【実施例】
【0053】
実施例
実施例1―カメリア・シネンシス植物に由来する生理活性組成物の調製
本発明の生理活性組成物を調製する方法の1つの態様の概略図を
図1に示す。以下に、本発明の方法の1つの態様の関連する局面を説明する。
【0054】
バイオマスの調製
乾物約100 kgを得るために、十分量の新鮮なカメリア(カメリア・シネンシス)植物バイオマス(芽を含む先端の柔らかい若い葉組織のみ)を収穫した。新鮮なバイオマス中の乾物のレベルは21.70%と計算されるため、乾物約100 kgを得るためには、新鮮な植物バイオマス約461 kgを収穫する必要があった。植物バイオマスの固有の水分量を保存するように、および水分の損失による萎凋を回避するように気をつけた。収穫は、収集したバイオマスの切断、すりつぶし、および破砕を防ぐかまたは最小限に抑えて、フェノールオキシダーゼおよびペルオキシダーゼによって触媒される内因性の酵素反応を誘発する葉の細胞構造の破壊を回避するような方法で行った。これらの反応は酸化の時間によって強まるため、全段階ともできるだけ短時間で完了した。例えば、収穫したバイオマスは、加工のため摘み取りから10分以内に搬送した。これは、植物バイオマスの日光、高温、およびその他の負の環境因子への曝露を最小限にするためになされた。さらなる加工を行う前に、植物から土壌粒子および他の残屑を除去するために洗浄段階を行った。この洗浄は、収穫した植物を≦1 kg/cm
2の水圧で≦5分間洗浄することによって行った。残った洗浄水は緑色色素も茶色色素も含んでおらず、水圧および洗浄時間が適切であったことが示される。洗浄した植物バイオマスから過剰な水分を除去した。
【0055】
植物バイオマスの粉砕、離解、および圧搾
植物バイオマスを収穫、収集、および洗浄した後、細胞内内容物(すなわち、植物細胞汁)を抽出するため、およびこれを高繊維質の細胞壁画分(細胞壁画分)から分離するために、植物を粉砕、離解、および圧搾した。10 HPエンジンを備えたハンマーミル(Model VS 35、Vincent Corporation、FL)およびふるいセットを用いて、最短時間でかつバイオマス温度を有意に上昇させることなくバイオマスを粉砕し、適切に小さいサイズの植物組織粒子を得た。ハンマーミルは、≦10秒の処理で最大サイズが≦0.5センチメートルの離解植物粒子が生成されるように設定した。バイオマス温度は≦5℃しか上昇しなかった。直ちに水平連続スクリュープレス(Compact Press 「CP-6」、Vincent Corporation、FL)を使用して、植物から植物細胞汁を抽出した。スクリュープレスのコーン部への圧力は24 kg/cm
2のレベルに維持し、スクリュー速度は12 rpmであり、温度上昇は≦5℃のみであった。この処理により、乾物レベル41.39%を有する細胞壁画分185 kgおよび乾物レベル8.49%を有する植物細胞汁276 kgが得られた。
【0056】
細胞壁画分抽出物(組成物A)の調製
初期乾物レベル41.39%を有する細胞壁画分の一定分割量を、フード付き電子レンジ(Model GH9115XE、Whirlpool)で30秒間乾燥させ、次に30秒間冷却した。細胞壁画分の乾物レベルが96.52%に達するまで、この処理を数回繰り返した。85℃に熱した脱イオン水66.0 lを乾燥細胞壁画分4.0 kgに添加し、高速で5分間撹拌した。これらの条件は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、D'Amelio, F.S., Botanicals. A Phytocosmetic Desk Reference, Boca Raton, London, New York, Washington, D.C.: CRC Press, p. 361 (1999)に記載されている茶の調製法と一致する(また、その全体が本明細書に組み入れられる、www.leaftea.com;www.divinitea.com;www.equatorcoffee.comでの考察も参照されたい)。混合液を4層のナイロン生地を通して、次いで0.8μm孔を有するフィルターを通してろ過した。得られた細胞壁抽出物のpHは5.24であり、乾物レベルは0.84%であった。この抽出物は、その活性試験のためにさらに使用した。
【0057】
細胞汁からの膜画分の分離
乾物レベル8.49%を有する初期植物細胞汁は小さな繊維状粒子を含んでいたため、4層のナイロン生地を通したろ過によるか、またはバイオマスを低速で遠心分離することによりこれを除去した。ろ過した植物細胞汁を、温度プローブ対照を用いてマイクロ波処理に供した。この処理は、細胞汁が60℃に到達するまで継続した。凝固が誘導された時点で、処理した細胞汁を直ちに40℃まで冷却した。凝固した細胞汁からの膜画分の分離は、3,000 g以上で20分間以上遠心分離することにより達成した。これによって、膜画分(沈殿)、ならびに細胞質画分および細胞液画分(すなわち、低分子量可溶性成分)を含む細胞汁上清が得られた。乾物レベル32.89%を有する膜画分は、膜由来生理活性組成物の抽出物の調製に使用した。細胞汁上清は、細胞質画分および細胞汁液を得るためのさらなる加工に使用した。
【0058】
膜画分抽出物(組成物B)の調製
1倍量の膜画分(10.0 kg)と2倍量のジメチルスルホキシド(20.0 kg)を、継続して撹拌しながら室温で1時間混合した。次いで、この物質を4,000 g以上で45分間以上遠心分離した。沈殿を廃棄し、上清を0.8μm孔を有するフィルターを通してろ過した。乾物レベル6.83%を有するこのろ液―膜画分抽出物(組成物B)は、その活性のさらなる試験のために使用した。
【0059】
細胞汁上清からの細胞質画分の分離
細胞質画分を分離するため、細胞汁上清を等電沈殿に供した。細胞質画分の沈殿は、細胞汁上清のpHを4.0にもっていくために5.0 N塩酸(HCl)を利用して、滴定法により誘導した。乾物レベル14.5%を有する沈殿した細胞質画分の上清からの分離は、3,000 g以上で20分間以上遠心分離することにより達成した。
【0060】
細胞質画分抽出物(組成物C)の調製
1倍量の細胞質画分(10.0 kg)と2倍量のジメチルスルホキシド(20.0 kg)を、継続して撹拌しながら室温で1時間混合した。次いで、この物質を4,000 g以上で45分間以上遠心分離した。沈殿を廃棄し、上清を0.8μm孔を有するフィルターを通してろ過した。乾物レベル3.50%を有するこのろ液―細胞質画分抽出物(組成物C)は、その活性のさらなる試験のために使用し得る。
【0061】
細胞汁液(組成物D)の調製
細胞質画分を分離した後、上清は懸濁粒子を含んでいた。この粒子を除去するため、上清を7,500 g以上で30分間以上遠心分離した。透明な上清―細胞汁液を0.8μm孔を有するフィルターを通してろ過した。乾物レベル5.69%を有するこのろ液(組成物D)は、その活性のさらなる試験のために使用した。
【0062】
従来の茶抽出物―対照の調製
組成物A、B、C、およびDの調製に使用した新鮮なカメリア葉と同じロットを使用して、従来の白茶および紅茶を生成した。
【0063】
以下の手順を使用して白茶を生成した。乾物21.70%を含む新鮮なバイオマスを熱湯に20秒間入れて、内在性の酵素―フェノールオキシダーゼおよびペルオキシダーゼを失活させた。この手順中、葉はナイロン製の古いバッグ中に保った。次に、処理した葉を電子レンジで30秒間乾燥させ、その後30秒間冷却した。バイオマスの乾物レベルが93.74%に達するまで、この処理を数回繰り返した。次いで、85℃に熱した脱イオン水66.0 lを乾燥葉4.0 kgに添加し、高速で5分間撹拌した。これらの条件は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、D'Amelio, F.S., Botanicals. A Phytocosmetic Desk Reference, Boca Raton, London, New York, Washington, D.C.: CRC Press, p. 361 (1999)に記載されている茶の調製法と一致する(また、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、www.leaftea.com;www.divinitea.com;およびwww.equatorcoffee.comでの考察も参照されたい)。混合液を4層のナイロン生地を通してろ過し、0.8μm孔を有するフィルターを通してろ過した。得られた細胞壁画分抽出物のpHは5.52であり、乾物レベルは1.10%であった。この抽出物は、その活性試験のためにさらに使用した。
【0064】
以下の手順を使用して紅茶を生成した。乾物21.70%を含む新鮮なバイオマスを、乾物レベルが35%に達するまで、定期的に通気しながら(1時間「オン」および1時間「オフ」)25℃で保存した。次に、2〜3 mmサイズの粒子になるように葉を粉砕(破砕)した。この手順により、バイオマス温度は約30℃まで上昇した。破砕したバイオマスをプラスチックコンベヤーベルト上に層(2”高)にして置き、25℃で90分間発酵(酸化)させた。褐色になった発酵バイオマスを130℃で30分間乾燥させ、乾物レベルは97.5%に達した。次いで、85℃に熱した脱イオン水66.0 lを乾燥葉4.0 kgに添加し、高速で5分間撹拌した。これらの条件は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、D'Amelio, F.S., Botanicals. A Phytocosmetic Desk Reference, Boca Raton, London, New York, Washington, D.C.: CRC Press, p. 361 (1999)に記載されている茶の調製法と一致する(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、www.leaftea.com;www.divinitea.com;www.equatorcoffee.comでの考察も参照されたい)。混合液を4層のナイロン生地を通してろ過し、0.8μm孔を有するフィルターを通してろ過した。得られた細胞壁画分抽出物のpHは4.96であり、乾物レベルは1.38%であった。この抽出物は、その活性試験のためにさらに使用した。
【0065】
実施例2―カメリア・シネンシス、カメリア・ジャポニカ、カメリア・レティキュラータ、カメリア・サザンカ、およびエウリア・サンドウィチエンシスからの生理活性組成物の調製に関する乾物の分布
生理活性組成物の生成過程で回収された種々の画分を、乾物分布に関して解析および比較した。表1は、茶樹の分画産物間の乾物100 kgの分布を示す。本発明の工程により、植物細胞汁に変換されて抽出される収率が初期バイオマス乾物の約20〜30%となることが判明した。膜画分の乾物の収量は初期バイオマス乾物の5%〜10%であり、細胞汁乾物の25%〜35%である。表1から、細胞汁画分乾物の収率が初期バイオマス乾物の1.0%以下であったこと、および続いて細胞汁上清乾物の2.5%以下であったことが示される。細胞汁上清乾物の大部分は、細胞汁液中に濃縮された。細胞壁画分、膜画分、および細胞質画分は、生理活性組成物として分類されるそれらの抽出物を調製するための供給源として使用した。細胞汁液は、外因性の溶媒を使用せず、後の生理活性組成物として「そのまま」直接使用した。
【0066】
(表1)新鮮なバイオマスの分画産物間の乾物100 kgの分布
【0067】
3つの選択された物質は、新鮮な植物組織中に存在する全機能構造を最も多様に表していることに留意されたい。可溶性細胞汁液のみが、一般に用いられるインビトロ試験系への直接投与が可能である物理化学的特性を有する。細胞壁画分、膜画分、および細胞質画分は、溶媒による抽出のための原料として使用した。細胞壁画分は従来の茶樹産物と構造的に類似しているため、この画分は従来の茶との最良の比較を提供するために水で抽出した。膜画分は、葉緑体およびミトコンドリア構造に組み入れられた疎水性および親水性成分の効率的な可溶化を促進するジメチルスルホキシドで抽出した。細胞質画分は水で抽出した。細胞汁液は「そのまま」使用した。
【0068】
表2は、試験した全4つの生理活性組成物:細胞壁画分抽出物(組成物A)、膜画分抽出物(組成物B)、細胞質画分抽出物(組成物C)、細胞汁液(組成物D)、および対照―白茶抽出物または紅茶抽出物の、初期バイオマス乾物100 kgからの収率を示す。
【0069】
(表2)初期バイオマス100 kgからの生理活性組成物の収率
【0070】
表2から、カメリア・シネンシス乾物100 kgからの生理活性組成物A、B、C、およびDの全収率は33.3%であり、従来の茶の製法での収率―15.14...19.36%を非常に大きく上回ることが示される。
【0071】
実施例3―組成物A(細胞壁画分抽出物)と従来の茶の抽出物との比較
同じバッチの新鮮なカメリア・シネンシスから得られた生理活性組成物Aならびに従来の白茶および紅茶抽出物の様々なパラメータを測定し、その結果を表3に示す(使用した実験方法は、実施例9および20、ならびにその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第2003/0175235号に記載されている)。
【0072】
(表3)生理活性組成物Aならびに白茶および紅茶抽出物の様々なパラメータ
【0073】
表3から、細胞壁画分抽出物は、従来の白茶および紅茶抽出物よりも低レベルの乾物、電解質、および溶解固形物を有することが示される。UV/VISスペクトルデータから、細胞壁画分抽出物がスペクトル曲線下面積の最も高い比値を有すること、すなわちこの特有のカメリア産物(組成物A)が乾物単位当たり最も高レベルの光学活性成分を有することが示される。さらに、細胞壁画分抽出物は酸化還元電位が低く、これにより、この組成物が従来の白茶および紅茶抽出物よりも酸化の程度が低いことが示される。細胞壁画分抽出物は、白茶および紅茶抽出物よりもはるかに低い濃度でチトクロムc還元の50%抑制(ICR
50)をもたらすスーパーオキシド捕捉活性を実証した。定性的記述分析(「QDA」)試験法を選択して、茶飲料の許容性を決定する色、風味、および口当たりに基づいて茶を系統的に特徴づけ数値化した。QDA法では、専門家テイスターの熟練した集団に依頼し、規定の参照標準品と比較して茶飲料の上記特性を数値化した。色、風味、および口当たりの比較評価から、細胞壁画分抽出物は、従来の茶の同じ特性を有意に上回ることが実証された。
【0074】
したがって、発酵(酸化)も熱処理も行わずに新鮮なカメリアバイオマスから得られた細胞壁画分は、他の茶すべてと異なる(Wilson et al., eds., Tea: Cultivation to Consumption, London: Chapman Hall (1992)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。さらに、重要なカメリア酵素(フェノールオキシダーゼおよびペルオキシダーゼ)は、従来の茶中に常に残存する。それに代わり、本発明は、新鮮なカメリア葉を細胞壁画分とこれらの酵素が濃縮された細胞汁への分離を含み、そのため細胞壁画分は内在性のフェノールオキシダーゼおよびペルオキシダーゼを含んでいない。したがって、細胞壁画分は、白茶、緑茶、ウーロン茶、および紅茶と根本的な相違を有する新規な茶の分類に分類されるべきである。広範囲の飲料(drink、beverage)ならびに栄養補助食品および機能性食品への添加物を調製するため、この新規な細胞壁画分茶はばら形状もしくはバッグ形状または他の形状で使用され得る。
【0075】
実施例4―様々な適用のための生理活性組成物の調製
生理活性組成物はいずれも、様々な全身投与または局所投与用製剤に取り込まれる溶液、懸濁液、分散液、ペースト、または乾燥粉末として使用することができる。可溶化形態の組成物は0.2μ孔を有するフィルターをとしてろ過し、完全に可溶化されていない小粒子および内在性の微生物を完全に除去し得る。滅菌ろ過前および滅菌ろ過後の生理活性組成物中の乾物レベルを表4に示す。
【0076】
(表4)滅菌ろ過前(分子)および滅菌ろ過後(分母)の生理活性組成物中の乾物レベル
【0077】
表4から、全生理活性組成物中の乾物レベルが滅菌ろ過後に減少したことが示される。しかし、この減少によりそれらの生物活性の損失または有意な減少は起こらず、減少は2〜14%の範囲であった。したがって、組成物の主要な部分は可溶性生理活性成分によって示される。
【0078】
新鮮なカメリア葉は、比較的低分子量の(還元非酸化)成分を含む。従来の茶の製造における酸化および重合過程の結果として、上記の強力な成分は、比較的低い活性を有する高分子量物質の部分に変換される。
【0079】
本発明の生理活性組成物は、発酵(酸化)も過剰な熱処理も行わずに得られる。これによって次には新鮮な植物活性の不可逆的損失が妨げられ、その活性は、例えば新規なティーバッグまたは類似の送達系を用いて最大効力を有して送達され得る。大きな孔を通して全可溶性茶成分を周囲の水に移動させる従来の紙製ティーバッグの代わりに、新規のティーバッグは半透性膜で作られている。このバッグは生理活性組成物を内部に含み、特定の膜カットオフ(例えば、5,000ダルトン)未満の分子量を有する成分のみを周囲の水相に透過させる。高分子量を有する成分はバッグの内部に残存し、よって飲料中には含まれない。
【0080】
したがって、特定のレベルを上回る分子量を有する成分をカットオフすることにより、特定のレベルを上回る分子量を有する生理活性組成物の酸化成分はすべてバッグ内に残存するため、酸化成分を含まない飲料の製造が可能になる。新規なティーバッグのデザインは、透析膜チューブを利用したピラミッド型のティーバッグ構造に基づき得る。新規なティーバッグのデザインはまた、生理活性組成物を中に有し、半透膜で構成される2枚の透明な表面を有する細いプラスチック枠を含み得る。特定の膜カットオフ値の選択は、生理活性組成物の種類によって決まるが、一般的に、組成物の乾物をより高い割合で、酸化還元電位をより少なく周囲の水相に放出し得るより高いカットオフが好ましい。
【0081】
実施例5―細胞汁液に由来する局所成分SFの調製
細胞汁液(組成物D)は、安定性の欠如ならびに色および匂いの悪化が原因で、局所産物の活性成分として使用することができない。記載する手順により細胞汁液画分が改良され、安定でかつ活性のある局所成分SFが得られ得る(この手順は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2003/0175235号に以前に記載されているものと類似している)。細胞汁液の改良は以下の段階:熱処理、冷却、ろ過、および安定化を含む。改良は、実施例1に記載した細胞質画分からの細胞汁液の分離後直ちに実施した。細胞汁液を、温度プローブ対照を用いてマイクロ波処理に供した。この処理は、細胞汁液が99℃に到達するまで継続した(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2003/0175235号に以前に記載されているように、90℃が必要であった)。凝固が誘導された時点で、処理した細胞汁液を直ちに10℃まで冷却した。凝固した細胞汁液を、0.8μm孔を有するフィルターを通して減圧ろ過した(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2003/0175235号では、二層のWhatman No.2フィルターが用いられた)。沈殿を廃棄し、得られた細胞汁液ろ液をさらなる加工(すなわち、安定化)に使用した。細胞汁液ろ液の安定化は、保存剤を添加し(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2003/0175235号に以前に記載されているように、外因性の抗酸化剤は必要ではなかった)、完全に可溶化されるまで混合液をインキュベートすることによって達成された。使用した保存剤は以下のものを含んだ:0.1%ソルビン酸カリウム、0.1%安息香酸ナトリウム、0.1%メチルパラベンナトリウム、および0.1%クエン酸。この調製によって、乾物収量16.3 kg(または約286リットル)の局所成分SFが生成され、これをその物理化学的性質および生理活性性質の特徴づけに使用した。局所成分SFの推奨される保存条件には、15℃〜25℃での光から保護される密閉容器中での保存が含まれる。
【0082】
実施例6―細胞汁液画分に由来する局所成分SFの製品規格
局所成分SFは、実施例5に上記した工程に従って調製した。局所成分SFの解析を行い、以下に記載する様々な物理化学的特性、微生物特性、細胞毒性特性、および生理活性特性を決定した。局所成分SFは、淡黄褐色および弱い特異臭を有する透明な液体である。担体媒体に溶媒(すなわち、グリコール、油、または水)は添加していない。表5に、局所成分SFの物理的および化学的データを要約する。
【0083】
(表5)局所成分SFの物理的および化学的パラメータ
参考文献:[1]Handbook of Chemistry and Physics, 80
th Edition, CRC Press, 1999-2000, 5-90;[2]Handbook of Chemistry and Physics, 80
th Edition, CRC Press, 1999-2000, 8-21、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0084】
表6に、局所成分SFに関するUVスペクトルデータを示す。
【0085】
(表6)局所成分SF(1:500希釈)のUVスペクトル
【0086】
以下の手順(USP<61>)に従って行った微生物解析により、局所成分SFは試料グラム当たり100未満のコロニー形成単位を含み、病原菌(大腸菌(E. coli)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、シュードモナス(Pseudomonas)種、および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含まないことが実証された。このデータから、局所成分SFが局所産物の成分の工業上の必要条件を満たすことが示される。
【0087】
局所成分SFは、光から保護される密閉容器中で15〜25℃で保存した場合、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)ことが判明した。局所成分SFは生分解性産物である。比較臨床評価において、局所成分は、表7に要約した生物活性を示した。
【0088】
(表7)局所成分SFの生物活性
参考文献:[1]Cannel et al., Planta Medica 54:10-14 (1988)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0089】
表7から、局所成分SFがスーパーオキシド捕捉活性を示したことが示される。比較臨床評価において、局所成分SFは、乾物69.5μg/mlという濃度でチトクロムc還元の50%抑制(ICR
50)を示した。陽性対照(ロスマリン酸)のICR
50 = 26.5μg/mlであった。抗酸化特性に加えて、局所成分SFは、ペプチド加水分解酵素、例えば、エラスターゼ、ゼラチナーゼBまたはいわゆるマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP-9)、およびトリプシンに対する抗タンパク質分解活性を示した。これらの酵素の中で特有の位置を占めるのは、相乗的に作用し、また皮膚炎症において極めて重要な役割を担うエラスターゼおよびMMP-9である。MMP-9およびエラスターゼはいずれも白血球(好中球)から分泌されること、およびこれらの酵素は炎症をもたらす最終経路における重要な酵素であることに留意されたい。調製物が両酵素(エラスターゼおよびMMP-9)を阻害し得るならば、そのような調製物は炎症過程の治療に非常に有効であると見なされることが一般に同意される。
【0090】
皮膚の老化過程、日焼け、創傷および瘢痕の形成は、MMP-9およびエラスターゼが関与する全く同じ炎症機構を有することに留意されたい。したがって、上記の酵素両方を阻害し得る局所SFは非常に広範な用途を有し、それには以下の理由から炎症性損傷が含まれる:
a. これら2つの酵素は協同して、ヒト組織の細胞外基質の成分すべてを分解し得る;
b. エラスターゼは、MMP-9に対する身体自身の抑制性防御を不活化し得る;および
c. MMP-9は、エラスターゼに対する身体自身の抑制性防御を不活化し得る。
局所成分SFの抗炎症特性と抗酸化特性の組み合わせから、生理活性組成物Dに基づくこの親水性調製物が、非常に基本的な皮膚疾患問題に対して全身的に作用し得ることが示唆される。
【0091】
実施例7―膜画分に由来する局所成分MFの調製
新たに得られた膜画分は、強烈な色および特有の匂いを有するペースト状である。この画分は主に葉緑体によって表され、その組成は主にリン脂質、膜タンパク質、葉緑素、およびカロテノイドを含む。膜画分を乾燥させると、局所成分としての膜画分の探索に必要な多くの有用な特性が不可逆的に失われる。乾燥を行わなければ、不安定な膜画分は直ちに、強く特徴のない匂いを有する暗色の非分散性でかつ不溶性の集塊に変化する。結果として、そのような物質は局所成分に使用することはできない。以下に記載する手順により、新たに得られた膜画分を安定でかつ活性のある局所成分に変換することができる(この手順は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2003/0175235号に以前に記載されているものと類似している)。
【0092】
実施例1に記載した工程に従って細胞汁から膜画分を分離した後、直ちに膜画分を安定化し、ポリマー基質に取り込んだ。局所成分MF約100グラムを調製するため、細胞膜画分を非イオン性乳化剤Polysorbate 80(Tween 80)および抗酸化剤(Tenox 4)と共に混合して、細胞膜画分を安定化した。具体的には、新鮮な膜画分20グラムを3.5グラムのTween 80および0.1グラムのTenox 4(油中のブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエン溶液)と共に、均一になるまで激しく、通気を回避しつつ混合した。
【0093】
安定化された時点で、膜画分をポリマー基質(すなわち、重合乳化剤、アクリル酸/C10-C30アクリル酸クロスポリマーの分散剤)に取り込んだ。加温した脱イオン水69.2グラム中に0.9グラムのPemulen TR-2を分散させ、通気を回避しつつ適度に撹拌しながら均一になるまで混合することにより、ポリマー基質を調製した。平行して、5グラムのグリセリンおよび1.0グラムのPhenonip(フェノキシエタノール(および)メチルパラベン(および)ブチルパラベン(および)エチルパラベン(および)プロピルパラベンの混合物)を別の容器中で組み合わせ、均一になるまで混合した。程度に撹拌しながら、Pemulenを含む相とグリセリンおよびPhenonipを含む相を組み合わせ、均一になるまで混合した。膜画分をポリマー基質に取り込むため、膜画分、Tween 80、およびTenox 4を含む相をPemulen、グリセリン、およびPhenonipを含む相に添加し、次いで通気を回避しつつ激しく撹拌しながら混合した。膜画分混合物の安定化は、膜画分を水酸化ナトリウム(NaOH)の18%水溶液で中和し、激しく撹拌して、pH 5.0±0.4を有する均一な系を生じることによって達成した。新鮮なカメリアバイオマス(乾物21.7%を有する約461 kgの新鮮葉)から開始したこの調製により、乾物収量11.85 kg(または約172リットル)の局所成分MFが生成され、これをその物理化学的性質および生理活性性質の特徴づけに使用した。局所成分MFの推奨される保存条件には、2〜8℃での光から保護される密閉容器中での保存が含まれる。
【0094】
実施例8―膜画分に由来する局所成分MFの製品規格
局所成分MFは、実施例7に上記した工程に従って調製した。局所成分MFの解析を行い、以下に記載する様々な物理化学的特性、微生物特性、細胞毒性特性、および生理活性特性を決定した。局所成分MFは、緑褐色および弱い特異臭を有する不透明なゲルである。局所成分MFは、ポリマーでゲル化した天然細胞汁成分を利用して製剤化し、最高レベルの純度、均一性、適合性、安定性、安全性、および有効性を確証した。
【0095】
表8に、局所成分MFの物理的および化学的データを記載する。
【0096】
(表8)局所成分MFの物理的および化学的パラメータ
【0097】
表9に、局所成分MFに関するL
*a
*b
*値データを要約する。
【0098】
(表9)局所成分MFのL
*a
*b
*値
【0099】
微生物解析から、局所成分MFは、CFUおよび病原体の非存在に関して局所成分の工業上の必要条件を満たすことが実証された(USP<61>)。
【0100】
局所成分MFは、光から保護される密閉容器中で2〜8℃で保存した場合、少なくとも12〜18ヶ月間安定である(すなわち、物理的および化学的完全性を維持する)ことが判明した。局所成分MFは生分解性産物である。比較臨床評価において、局所成分MFはエラスターゼ阻害活性およびトリプシン阻害活性を示す。表10に局所成分MFの特定の生理活性結果を要約する。
【0101】
(表10)局所成分MFの生理活性結果
参考文献:[1]Cannel et al., Planta Medica 54:10-14 (1988)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0102】
表10から、局所成分MFが局所成分SFと類似した特性を示したことが示される(実施例6を参照)。局所成分MFはスーパーオキシド捕捉活性を持たないが、局所成分SFよりも高い特定の酵素阻害活性を示す。したがって、生理活性組成物Bに基づく局所成分MFは、皮膚疾患の治療に対して広範な用途を有する強力で多面的な抗炎症成分として見なされるべきである。
【0103】
実施例9―カメリア・シネンシス植物に由来する生理活性組成物のスペクトル解析
スペクトル解析概論
紫外線(UV)はヒトの皮膚に対して損傷効果を有する。短期効果には日焼けおよび過度の日焼けが含まれ、累積的なUV照射の長期効果には、紫外線による老化および皮膚癌の危険性の増加が含まれる。紫外線皮膚損傷は酸化的損傷によって媒介され、抗酸化活性を有する多くの植物抽出物が保護剤として有望視されている:ブドウの種の抽出物(Carini et al.、「Protective Effect of Procyanidines from Vitis vinifera Seeds on UV-Induced Photodamage: In vitro and In vivo Studies,」 Proceedings of the 19th IFSCC Congress 3:55-63 (1996)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、リコピン(Di Mascio et al.、「Lycopene as the Most Efficient Biological Carotenoid Singlet Oxygen Quencher,」 Archives of Biochemistry and Biophysics 274:532-8 (1989);およびRibaya-Mercado et al.、「Skin Lycopene is Destroyed Preferentially Over β-Carotene During Ultraviolet Irradiation in Humans,」 Journal of Nutrition 125:1854-9 (1995)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、シリマリン(Morazzoni et al.、「Silybum marianum (Carduus marianus),」 Fitoterapia 66:3-42 (1995);Katiyar et al.、「Protective Effects of Silymarin Against Photocarcinogenesis in a Mouse Skin Model,」 Journal of the National Cancer Institute 89:556-66 (1997)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、および特に、他の植物源から生成される抽出物よりも高い有効性を有する緑茶抽出物(Katiyar et al.、「Protection Against Ultraviolet-B Radiation-Induced Local and Systemic Suppression of Contact Hypersensitivity and Edema Responses in C3H/HeN Mice by Green Tea Polyphenols,」 Photochemistry and Photobiology 62:855-61 (1995);Ruch et al.、「Prevention of Cytotoxicity and Inhibition of Intercellular Communication by Antioxidant Catechins Isolated from Chinese Green Tea,」 Carcinogenesis 10:1003-8 (1989);Wang et al.、「Protection Against Ultraviolet B Radiation-Induced Photocarcinogenesis in Hairless Mice by Green Tea Polyphenols,」 Carcinogenesis 12:1527-30 (1991)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。
【0104】
茶樹(カメリア・シネンシス)の葉が、(-)-エピカテキン、(-)-エピカテキン-3-ガラート、(-)-エピガロカテキン、および(-)エピガロカテキン-3-ガラートを含む、抗酸化活性を有するポリフェノールを高濃度で含むことが見出された。緑茶抽出物は、過酸化水素およびスーパーオキシドラジカルに対する抗酸化活性、ならびに酸化的細胞障害の抑制を示す。この抽出物はまた、腫瘍促進の機構としての可能性が考えられる細胞間通信の抑制もまた妨げ得る。UV誘導性免疫抑制と皮膚癌の発症との間には密接な関係があり、緑茶抽出物は、UV-B照射によって起こる炎症および免疫抑制を防ぐことが見出されている。飲料水中に加えて経口投与した、または局所的に適用した緑茶抽出物は、動物モデルにおいて、UV-B-誘導性の皮膚癌発症を防止する。これらの結果から、経口的に摂取する緑茶抽出物が皮膚癌の予防に役立ち得ることが示される。
【0105】
カメリア産物のUV保護特性は確立されているものの、日焼け障害から皮膚を効果的に保護する供給源としての茶樹のより大きな可能性は、比較的狭い活性成分群:主にカテキンに限定して焦点を合わせて行われる従来の技術の限界が原因で、完全には調査されていない。
【0106】
本明細書に記載する「新規」カメリア産物と「従来の」カメリア産物とのUV保護特性比較研究により、「新鮮なカメリアの分画」技術がより強力な産物をもたらし得ることが実証された。比較は、溶液のスペクトル特性およびインビトロ日焼け防止指数(SPF)を決定するために一般的に用いられる方法を利用して行った。
【0107】
方法A:UV/VISスペクトル
薬局方準拠Spectrophotometer Ultrospec 4300 Pro(Amersham Biosciences Ltd.、英国、バッキンガムシャー)を用いて、200〜450 nm域におけるカメリア産物のUV/VISスペクトルを得た。蒸留水に希釈したカメリア産物のスペクトルパラメータを、USP<197>に記載されている手順に従って決定した。
【0108】
方法B:吸光度スペクトル
UV-1000S Transmittance Analyzer(Labsphere, Inc.、ニューハンプシャー州、ノースサットン)、およびヒト皮膚の表面特性を模倣したVitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)を用いて、200〜450 nm域におけるカメリア産物の吸光度スペクトルを得た。これは最適化されたタンパク質および脂質成分を含み、ヒト皮膚に類似した組織分布、pH、臨海表面張力、およびイオン強度を有するように設計されている。
【0109】
前もって水和した基質の表面上にカメリア試料を均一に塗布した(塗布用量=2.0μl/sq. cm)。塗布してから15分後、5回反復して初期吸光度スペクトルを得た。次に、産物を塗布した基質に、300ワットキセノンランプを備えた広域太陽光シミュレータ(Model 16S-300 Single Port、Solar Light Company, Inc.、ペンシルバニア州、フィラデルフィア)で照射した。線量管理システムPMA 2100-DCSによって、試料に送達される線量を正確に管理し得た。
【0110】
照射後直ちに(照射線量=60ジュール/sq. cm)、同じ点における吸光度スペクトルを5回反復して得た。照射前および照射後の試料の吸光度スペクトルを統計解析に使用した。
【0111】
試料
実施例1に上記した工程に従って調製した以下の生理活性組成物を評価した:組成物A(乾物0.84%を有する細胞壁画分抽出物)、組成物B(乾物6.83%を有する膜画分抽出物)、組成物D(乾物5.69%を有する細胞汁液)。乾物1.10%を有する従来の白茶の抽出物および乾物1.38%を有する従来の紅茶の抽出物を対照として使用した。試料はすべて、Charleston茶畑、サウスカロライナ州で回収された同じバッチの新鮮なカメリアから取得した。これらの試料は添加物を含まなかった。
【0112】
解析
すべてのカメリア試料が高いUV吸光度値を有することが認められ、したがって蒸留水で試料を希釈した。希釈したカメリア産物のUV-VISスペクトルを
図2および3に示す。
【0113】
すべての液体試料のスペクトルにはある種の類似性がある。例えば、ピークの位置はλ
max1 = 269〜274 nmおよびλ
max2 = 205〜208 nmという比較的狭い範囲内でばらつき、これにより、すべての被験試料中に芳香環およびσ-π結合の共役系が存在することが示唆される。しかし、ピークの頂点値、各ピーク下の面積、およびスペクトル曲線全体下の総面積は異なり(表11)、被験試料が異なる組成の光学活性成分を有することが示唆される。
【0114】
(表11)カメリア産物のUV/VISスペクトルのパラメータ
*スペクトル下面積値は、試料の希釈に基づいて正規化した。
【0115】
200 nm〜450 nmで得られたスペクトル曲線全体下の総面積を比較することにより、膜画分抽出物(組成物B)および細胞汁液(組成物D)がより高い吸収値を有することが明白に示される(表11)。比「スペクトル下面積:乾物」から、試料の比吸収値は以下の順に増すことが示される:紅茶抽出物>白茶抽出物>細胞壁画分抽出物>細胞汁液>膜画分抽出物(表12)。
【0116】
(表12)カメリア産物の選択されたスペクトル特性
【0117】
吸収値の比較に基づくと、新規な生理活性組成物は、従来の白茶および紅茶の抽出物よりもより有効な日焼け障害に対する皮膚の保護剤であると考えられる。290 nm〜400 nmというスペクトルの特定部分が皮膚のUV誘発損傷の原因であることから、カメリア産物のUV保護特性は、この領域に関連する吸収データを用いることでより良好に評価されるはずであることに留意されたい(Sayre et al.、「A Method for the Determination of UVA Protection for Normal Skin,」 Journal of American Academy of Dermatology 23: 429-40 (1990)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。290 nm〜400 nm域における被験液体試料の吸収は全UV/VIS吸収の約10%にしか寄与しないが、新規なカメリア組成物は、上記のスペクトル領域においても同様により高い吸収を有する。
【0118】
このようにして、カメリア試料の希釈溶液に関するデータから、被験産物のUV保護効力の初期見積もりが提供されたが、Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)を用いてこれをさらに評価した。その結果を
図4〜13に示す。新規カメリア組成物ならびに従来の白茶および紅茶の抽出物は、乾物レベルに関して均一化した濃度で基質上に塗布した後でさえも、異なるスペクトル特性を有することが見出された(
図4および5)。
【0119】
Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)に塗布したカメリア試料のスペクトルは4つ〜2つの特徴的なピークを含み、これらピークは異なる頂点値を有する(表13)。
【0120】
(表13)Vitro-Skin(登録商標)試験基質に塗布したカメリア産物の吸光度スペクトルのパラメータ
【0121】
溶液中のカメリア産物の特徴的なピークのパラメータが(表11)、Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)に塗布したカメリア産物の特徴(表13)と非常に異なることに留意されたい。対照実験が示すように、Vitro-Skin(登録商標)表面上のpHレベルが低いこと(約5.5)が上記の相違の原因であるとは考えにくく、これはおそらく、カメリア産物とVitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)基質の調製に用いられた成分との間の化学的相互作用の結果である。このように、Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)は、カメリアフェノール成分と化学的に相互作用し得るタンパク質および脂質成分を含んでいる。被験産物のスペクトル特性のシフトは、すべての生理活性組成物のほかに、従来の茶の抽出物についても認められることに留意されたい。
【0122】
新規カメリア組成物および従来のカメリア産物の抽出物「そのまま」のスペクトルを、被験試料の異なる乾物含量を考慮して同様に比較した。Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)に塗布したカメリア産物の吸光度スペクトルを
図6に示す。
【0123】
細胞壁画分抽出物と白茶抽出物との間にはいくらかの類似性が存在するが、細胞壁画分抽出物の方が250〜280 nm域および近紫外域において高い吸光度を有する。吸光度の高さは乾物レベルと対応しておらず、乾物レベルは細胞壁画分抽出物(0.84%)よりも白茶抽出物(1.10%)の方が高い。このことから、これら2つの試料の組成物が同じではないこと、および細胞壁画分抽出物がやはり、高い吸光度の原因となるより多くの非解離光学活性組成物からなり、低い伝導率を有することが示唆される(表3に示すデータを参照)。
【0124】
さらに、膜画分抽出物(組成物B)および細胞汁液(組成物D)のスペクトルが、細胞壁画分抽出物(組成物A)および白茶抽出物のスペクトルと異なることが見出された。したがって、膜画分抽出物および細胞汁液のスペクトルから、これらの産物が白茶抽出物および細胞壁画分抽出物とは異なる組成を有することが再度示される。同時に、スペクトルデータから、膜画分抽出物と細胞汁液の組成が同じではないことも示唆される。例えば、膜画分抽出物は260 nm、286 nm、および394 nmにおける3つの特徴的なピークを有する。細胞汁液スペクトルは、260 nmおよび286 nmにおける2つのピークを含む。
【0125】
これら2つのスペクトルの比較により、膜画分抽出物が細胞汁液の約2倍高い吸光度を有することが示され、この場合乾物レベルの差はたったの約1%である。このように、4つの被験カメリア産物は、250〜450 nm域において光学活性である成分の有意に異なる組成を有する。
【0126】
カメリア産物の定量比較に関連するデータを表14に示す。
【0127】
(表14)Vitro-Skin(登録商標)試験基質に塗布したカメリア産物の選択された特性
【0128】
表14から、250〜450 nm域および290〜400 nm域における試料の吸収が、以下の順に増すことが示される:白茶抽出物>細胞壁画分抽出物>細胞汁液>膜画分抽出物。この順序は、希釈液中で試験したカメリア産物の比吸収値の順序(表12)と完全に一致する。被験試料をVitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)に塗布した場合、250〜450 nmで得られるスペクトルの吸光度に対する250〜400 nm域における吸光度の寄与は約55〜60%に達した。
【0129】
希釈溶液中の新規カメリア組成物のスペクトルと、それらをVitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)基質に塗布した後のスペクトルが著しく異なることに留意されたい。膜画分抽出物および細胞汁液に関して、この相違は定量的および定性的の両方である。このように、250〜400 nmの範囲では、溶液中の膜画分抽出物は274 nmにおいてピークに達する。同じ膜画分抽出物は、Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)に塗布した場合、上記波長において特徴的なピークを示さず、代わりに260 nmおよび286 nmにおいて2つの特徴的なピークを有した(
図7A)。
【0130】
スペクトル特性における同様のパターンは細胞汁液にも認められ、Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)に塗布した試料では約360 nmにおけるさらなる吸収が同定されたが、そのような現象は溶液中の同じ組成物のUV/VISスペクトルでは記録されなかった(
図7B)。
【0131】
スペクトル間の上記の相違は、新規カメリア組成物と、ヒト皮膚を模倣するタンパク質および脂質成分を有するVitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)の表面との間の化学的相互作用の結果違であると考えられることに留意されたい。この相互作用により、UV照射の損傷効果に関連するスペクトル領域での吸光度が劇的に増加した、すなわち新規カメリア組成物は顕著なUV保護効力を有する。オオムギ(Hordeum vulgare)(
図8A)およびセージ(Salvia officinalis)(
図8B)細胞汁液を用いた対照実験から、同じ試料の溶液中でのスペクトルとVitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)に塗布した後のスペクトルとの相違は、カメリア以外の植物源では認められないことが示された。したがって、Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)に塗布した後にカメリア産物のスペクトルがシフトすることから、新規カメリア産物とヒト皮膚を模倣する基質との間にのみ存在する特異的な相互作用が示唆される。
【0132】
予め水和した基質を用いた対照実験から、照射後、Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)の吸光度が特に260 〜330 nmの範囲で顕著に減少することが実証された(
図9)。この効果は、高線量の広域太陽光を照射された非保護基質の光安定性の相対的低さを反映している。
【0133】
白茶抽出物を塗布した基質に照射すると、非保護Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)のスペクトル変化と類似した吸光度スペクトルの変化が起こった(
図10)。基質の寄与を除去した場合、非照射試料および照射試料のスペクトルはいくらかの類似性を示したが、完全に同じ挙動を示すわけではなかった。例えば、290〜310 nmの範囲の吸光度が減少し、360 nmにおける幅広いピークを形成し始めた。
【0134】
細胞壁画分抽出物に照射すると(
図11)、特に基質寄与の除去(減算)後に得られる曲線に関して吸光度スペクトルの同様の変化がもたらされた。
【0135】
白茶抽出物および細胞壁画分抽出物の組成は同一ではないが、これらのスペクトルにおける照射誘発変化のパターンは非常に類似している。白茶抽出物および細胞壁画分抽出物はいずれも照射の破壊作用から基質を完全に保護することができず、その結果、Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)の吸光度は、この基質を全く保護しない条件時(
図9)とほぼ同じ程度に減少することに留意されたい。これは250 nm〜330 nmの範囲で特に明白であり、より長い波長では吸光度の増加がいくらか認められる。
【0136】
膜画分抽出物の照射では、その吸光度スペクトルに対して非常に異なる効果が生じる(
図12)。例えば、照射により、スペクトル範囲250〜285 nmでの変化は起こらない。考察した通り、この特定範囲のスペクトルは、照射を受けたVitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)の破壊によって非常に大きな影響を受け、したがって、スペクトルの比較から、基質表面上に膜画分抽出物が存在することによって基質の破壊が完全に阻止されたことが示唆される。
【0137】
しかし、膜画分抽出物スペクトルのある種の変化が記録された。例えば、290〜320 nmの範囲で吸光度がわずかに減少し、これに伴ってより長い波長での吸光度が微増した。膜画分抽出物は、核酸および芳香族アミノ酸が順に260 nmおよび280 nmおいて特徴的なピークを有するスペクトルの範囲において非常に有効であることが判明したことに特に留意されたい。したがって、膜画分抽出物の効果により、この産物を局所適用用の有望なUV保護成分として使用することが可能となる。
【0138】
照射後、細胞汁液画分はその吸光度スペクトルにおいてある種の変化を示した(
図13)。
【0139】
一般に、これらの変化は、250〜340 nmの範囲における吸収のわずかな減少および340〜450 nmの範囲における吸収のわずかな増加として説明され得る。Vitro-Skin(登録商標)試験基質(IMS Testing Group、コネチカット州、ミルフォード)の光破壊によってもたらされる寄与の可能性を除去することで(非照射細胞汁液画分の初期スペクトルの上にあるスペクトル上の赤い曲線を参照)、基質表面上への細胞汁液画分の塗布によって基質が効果的に保護されたことが明らかに示されることに留意されたい。
【0140】
所見および結論
上記の結果から、最も優れた従来のカメリア産物―白茶抽出物―がUV照射の破壊作用に対して比較的弱い保護を提供することが明らかに示される。細胞壁画分抽出物は白茶抽出物と類似した特性を示すが、膜画分抽出物および細胞汁液ははるかに強いUV保護特性を有する。
【0141】
カメリア産物のUV保護特性は以下の順に増加することが判明した=白茶抽出物=細胞壁画分抽出物>細胞汁液>膜画分抽出物。
【0142】
カメリア産物のスペクトル特性およびUV照射後のこれら特性の変化パターンから、白茶抽出物(対照)、細胞壁画分抽出物、膜画分抽出物、および細胞汁液中の成分の組成はすべて異なり、固有の活性を示すという強力な証拠が提供されることに留意されたい。これは、白茶抽出物と同様に上記のUV活性がポリフェノールに起因し得ない新規カメリア組成物の場合に特に興味深い。
【0143】
実施例10―カメリア産物の比較評価:概要
実施例10から19では、本発明のカメリア・シネンシス由来生理活性組成物による細胞機能の調節に関連した生物活性の範囲を評価するために実施する実験に関する方法、結果、および解析について記載する。主目的は、本発明の方法によって得られた産物の生物活性の範囲を評価し、これらを従来の(伝統的な)茶技術によって得られる最良の産物―白茶の活性と比較することであり、白茶を陽性対照として調査し、これを以下の本発明の生理活性組成物と比較した:(1) 新鮮葉の細胞壁画分抽出物(本明細書において組成物Aと称する);(2) 膜画分抽出物(本明細書において組成物Bと称する);および(3) 細胞汁液(本明細書において組成物Dと称する)。
【0144】
3種のヒト細胞株:単球性白血病細胞の特徴を有する骨髄株(Mono Mac 6)、ならびにインビボ悪性度の初期段階の特徴を有する系統(MCF-7)および進行癌の特徴を有して浸潤性、転移性、およびエストロゲン非感受性の程度がより高い系統(MDA-MB-435S)の2種類の乳癌株の増殖パターンに及ぼすカメリア生理活性組成物の効果を評価する試験を行った。
【0145】
従来の白茶抽出物がいくつかの腫瘍細胞の代謝活性に対して一定の阻害効果を示すことが見出された。しかし、そのような阻害の程度は試験した細胞のすべての種類に関して有意なわけではなく、そのような阻害が検出された場合でさえも、阻害は一般に完全ではなくむしろ極微であるかわずかであった。細胞壁画分抽出物は、白茶抽出物のそのような特性と類似した特性を示した。
【0146】
細胞汁派生物:膜画分抽出物および細胞汁液はいずれも、様々な刺激物の存在下および非存在下で培養した、試験したすべての細胞株の代謝機能のより強力な阻害剤であることは注目に値する。例えば、膜画分抽出物は高い阻害能力を明白に示し、その効果は0.001%の用量で確実に測定され得た。細胞汁液は複雑な反応:低用量での促進および高用量での阻害を示した。
【0147】
膜画分抽出物および細胞汁液は、腫瘍細胞において、壊死性細胞溶解を誘導するよりもむしろ、プログラム細胞死またはアポトーシス細胞死の経路を惹起するらしいことに留意されたい。実験データから、この経路はミトコンドリア機能の喪失によって起こり、検出には24〜48時間の曝露を要することが示される。
【0148】
生理活性組成物への曝露の結果として、試験したすべての腫瘍細胞株:MCF-7、早期ヒト乳癌のモデル、MDA-MB-435S、進行乳癌のモデル、およびMono Mac 6、単球性白血病のモデルの代謝機能は、膜画分抽出物によって最も効率的に、また細胞汁液によってより弱くかつより選択的に阻害された。顕著なことには、白茶抽出物および細胞壁画分抽出物は不活性であるか、または上記の組成物BおよびDよりもはるかに弱いことが判明した。この傾向は、種々の条件下で試験した細胞:トランスフォーミング増殖因子の非存在下および存在下におけるMCF-7細胞、MDA-MB-435S、ならびに刺激したおよび非刺激の単球性Mono Mac 6細胞について明らかに実証された。
【0149】
これらの結果から、本発明の方法がカメリア植物の可能性を劇的に増大させ、従来の茶技術の最良の産物でさえも同定されていなかった活性を示す非常に目覚しい新規産物を生成する能力の強力な証拠が提供される。
【0150】
本発明のカメリア画分が細胞媒介性タンパク質分解活性に及ぼす効果は、炎症性組織傷害ならびに腫瘍浸潤および転移に対する意味あいを有する。したがって、乳癌細胞および白血病細胞は、本発明の生理活性組成物、最も顕著には膜画分抽出物の有望な標的であることが明白に示唆され得る。結腸癌由来細胞株COLO 205が有意なレベルのMMP-2を放出し、これは次にやはりこの細胞が分泌するトリプシン様酵素によって活性化されることが以前に示されていることに留意されたい。これもまた、Mono Mac 6細胞の結果に基づき、本発明のカメリア画分の標的候補の1つである。
【0151】
これらの研究から、新鮮なカメリアから単離された本発明の生理活性組成物は、重要な細胞機能の優れた調節をもたらす活性を有すると結論づけられた。認められた効果は、パーソナルケア製品から栄養補助食品および場合によっては医薬品に及ぶ有益な用途を有すると考えられる。
【0152】
本発明の非常に強力な生理活性組成物は精製された単一の成分ではなく、単離された成分の複合物であることにも留意されたい。膜画分抽出物(組成物B)および細胞汁液(組成物D)をさらに分画することにより、成長する天然医薬品市場のための極めて強力な成分が得られる可能性がある。
【0153】
実施例11―カメリア産物の比較評価:被験組成物
以下の生理活性組成物を実施例10〜19に記載する実験において使用した:
(1) 陽性対照:実施例1および4に記載の手順に従って調製した白茶抽出物。
(2) 組成物A:実施例1および4に記載の手順に従って調製した、カメリアの新鮮葉の細胞壁画分抽出物。
(3) 組成物B:実施例1および4に記載の手順に従って調製した、カメリアの新たに加工した葉から得られた膜画分抽出物。
(4) 組成物D:実施例1および4に記載の手順に従って調製した、カメリアの新たに加工した葉の細胞汁液。
【0154】
上記の産物は、従来の白茶抽出物および本発明の3つの「平行した」産物(組成物A、B、およびD)を調製するための同じロットの新鮮なカメリアから取得した。
【0155】
カメリア葉の抽出物が、主に保蔵処理工程において形成されるかなりの濃度のポリフェノールタンニンに起因する、一連の生物活性を有することを示唆する数多くの報告が文献中に存在する。これらのポリフェノール、およびエピガロカテキン-3-O-ガラート(EGCG)などの重合体タンニンの低分子量前駆体は、強力な抗酸化活性を示すことが報告されている。カメリアの乾燥葉から調製される茶の抗酸化特性に加えて、抗血管新生特性、抗菌特性、抗癌特性、抗炎症特性、抗突然変異特性、消毒特性、および解毒特性を示唆する出版物の数が増加している。上記の特性のすべてが統計的に有意な有益性をもたらすと実証されているわけではない。それらのうちのいくつかのみが、複数の試験系を用いた包括的研究において確認されているにすぎない。
【0156】
過去の参考文献どおり、本発明の技術によりカメリア以外の多くの新鮮な植物源から単離された生理活性組成物による過去の経験から、そのような組成物が同じ乾燥植物から単離された従来の産物よりもはるかに強力であることが、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第2003/017235号に以前に記載されているように、多くのパラメータを用いて判明したことに留意されたい。例えば、他の種類の植物(アルファルファ(Medicago sativa)、オオムギ、イングリッシュラベンダー(Lavandula angustifolia)、カレンデュラ(Calendula officinalis)、およびセージ)において、本発明の方法を用いて調製された組成物のいくつかの目覚しい生理活性が同定および評価されており、これには、高い抗エラスターゼ活性および抗ゼラチナーゼB(MMP-9)活性、好中球呼吸バーストの新規な調節、ならびに活性酸素種に対する顕著なスーパーオキシド捕捉活性が含まれる。これらの活性は、捕捉活性以外、ポリフェノール単独の混合液に起因する可能性は低い。
【0157】
そのため、本発明のカメリア組成物中に検出され得る活性の範囲を、従来の(伝統的な)カメリア技術を用いて同じ乾燥植物から得られた抽出物中に存在する活性と比較するより包括的なアプローチを検討することは特に興味深いと思われた。したがって、新たに回収したカメリアの葉から調製した細胞壁画分抽出物(組成物A)、膜画分抽出物(組成物B)、および細胞汁液(組成物D)による、哺乳動物生細胞における機能の調節についてアッセイを行った。これらの組成物は、乾燥カメリア葉から調製した従来の白茶の抽出物と比較した。
【0158】
従来のカメリア産物の複数の研究によれば、白茶抽出物はより高い比活性を示し、したがってこの種の調製物を本発明の新規カメリア産物と比較するための代表的な陽性参照対照として選択したことに留意されたい。
【0159】
実施例12―カメリア産物の比較評価:細胞株の選択の理論的根拠
細胞機能の調節の試験系として、2種類の乳癌由来株を腫瘍細胞のモデルとして使用し(MCF-7およびMDA-MB-435S)、ヒト単球性株(Mono Mac 6)を炎症細胞のモデルとして使用した。上記の細胞株については実施例21に記載する。
【0160】
MCF-7は、早期または脱分化度の低い乳癌のモデルと見なされる。この株は依然としてエストロゲン感受性を維持し、比較的低い浸潤表現型を有する;免疫不全動物モデルにおいて転移する能力はかなり低い。以前の研究において、MCF-7細胞株は、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)に対して特徴的な応答を示すことが示されている:TGF-βの存在下で24時間培養した後、この細胞は、浸潤能および転移能の増大の2つの異なるマーカーである、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリーのタンパク質分解酵素および血管新生促進因子血管内皮増殖因子(VEGF)を高レベルで分泌する。TGF-βに対するこの応答は、この増殖因子によって正常細胞において誘導される増殖停止とは対照的に、腫瘍およびいくつかの腫瘍細胞株の指標である。本発明の生理活性組成物を評価するため、TGF-βの非存在下および存在下で培養したMCF-7細胞を標的として使用した。
【0161】
MDA-MB-435S株は、浸潤性、転移性、およびエストロゲン非感受性の程度がより高い。このヒト癌由来細胞株もまたTGF-βに対してある程度の感受性を示すが、より進行した癌のモデルとしての用途と一致して、この増殖因子の非存在下でさえも、MCF-7よりも高レベルのMMPおよびVEGFを自発的に放出する。本評価では、TGF-βの非存在下でのみ培養したMDA-MB-435S細胞に及ぼす生理活性組成物の効果を試験した。
【0162】
ヒト単球性株、Mono Mac 6は静止単球またはマクロファージのバイオマーカーと一致する多くのバイオマーカーを発現し、ホルボールミリステートアセテート(PMA)などの炎症促進性の活性化刺激に対してヒト単球およびマクロファージと同様に応答する。PMAの非存在下および存在下で培養したMono Mac 6細胞に及ぼす生理活性組成物の影響を試験して、これを静止および活性化単球/マクロファージのモデルとして使用した。
【0163】
したがって、上記の細胞株の選択された組み合わせにより、カメリア生理活性組成物の抗腫瘍能および抗炎症能を評価するための確実な基礎が提供される。選択された細胞株を多くの機能的プローブを用いて平行して試験することで、特定の刺激に対して同様の感受性または同様の応答を有する単一または複数の試験標的の応答を調査するよりも、産物の活性および活性の機構に関するより有益な結論が得られる機会が提供される。
【0164】
実施例13―カメリア産物の比較評価:アッセイ法の選択の理論的根拠
最初の評価は、2つの生存度アッセイ法および細胞機能のプローブに基づいたものである(実施例20、「方法8」を参照)。
【0165】
1つ目のアッセイ法では、細胞が溶解した場合にのみ細胞外の培養液中に遊離する細胞質内酵素、乳酸脱水素酵素のレベルを測定する。細胞膜の完全性のそのような喪失は、伝統的に壊死性細胞死の徴候であると見なされ、細胞毒性パターンを反映する。
【0166】
2つ目のアッセイ法では、テトラゾリウム塩の着色ホルマザンへの還元によって反映される、ミトコンドリア脱水素酵素活性を測定する。MTS試薬(テトラゾリウム塩)を生細胞に添加すると、この試薬は強く着色された化合物(ホルマザン)に変換される。ミトコンドリア脱水素酵素活性の喪失もまた細胞死と関連づけられ得るが、これは典型的には、核が凝縮しミトコンドリアが機能を停止した後に細胞膜の完全性が一般に良好に保持されるプログラム細胞死またはアポトーシス経路の初期段階のマーカーである。
【0167】
乳酸脱水素酵素の漏出は細胞溶解に付随した生存度の完全な喪失を示し、テトラゾリウム塩の還元の減少はミトコンドリア活性の喪失を意味するが、細胞膜の完全性または生存度の取り消し不能な喪失を必ずしも意味しない。
【0168】
細胞機能のさらなるプローブとして、Mono Mac 6株が分泌するプロテイナーゼのレベルに及ぼすカメリア生理活性組成物の影響を試験した(実施例20、「方法9」を参照)。この細胞株を用いた以前の研究において、Mono Mac 6細胞はPMAと共にインキュベートした後に、2種類のいわゆるゼラチン分解マトリックスメタロプロテイナーゼ、MMP-2(ゼラチナーゼA)およびMMP-9(ゼラチナーゼB)を分泌することが認められた。これらのMMPは多くの腫瘍およびそれらの周囲の間質によっても分泌され、炎症性組織傷害ならびに腫瘍浸潤および転移に関与している。また、抗炎症薬および抗腫瘍薬として開発中のいくつかの薬剤が(調査された薬剤は、炎症性組織破壊ならびに腫瘍細胞株の浸潤および転移を減少させることが知られている)、MMPタンパク質分解活性を直接阻害することに加えて、細胞が産生するMMPのレベルを減少させるらしいことが示されている。これらの研究における目的は、本発明のカメリア生理活性組成物が活性化Mono Mac 6細胞によって放出されるMMPのレベルを減少させる同様の能力を有する可能性を評価することであった。
【0169】
したがって、選択したアッセイ法により、広範囲の代謝過程を確実に評価し、特定のカメリア生理活性組成物によって誘発される作用の機構を明らかにし得る重要なデータを効率的に得ることが可能になると考えられる。
【0170】
実施例14―カメリア産物の比較評価:乳房腫瘍細胞株に及ぼすカメリア生理活性組成物の効果
これらの研究では、もっぱらテトラゾリウム塩MTSのそのホルマザンへの還元のアッセイを介してミトコンドリア機能を測定した。本発明の高濃度のカメリア組成物の固有の能力に、生細胞の非存在下においてMTSを直接還元する場合があることが認められたため、本明細書で報告するすべての結果では、細胞の存在下で観察される還元酵素活性のレベルから細胞の非存在下におけるホルマザンのそのようなバックグラウンド形成を差し引いてあることに留意されたい。
【0171】
図14〜21は、4つのカメリア組成物それぞれを0.01%ないしは0.02%(w/v、カメリア組成物中の固形物の乾燥重量に基づく培養液中の最終濃度)から0.0001%に及ぶ様々な用量で添加してから24時間および48時間後の、5 ng/ml TGF-βの非存在下および存在下で培養したMCF-7細胞、ならびにTGF-βの非存在下でのみ培養したMDA-MB-435S細胞の還元酵素活性の大きさを示す。
【0172】
実施例15―カメリア産物の比較評価:MCF-7細胞
TGF-βの非存在下において、組成物Aおよび白茶抽出物(陽性対照)は最も高い試験濃度(0.01%)で、MCF-7細胞によるMTS還元に対して顕著な効果を有した。この濃度では、カメリア組成物Aに曝露してから24時間後に、有意ではあるが不完全な還元酵素活性の阻害が存在した(約50〜70%阻害)。還元酵素活性の同様の阻害は、白茶抽出物に24時間曝露した後にも検出された。
【0173】
対照的に、カメリア細胞汁から調製した2つのカメリア生理活性組成物(膜画分抽出物および細胞汁液)は、TGF-βの非存在下においてMCF-7細胞の還元酵素活性のより強力な阻害剤であった。膜画分抽出物(組成物B)は、いくらか効力が強いことを除いて用量依存性において白茶抽出物と類似しており、試験したうち最も高い用量である0.01%で実質的に完全な阻害をもたらした。細胞汁液(組成物D)もまた0.01%で実質的に完全な阻害を生じたが、より低い0.0025%用量では還元酵素活性の促進の徴候がいくらか見られた。組成物Dのより低い用量では、有意な効果は見られなかった。
【0174】
MCF-7細胞を増殖因子TGF-βの存在下で培養した場合、カメリア組成物に対する感受性は著しく変化した。細胞壁画分抽出物および白茶抽出物に24時間または48時間曝露した後では、白茶抽出物の最も高い用量(0.01%)において20%未満のわずかな阻害が見られる以外は、いずれの用量においても還元酵素活性に及ぼす促進または阻害効果の徴候は認められなかった。
【0175】
対照的に、0.02%用量の膜画分抽出物にTGF-β処理MCF-7細胞を24時間曝露すると、還元酵素活性は70%阻害され、48時間後では還元酵素活性は実質的に完全に排除された。24時間後、膜画分抽出物のより低い用量ではより穏やかな阻害が検出され得たが、48時間後には、還元酵素活性の顕著な活性化が検出された。低用量の細胞汁液による還元酵素活性の同様の活性化および最も高い用量(0.02%)での顕著な阻害は、曝露の48時間後に検出されたが、この組成物は、24時間というより限定された曝露後には用量にかかわらず、TGF-β処理MCF-7細胞の還元酵素活性に対して最小限の効果しかもたらさなかった。
【0176】
評価では、いずれのカメリア組成物の最も高い用量に24時間曝露したMCF-7細胞でさえ、培養液中への乳酸脱水素酵素の有意な放出は検出されなかった。これらの細胞におけるミトコンドリア機能の喪失は、細胞の壊死性溶解によってなされたのではないと考えられる。細胞が曝露してから最初の48時間内に実際に死滅しかけるのであれば、プログラム細胞死またはアポトーシス経路が惹起された可能性が高い。この結論は、曝露過程で細胞の円形化がいくらか起こるが、残骸または膜断片は形成されないことを示す光学顕微鏡観察によって支持される。
【0177】
したがって、ミトコンドリア機能の阻害は被験カメリア産物すべての主要な作用機序であると考えられ、これらは乳酸脱水素酵素の放出レベルによって示される細胞毒性または壊死を示さなかった。
【0178】
実施例16―カメリア産物の比較評価:MDA-MB-435S細胞
カメリア組成物に対するMDA-MB-435S細胞の応答のパターンは、最も強力な組成物が組成物BおよびDである点でMCF-7細胞のパターンと類似しており、膜画分抽出物(組成物B)は細胞汁液(組成物D)よりもいくらか強い効力を示した。膜画分抽出物のみが、曝露後24時間のみで還元酵素活性の顕著な阻害をもたらした。阻害は、最も高い用量0.01%で対照還元酵素値の-70%に達し、最も低い用量である0.0001%という驚くべき濃度でさえも-10%というわずかな阻害が確実に検出され得た。他の被験組成物は、24時間の曝露において、試験した最も高い用量でのみわずかな阻害効果を有するにすぎなかった。
【0179】
48時間の曝露後、還元酵素活性は各組成物の存在下において用量依存的様式で阻害されたが、最も高用量の組成物における効力は、膜画分抽出物以外、約100%阻害に到達しなかった。この組成物は0.001%で、48時間後に還元酵素活性を-50%阻害した。白茶抽出物および細胞壁画分抽出物もまた、48時間の曝露後にMDA-MB-435S細胞に対して顕著な阻害効果を有し、これは細胞汁液の阻害効果よりも実際に高かった。この細胞株では、曝露時間にかかわらず、いずれの調製物のどの用量も還元酵素活性を活性化しなかった。
【0180】
浸潤、転移、およびエストロゲン非感受性の程度の高い株MDA-MB-435Sに及ぼす効果はいずれも、24時間のみではめったに観察されないことに留意されたい。したがって、24時間および48時間後の組成物Bの効果はむしろ注目に値し、この組成物が顕著な活性を有することが示される。
【0181】
実施例17―カメリア生理活性組成物の比較評価:単球性細胞に及ぼすカメリア組成物の効果
ミトコンドリア脱水素酵素活性:
乳房腫瘍細胞株での予備研究によって明らかにされた傾向のいくつかは、4つの被験カメリア組成物に対するMono Mac 6細胞の応答と一致することが判明した。膜画分抽出物(組成物B)および細胞汁液(組成物D)は、この炎症性細胞株において、細胞壁画分抽出物(組成物A)および白茶抽出物(陽性対照)よりも強力なMTS還元酵素活性の阻害剤であり、膜画分抽出物(組成物B)は明らかに最も高い阻害能を有した。非刺激のままの細胞および10 nM PMAで刺激した細胞のMTS還元酵素に及ぼす効果を試験し、カメリア組成物に24時間および48時間曝露した後の還元酵素活性を評価した。Mono Mac 6細胞のMTS還元酵素に及ぼすこれら組成物の効果を
図22〜33に示す。
【0182】
白茶抽出物は、PMA刺激細胞に48時間曝露した後、還元酵素の弱いが用量依存的阻害を示した;PMAの非存在下では用量および曝露時間にかかわらず還元酵素活性の有意な減少は認められず、またPMA処理細胞に24時間曝露した後にもいずれの用量の効果も認められなかった。細胞壁画分抽出物は、用量および曝露時間にかかわらず、また細胞をPMAで刺激していないかまたは刺激したかにかかわらず、Mono Mac 6細胞に対して効果を示さなかった。
【0183】
新鮮なカメリア葉の細胞汁液は、24時間および48時間の曝露後に、非刺激Mono Mac 6細胞還元酵素活性を用量依存的様式で穏やかに阻害した。0.01%(w/v、出発調製物中の固形物の乾燥重量に基づく培養液中の最終濃度)という最も高用量での最大阻害は、対照活性の約20〜30%にすぎなかった。PMA刺激細胞の阻害は、最も高用量の組成物D(0.01%)においてのみ、かつ48時間の曝露後でのみであるが、対照活性の50%に達した。
【0184】
新たに収穫したカメリアの膜画分抽出物(組成物B)は、乳房腫瘍細胞株に対するのと同様に、Mono Mac 6細胞還元酵素活性を阻害する最も強力な被験調製物であることが判明した。PMA刺激または組成物への曝露時間の効果は阻害にほとんど影響を及ぼさず、阻害はPMAの存在下または非存在下において用量依存的であり、24時間または48時間の曝露後ではほぼ同程度であった。還元酵素活性は最も高用量である0.02%においてPMAの存在下で-70%、およびPMAの非存在下で-80〜90%阻害され、0.001%用量ではより低いレベルの阻害(-15%)が確実に測定され得た。還元酵素活性の減少が壊死性細胞溶解と関連しないことを確認するための細胞質内酵素の放出の測定は行わなかったが、いずれの0.02%生理活性組成物に48時間曝露したMono Mac 6細胞も、光学顕微鏡観察によって膜断片化の徴候は認められなかった。さらに、以下に示すように、MTSの還元が顕著に減少している条件下でも、細胞は少なくとも1種のMMPを依然として分泌し得るようである。
【0185】
これらの結果から、この細胞では乳房腫瘍細胞株と同様に、還元酵素活性の減少はミトコンドリア機能の比較的選択的な減少と関連しており、プログラム細胞死またはアポトーシスの経路の開始を反映し得ることが示唆される。
【0186】
MMPの分泌
2つの異なるアッセイ法を用いて、Mono Mac 6細胞が放出する2種類のゼラチナーゼ、MMP-2(ゼラチナーゼA)およびMMP-9(ゼラチナーゼB)のレベルを測定した。これらのMMPは、炎症性組織傷害ならびに腫瘍浸潤および転移と関連づけられている。最初に、MMP-2およびMMP-9に対して用いられる酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して、10 nM PMAならびに様々な用量の3つのカメリア生理活性組成物および陽性対照の存在下で48時間培養したMono Mac 6細胞の培養液中の2つの酵素の全レベルを測定した。
【0187】
この細胞株は非刺激の場合はMMP-2のみを分泌するが、活性化された場合にはMMP-2およびMMP-9の両方を分泌する(24時間後に放出されるMMPのレベルは、通常低すぎて確実に検出することができない)。
【0188】
ELISA測定の結果を
図34〜37に示す。Mono Mac 6細胞によるMTS還元に及ぼす細胞壁画分抽出物および白茶抽出物の効果について観察されたように、これらの抽出物ではいずれの用量においてもMMP-2およびMMP-9の分泌レベルは有意に変化しなかった。最も高用量(0.01% w/v)の膜画分抽出物および細胞汁液では、MMP-2レベルの減少が認められ、この用量では膜画分抽出物が最も高い効力を示した。次に高い用量の組成物B(0.001%)および組成物D(0.002%)では、MMP-2放出の明白なわずかな促進が認められることに留意されたい。この促進は、これら組成物の同様の用量におけるTGF-β処理MCF-7細胞のMTS還元酵素活性の促進を連想させる。
【0189】
ELISAによって検出されるMMP-2レベルの用量依存的減少は、MMP-9レベルに及ぼす膜画分抽出物および細胞汁液の効果と同等ではなかった。これらのレベルは最も高用量で増加したが(細胞汁液で明らかに顕著であった)、試験した低用量では変化がなかった。24時間のみでMTS還元酵素活性の有意な阻害をもたらすカメリア調製物の種々の用量に48時間曝露したMono Mac 6細胞によって分泌されるMMP-9が未変化または増加したレベルで検出されることは、カメリアの膜画分抽出物または細胞汁液に曝露したMono Mac 6細胞のミトコンドリア機能の喪失が、MMP分泌が突然停止する壊死性細胞溶解を反映しないことのさらなる証拠である。
【0190】
Mono Mac 6細胞によるMMP分泌に及ぼすカメリア組成物の効果のさらなる証拠として、ゼラチンザイモグラフィーの技法を用いて、ELISA測定に関して上記したように回収した培養液を試験した。この方法では、まず培養液をドデシル硫酸ナトリウム存在下におけるゼラチン含浸ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動(SDS-PAGE)に供して、タンパク質を分子量に基づいて分離する。次いで、ゲルからSDSを洗浄除去して存在する酵素の少なくとも一部を再生させ、MMP活性を最大限にする媒体中でゲルをインキュベートする。MMPはどこに存在しようともゼラチンを溶解する。ゲルの大部分に存在する未切断のゼラチンをタンパク質染色によって可視化した後、ゲルをスキャンするが、MMPは染色されたバックグラウンドに対して透明な分域として現れる。本明細書ではネガ像を示したため、MMPは明るいバックグラウンドに対して暗い分域として現れる。
【0191】
MMPはほとんどの細胞によって不活性前駆体として分泌され、その後細胞外で活性化されることに留意されたい。しかし、ザイモグラフィーでは変性および再生を利用するため、いわゆる不活性プロ型のMMPでさえゼラチン分解活性を獲得し、透明な分域を生じる。
図34〜37は、Mono Mac 6細胞を様々なカメリア生理活性組成物に曝露してから48時間後に回収した培養液、およびカメリア組成物の非存在下において10 nM PMAの非存在下(U)または存在下(S)で培養した細胞から回収した培養液のゼラチンザイモグラムのネガ像を示す。
【0192】
組成物Aおよび陽性対照の効果は、最も低用量(0.0001%、「低」)および最も高用量(0.01%、「高」)の調製物に関してのみ評価したが、組成物BおよびDの効果は、中程度用量0.001%(「中」)でも評価した。4つのパネルから、Mono Mac 6細胞はPMAの非存在下でMMP-2(約67 kD)のみを放出し、この酵素は主にプロ型で見出されることが明らかである。10 nM PMAで処理することにより、MMP-9の分泌(約92 kD)が誘導され、また2つのMMPの顕著なレベルのプロ型をわずかに低分子量の活性型に変換するさらなるタンパク質分解活性が誘導される。
【0193】
ELISAの結果と一致して、PMA刺激Mono Mac 6細胞を細胞壁画分抽出物および白茶抽出物に曝露しても、ゼラチンザイモグラフィーで可視化される2つのMMPいずれのプロ型または活性型のレベルにも検出可能な影響は見られなかった。対照的に、最も高用量の組成物BおよびDに曝露すると、ゼラチンザイモグラフィーで可視化されるMMP-2のレベルは顕著に減少し、MMP-9のレベルに明らかな変化は見られなかった。
【0194】
最も高用量の組成物BおよびDで処理した細胞から回収した培地中に、MMP-9のプロ型および活性型ならびにMMP-2の活性型に相当するかすかであるが認識可能なバンドの出現が認められることから、これらの組成物の効果は主にMMP-2の放出の調節に対するものであって、これらの培養細胞におけるMMP活性化機構に対するさらなる効果を含まないことが示唆される。
【0195】
実施例18―カメリア生理活性組成物の比較評価:結果の概要
実験データから、カメリア生理活性組成物が、一般にミトコンドリア機能の喪失に起因する、MTS還元酵素活性の用量依存的減少を誘発することが示される。この阻害は検出するのに48時間程度の曝露を必要とし得り、少なくとも最初の24時間では細胞質内酵素の放出は測定され得ず、生理活性組成物は、壊死性細胞溶解を誘導するのではなく、腫瘍細胞のプログラム細胞死またはアポトーシス細胞死の経路を開始することが示唆される。
【0196】
MCF-7細胞およびMDA-MB-435S細胞の応答の時間依存性および用量依存性の相違、ならびにMCF-7細胞のTGF-β処理の効果はすべて、曝露して最初の24時間以内の還元酵素活性の減少が比較的穏やかであることからもわかるように、より高い浸潤および転移表現型の、白茶抽出物、細胞壁画分抽出物、およびある程度であるが細胞汁液に対する抵抗性のいくらかの増大を示す。しかし、膜画分抽出物の効力が高い傾向は、TGF-β処理MCF-7細胞およびMDA-MB-435S細胞のMTS還元酵素活性を24時間以内に阻害するその能力によって証明される。
【0197】
ヒト単球/マクロファージのモデルであるMono Mac 6細胞株に及ぼす被験生理活性組成物の効果は、乳房腫瘍細胞株で認められた効果といくらかの類似性を有する。乳房腫瘍細胞株の培養液中に乳酸脱水素酵素が存在しないこと、およびMono Mac 6細胞の培養液中に分泌されたMMP-9が通常レベルから増加したレベルで存在することに基づき、これらの組成物は試験したうち最も高い用量(0.01% w/v)でさえ壊死性細胞溶解を誘導しないと結論づけられた。
【0198】
しかし、2つの生理活性組成物(膜画分抽出物および細胞汁液)はミトコンドリア還元酵素活性の用量依存的阻害を誘導し、これはMono Mac 6細胞におけるプログラム細胞死のアポトーシス経路の開始を反映する。さらに、これらの炎症性細胞を膜画分抽出物および細胞汁液に曝露すると、ゼラチン分解酵素、MMP-2(ゼラチナーゼA)のレベルが選択的に減少する。ゼラチンザイモグラフィーから、「プロ型」または酵素前駆体活性化の機構はカメリア生理活性組成物によって影響されないことが示され、よって培地中のMMP-2レベルの減少がタンパク質分解の破壊の増加を反映する可能性は極めて低い。
【0199】
したがって、試験したすべての細胞株(すなわち、早期ヒト乳癌のモデル、進行乳癌細胞のモデル、および単球性白血病のモデル)の代謝活性は、膜画分抽出物(組成物B)、およびほとんどの場合に細胞汁液(組成物D)によって効率的に阻害される。注目すべきは、細胞壁茶の抽出物(組成物A)および白茶抽出物(陽性対照)は不活性であるか、または上記の組成物BおよびDよりもはるかに作用が弱いことが判明した。
【0200】
この傾向は、トランスフォーミング増殖因子の非存在下および存在下において試験したすべてのMCF-7ヒト癌細胞、MDA-MB-435S進行ヒト乳癌細胞、ならびに刺激および非刺激単球性Mono Mac 6細胞で明らかに証明された。生理活性カメリア組成物の試験および評価の概要に関するデータを表15に示す。
【0201】
(表15)生理活性カメリア組成物の試験および評価の概要
【0202】
表15から、カメリア調製物が用量依存的様式で細胞機能を調節する能力が以下の順に増加することが示される:白茶抽出物=細胞壁画分抽出物>細胞汁液>膜画分抽出物。実験データから、新鮮な植物組織を細胞汁由来膜画分抽出物(組成物B)および細胞汁液(組成物D)に加工することによって調製される新規な生理活性カメリア組成物は、細胞に対して明らかな壊死毒性を誘発しないことが示唆される。
【0203】
したがって本発明の技術は、カメリア生理活性組成物の可能性を劇的に増大させ、従来のカメリア技術によって生成される最良の産物(例えば、白茶抽出物)では実証され得なかったヒト生細胞に対する活性を示す非常に目覚しい新規産物を生成する能力を示す。
【0204】
実施例19―カメリア生理活性組成物の比較評価:今後の研究に関する示唆
本発明のカメリア生理活性組成物が細胞媒介性タンパク質分解活性に及ぼす効果は、炎症性組織傷害ならびに腫瘍浸潤および転移に対する意味あいを有する。したがって、乳癌細胞および単球性白血病細胞は、本発明のカメリア生理活性組成物、最も顕著には組成物B(膜画分抽出物)の有望な標的であることが明白に示唆され得る。結腸癌由来細胞株COLO 205が有意なレベルのMMP-2を放出し、これは次にやはりこの細胞が分泌するトリプシン様酵素によって活性化されることが以前に示されている。この種の腫瘍細胞も、Mono Mac 6細胞の結果に基づき、本発明のカメリア生理活性組成物の数多くの標的候補の1つである。
【0205】
これらの研究から、新鮮なカメリアから単離された本発明の生理活性組成物が、重要な細胞機能の優れた調節をもたらす顕著な活性を有すると確信し得る。認められた効果は、パーソナルケア製品から栄養補助食品および場合によっては医薬品に及ぶ有益な用途を有する。
【0206】
実施例20―生理活性組成物の特定の特徴を決定するために使用した手順
以下は、生理活性組成物の特定の特徴を決定するために使用した種々の方法である。これらの方法は上記の実施例を通して参照される。以下の「被験産物」または「被験試料」への言及は、生理活性組成物を指す。
【0207】
方法1:固形分の決定法
固形分を決定する手順は、水分が完全に蒸発するまでの100℃の水浴中における被験生理活性組成物の蒸発、105℃で3時間の試料の乾燥器保存、室温への冷却、および固形物を含む容器の重量の迅速な測定を含んだ。
【0208】
方法2:不揮発性残渣の決定法
不揮発性残渣を決定する手順は、105℃で5時間の被験生理活性組成物の乾燥器保存、冷却、および固形物を含む容器の重量の迅速な測定を含んだ。
【0209】
方法3:L
*a
*b
*値の決定法
L
*a
*b
*値を決定する手順では、0°/45°の測定配置を有するHunter Labscan固定配置比色計を利用した。上向き観測窓で標準光源D
65を使用した。被験生理活性組成物を含む容器を観測窓に置いて、底面から測定した。以下のCIELAB方程式を用いた:
C
* = (a
*2 + b
*2)
1/2
DE
* = [(DL)
2 + (Da
*)
2 + (Db
*)
2]
1/2
DH = [(DE
*)
2 - (DL
*)
2 - (DC
*)
2]
1/2。
【0210】
方法4:総カロテノイド含量およびルテイン含量の決定法。
被験生理活性組成物をアセトンで抽出した。均一化および真空ろ過した後、全抽出物をメタノール中の30%水酸化カリウムでけん化した。続いて、石油エーテルにより生理活性組成物からカロテノイドを抽出した。さらに処理しエタノール中で再可溶化した後、全試料を446 nmで測定した。
【0211】
ルテイン含量を決定するため、各試料の抽出によるさらなる乾燥試料を、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)解析に使用した。乾燥試料をMTBEおよびメタノール中で再可溶化した。(250 x 4.60 mm内径)5μm C
18カラム(「Vydac」)による逆相HPLCシステムを用いた。ルテインの同一性は、標品を同時にクロマトグラフィーすることににより一致させた。エタノール中のルテインのモル吸光係数は144,800 cm
-1 mol
-1である。
【0212】
方法5:エラスターゼ阻害活性の決定法
被験生理活性組成物のエラスターゼ阻害活性は、好中球エラスターゼ(「Elastin Products」による製造の精製酵素調製品)および「Sigma」による製造の合成ペプチド可溶性基質メトキシスクシニル-Ala-Ala-Pro-Val-p-ニトロアニリドを使用するアッセイにより決定した。基質の酵素的切断により、時間と共に黄色の増加が生じる(405 nm);発色速度は、阻害活性を含む被験生理活性組成物の濃度を増すことにより減少する。阻害の濃度依存性を解析することで、50%阻害を達成するのに必要な各被験生理活性物中の乾物の濃度(IC
50)として表される阻害活性の効力の定量化が可能になると同時に、阻害の様式に関連した情報が提供される。
【0213】
IC
50の決定に関して、エラスターゼ濃度は2.5μg/mlであり、基質濃度は150μMであった。K
iの決定に関して、基質濃度は100μMおよび200μMであった。
【0214】
方法6:ゼラチナーゼB(MMP-9)阻害活性の決定法
他のプロテイナーゼを洗浄除去した後に、免疫認識によりマルチウェルマイクロプレート上にゼラチナーゼBを特異的に捕獲する市販のアッセイ法(「Amersham Pharmacia」による製造のMMP-9活性ELISA)を使用した。酵素活性は、ゼラチナーゼBの低分子量合成基質:APMAの加水分解により405 nmで検出した。阻害の濃度依存性を解析することにより、被験生理活性組成物乾物の効力を決定した。
【0215】
方法7:スーパーオキシド捕捉活性の決定法
キサンチンオキシダーゼ(「Sigma」による製造の精製酵素調製品)を使用する酵素系を用いて、スーパーオキシドアニオンを高収量および制御された様式で生成させた。この酵素によるキサンチンのヒドロキサンチンへの変換により大量のスーパーオキシドアニオンが生じ、フェリチトクロムcからフェロチトクロムcへの還元をスーパーオキシドレベルの高感度測定として使用した。反応系に被験生理活性組成物を添加した場合のフェロチトクロムcレベルの測定値(550 nm)により、そのスーパーオキシド捕捉活性が決定され得る。ウェル当たりの最終濃度は、チトクロムcが75μM、キサンチンが425μm/L、およびキサンチンオキシダーゼが10 mU/mlであった。
【0216】
方法8:インビトロ毒性およびアポトーシスの決定法
CellTiter 96 AQ
ueous One Solution Cell Proliferation AssayおよびCytoTox 96 Non-radioactive Cytotoxicity Assayならびにそれに続く手順を検討した(いずれのアッセイも、Promega Corporation、ウィスコンシン州、マディソンの製造による)。
【0217】
1つ目のアッセイ法は、テトラゾリウム化合物(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、内部塩;MTSおよび電子結合試薬(フェナジンメトスサルフェート;PMS)を探求する、生細胞数を決定するための比色法である。MTSは細胞によって生物的に還元されて、490 nmで吸光度最大値を有する、組織培養液に可溶なホルマザン産物へと変換される。MTSの水溶解性ホルマザンへの変換は、代謝活性のある細胞中に見出される脱水素酵素によって達成され、ホルマザン産物の量は培養液中の生細胞数と直接比例する。
【0218】
2つ目のアッセイ法では、細胞溶解時に放出される安定な細胞質内酵素である乳酸脱水素酵素(LDH)を定量的に測定する。細胞培養上清中に放出されたLDHは、テトラゾリウム塩(INT)の赤色ホルマザン産物への変換をもたらす30分間の共役アッセイと共に測定される。形成される色量は溶解した細胞数に比例する。
【0219】
方法9:刺激細胞によって分泌される酵素のレベルの決定法
Mono Mac 6細胞は、PMAと共にインキュベートした後に、2種類のゼラチン分解マトリックスメタロプロテイナーゼ、MMP-2(ゼラチナーゼA)およびMMP-9(ゼラチナーゼB)を分泌する。被験生理活性組成物の存在下におけるこれらの酵素のレベルは、二次元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定した。
【0220】
実施例21―カメリア産物の特定の生理活性特性を試験するために使用した細胞株
進行乳癌のモデルと見なされる細胞株MDA-MB-435Sは、American Type Culture Collectionから入手した(ATCC番号HTB-129)。この細胞株は以下のATCC培地中で37℃で培養した:0.01 mg/mlインスリンを添加した2 mM L-グルタミンを含むLeibovitzのL-15培地、90%;ウシ胎児血清、10%。
【0221】
早期または脱分化度の低い乳癌のモデルと見なされる細胞株MCF-7は、ATCCから入手し(ATCC番号HTB-22)、以下のATCC培地中で37℃で培養した:1.5 g/L炭酸水素ナトリウム、0.1 mM非必須アミノ酸、および1 mMピルビン酸ナトリウムを含むように調製した、2 mM L-グルタミンおよびEarleのBSSを含む最小必須培地(Eagle)に、さらに0.01 mg/mlウシインスリンを添加したもの、90%;ウシ胎児血清、10%。
【0222】
分化したヒト単球に酷似している細胞株MonoMac6(MM6、German Collection of Microorganisms and Cell Culturesから入手)(Ziegler-Heitbrock et al.、「Establishement of a Human Cell Line (Mono Mac 6) with Characteristics of Mature Monocytes,」 International Journal of Cancer 41:456-461 (1988)、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。細胞は、2 mM L-グルタミン、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1 mMピルビン酸ナトリウム、10% FCS、非必須アミノ酸、9μg/mlインスリン、および1 mMオキサル酢酸を添加したRPMI 1640で維持した。アッセイ条件では、0.2%グルコースもさらに添加した。
【0223】
実施例22―カメリア産物のカテキン分析
本発明の細胞壁画分抽出物、膜画分抽出物、および細胞汁液を、種々のカテキンの含量について分析した。白茶試料を対照として使用した。以下のカテキンについてアッセイした:(-)-エピガロカテキン;(+)-カテキン;(-)-エピカテキン;(-)-没食子酸エピガロカテキン;(-)-没食子酸ガロカテキン;および(-)-没食子酸エピカテキン。
【0224】
0.1% H
3PO
4を使用し約15分間超音波処理して試料を抽出した。遠心分離後、抽出物をHPLCに供した。C-18逆相カラムを固定相として使用した。0.1%リン酸およびアセトニトリルは移動相として用いた。検出は280 nmで行った。計算は、記載したそれぞれのカテキンの面積をその純粋標品と比較することに基づいた。結果を
図38および表16(以下)に示す。
【0225】
(表16)生理活性カメリア組成物のカテキン含量
【0226】
本明細書において好ましい態様を示し説明したが、本発明の精神から逸脱することなく様々な変更、付加、置換などがなされ得ることは当業者には明白であると考えられ、したがってこれらは特許請求の範囲で規定される本発明の範囲内であると見なされる。