(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5875881
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】圧電発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20160218BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20160218BHJP
H01L 25/00 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03H9/02 A
H03H9/02 K
H01L25/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-18394(P2012-18394)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-157888(P2013-157888A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野 邦彦
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−114898(JP,A)
【文献】
特開2000−049560(JP,A)
【文献】
特開2005−006171(JP,A)
【文献】
特開2003−318654(JP,A)
【文献】
特開2009−124619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
H01L 25/00
H03H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する素子搭載用部材と、
該素子搭載用部材に設けられている圧電素子接続パッドに搭載された圧電素子と、
前記凹部内に搭載されたIC素子と、
前記凹部内に設けられており、前記IC素子を覆っている封止部材と、
を備えており、
前記素子搭載用部材が、前記凹部における前記IC素子よりも高い位置に段部を有しており、
該封止部の縁部が前記段部の上面に位置しており、
前記素子搭載用部材の前記凹部を有する面から前記圧電素子が搭載される面に向かって平面透視したとき、前記段部が前記圧電素子接続パッドと重なる位置に設けられている
ことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記段部は、前記素子搭載用部材の前記凹部を有する面を平面視して、前記素子搭載用部材の長手方向に沿って一対で設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯用通信機器等において用いられる圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば携帯用通信機器等の電子機器において小型の圧電発振器が用いられている。なお、圧電発振器の小型化に伴って、圧電発振器の発振回路部分は、一般的にIC化されている。
【0003】
かかる従来の圧電発振器は、凹部を有する素子搭載用部材と、素子搭載用部材に搭載された圧電素子と、素子搭載用部材の凹部内に搭載されたIC素子とを有し、素子搭載用部材の凹部内は、封止部材で充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−106891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来の圧電発振器において、IC素子を覆っている封止部材の縁部が凹部の壁面の上端部まで這い上がることがあった。封止部材の縁部が凹部の壁面の上端部まで這い上がった場合、封止部材の収縮によって凹部の壁面が凹部の中央方向へ引っ張られて、凹部の壁面が歪む可能性があった。凹部の壁面が歪んで素子搭載用部材が全体的に変形した場合、圧電素子の出力周波数に変動が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様によれば、圧電発振器は、凹部を有する素子搭載用部材と、素子搭載用部材
に設けられている圧電素子接続パッドに搭載された圧電素子と、凹部内に搭載されたIC素子と、凹部内に設けられており、IC素子を覆っている封止部材と、を備えており、素子搭載用部材が、凹部におけるIC素子よりも高い位置に段部を有しており、封止部の縁部が段部の上面に位置
しており、素子搭載用部材の凹部を有する面から前記圧電素子が搭載される面に向かって平面透視したとき、段部が圧電素子接続パッドと重なる位置に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様による圧電発振器において、圧電発振器は、凹部を有する素子搭載用部材と、素子搭載用部材
に設けられている圧電素子接続パッドに搭載された圧電素子と、凹部内に搭載されたIC素子と、凹部内に設けられており、IC素子を覆っている封止部材と、を備えており、素子搭載用部材が、凹部におけるIC素子よりも高い位置に段部を有しており、封止部の縁部が段部の上面に位置
しており、素子搭載用部材の凹部を有する面から前記圧電素子が搭載される面に向かって平面透視したとき、段部が圧電素子接続パッドと重なる位置に設けることによって、封止部材の収縮による凹部の壁面を凹部の中央部へ引っ張る力が低減されており、凹部の壁面の歪が低減されている。したがって、素子搭載用部材の全体的な変形が低減されて、圧電素子の出力周波数に変動が生じる可能性が低減されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態における圧電発振器を示す下方からの斜視図である。
【
図2】(a)は
図1に示された圧電発振器のA−Aにおける縦断面図であり、(b)は
図1に示された圧電発振器における凹部樹脂材を取り除いた状態の下面図である。
【
図3】(a)は本発明の第2の実施形態における圧電発振器の縦断面図であり、(b)は(a)に示された圧電発振器における封止部材を取り除いた状態の透視下面図である。
【
図4】(a)は本発明の第1の実施形態に示された圧電発振器の変形例を示す縦断面図であり、(b)は第2の実施形態に示された圧電発振器の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のいくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1、
図2(a)および(b)に示されているように、本発明の第1の実施形態における圧電発振器100は、凹部を有する素子搭載用部材1と、素子搭載用部材1の上面の第1の凹部11内に設けられており導電性接合剤によって搭載されたIC素子3と、素子搭載用部材1の下面の第2の凹部12内に設けられており導電性接合剤によって搭載された圧電素子2とを含んでいる。また、素子搭載用部材1の上面の第1の凹部11の一部は、封止部材4によって覆われており、素子搭載用部材10の下面の第2の凹部12は、蓋部材5によって塞がれている。
【0011】
なお、本実施形態における上面および高さは、
図2(a)および(b)に示されているように圧電発振器100を仮想のXYZ空間に設けた場合のことであって、
図2(a)において上方向とは仮想のZ軸の正方向のことをいう。
【0012】
素子搭載用部材1は、基板部13と、基板部13の上面に設けられた第1の凹部11と、基板部13の下面に設けられた第2の凹部12と、基板部13の上面に設けられており第1の凹部11に設けられた段部14aおよび14bと、基板部13の上面における第1の凹部11内に設けられた複数のIC素子接続パッドと、基板部13の下面における第2の凹部12内に設けられた一対の圧電素子接続パッドとを含んでいる。
【0013】
基板部13は、例えばアルミナ等のセラミック材料からなり、四角形の板形状を有している。基板部13の上面には、第1の凹部11を形成するように枠部が設けられており、基板部13の下面には、第2の凹部12を形成するように枠部が設けられている。基板部13の上面の枠部および下面の枠部も、例えばアルミナ等のセラミック材料からなる。
【0014】
段部14aは、基板部13と同様にアルミナ等のセラミック材料からなり、段部14aは、IC素子3の高さよりも高く形成されている。また、段部14aの位置は、圧電素子20が片持ち支持されている位置に対応して設けられている。すなわち、
図2(a)および(b)において、圧電素子20が右端において片持ち支持されていることに対応して段部14aも右側に設けられている。
【0015】
段部14bは、基板部13と同様にアルミナ等のセラミック材料からなり、段部14bは、IC素子3の高さよりも高く形成されている。また、段部14bの位置は、第1の凹部11において段部14aに対向する位置に設けられている。
【0016】
IC素子接続パッドは、例えば導電効率の良い導電用材料よりなり、金属系の導電性接合剤を介してIC素子3に電気的に接続されている。
【0017】
IC素子3は、例えば、圧電素子20より得られる周波数を制御することにより安定した周波数を出力する発信回路を形成している1チップ型ICである。また、IC素子3は、アレイ状に並んだバンプが形成されており、例えば金バンプの場合は、導電性接着剤を介してIC素子接続パッドに電気的に接続されている。また、例えば半田バンプの場合は、半田を介してIC素子接続パッドに電気的に接続されている。
【0018】
圧電素子20は、例えば平板状の圧電基板21と、圧電基板21の上面および下面に設けられた励振電極22aおよび22bとを含んでいる。また、圧電素子20は、金属系の導電性接合剤を介して圧電素子接続パッドに電気的に接続されており、圧電素子20の長手方向の一方端が固定されるように片持ち支持されている。
【0019】
封止部材4は、例えばエポキシ系樹脂よりなり、封止部材4はIC素子3を包み込むことにより外部からの影響を遮断しており、IC素子3を保護している。
【0020】
蓋部材5は、例えば金属材料よりなり、四角形の板形状を有している。
【0021】
本実施形態の圧電発振器100において、素子搭載用部材1が第1の凹部11におけるIC素子3よりも高い位置に段部14aおよび14bを有しており、封止部材4の縁部が段部14aおよび14bの上面に位置していることによって、封止部材4の収縮による第1の凹部11の壁面を第1の凹部14aおよび14bの中央部へ引っ張る力が低減されており、第1の凹部11の壁面の歪みが低減されている。したがって、素子搭載用部材1の全体的な変形が低減されて、圧電素子2の出力周波数に変動が生じる可能性が低減されている。
【0022】
また、本実施形態の圧電発振器100において、段部14aが片持ち支持された圧電素子2の固定位置に対応して設けられていることによって、特に圧電素子2の固定位置に対応する壁面の変形が低減されている。
【0023】
また、本実施形態の圧電発振器100において、段部14aおよび14bが素子搭載用部材の長手方向において一対設けられていることによって、特に変形しやすい長手方向における変形が低減されている。
【0024】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態における圧電発振器200について
図3(a)〜(b)を参照して説明する。本実施形態における圧電発振器200において、第1の実施形態における圧電発振器100と異なる構成は、段部14cが第1の凹部11の全周にわたって設けられていることである。その他の構成については、第1の実施形態における圧電発振器100と同様である。
【0025】
本実施形態における段部14cは、基板部13と同様にアルミナ等のセラミック材料からなり、段部14cは、IC素子3よりも高い位置に形成されている。また、段部14cの位置は、第1の凹部11の内側全周に形成されている。
【0026】
本実施形態における圧電発振器200は、素子搭載用部材10と、素子搭載用部材10の第1の凹部11の内側に搭載されたIC素子3と、素子搭載用部材10の第1の凹部11の内側全周に設けられた段部14cと、素子搭載用部材10の第1の凹部11を満たしている封止部材4と、素子搭載用部材10の第2の凹部12内側に搭載された圧電素子20とを含んでいることによって、封止部材4の縁部が段部14cの側面から段部14cの上面へと流れることとなるため、封止部材4の縁部が段部14cのそれぞれの上面に位置することとなる。そのため、封止部材4の収縮による第1の凹部11の4方の壁面を第1の凹部11の中央部へ引っ張る力がさらに低減されており、第1の凹部11の壁面の歪みがより低減されている。したがって、素子搭載用部材の全体的な変形が低減されて、圧電素子の出力周波数に変動が生じる可能性がさらに向上されている。
【0027】
また、本実施形態における封止部材4の形状は、第1の凹部11の中央部側が高くなり、段部14cのそれぞれの上面側が低くなる山形状に形成されるため、封止部材4の収縮による第1の凹部11の4方の壁面を第1の凹部11の中央部へ引っ張る力がさらに低減されている。
【0028】
(変形例)
以下、本発明の第1の実施形態および本発明の第2の実施形態における段部14a〜14cの変形例として説明する。
【0029】
本発明の第1の実施形態および本発明の第2の実施形態における段部14a〜14cの構造であれば、
図4(a)および(b)に示されているように、素子搭載用部材10の上側に圧電振動子30が接合されている構造であってもよい。このような構造であっても、封止部材4の縁部が段部14a〜段部14cの上面に位置することとなり、封止部材4の収縮による第1の凹部11の壁面の歪みが低減されているとともに、圧電素子20の出力周波数に変動が生じる可能性を低減させることができる。
【符号の説明】
【0030】
100,200 圧電発振器
1 素子搭載用部材
11 第1の凹部
12 第2の凹部
13 基板部
14a,14b,14c 段部
2 圧電素子
21 圧電基板
22a,22b 励振電極
3 IC素子
4 封止部材
5 蓋部材