(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明による診療システム1などについて
図1乃至
図13とともに説明する。
【0046】
図1は、診療システム1のシステムの概要図を示し、
図2はチェアーユニット10の構成を示す概略斜視図を示す。
図3は、診療システム1に備えられている根管治療用ハンドピース20の概略斜視図を示し、
図4は
図2に示された報知モニタ16cに表示された判定画面100の説明図を示す。
【0047】
図5は、診療システム1に備えられた根管治療用ハンドピース20を用いて根管治療を行う際のフローチャートを示し、
図6は比較・判定処理のフローチャートを示す。
図7は積算負荷値Lを算出する際に用いる基準評価値の一例を示し、
図8及び
図9は積算負荷値Lを評価式で算出する場合の説明図である。
図8は
図8(a)および
図8(b)からなり、
図8(a)は根管Rに対する根管治療用ハンドピース20を用いた根管治療の説明図を示し、
図8(b)は検出負荷値の時間経過毎の変化をグラフ化したイメージ図を示す。
【0048】
そして、
図10は診療システム1とは別体として構成される報知機能付根管治療装置60の概略斜視図を、
図11及び
図12は報知装置を備えた根管治療用ハンドピース20a及び歯石除去用スケーラ70の概略斜視図及びそれらに備えられている表示部の説明図である。
図11は
図11(a)と
図11(b)からなり、
図11(a)は報知装置を備えたハンドピース20aの概略斜視図を示し、11(b)は報知装置を備えたハンドピース20aに備わるハンドピース用表示部28cの説明図を示す。
【0049】
図11と同様に、
図12も
図12(a)と
図12(b)からなり、
図12(a)は歯石除去用スケーラ70の概略斜視図を示し、12(b)は報知装置を備えた歯石除去用スケーラ70に備わるスケーラ用表示部77cの説明図を示す。
【0050】
診療システム1は、
図1で示すように、チェアーユニット10、切削工具26を装着する根管治療用ハンドピース20、記憶装置30及び制御部40で構成している。
チェアーユニット10は、
図2に示すように、機器操作部11、唾液や冷却水等の吸引装置やうがいを行うための装置が装備されているベースンユニット12、背面シートの傾動や座面の昇降が可能な診療椅子13、並びに、診療椅子13に接続され、フートコントローラ14、モニタ15および報知部16で構成されるとともに、根管治療用ハンドピース20をホルダに装着可能に備えている。
【0051】
機器操作部11は、
図2に示すように、上面に備えたトレーテーブル101の前方に備えた各種操作デバイスを包含する操作パネル102により、操作パネル102の前側のホルダに装着される根管治療用ハンドピース20や、背面側に備えたモニタ15に表示される表示画面を操作する構成である。
なお、操作パネル102は、タッチスクリーンやポインティングスティック、あるいはスイッチ等で構成している。また、マウスなどの適宜の入力デバイスを備えてもよい。
【0052】
モニタ15は、操作パネル102の背面側に備えた表示画面を表示する表示部であり、例えば、患者の性別や年齢、前回の治療日などの個人情報や、図示しないX線撮影装置により撮像し生成した施術の対象となる歯牙に関する歯牙画像、当該歯牙画像と口腔内カメラ(図示省略)で撮影した歯牙画像などを表示することができる表示部である。
【0053】
報知部16は、操作パネル102の左側に設置されており、後述する判定結果報知部32cの制御によってブザーなどの音声や照明などで報知し、さらに判定結果の表示をする報知装置である。具体的には、ブザーなどの音声を出力する出力部である音声出力部16a、LEDライトを点灯または点滅させることにより視覚的に報知する光出力部16bおよび、後述する交換基準値記憶部32で行った演算処理により下した判定結果などを示す後述の判定画面100を表示する報知モニタ16cとで構成されている。
なお、本実施形態において、報知モニタ16cなどは操作パネル102に設置されているが、例えば、根管治療用ハンドピース20などに設置しても良い。
【0054】
なお、報知部16は、根管長測定部(図示省略)で検出した根管治療用ハンドピース20の先端部分が根尖への近接を報知する報知部を兼ねているが、本構成に限定するものでなく、別構成として、切削工具26の先端部分の根尖への近接を別途報知する報知部を設けても良い。
【0055】
次に、機器操作部11について具体的に説明する。
機器操作部11は、
図2に示すように、術者の足により操作され、踏み込み及び踏み込み量を検出できるペダル14aを備えたフートコントローラ14以外に、トルク値の上限値を定める操作を受け付けるトルク値設定操作部11a、交換基準値Eを所定の範囲内で変更する操作を受け付ける交換基準値変更操作部11b、交換閾値Tを設定および変更を受け付ける交換閾値設定操作部11c、積算負荷値が交換閾値Tを超えた場合の報知方法の設定および変更を受け付ける報知方法設定操作部11d、回転数設定操作部11eを備えている。
【0056】
トルク値設定操作部11aは、根管治療用ハンドピース20の先端部に切削工具26を装着し、施術の対象である歯牙の根管を切削する場合の根管治療用ハンドピース20に作用するトルク値の上限値(以下、『設定トルク値』とする。)を入力または変更する操作を受け付けるための操作部であり、トルク値設定操作部11aで設定トルク値の設定および変更の操作を受け付け、上述の操作パネル102を用いて操作入力することで、各根管治療用ハンドピース20の切削工具26の種類ごとに定められているトルク値を設定したり変更したりすることができる。
なお、この切削工具26の種類ごとに定められているトルク値や回転数の設定は、RFIDなどによる識別によって自動的に設定するようにしても良いし、手動で入力しても良い。
【0057】
交換基準値変更操作部11bは、根管治療用ハンドピース20に装着する各切削工具26の交換基準値Eを所定の範囲内で変更する操作を受け付けるための操作部であり、交換基準値変更操作部11bを操作することにより交換基準値Eの変更操作を受け付けた後に、上述の操作パネル102を用いて操作入力する構成である。
【0058】
交換閾値設定操作部11cは、交換基準値Eの範囲内において、交換基準値Eに対して所定の係数を乗算して算出された交換閾値T
の設定または変更を受け付ける操作部であり、交換閾値設定操作部11cでは、3段階以内で交換閾値Tの設定および変更をすることができる。
【0059】
なお、本実施形態において、交換閾値Tを3段階以内に設定・変更できるとしているが、本発明は当該実施例に限定するものではなく、例えば1段階のみや2段階のみで設定・変更できも良いし、4段階以内などであっても良い。また、切削工具やハンドピースの種類に応じて複数段階設定できるようにしても良い。すなわち、交換基準値の範囲内で交換閾値Tを設定・変更できればよく、変更の形式や変更の方法などには限定されない。
【0060】
また、報知方法設定操作部11dは、切削工具26に作用した負荷値の積算値である積算負荷値Lが交換閾値設定操作部11cで定めた所定の交換閾値Tを超えた場合の報知方法を設定および変更するための操作を受け付ける操作部である。具体的には、報知方法設定操作部11dを操作することにより、報知方法の設定および変更を受け付け、操作パネル102を操作して、後述する演算部41dで算出した積算負荷値Lが交換閾値Tを超えた場合に、ブザー音やメロディ音、光出力部16bでの光の発光方法などの報知方法を設定・変更することができる。
【0061】
回転数設定操作部11eは、切削工具の種類に応じた回転数を設定する操作部である。回転数設定操作部11eで設定回転数の設定および変更の操作を受け付け、上述の操作パネル102に備わるスイッチ等を操作入力することで、各根管治療用切削工具26の種類ごとに定められている回転数を設定したり変更したりすることができる。
【0062】
根管治療用ハンドピース20は、
図3に示すように、ハンドピース本体21の先端のヘッド部分に切削工具26を交換可能に装着する着脱部(図示省略)、着脱部に装着された切削工具26を識別するための切削工具認識部23、ハンドピース本体21の内部に、切削工具26を回転駆動するマイクロモータ等の駆動部24(
図1参照)、制御部(図示省略)、根管長測定部(図示省略)、及び後述する判定結果報知部41cによりハンドピース本体21を振動させて報知することができるハンドピース振動部27(
図1参照)を内蔵し、後端側の接続ケーブル25によって、図示省略する口腔電極に接続されている。
【0063】
記憶装置30は、HDDやSSDなどで構成され、以下の機能的構成を備えている。記憶装置30は、切削工具26の使用条件ごとに前記医療用機器に作用する積算負荷値を算出するために用いる評価基準値を記憶した記憶部である評価値記憶部31、切削工具26ごとに設定された交換基準値Eを記憶する記憶部である交換基準値記憶部32、交換閾値設定操作部11cで設定・変更を受け付けて設定した交換閾値Tを記憶する交換閾値記憶部33および切削工具26に作用した積算負荷値Lを記憶した記憶部である積算負荷値記憶部34とで構成されている。
【0064】
評価値記憶部31に記憶されている評価基準値は、例えば、
図7に示すような、切削工具26の回転数や切削工具26を装着した根管治療用ハンドピース20の設定トルク値、トルクリバースの回数、及び使用時間などの使用条件下で、切削工具26に作用する積算負荷値を算出するための負荷係数Cである。評価値記憶部31は、このような切削工具26の種別や根管治療用ハンドピース20を構成する歯車の種類などに対する使用条件ごとの負荷係数Cを記憶している。
【0065】
交換基準値記憶部32は、各切削工具26を使用することにより各切削工具26に作用する負荷値に対して、切削工具26を適正に使用することができる範囲の上限値を示す交換基準値Eを、切削工具26ごとに記憶する記憶部であり、当該交換基準値Eは、例えば、材質や形状に基づいて算出した交換基準値Eや、所定の負荷が作用した場合における使用耐久時間などを切削工具メーカの推奨する値などであっても良い。
【0066】
積算負荷値記憶部34は、過去に使用した根管治療用ハンドピース20や切削工具26などに作用した積算負荷値Lや、使用中の根管治療用ハンドピース20や切削工具26などに作用した積算負荷値Lを随時記憶する記憶部であり、長時間の使用や短時間の使用を複数回行うような継続的な使用をした場合であっても、その際に使用した根管治療用ハンドピース20や切削工具26などに作用した積算負荷値Lを記憶することができる。
【0067】
制御部40は、CPUとROMとRAMで構成されており、以下の機能的構成を備えている。
詳述すると、制御部40には、各種の情報に基づいて所定の演算処理を行う演算処理部41、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の駆動を制御する施術具駆動制御部42、施術中の根管治療用ハンドピース20のトルク値(以下『検出トルク値』とする)「検出する駆動負荷検出部43および、切削工具26の駆動時間を検出する駆動時間検出部44を備えている。
【0068】
演算処理部41は、記憶装置30に記憶されている各種の情報に基づいて所定の演算処理などを行う処理部であり、比較処理部41a、判定処理部41b、判定結果報知部41c、演算部41d及び情報読込部41eで構成されている。
比較処理部41aは、交換基準値記憶部32に記憶する切削工具26に対応した交換基準値Eまたは交換閾値記憶部33に記憶する切削工具26に対応した交換閾値Tと後述する演算部41dで算出した積算負荷値Lとを比較する比較処理部である。
【0069】
判定処理部41bは比較処理部41aで行った比較の結果を判定する判定処理部であり、本実施形態では、比較処理部41aで比較した積算負荷値Lと交換閾値Tなどの大小などを判定や、積算負荷値Lと交換閾値Tとの大小の判定の結果、切削工具26を装着した根管治療用ハンドピース20の駆動を許容するか否かの判定も行う。
なお、本実施形態では上述の判定を行う形態としているが、この判定に限定されるものではなく、例えば積算負荷値Lと交換閾値Tなどとの比較の大小のみを判定しても良い。
【0070】
判定結果報知部41cは、判定処理部41bで得られた判定結果に基づいて、報知部16を作動させる処理部である。例えば、報知方法設定操作部11dで設定した報知方法により音声出力部16aから特定音を出力するように制御することや、光出力部16bを点灯または点滅させること、報知モニタ16cに表示される判定画面100(
図4に示す)に判定結果を表示すること、ハンドピース本体21に備えたハンドピース振動部27の振動を制御すること、施術具駆動制御部42により駆動部24の回転等を制御することができる。さらにまた、これらの報知動作を複数個、例えば音の発生と光の発光といった複数個の動作を同時に作動させる処理を行う構成とすることもできる。
【0071】
演算部41dは、評価値記憶部31に記憶されている負荷係数Cに基づいて切削工具26に作用する積算負荷値Lを算出するとともに、判定処理部41bの結果を報知モニタ16cに表示できるように演算処理を行う演算部である。情報読込部41eは、切削工具認識部23で認識した切削工具26に基づいて、演算部41dで行う積算負荷値Lの算出に必要な負荷係数Cや、交換基準値記憶部32に記憶している交換基準値E、交換閾値記憶部33に記憶している交換閾値T、積算負荷値記憶部34に記憶している積算負荷値Lを読み込む情報読込部である。
【0072】
施術具駆動制御部42は、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の回転や振動等を駆動制御する制御部である。また施術具駆動制御部42は、駆動負荷検出部43で検出する検出トルク値がトルク値設定操作部11aで設定した設定トルク値を超えた場合には、切削工具26の回転を軽減や停止などの制御し、また、演算部41dで算出した積算負荷値Lが、これに対応する交換基準値Eに対して所定の値となった旨の判定があった場合や、積算負荷値Lが交換閾値設定操作部11cを用いて設定した交換閾値Tを超えた旨の判定があった場合に、施術具駆動制御部42により切削工具26の回転や振動の軽減や停止などの制御をする。
【0073】
駆動負荷検出部43は、ハンドピースなどに流れる電流値を検出することにより、根管治療用ハンドピース20に作用した負荷値を検出する検出部であるが、例えばハンドピースなどに取付けられた切削工具26を回転させる駆動部24の駆動が停止した回数を検出する検出部、切削工具26に過剰な負荷が加わることで、前記切削工具が一時的に逆回転するトルクリバースがあった回数などを検出する検出部を備えても良い。
【0074】
なお、本実施形態においては、モータ駆動のハンドピースにおいて切削工具にかかる負荷トルクの検出にあたって、駆動負荷検出部43は電流値を検出する構成としているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、切削工具26を回転させる駆動部24の時間当たりの回転数を検出する検出部や、所定の回転数を行うのに必要な時間を検出する検出部などとしても良い。
【0075】
施術回数検出部45では、根管治療用ハンドピース20の使用回数及びその医療用機器に装着されて使用された切削工具26の使用回数をカウントする検出部である。根管治療用ハンドピース20の使用回数は、具体的には個々の根管治療用ハンドピース20の操作回数をカウントして計算する構成とし、また切削工具26の使用回数をカウントする場合には、切削工具認識部23による認識した切削工具26の操作回数のカウントで計算する構成としているが、この計算にとらわれずに操作時間のカウント等種々のカウント方法が採用してもよい。
【0076】
次に
図4に基づいて、報知モニタ16cに表示される判定画面100について説明する。
判定画面100は、演算部41dで演算処理した判定結果を表示するほか、施術中における切削工具26の先端部分の施術対象である歯牙Dの根尖Rtに対する接近度合いを示す根管長測定結果や、施術中の検出トルク値の値などを表示することができる表示画面であり、積算負荷表示部110、根管長測定表示部120、検出トルク値表示部130、デジタル表示部140で構成している。
【0077】
積算負荷表示部110は、
図4に示すように、報知モニタ16cの画面右側に位置し、交換基準値Eに対する積算負荷値Lの割合を示すインジケータ型の表示部であり、交換基準値Eを表示する相対交換基準値表示部111、積算負荷値Lを表示する相対積算負荷値表示部112、交換閾値Tを表示する相対交換閾値表示部113で構成されている。
【0078】
相対交換基準値表示部111は、交換基準値Eを百分率で換算して表示した表示部である。相対積算負荷値表示部112は、切削工具認識部23で認識した切削工具26の積算負荷値Lを、百分率に換算した交換基準値Eに対応するように換算して表示したインジケータである。
【0079】
相対交換閾値表示部113は、交換閾値設定操作部11cで設定・変更した3段階の交換閾値Tを、百分率に換算した交換基準値Eと対応するように換算した際に、相対交換基準値表示部111のどの位置に値になるかを表示している。ここで、相対交換閾値表示部113で表示する、交換閾値Tのうち最も低い値である交換閾値(以下、『最少閾値T1』とする。)は、交換基準値Eを100%としたのに対して例えば70%となるように交換閾値設定操作部11cで設定してあり、同様に、中間に位置する交換閾値(以下、『中間閾値T2』とする。)は、交換基準値Eを100%とした値に対して80%となるように、最も高い位置である交換閾値(以下、『最高閾値T3』とする。)は、85%となるように交換閾値設定操作部11cで設定している。
【0080】
なお、これらの交換閾値Tは、交換閾値設定操作部11cを操作することにより自由に変更することができる。具体的には、交換閾値Tの数を2個に変更したり、交換基準値Eに対する割合を適宜変更したりすることができる。また、交換基準値変更操作部11bを操作することにより、交換基準値Eを変更することもできる。
【0081】
根管長測定表示部120は、
図4に示すように、報知モニタ16cの画面中央部分に位置し、施術の対象である歯牙Dの根管Rの根管長に対する切削工具26の先端部分の相対位置を表示する表示部である。根管長測定表示部120は、根管長を百分率表示するインジケータである根管長表示部121及び切削工具26の先端部分の根管長に対する位置を表示する切削工具位置表示部122とで構成しており、根管長表示部121の内側に根尖Rtに対して切削工具26の先端部分がどの程度まで達しているかの目安となる数字が記載されている。
【0082】
検出トルク値表示部130は、
図4に示すように、報知モニタ16cの画面左側に位置し、トルク値設定操作部11aを操作することによりで設定した設定トルク値に対する検出トルク値の大きさを表示するインジケータであり、設定トルク値を100%として表示する設定トルク値表示部131と検出トルク値を設定トルク値表示部131に合わせて表示するインジケータである相対トルク値表示部132とで構成している。
【0083】
デジタル表示部140は、
図4に示すように、検出トルク値表示部130の下側に位置する数字をデジタル表示可能とした表示部である。デジタル表示部140は、根管治療用ハンドピース20の使用状況を表示する表示部であり、駆動部24aの温度、駆動時間検出部44で検出する根管治療用ハンドピース20または切削工具26などの使用時間、駆動負荷検出部43で検出する根管治療用ハンドピース20の検出トルク値およびハンドピース駆動部24の回転数をそれぞれ切り替えて表示することができる。
【0084】
続いて、上記構成を有する診療システム1を用いて施術の対象である歯牙Dの根管Rを、切削工具26を用いて拡大切削する場合における診療システム1の使用方法を、
図5および
図6のフローチャートに基づいて詳しく説明する。
【0085】
まず、施術対象である歯牙Dの根管Rを施術するために、施術者は、根管Rの拡大切削に適した切削工具26を根管治療用ハンドピース20の着脱部に装着させる。その際に、根管治療用ハンドピース20に備えられている切削工具認識部23が切削工具26を認識する(ステップs1)。なお、切削工具認識部23は、別途根管治療用ハンドピース20に接続される根管治療装置の制御部又は診療システム1のいずれかに配置されていても良い。
【0086】
次に、交換基準値の設定(ステップs2)では、切削工具認識部23で認識した切削工具26の交換基準値Eおよび交換閾値Tを、交換基準値記憶部32および交換閾値記憶部33から読み込むとともに、切削工具26の施術開始状態での積算負荷値Lである開始時負荷値Loを積算負荷値記憶部34から情報読込部41eにより読み込む(ステップs3)。
なお、読み込まれた交換基準値Eおよび交換閾値Tを交換基準値変更操作部11bおよび交換閾値設定操作部11cの操作によって切削工具に応じて設定、変更しても良い。
【0087】
前記情報読込部41eによる読み込みの表示は、読み込まれた交換基準値Eを100%と換算し、開始時負荷値Loの値を100%に換算した交換基準値Eに対応させた値とし、報知モニタ16cの積算負荷表示部110に表示する。また、交換閾値記憶部33に記憶されている交換閾値Tも、情報読込部41eにより読み込まれ、100%とした交換基準値Eと対応するように換算して積算負荷表示部110に表示される。
【0088】
また、この施術開始状態とは、未使用の切削工具26を使用する場合や、例えば、根管を切削するのに使用した切削工具26であって、当該根管の根管治療が終わった後に、同一患者の別の根管を施術するのに同一の切削工具26を用いて切削する場合も含んでもよい。
【0089】
前者の場合には、切削工具26には使用履歴が無いため、当然に開始時負荷値Loの値は「0」である。
一方、後者の場合には、切削工具26は前回使用した際に作用した積算負荷値Lが蓄積しているため、情報読込部41eで積算負荷値記憶部34から読み込まれた開始時負荷値Loは所定の値を有することとなる。
【0090】
次に、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の駆動の指示の有無を判断する(ステップs4)。
施術の対象である根管Rの根管治療を開始する場合、つまり根管治療用ハンドピース20に切削工具26を装着したことを検知するが切削工具26の駆動指示がない場合には(ステップs4:NO)、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の初期の開始時負荷値Loと交換閾値Tとを比較処理を実行するとともに、判定処理を実行する(ステップs8)。
【0091】
ここでは比較・判定処理(ステップs8)について簡単に説明するにとどめ、後でこの比較・判定処理(ステップs8)について詳しく説明する。
比較・判定処理(ステップs8)では、交換閾値Tと開始時負荷値Loとを比較する比較処理を実行し、その比較処理の結果に基づいて開始時負荷値Loと交換閾値Tとの値の大小を判定する判定処理を実行する。そして、判定処理の実行により得られて情報と対応した切削工具26の駆動や所定の報知方法を選択する。
【0092】
比較・判定処理(ステップs8)により得られた情報に基づき、根管治療用ハンドピース20の駆動ができると判定された場合(ステップ9:YES)、すなわち開始時負荷値Loが少なくとも最高閾値T3よりも低い値であるときは、比較・判定処理により得られる情報に基づいて報知処理を行うか否かの判定が行われる(ステップs10)。
【0093】
具体的には、比較・判定処理(ステップs8)において開始時負荷値Loが最小閾値T1よりも小さい値である場合には、報知が必要ないと判定し(ステップs10:NO)、報知処理(ステップs11)が実行されずに根管Rの治療を行うことができる(ステップs12:NO)。
【0094】
一方で、開始時負荷値Loと比較する最小閾値T1または中間閾値T2より開始時負荷値Loが大きいと判定された場合は、比較・判定処理を実行した結果に基づいて切削工具26の駆動が可能であるとともに(ステップs9:YES)、報知処理が必要と判定される(ステップs10:YES)。この場合、判定結果報知部41cにより報知動作が制御され光出力部16bが緑色または赤色に点灯される(ステップs11)。また、切削工具26の駆動が可能であるため、施術者は根管治療用ハンドピース20に装着された切削工具26を用いて根管Rの治療を行うことができる(ステップs12:NO)。
【0095】
比較・判定処理(ステップs8)が実行された結果、開始時負荷値Loが最高閾値T3よりも大きな値を有すると判定された場合には、比較・判定処理を実行した結果に基づいて切削工具26の駆動が可能でないと判定され(ステップs9:NO)、判定結果報知部41cが報知動作を制御することにより光出力部16bの赤色による点滅発光するとともにブザー音による報知がされる(ステップs11)。また、施術具駆動制御部42により切削工具26の回転又は振動を停止するまたは駆動を制限するように処理がされる(ステップs13)。
【0096】
この場合に、施術者は、切削工具26を用いて施術を続けることができず、施術を再開するために切削工具26を交換する必要がある。切削工具26を交換すると、交換された切削工具26を切削工具認識部23が認識し、交換された切削工具26の開始時負荷値Loとそれに対応する交換閾値Tとを読込、比較・判定処理を実行する(ステップs1〜s8)。そして、開始時負荷値Loが交換閾値Tよりも低い場合は、根管Rの治療を行うことができる(ステップs12:NO)。
【0097】
このように、開始時負荷値Loが少なくとも最高閾値T3よりも低いと判定された場合には、施術を開始することができる(ステップs12:NO)。施術を開始するために、駆動命令が出されると(ステップs4:YES)、施術具駆動制御部42の制御により切削工具26を回転駆動し(ステップs5)、施術者は切削工具26を用いて施術の対象である歯牙の根管治療を行うことができる。
【0098】
次に、切削工具26を用いた根管Rの切削中の切削工具26に蓄積する積算負荷値Liの算出処理と、積算負荷値Liと交換閾値Tと比較・判定処理について説明する。
先ず、対象である歯牙Dの根管Rを施術する際に用いられる切削工具26の使用条件に対応した負荷係数Cを評価値記憶部31から読み込む(ステップs6)。次に、読み込まれた負荷係数Cに基づいて切削工具26に作用した積算負荷値Liを演算部41dで演算処理することにより(ステップs7)、積算負荷値Liを算出し、算出された積算負荷値Liと、比較処理部41a及び判定処理部41bにおいて切削工具26に対応する交換閾値Tとを比較し、積算負荷値Liと交換閾値Tの大小が判定される(ステップs8)。なお、積算負荷値Liの算出方法については後で記載する。
【0099】
上記比較・判定処理(ステップs8)が実行された後の動作は上記開始時負荷値Loと交換閾値Tとを比較した場合と同様に行われるため、簡単に説明する。
先ず、比較・判定処理(ステップs8)の結果得られた情報基づいて、根管治療用ハンドピース20の駆動が可能である否かがを判定する(ステップs9)、仮に根管治療用ハンドピース20の駆動が可能と判定された場合(ステップs9:YES)、報知処理が必要か否かを判定する(ステップs10)。
【0100】
例えば、積算負荷値Liが最小閾値T1よりも小さい旨の場合には、上述のように、報知指示が特にないため報知処理を行う必要がないため(ステップs10:NO)、切削工具26を用いてそのまま施術を行うかを施術者が判断する必要がある(ステップs12)。
【0101】
また、上述のように、積算負荷値Liが少なくとも最高閾値T3よりも小さいと判定されている場合は根管治療用ハンドピース20の駆動が可能であると判定され(ステップs9:YES)、報知処理が行われた(ステップs11)又は報知処理を行う必要がないと判定された後に(ステップs10:NO)、施術者が施術の対象である根管Rの根管治療が終了しているかいないかを判断し、施術が終了していない場合は(ステップs12:NO)、施術者は根管治療を終了するまでステップs5からステップs11までの工程を繰り返す。
【0102】
施術者が施術を終了した場合には(ステップs12:YES)、施術者は根管治療用ハンドピース20の駆動を止めて施術を終了する。
なお、使用していた切削工具26に作用した積算負荷値Liは、切削工具26と対応して積算負荷値記憶部34に記憶され、以後同じ切削工具26を使用することがある場合には、情報読込部41eにより、積算負荷値記憶部34から開始時負荷値Loとして読み込まれ(ステップs3)、使用時に読み込まれた開始時負荷値Loと交換閾値Tとが比較・判定されることとなる(ステップs8)。
【0103】
一方で、積算負荷値Liが最高閾値T3よりも大きいと判定された場合は、開始時負荷値Loと交換閾値Tの比較と同様に、判定結果報知部41cの制御によって、報知部16の構成である光出力部16bを赤色に点滅するとともに、音声出力部16aからブザー音が発せられ、施術具駆動制御部42により切削工具26の回転を停止するように制御する報知処理が行われ(ステップs13)、施術を終了する。
【0104】
このように積算負荷値Liが最高閾値T3よりも大きくなった場合には、根管治療用ハンドピース20の駆動が停止されてしまうため、施術者は根管治療用ハンドピース20に装着している切削工具26を用いて根管Rを切削することができず、根管Rを切削するためには切削工具26を交換する必要がある。
【0105】
このように、積算負荷値Lと交換閾値Tとを比較・判定処理を実行し、その比較・判定の結果得られた情報に基づいて報知する診療システム1を用いることにより、施術者は切削工具26の継続使用による負荷が蓄積に起因した切削工具26の劣化などの前に、切削工具26を交換することができる。
【0106】
続いて、比較・判定処理(ステップs8)について、
図6のフローチャートに基づいて、詳しく説明する。
なお、以下の説明において、積算負荷値Lは、開始時負荷値Loまたは積算負荷値Liのいずれかであるものとする。
【0107】
先ず、上述のように、情報読込部41eで読み込んだ交換閾値Tのうち、交換基準値Eに対して最も低い値である最小閾値T1と積算負荷値Lとを比較する比較処理が実行され(ステップt1)、積算負荷値Lが最小閾値T1に対して大きいか否かを判定処理部41bで判定処理が実行される(ステップt2)。
【0108】
この判定処理により(ステップt2)、判定処理部41bで積算負荷値Lが最小閾値T1よりも小さいと判定された場合は(ステップt2:NO)、切削工具26を回転駆動が可能である旨の判定を行うとともに、報知指示などを行うことなく、比較判定処理を終了する。
【0109】
一方、積算負荷値Lが最小閾値T1よりも大きいと判定処理部41bで判定した場合は(ステップt2:YES)、演算処理部41が交換閾値記憶部33から読み込んだ中間閾値T2と積算負荷値Lとを比較する比較処理が実行され(ステップt3)、その比較に基づいて積算負荷値Lと中間閾値T2との大小を判定する判定処理が実行される(ステップt4)。
【0110】
比較処理部41aで積算負荷値Lが中間閾値T2よりも小さいと判定された場合(ステップt4:NO)、判定結果として得られた情報に基づいて、切削工具26の駆動が可能である判定を行うともに、光出力部16bを緑色で発光するように指示する情報である報知指示1が出力されて(ステップt8)比較・判定処理が終了する。
このように出力された情報に基づいて、上述したように、判定結果報知部41cは報知処理を行う(ステップs11)。
【0111】
また、ステップt4で、積算負荷値Lが中間閾値T2よりも大きいと判定した場合には(ステップt4:YES)、交換閾値記憶部33から読み込んだ最高閾値T3と積算負荷値Lとを比較処理部41aで比較する比較処理を実行し(ステップt5)、判定処理部41bでその値の大小を判定する判定処理を実行する(ステップt6)。
【0112】
ステップt5およびステップt6で行った最高閾値T3と積算負荷値Lとの比較処理および判定処理の結果、積算負荷値Lが最高閾値T3よりも小さい旨の判定がされた場合には(ステップt6:NO)、当該判定で得られた情報に基づいて、切削工具26の駆動が可能である判定を行うともに、光出力部16bを赤色で点灯するように光出力部16bに指示する情報である報知指示2が出力され(ステップt9)、比較・判定処理が終了する。
【0113】
一方で、積算負荷値Lと最高閾値T3を比較して積算負荷値Lが大きい旨の判定が判定処理部41bでされた場合(ステップt6:YES)、報知指示3が出力され(ステップt7)、比較・判定処理が終了する。
【0114】
この報知指示3とは、切削工具26の駆動を許容することができない旨の情報である。また、切削工具26を用いた報知部16の構成である光出力部16bを赤色に点滅させるとともに報知部16の構成である音声出力部16aからブザー音に発生させ、さらに、施術具駆動制御部42により切削工具26の回転又は振動を停止するよう指示する情報である。
【0115】
次に、
図7に示す負荷係数Cを用いて積算負荷値Liを算出する方法について、簡単に説明する。
積算負荷値Liは、基準となる使用条件下における積算負荷値(以下、『基準積算負荷値Lb』とする。)を設定し、この基準積算負荷値Lbに対して所定の使用条件における負荷係数C(
図7参照)を乗算することにより求めることができる。
【0116】
例えば、
図7は、切削工具26aを用いて、根管Rの施術をする場合の積算負荷値Liの算出例を示す。
図7の上段、中段、下段の表は、上段からそれぞれ異なる形状を有する切削工具26a、26b、26cにおいて、それぞれの表の左端欄の回転数、設定トルク値、トルクリバース回数等を変化させた場合の負荷係数Cの算出表の例を示す。
【0117】
前提として、
図7の表の上段に示す切削工具26aの各使用条件における評価値の基準は、
図7の一番左の条件とする。すなわち、設定回転数が50rpm、設定トルク値が0.2N・cm、使用時間が1分、トルクリバースの回数が0回などの場合である。この場合における基準積算負荷値Lbを「1.00」とする。なお、この使用条件を基準とするため、切削工具26aに作用する負荷値を求めるための負荷係数Cはこの使用条件下では全て「1」となっている(
図7上段参照)。
【0118】
次に、同じく
図7の表の上段に示す切削工具26aの上記使用条件を基準として、以下の使用条件で切削工具26aを用いて根管Rの切削を行った場合を考える。例えば、使用条件を、設定回転数が100rpm、設定トルク値が0.4N・cm、回転時間が1分とする。
【0119】
この場合、設定回転数に対する負荷係数Cは「1.4」、設定トルク値に対する負荷係数Cは「1.8」、時間に対する負荷係数Cは「1.0」であるため(
図7上段参照)、この使用条件下では切削工具26aに作用する積算負荷値Liは「1.00×1.4×1.8=2.52」と算出される。
【0120】
また、例えば、施術の対象となる根管Rの湾曲度を500とする。この場合、根管の湾曲度が∞、すなわち根管が真っ直ぐである場合と比べて切削の際に切削工具26aに負荷がかかる。したがって、根管の湾曲度500の場合には、負荷係数Cが「1.0」よりも大きな値となる。
【0121】
根管Rの湾曲度が500である場合の負荷係数Cは「1.2」であるため(
図7上段参照)、該根管Rを切削工具26aで切削した場合の切削工具26aに作用する積算負荷値Liは、上記で求めた積算負荷値Liに「1.2」を乗算した値となる。すなわち、積算負荷値Liは「2.52×1.2=3.02」となる。
【0122】
このように算出された積算負荷値Liを、使用条件ごとにさらに算出し、これらの値を付加していくことで、切削工具26に作用した負荷を算出することができる。
例えば、上記使用条件の後に、切削工具26aをそのまま用いて、さらに湾曲した根尖側に切削していくこととなると、例えば、設定回転数を50rpm、設定トルク値を0.4、回転時間を5分とし、湾曲度を300とすると、積算負荷値Liは「16.20」となり、切削工具26aに作用した積算負荷値Liはその合計である「19.22」となる。
【0123】
このように、基準となる使用条件における基準積算負荷値Lbを交換基準値記憶部32に記憶するとともに、各使用条件に対応する負荷係数Cを記憶することで、所定の使用条件下において切削工具26に作用する積算負荷値Liを基準積算負荷値Lbと負荷係数Cとから算出することができる。
【0124】
なお、
図7に表示している負荷係数Cは、例えばある基準となる根管(評価値を出すために人工的に作られる根管)の切削にあたって各切削工具26を根管治療用ハンドピース20に取付け、使用条件を変更して施術することで実験的に求めても良いし、切削工具26の材質や径の大きさなどを基準として計算で求めても良い。
【0125】
また、本実施形態において、積算負荷値Liを、基準となる使用条件下における基準積算負荷値Lbに対して各使用条件に対応した負荷係数Cを乗算することにより求めたが、この方法に限定する必要はなく、例えば、駆動負荷検出部43及び駆動時間検出部44により検出する検出トルク値と駆動時間に基づいて積算負荷値(以下、『算出積算負荷値Lc』)算出する方法がある。
【0126】
例えば、切削工具26を根管治療用ハンドピース20に装着し、施術の対象である歯牙Dの根管Rを切削した場合を考える(
図8参照)。
一般に根管Rの形状は、
図8(a)に示すように根尖側が湾曲している。ここで、根管口近傍では、根管Rはあまり湾曲していないので、根管口近傍の根管を切削工具26で切削する場合の、駆動負荷検出部43で検出する負荷値は低い値となる。
【0127】
次に、根管Rの切削が進むと、根管Rの径が細くなるとともに湾曲してくるため(
図8(a)参照)、駆動負荷検出部43で検出する切削工具26に作用する瞬間的な負荷値は切削が進むにつれて、すなわち時間が進むにつれて増大していくこととなる。
【0128】
このように根管Rの施術を進行させ、切削工具26aの先端部分が根尖Rtに到達したら、切削工具26aを例えば逆回転させて根管Rからゆっくり抜き出すこととなるが、この際の駆動負荷検出部43で検出する負荷値は根管口に近づくにつれて低い値となる。この検知した負荷値を時間毎に負荷値記憶部35に記憶する。
【0129】
なお、駆動負荷検出部43で検出する負荷トルク値の時間毎の変化を分かりやすいように可視化すると、
図8(b)に示すようなグラフとなる。
図8(b)のグラフでは、時間毎の駆動負荷検出部43で検出して負荷値記憶部35に記憶された負荷トルク値を縦軸とし、時間を横軸とした場合に、負荷トルク値の経時変化を表す。
【0130】
上述のように駆動負荷検出部43で検出された負荷トルク値を、駆動時間検出部44で検出した駆動時間で積分することで切削工具26aに作用した算出積算負荷値Lcを算出することができ、算出積算負荷値Lcを算出するとともに、閾値Tと比較して判定することにより(ステップs9)、切削工具26aの使用が適正の範囲内でのしようか否かを報知することができる。
【0131】
なお、切削工具26に過度な負荷が作用することにより切削工具26にトルクリバースが起こった場合には、
図8(b)に示すように、負荷値が設定トルク値に基づいて定められた負荷値から急激に減少することとなる。この場合には、切削工具26に過負荷が作用しているため、算出した算出積算負荷値Lcに対して所定の係数を乗算することでトルクリバースなどの過負荷に対応することができる。
【0132】
また、本実施形態において、演算部41dで演算処理を行うことにより
図8(b)で示すようなグラフを表示することは、処理負担が増加するため行わないが、例えば、モニタ15や報知モニタ16cにこのようなグラフを表示する構成としても良い。また、このようなグラフを積算情報記憶部34に記憶する構成としても良い。
【0133】
このように、口内の施術の際に切削工具26に作用する負荷値を検出する駆動負荷検出部43と、切削工具26の駆動時間を検知する駆動時間検出部44と、駆動負荷検出部43で検出した負荷値を記憶する負荷値記憶部35とを備え(
図1参照)、駆動時間検出部44で検出した時間に基づいて検出した負荷値を累積する評価式を用いることにより、評価式で算出した算出積算負荷値Lcを算出することができる。
【0134】
このように評価式を用いて積算負荷値Liを算出することにより、切削工具26に作用する負荷値の経時変化を駆動負荷検出部43で検出し、該負荷値を累積することで切削工具26に作用する算出積算負荷値Lcを正確に求めることができる。
【0135】
具体的には、上述のように根管治療に用いる切削工具26を用いて根管治療をする場合、切削工具26に作用する負荷は根管Rの形状等により経時的に変化することとなるが、駆動負荷検出部43を備えることにより経時変化する負荷値を検出する事ができる。
【0136】
そして、駆動負荷検出部43で検出した負荷値を駆動時間検出部44で検出した駆動時間で累積することにより、刻一刻と変化する負荷値が作用する切削工具26を所定時間使用することで、切削工具26に作用する算出積算負荷値Lcを正確に算出することができる。
【0137】
さらにまた、制御部40に駆動時間検出部44を有さない場合であっても、駆動負荷検出部43が一定の間隔で負荷値を検出する構成とすることにより、これらの値を累積して算出積算負荷値Lc(以下、『累積積算負荷値La』とする。)を算出することができる。
【0138】
具体的には、駆動負荷検出部43が一定の間隔で負荷値を検出して、負荷値記憶部35に記憶する。そして記憶された負荷値を累積することにより累積積算負荷値Laを計算することができる。
なお、上述の累積積算負荷値Laをイメージしやすいように、縦軸を駆動負荷検出部43が一定の間隔で検出した負荷値、横軸を時間軸してグラフ化したものが
図9となる。
【0139】
このようにして、施術者は切削工具26の各時間に対する負荷値を検出する駆動負荷検出部43を有することで、駆動負荷検出部4343で検出した負荷値を累積することで累積積算負荷値Laを計算して正確に算出することができる。これにより、施術者は累積積算負荷値Laを正確に把握することができ、精度良く切削工具26の交換時期を判断することができる。
【0140】
また、報知モニタ16cに表示する積算負荷表示部110に、交換基準値Eに対する積算負荷値Liの割合が表示されることにより、施術者は自己の使用する切削工具26の交換時期を大まかに把握することができる。
なお、積算負荷表示部110に表示する積算負荷値は、表7に基づいて算出した積算負荷値Liに限られるものではなく、上記の算出積算負荷値Lcや累積積算負荷値Laなどを使用しても良い。
【0141】
具体的には、切削工具26に作用した積算負荷値Liは、切削工具26の使用に基づいて増加するため、積算負荷値Liの割合を表示する相対積算負荷値表示部112が交換基準値を表示する相対交換基準値表示部111に対して増加することとなる。これにより、施術者は相対積算負荷値表示部112が相対交換閾値表示部113に近傍に来ていることなどを視覚的に認識することができる。したがって、施術者は自己の使用する切削工具26の交換時期を大まかに把握することができる。
【0142】
また、積算負荷表示部110に交換基準値Eに対する積算負荷値Liの割合が表示されることに加えて、判定画面100に根管長に対する切削工具26の先端部分の相対位置や設定トルク値に対する検出トルク値を根管長測定表示部120や検出トルク値表示部130に表示することにより、切削工具26を交換すべきかの判断材料とすることができる。
【0143】
具体的には、積算負荷表示部110に表示される交換基準値Eに対する積算負荷値Liの増加率が大きい場合には、切削工具26に作用する負荷が大きいため、施術の対象である根管Rを施術するには適していないなどを判断することができる。この場合、施術者は根管Rに対してより負荷の少ない切削工具26、具体的には使用している切削工具26よりも径の細い切削工具26などに交換することができる。
【0144】
このように、報知装置として機能する診療システム1は、切削工具26に作用する負荷値を積算した積算負荷値Lと、医療用機器に対して予め設定された交換基準値Eまたは交換閾値Tとを比較して判定する比較処理部41a及び判定処理部41bと、比較処理部41a及び判定処理部41bで判定した結果に基づき、判定結果報知部41cで指定する所定動作により報知する報知部16とを備える報知装置であることを特徴とすることにより、切削工具26を交換閾値Tの範囲内を超えて使用した場合に、当該使用が切削工具26の交換閾値Tの範囲を超えている旨を報知することができる。
【0145】
詳述すると、例えば、施術者が切削工具26を用いて患者の根管Rを施術する場合において、切削工具26に作用する負荷値を算出した積算負荷値Lと、切削工具26の交換閾値Tとを比較し、積算負荷値Lが交換閾値Tよりも大きいか否かなどを判定することができる。すなわち、切削工具26に作用する一時的な過負荷のみならず、切削工具26を長時間使用した場合や複数回使用した場合の切削工具26に作用した積算負荷値Lが交換閾値Tなどよりも大きいか否かなどを判定することできる。
【0146】
また、この判定の結果に基づいて、所定の動作をすることにより積算負荷値Lと交換閾値Tとの判定結果を施術者に報知することができる。
具体的には、積算負荷値Lが交換閾値Tを超えた場合や等しい値となった場合、若しくは交換基準値Eに対して所定の割合となった場合など、ブザー音やメロディ、光の点灯、表示部での表示、振動などで施術者に報知することができる。また、積算負荷値Lと交換基準値Eとをモニタ15や報知モニタ16に表示することができる。これにより、施術者は切削工具26を長時間使用したり、複数回使用したりした場合であっても、積算負荷値Lが、交換閾値Tよりも大きいか否かなどを認識することができる。
【0147】
したがって、例えば、積算負荷値Lが交換閾値Tを超えたことが報知された場合に、施術者は切削工具26の破損など問題が発生する前に、切削工具26を交換することができる。
【0148】
本実施形態においては、切削工具26に蓄積する積算負荷値Lを求めて、交換閾値Tと比較しているが、例えば、上述の報知装置と施術に用いる切削工具26を着脱可能であるとともに、切削工具26の駆動可能な駆動部24aとを備えた根管治療用ハンドピース20と、少なくとも根管治療用ハンドピース20の駆動を制御する施術具駆動制御部42とを備えた診療システム1とすることができる。
【0149】
また、切削工具26を認識する切削工具認識部23と、切削工具認識部23で認識した切削工具26の交換基準値Eを記憶する交換基準値記憶部32とを備えることにより、診療システム1は、施術前に施術者が使用する切削工具26を個別に認識することができ、認識した切削工具26の交換基準値Eを交換基準値記憶部32から呼び出すことができる。したがって、施術者が使用する切削工具26に対応した交換基準値Eおよび交換基準値Eに対応した交換閾値Tと、切削工具26の積算負荷値Lとを確実に比較することができる。
【0150】
さらにまた、交換基準値記憶部32に記憶されている交換基準値Eを、所定の範囲内において変更できる交換基準設定操作部11bや交換閾値設定操作部11cを備えることより、施術者は所定の範囲内で交換基準値Eを変更することができる。
これにより、例えば安全性を重視した施術の趣向や個々の施術者の有する施術の癖、施術者の施術方法などを適切に反映するようにすることができる。
【0151】
このため、満足度の向上する報知装置やハンドピースを施術者に提供することができる。
【0152】
さらにまた、切削工具26の使用条件に対応した、切削工具26に作用する負荷値を評価する評価情報に基づいて、積算負荷値Lを算出する演算部41dを備えることにより、評価情報に基づいて、切削工具26の使用条件の違いに対応した積算負荷値Lを算出することができる。したがって、使用条件を考慮した積算負荷値Lを求めることができ、使用条件に対応して算出された積算負荷値Lが交換閾値Tを超えたか否かなどを判定することができる。このため、施術者は使用条件に応じて切削工具26を適切に交換することができる。
【0153】
さらにまた、評価情報を記憶する評価値記憶部31を備えるとともに、評価情報を、予め設定された切削工具26の使用条件ごとに対応させて、負荷値を評価する負荷係数Cとすることにより、切削工具26の使用条件に対応した積算負荷値Lを簡易的にかつ所要の精度で算出できるとともに、積算負荷値Lを算出するための処理負担を軽減することができる。
【0154】
具体的には、本実施態様の構成により、切削工具26の使用の際に設定する設定トルク値や使用回数など、個々の使用条件に対応して予め設定されている負荷係数Cを評価値記憶部31に保存することができる。そして、使用条件に対応して予め設定されている負荷係数Cに基づいて積算負荷値Lを算出することができるため、積算負荷値Lを算出するための処理負担を軽減できるとともに、積算負荷値Lを簡易的にかつ所要の精度で算出することができ、所要の精度で算出された積算負荷値Lが交換閾値Tを超えているか否かなどを判定することができる。したがって、施術者は判定結果に基づいて、切削工具26の交換時期などを所要の精度で判断することができる。
【0155】
さらにまた、積算負荷値Lを記憶する積算負荷値記憶部34を備えることにより、過去の使用も包含した使用態様も考慮して、切削工具26の使用が交換基準値Eの範囲内での使用か否かを報知することができる。
【0156】
詳述すると、積算負荷値Lを記憶する積算負荷値記憶部34を備えることで、過去に使用した際の切削工具26の積算負荷値Lを記憶しておくことができる。そのため、切削工具26を複数回使用する場合でも、前回使用した際の積算負荷値Lを積算負荷値記憶部34から読み込み、積算負荷値Lに対して負荷値を累積して積算負荷値Lを算出することができる。
【0157】
これにより、過去の積算負荷値Lに対して負荷値を累積した積算負荷値Lと交換閾値Tとを比較・判定することができ、過去の使用も包含した使用態様も考慮して切削工具26の使用が交換基準値Eの範囲内での使用か否かを報知することができる。
【0158】
さらにまた、報知部16を、音声出力が可能な音声出力部16a、発光が可能な光出力部16b、判定結果を表示可能な報知モニタ16cをそなえることにより、ブザー音やメロディなどの音声や光の点滅や点灯、または報知モニタ16cに判定結果を表示するなどといった方法で報知することができるため、施術者は視覚や聴覚により、積算負荷値Lを交換閾値Tと比較して判定した結果を認識することができる。
これにより、施術者は、切削工具26の交換時期を視覚や聴覚により認識することができる。
【0159】
また、ハンドピース振動部27と判定結果報知部41cを備えていることにより、所定の条件、例えば切削工具26に作用する積算負荷値Lが交換閾値Tを超えた場合には、根管治療用ハンドピース20を振動してその旨を施術者に放置することができる。これにより、施術者は積算負荷値Lが交換閾値Tを超えたことを体感で認識することができる。
【0160】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
歯科治療用装置は、診療システム1に対応し、
交換基準値設定部は、交換基準値変更操作部11b及び交換閾値設定操作部11cに対応し、
表示部は、音声出力部16a、光出力部16b、報知モニタ16c、ハンドピース振動部27に対応し、
ハンドピースは、根管治療用ハンドピース20に対応し、
認識部は、切削工具認識部23に対応し、
施術工具は、切削工具26に対応し、
評価情報記憶部は、評価値記憶部31に対応し、
比較判定部は、比較処理部41a及び判定処理部41bに対応し、
演算処理部は、演算部41dに対応し、
制御部および駆動制御部は、施術具駆動制御部42に対応し、
評価値は、負荷係数Cに対応し、
積算負荷値は、積算負荷値L、積算負荷値Li、算出積算負荷値Lc、累積積算負荷値Laに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0161】
例えば、本実施形態においては、
図2および
図3に示すように、管治療用ハンドピース20はコード接続型ハンドピースとしているが、コードレス型のハンドピースとすることができる。なお、コードレス型のハンドピースの場合には、根管治療用ハンドピース20には充電池が内蔵され、例えば操作パネル102に設けられた充電器と接続して充電可能な仕様とすることができる。
【0162】
また、例えば本実施形態では報知部16は診療システム1の構成として組み込まれているが、報知部16および制御部40を備えた報知装置(図示省略)を別体として構成し、他の診療システムなどと接続できる構成としても良いし、報知部16および制御部40を備えた報知装置を内部に組み込んだ報知機能付根管治療装置60としても良い。(
図10参照)。
【0163】
上記の別体として構成した報知装置(図示省略)について簡単に説明する。なお、以下の説明で、上述した実施形態における診療システム1と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
上記報知装置は、施術者が従来から用いられるチェアーユニットを有する診療システムと接続可能な装置であるが、チェアーユニットとは接続せずに単体で使用する構成である。本実施例に記載した診療システム1の演算処理部41に備わる比較処理部41aおよび判定処理部、判定結果報知部41c、演算部41d、情報読取部41eに対応する比較処理部および判定処理部、判定結果報知部、演算部、情報読取部を報知装置本体に内蔵するとともに、操作部11に対応する操作部や報知部16に対応する報知部を備える構成である。すなわち報知装置には、それぞれ診療システム1の音声出力部16a、光出力部16b、報知モニタ16cに対応する報知部を有している。なお、報知装置は上記構成の他、例えば、切削工具認識部23(
図1参照)や記憶装置30(
図1参照)などを備えた構成としてもよい。
【0164】
また、上記の報知装置をチェアーユニットと別体として構成するとは、例えば施術者が以前より使用しているチェアーユニットから構成される診療システムに外付けして使用することができる報知装置や、以前より使用しているチェアーユニットから構成される診療システムなどに組み込むことができる報知装置などでもよい。
また、上記のように、報知装置を別体で構成した場合には、例えば根管治療用ハンドピースや根管治療装置などの他の機器類とコードなどを用いて機械的接続する他、無線などを使用した通信的に接続できる構成としてもよい。
【0165】
上記構成を有する報知装置の使用方法を、診療システム1の説明で用いたフローチャート(
図5参照)に基づいて簡単に説明すると、報知装置が切削工具認識部23(
図1参照)を備える、または切削工具認識部23を備える診療システムと接続可能な構成を有する報知装置とすることにより、報知装置は根管治療用ハンドピース20やこれらに装着した切削工具26を認識することができる。そして、診療システム1(
図1参照)と同様に、認識された切削工具26(
図1参照)などを駆動して対象歯牙Dの根管Rを治療することにより切削工具26などに作用した積算負荷値Lを算出し(ステップs5〜ステップs7)、交換基準値Eに対する積算負荷値Lの割合を比較判定することができる(ステップs8)。この比較判定の結果に基づいて、報知装置は施術者に、積算負荷値Lが交換基準値Eに対して所定の値に到達したことなどを報知することができる(ステップs11)。
【0166】
このように、報知装置をチェアーユニットから構成される診療システム1と別体とするとともに、顧客が既に保有しているチェアーユニットから構成される診療システムや根管治療用ハンドピースや根管治療装置などに、上記の報知装置を接続して使用できる構成することにより、以前より使用していた診療システムや根管治療用装置、根管治療用ハンドピースなどを新たに購入する必要はなく、経費の削減を図ることができる。
【0167】
次に、
図10に基づいて、報知部16(
図1参照)などを備えた報知機能付根管治療装置60について簡単に説明する。但し、以下で説明する報知機能付根管治療装置60の構成のうち、上述した実施形態における診療システム1と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0168】
報知機能付根管治療装置60は、報知装置と根管治療装置とが一体として形成されている構成であり、
図10に示すように、根管治療装置本体部61と根管長測定用電極62、根管治療用ハンドピース20とで構成している。
【0169】
根管治療装置本体部61には根管治療用ハンドピース20や根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26に作用する積算負荷値Lと交換基準値Eなどとの比較判定などを行う演算処理部41を内蔵している。すなわち、報知機能付根管治療装置60は、
図1に示す診療システム1の比較処理部41a、判定処理部41b及び判定結果報知部41cなどに対応する報知機能比較部(図示省略),報知機能判定部(図示省略)及び報知機能結果報知部(図示省略)などを包含している。
【0170】
また、根管治療装置本体部61には各種操作デバイスを包含する報知機能操作部63と、報知機能操作部63の後方に、診療システム1の報知部16に対応する根管治療装置報知部64と、根管治療装置側認識部65とを備える。
【0171】
根管長測定用電極62は、患者の口角部に引っかけるフック状の口腔電極であり、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の先端部と、患者の口角部に引っかける根管長測定用電極62との間を通電してインピーダンスを測定することにより、施術の対象歯牙の根管の根管長を測定する構成である。
【0172】
報知機能操作部63は、根管長測定装置や根管治療用ハンドピース20などの設定変更を行うのみならず、積算負荷値Lが交換基準値Eに対して所定の割合となった場合に報知する報知方法などを設定変更することができる報知方法設定操作部11dとしての機能を有している。
【0173】
根管治療装置報知部64は根管治療装置音声出力部64a、根管治療装置光出力部64b、根管治療装置結果表示部64cとで構成され、それぞれ診療システム1の音声出力部16a、光出力部16b、報知モニタ16cに対応する。
【0174】
根管治療装置結果表示部64cは、
図10に示すように、報知機能付根管治療装置60の前面に位置する表示部であって、根管治療装置結果表示部64cには
図4で示した判定画面100が表示される。また、根管治療装置結果表示部64cの下方には、光の点灯や点滅をすることにより報知する根管治療装置光出力部64bが並んでおり、根管治療装置結果表示部64cの下方側部には音を発するスピーカである根管治療装置音声出力部64aが備わっている。
また、根管治療装置側認識部65は、報知機能付根管治療装置60の右側に配置されており、根管治療用ハンドピース20および根管治療用ハンドピース20に脱着可能な切削工具26を認識することができる。
【0175】
このように構成された報知機能付根管治療装置60は、例えば、根管治療用ハンドピース20を使用して施術の対象である根管Rの切削を行う場合に、根管治療装置側認識部65で根管治療用ハンドピース20を認識することができる。そして認識した根管治療用ハンドピース20に対応する負荷係数Cなどを別体として構成している評価値記憶部31(
図1参照)から読み出すとともに、根管治療用ハンドピース20に作用する積算負荷値Lを報知機能付根管治療装置60に内蔵している演算部41dにより算出することができる。
【0176】
そして、別体で構成されている交換基準値記憶部32や交換閾値記憶部33(
図1参照)に保存されている根管治療用ハンドピース20に対応する交換基準値Eや交換閾値Tと、算出された積算負荷値Lと根管長測定装置比較部(図示省略)で比較し、値の大小を根管長測定装置判定部(図示省略)で判定することができ、根管長測定装置判定部(図示省略)で行った判定の結果に基づいて根管長測定装置結果報知部(図示省略)で報知を制御し、根管治療装置報知部64で所定の動作を行って報知することができる。
【0177】
これにより、施術者は施術に用いている根管治療用ハンドピース20の積算負荷値Lが交換基準値Eに対して所定の割合にあることを認識することができ、例えば、根管治療装置報知部64の報知により、積算負荷値Lが交換基準値Eに対して所定の割合に達したことを認識すれば、診療システム1を用いて施術した場合と同様に、施術者は切削工具26が適正に使用できる範囲を超える前に、切削工具26を交換することができる。
【0178】
なお、報知機能付根管治療装置60は
図1において点線で囲っている部分を構成としている。すなわち、報知機能付根管治療装置60には、記憶装置30、などが含まれていない構成としている。しかし、報知機能付根管治療装置60の構成は、この構成に限られるものではなく、交換基準値Eや交換閾値Tの設定および変更を行う交換基準値設定操作部11bや交換閾値設定操作部11cなどを備えてもよい。
【0179】
つまり、報知機能付根管治療装置60は上記構成に限定される必要はなく、報知部16及び根管長測定装置比較部(図示省略)などを備えることにより積算負荷値Lが交換基準値Eに対して所定の割合となった場合などに報知できる構成であれば良く、たとえば、演算部41dを内蔵する別体の診療システムや、演算部41dが積算負荷値Lを算出するのに用いる負荷係数Cなどの情報を記憶した記憶装置30を別体で備えた構成としても良い。
【0180】
また、根管治療用ハンドピース20は、報知機能付根管治療装置60と一体として構成しているが、根管治療用ハンドピース20を、制御部40を内蔵する根管治療装置本体61と別体として構成し、切削工具認識部23により根管治療用ハンドピース20を認識させてもよい。
【0181】
さらに、演算処理部41を内蔵する根管治療装置本体61と別体として構成される根管治療用ハンドピース20がコードレス型のハンドピースである場合には、報知機能付根管治療装置60の根管治療装置本体61に充電部を備えるとともに、ハンドピース本体21に充電池を内蔵する。また、ハンドピース本体21には操作部11、制御部40、交換基準値Eに対する積算負荷値Lの割合などを表示する報知モニタ16cを備え、報知機能付根管治療装置60に備わる根管治療装置報知部64と連動して報知する構成とすることができる。
【0182】
また、報知部16を根管治療用ハンドピース20a(
図11参照)または歯石除去用スケーラ70(
図12参照)に備えることにより同様の効果を得ることができる。
まず、根管治療用ハンドピース20aの構成について、
図11に基づいて説明する。
【0183】
根管治療用ハンドピース20aは、
図3に示す根管治療用ハンドピース20と同様に、ハンドピース本体21aの先端のヘッド部分に切削工具26を交換可能に装着する着脱部(図示省略)、着脱部に装着された切削工具26を識別するための切削工具認識部23a、ハンドピース本体21aの内部に、切削工具26を回転駆動するマイクロモータ等の駆動部24a、制御部29a(図示省略)、根管長測定部(図示省略)及び判定結果報知部41cにより振動させることができるハンドピース振動部27aを内蔵し、後端側の接続ケーブル25aによって、図示省略する口腔電極に接続されている。さらにハンドピース本体21aの後端側には、診療システム1に備えられた報知部16に対応した、根管治療用ハンドピース20aに装着された切削工具26に作用する積算負荷値Lが交換閾値Tを超えたことなどを報知するハンドピース用報知部28が配置されている(
図11(a)参照)。
【0184】
ハンドピース用報知部28は、
図11(a)に示すように、ハンドピース本体21aの後端側側面にハンドピース用音声出力部28aが配置され、後端側上面にハンドピース用発光部28b及びハンドピース用表示部28cが配置されている。
【0185】
ハンドピース用表示部28cは、報知モニタ16cに表示する判定画面100と対応するハンドピース用判定画面100aを表示する表示部であり、
図11(b)に示すように、図中上側には交換閾値Tに対する積算負荷値Lの割合を示すインジケータであるハンドピース用積算負荷表示部110aを、図中下側には根管長に対する切削工具26の先端部の相対位置を表示するハンドピース用根管長測定表示部120aが表示されている。
【0186】
ハンドピース用演算処理部29aは、診療システム1のトルク値設定操作部11a、交換基準値設定操作部11b、交換閾値設定操作部11c及び施術具駆動制御部42に対応する演算処理部であり、切削工具26の駆動操作を制御するとともに、切削工具26に作用する積算負荷値Lと交換閾値Eとを比較および判定し、当該判定結果に基づいて判定結果を報知する報知動作を制御する制御部である。
【0187】
ハンドピース用判定画面100aの後端側には、交換閾値及び設定トルク値などの設定または変更などを受け付けるハンドピース用操作部150aを備えている。なお、ハンドピース用操作部150aは診療システム1におけるトルク値設定操作部11a、交換基準値設定操作部11b及び交換閾値設定操作部11cとしての設定操作を受け付ける。
【0188】
なお、交換基準値の設定(
図5に示すステップs2)において、ハンドピース用操作部150aにより操作を受け付け、交換基準値変更操作部11bおよび交換閾値設定操作部11cにより交換基準値Eや交換閾値Tを設定変更することができる。
また、根管治療用ハンドピース20aを診療システムに連結させて使用する場合には、これらの操作部は、診療システムの機器操作部11(
図1参照)に設けられていても良い。
【0189】
また、同様に、歯石除去用スケーラ70について、
図12に基づいて説明する。
歯石除去用スケーラ70は、
図3に示す根管治療用ハンドピース20と同様に、スケーラ本体71の先端のヘッド部分にスケーラ用チップ76を交換可能に装着するスケーラ用着脱部(図示省略)、スケーラ用着脱部に装着されたスケーラ用チップ76を識別するためのスケーラ用認識部73、スケーラ用ハンドピース本体71の内部に、スケーラ用チップ76を振動駆動する超音波振動機(図示省略)、制御部(図示省略)を備える。また、スケーラ本体71の先端部分下側には施術箇所を照らすLED光源であるスケーラ用光源80を備える。さらに、スケーラ本体71の後端側には、診療システム1に備えられた報知部16に対応する、歯石除去用スケーラ70に装着されたにスケーラ用チップ76に作用する積算負荷値Lが交換閾値Tを超えたことなどを報知するスケーラ用報知部77が配置されている(
図12(a)参照)。
【0190】
スケーラ用報知部77は、
図12(a)に示すように、スケーラ本体71の後端側側面にスケーラ用音声報知部77aが配置され、後端側上面にスケーラ用発光部77b及びスケーラ用表示部77cが配置されている。
スケーラ用表示部77cは、報知モニタ16cに表示する判定画面100と対応するスケーラ用判定画面100bを表示する表示部であり、
図12(b)に示すように、図中上側には交換閾値Tに対する積算負荷値Lの割合を示すインジケータであるスケーラ用積算負荷表示部110bを、図中下側には、予め設定された作業長に対するスケーラ用チップ76の相対位置をインジケータ表示で示すチップ位置相対表示部120bを配置し、スケーラ用判定画面100bの後端側には、スケーラの所定操作を行うスケーラ用操作部150bが表示されている。
【0191】
なお、スケーラ用操作部150bでは、根管治療用ハンドピース20aに備わるハンドピース用操作部150aと同様に、トルク値設定操作部11a、交換基準値設定操作部11b及び交換閾値設定操作部11cとしての設定操作を受け付ける。
【0192】
また、診療システム1において、報知部16は操作パネル102に備わる実施形態としているが(
図2参照)、根管治療用ハンドピース20aや歯石除去用スケーラ70に備わっている実施形態(
図11及び
図12参照)に限定されず、例えば報知部16の報知モニタ16cのみを根管治療用ハンドピース20などに備える実施形態とすることもできる(図示省略)。
【0193】
このように、根管治療用ハンドピース20に報知モニタ16cを備えることにより、手元にある根管治療用ハンドピース20に設けられた報知モニタ16cにより、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の積算負荷値Lが交換基準値Eに対してどの程度蓄積したかを、施術者は操作パネル102やモニタ15に表示されている画像を見ることなく、確認することができる。
なお、根管治療用ハンドピース20に備えられた報知モニタ16cは積算負荷値Lのみならず、
図4に示すような根管長などに関する情報も表示しても良い。
【0194】
また、報知モニタ16cを含めた報知部16は根管治療用ハンドピース20や歯石除去用スケーラ70、操作パネル102のほか、報知機能付根管治療装置60などに備えられている場合などが考えられるが、これらの機器の全てに備えられている必要はなく、別体として構成される報知装置にのみ備えられている場合や少なくともいずれかに機器に1つ備える構成としてもよい。
【0195】
またこの発明は、上述の報知装置と、施術に用いる施術工具を着脱可能であるとともに、施術工具の駆動可能なハンドピース本体21とを備え、ハンドピース本体21に、切削工具26を着脱可能な着脱部と、ハンドピース本体21に装着した切削工具26を駆動させる駆動部24aと、該駆動部24aを制御する施術具駆動制御部42とを有し、切削工具26を施術工具とするとともに、報知部16を、施術具駆動制御部42で構成した根管治療用ハンドピース20とすることができる。
【0196】
この発明により、切削工具26に作用した積算負荷値Lを交換基準値Eと比較し判定した結果に基づいて、施術具駆動制御部42により施術工具の駆動を制御することができる。
これにより、積算負荷値Lが交換基準値Eに対して所定の値となった場合に、施術工具の駆動を減衰や停止することができる。したがって、施術者は施術工具の交換時期を的確に判断し、施術工具を交換することができる。
【0197】
また他の実施形態として、
図12に示すように、根管治療用ハンドピース20の本体部分であるハンドピース本体21の後端に、診療システム1の報知モニタ16cに表示される判定画面100を表示する表示部を備えた構成とすることができる。
【0198】
さらにまた、本実施形態において、開始時負荷値Loまたは積算負荷値Liと交換閾値Tとを比較する際に(ステップs4、ステップs9)、先ず積算負荷値Lと最小閾値T1とを比較して判定した後に、中間閾値T2、最高閾値T3と順次比較して判定したが、この順番に限定されるものではなく、例えば、はじめに積算負荷値Liを最高閾値T3と比較して判定した後に中間閾値T2と比較する構成としても良い。
【0199】
このような構成とすることにより、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26を用いて根管Rを切削することができるかを判定でき、切削工具26が仮に使用できない場合には、報知に要する処理の負担を軽減することができる。
【0200】
例えば、根管治療用ハンドピース20や歯石除去用スケーラ70などは衛生上の問題からオートクレーブを用いて滅菌する必要がある。しかし、オートクレーブは10分以上の間、根管治療用ハンドピース20などの医療用機器を高温高圧条件下でおいておくため、根管治療用ハンドピース20などの医療用機器に負荷を生じさせることとなる。当然ながら、切削工具26やスケーラ用チップ76などの施術工具もオートクレーブで滅菌すると負荷がかかることとなる。
【0201】
このことから、根管治療用ハンドピース20や施術工具などの医療用機器をオートクレーブに
掛けた場合には、オートクレーブを
掛けたことにより作用した負荷を累積するために、オートクレーブの回数に対応した所定の負荷係数Cを開始時負荷値Loに乗算して積算負荷値Liを計算する必要がある。
【0202】
このため、前回の積算負荷値Liが最高閾値T3よりも低い値でも、オートクレーブを掛けることにより積算負荷値Liが最高閾値T3を超えることとなり、判定の結果(ステップs4)根管治療用ハンドピース20の回転駆動ができずに施術できない場合がある(ステップt10)。
【0203】
このような滅菌作業などのように、前回の施術後に根管治療用ハンドピース20や歯石除去用スケーラ70、切削工具26のような医療用機器に新たな負荷がかかることも想定される。このような場合において、比較および判定(ステップs4)において、根管治療用ハンドピース20や歯石除去用スケーラ70、切削工具26などの医療用機器の使用の可否を先に判定することにより、報知に要する処理の負担を軽減することができる。
【0204】
また、本実施形態において、報知の形態を音による報知や、光による視覚的な報知、表示画面に積算負荷値Lと交換基準値Eなどの使用状況を表示する、根管治療用ハンドピース20にハンドピース振動部27を備えることで振動させるなどの構成としているが、これら単体の構成でもよいし、複数を組み合わせて報知しても良い。
【0205】
さらにまた、例えば、根管Rの切削に用いている切削工具26に作用している積算負荷値Lと交換基準値Eなどの使用状況から、切削工具26の使用可能時間を逆算し、報知モニタ16cに使用可能時間の目安を表示するなどの構成としてもよい。
【0206】
さらに、本実施形態においては、報知結果を報知モニタ16に表示する構成としているが、モニタ15に表示しても良い。
具体的には、ペダル14aを操作することにより、報知モニタ16cに表示されている積算負荷値Lに関する情報をモニタ15に切り替えて表示する構成としても良いし、他の画像と同時に表示しても良いし、ペダル14aなどの操作により拡大表示するような構成としても良い。
【0207】
さらにまた、上記構成では、報知部16は、音声出力部16a、光出力部16b、報知モニタ16cで構成されているが、これらを備える機器、例えば診療システム1や報知装置、報知機能付根管治療装置60、根管治療用ハンドピース20aなどは、必ずしもこのすべてを備えている必要はなく、例えば音声出力部16aのみや、報知モニタ16cのみを備える構成としても良く、また、音声出力部16a、光出力部16b、報知モニタ16cのうちの2つを備える構成としても良い。さらにこれらの一つ又は二つと、ハンドピース振動部27とを備える構成としても良い。
【0208】
また、本実施形態の構成に加えて、例えば駆動負荷検出部43で検出した検出負荷値が設定トルク値を超えた場合に、切削工具26の駆動を逆転したり、駆動力を低減したり、停止したりする構成を設けることができる。これにより、例えば根管治療中において切削工具26に一時的な過負荷が作用した場合に切削工具26の駆動を制御することができ、より安全に施術を行うことができる。
【0209】
また、本実施形態の説明においては、根管切削工具及びスケーラ用の切削工具の例を示した説明したが、本発明は、これに限られず、エアタービンハンドピース用やマイクロモータハンドピース用の切削バーや、医療用レーザハンドヒースのレーザ照射チップであっても良いし、骨手術用のハンドピースやマイクロモータハンドピース用の切削工具においても広く適用可能である。また、本発明は、エアタービンハンドピースの切削工具を把持するチャック部やマイクロモータハンドピースのギア部、Oリング、ハロゲン電球、LEDランプ、導光用光ファイバ、各種の電極等を含む各種ハンドピースの構成部品の経年劣化を把握する報知装置としても幅広く適用可能である。
【課題】本発明は、医療用機器を適正な範囲を超えて使用した場合に、当該使用が前記医療用機器の適正な範囲を超えている旨を報知することができる報知装置つき医療用機器を提供することを目的とする。
【解決手段】根管治療などに用いられる切削工具26に作用する負荷値を積算した積算負荷値Lと、切削工具26に対して予め設定された交換基準値Eまたは交換閾値Tとを比較して判定する比較処理部41a及び判定処理部41bと、比較処理部41a及び判定処理部41bで判定した結果に基づき、所定動作により報知する報知部16とを備えた。