(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
トルクレンチ等の工具において、電子回路を搭載した製品が多く提供されている。このような電子回路の電源としては、一般に乾電池が使用されるが、ソーラーセルを用いたものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
ソーラーセルを例えばトルクレンチ等の工具に取り付ける場合(以下、ソーラーセル付工具とする)、ソーラーセルはトルクレンチ等の工具の操作に邪魔とならず、また受光面に多くの光が受光できる事等が考慮される。
【0004】
ソーラーセル付工具は、例えば締め付け作業の待機中において、作業台等に載置されることが多い。作業者はソーラーセルの受光面の向きが室内灯に向いているかを確認して工具を作業台に載置することで、その間に、例えば天井灯の光をソーラーセルが受光して発電した電力を蓄電池に充電することができる。
【0005】
しかし、作業者が急いでソーラーセル付工具を作業台に載置する場合、ソーラーセルの受光面が上方に向いているか否かを確認する余裕がないと、ソーラーセルの受光面が作業台に面して載置され、ソーラーセルの受光面に光が到達しない恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ソーラーセル付工具を作業台等に載置すると、ソーラーセルの受光面が横向きに姿勢を変えて静止するソーラーセル付工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を実現するソーラーセル付工具の第1の構成は、工具の表面に配置されたソーラーセルと、前記工
具の長手方向に沿って延び、前記長手方向と直交する短手方向を幅方向として前記ソーラーセルを覆うカバーと、を有するソーラーセル付工具であって、前記カバーは、前記ソーラーセルの受光面
よりも上方に位置する上面
において、外方に向けて凸の弧形状の屋根部
を有し、
前記幅方向
の両側
において、斜面
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の目的を実現するソーラーセル付工具の第2の構成は、工具の表面に配置されたソーラーセルと、前記工
具の長手方向に
おいて、前記ソーラーセル
の両側に配置され、前記ソーラーセルの受光面よりも上方に突出する静止規制部材と、を有するソーラーセル付工具であって、前記静止規制部材は、前記ソーラーセルの受光面
よりも上方に位置する上端
において、外方に向けて凸の弧形状に形成され、
前記長手方向と直交する短手方向を幅方向として、この幅方向
の両側
において、斜面
を有することを特徴とする。
本発明の目的を実現するソーラーセル付工具の第3の構成は、工具の表面に配置されたソーラーセルと、前記工
具の長手方
向と直交する短手方向を幅方向として
、前記幅方向で前記ソーラーセルを跨ぐように配置され、前記ソーラーセルの受光面よりも上方に突出する静止規制部材と、を有するソーラーセル付工具であって、前記静止規制部材は、前記ソーラーセルの受光面
よりも上方に位置する上端
において、外方に向けて凸の弧形状に形成され、
前記幅方向
の両側
において、斜面
を有することを特徴とする。
【0010】
上記した第1の構成において、
前記幅方向における
前記カバーの中心線と
、前記幅方向における前記工具の中心線は、
前記幅方向においてず
れていることを特徴とする。
【0011】
上記した第2又は第3の構成において、
前記幅方向における前記静止規制部材
の中心線と
、前記幅方向における前記工具の中心線は、
前記幅方向においてず
れていることを特徴とする。
【0012】
上記し
た構成において、
前記カバーは、前記幅方向において、前記ソーラーセルが配置される工具配置
部の一
端から外方に向けてはみ出ていることを特徴とする。
また、前記静止規制部材は、前記幅方向において、前記ソーラーセルが配置される工具配置部の一端から外方に向けてはみ出ていることを特徴とする。
【0013】
上記したいずれかの構成において、前記工具はトルクレンチであって、ヘッドに設けた角軸部が突出する方向と反対側に前記ソーラーセルを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、2、3に係る発明によれば、カバーの屋根
部が載置面に接すると、トルクレンチ等の工具が転倒して横向きの安定姿勢に静止する。このため、ソーラーセルの受光面に光が入射可能となり、ソーラーセルが発電する。
【0015】
請求項4、5に係る発明によれば、中心線間のずれによるトルクレンチ等の工具のアンバランスを招くので、トルクレンチ等の工具が転倒し易くなり、トルクレンチ等の工具の転倒性を向上させる。
【0016】
請求項6
,7に係る発明によれば、トルクレンチ等の工具のアンバランスを招くので、トルクレンチ等の工具が転倒し易くなり、トルクレンチ等の工具の転倒性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
第1実施形態
図1は本発明によるソーラーセル付工具をトルクレンチに適用した第1実施形態を示す上面図、
図2は
図1に示すトルクレンチの正面図、
図3は
図2のAA矢視図である。
【0020】
図1、
図2及び
図3において、ソーラーセル付工具であるトルクレンチ1は、金属製のハンドル3、金属製のヘッド5、カバー7、ソーラーセル9等を有する。ハンドル3内には、例えばトグル機構により構成される不図示のトルクリミッターが配置される。
【0021】
なお、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)において、トルクレンチ1の長手方向をX軸、短手方向をY軸、厚み方向をZ軸とする。
【0022】
X軸方向に延びるハンドル3は、円筒状の後ハンドル部31と、後ハンドル部31の前部に連設される扁平状の前ハンドル部32とを有し、全体として直線状の中空形状に形成される。後ハンドル部31の外周には、グリップ部33が装着される。
【0023】
ハンドル3の前ハンドル部32は、Y軸方向である幅方向に対してZ軸方向の高さが短く形成される。したがって、ハンドル3は、前ハンドル部32の厚み方向を上下方向にして、例えば作業台の載置面に載置する状態が最も安定した姿勢となる。安定姿勢とは、載置面に載置した状態において、他の支えを借りずに、ぐらつくことなく静止している状態をいう。
【0024】
前ハンドル部32は、Z軸方向において対向する平坦な第1外周部33と第2外周部34を有する。本実施形態において、第1外周部33側を上面側(又は上方)Uとし、第2外周部34側を下面側(又は下方)Rとする。
【0025】
ヘッド5は、例えば楕円形状のヘッド本体部51と、ヘッド本体部51から長手方向後方に延びる後方レバー部52を有する。ヘッド5は、後方レバー部52がハンドル3の前ハンドル部32内に前端開口から挿入される。ハンドル3の前ハンドル部32をZ軸方向に貫通する支持ピン53によりヘッド5は回転可能に支持される。ヘッド5の後方レバー部52の後端部は前記トグル機構の一部を構成する。
【0026】
ヘッド本体部51には、Z軸方向に延びる角軸部54が不図示のラチェット機構を介して回転可能に配置される。角軸部54には、ソケット2が取り外し可能に装着される。角軸部54は、ヘッド本体部51から下面側に向けて突出する。
【0027】
トルクレンチ1がハンドル3とヘッド5のみの構成の場合、安定姿勢は上面側Uを載置面側に向けて載置した第1姿勢である。また、角軸部54又はソケット2の先端が載置面に接すると共に、ハンドル3の側面が載置面に接し、Z軸が載置面に対して傾斜した第2姿勢である。
【0028】
第1姿勢は、ハンドル3の上面側Uとヘッド本体部51の上面側Uが共に平坦面であることにより、トルクレンチ1が載置面に安定に載置される。第2姿勢は、トルクレンチ1のZ軸方向における回転中心の軸回りについて、一方向にモーメントが作用することでトルクレンチ1が載置面に安定に載置される。
【0029】
本実施形態において、前ハンドル部32の第1外周部33に、カバー7がねじ等で取り付けられる。
【0030】
図1〜
図3に示すように、カバー7は、略半円筒形状に形成されたプラスチック製のカバー本体71の内部にソーラーセル9が収容される。カバー7はソーラーセル9を保護する機能に加え、ソーラーセル9の受光面を作業台等の載置面12に向けて載置しようとしても、載置面12に対して静止できない機能を有する。
【0031】
カバー7には、ソーラーセル9の上方に開口部72が形成され、開口部72を通してソーラーセル9の受光面91に光が入射する。ソーラーセル9は、例えば電子部品等が実装された回路基板(不図示)に実装しても良く、またソーラーセル9をカバー7に取り付けるようにしても良い。
【0032】
カバー7は、カバー本体71の上面(外周面)73が円弧形状の屋根に形成されていて、X軸方向に沿って延びた、所謂蒲鉾型に形成される。カバー7の底面74の幅方向(Y軸方向)の長さをW1とし、カバー7が取り付けられる前ハンドル部32の幅(Y軸方向の長さ)の長さをW2とすると、W1>W2としている。
【0033】
本実施形態において、カバー7は、前ハンドル部32の幅方向の一端321にカバー本体71の一端711を合わせて配置される。したがって、カバー本体71の幅方向他端712は、前ハンドル部32の幅方向他端322よりも、Y軸方向外方に突出する。すなわち、カバー本体71は、前ハンドル部32に対し、幅方向においてはみ出ているはみ出し部74を有する。
【0034】
本実施形態において、トルクレンチ1(カバー7を除く)のY軸方向における中心線L1は、角軸部54の軸中心を通る中心線である。一方、カバー7のY軸方向における中心線L2は、カバー本体71の幅方向の長さW1の半分の位置に存在する。
【0035】
そうすると、カバー7を除くトルクレンチ1のY軸方向における中心線L1と、カバー7のY軸方向における中心線L2とは、Y軸方向における位置が異なり、(W1-W2)/2の距離だけずれている(このずれを、以下、軸心ずれと称す)。
【0036】
上記した実施形態において、
図3に示すように、カバー7を上方に向けてトルクレンチ1を載置面12に載置した状態では、カバー7内のソーラーセル9には、上方からの光が開口部72を通して入射する。
図1に示すトルクレンチ1の載置姿勢(以下、第3姿勢とする)は、トルクレンチ1の重心位置が高く、また角軸部54、あるいは角軸部54に装着したソケットが僅かな接触面積で載置面12に接触していることにより不安定である。さらには、前記軸心ずれの影響でより不安定となる。この場合、トルクレンチ1は第2姿勢を維持できず、
図3中の矢印10に向けて倒れる。
【0037】
トルクレンチ1が矢印10方向に向けて倒れると、カバー7の幅方向他端712が載置面12に当接して静止する。この静止状態は、トルクレンチ1が全体に横向きに倒れるが、カバー7の開口部72は横向きであるため、開口部72を通してソーラーセル9の受光面91に向けて光が直接あるいは反射して入射する。この静止姿勢を第4姿勢とする。第4姿勢のトルクレンチ1は、全体として横向きで、姿勢が低いため、安定に第4姿勢が維持される。
【0038】
次に、トルクレンチ1を上下逆にして載置面12に載置した場合について、
図4を参照して説明する。
【0039】
図4(a)は、トルクレンチ1を上下を逆にして載置面12に載置すると、カバー7の開口部72が載置面12に接し、光が開口部72を通してソーラーセル9の受光面に達しない。したがって、ソーラーセル9は発電できない。
【0040】
図4(a)に示すトルクレンチ1の姿勢(第5姿勢と称す)は、全体に弧状に形成されているカバー本体71の外周面73が載置面12に接するため、トルクレンチ1の使用者がトルクレンチ1を手で支えていなけれ
ば維持されない。
【0041】
トルクレンチ1の使用者が第5姿勢のトルクレンチ1から手を離すと、
図4(b)に示すように、トルクレンチ1は矢印11方向に倒れる。
図4(a)の第5姿勢において、トルクレンチ1は、ケース7の上方にハンドル3とヘッド5が存在するため、重心位置が高くなり不安定な姿勢となる。また、中心線L1と
中心線L2との位置ずれである軸心ずれによって、トルクレンチ1は中心線L1側に傾くようにして倒れる。
【0042】
図4(b)に示す不安定姿勢のトルクレンチ1が安定姿勢に移行すべく自ら傾き始めると、
図4(c)に示すように、横向きの第6姿勢に倒れる。第6姿勢は、
図4(a)の第5姿勢からトルクレンチ1が倒れる回転角度α1が90度未満の状態を示す。前記軸心ずれが小さい場合、又は回転モーメントが小さい場合等では、トルクレンチ1が横向きに傾くが、90度の回転角度を超えない場合が生じる。この場合、ケース本体71の上面73の端が載置面12に接した状態で静止する。この第6姿勢において、ケース本体71の上面73が弧状であるため、静止状態が不安定となり、揺動することもあり得るが、横向きの姿勢は安定的に維持される。したがって、ソーラーセル9の受光面91にケース本体71の開口部72を通して直接光が入射し、あるいは載置面12で反射した光が入射する。このため、ソーラーセル9は発電する。
【0043】
図4(d)は、トルクレンチ1が
図4(c)の第6姿勢を超えてさらに回転し、回転角度α2が90度を超える状態を示す。前記軸心ずれが大きい場合、又は回転モーメントが大きい場合等では、トルクレンチ1が横向きに傾く回転角度が90度を超える場合が生じる。この場合、ヘッド本体51の端とハンドル3の幅方向一端、および角軸部54の先端あるいはソケット2の先端が載置面12に接した状態で静止する。この状態を第7姿勢とする。
【0044】
第7姿勢において、横向きに倒れるトルクレンチ1の回転モーメントは矢印11方向に加わった状態にある。このため、第7姿勢の静止状態が非常に安定し、横向きの姿勢は安定的に維持される。第7姿勢は、ケース本体71の開口部72が斜め上方に向いているので、第6姿勢に比べ、例えば工場内の天井灯に向けて向く。
【0045】
したがって、ソーラーセル9の受光面91にケース本体71の開口部72を通して天井灯等からの直接光をより多く入射し、あるいは載置面12で反射した光が入射する。このため、ソーラーセル9は発電する。
【0046】
以上説明したように、第1実施形態によれば、ソーラーセル9を収容するカバー7の外周面を弧状に形成することで、トルクレンチ1を作業台に載置する際に、カバー7を下向きにして載置面12に置いても、トルクレンチ1が横向きに転倒して静止する。このため、ソーラーセル9の受光面に光が入射して発電が行われ、例えば蓄電池に充電される。
【0047】
第2実施形態
図5は本発明の第2実施形態を示す。
【0048】
第2実施形態は、ソーラーセル9が例えば電子回路が実装された回路基板、蓄電池等を収容する回路ケース4に組み付けられている場合を示す。この場合、ソーラーセル9は回路ケース4により保護されている。
【0049】
第2実施形態では、前ハンドル部32の上面側Uに回路ケース4を取り付ける。回路ケース4のX軸方向の前後に、第1静止規制板61と第2
静止規制板62を前ハンドル部32の上面側Uに取り付ける。なお、回路ケース4のX軸方向の前端と後端に第1静止規制板61と第2
静止規制板62を取り付けても良い。また、静止規制フレーム63を第1静止規制板61と第2
静止規制板62との間で、前ハンドル部32の上面側Uに取り付ける。静止規制フレーム63は、回路ケース4の側面に取り付けるようにしても良い。
【0050】
第1静止規制板61と第2静止規制板62は、回路ケース4よりも高く、上端64が弧状に形成される。静止規制フレーム63は、第1静止規制板61と第2静止規制板62と同様の外形形状にフレーム構造により形成される。したがって、静止規制フレーム63の上端65は弧状に形成される。
【0051】
第1静止規制板61、第2
静止規制板62、静止規制フレーム63は一端側を、前ハンドル部32の一端側321に揃えて配置される。そして、第1静止規制板61、第2
静止規制板62、静止規制フレーム63の他端側は前ハンドル部32の他端322からY軸方向の外方に向けてはみ出している。
【0052】
本実施形態において、第1静止規制板61および第2
静止規制板62の上端64、静止規制フレーム63の上端65は、第1実施形態におけるカバー7における円弧状の屋根に形成されたカバー本体71の上面73と同じ作用を行う。
【0053】
すなわち、トルクレンチ1をソーラーセル9の受光面を載置面12に向けて載置すると、載置面12に対して接する第1静止規制板61および第2
静止規制板62の上端64、および静止規制フレーム63の上端65はそれぞれ弧状であることより、
図4で説明したように、トルクレンチ1の幅方向のアンバランス性に起因して、トルクレンチ1が横向きに回転し、静止する。
【0054】
第2実施形態では、第1静止規制板61、第2
静止規制板62、静止規制フレーム63が間隔を有して配置されるため、ソーラーセル9が横向きとなっても、ソーラーセル9の受光面に光がより一層入射する。
【0055】
なお、第1静止規制板61と第2静止規制板62を静止規制フレーム63に代えても良い。また、第1静止規制板61と第2静止規制板62を廃止し、静止規制フレーム63のみであっても良い。さらに、静止規制フレーム63を廃止し、第1静止規制板61と第2静止規制板62のみであっても良い。
【0056】
上記した第1実施形態および第2実施形態において、トルクレンチ1を作業台に載置する際、ソーラーセル9の向きを気にすることなく載置しても、トルクレンチ1はソーラーセル9の受光面を横に向けた姿勢で静止する。このため、ソーラーセル9はトルクレンチ1を作業台等に載置している不使用時に発電する。そして、蓄電池を充電することができる。
【0057】
第3実施形態
図6は第3実施形態を示す。
【0058】
第3実施形態は第1実施形態の変形例を示す。
図3に示すカバー7は上面73をなす弧の両端が底面74まで達するのに対し、本実施形態は、カバー7の底面74の幅方向両端から上方に向けて垂直に側壁76、77を設け、各側壁76、77の上端に、弧状の屋根部を構成する上面73を設けている。
【0059】
本実施形態のカバー7によれば、側壁76、77がヘッド5の側面およびレバー3の側面と共に作業台の載置面に載置するため、トルクレンチ1の横向き姿勢を安定に保持できる。
【解決手段】トルクレンチ1のハンドル3の表面側に配置されたソーラーセル9をカバー7により覆い、カバー7には、ソーラーセル9の受光面91の上方に配置された上面73が外方に向けて凸の弧形状の屋根部に形成され、カバー7の幅方向両側を斜面側とする。