特許第5875835号(P5875835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許58758353次元オブジェクトの座標点の置換による3次元オブジェクトの保護の方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5875835
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】3次元オブジェクトの座標点の置換による3次元オブジェクトの保護の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20160218BHJP
【FI】
   G06T19/00 A
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-247044(P2011-247044)
(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公開番号】特開2012-108911(P2012-108911A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2014年10月17日
(31)【優先権主張番号】10306250.1
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】マーク エリュアール
(72)【発明者】
【氏名】イヴ メッツェ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン ルリエーブル
(72)【発明者】
【氏名】グウェナエル ドエル
【審査官】 真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−209266(JP,A)
【文献】 特開2001−177849(JP,A)
【文献】 特開平11−353462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
G06T 1/00
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元座標において表現される複数の点と、該複数の点を如何にして連結すべきかに関する情報とを含むリストとして表されるグラフィックオブジェクトを保護する方法であって、装置において、
前記グラフィックオブジェクトを受け取り、
決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの第1次元の座標値を交換し、該座標値が、保護されたグラフィックオブジェクトを得るよう、少なくとも1つの第2次元の座標値とは無関係に交換されるようにし、
前記保護されたグラフィックオブジェクトを出力する
ステップを有する方法。
【請求項2】
前記グラフィックオブジェクトは、3次元オブジェクトである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1次元の全ての座標が交換される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
全ての次元の座標の少なくとも幾つかが交換される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記座標は、キーに基づく置換アルゴリズムを用いて交換される、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保護されたグラフィックオブジェクト及び前記グラフィックオブジェクトは、異なる点の組を有する、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
3次元座標において表現される複数の点と、該複数の点を如何にして連結すべきかに関する情報とを含むリストとして表される保護されたグラフィックオブジェクトを非保護とする方法であって、装置において、
前記保護されたグラフィックオブジェクトを受け取り、
決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの第1次元の座標値を交換し、該座標値が、保護されていないグラフィックオブジェクトを得るように前記保護されたグラフィックオブジェクトを非保護とするよう、少なくとも1つの第2次元の座標値とは無関係に交換されるようにし、
前記保護されていないグラフィックオブジェクトを出力する
ステップを有する方法。
【請求項8】
前記保護されていないグラフィックオブジェクトは、3次元オブジェクトである、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1次元の全ての座標が交換される、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
全ての次元の座標の少なくとも幾つかが交換される、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記座標は、キーに基づく置換アルゴリズムを用いて交換される、
請求項7乃至10のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
3次元座標において表現される複数の点と、該複数の点を如何にして連結すべきかに関する情報とを含むリストとして表されるグラフィックオブジェクトを保護する装置であって、
前記グラフィックオブジェクトを受け取る手段と、
決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの第1次元の座標値を交換し、該座標値が、保護されたグラフィックオブジェクトを得るよう、少なくとも1つの第2次元の座標値とは無関係に交換されるようにする手段と、
前記保護されたグラフィックオブジェクトを出力する手段と
を有する装置。
【請求項13】
3次元座標において表現される複数の点と、該複数の点を如何にして連結すべきかに関する情報とを含むリストとして表される保護されたグラフィックオブジェクトを非保護とする装置であって、
前記保護されたグラフィックオブジェクトを受け取る手段と、
決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの第1次元の座標値を交換し、該座標値が、保護されていないグラフィックオブジェクトを得るように前記保護されたグラフィックオブジェクトを非保護とするよう、少なくとも1つの第2次元の座標値とは無関係に交換されるようにする手段と、
前記保護されていないグラフィックオブジェクトを出力する手段と
を有する装置。
【請求項14】
プロセッサによって実行される場合に該プロセッサに請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の方法を実行させるプログラム
【請求項15】
プロセッサによって実行される場合に該プロセッサに請求項7乃至11のうちいずれか一項に記載の方法を実行させるプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、3次元(3D)モデルに係り、特に、そのようなモデルのグラフィックオブジェクトの保護に係る。
【背景技術】
【0002】
この項目は、読む者に、以下で記載及び/又は請求される本発明の様々な態様に関する様々な技術的側面を紹介することを目的とする。この議論は、本発明の様々な態様のより良い理解を助けるよう読む者に背景情報を与えるのに役立つと信じられる。然るに、これらの記述は先行技術の承認としてではなく、この点から読まれるべきであると理解されなければならない。
【0003】
3次元(3D)オブジェクトの使用は、ここ数年で、特に、メタバースの出現に伴って、増加してきている。3Dオブジェクトについての複数の使用法が存在する。例えば、ソーシャライジング(socializing)・ワールド、ゲーム、ミラーリング(mirroring)・ワールド、シミュレーションツール、3Dユーザインターフェース、アニメーション映画、及びテレビ用の視覚効果等がある。一般に、3D仮想オブジェクトは、実際の貨幣価値に相当する。ソーシャライジング・ワールド及びゲームにおいては、プレーヤは、実際の金銭で他のプレーヤに仮想オブジェクト又はアバターを売っている。オンラインゲーム内で経験豊かなキャラクタを形成することは、キーボードの後方で数百時間を要する非常に長期にわたる工程である。シミュレーションツールによる実在オブジェクトの3Dモデルは、実際の(偽りの)オブジェクトを作ってそれを売ることを可能にする。ハリウッドのスタジオから次の大ヒット作の場面のための3Dモデルを漏洩することは、そのスタジオにとって悪評をもたらすことがある。以上のように、多くの場合に、3Dオブジェクトは、それらの所有者にとって大きな価値を持った財産である。
【0004】
コンテンツ保護のための方策は機密保護を有し、すなわち、例えば暗号化及びウォータマーキングによって、権限のないユーザがコンテンツにアクセスすることを不可能とすることを目的とし、且つ、権限がないにも関わらずコンテンツを広めたユーザを追跡することを可能にすることを目的としている。
【0005】
3Dコンテンツ保護の基本的な方法はデータ全体に焦点を当てており、すなわち、全てのデータが暗号化若しくはウォータマーキングのいずれか一方又はそれら両方を受ける。しかし、それらの方法は多少未完成である。
【0006】
3Dコンテンツを保護するためのより微妙な方法は、その3Dオブジェクトのうちの1又はそれ以上を保護することである。これは、3Dコンテンツがしばしば、一組にされた多数の相異なるオブジェクトから成る場合に、可能である。夫々の3Dオブジェクトが別個のエンティティとして符号化される場合に、それらの夫々を別々に保護することが可能となり、それらの全てを保護する必要はない。
【0007】
例えば、米国特許出願公開第2008/0022408号明細書(特許文献1)は、暗号化されていないデータとしてオブジェクトの有界ボックス(bounding box)を1つのファイルに記憶し且つ暗号化されたデータとして保護される3Dオブジェクトを別のファイルに記憶することによって、3Dオブジェクトを保護する方法を記載している。あらゆるユーザが暗号化されていないデータにアクセスすることができるが、暗号化されたデータには認定ユーザしかアクセスすることができない。例えば、権限のないユーザは、自動車の代わりに、平行6面体のような、その基本表現(すなわち、有界ボックス)を見る。しかし、この方法は、3Dレンダリングソフトウェアとともに使用されるよう開発されており、ビデオ及び映画等のマルチメディアコンテンツには適さない。加えて、ファイルフォーマット(暗号化されていないデータを含む1つのファイル及び暗号化されたデータを含む1つのファイル)は標準外であり、従って、標準的でない適応レンダリング装置によってしか使用可能でない。実際に、暗号化されたデータは、ほとんどの3D技術のシンタックスを順守せず、従って、標準的には使用され得ない。
【0008】
米国特許第6678378号明細書(特許文献2)は、暗号化により3Dコンピュータ支援設計(CAD)オブジェクトを保護する解決法を記載している。解決法は、非線形又はアフィン変換により3Dオブジェクトを歪ませることによって、又はRSA等の通常の暗号化によって、縁部又は輪郭のための式及びノードの座標値の1つを暗号化してよい。
【0009】
この解決法に伴う問題は、(特に、RSAを用いる場合に)計算に費用がかかり、且つ、悪意あるユーザがそれでもなおコンテンツを使用することを阻止するには歪みが十分でないことである。加えて、通常の暗号化の場合において、3Dオブジェクトは、コンテンツ消費装置(例えば、コンピュータ又はテレビ受像機)によって全く読出可能でないことがある。これは、幾つかの場合において欠点となりうる。
【0010】
デジタル権利使用可能グラフィック処理システムが、Shi, W.、Lee, H.、Yoo, R.及びBoldyreva, A.、「A Digital Rights Enabled Graphics Processing System」、GH ’06、Proceedings of the 21st ACM SIGGRAPH/EUROGRAPHICS symposium on Graphics hardware、ACM、17-26、2006年(非特許文献1)において提案されている。このシステムによれば、3Dオブジェクトを構成するデータ(頂点、テクスチャの集合)が暗号化される。それらの復号化は、ライセンスの制御下で、グラフィック処理ユニット内で扱われる。また、3D要素の保護された及び保護されてないバージョンを同時に伝えるために多重分解能メッシュを使用することも可能である。システム自体は安全な3D環境への実際の進歩であるが、他の仮想現実モデリング言語(VRML)レンダラによる保護された場面の使用は相互運用の問題を引き起こす。
【0011】
David Koller及びMarc Levoyは、高精細3Dデータがサーバに記憶されている、3Dデータの保護のためのシステムを記載している。ユーザは、彼らが操作することができる低精細3Dオブジェクトにアクセスすることができ、ユーザがビューを選択したときには、リクエストがサーバへ送られ、サーバはそのビューに対応する2次元JPEGを返す。従って、高精細3Dデータは、それが決してユーザに提供されないので、保護される(David Koller及びMarc Levoy、「Protecting 3D Graphics Content」、Communications of the ACM、2005年6月、vol.48、no.6(非特許文献2)を参照)。このシステムはその意図された使用については上手く動作するが、フル3Dデータがユーザに転送されるべき場合には受け入れられない。
【0012】
先行技術の解決法に伴う共通の問題は、それらがフォーマットを保っておらず、3Dデータの暗号化に基づき、権限のない装置によって使用不可能な3Dデータの第2の組を提供し、ユーザが何か(例えば、有界ボックス)を見ることができるようにする点である。
【0013】
欧州特許出願第10305692.5号明細書(特許文献3)は、点(すなわち、頂点)のリストを有する3Dオブジェクトが、その点の少なくとも幾つかについて座標を置換することによって保護される、フォーマットを維持した解決法を記載している。どのように点が接続されているのかを詳述するリストは変更されないままであるが、3Dオブジェクトは、それらの点がもはや初期値を有さないので、もはや意味をなさない。この解決法の利点は、保護された3Dオブジェクトが、保護された3Dオブジェクトを復号化することができない装置によっても可読であり(それは非常に異様に見えるが)、且つ、保護された3Dオブジェクトが原の3Dオブジェクトと同じサイズのボックスにおいて記されることである。しかし、解決法は、保護された3Dオブジェクトの点が原の3Dオブジェクトと順序は異なるが同じ座標を有するので、再構成技術に対して脆弱であることが発見されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0022408号明細書
【特許文献2】米国特許第6678378号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第10305692.5号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Shi, W.、Lee, H.、Yoo, R.及びBoldyreva, A.、「A Digital Rights Enabled Graphics Processing System」、GH ’06、Proceedings of the 21st ACM SIGGRAPH/EUROGRAPHICS symposium on Graphics hardware、ACM、17-26、2006年
【非特許文献2】David Koller及びMarc Levoy、「Protecting 3D Graphics Content」、Communications of the ACM、2005年6月、vol.48、no.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、権限のないコンテンツ消費装置が3Dオブジェクトを読み出して表示することを、そのビューイングを不満足なものとする態様でありながら依然として可能にし、且つ、再構成技術に耐性がある即時計算により3Dオブジェクトの保護を可能にすることができる解決法が必要とされる。本発明は、そのような解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様において、本発明は、グラフィックオブジェクトを保護する方法を対象にする。装置は、少なくとも2つの次元において表される複数の点を有する前記グラフィックオブジェクトを受け取り、決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの次元の座標値を置換し、該座標値が、保護されたグラフィックオブジェクトを得るよう、少なくとも1つの他の次元の座標値とは無関係に置換されるようにし、前記保護されたグラフィックオブジェクトを出力する。
【0018】
第1の望ましい実施形態で、前記グラフィックオブジェクトは3次元オブジェクトである。
【0019】
第2の望ましい実施形態で、前記次元の座標の全てが置換される。
【0020】
第3の望ましい実施形態で、全ての次元の座標の少なくとも幾つかが置換される。
【0021】
前記座標はキーに基づく置換アルゴリズム(key-based permutation algorithm)を用いて置換されることが有利である。
【0022】
第4の望ましい実施形態で、前記保護されたグラフィックオブジェクト及び前記グラフィックオブジェクトは、異なる点の組を有する。
【0023】
第2の態様において、本発明は、保護されたグラフィックオブジェクトを非保護にする方法を対象にする。装置は、少なくとも2つの次元において表される複数の点を有する前記保護されたグラフィックオブジェクトを受け取り、決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの次元の座標値を置換し、該座標値が、保護されていないグラフィックオブジェクトを得るように前記保護されたグラフィックオブジェクトを非保護にするよう、少なくとも1つの他の次元の座標値とは無関係に置換されるようにし、前記保護されていないグラフィックオブジェクトを出力する。
【0024】
第1の望ましい実施形態で、前記グラフィックオブジェクトは3次元オブジェクトである。
【0025】
第2の望ましい実施形態で、前記次元の座標の全てが置換される。
【0026】
第3の望ましい実施形態で、全ての次元の座標の少なくとも幾つかが置換される。
【0027】
前記座標はキーに基づく置換アルゴリズムを用いて置換されることが有利である。
【0028】
第3の態様において、本発明は、グラフィックオブジェクトを保護する装置を対象とする。当該装置は、少なくとも2つの次元において表される複数の点を有する前記グラフィックオブジェクトを受け取る手段と、決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの次元の座標値を置換し、該座標値が、保護されたグラフィックオブジェクトを得るよう、少なくとも1つの他の次元の座標値とは無関係に置換されるようにする手段と、前記保護されたグラフィックオブジェクトを出力する手段とを有する。
【0029】
第4の態様において、本発明は、保護されたグラフィックオブジェクトを非保護にする装置を対象とする。当該装置は、少なくとも2つの次元において表される複数の点を有する前記保護されたグラフィックオブジェクトを受け取る手段と、決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの次元の座標値を置換し、該座標値が、保護されていないグラフィックオブジェクトを得るように前記保護されたグラフィックオブジェクトを非保護にするよう、少なくとも1つの他の次元の座標値とは無関係に置換されるようにする手段と、前記保護されていないグラフィックオブジェクトを出力する手段とを有する。
【0030】
第5の態様において、本発明は、プロセッサによって実行される場合に本発明の第1の態様の実施形態のいずれかに係る方法を実行する命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体を対象とする。
【0031】
第6の態様において、本発明は、プロセッサによって実行される場合に本発明の第2の態様の実施形態のいずれかに係る方法を実行する命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体を対象とする。
【発明の効果】
【0032】
本願発明の実施形態によれば、権限のないコンテンツ消費装置が3Dオブジェクトを読み出して表示することを、そのビューイングを不満足なものとする態様でありながら依然として可能にし、且つ、再構成技術に耐性がある即時計算による3Dオブジェクトの保護が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の好ましい実施形態に従う3Dオブジェクト保護システムを表す。
図2】本発明の好ましい実施形態に従う3Dオブジェクト保護方法を表す。
図3】本発明の好ましい実施形態に従う3Dオブジェクト保護の様々な態様を表す。
図4】本発明の好ましい実施形態に従う3Dオブジェクト保護の様々な態様を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、一例として、添付の図面を参照して、本発明の好ましい特徴について記載する。
【0035】
例えば、仮想現実モデリング言語(VRML)及びX3Dのような、幾つかの3Dコンテンツフォーマットにおいて、3Dグラフィックオブジェクト(「3Dオブジェクト」)は、各点が特定の座標の組を有する点の第1リスト、及びどのように点を連結すべきかに関する情報を含む第2リストとして表される。
【0036】
本発明の顕著な発明概念は、暗号化アルゴリズム、望ましくは、第1リストにおける少なくとも1つの次元の点の座標についてキーに基づく置換を行うことによって、3Dオブジェクトを保護することである。置換は、新しい点の組(すなわち、保護された3Dオブジェクトの点の組は3Dオブジェクトの点の組とは異なる。)の生成をもたらし、それにより、保護された3Dオブジェクトは、依然としてあらゆる標準的な3Dモデルレンダリングアプリケーションによって理解されるが、結果として得られる表示は、見る者にとって奇妙なものとなり、ほとんど使用不可能である。特に以下の記載を鑑み、点自体の座標がリスト内で一体となって置換される上記特許文献3における解決法と比較される相違点は、当業者にとって明らかである。
【0037】
権限のあるユーザは、置換を無効にし、点をそれらの原の位置へとシャッフルする手段を有する。
【0038】
図1は、本発明の好ましい実施形態に従う3Dオブジェクト保護システム100を表し、図2は、本発明の好ましい実施形態に従う3Dオブジェクト保護方法を表す。非制限的な例として、点は、グラフィックオブジェクトを構成する面の頂点に対応し、3D座標において表され、第2リストは、線及び面を形成するよう頂点をどのように連結すべきかに関する情報を有する。置換は、静的な部分(VRMLシンタックスにおける座標ノード)若しくはアニメーション部分(VRMLシンタックスにおける座標補間部)又はそれら両方に対して行われてよい。言い換えると、それは、オブジェクトの正確なレンダリングを不可能にする、保護された3Dオブジェクトの表現である。
【0039】
システム100は、送信器110及び受信器140を有し、それらは夫々、少なくとも1つのプロセッサ111、141と、メモリ112、142と、望ましくはユーザインターフェース113、143と、少なくとも1つの入出力ユニット114、144とを有する。送信器110は、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションであってよく、一方、受信器140は、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションのみならず、テレビ受像機、ビデオレコーダ、セットトップボックス等であってもよい。
【0040】
送信器110は、ステップ210で、保護されるべき3Dオブジェクト120を受け取り、ステップ220で、3Dオブジェクト120の点についてx座標、y座標及びz座標の少なくとも1つ(望ましくは3座標全て)を置換するようキーを用いて、保護された3Dオブジェクト130を得る。保護された3Dオブジェクト130は、ステップ230で、受信器140に記憶又は送信される。座標(x,y,z)の少なくとも1つの座標は他の座標とは無関係に置換されるので、置換は新しい点を生成する可能性がある。言い換えると、点はインデックスを付されており、1つの次元の座標は、インデックスの座標を変えることによって、スクランブルをかけられる(一体となってそれらの座標を置換することは、上記特許文献3に記載されるように、点の置換を生じさせることに留意されたい。)。受信器140は、ステップ240で、保護された3Dオブジェクト130を受け取り、ステップ250で、置換された次元の座標をキー(何らかの秘密キーであってよい。)により置換することによって点をリストアし、次いで、ステップ260で、保護されていない3Dオブジェクト150を表示し又は別なふうに使用してよい。言い換えれば、受信器140は、インデックスの座標がリストアされるように置換を無効にする。最初の3Dオブジェクト120及び保護されていない3Dオブジェクト150は、通常は同じである点ことに留意されたい。
【0041】
結果として、権限のあるユーザは、全てのオブジェクトが正確に表示されるので、異常なものには何ら気付かず、一方、権限のないユーザは、保護されたオブジェクトが不正確にレンダリングされた状態で場面全体を見る。
【0042】
第1のコンピュータ可読記憶媒体160は、送信器110のプロセッサ111によって実行される場合に、記載されるように3Dオブジェクトを保護する命令を記憶している。第2のコンピュータ可読記憶媒体170は、受信器140のプロセッサ141によって実行される場合に、記載されるように3Dオブジェクトを非保護にする命令を記憶している。
【0043】
図3及び図4は、本発明の好ましい実施形態に従う3Dオブジェクト保護の様々な態様を表す。図3は、置換320の後で保護された点のリスト330になる保護されていない点のリスト310(例えば、オブジェクトの静的な部分)を示す。一例として、x座標値のみが置換され、一方、y座標値及びz座標値は変更されないままである。図3において、インデックスは、座標値の組の左に示されている。点は2つのリストにおいて異なっていることが分かる。例えば、保護されていない点のリスト310におけるインデックス1でのx座標17は、保護された点のリスト330におけるインデックス8でのx座標になる。図4は、3Dオブジェクトのレンダリングを表す。レンダリングされた保護されていない3Dオブジェクト410が、レンダリングされた保護された3Dオブジェクト420の隣に示されており、それらを比較することができる。図に示すように、レンダリングされた保護された3Dオブジェクト420は、例えば、3Dオブジェクトが記されるボックスの一般的なサイズしか推定されないので、実際には完全に不可解である。
【0044】
代替の実施形態において、3Dグラフィックオブジェクトの点は、グラフィックオブジェクトを構成する面上のテクスチャのマッピングに対応し、2次元座標において表される。
【0045】
使用される置換は、実際上、決定された置換順序に従って点を置換する、如何なるキーに基づく置換アルゴリズムであってもよい。そのようなアルゴリズムの基本的な例は、インデックスiにあるリスト内の座標値を、インデックスi’にある値に上書きしないように気をつけながら、インデックスi’へ動かすことである。リストを保護するよう、i’=(i+k)modNが成立する。kは秘密キーであり、Nはリストのサイズである。リストを非保護にするよう、先と同じく如何なる値にも上書きしないように気をつけながら、i’=(i+k)modNが成立する。他の例は、出力インデックスを生成するよう入力としてインデックス及びキーをとる関数i’=f(i)modNによって座標値を繰り返し交換することである。なお、Nはインデックスの数である。置換アルゴリズムの更なる例は、Donald E. Knuth、「The Art of Computer Programming volume 2: Seminumerical algorithms」、pp.138-140において記載されている。
【0046】
次元の1又はそれ以上の座標は、特に、置換されない点の数と置換される点の数との間の比が小さいままである場合に、著しく安全性に影響を及ぼすことなく、置換されままであってよい。
【0047】
当業者には明らかなように、ユーザ認証及びキー管理は本発明の適用範囲外である。
【0048】
このように、座標はただ置換されるだけであることが分かる。従来のアプローチは、頂点データを暗号化して、3D空間全体にわたって広がったランダムな点を有し且つ完全な場面の他の態様と重なり合うことをもたらし、最悪の場合に、3Dオブジェクトをレンダリングすることを全く不可能とする。本発明のアプローチによれば、保護された3Dオブジェクトは、概して、原の、すなわち、保護されていない3Dオブジェクトの幾何学的境界内にとどまる。従って、ユーザが、1つのオブジェクトを非保護にすることを許可されていない場合に、場面全体は、この保護されたオブジェクトの表示のよって複雑になり過ぎない。
【0049】
本発明は3次元に関して記載されたが、それは、2次元又は3より多い次元においてオブジェクトを保護するために適用されてもよい。
【0050】
このように、当然のことながら、本発明は、3Dモデルの機密性を確かにするメカニズムを提供することができ、該メカニズムは、実際上、権限のないユーザに対して保護されたモデル及び保護されていないモデルを区別することができる。また、当然のことながら、保護された3Dオブジェクト(及び3Dオブジェクトを有する場面)は、それが人しか能でないとして、常にレンダリングされ得る。また、当然のことながら、保護メカニズムは、(表面)再構成技術に耐性がある。
【0051】
明細書、(必要に応じて)特許請求の範囲、及び図面において開示される夫々の特徴は、独立して又は何らかの適切な組み合わせにおいて提供されてよい。ハードウェアにおいて実施されるように記載される特徴はソフトウェアにおいて実施されてもよく、その逆の場合も同様である。特許請求の範囲に現れる参照符号は、単なる例示に過ぎず、特許請求の範囲の適用範囲を限定するものではない。
上記の実施形態に加えて、以下の付記を開示する。
(付記1)
グラフィックオブジェクトを保護する方法であって、装置において、
少なくとも2つの次元において表される複数の点を有する前記グラフィックオブジェクトを受け取り、
決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの第1次元の座標値を置換し、該座標値が、保護されたグラフィックオブジェクトを得るよう、少なくとも1つの第2次元の座標値とは無関係に置換されるようにし、
前記保護されたグラフィックオブジェクトを出力する
ステップを有する方法。
(付記2)
前記グラフィックオブジェクトは、3次元オブジェクトである、
付記1に記載の方法。
(付記3)
前記少なくとも1つの第1次元の全ての座標が置換される、
付記1に記載の方法。
(付記4)
全ての次元の座標の少なくとも幾つかが置換される、
付記1に記載の方法。
(付記5)
前記座標は、キーに基づく置換アルゴリズムを用いて置換される、
付記1乃至4のうちいずれか一つに記載の方法。
(付記6)
前記保護されたグラフィックオブジェクト及び前記グラフィックオブジェクトは、異なる点の組を有する、
付記1乃至4のうちいずれか一つに記載の方法。
(付記7)
保護されたグラフィックオブジェクトを非保護とする方法であって、装置において、
少なくとも2つの次元において表される複数の点を有する前記保護されたグラフィックオブジェクトを受け取り、
決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの第1次元の座標値を置換し、該座標値が、保護されていないグラフィックオブジェクトを得るように前記保護されたグラフィックオブジェクトを非保護とするよう、少なくとも1つの第2次元の座標値とは無関係に置換されるようにし、
前記保護されていないグラフィックオブジェクトを出力する
ステップを有する方法。
(付記8)
前記保護されていないグラフィックオブジェクトは、3次元オブジェクトである、
付記7に記載の方法。
(付記9)
前記少なくとも1つの第1次元の全ての座標が置換される、
付記7に記載の方法。
(付記10)
全ての次元の座標の少なくとも幾つかが置換される、
付記7に記載の方法。
(付記11)
前記座標は、キーに基づく置換アルゴリズムを用いて置換される、
付記7乃至10のうちいずれか一つに記載の方法。
(付記12)
グラフィックオブジェクトを保護する装置であって、
少なくとも2つの次元において表される複数の点を有する前記グラフィックオブジェクトを受け取る手段と、
決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの第1次元の座標値を置換し、該座標値が、保護されたグラフィックオブジェクトを得るよう、少なくとも1つの第2次元の座標値とは無関係に置換されるようにする手段と、
前記保護されたグラフィックオブジェクトを出力する手段と
を有する装置。
(付記13)
保護されたグラフィックオブジェクトを非保護とする装置であって、
少なくとも2つの次元において表される複数の点を有する前記保護されたグラフィックオブジェクトを受け取る手段と、
決定された置換順序に従って前記複数の点の少なくとも幾つかの点について少なくとも1つの第1次元の座標値を置換し、該座標値が、保護されていないグラフィックオブジェクトを得るように前記保護されたグラフィックオブジェクトを非保護とするよう、少なくとも1つの第2次元の座標値とは無関係に置換されるようにする手段と、
前記保護されていないグラフィックオブジェクトを出力する手段と
を有する装置。
(付記14)
プロセッサによって実行される場合に付記1乃至6のうちいずれか一つに記載の方法を実行する命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体。
(付記15)
プロセッサによって実行される場合に付記7乃至11のうちいずれか一つに記載の方法を実行する命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体。
【符号の説明】
【0052】
100 3Dオブジェクト保護システム
110 送信器
111,141 プロセッサ
112,142 メモリ
113,143 ユーザインターフェース
114,144 入出力ユニット
120,150,410 (保護されていない)3Dオブジェクト
130,420 保護された3Dオブジェクト
140 受信器
160,170 コンピュータ可読記憶媒体
310 保護されていない点のリスト
320 置換
330 保護された点のリスト
図1
図2
図3
図4