特許第5875861号(P5875861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5875861
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】車両運搬用固定装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/075 20060101AFI20160218BHJP
   B60P 3/079 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   B60P3/075
   B60P3/079
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-287602(P2011-287602)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-136276(P2013-136276A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉造 敏之
(72)【発明者】
【氏名】栗山 良平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】針田 洋一
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−078613(JP,A)
【文献】 特開平08−244520(JP,A)
【文献】 特開昭51−139013(JP,A)
【文献】 特公昭49−037365(JP,B1)
【文献】 特公昭40−008848(JP,B1)
【文献】 特開2009−161189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00 − 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャシ上にキャブのみを搭載した未架装のトラックにおける架装用空きスペースを利用して別のトラックを積載するにあたり、下段のトラックに対し上段のトラックを固定するための車両運搬用固定装置であって、
上段のトラックにおける前輪のアクスルビームを載置可能なビーム支持部と、該ビーム支持部に載置したアクスルビームの前後方向の相対変位を規制する前後規制部と、上段のトラックにおける前輪のリーフスプリングの左右方向の相対変位を規制する左右規制部とを備え且つ下段のトラックにおける架装用空きスペースの前方側のシャシ上に固縛して位置決めされる前部固定具と、
上段のトラックにおける後輪を載置可能な後輪支持部を備え且つ下段のトラックにおける架装用空きスペースの後方側のシャシ上に固縛して位置決めされる後部固定具とから成ることを特徴とする車両運搬用固定装置。
【請求項2】
上段のトラックにおける後輪を嵌まり込ませて該後輪の前後方向の相対変位を規制する前後規制溝として後部固定具の後輪支持部が形成され且つ後部固定具の左右方向両端に後輪の横ずれ時に干渉して後部固定具からの後輪の脱落を阻止する脱落防止ガードが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両運搬用固定装置。
【請求項3】
前部固定具及び後部固定具をシャシ上に嵩上げするスペーサが前記前部固定具及び後部固定具に着脱自在に備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両運搬用固定装置。
【請求項4】
前部固定具及び後部固定具のシャシ側に対する左右方向の相対変位を規制するストッパが前記前部固定具及び後部固定具に着脱自在に備えられていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の車両運搬用固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運搬用固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラックを海外へ輸出する場合には、シャシ上にキャブのみを搭載した未架装の状態で完成車両として扱われており、どのような架装を施すかについては現地での需要に応じて決定され、荷台やアルミバン、特殊車両の後部装備等が適宜に選択されて架装されることになる。
【0003】
このような未架装のトラックは貨物船により海上輸送されるが、この際の輸送運賃は、積荷となるトラックの縦、横、高さに基づく総容積で決まるため、キャブ後方のシャシ上に架装用空きスペースができてしまう分だけ無駄な輸送運賃がかかってしまうことになる。
【0004】
そこで、本発明者は、未架装のトラックにおける架装用空きスペースを利用して別のトラックを積載し、限られた積荷空間に対するトラックの収容効率を高めて輸送コストの削減を図ることを創案するに到った。
【0005】
尚、本発明に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−98464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、トラックを段重ねして海上輸送するといった考えは、これまでに誰も思いつかなかった新しい提案であるため、海上で波浪による揺れを生じてしまうことが避けられない貨物船で海上輸送するにあたり、新車としてのトラックを傷つけることなく段重ねして安定して固定し得るような車両運搬用固定装置の提供は未だ成されていないのが実情である。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、未架装のトラックにおける架装用空きスペースを利用して別のトラックを傷つけることなく段重ねして安定して固定し得る車両運搬用固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シャシ上にキャブのみを搭載した未架装のトラックにおける架装用空きスペースを利用して別のトラックを積載するにあたり、下段のトラックに対し上段のトラックを固定するための車両運搬用固定装置であって、
上段のトラックにおける前輪のアクスルビームを載置可能なビーム支持部と、該ビーム支持部に載置したアクスルビームの前後方向の相対変位を規制する前後規制部と、上段のトラックにおける前輪のリーフスプリングの左右方向の相対変位を規制する左右規制部とを備え且つ下段のトラックにおける架装用空きスペースの前方側のシャシ上に固縛して位置決めされる前部固定具と、
上段のトラックにおける後輪を載置可能な後輪支持部を備え且つ下段のトラックにおける架装用空きスペースの後方側のシャシ上に固縛して位置決めされる後部固定具とから成ることを特徴とするものである。
【0010】
而して、下段のトラックにおける架装用空きスペースの前方側のシャシ上に前部固定具を固縛して位置決めすると共に、前記架装用空きスペースの後方側のシャシ上に後部固定具を固縛して位置決めし、上段のトラックにおける前輪のアクスルビームを前部固定具のビーム支持部に載置して支え、上段のトラックにおける後輪を後部固定具に載置すると、下段のトラックの架装用空きスペースに上段のトラックが段重ねされ、下段のトラックのシャシ上に上段のトラックが前輪のアクスルビームと後輪とを支えられて積載されることになる。
【0011】
この際、上段のトラックの重量の大半は、キャブが搭載されている前方に偏っているため、上段のトラックの前方で前輪のアクスルビームが前後規制部により前後方向の相対変位を規制され且つ前輪のリーフスプリングが左右規制部により左右方向の相対変位を規制されることにより、上段のトラックが下段のトラックのシャシ上に安定して固定されることになる。
【0012】
また、上段のトラックを固定するための治具を前部固定具と後部固定具とに分割して構成したことにより、単一の大型治具として構成する場合と比較して治具の大幅な軽量化が図られると共に、下段のトラックのシャシに対する固縛位置を変更して複数の車種に対応した段重ねを実現することが可能となる。
【0013】
尚、上段のトラックにおける前輪のアクスルビームを前部固定具のビーム支持部に載置して支えるようにしているため、上段のトラックにおける前輪を取り外して高さを抑えることで車両容積の最小化を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明においては、上段のトラックにおける後輪を嵌まり込ませて該後輪の前後方向の相対変位を規制する前後規制溝として後部固定具の後輪支持部が形成され且つ後部固定具の左右方向両端に後輪の横ずれ時に干渉して後部固定具からの後輪の脱落を阻止する脱落防止ガードが設けられていることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、上段のトラックの後方でも後輪が前後規制溝に嵌まり込んで前後方向の相対変位を規制されるので、上段のトラックが下段のトラックのシャシ上に更に安定して固定されることになり、また、貨物船に大きな横揺れが生じて後輪が横ずれしたとしても、該後輪に脱落防止ガードが干渉して脱落が阻止されることになる。
【0016】
更に、本発明においては、前部固定具及び後部固定具をシャシ上に嵩上げするスペーサが前記前部固定具及び後部固定具に着脱自在に備えられていることが好ましく、このようにすれば、スペーサにより前部固定具及び後部固定具をシャシ上に嵩上げして高さ調整を行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、前部固定具及び後部固定具のシャシ側に対する左右方向の相対変位を規制するストッパが前記前部固定具及び後部固定具に着脱自在に備えられていることが好ましく、このようにすれば、貨物船に大きな横揺れが生じても、ストッパにより確実に前部固定具及び後部固定具を下段のトラックのシャシ上に固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
上記した本発明の車両運搬用固定装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0020】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、未架装のトラックにおける架装用空きスペースのシャシ上に別のトラックを前部固定具及び後部固定具を用いて積載することにより、上段のトラックにおける前輪のアクスルビームを前部固定具のビーム支持部に載置して支えると共に、上段のトラックにおける後輪を後部固定具に載置して支え、上段のトラックの重量の大半が偏っている前方で前輪のアクスルビームにおける前後方向の相対変位を前後規制部により規制し且つ前輪のリーフスプリングにおける左右方向の相対変位を左右規制部により規制することができるので、上段のトラックを傷つけることなく下段のトラックのシャシ上に段重ねして安定して固定することができる。
【0021】
(II)本発明の請求項1に記載の発明によれば、上段のトラックを固定するための治具を前部固定具と後部固定具とに分割して構成したことにより、単一の大型治具として構成する場合と比較して治具の大幅な軽量化を図ることができ、しかも、下段のトラックのシャシに対する固縛位置を変更して複数の車種に対応した段重ねを実現することができる。
【0022】
(III)本発明の請求項1に記載の発明によれば、上段のトラックにおける前輪のアクスルビームを前部固定具のビーム支持部に載置して支えるようにしているため、上段のトラックにおける前輪を取り外して高さを抑えることで車両容積の最小化を図ることもできる。
【0023】
(IV)本発明の請求項2に記載の発明によれば、上段のトラックの後方でも後輪を前後規制溝に嵌まり込ませて前後方向の相対変位を規制することができるので、上段のトラックを下段のトラックのシャシ上に更に安定して固定することができ、しかも、貨物船に大きな横揺れが生じて後輪が横ずれしたとしても、該後輪に脱落防止ガードを干渉させて脱落を阻止することができる。
【0024】
(V)本発明の請求項3に記載の発明によれば、スペーサにより前部固定具及び後部固定具をシャシ上に嵩上げして高さ調整を行うことができる。
【0025】
(VI)本発明の請求項4に記載の発明によれば、貨物船に大きな横揺れが生じても、ストッパにより確実に前部固定具及び後部固定具を下段のトラックのシャシ上に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明を実施する形態の一例を概略的に示す全体図である。
図2図1のII−II方向の矢視図である。
図3図1の前部固定具の詳細を示す斜視図である。
図4図3の前部固定具の正面図である。
図5】手挿しピンの一例を示す斜視図である。
図6】手挿しピンの別の例を示す斜視図である。
図7図1の後部固定具の詳細を示す斜視図である。
図8図7の後部固定具の正面図である。
図9図7の後部固定具に更なるスペーサを用いた例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、シャシ1上にキャブ2のみを搭載した未架装のトラック3における架装用空きスペース4を利用して別のトラック5を積載するにあたり、以下に詳述する前部固定具6と後部固定具7とに分割構成された車両運搬用固定装置を用いて下段のトラック3に上段のトラック5を固定するようにしている。
【0030】
図3及び図4に詳細を示す如く、前記前部固定具6は、前後方向に延びる一対のレール部材8と、該各レール部材8の前後方向端部同士を左右に連結する端部連結部材9,10と、前記各レール部材8の前後方向中間部同士を左右に連結し且つフォークリフトのフォークを挿し込むためのフォークポケットを兼ねた箱形断面の中間部連結部材11,11とから成る枠組み構造となっており、下段のトラック3における架装用空きスペース4の前方側のシャシ1上に固縛されて位置決めされている。
【0031】
より具体的には、前記前部固定具6の両レール部材8の前後位置と、下段のトラック3におけるシャシ1のサイドレール1aとの間が計4本のラッシングベルト12により固縛されるようになっている(図1及び図2参照)。
【0032】
また、前記前部固定具6には、上段のトラック5における前輪16(図1に示す段重ねの状態では取り外されている)のアクスルビーム13を載置可能なビーム支持部14と、該ビーム支持部14に載置したアクスルビーム13の前後方向の相対変位を規制する前後規制部15と、上段のトラック5における前輪16のリーフスプリング17の左右方向の相対変位を規制する左右規制部18とが備えられている。
【0033】
前記ビーム支持部14は、前部固定具6の前後方向中間位置の両側で前記中間部連結部材11,11に挟まれて配置され且つ夫々の上面に緩衝材19が備えられており、前記前後規制部15は、前記両ビーム支持部14に挟まれた左右方向中間位置で前記各中間部連結部材11,11に夫々取り付けられて直立する一対の突起状を成すように形成されていると共に、夫々の相対する内側面に緩衝材20が備えられ且つ夫々の上方部分がアクスルビーム13を相互間に案内し得るようV字状に開いた形状としてある。
【0034】
また、前記左右規制部18は、左右のレール部材8における各ビーム支持部14の後方側に隣接した位置に上向きに開いたU字形を成すように形成されていると共に、そのU字形の内側面に緩衝材21が備えられ且つ夫々の上方部分が前輪16のリーフスプリング17をU字形の溝内に案内し得るようV字状に開いた形状としてある。
【0035】
更に、ここに図示している例においては、前記各レール部材8の下面に取り付けられた木製のスペーサ22により前部固定具6がシャシ1上に嵩上げしてラッシングベルト12により固縛されるようになっており、高さの異なるスペーサ22を付け替えることで前部固定具6の嵩上げ量を調整し得るようにしてある。
【0036】
また、前記各レール部材8の長手方向適宜位置と前方側の端部連結部材9両側の増設部9aに挿入孔23が穿設されており、これらの挿入孔23に手挿しピン24(ストッパ)を上方から挿し入れて前記挿入孔23より大きな上端部を係止せしめ得るようにしてあり、前記手挿しピン24により前部固定具6のシャシ1側に対する左右方向の相対変位が規制されるようになっている。
【0037】
即ち、挿入孔23に上方から挿し入れられた手挿しピン24は、前部固定具6の下方に突き出して下段のトラック3におけるシャシ1の各サイドレール1aを左右方向外側から挟み込む、或いは、各サイドレール1aにより左右方向内側から挟まれるようになっている。
【0038】
各挿入孔23は複数のシャシ幅に対応し得るよう異なる左右間隔で何種類か設定しても良く、また、同じ左右間隔の挿入孔23に対しても、下段のトラック3におけるシャシ1の各サイドレール1aを左右方向外側から挟み込む形式とするか、或いは、各サイドレール1aにより左右方向内側から挟まれる形式とするか、を適宜に選択することで、二種類のシャシ幅に対応させることが可能であり、更には、手挿しピン24自体のサイドレール1aに対する当接位置を左右方向に変化させたものを複数種類用意しても良い。
【0039】
尚、手挿しピン24には、図5の如き片面だけに緩衝材25を備えたタイプや、図6の如き両面に緩衝材25を備えたタイプを適用することが可能であり、また、前述のスペーサ22の嵩上げ量に応じて長さの異なる手挿しピン24を複数種類用意しておくことも可能である。
【0040】
一方、図7及び図8に詳細を示す如く、前記後部固定具7は、金属板を組み付けて成るボックス構造となっており、下段のトラック3における架装用空きスペース4の後方側のシャシ1上に固縛されて位置決めされており、より具体的には、前記後部固定具7の下面における図示しない隙間を通した計2本のラッシングベルト26により下段のトラック3におけるシャシ1のサイドレール1aと固縛するようにしてある(図1及び図2参照)。
【0041】
また、前記後部固定具7には、上段のトラック5における後輪27を載置可能な後輪支持部が、前記後輪27を嵌まり込ませて該後輪27の前後方向の相対変位を規制する前後規制溝28として形成されており、より具体的には、前記前後規制溝28が、その前後方向中間部を挟んで前後方向外側へ向け対称的な上り勾配の傾斜面を有し、この前後の傾斜面が後輪27に対し車止めとして作用するようにしてあり、斯かる前後規制溝28の左右方向両端には、後輪27の横ずれ時に干渉して後部固定具7からの後輪27の脱落を阻止する脱落防止ガード29が設けられている。尚、図7及び図8中の30xは前記後部固定具7の左右方向中間部に設けられたフォークリフトのフォークを前後方向から挿し込むためのフォークポケット、30yは前記脱落防止ガード29に設けられたフォークリフトのフォークを左右方向から挿し込むためのフォークポケットである。
【0042】
更に、ここに図示している例においては、後部固定具7の下面に取り付けられた木製のスペーサ31により前記後部固定具7がシャシ1上に嵩上げしてラッシングベルト26により固縛されるようになっており、高さの異なるスペーサ31を付け替えることで後部固定具7の嵩上げ量を調整し得るようにしてある。
【0043】
また、前記後部固定具7における前後端面には、挿入孔32を形成するための枠部材33が夫々取り付けられており、これらの枠部材33の挿入孔32に手挿しピン34(ストッパ)を上方から挿し入れて前記挿入孔32より大きな上端部を係止せしめ得るようにしてあり、前記手挿しピン34により前記後部固定具7のシャシ1側に対する左右方向の相対変位が規制されるようになっている。
【0044】
即ち、挿入孔32に上方から挿し入れられた手挿しピン34は、前部固定具6の下方に突き出して下段のトラック3におけるシャシ1の各サイドレール1aを左右方向外側から挟み込む、或いは、各サイドレール1aにより左右方向内側から挟まれるようになっている。
【0045】
また、前述した前部固定具6の場合と同様に、各挿入孔32は複数のシャシ幅に対応し得るよう異なる左右間隔で何種類か設定しても良く、手挿しピン34自体のサイドレール1aに対する当接位置を左右方向に変化させたものを複数種類用意しても良い。また、図示では両面に緩衝材35を備えたタイプの手挿しピン34を示しているが、片面だけに緩衝材35を備えたタイプの手挿しピン34を適用しても良いことは勿論である。
【0046】
尚、前述のスペーサ31の嵩上げ量に応じて長さの異なる手挿しピン34を複数種類用意しておくことも可能であるが、図9に示す如く、先の木製のスペーサ31の上部に金属製の更なるスペーサ36を継ぎ足し、該スペーサ36の下端に枠部材33を別途設けて該枠部材33の挿入孔32に手挿しピン34を装着するようにしても良い。
【0047】
また、先の図1及び図2に示してある通り、上段のトラック5のシャシ37と下段のトラック3のシャシ1とがラッシングベルト38,39,40,41,42,43により固縛されており、より具体的には、ラッシングベルト38により上下のサイドレール1a,37a同士をそのまま上下に固縛し、ラッシングベルト39,42により上下のサイドレール1a,37a同士を前後及び左右に交差するように固縛し、ラッシングベルト40,41により上下のクロスメンバ1b,37b同士を前後に交差するように固縛するようにしている。尚、図1及び図2に示している例では、上段のトラック5における後輪27もラッシングベルト43により後部固定具7の左右位置で上下に固縛するようにしてある。
【0048】
而して、下段のトラック3における架装用空きスペース4の前方側のシャシ1上に前部固定具6をラッシングベルト12により固縛して位置決めすると共に、前記架装用空きスペース4の後方側のシャシ1上に後部固定具7をラッシングベルト26により固縛して位置決めし、上段のトラック5における前輪16のアクスルビーム13を前部固定具6のビーム支持部14に載置して支え、上段のトラック5における後輪27を後部固定具7に載置すると、下段のトラック3の架装用空きスペース4に上段のトラック5が段重ねされ、下段のトラック3のシャシ1上に上段のトラック5が前輪16のアクスルビーム13と後輪27とを支えられて積載されることになる。
【0049】
この際、上段のトラック5の重量の大半は、キャブ2が搭載されている前方に偏っているため、上段のトラック5の前方で前輪16のアクスルビーム13が前後規制部15により前後方向の相対変位を規制され且つ前輪16のリーフスプリング17が左右規制部18により左右方向の相対変位を規制されることにより、上段のトラック5が下段のトラック3のシャシ1上に安定して固定されることになる。
【0050】
また、特に本形態例においては、前記前部固定具6側でしっかりとした固定が行われることに加えて、上段のトラック5の後方でも後輪27が前後規制溝28に嵌まり込んで前後方向の相対変位を規制されるので、上段のトラック5が下段のトラック3のシャシ1上に更に安定して固定されることになり、また、貨物船に大きな横揺れが生じて後輪27が横ずれしたとしても、該後輪27に脱落防止ガード29が干渉して脱落が阻止されることになる。
【0051】
更に、上段のトラック5を固定するための治具を前部固定具6と後部固定具7とに分割して構成したことにより、単一の大型治具として構成する場合と比較して治具の大幅な軽量化が図られると共に、下段のトラック3のシャシ1に対する固縛位置を変更して複数の車種に対応した段重ねを実現することが可能となる。
【0052】
従って、上記形態例によれば、未架装のトラック3における架装用空きスペース4のシャシ1上に別のトラック3を前部固定具6及び後部固定具7を用いて積載することにより、上段のトラック5における前輪16のアクスルビーム13を前部固定具6のビーム支持部14に載置して支えると共に、上段のトラック5における後輪27を後部固定具7に載置して支え、上段のトラック5の重量の大半が偏っている前方で前輪16のアクスルビーム13における前後方向の相対変位を前後規制部15により規制し且つ前輪16のリーフスプリング17における左右方向の相対変位を左右規制部18により規制することができるので、上段のトラック5を傷つけることなく下段のトラック3のシャシ1上に段重ねして安定して固定することができる。
【0053】
また、上段のトラック5を固定するための治具を前部固定具6と後部固定具7とに分割して構成したことにより、単一の大型治具として構成する場合と比較して治具の大幅な軽量化を図ることができ、しかも、下段のトラック3のシャシ1に対する固縛位置を変更して複数の車種に対応した段重ねを実現することができる。
【0054】
更に、上段のトラック5における前輪16のアクスルビーム13を前部固定具6のビーム支持部14に載置して支えるようにしているため、上段のトラック5における前輪16を取り外して高さを抑えることで車両容積の最小化を図ることもできる。
【0055】
また、上段のトラック5の後方でも後輪27を前後規制溝28に嵌まり込ませて前後方向の相対変位を規制することができるので、上段のトラック5を下段のトラック3のシャシ1上に更に安定して固定することができ、しかも、貨物船に大きな横揺れが生じて後輪27が横ずれしたとしても、該後輪27に脱落防止ガード29を干渉させて脱落を阻止することができる。
【0056】
更に、前部固定具6及び後部固定具7をシャシ1上に嵩上げするスペーサ22,31(36)が前記前部固定具6及び後部固定具7に着脱自在に備えられているので、このスペーサ22,31(36)により前部固定具6及び後部固定具7をシャシ1上に嵩上げして高さ調整を行うことができる。
【0057】
また、前部固定具6及び後部固定具7のシャシ1側に対する左右方向の相対変位を規制する手挿しピン24,34が前記前部固定具6及び後部固定具7に着脱自在に備えられているので、貨物船に大きな横揺れが生じても、手挿しピン24,34により確実に前部固定具6及び後部固定具7を下段のトラック3のシャシ1上に固定することができる。
【0058】
更に、ラッシングベルト12,26を用いて下段のトラック3のシャシ1上に比較的簡単に前部固定具6及び後部固定具7を固縛することができ、しかも、上段のトラック5と下段のトラック3との間でシャシ1同士をラッシングベルト38,39,40,41,42,43により固縛することで更なる強固な固定を図ることができる。
【0059】
尚、本発明の車両運搬用固定装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 シャシ
2 キャブ
3 トラック
4 架装用空きスペース
5 トラック
6 前部固定具
7 後部固定具
12 ラッシングベルト
13 アクスルビーム
14 ビーム支持部
15 前後規制部
16 前輪
17 リーフスプリング
18 左右規制部
22 スペーサ
24 手挿しピン(ストッパ)
26 ラッシングベルト
27 後輪
28 前後規制溝(後輪支持部)
29 脱落防止ガード
34 手挿しピン(ストッパ)
35 緩衝材
36 スペーサ
37 シャシ
38 ラッシングベルト
39 ラッシングベルト
40 ラッシングベルト
41 ラッシングベルト
42 ラッシングベルト
43 ラッシングベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9