払拭するワイパー及びワイパーを清掃する部材に固着するインクは清掃しにくく、特許文献1に記載の装置でも効率よく清掃できない。このため、使用者の手作業による清掃が高頻度に必要となり作業者の負担となっていた。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、簡易な機構で、長期間安定してノズルが設けられた面の拭き取り部の清掃効果を得ることで、使用者の手作業による清掃の頻度を低減することができる保守装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る保守装置は、ヘッドに設けられたノズルから液滴を吐出することで被記録媒体に印刷を行なう液滴吐出装置の上記ヘッドの保守装置であって、ヘッドの表面であってノズルが設けられた面上の付着物を拭き取る拭き取り部と、上記拭き取り部の付着物を除去する清掃具と、上記清掃具を回動させる回動機構と、上記拭き取り部を移動させる移動機構と、上記清掃具に付着した付着物を吸収する吸収部とを備え、上記清掃具が回動することによる当該清掃具の軌跡により形成される
体積を有する空間と上記拭き取り部が移動することによる当該拭き取り部の軌跡により形成される
体積を有する空間とが、少なくとも一箇所において重なっていることを特徴としている。
【0008】
清掃具の軌跡により形成される面と拭き取り部の軌跡により形成される
体積を有する空間とが、少なくとも一箇所において重なっているため、清掃具と拭き取り具とが接触する。そのため、拭き取り部の付着物を取り除いて拭き取り部を清掃することができる。
【0009】
清掃具は一つの回動軸を軸にして回動するだけでよいので、装置を小型化できる。従って、拭き取り部を清掃する機構が簡易である。
【0010】
また、吸収部に清掃具の付着物を吸収させることができるので、長期間清掃具を清潔に保つことができる。従って、清掃具による拭き取り部の清掃効率も長時間安定し、ひいては、拭き取り部によるノズルが設けられた面の清掃効率も長時間安定する。
【0011】
よって、簡易な機構で、長期間安定してノズルが設けられた面の拭き取り部の清掃効果を得ることができる。
【0012】
本発明に係る保守装置では、上記清掃具が回動することによる当該清掃具の軌跡により形成される
体積を有する空間は、上記拭き取り部によって拭き取られる上記ノズルが設けられた面に略平行であることが好ましい。
【0013】
簡易な機構で、長期間安定してノズルが設けられた面の拭き取り部の清掃効果を得ることができる。
【0014】
本発明に係る保守装置では、上記吸収部は上記清掃具を、上記清掃具が回動する移動経路中で挟むものであることが好ましい。
【0015】
吸収部は回動する清掃具を挟むことができるため、清掃具の上面及び下面に付着した付着物を効率的に除去することができる。よって、清掃具を清潔に保つことができ、清掃具による拭き取り部の清掃効率も長時間安定する。
【0016】
本発明に係る保守装置では、上記清掃具を挟む上記吸収部は、上記清掃具を挟んでいない位置の少なくとも一部では互いに接しており、上記清掃具には、回動することにより上記吸収部の互いに接している境界に最初に当たる部位が曲面になるように成形されていることが好ましい。
【0017】
吸収部の互いに接している境界に最初に当たる部位が曲面であるため、当該曲面が成形されている部分は吸収部を傷つけずに、当該吸収部が互いに接している境界を掻き分けることができる。
【0018】
本発明に係る保守装置では、上記清掃具は板状構造であり、かつ、回動方向に凸になるような湾曲部及び上記拭き取り部と接触して付着物を除去する鋭角部を有しており、上記鋭角部は、回動する中心から見て上記湾曲部より外側にあり、上記湾曲部の先端はテーパ状になっていることが好ましい。
【0019】
湾曲部が回動方向に凸になっているため、鋭角部より先に当該湾曲部が吸収部に接触して、当該吸収部の互いに接している境界を掻き分ける。そのため、清掃具により吸収部が傷つけられることが少なくなり、吸収部の耐久性が向上する。
【0020】
また、湾曲部の先端はテーパ状になっているため、湾曲部は吸収部を掻き分ける動作を円滑に行うことができる。
【0021】
本発明に係る保守装置では、上記清掃具を複数枚有し、複数枚の上記清掃具は回動の中心からそれぞれ放射状に設けられていることが好ましい。
【0022】
複数枚の清掃具を有しているため、ある清掃具が拭き取り部に付着した付着物を除去している間に、他の清掃具の付着物を吸収部に吸収させることができる。よって、清掃具による拭き取り部の清掃を効率的に行なうことができる。
【0023】
本発明に係る液滴吐出装置は、上記の保守装置を備えている。
【0024】
上記保守装置を備えることによって、簡易な機構で、長期間安定してノズルが設けられた面の拭き取り部の清掃効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る保守装置は、簡易な機構で、長期間安定してノズルが設けられた面の拭き取り部の清掃効果を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る液滴吐出装置及び保守装置の一実施形態について、
図1〜10を用いて詳細に説明する。
【0028】
〔液滴吐出装置60の構成〕
まず、本発明に係る液滴吐出装置の一実施形態である液滴吐出装置60の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、液滴吐出装置60の構成を模式的に示す図である。
【0029】
図1に示すように、液滴吐出装置60は、保守装置10、キャリッジ30、フラッシング用ステーション40及びガイド機構50を備えている。また、液滴吐出装置60は、メディア(被記録媒体)100に対して、インク(液滴)を吐出し、図、文字等を印刷するための装置である。
【0030】
保守装置10は、ワイパー1を用いて後述するヘッド31のノズル32が設けられた面(フェイス)上の付着部を拭き取り(ワイピング)、また、ヘッド31の清掃により汚れたワイパー1をワイパークリーナ21によって清掃するための装置である。なお、保守装置10の詳しい構成については、後述する。
【0031】
キャリッジ30は、ヘッド31を搭載している。ヘッド31は、インクを格納し、かつメディア100に対して、インクを吐出するためのものである。また、ヘッド31のメディア100に対向する面には、複数のノズル32が設けられている。ヘッド31は、印刷中において、ガイド機構40に支持されているキャリッジ30が矢印X方向に往復運動し、メディア100上を走査しているときに、印刷する図形等の情報に応じて、ノズル32からメディア100にインクを吐出する。
【0032】
フラッシング用ステーション40は、フラッシングを行なうための場所であり、保守装置10に隣接して設けられている。ヘッド31はフラッシング用ステーション40上まで移動した後にフラッシングを行ない、ノズル32の清掃が行なわれる。ここで、「フラッシング」とは、ヘッドが備える振動素子(図示せず;例えば圧電素子等)によってノズルに連通するインク貯留室に振動を与えることによって、ノズルからインクを吐出して、ノズル内の混色したインクを吐出することをいう。
【0033】
ガイド機構50は、キャリッジ30を支持しており、キャリッジ30の移動範囲を規定するものである。キャリッジ30がメディア100上を走査しているときは、ガイド機構50に沿って、矢印X方向に往復運動している。また、キャリッジ30は、ヘッド31の面上をワイピングする必要が生じたときは、保守装置10上に移動し、フラッシングが必要なときは、フラッシング用ステーション40上に移動する。
【0034】
〔保守装置10の構成〕
次に、本発明に係る保守装置の一実施形態である保守装置10について、
図1及び2を用いて説明する。保守装置10は、ワイパー(拭き取り部)1、ワイパー支持部2、面状部材3、樹脂ベルト(移動機構)4及びワイパー清掃部20を備えている。
【0035】
ワイパー1は、ノズル32が設けられているヘッド31の表面に接触した状態のまま移動することによって、当該表面上の付着物を拭き取るための部材である。ワイパー支持部2は、ワイパー1を支持し、かつ移動させる部材である。さらに、ワイパー支持部2には、軸部が貫通して設けられている。また、ワイパー1はワイパー支持部2から鉛直上方向に延伸した構造となっている。
【0036】
なお、ワイパー1はヘッド21の表面を傷つけない柔軟性を有するもの、例えば、樹脂によって形成されているものが好ましい。ワイパーの材質としては、ヘッドを傷つけない程度の弾性を有し、ある程度の耐薬品性を有する材料が好ましい。例えば、天然ゴムや合成ゴムなどが挙げられる。
【0037】
面状部材3は、樹脂ベルト4を覆うように配置されており、面状部材3には、溝が保守装置10の底面に平行に設けられている。上記溝は、ワイパー1を移動させる方向に沿って設けられており、さらに対向する面状部材3の間にワイパー支持部2が位置している。そして、ワイパー支持部2に設けられている軸部の両端はそれぞれ対面する面状部材3の溝に嵌合しており、当該溝に沿って、ワイパー支持部2は移動する。また、面状部材3の溝はワイパー支持部2の移動範囲及び移動方法を規定している。
【0038】
樹脂ベルト4は、ワイパー支持部2を移動させるための移動機構である。樹脂ベルト4上には、溝に嵌合している軸部の両端に載置されており、樹脂ベルト4を稼動させることによって、当該軸部が樹脂ベルト4によって移動して、ワイパー支持部2を溝に沿って移動させることができる。
【0039】
ワイパー清掃部20は、ワイピングによりワイパー1に付着した付着物を除去するための清掃部材であり、面状部材3上に設けられている。
【0040】
〔ワイパー清掃部20の構成〕
次に、ワイパー清掃部20の構成について、
図2を用いて詳細に説明する。
【0041】
図2に示すように、ワイパー清掃部20は、ワイパークリーナ21、吸収部22及び回動機構23を備えている。なお、
図2は、ワイパー1及びワイパークリーナ21を清掃するときのワイパー支持部2及びワイパークリーナ21、21’の軌道の一部を示している。
【0042】
ワイパークリーナ21、21’は、後述する回動機構23が設けられた箇所を原点対称として、2枚、放射状に設けられた板状構造のL字部材である。2枚のワイパークリーナ21、21’は、鋭角部21a、21c及び湾曲部21b、21dをそれぞれ備えている。
【0043】
湾曲部21b、21dは、ワイパークリーナ21、21’の回動方向に凸になるように湾曲した部位である。また、湾曲部21b、21dは後述する吸収部22と最初に当たる部位、つまり、湾曲部21b、21dの先端が、テーパ状になっており、且つ、曲面になるように成形されている。鋭角部21a、21cはワイパークリーナ21、21’の一部であり、湾曲部21b、21dに隣接している。さらに、鋭角部21a、21cは後述する上側吸収部22a及び下側吸収部22bの互いに接している境界に当たる方向に鋭くなる形状を有している。
【0044】
また、ワイパークリーナ21、21’は湾曲部21b、21dより外側の鋭角部21a、21cが形成されている面においてワイパー1と接触し、当該面をワイパー1が通過することによって、ワイピングによりワイパー1に付着した付着物をワイパー1から除去する。ワイパー1から除去された付着物は、鋭角部21a、21cが形成されている面に付着する。
【0045】
ワイパークリーナ21は、ワイパー1の接触面を傷つけない柔軟性を有するもの、例えば、樹脂によって形成されているものが好ましい。ワイパーの材質としては、樹脂や金属などの、ある程度の耐薬品性を有する材料が好ましい。
【0046】
吸収部22は、ワイパー1に付着した付着物を除去した際に、ワイパークリーナ21、21’に付着した付着物を吸収することで、ワイパークリーナ21、21’を清掃する部材である。また、吸収部22は、上側吸収部22a及び下側吸収部22bの2つが互いに接して形成されており、上側吸収部22aと下側吸収部22bとの間にワイパークリーナ21、21’を挟むことによって清掃する。なお、ワイパークリーナ21、21’を挟んでいる場合であっても、ワイパークリーナ21、21’を挟んでいない位置の一部では上側吸収部22a及び下側吸収部22bは互いに接している。吸収部22にワイパークリーナ21、21’の付着物を吸収させることができるので、長期間ワイパークリーナ21、21’を清潔に保つことができる。従って、ワイパークリーナ21、21’によるワイパー1の清掃効率も長時間安定し、ひいては、ワイパー1によるフェイスの清掃効率も長時間安定する。さらに、吸収部に溶剤を含浸させてもよい。吸収部による清掃効率を高めることができる。
【0047】
回動機構23は、
図2のようにワイパークリーナ21、21’の鋭角部とは反対側の先端を回動軸にして、ワイパークリーナ21、21’を矢印Y1方向に回動させるものである。ワイパークリーナ21、21’を回動させることによって、ワイパークリーナ21、21’の軌跡により
底面が円面
である体積を有する空間が形成される。
【0048】
図2では、ワイパークリーナ21’の鋭角部21cが、上側吸収部22aと下側吸収部22bとの間に挟まれている様子を示している。これは、吸収部22はワイパークリーナ21、21’を、当該ワイパークリーナ21、21’が回動する移動経路中で挟むことができるためである。このとき、上側吸収部22aと下側吸収部22bとの間にワイパークリーナ21、21’が挟まれるため、ワイパークリーナ21、21’の上下に付着した付着物を効率的に除去することができる。
【0049】
また、ワイパー支持部2を矢印Z1方向に往復運動させることにより、ワイパークリーナ21、21’とワイパー1とが接触し、ワイパー1に付着していた付着物は除去される。
【0050】
〔保守装置10の動作〕
次に、本発明の一実施形態に係る保守装置10の動作について
図3〜10を用いて説明する。
【0051】
図3は待機中のワイパー清掃部20及びワイパー支持部2を示す図であり、(a)は、待機中のワイパー清掃部20及びワイパー支持部2の上面図であり、(b)は、待機中のワイパー清掃部20及びワイパー支持部2の側面図である。
図4は、キャリッジ30が矢印X1方向に往復運動し、メディア100上を走査しているときの液滴吐出装置60の簡略図である。
【0052】
図4に示すようにキャリッジ30がメディア100上を走査している間は、
図3に示すようにワイパー支持部2はワイパー清掃部20の下に待機している。
【0053】
次に、ワイピングが必要になったときのワイパー1及びキャリッジ30の移動について
図5及び
図6を用いて説明する。
【0054】
図5はワイパー1がワイピングの開始位置に移動する動作を示す図であり、(a)は、ワイパークリーナ21が回転しながらワイパー支持部2が矢印Z2方向に移動する動作を示す上面図であり、(b)は、ワイパー支持部2が矢印Z2方向に移動している動作を示す側面図である。また、
図6は、キャリッジ30を矢印X2方向に移動させて保守装置10上に配置された、液滴吐出装置60の構成を示す簡略図である。
【0055】
図5(a)に示すように、ワイパークリーナ21による付着物が付着していないワイパー1の空拭きを防止するため、ワイパークリーナ21を矢印Y2方向に回動させながら、ワイパー1及びワイパー支持部2を矢印Z2の方向に移動させている。
図5(b)に示すように、ワイパー支持部2は矢印Z2方向に移動し、キャリッジ30が保守装置10上に移動する前に、保守装置10における矢印Z2方向の先端で待機する。ワイパー支持部2が矢印Z2方向に移動した後は、回動機構23は、鋭角部21aがワイパー1の清掃が可能な状態までワイパークリーナ21を回動させ、待機する。
【0056】
キャリッジ30は、予め定めておいた回数走査した後、又はヘッド31にインクなどの付着物が一定量付着していることを検出すること等によりヘッド31の面上を清掃する必要が生じたときは、
図6に示すように保守装置10上に移動する。
【0057】
なお、ワイピングを行なう前にパージ動作を行なってもよい。ここで「パージ」とは、ヘッドを振動させずに、ヘッドにインクを供給する際の供給圧を上げることでノズルからインクを吐出して、ノズルを清掃することをいう。供給圧は、例えば、大気圧以上に上げることによって、パージが適切に行なわれる。またパージを行なう場合には、保守装置10内に、パージによって吐出されるインクを回収する部材を設けてもよい。
【0058】
次に、ワイパー1及びワイパー支持部2を移動させてワイピングを行なう動作について、
図7を用いて説明する。
【0059】
図7は、ワイパー支持部2をZ3方向に移動させてワイピングを行なった後、Z4方向に移動させてワイパー1の清掃を行なう動作を示す図である。
【0060】
キャリッジ30は、保守装置10上まで移動しているので、ワイパー支持部2とワイパークリーナ21との間に位置している。
【0061】
まず、ワイパー支持部2は、樹脂ベルト4の稼動によって、矢印Z3方向に移動する。ワイパー支持部2がフェイスと対向するまでワイパー支持部2を移動させると、ワイパー1がフェイスに接触する。このとき、ワイパー1は矢印V1方向に移動しつつ、ワイピングを行なう。ワイピングを行なうことによって、ノズル32が設けられた面に付着していた付着物は、ワイパー1によって拭き取られて当該面が清掃されるとともに、ワイパー1に当該付着物が付着する。このとき、ワイパー1の表面に付着物が付着する。拭き取り時のインクの量や、ワイパー1をフェイスに接触させる角度および押圧などの拭き取り条件によっては、ワイパー1の裏面にも少量の付着物が付着することがある。また、フェイスに沿ってワイパー支持部2を往復運動させて、ワイピングを行なってもよいが、この場合には、ワイパー1の裏面に多くの付着物が付着する。
【0062】
ここで、ワイパー1の「表面」とは、ワイパー支持部2が矢印Z3方向に移動するときに、フェイスと接触するワイパー1の面をいい、ワイパー1の「裏面」とは、矢印Z3方向と反対方向にワイパー支持部2を移動させた場合に、フェイスと接触するワイパー1の面をいう。
【0063】
ワイピングが終了した後において、キャリッジ30は、フラッシング用ステーション40上までガイド機構50に沿って矢印X3方向に移動し、フラッシングを行なってもよい。
図8は、ワイピングを行なった後にキャリッジ30がフラッシング用ステーション上まで移動し、フラッシングを行なっている液滴吐出装置60の構成を示す簡略図である。フラッシングが終了した後、キャリッジ30はメディア100上まで移動し、矢印X1方向に往復運動しつつメディア100にインクを吐出し、印刷を再開する。
【0064】
次に、ワイピングを終了した後、ワイパー支持部2は矢印Z3方向に更に移動し、ワイパークリーナ21の手前まで移動する。そして、ワイパー支持部2は矢印Z4方向に移動し、ワイパー1がワイパークリーナ21の鋭角部21aに接触する。
図9は、ワイパー1が、停止しているワイパークリーナ21に接触しながら矢印Z*方向に移動する動作を示す図である。ワイパークリーナ21に接触しながら移動する際に、ワイパー1は鋭角部21aと接触し、鋭角部21aにワイピングによる付着物を付着させる。上記のように、ワイパー1を鋭角部21aに接触させることによって、ワイパー1の表面に付着した付着物を除去することができる。なお、ワイパー支持部2を往復移動させて、複数回ワイパー1を鋭角部21aに接触させてもよく、往復運動させずに、ワイパー指示部2を矢印Z*方向に移動させて、一回だけワイパー1を鋭角部21aに接触させてもよい。ワイパー支持部2を往復運動させれば、ワイパー1の表面及び裏面の両方を清掃でき、ワイパー1の清掃効果をより高めることができる。ワイパークリーナ21によるワイパー1の清掃が終了した後、ワイパー支持部2はワイピング前の待機位置で停止する。
【0065】
また、本実施形態においては、ワイパークリーナ21、21’が回動することによるワイパークリーナ21、21’の軌跡により形成される
体積を有する空間の底面は、ワイパー1によって拭き取られるフェイスに平行である。そのため、ワイパー1とワイパークリーナ21、21’とが接触すると、一定の力でワイパークリーナ21による清掃を行なうことができる。
【0066】
次に、ワイパー1と鋭角部21aとが予め定めておいた回数接触した後、又は鋭角部21aにインクなどの付着物が一定量付着していることを検出すること等により鋭角部21aを清掃する必要が生じたときは、回動機構23はワイパークリーナ21を回動させる。その上で、ワイパークリーナ21’でワイパー1の裏面を清掃する。
図10はワイパー1の裏面をワイパークリーナで清掃する動作を示す図であり、(a)は、ワイパー1が停止しているときに、ワイパークリーナ21を回動させていることを示す図であり、(b)は、ワイパー1が、停止しているワイパークリーナ21’に接触しながら矢印V3方向に移動することを示す図である。
図10(a)に示すように、ワイパークリーナ21をY1方向に回動させることによって、ワイパークリーナ21を吸収部22内に入れて、ワイパークリーナ21に付着したインクを吸収部22に吸収させる。
【0067】
ここで、ワイパークリーナ21、21’が回動して、吸収部22で清掃される動作について説明する。
【0068】
まず、ワイパークリーナ21、21’を矢印Y1方向に回動させることで、湾曲部21bが吸収部22に接触する。湾曲部21bは回動方向に凸になっているため、ワイパークリーナ21を構成する部位の中で湾曲部21bが吸収部22に最初に接触し、上側吸収部22a及び下側吸収部22bが互いに接している境界を掻き分ける。なお、湾曲部21bが吸収部22と最初に接触する部位は曲面であるため、吸収部22を傷つけることを防止し、吸収部22の耐久性を向上させることができる。さらに、湾曲部21bを吸収部22に侵入する方向に厚みが薄くなるよう(テーパ状)に形成することで、上側吸収部22a及び下側吸収部22bを掻き分ける動作を円滑に行うことができる。
【0069】
湾曲部21bが吸収部22の境界に接触したときは、同時に、上側吸収部22a及び下側吸収部22bの間に挟まれていた鋭角部21cが、吸収部22の外に出る。
【0070】
湾曲部21bが上側吸収部22aと下側吸収部22bとの間に挟まれた後、ワイパークリーナ21をさらに矢印Y1方向に回動させることによって、鋭角部21aが、上側吸収部22aと下側吸収部22bとの間に挟みこまれる。
【0071】
また、本実施形態においては、ワイパークリーナ21が回動することによる軌跡により形成される面は、保守装置10の底面に平行である。なお、上記形成される面は、保守装置10の底面に対して傾斜させてもよい。
【0072】
また、ワイパークリーナ21の軌跡は、上側吸収部22aと下側吸収部22bとの境界面と少なくとも一部において重なることが好ましい。当該軌跡が当該境界面と重なっていることによって、上側吸収部22aと下側吸収部22bとの間に滑らかにワイパークリーナ21を挿入することができる。
【0073】
図9に示す状態のワイパークリーナ21、21’を、回動機構23により180度回動することによって、
図10(b)に示すように、ワイパークリーナ21、21’の位置が互いに入れ替わっている。これは、ワイパークリーナ21、21’は回動機構を原点対称とした同一形状の2枚のL字部材であるため、合計で180度回転させた場合のワイパークリーナ21、21’の配置は、回動前のワイパークリーナ21’、21の配置に一致するからである。よって、鋭角部21aによりワイパー1を清掃している間、上側吸収部22aと下側吸収部22bとの間に挟みこまれて清掃されていた鋭角部21cが、ワイパー支持部2の進行方向に対して垂直になるように配置されている。
【0074】
次に、矢印V3方向にワイパー支持部2を移動させることによって、ワイパー1は清掃された鋭角部21cに接触し、ワイパー1の裏面に付着した付着物を除去する。ワイパー支持部2を往復運動させ、所定の回数ワイパー1を鋭角部21cに接触させてもよい。
【0075】
このとき、鋭角部21aは上側吸収部22aと下側吸収部22bとの間に挟みこまれて清掃されている。つまり、鋭角部21aに付着した付着物を吸収部22に吸収させている間に、鋭角部21cによってワイパー1に付着した付着物を除去することができる。
【0076】
また、鋭角部21a、21cとワイパー1とが接触することによって、ワイパー1に付着した付着物が鋭角部21a、21cの上下に付着することがある。これは、ワイパー1に対して鋭角部21a、21cが接触するときに付着物の多くを、鋭角部21a、21cの上面に付着させ、その際に除去できなかった付着物を、ワイパー1が鋭角部21a、21cを通過する際に鋭角部21a、21cの下面(底面)に付着させるためである。また、上面に付着したインクが下面に滴下することがある。そのため、本実施形態においては、上側吸収部22a及び下側吸収部22bの2つの吸収部を使用している。
【0077】
また、鋭角部21cの清掃が必要になった場合には、回動機構23によりワイパークリーナ21を180度回動させて、鋭角部21aと鋭角部21cとの位置を入れ替えればよい。なお、再度ワイピングが必要になったときにはこれまで説明した動作を繰り返す。
【0078】
以上のように、ワイパー1が移動してワイパークリーナ21、21’に接することにより、ワイパー1に付着したインクが除去される。これは、ワイパークリーナ21が回動することによるワイパークリーナ21の軌跡により形成される
体積を有する空間とワイパー1が移動することによるワイパー1の軌跡により形成される
体積を有する空間とが、少なくとも一箇所において重なっているからである。重なっている範囲内において、ワイパークリーナ21とワイパー1とが接触し、ワイパー1に付着した付着物を取り除いてワイパー1を清掃することができる。
【0079】
ワイパー1の移動範囲はワイピングを行なう範囲の延長方向だけであり、ワイパークリーナ21は一つの回動軸を軸にして回動するだけでよいので、装置を小型化できる。従って、ワイパー1を清掃する機構が簡易である。
【0080】
よって、保守装置10は、簡易な機構で、長期間安定してノズルが設けられた面の拭き取り部の清掃効果を得ることができる。
【0081】
最後に、ワイパー1を
図3(a)の待機場所まで移動させて、再度待機させる。
【0082】
また、清掃具は、本実施形態に係るワイパー清掃具20のように、2枚である構成に限定されない。つまり、板状構造の清掃具を3枚以上有し、3枚以上の清掃具は回動の中心からそれぞれ放射状に設けられていてもよい。また、多くの清掃具を設けることによって、複数枚の清掃具の一部を同時に吸収部により清掃することができ、また、複数枚の清掃具の一部を同時に拭き取り部の清掃に用いることも可能である。また、ある清掃具が拭き取り部に付着した付着物を除去している間に、他の清掃具が吸収部に清掃具の付着物を吸収させることができる。また、複数枚の清掃具はその外側で繋がっていて全体として一つの部材として一体形成してもよい。
【0083】
清掃具を複数枚にすることによって、吸収部に清掃具に付着した付着物を吸収させる時間を長く確保することができ、清掃具に付着した付着物をより多く吸収部に吸収させることができる。よって、清掃具をより清潔に保つことができる。特に、自然乾燥する液滴をヘッドがノズルから吐出する場合、吸収部に清掃具に付着した当該液滴を吸収させる時間を長く確保して、当該液滴を吸収部に吸収させる必要がある。
【0084】
また、清掃具は、L字形状の板状構造に限定されずに、中心に回動機構を設けたS字形状、直線状等の板状構造を取っていてもよい。必要に応じて、直線状の清掃具の先端部であって、最初に吸収部と接触する部分を曲面にしてもよい。また、直線状の清掃具を回動することにより吸収部の境界面に当たる方向に鋭くなるように鋭角部を形成してもよい。
【0085】
なお、本発明は、本実施形態のように、ワイパー1及びワイパー1と接触する鋭角部21a、21cとが互いに平行な状態で接触する形態には限定されない。つまり、ワイパー1に平行な面に対して鋭角部21a、21cが傾斜した状態でワイパー1及び鋭角部21a、21cが接触してもよい。
【0086】
なお、本実施形態では、ワイパークリーナ21を停止させた状態において、ワイパー1を移動させて、ワイパー1をワイパークリーナ21に接触させているが、これに限定されない。つまり、ワイパー1を停止させた状態において、ワイパークリーナ21を回動させて、ワイパークリーナ21をワイパー1に接触させてもよい。また、ワイパー1を移動させ、かつワイパークリーナ21を回動させて、ワイパー1及びワイパークリーナ21を接触させてもよい。このような場合であっても、ワイパー1の付着物を取り除いてワイパー1を清掃することができる。
【0087】
〔付記事項〕
本発明の一実施形態に係る保守装置10は、ヘッド31に設けられたノズル32からインクを吐出することでメディア100に印刷を行なう液滴吐出装置60のヘッド31の保守装置10であって、ヘッド31の表面であってノズル32が設けられた面上の付着物を拭き取るワイパー1と、ワイパー1の付着物を除去するワイパークリーナ21、21’と、ワイパークリーナ21、21’を回動させる回動機構23と、ワイパー1を移動させる樹脂ベルト4と、ワイパークリーナ21、21’に付着した付着物を吸収する吸収部22と、を備え、ワイパークリーナ21、21’が回動することによるワイパークリーナ21、21’の軌跡により形成される
体積を有する空間とワイパー1が移動することによるワイパー1の軌跡により形成される
体積を有する空間とが、少なくとも一箇所において重なっていることを特徴としている。
【0088】
ワイパークリーナ21、21’の軌跡により形成される
体積を有する空間とワイパー1の軌跡により形成される
体積を有する空間とが、少なくとも一箇所において重なっているため、ワイパークリーナ21、21’とワイパー1とが接触する。そのため、ワイパー1の付着物を取り除いてワイパー1を清掃することができる。
【0089】
ワイパー1の移動範囲は拭き取りを行なう方向だけであり、ワイパークリーナ21、21’は一つの回動軸を軸にして回動するだけでよいので、装置を小型化できる。従って、ワイパー1を清掃する機構が簡易である。
【0090】
また、吸収部22にワイパークリーナ21、21’の付着物を吸収させることができるので、長期間ワイパークリーナ21、21’を清潔に保つことができる。従って、ワイパークリーナ21、21’によるワイパー1の清掃効率も長時間安定し、ひいては、ワイパー1によるノズル32が設けられた面の清掃効率も長時間安定する。
【0091】
よって、簡易な機構で、長期間安定してノズル32が設けられた面のワイパー1の清掃効果を得ることができる。
【0092】
保守装置10では、ワイパークリーナ21、21’が回動することによるワイパークリーナ21の軌跡により形成される
体積を有する空間は、ワイパー1によって拭き取られるノズル32が設けられた面に略平行であることが好ましい。
【0093】
簡易な機構で、長期間安定してノズル32が設けられた面のワイパー1の清掃効果を得ることができる。
【0094】
保守装置10では、吸収部22はワイパークリーナ21、21’を、ワイパークリーナ21が回動する移動経路中で挟むものであることが好ましい。
【0095】
吸収部22は回動するワイパークリーナ21、21’を挟むことができるため、ワイパークリーナ21、21’の上面及び下面に付着した付着物を効率的に除去することができる。よって、ワイパークリーナ21、21’を清潔に保つことができ、ワイパークリーナ21、21’によるワイパー1の清掃効率も長時間安定する。
【0096】
保守装置10では、ワイパークリーナ21、21’を挟む吸収部22は、ワイパークリーナ21、21’を挟んでいない位置の少なくとも一部では互いに接しており、ワイパークリーナ21、21’には、回動することにより吸収部22の互いに接している境界に最初に当たる部位が曲面になるように成形されていることが好ましい。
【0097】
吸収部22の互いに接している境界に最初に当たる部位が曲面であるため、当該曲面が成形されている部分は吸収部22を傷つけずに、当該吸収部22が互いに接している境界を掻き分けることができる。
【0098】
保守装置10では、ワイパークリーナ21、21’は板状構造であり、かつ、回動方向に凸になるような湾曲部21b、21d及びワイパー1と接触して付着物を除去する鋭角部21a、21cを有しており、鋭角部21a、21cは、回動する中心から見て湾曲部21b、21dより外側にあり、湾曲部21b、21dの先端はテーパ状になっていることが好ましい。
【0099】
湾曲部21b、21dが回動方向に凸になっているため、湾曲部21b、21dが吸収部22に接触したとき、吸収部22の互いに接している境界を掻き分ける。そのため、ワイパークリーナ21、21’により吸収部22が傷つけられることが少なくなり、吸収部22の耐久性が向上する。
【0100】
また、湾曲部21b、21dの先端はテーパ状になっているため、湾曲部21b、21dは吸収部22を掻き分ける動作を円滑に行うことができる。
【0101】
保守装置10では、2枚のワイパークリーナ21、21’を有し、2枚のワイパークリーナ21、21’は回動の中心からそれぞれ放射状に設けられていることが好ましい。
【0102】
ワイパークリーナ21、21’のように2枚のワイパークリーナを有しているため、例えばワイパークリーナ21がワイパー1に付着した付着物を除去している間に、ワイパークリーナ21’が吸収部22にワイパークリーナ21’の付着物を吸収させることができる。よって、ワイパークリーナ21’によるワイパー1の清掃を効率的に行なうことができる。
【0103】
また、吸収部22にワイパークリーナ21’に付着した付着物を吸収させる時間を長く確保することができるため、ワイパークリーナ21’に付着した付着物をより多く吸収部22に吸収させることができる。よって、ワイパークリーナ21’をより清潔に保つことができる。
【0104】
本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置60は、上記の保守装置10を備えている。
【0105】
上記保守装置10を備えることによって、簡易な機構で、長期間安定してノズルが設けられた面のワイパー1の清掃効果を得ることができる。
【0106】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。