(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、既設管やトンネルなどの空洞構造体の内側で、合成樹脂製のライニング材を用いて、長軸で筒状のライニング構造物を組み立てて、空洞構造体の内周面を覆うようにライニングする工法がある。
【0003】
たとえば、特許文献1では、帯状のライニング材を湾曲させて、長手方向の両端部を結合することにより、筒状体を形成している。そして、複数の筒状体を空洞構造体の内側に軸方向へ並べて、筒状体間を合成樹脂製の接合材で接合することで、ライニング構造物を組み立てている。
【0004】
また、特許文献2では、円弧状のセグメント材を複数円弧方向に結合することで、筒状体を形成している。そして、複数の筒状体を空洞構造体の内側に軸方向へ並べて、筒状体同士をねじ部材とナットで接合したり、一方の筒状体の端部に設けられた凹部に他方の筒状体に設けられた凸部を嵌合したりすることで、ライニング構造物を組み立てている。
【0005】
また、特許文献3では、空洞構造体の内側で帯状のライニング材を螺旋状に巻回して、隣り合うライニング材の側縁部に設けられた嵌合部同士を嵌合したり、嵌合部に接合材を接合したりすることで、ライニング構造物を組み立てている。
【0006】
ところで、空洞構造体には、真直部だけでなく、所定の曲率半径で曲がった曲がり部を有したものがある。その曲がり部の内周面をライニングするには、曲がり部に沿ってライニング構造物を曲げる必要がある。
【0007】
特許文献1では、接合材の本体部の撓み領域が伸びることで、筒状体間の間隔が広がり、空洞構造体に生じた曲がりや段差などに追随している。
【0008】
特許文献2では、可変幅セグメントにおいて、一方の筒状体の凹部と他方の筒状体の凸部の嵌合深さを、空洞構造体の曲がり部の内周側から外周側へ行くに連れて浅くなるように変化させることで、ライニング構造物を曲げている。
【0009】
また、特許文献4では、帯状のライニング材の長手方向の中央から両端に向かって幅が広がるように、幅方向の一端に緩やかな円弧状の裁断部を設け、他端に凹状または凸状の嵌合部を設けている。このライニング材を湾曲させて、筒状体を形成した後、該筒状体を空洞構造体の曲がり部の内側に軸方向へ複数並べている。そして、対向する嵌合部同士を幅方向に嵌合するとともに、対向する裁断部同士を付き合わせて、長尺当て材を融着することで、ライニング構造物を曲げている。
【0010】
また、特許文献5では、一対の円筒体の接合端部を斜めに裁断し、該裁断面同士を融着手段やジョイント手段などで接合することで、中心軸線が屈曲する曲筒部材を組み立てている。そして、空洞構造体の曲がり部の内側に複数の曲筒部材を軸方向に並べて、隣り合う曲筒部材の嵌合部同士を嵌合することで、曲がったライニング構造物を組み立てている。また、空洞構造体の真直部の内側に設けられた円筒体と、隣り合う曲筒部材の嵌合部同士を幅方向に嵌合することで、真直なライニング構造物と曲がったライニング構造物を接合している。
【0011】
さらに、特許文献6では、パイプを輪切りにした、両端または片端が軸方向と垂直な面に対して傾斜する筒状体を、空洞構造体の曲がり部の内側に複数軸方向に並べている。そして、隣り合う筒状体同士を溶接や接着剤により接合することで、曲がったライニング構造物を組み立てている。または、H型ジョイナやπ型ジョイナの両端部に幅方向の外側へ向かって開口するように設けられた嵌合部に、隣り合う筒状体の対向する側縁部を幅方向に嵌合することで、曲がったライニング構造物を組み立てている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
空洞構造体に曲率半径が小さな急曲がり部が有る場合、急曲がり部の内側にライニング構造物を組み立てて行くと、隣り合うライニング材の側縁部同士が大きな角度で曲がる。この側縁部同士の曲がりは、特許文献1のような撓み領域を有する接合材や、特許文献2のような可変幅セグメントだけでは吸収できず、側縁部同士の接合が困難になり、ライニング構造物を途中で組み立てられず、連続でライニングできないおそれがある。
【0014】
また、特許文献4〜6のように、予め形成した曲がり部用の筒状体を用いて、急曲がり部の内側にライニング構造物を組み立てて行っても、寸法や組み立ての誤差などにより、隣り合う筒状体の側縁部同士が想定外の大きな角度で曲がることがある。この側縁部同士の曲がりは、特許文献4および5のような凹凸状の接合部や、特許文献6のようなπ型ジョイナだけでは吸収できず、側縁部同士の接合が困難になり、ライニング構造物を途中で組み立てられず、連続でライニングできないおそれがある。
【0015】
本発明の課題は、急曲がり部を有する空洞構造体の内周面を連続でライニングすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によるライニング工法は、曲がり部を有する空洞構造体の内周面をライニングする工法であって、幅の広い幅広部、幅の狭い幅狭部、および幅広部から幅狭部まで幅が漸減する漸減部を有する帯状の曲がり部用ライニング材を、湾曲させて長手方向の両端部を結合することにより曲がり部用筒状体を形成する工程と、帯状の第1接合材の幅方向の一端部に設けられた第1嵌合部に、曲がり部用筒状体の側縁部を嵌合させる工程と、第1接合材の長手方向の両端部を結合する工程と、帯状の第2接合材の幅方向の両端部に設けられた第3嵌合部に、2つの第1接合材の幅方向の他端部に設けられた第2嵌合部をそれぞれ嵌合させる工程と、第2接合材の長手方向の両端部を結合する工程とを含み、空洞構造体の曲がり部の内側に、複数の曲がり部用筒状体を軸方向に並べて、該曲がり部用筒状体間を2つの第1接合材と1つの第2接合材で接合する。
【0017】
また、本発明によるライニング構造物は、曲がり部を有する空洞構造体の内周面をライニングするために、該空洞構造体の内側で組み立てられる構造物であって、幅の広い幅広部、幅の狭い幅狭部、および幅広部から幅狭部まで幅が漸減する漸減部を有する帯状の曲がり部用ライニング材と、幅方向の一端部に第1嵌合部が設けられ、他端部に第2嵌合部が設けられた帯状の第1接合材と、幅方向の両端部に第3嵌合部が設けられた帯状の第2接合材とを備えている。そして、曲がり部用ライニング材
は、湾曲
して長手方向の両端部
が結合
されていて、当該ライニング材により曲がり部用筒状体が
構成され
ている。空洞構造体の曲がり部の内側に
は、複数の曲がり部用筒状体が軸方向に並べられて
いる。各曲がり部用筒状体の側縁部に第1接合材の第1嵌合部がそれぞれ嵌合され、かつ、第2接合材の各第3嵌合部に第1接合材の第2嵌合部がそれぞれ嵌合され
た状態で、曲がり部用筒状体間が2つの第1接合材と1つの第2接合材で接合され
ている。また、第1接合材の長手方向の両端部が結合され、かつ、第2接合材の長手方向の両端部が結合されている。
【0018】
上記によると、空洞構造体の急曲がり部の内側に複数の曲がり部用筒状体を軸方向に並べて、曲がり部用筒状体間を2つの第1接合材と1つの第2接合材で接合するので、曲がり部用筒状体間に4つの嵌合部分が設けられる。このため、隣り合う曲がり部用筒状体の側縁部同士が想定外の大きな角度で曲がっていても、4つ嵌合部分の嵌合状態をそれぞれ調整して、側縁部同士の曲がりを吸収し、曲がり部用筒状体同士を確実に接合することができる。よって、急曲がり部を有する空洞構造体の内側に連続したライニング構造物を組み立てて、空洞構造体の内周面を連続でライニングすることが可能となる。
【0019】
また、本発明では、曲がり部用ライニング材は、長手方向と平行な中心線に対して両側が対称になっていてもよい。
【0020】
これにより、曲がり部用ライニング材により形成した曲がり部用筒状体の両端面が、平行ではなく、軸方向と垂直な面に対して傾斜する。このため、曲がり部用筒状体の向きを気にすることなく、該筒状体を軸方向に複数接合することができ、空洞構造体の急曲がり部に対応した曲がりを有するライニング構造物を組み立て易くすることが可能となる。
【0021】
また、本発明では、第1嵌合部は、第1接合材の一端部に幅方向へ開口するように溝状に形成され、第2嵌合部は、第1接合材の他端部に厚み方向へ突出するようにまたは窪むように形成され、第3嵌合部は、第2接合材の両端部に厚み方向へ窪むようにまたは突出するようにそれぞれ形成されていてもよい。この場合、第1接合材の第1嵌合部に、曲がり部用筒状体の側縁部を幅方向から嵌合し、第2接合材の各第3嵌合部に2つの第1接合材の第2嵌合部を厚み方向からそれぞれ嵌合すればよい。
【0022】
これにより、第1接合材の第1嵌合部への曲がり部用筒状体の側縁部の嵌合状態を調節することで、隣り合う曲がり部用筒状体の側縁部の間隔を変えることができる。また、第2接合材の第3嵌合部への第1接合材の第2嵌合部の嵌合状態を調節することで、第2接合材と第1接合材の角度を変えることができる。このため、隣り合う曲がり部用筒状体の側縁部同士の曲がりを一層吸収して、曲がり部用筒状体同士を確実に接合することができる。
【0023】
また、本発明では、第1接合材の第1嵌合部への曲がり部用筒状体の側縁部の嵌合深さが調節可能であり、該嵌合部分は固定手段により固定されてもよい。この場合、第1接合材の第1嵌合部への曲がり部用筒状体の側縁部の嵌合深さを調節した後、該嵌合部分を固定すればよい。
【0024】
これにより、曲がり部用筒状体と第1接合材を固定して、曲がり部用筒状体同士の接合強度を高めるとともに、組み立てたライニング構造物の剛性を高めることができる。
【0025】
さらに、本発明では、幅方向の両端部に第5嵌合部が設けられた一定幅で帯状の真直部用ライニング材と、幅方向の両端部に第4嵌合部が設けられた帯状の第3接合材とをさらに備えていてもよい。この場合、真直部用ライニング材を湾曲させて長手方向の両端部を結合することにより真直部用筒状体を形成し、空洞構造体が有する真直部の内側に複数の真直部用筒状体を軸方向に並べて、隣り合う各真直部用筒状体の第5嵌合部に第3接合材の第4嵌合部をそれぞれ嵌合することにより、真直部用筒状体間を第3接合材で接合し、また、第3接合材の長手方向の両端部を結合すればよい。また、空洞構造体の曲がり部と真直部の境界部分で、曲がり部用筒状体と真直部用筒状体の間を第1接合材と第2接合材と第3接合材により接合すればよい。
【0026】
これにより、空洞構造体の真直部の内側に複数の真直部用筒状体を軸方向に並べて、真直部用筒状体間を第3接合材で接合し、真直なライニング構造物を組み立てることができる。また、空洞構造体の真直部と曲がり部の境界部分で隣り合う真直部用筒状体と曲がり部用筒状体の間を第1接合材と第2接合材と第3接合材により接合するので、該筒状体間に4つの嵌合部分が設けられる。このため、隣り合う真直部用筒状体と曲がり部用筒状体の側縁部同士が想定外の大きな角度で曲がっていても、4つの嵌合部分の嵌合状態をそれぞれ調整して、側縁部同士の曲がりを吸収し、筒状体同士を確実に接合することができる。よって、空洞構造体の真直部と急曲がり部の内側に連続したライニング構造物を組み立てて、空洞構造体の内周面を連続でライニングすることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、急曲がり部を有する空洞構造体の内周面を連続でライニングすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0030】
まず、本実施形態のライニング工法で用いる部材を、
図1〜
図7を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、曲がり部用ライニング材4を示した図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。曲がり部用ライニング材4は、合成樹脂製で、帯板状に形成されていて、可撓性を有している。
【0032】
曲がり部用ライニング材4は、
図1(a)に示すように、幅の広い幅広部4a、幅の狭い幅狭部4b、および幅広部4aから幅狭部4bまで幅が漸減する漸減部4cを有している。曲がり部用ライニング材4では、長手方向と平行な中心線Qに対して両側が対称になっている。曲がり部用ライニング材4の厚みは、
図1(b)に示すように、一定になっている。
【0033】
曲がり部用ライニング材4を長手方向に湾曲させて、長手方向の両端部4dを結合することにより、
図2に示すような、曲がり部用筒状体5が形成される。曲がり部用ライニング材4の両端部4dの結合は、たとえば熱や超音波などによる融着手段、結合金具、または接着剤などを用いて行う。
【0034】
図2は、曲がり部用筒状体5の斜視図である。曲がり部用筒状体5は、矩形状に形成されている。曲がり部用筒状体5のコーナー部5cを形成し易くするため、曲がり部用ライニング材4には、長手方向に所定の間隔で切り込み4kが設けられている。曲がり部用筒状体5の両端面5bは、平行ではなく、軸方向と垂直な面に対して所定の角度で傾斜している。
【0035】
図3は、第1接合材1の側面図である。第1接合材1は、曲がり部用ライニング材4と同一の合成樹脂からなり、
図3で紙面に対して垂直な方向に延びるように帯状に形成されていて、可撓性を有している。第1接合材1の幅は、一定であり、曲がり部用ライニング材4の幅狭部4bの幅より小さくなっている。
【0036】
第1接合材1の幅方向の一端部には、幅方向の外向きに開口するように、溝状の嵌合部1a(第1嵌合部)が設けられている。また、第1接合材1の幅方向の一端部には、厚み方向の裏側(
図3で上側)へ突出するように、リブ1dが設けられている。第1接合材1の幅方向の他端部には、厚み方向の裏側へ突出するように、凸状の嵌合部1b(第2嵌合部)が設けられている。
【0037】
図4は、第2接合材2の側面図である。第2接合材2は、曲がり部用ライニング材4と同一の合成樹脂からなり、
図4で紙面に対して垂直な方向に延びるように帯状に形成されていて、可撓性を有している。第2接合材2の幅は、一定であり、曲がり部用ライニング材4の幅狭部4bの幅や第1接合材1の幅より小さくなっている。第2接合材2の幅方向の両端部には、厚み方向の裏側(
図4で上側)へ窪むように、凹状の嵌合部2a(第3嵌合部)が設けられている。
【0038】
図5は、真直部用ライニング材6の側面図である。真直部用ライニング材6は、曲がり部用ライニング材4と同一の合成樹脂からなり、
図5で紙面に対して垂直な方向に延びるように帯状に形成されていて、可撓性を有している。真直部用ライニング材6の幅は、一定であり、曲がり部用ライニング材4の幅より大きくなっている。
【0039】
真直部用ライニング材6の幅方向の両端部には、厚み方向の裏側(
図5で上側)へ窪むように、凹状の嵌合部6a(第5嵌合部)が設けられている。真直部用ライニング材6の裏面には、所定の間隔でリブ6bが設けられている。
【0040】
リブ6bが外側に来るように、真直部用ライニング材6を長手方向に湾曲させて、長手方向の両端部6dを結合することにより、
図6に示すような、真直部用筒状体7が形成される。真直部用ライニング材6の両端部6dの結合は、たとえば融着手段、結合金具、または接着剤などを用いて行う。
【0041】
図6は、真直部用筒状体7の斜視図である。真直部用筒状体7は、矩形状に形成されている。真直部用筒状体7のコーナー部7cを形成し易くするため、真直部用ライニング材6の各リブ6bには、長手方向に所定の間隔で切り込み6kが設けられている。真直部用筒状体7の両端面7bは、平行になっている。
【0042】
図7は、第3接合材3の側面図である。第3接合材3は、
図7で紙面に対して垂直な方向に延びるように帯状に形成されている。第3接合材3の幅は、一定であり、曲がり部用ライニング材4の幅や真直部用ライニング材6の幅より小さくなっている。第3接合材3は、本体部3xとカバー3yとから構成されている。
【0043】
本体部3xは、カバー3yより可撓性の高い合成樹脂からなる。本体部3xの中央には、厚み方向の裏側(
図7で上側)へ窪むように、溝3cが設けられている。本体部3xの両端部には、厚み方向の裏側(
図7で上側)へ突出するように、凸状の嵌合部3a(第4嵌合部)が設けられている。溝3cと各嵌合部3aの間には、幅方向に伸縮可能な撓み部3bが設けられている。
【0044】
カバー3yは、曲がり部用ライニング材4と同一の合成樹脂からなる。カバー3yの中央には、厚み方向の裏側(
図7で上側)へ突出するように、突起3eが設けられている。本体部3xの溝3cにカバー3yの突起3eを嵌合させることで、本体部3xの表側を覆うように、カバー3yが取り付けられる。
【0045】
次に、本実施形態のライニング工法を、
図8〜
図17を参照しながら説明する。
【0047】
本ライニング工法は、たとえば
図9に示すような、矩形状の既設管やトンネルなどの空洞構造体Pの内周面を覆うようにライニングするために施工される。空洞構造体Pは、
図8などに示すように、真直部Ps、Ptと、曲率半径の小さい急曲がり部Pcを有している。
【0048】
まず、空洞構造体Pの一方の真直部Psの内周面をライニングして行く。そのために、真直部Psの内側の径や形状に対応させて、真直部用ライニング材6(
図5参照)を湾曲させて、長手方向の両端部6dを結合することにより、真直部用筒状体7(
図6参照)を形成する。
【0049】
次に、
図9に示すように、真直部用筒状体7を真直部Psの内側に配置する。このとき、補強のため、真直部用筒状体7のストレート部7sには、金属製のストレートフレーム8sを装着し、コーナー部7cには、金属製のハンチフレーム8cを装着する。このフレーム8s、8cの真直部用筒状体7への装着は、
図10に示すような、連結棒材11や金具12や螺合部材13などを用いて行う。連結棒材11は、リブ6bに設けられた孔(符号省略)を貫通している。また、真直部用筒状体7を位置決めし易くするため、
図9に示すように、真直部Psの内周面にスペーサ9a、9bを取り付ける。
【0050】
次に、
図8に示すように、真直部Psの内側に複数の真直部用筒状体7を軸方向に並べた後、真直部用筒状体7間を第3接合材3により接合する。
【0051】
詳しくは、
図10に示すように、隣り合う真直部用筒状体7の嵌合部6aに、第3接合材3の嵌合部3aを厚み方向にそれぞれ嵌合することにより、真直部用筒状体7間を第3接合材3で接合する。このとき、水密性を高めるため、嵌合部6aと嵌合部3aの間に、図示しないシール材を挟み込んでもよい。
【0052】
また、予め第3接合材3を長手方向に湾曲させて、長手方向の両端部3dを結合することにより、第3接合材3を筒状にしてから、該筒状の第3接合材3により真直部用筒状体7間を接合してもよい。または、帯状のままの第3接合材3により真直部用筒状体7間を接合してから、第3接合材3を筒状にしてもよい。第3接合材3の両端部3d(
図7)の結合は、たとえば融着手段や接着剤などを用いて行う。
【0053】
また、真直部用筒状体7間を第3接合材3の本体部3xで接合してから、本体部3xにカバー3yを取り付けるようにしてもよい。または、第3接合材3の本体部3xにカバー3yを取り付けて、第3接合材3を組み立ててから、該第3接合材3により真直部用筒状体7間を接合してもよい。
【0054】
上記工程により、真直部Psの内周面を真直部用ライニング材6と第3接合材3によりライニングし終えると、次に急曲がり部Pcの内周面をライニングして行く。そのために、急曲がり部Pcの内側の径、形状、および曲率に対応させて、曲がり部用ライニング材4を湾曲させて、長手方向の両端部4dを結合することにより、曲がり部用筒状体5(
図2参照)を形成する。
【0055】
次に、
図11に示すように、曲がり部用筒状体5を真直部Psと急曲がり部Pcの境界部分の内側に配置する。このとき、曲がり部用筒状体5を位置決めし易くするため、急曲がり部Pcの内周面にスペーサ9cを取り付ける。そして、隣り合う曲がり部用筒状体5と真直部用筒状体7の間を第3接合材3と第2接合材2と第1接合材1により接合する。
【0056】
詳しくは、
図12に示すように、真直部用筒状体7の一方の嵌合部6aに、第3接合材3の一方の嵌合部3aを厚み方向に嵌合する。また、第2接合材2の一方の嵌合部2aに、第3接合材3の他方の嵌合部3aを厚み方向に嵌合する。また、第2接合材2の他方の嵌合部2aに、第1接合材1の嵌合部1bを厚み方向に嵌合する。さらに、第1接合材1の嵌合部1aに、曲がり部用筒状体5の一方の側縁部5aを幅方向に嵌合する。これにより、隣り合う曲がり部用筒状体5と真直部用筒状体7の間が、接合材1〜3により接合される。
【0057】
その際、隣り合う曲がり部用筒状体5と真直部用筒状体7の側縁部同士の曲がり角度に応じて、嵌合部1aへの側縁部5aの嵌合深さを調節したり、嵌合部2aへの嵌合部1b、3aの嵌合角度を調節したり、嵌合部6aへの嵌合部3aの嵌合角度を調節したりする。この調節後、嵌合部1aと側縁部5aとの嵌合部分を、たとえば融着手段などにより固定する。
【0058】
また、水密性を高めるため、嵌合部1aと側縁部5aの間、嵌合部2aと嵌合部1bの間、嵌合部2aと嵌合部3aの間、および嵌合部6aと嵌合部3aの間に、図示しないシール材を挟み込んでもよい。
【0059】
また、予め接合材1〜3を長手方向に湾曲させて、長手方向の両端部1d、2d、3d(
図3、
図4、
図7)を結合することにより、接合材1〜3をそれぞれ筒状にしてから、該筒状の接合材1〜3により筒状体7、5間を接合してもよい。または、帯状のままの接合材1〜3により筒状体7、5間を接合してから、該接合材1〜3を筒状にしてもよい。第1接合材1の両端部1dや第2接合材2の両端部2dの結合も、たとえば融着手段や接着剤などを用いて行う。
【0060】
次に、
図13に示すように、急曲がり部Pcの内側に複数の曲がり部用筒状体5を軸方向に並べた後、曲がり部用筒状体5間を第1接合材1と第2接合材2により接合する。
【0061】
詳しくは、
図14に示すように、隣り合う曲がり部用筒状体5の側縁部5aを2つの第1接合材1の各嵌合部1aに幅方向にそれぞれ嵌合する。また、1つの第2接合材2の各嵌合部2aに、2つの第1接合材1の各嵌合部1bを厚み方向にそれぞれ嵌合する。これにより、曲がり部用筒状体5間が、2つの第1接合材1と1つの第2接合材2により接合される。
【0062】
その際、隣り合う曲がり部用筒状体5の側縁部5a同士の曲がり角度に応じて、嵌合部1aへの側縁部5aの嵌合深さを調節したり、嵌合部2aへの嵌合部1bの嵌合角度を調節したりする。この調節後、嵌合部1aと側縁部5aとの嵌合部分を、たとえば融着手段などにより固定する。
【0063】
また、水密性を高めるため、嵌合部1aと側縁部5aの間と、嵌合部2aと嵌合部1bの間に、図示しないシール材を挟み込んでもよい。
【0064】
また、予め接合材1、2を長手方向に湾曲させて、長手方向の両端部1d、2dを結合することにより、接合材1、2をそれぞれ筒状にしてから、該筒状の接合材1、2により曲がり部用筒状体5間を接合してもよい。または、帯状のままの接合材1、2により曲がり部用筒状体5間を接合してから、該接合材1、2を筒状にしてもよい。
【0065】
上記工程により、急曲がり部Pcの内周面を曲がり部用ライニング材4と接合材1、2によりライニングし終えると、次に他方の真直部Ptの内周面をライニングして行く。そのために、真直部Ptの内側の径や形状に対応させて、真直部用ライニング材6(
図5参照)を湾曲させて、長手方向の両端部6dを結合することにより、真直部用筒状体7(
図6参照)を形成する。
【0066】
そして、
図15に示すように、真直部用筒状体7を急曲がり部Pcと真直部Ptの境界部分の内側に配置し、隣り合う曲がり部用筒状体5と真直部用筒状体7の側縁部同士の角度が小さければ、該筒状体5、7の間を第1接合材1だけで接合してもよい。詳しくは、
図16に示すように、曲がり部用筒状体5の側縁部5aを第1接合材1の嵌合部1aに嵌合し、第1接合材1の嵌合部1bを真直部用筒状体7の嵌合部6aに嵌合することにより、筒状体5、7間を接合する。
【0067】
一方、急曲がり部Pcと真直部Ptの境界部分で、隣り合う曲がり部用筒状体5と真直部用筒状体7の側縁部同士の角度が大きければ、前述したように、該筒状体5、7の間を3種類の接合材1〜3により接合すればよい(
図12参照)。
【0068】
上記工程により、急曲がり部Pcと真直部Ptの境界部分で、隣り合う筒状体5、7を接合し終えると、次に真直部Ptの内側に複数の真直部用筒状体7を軸方向に並べて、前述したように真直部用筒状体7間を第3接合材3により接合する。
【0069】
以上の工程により、
図17に示すように、真直部Ps、Ptと急曲がり部Pcを有する空洞構造体Pの内側に、ライニング材4、6と接合材1〜3により構成された、連続したライニング構造物100が組み立てられる。すなわち、空洞構造体Pの内周面が連続でライニングされた状態となる。
【0070】
この後、ライニング構造物100の内側に、図示しない支保工が設置され、空洞構造体Pとライニング構造物100の間に数段階に分けて充填材が注入される。そして、充填材が硬化することで、空洞構造体Pとライニング構造物100が一体化される。
【0071】
以上の実施形態によると、空洞構造体Pの急曲がり部Pcの内側に複数の曲がり部用筒状体5を軸方向に並べて、曲がり部用筒状体5間を2つの第1接合材1と1つの第2接合材2で接合するので、曲がり部用筒状体5間に4つの嵌合部分が設けられる。このため、隣り合う曲がり部用筒状体5の側縁部5a同士が想定外の大きな角度で曲がっていても、4つ嵌合部分の嵌合状態をそれぞれ調整して、側縁部5a同士の曲がりを吸収し、曲がり部用筒状体5同士を確実に接合することができる。この結果、急曲がり部Pcの内側に、急曲がり部Pcに対応した曲がりを有するライニング構造物100を組み立てることができる。
【0072】
また、空洞構造体Pの真直部Ps、Ptの内側に複数の真直部用筒状体7を軸方向に並べて、真直部用筒状体7間を第3接合材3で接合している。このため、真直部Ps、Ptの内側に、真直なライニング構造物100を組み立てることができる。
【0073】
また、空洞構造体Pの真直部Ps、Ptと曲がり部Pcの境界部分で隣り合う真直部用筒状体7と曲がり部用筒状体5の間を、第1接合材1と第2接合材2と第3接合材3により接合するので、該筒状体5、7間に4つの嵌合部分が設けられる。このため、隣り合う筒状体5、7の側縁部同士が想定外の大きな角度で曲がっていても、4つ嵌合部分の嵌合状態をそれぞれ調整して、側縁部同士の曲がりを吸収し、筒状体5、7同士を確実に接合することができる。この結果、急曲がり部Pcと真直部Ps、Ptの境界部分の内側で、ライニング構造物100を連続させることができる。
【0074】
よって、真直部Ps、Ptと急曲がり部Pcを有する空洞構造体Pの内側に、連続したライニング構造物100を組み立てて、空洞構造体Pの内周面を連続でライニングすることが可能となる。
【0075】
また、以上の実施形態では、曲がり部用ライニング材4は、長手方向と平行な中心線Qに対して両側が対称になっているので、曲がり部用ライニング材4により形成した曲がり部用筒状体5の両端面5bが、平行ではなく、軸方向と垂直な面に対して傾斜する(
図2参照)。このため、曲がり部用筒状体5の向きを気にすることなく、該筒状体5を軸方向に複数接合することができ、空洞構造体Pの急曲がり部Pcに対応した曲がりを有するライニング構造物100を組み立て易くすることが可能となる。
【0076】
また、以上の実施形態では、嵌合部1aへの曲がり部用筒状体5の側縁部5aの嵌合深さを調節することで、隣り合う曲がり部用筒状体5の側縁部5aの間隔や、隣り合う曲がり部用筒状体5と真直部用筒状体7の側縁部の間隔を変えることができる。また、嵌合部2aへの嵌合部1b、3aの嵌合角度を調節することで、第2接合材2に対する第1嵌合材1や第3接合材3の角度を変えることができる。さらに、嵌合部6aへの嵌合部3aの嵌合角度を調節することで、第3接合材3と真直用筒状体7の角度を変えることができる。
【0077】
そして、上記各嵌合部分を調節した結果、隣り合う曲がり部用筒状体5の側縁部5a同士の曲がりを一層吸収して、曲がり部用筒状体5同士を確実に接合することが可能となる。また、隣り合う曲がり部用筒状体5と真直部用筒状体7の側縁部同士の曲がりを一層吸収して、該筒状体5、7同士を確実に接合することが可能となる。
【0078】
さらに、以上の実施形態では、第1接合材1の嵌合部1aへの曲がり部用筒状体5の側縁部5aの嵌合深さを調節した後、該嵌合部分を固定している。このため、隣り合う筒状体5、7同士の接合強度を高めるとともに、組み立てたライニング構造物100の剛性を高めることができる。
【0079】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、曲がり部用ライニング材4を表面も裏面も平坦な帯板状に形成した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、
図18や
図19に示すように、曲がり部用ライニング材14、24の裏面に長手方向に沿ってリブ14b、24bを設けて、曲がり部用ライニング材14、24やこれにより形成する曲がり部用筒状体15、25の剛性を高めてもよい。なお、曲がり部用ライニング材14、24による曲がり部用筒状体15、25の形成方法は、曲がり部用ライニング材4による曲がり部用筒状体5の形成方法と同様である。また、
図18や
図19に示すように、第1接合材11、21と第2接合材12、22にも、裏面に長手方向に沿ってリブ11d、21d、12d、22dを設けてもよい。
【0080】
また、以上の実施形態では、ライニング材4、6や接合材1〜3の長手方向の両端部を接合して、筒状に成形したが、空洞構造体Pの内側の径や形状や曲率に応じて、ライニング材4、6や接合材1〜3を長手方向の適当な位置で切断してから、該切断面を接合して、筒状に成形してもよい。
【0081】
また、以上の実施形態では、曲がり部用筒状体5の凸状の側縁部5aを、第1接合材1の凹状の嵌合部1aに幅方向に嵌合した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、
図18に示すように、曲がり部用筒状体15(曲がり部用ライニング材14)の側縁部15aに、厚み方向の裏側(
図18で上側)へ突出するように凸部14cを設けるとともに、第1接合材11の一端部に、厚み方向の裏側へ窪むように凹状の嵌合部11a(第1嵌合部)を設けてもよい。そして、嵌合部11aに凸部14aを厚み方向に嵌合することにより、曲がり部用筒状体15と第1接合材11とを接合することができる。また、曲がり部用筒状体の側縁部と第1接合材の嵌合部のうち、一方を凹状にし、他方を凸状にして、これらを幅方向に嵌合させてもよい。
【0082】
また、以上の実施形態では、第1接合材1の凸状の嵌合部1bを、第2接合材2の凹状の嵌合部2aに厚み方向に嵌合した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、
図18に示すように、第1接合材11の他端部に、幅方向へ窪むように凹状の嵌合部11b(第2嵌合部)を設けるとともに、第2接合材12の幅方向に突出する両側縁部を嵌合部12a(第3嵌合部)としてもよい。そして、嵌合部11bに嵌合部12aを幅方向に嵌合することにより、第1接合材11と第2接合材12とを接合することができる。
【0083】
また、
図19に示すように、第1接合材21の他端部に、厚み方向の裏側(
図19で上側)へ窪むように凹状の嵌合部21b(第2嵌合部)を設けるとともに、第2接合材22の両端部に厚み方向の裏側へ突出するように凸状の嵌合部22a(第3嵌合部)を設けてもよい。そして、嵌合部21bに嵌合部22aを厚み方向に嵌合することにより、第1接合材21と第2接合材22とを接合することができる。さらに、第1接合材21の嵌合部と第2接合材22の嵌合部のうち、一方を凹状にし、他方を凸状にして、これらを幅方向に嵌合してもよい。
【0084】
また、以上の実施形態では、第3接合材3の凸状の嵌合部3aを、第2接合材2の凹状の嵌合部2aに厚み方向に嵌合した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、第2接合材2の嵌合部と第3接合材3の嵌合部のうち、一方を凹状にし、他方を凸状にして、これらを幅方向に嵌合してもよい。
【0085】
また、以上の実施形態では、第3接合材3の凸状の嵌合部3aを、真直部用筒状体7の凹状の嵌合部6aに厚み方向に嵌合した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、第3接合材3の嵌合部と真直部用筒状体7の嵌合部のうち、一方を凹状にし、他方を凸状にして、これらを幅方向に嵌合してもよい。
【0086】
さらに、以上の実施形態では、矩形状の空洞構造体Pの内周面をライニングするために、本発明を適用した例を挙げたが、円形状や馬蹄形状の空洞構造体の内周面をライニングするために、本発明を適用することも可能である。また、本発明は、既設管に限らず、新設管のライニングにも適用できることはいうまでもない。