(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5875411
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】射出圧縮成形法および射出圧縮成形用金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/56 20060101AFI20160218BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
B29C45/56
B29C45/26
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-48778(P2012-48778)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-184305(P2013-184305A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044614
【氏名又は名称】株式会社足立ライト工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】豊永 和博
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 修
【審査官】
井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】
再公表特許第2007/000930(JP,A1)
【文献】
特開平05−245893(JP,A)
【文献】
特開2006−062137(JP,A)
【文献】
特開2010−052147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型または可動型を一方型とし、該一方型と相対する固定型または可動型を他方型とする金型により、開口を有する板状の合成樹脂製品を成形する方法であって、合成樹脂製品の一方の面を成形するための型面が一方型に形成され、該合成樹脂製品の他方の面を成形する中央域成形用型板と、開口を形成するコア部と、該合成樹脂製品の外周域を成形する外周域成形用型板とが他方型に設けられ、コア部と外周域成形用型板とは中央域成形用型板に対して相対的に進退動可能に配設され、一方型と他方型とをわずかに離れた接近状態にすると共にコア部と外周域成形用型板とを進出させて一方型の型面に圧接することにより拡大キャビティが形成され、該キャビティに溶融樹脂を充填した後、該コア部と外周域成形用型板とを該型面に圧接させた状態を保ちつつ型閉めすることにより該溶融樹脂が加圧されるようにし、該溶融樹脂が冷却・固化した後の型開状態にて前記コア部を前記中央域成形用型板に対して相対的に後退動することにより該コア部を合成樹脂製品から離脱させ、その後に該合成樹脂製品を前記中央域成形用型板から離脱させることを特徴とする射出圧縮成形法。
【請求項2】
前記外周域成形用型板を突き出すことにより前記合成樹脂製品を前記中央域成形用型板から離脱させることを特徴とする請求項1に記載した射出圧縮成形法。
【請求項3】
固定型または可動型を一方型とし、該一方型と相対する固定型または可動型を他方型とする金型により、開口を有する板状の合成樹脂製品を成形する方法であって、合成樹脂製品の一方の面を成形するための型面が一方型に形成され、該合成樹脂製品の他方の面を成形する中央域成形用型板と、開口を形成するコア部と、該合成樹脂製品の外周域を成形する外周域成形用型板とが他方型に設けられ、コア部と外周域成形用型板とは中央域成形用型板に対して相対的に進退動可能に配設され、一方型と他方型とをわずかに離れた接近状態にすると共にコア部と外周域成形用型板とを進出させて一方型の型面に圧接することにより拡大キャビティが形成され、該キャビティに溶融樹脂を充填した後、該コア部と外周域成形用型板とを該型面に圧接させた状態を保ちつつ型閉めすることにより該溶融樹脂が加圧されるようにし、該溶融樹脂が冷却・固化した後の型開状態にて前記コア部と前記外周域成形用型板とを前記中央域成形用型板に対して相対的に後退動することにより該コア部と該外周域成形用型板とを前記合成樹脂製品から離脱させ、その後に該合成樹脂製品を前記中央域成形用型板から離脱させることを特徴とする射出圧縮成形法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ等の弾球遊技機に設けられる合成樹脂製の遊技板、その他の成形精度を必要とする合成樹脂製品を成形する射出圧縮成形方法および射出圧縮成形用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機の遊技板は、遊技球を遊技領域に誘導する2本のガイドレールが装着されると共に、ガイドレールで囲まれた遊技領域に図柄変動表示装置、入賞装置等の遊技部品が配置される。そして、これらの遊技部品の周辺に障害釘、風車等が植設され、これにより遊技領域を落下する遊技球の経路に変化を与えている。
近年、遊技板は、環境保護の観点や意匠上の観点から、従来の合板に代えて合成樹脂製のものが提案され、特に透明な合成樹脂により成形された遊技板は、裏面に配置した図柄変動表示装置や電飾等各種装飾部材をも遊技者から見ることができるので、従来の合板製のものではできない斬新なデザイン構成を採ることを可能にしている。
【0003】
ところで、合成樹脂製の遊技板を製造するには、特許文献1に示された押出成形による方法と、特許文献2および特許文献3に示された射出成形による方法とが従来から知られている。
特許文献1に示された押出成形による方法は、先ず厚手の平板を押出成形し、該平板の所定位置に切削加工により上記のような遊技部品を取り付けるための貫通状の開口を形成するものである。このような押出成形による方法は、加工時間を要し生産効率がよくない欠点があるほか、貫通状の開口を切削することで生じた切削屑が無駄になるので材料歩留まりが悪く、特に大型ディスプレイや大型役物を取り付けるための大きな開口部を形成すると大量の切削屑が生じ、切削屑を廃棄処分する費用が嵩むと同時に、廃棄処分によって貴重な資源が無駄になるといった問題がある。
【0004】
また、射出成形による方法は、金型によって遊技板を成形すると同時に遊技部品を取り付けるための開口も形成することができるので、生産性がよく、切削屑も生じないといった利点がある。しかし、周知のように一般に射出成形法は、合成樹脂が冷却する際の不揃いな収縮を防止し、ヒケ、反り、変形等が生じないようにするために、製品の肉厚を製品全体でほぼ均一になるように設定する必要がある。そのために、遊技板を射出成形する場合は、特許文献2および特許文献3に示されたように、多数のボスを遊技領域の裏面に一体に成形することで、肉厚をほぼ均一にしている。即ち、障害釘を打ち込むための釘孔が中心部に形成された多数のボスを遊技領域の裏面に突出状に形成することにより、該釘孔が一定以上の深さになるようにすることで、障害釘がぐら付くことなく固植できるようにしている。なお、特許文献2および特許文献3に示された方法では、射出成形用金型が離型する際にボスの上端面をスリーブピンと呼ばれる突出ピン(エジェクトピン)により突き出して、遊技板を該金型の成形面から離間させることにより、突出ピンの押圧跡が該ボスの上端面以外に残らないようにしている。
【0005】
ところがこのようにボスが形成された遊技板では、遊技機の機種に従い障害釘の位置を変更しようとすると、該ボスの成形位置をも変更しなければならないので、射出成形用金型自体を変えなければならず、即座に機種に応じた微細な対処をすることが困難になるという問題がある。また、透明な合成樹脂により成形され、多数のボスを形成してなる遊技板は、該ボスが光を屈折、乱反射させ、透明性、透光性を損うために、上記のように遊技板内に図柄変動表示装置や電飾等各種装飾部材を配置しても、これらを透視し難くなるとともに光が透過し難くなるので、斬新で効果的な演出、装飾ができないという問題があった。
【0006】
そこで、ボスを形成することなく、遊技板全体の肉厚を厚くすることで一定以上の深さの釘孔を確保し、障害釘がぐら付かないようにすることが考えられるが、そうすると、
図23に示した透明な遊技板のように、遊技部品を取り付けるための開口a〜eの周囲に突出ピンの押圧跡fが付き、特に遊技板の肉厚が厚くしかも大きな開口を形成する必要があるものでは該開口の付近を変形することなく離型させるために多数の突出ピンを配備する必要があるので多数の押圧跡fが付き、該押圧跡によって該遊技板の遊技領域の透視性が損なわれる。このため、遊技板全体の肉厚を厚くすることによっても透視性が損なわれるとういう問題点は解決できない状況であった。なお、
図23の符号hは、遊技領域gの外側(ガイドレールが装着されるラインの外側)の非遊技領域を示す。
【0007】
一方、光学レンズ、CD等の精度を必要とする合成樹脂製品を成形するのに使用されている射出圧縮成形法は、固定型と可動型とがわずかに離した接近状態とすることでキャビティを少し拡大した状態にして溶融樹脂を充填し、充填が無理なく行われるようにした後、型締めして該溶融樹脂を加圧し、合成樹脂製品を成形する方法である。この射出圧縮成形法には、その金型構造から大きく分けて、ローリンクス法とマイクロモード法の二つが知られている。ローリンクス法で一般的なのは、
図24(イ)に示したように、固定型と可動型との間隔Sを少し開いた状態にて拡大キャビティCを形成し、該キャビティ内に溶融樹脂を充填した後、
図24(ロ)に示したように型閉し、該キャビティ内の樹脂を加圧し成形する方法である。一方、マイクロモード法は、油圧シリンダにより進退動するコアをキャビティに設け、溶融樹脂を射出する前に圧縮量を見込んで該コアを後退させることによりキャビティ容量を拡大しておき、射出充填後に該コアを前進させ溶融樹脂を加圧する方法である。これらの射出圧縮成形法によれば、樹脂の分子配向が起こり難く、残留応力が減少することから、変形が少なく、高精度な合成樹脂製品を成形できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3720829号公報
【特許文献2】特開平4−354959号公報(
図3を参照)
【特許文献3】特許第3118617号公報(
図6を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の射出圧縮成形法により遊技板を成形したとしても、肉厚が厚い遊技板では離型時に掛かるストレスによって上記のように押圧跡が付いたり変形を起こし易いという問題がある。このため上記のように従来から遊技板については、押出成形後に切削加工するといった製造方法が一般的であり、生産性が悪く、非効率であったために、製造コストが高いという問題がある。
本発明はこのような問題点を解決し得る射出圧縮成形法および射出圧縮成形用金型を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明に係る射出圧縮成形法は、固定型または可動型を一方型とし、該一方型と相対する固定型または可動型を他方型とする金型により、開口を有する板状の合成樹脂製品を成形する方法であって、合成樹脂製品の一方の面を成形するための型面が一方型に形成され、該合成樹脂製品の他方の面を成形する中央域成形用型板と、開口を形成するコア部と、該合成樹脂製品の外周域を成形する外周域成形用型板とが他方型に設けられ、コア部と外周域成形用型板とは中央域成形用型板に対して相対的に進退動可能に配設され、一方型と他方型とをわずかに離れた接近状態にすると共にコア部と外周域成形用型板とを進出させて一方型の型面に圧接することにより拡大キャビティが形成され、該キャビティに溶融樹脂を充填した後、該コア部と外周域成形用型板とを該型面に圧接させた状態を保ちつつ型閉めすることにより該溶融樹脂が加圧されるようにし
、該溶融樹脂が冷却・固化した後の型開状態にて前記コア部を前記中央域成形用型板に対して相対的に後退動することにより該コア部を合成樹脂製品から離脱させ、その後に該合成樹脂製品を前記中央域成形用型板から離脱させることを特徴とする。
また、本発明は上記射出圧縮成形法において、
前記外周域成形用型板を突き出すことにより前記合成樹脂製品を前記中央域成形用型板から離脱させることを特徴とする。
また、本発明に係る射出圧縮成形法は、
固定型または可動型を一方型とし、該一方型と相対する固定型または可動型を他方型とする金型により、開口を有する板状の合成樹脂製品を成形する方法であって、合成樹脂製品の一方の面を成形するための型面が一方型に形成され、該合成樹脂製品の他方の面を成形する中央域成形用型板と、開口を形成するコア部と、該合成樹脂製品の外周域を成形する外周域成形用型板とが他方型に設けられ、コア部と外周域成形用型板とは中央域成形用型板に対して相対的に進退動可能に配設され、一方型と他方型とをわずかに離れた接近状態にすると共にコア部と外周域成形用型板とを進出させて一方型の型面に圧接することにより拡大キャビティが形成され、該キャビティに溶融樹脂を充填した後、該コア部と外周域成形用型板とを該型面に圧接させた状態を保ちつつ型閉めすることにより該溶融樹脂が加圧されるようにし、該溶融樹脂が冷却・固化した後の型開状態にて
前記コア部と
前記外周域成形用型板とを
前記中央域成形用型板に対して相対的に後退動することにより該コア部と
該外周域成形用型板とを
前記合成樹脂製品から離脱させ、その後に該合成樹脂製品を
前記中央域成形用型板から離脱させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、射出圧縮成形によって合成樹脂製品を高精度に成形することができるとともに、遊技板の遊技領域のような合成樹脂製品の主要部分に押圧跡等の傷が付くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る合成樹脂製品である遊技板の斜視図。
【
図2】本発明に係る合成樹脂製品である遊技板の裏面の斜視図。
【
図4】本発明に係る成形用金型における溶融樹脂射出前の縦断面図。
【
図5】
図4に示した成形用金型における溶融樹脂圧縮中の縦断面図。
【
図6】
図4に示した成形用金型の型閉状態の縦断面図。
【
図7】
図4に示した成形用金型の型開状態の縦断面図。
【
図8】
図4に示した成形用金型の先行離型手段が作動したときの縦断面図。
【
図9】
図4に示した成形用金型の後行離型手段が作動したときの縦断面図。
【
図11】本発明に係る成形用金型における溶融樹脂射出前の縦断面図。
【
図12】
図11に示した成形用金型における溶融樹脂圧縮中の縦断面図。
【
図15】
図11に示した成形用金型の先行離型手段が作動したときの縦断面図。
【
図16】
図11に示した成形用金型の後行離型手段が作動したときの縦断面図。
【
図17】本発明に係る成形用金型における溶融樹脂射出前の縦断面図。
【
図18】
図17に示した成形用金型における溶融樹脂圧縮中の縦断面図。
【
図21】
図17に示した成形用金型の先行離型手段が作動したときの縦断面図。
【
図22】
図17に示した成形用金型の後行離型手段が作動したときの縦断面図。
【
図24】従来の射出圧縮成形法を示す成形用金型の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜
図3に、本発明に係る射出圧縮成形用金型を使用し、透明なポリカーボネイト樹脂、ABS樹脂、アクリロニトリル樹脂等の合成樹脂により一体成形された長方形板状の遊技板1を示す。該遊技板1の中央域2は遊技領域となる部分で、厚さ10mm程度で表面が平坦なるように成形され、該中央域2に機種に応じた配置にて多数の障害釘が打ち込まれる。3は電子ディスプレイやセンター役物等の大型の遊技部品を取り付けるために中央域2に表裏貫通状に形成された大きな開口、4は該開口3の下部であって始動用可変入賞装置等の遊技部品を取り付けるために表裏貫通状に形成された開口、5は該開口4の下部であって大入賞口装置等の遊技部品を取り付けるために表裏貫通状に形成された開口、6は該遊技板1の下部両側に普通入賞装置、装飾部材等の遊技部品を取り付けるために表裏貫通状に形成された開口、7は通過チャッカー等の遊技部品を取り付けるために中央域2に表裏貫通状に形成された小さな開口である。なお、8は遊技板1の表面にガイドレール(図示せず)を固定ピンにより固定するためにガイドレールの長手方向に沿って所定間隔で多数形成した固定ピン差込用の小孔、9は遊技板1の四隅角部に組付、位置合わせ、配線通し等のために形成された貫通孔である。また、遊技板1の外周縁には裏側へ額縁状に突出するように外縁リブ10が成形されている。なお、11は非遊技領域である中央域2の外側(ガイドレールが装着されるラインの外側)の外周域を示す。
【実施例1】
【0014】
次にこの遊技板1を成形する射出圧縮成形用金型および成形方法を
図4〜
図9に従い説明する。同図において、18は固定盤、19は可動盤を示し、固定盤18の前面に桁部材17を介して固定型20が固設され、可動盤19の前面に可動型21が固設される。可動型21は遊技板1の中央域2を含む前面全体を成形するための平坦な型面22を形成している。14は固定盤18に設けられたスプルーブッシュ、15はホットランナ、16は固定盤18の前面に突設された射出ノズルである。
【0015】
固定型20は、遊技板1の前記中央域2の裏面を成形するための中央域成形用型板30と、前記開口3〜5を形成するためのコア部23〜25と、前記外縁リブ10を成形するための外周域成形用型板35を備えている。図中、30a,30bは外周域11の裏面を成形するための中央域成形用型板30の外周部位を示す。また、図示していないが、コア部23〜25の他、前記開口6,7を形成するためのコア部、および前記小孔8、貫通孔9を形成するためのコア部も備えられる。31はこれらのコア部を進退動させるために該各コア部の背後に縦に設けられた支持棒、32は該支持棒の基端部を止着させている支持プレート、33は該支持プレート32に固設した油圧シリンダ、34は該支持棒31の基端部を支持プレート32上に止着するための止着プレートである。なお、油圧シリンダ33のピストンロッドは固定盤18の前面に止着されている。このため、油圧シリンダ33が作動すると支持プレート32が進退動し、各支持棒31を介して各コア部23〜25を進退動させる。なお、この油圧シリンダ33と支持プレート32と支持棒31により先行離型手段が構成される。
【0016】
また、外周域成形用型板35の背後に縦に支持棒36が設けられ、該支持棒36の基端部を支持プレート37に当接させ、該基端部を止着プレート39により支持プレート37上に止着している。38は該支持プレート37に固設した油圧シリンダで、油圧シリンダ38のピストンロッドも固定盤18の前面に止着されている。このため油圧シリンダ38が作動すると支持プレート37が進退動し、支持棒36を介して外周域成形用型板35を進退動させる。なお、この油圧シリンダ38と支持プレート37と支持棒36により後行離型手段が構成される。
なお、支持棒31、油圧シリンダ33、支持棒36、油圧シリンダ38等は、図示した本数に拘わらず必要に応じて複数設けられる。
【0017】
このように構成した射出圧縮成形用金型では、
図4に示したように、固定型20と可動型21とをわずかに離れた接近状態にし、油圧シリンダ33を伸張作動させコア部23〜25およびその他のコア部を進出させてこれらのコア部を可動型21の型面22に圧接するとともに、油圧シリンダ38を伸張作動させ外周域成形用型板35を進出させて該外周域成形用型板35を可動型21の型面22に圧接することにより、拡大キャビティ50を形成する。そして射出ノズル16から該拡大キャビティ50に溶融樹脂を射出し該キャビティに溶融樹脂を充填する。その後、
図5に示したように、該コア部23〜25と外周域成形用型板35とを型面22に圧接させた状態を保ちつつ可動型21を進出させることにより該溶融樹脂を加圧し、
図6に示した型閉状態にする。なお、このとき、可動型21を進出させる型閉力に対し、油圧シリンダ33、38の抗張力を小さく設定することにより、コア部23〜25と外周域成形用型板35を型面22に圧接させた状態が保たれ、該キャビティ50内の溶融樹脂を加圧することができる。
【0018】
そして、キャビティ50内の合成樹脂が冷却・固化して遊技板1が成形された後、
図7に示したように可動型21を後退させて型開し、この型開状態にて先行離型手段である油圧シリンダ33を収縮作動させることにより
図8に示したように支持プレート32、支持棒31を介してコア部23〜25を後退動させ、該コア部23〜25を遊技板1から離脱させる。このとき図示されてないその他のコア部も後退動し遊技板1から離脱する。この離脱作動時に、遊技板1の裏面全体が中央域成形用型板30により支えられ圧力が分散されることから、過大なストレスが掛かって遊技板1を変形させるようなおそれがない。即ち、遊技板1は肉厚で大きな開口3〜6等が存在することから、コア部23〜25を抜く際の離型抵抗が相当大きいにも拘わらず、遊技板1は変形することなく、中央域2の裏面に傷や押圧跡を付けることもない。
【0019】
次いで後行離型手段である油圧シリンダ38を伸張作動させ、
図9に示したように、支持プレート37、支持棒36を介して外周域成形用型板35を進出動させることにより、遊技板1を中央域成形用型板30から離脱させる。
なお、図示しないが、支持プレート37に突出ピン(エジェクタピン)を設け、該突出ピンは遊技板1の外周域11を突くように配置し、油圧シリンダ38を作動させ外周域成形用型板35と進出動するのと同時に該突出ピンが進出動するように構成してもよい。その場合、該突出ピンは遊技板1の外周域11を突くように配置することにより、中央域2に押圧跡が付くことがないようにすることができる。
【0020】
なおこの実施例では、
図10に部分拡大図を示したように、遊技板1の外縁リブ10の外周面がテーパ面状に形成され、該テーパ面に外周域成形用型板35を係合させることで、遊技板1を押し出し得るようにしている。このようにテーパ面状に形成することにより、遊技板1が外周域成形用型板35から離脱し易くすることができる。
【実施例2】
【0021】
次に本発明の実施例2を
図11〜
図16に従い説明する。この射出圧縮成形用金型は、実施例1と同様に、固定盤18に桁部材17を介して固定型20が固設され、可動盤19に可動型21が固設され、該可動型21に型面22が形成されたもので、14は固定盤18に設けられたスプルーブッシュ、15はホットランナ、16は固定盤18の前面に突設された射出ノズルである。
【0022】
固定型20は、遊技板1の中央域2の裏面を成形するための中央域成形用型板30と、前記開口3〜5を形成するためのコア部23〜25と、外縁リブ10を成形するための外周域成形用型板35を備えている。なお、この実施例では中央域成形用型板30を進退動可能なるようにするため、該中央域成形用型板30と外周部位30a,30bとを別体に形成している。31はこれらのコア部23〜25を進退動させるために該各コア部の背後に縦に設けられた支持棒、36は外周域成形用型板35を進退動させるために該外周域成形用型板35の背後に縦に設けられた支持棒で、該支持棒31および支持棒36の基端部を支持プレート32に止着させている。34は該支持棒31および支持棒36の基端部を支持プレート32上に止着するための止着プレートである。33は該支持プレート32に固設した油圧シリンダで、油圧シリンダ33のピストンロッドを固定盤18の前面に止着している。このため、油圧シリンダ33が作動すると支持プレート32が進退動し、支持棒31および支持棒36を介して各コア部23〜25および外周域成形用型板35を同時に進退動させる。なお、この油圧シリンダ33と支持プレート32と支持棒31および支持棒36により先行離型手段が構成される。
【0023】
また、40は中央域成形用型板30を進退動させるために必要に応じて該型板30の背後に複数本設けられる支持棒、41は該支持棒の基端部を止着させている支持プレート、42は該支持プレートに固設した油圧シリンダで、該油圧シリンダ42のピストンロッドを固定盤18の前面に止着している。43は該支持棒40の基端部を支持プレート41上に止着するための止着プレートである。この油圧シリンダ42と支持プレート41と支持棒40により後行離型手段が構成され、該油圧シリンダ42が作動すると、支持プレート41が進退動し、支持棒40を介して中央域成形用型板30を進退動させる。支持棒40および油圧シリンダ42は図面では1本であるが、これらは中央域成形用型板30を進退動させるために必要に応じて複数本設けられる。また、44は前記外周部位30aを貫通するように設けた突出ピンで、該突出ピンの基端部は支持棒40と同様に止着プレート43によって支持プレート41に止着される。なお、該突出ピン44はその先端が遊技板1の外周域11に当たるように配置される。
【0024】
この射出圧縮成形用金型では、実施例1と同様に、
図11に示したように固定型20と可動型21とをわずかに離れた接近状態とし、油圧シリンダ33を伸張作動させコア部23〜25および外周域成形用型板35を進出させ、これらのコア部および外周域成形用型板を可動型21の型面22に圧接することにより、拡大キャビティ50を形成する。そして射出ノズル16から該拡大キャビティ50に溶融樹脂を射出し該キャビティに溶融樹脂を充填した後、
図12に示したように、該コア部と外周域成形用型板35とを型面22に圧接させた状態を保ちつつ可動型21を進出させることにより該溶融樹脂を加圧し、
図13に示した型閉状態とする。
【0025】
そして合成樹脂が冷却・固化した後、
図14に示したように可動型21を後退させることにより型開し、この型開状態にて先行離型手段である油圧シリンダ33を作動(収縮)させることにより
図15に示したように支持プレート32、支持棒31、支持棒36を介してコア部23〜25および外周域成形用型板35を同時に一体的に後退動させ、コア部23〜25を遊技板1から離脱させると同時に外周域成形用型板35を該遊技板1の外周域から離脱させる。なおこのとき図示されてないその他のコア部からも遊技板1を離脱させる。この離脱作動時に遊技板1の裏面全体が中央域成形用型板30により支えられ圧力が分散されることから、過大なストレスにより遊技板1を変形させるおそれがない。即ち、コア部23〜25を抜く際に掛かる大きな離型抵抗によっても遊技板1は変形することなく、中央域2の裏面に傷や押圧跡を付けることもない。また、外周域成形用型板35を同時に抜くことによってもさらに離型抵抗が増すが、中央域成形用型板30により遊技板1の裏面全体が支えられることから遊技板1を変形させたり中央域2を傷付けるおそれがない。
【0026】
次いで後行離型手段である油圧シリンダ42を作動(伸張)させ、
図16に示したように、支持プレート41、支持棒40を介して中央成形用型板30を進出動させると共に、突出ピン44を進出動させる。これにより固定型20の外周部位30a,30bから遊技板1を離脱させる。この際にも遊技板1の中央域2の裏面は中央域成形用型板30により支えられた状態であるので、変形したり傷付くおそれがない。なお、この後は遊技板1を図示しないロボットアーム等により把持して取り出すことができる。
【実施例3】
【0027】
次に本発明の実施例3として示す射出圧縮成形用金型および成形方法を
図17〜
図22に従い説明する。この射出成形用金型は、実施例2では中央域成形用型板30を支持棒40により進退動させる構成としたのに対し、中央域成形用型板30および外周部位30a,30bを動かない構造としたものである。その他の構成は実施例2と同様であるので、同一部分または相当部分に同一符号を付す。なお、同図では、外周部位30bにも突出ピン44を設けている。
【0028】
実施例3の射出圧縮成形用金型の場合も、
図17に示したように、固定型20と可動型21とをわずかに離れた接近状態とし、油圧シリンダ33を伸張作動させ可動型21の型面22に圧接することにより、拡大キャビティ50を形成し、該拡大キャビティ50に溶融樹脂を充填した後、
図18に示したように、該コア部と外周域成形用型板とを型面22に圧接させた状態を保ちつつ可動型21を進出させることにより該溶融樹脂を加圧し、
図19に示した型閉状態にする。
【0029】
そして合成樹脂が冷却・固化した後、
図20に示したように可動型21を後退させて型開し、この型開状態にて油圧シリンダ33を作動させることにより、
図21に示したようにコア部23〜25および外周域成形用型板35を同時に一体的に後退動させ、コア部23〜25を遊技板1から離脱させると同時に外周域成形用型板35を該遊技板1の外周域から離脱させる。この離脱作動時に遊技板1の裏面全体が遊技領域成形用型板30により支えられ圧力が分散されることから、実施例1の場合と同様に、遊技板1が変形したり、中央域2を傷付けるおそれがない。
【0030】
次いで、後行離型手段である油圧シリンダ42を作動(伸張)させ、
図22に示したように、支持プレート41、突出ピン44を進出動させ、該突出ピン44によって遊技板1を中央域成形用型板30および外周部位30a,30bから離脱させる。このとき、突出ピン44は外周域11を押圧するように配置されていることから、中央域2に押圧跡を付けるおそれがない。この実施例3に示したように、本発明では中央域成形用型板30を進退動しない構成にすることもできる。
【0031】
なお、これらの実施例では、固定型20に、コア部23〜25、中央域成形用型板30、外周域成形用型板35、および先行離型手段、後行離型手段等の遊技板1の裏面および外縁リブを成形するための機構を設け、可動型21に遊技板1の前面を成形するための型面22を形成したが、固定型に遊技板1の前面を成形するための型面を形成し、可動型に遊技板1の裏面および外縁リブを成形するためのこれらの機構を設けてもよい。即ち、固定型20または可動型21を一方型とし、該一方型と相対する固定型または可動型を他方型とすると、一方型に型面22を形成し、他方型にコア部23〜25、中央域成形用型板30および外周域成形用型板35等を設ければよい。そして、先行離型手段を作動させてコア部と外周域成形用型板を中央成形用型板に対して相対的に後退動することにより該コア部および外周域成形用型板を遊技板から離脱させた後、中央域成形用型板から該遊技板を離脱させることにより、中央域に傷や押圧跡のない遊技板を射出圧縮成形により効率よく製造することができる。
【0032】
このように本発明に係る射出圧縮成形法およびその成形用金型によれば、先行離型手段と後行離型手段とにより成形品を離型させることにより、成形品を傷付けることなく成形できるとともに、この機構を利用して溶融樹脂を加圧し圧縮成形することを可能にしたので、変形のない高精度な合成樹脂製品を成形することができる。そして、開口等を切削加工することを要しないので材料の歩留まり、および生産性がよく、遊技板の製造コストを大幅に軽減することができる。また、従来のように遊技板の裏面に傷や押圧跡が付いて遊技領域の透明性、透光性が損なわれるようなおそれがないので、図柄変動表示装置や電飾等各種装飾部材をパチンコ遊技機等の遊技機における遊技板1の内側に配置することにより、遊技者が遊技板1内を鮮明に透視できるようになるとともに、電飾の光がよく通り、斬新な演出を行うことができる。
【0033】
なお、本発明によれば、成形品に傷や押圧跡が全くないように成形することを可能にするが、透明性、透光性の遊技板であっても、外周部位の非遊技領域のように特に透明性、透光性を必要とせず押圧跡があっても支障がないような部位を実施例に示したように突出ピンを設けて離型させるようにしてもよい。
また、本発明によって成形される遊技板は、無色透明のものに限らず、有色透明のものや半透明、透光性のものとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る射出圧縮成形法およびその成形用金型によれば、実施例に示した遊技板に限らず、板状の合成樹脂製品を押圧跡等の傷を付けることなく、かつ変形を少なくして高精度に成形することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 遊技板(合成樹脂製品)
2 中央域
3〜7 開口
10 外縁リブ
11 外周域
20 固定型
21 可動型
22 型面
23〜25 コア部
30 中央域成形用型板
31、36、40 支持棒
32、37、41 支持プレート
33、38、42 油圧シリンダ
35 外周域成形用型板
44 突出ピン
50 拡大キャビティ