(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部を流体が流れる配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第1の超音波送受信部と、前記第1の超音波送受信部に対して下流側の前記配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第2の超音波送受信部と、前記流体の速度を測定する本体部と、を備え、前記第1の超音波送受信部および前記第2の超音波送受信部は、前記流体を挟んで配置される超音波流量計が使用する流体速度測定方法であって、
前記配管の内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1の流体伝搬経路を、前記第2の超音波送受信部から送信された前記超音波が伝搬する時間と前記第1の超音波送受信部から送信された前記超音波が伝搬する時間との差である第1の伝搬時間差と、前記配管の内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2の流体伝搬経路を、前記第2の超音波送受信部から送信された前記超音波が伝搬する時間と前記第1の超音波送受信部から送信された前記超音波が伝搬する時間との差である第2の伝搬時間差と、に基づいて、前記流体の速度における前記配管の軸に平行な成分を算出するステップを含む、
流体速度測定方法。
内部を流体が流れる配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第1の超音波送受信部と、前記第1の超音波送受信部に対して下流側の前記配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第2の超音波送受信部と、前記流体の速度を測定する本体部と、を備え、前記第1の超音波送受信部および前記第2の超音波送受信部は、前記流体を挟んで配置される超音波流量計が実行する流体速度測定プログラムであって、
前記配管の内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1の流体伝搬経路を、前記第2の超音波送受信部から送信された前記超音波が伝搬する時間と前記第1の超音波送受信部から送信された前記超音波が伝搬する時間との差である第1の伝搬時間差と、前記配管の内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2の流体伝搬経路を、前記第2の超音波送受信部から送信された前記超音波が伝搬する時間と前記第1の超音波送受信部から送信された前記超音波が伝搬する時間との差である第2の伝搬時間差と、に基づいて、前記流体の速度における前記配管の軸に平行な成分を算出するステップを含む、
流体速度測定プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波流量計のように、一対の超音波送受信器が配管の同一直線上に配置されている超音波流量計では、測定可能な流体の速度を大きくするために、超音波送受信器の寸法、特に、配管の軸方向の長さを大きくすると、超音波送受信器同士が干渉するおそれがあった。
【0005】
一方、その他の超音波流量計として、一対の超音波送受信器が配管を間に挟んで配置されるものもあった。
【0006】
しかしながら、この超音波流量計では、配管の内部を流れる流体の速度が、配管の軸方向に垂直な成分を含む場合に、流体の速度を正確に測定できない、という問題があった。
【0007】
本実施形態のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、超音波送受信部が干渉せずに、流体の速度を正確に測定することのできる超音波流量計、流体速度測定方法、および流体速度測定プログラムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波流量計は、内部を流体が流れる配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第1の超音波送受信部と、第1の超音波送受信部に対して下流側の前述の配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第2の超音波送受信部と、前述の流体の速度を測定する本体部と、を備え、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部は、前述の流体を挟んで配置され、本体部は、前述の配管の内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1の伝搬時間差と、前述の配管の内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2の伝搬時間差と、に基づいて、前述の流体の速度における前述の配管の軸に平行な成分を算出する。
【0009】
かかる構成によれば、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部が、配管の内部を流れる流体を挟んで配置され、本体部が、配管の内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1の伝搬時間差と、配管の内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2の伝搬時間差と、に基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を算出する。ここで、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差との差から、配管の内部を径方向に2(n−m)回、すなわち、偶数回横断する流体伝搬経路について、超音波が下流側から上流側に伝搬する時間と超音波が上流側から下流側に伝搬する時間との伝搬時間差を求めることが可能である。そして、流体の速度における配管の軸に平行な成分は、流体の速度の測定前に既知の値と、配管の内部を径方向に偶数回横断するときの伝搬時間差と、を用いて表される。よって、本体部は、流体の流れが配管の軸に対して角度を有し、流体の速度が配管の軸に垂直な成分を含む場合でも、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を、正確に算出することができる。
【0010】
また、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分が算出されるので、流体の速度における配管の軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。
【0011】
さらに、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部が、配管の内部を流れる流体を挟んで配置される。これにより、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。
【0012】
また、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を、配管の内部を流れる流体を挟んで配置することにより、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を配管の同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。
【0013】
好ましくは、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部のそれぞれは、前述の配管の外周に設置される超音波センサを備える。
【0014】
かかる構成によれば、第1の超音波送受信部が配管の外周に設置される超音波センサを備え、第2の超音波送受信部が配管の外周に設置される超音波センサを備える。これにより、超音波の送信および受信を行う第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を、配管工事を行うことなく、配管に容易に設けることができる。
【0015】
好ましくは、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部のそれぞれは、前述の配管の外周に設置される超音波センサを2つ備える。
【0016】
かかる構成によれば、第1の超音波送受信部20が配管の外周に設置される超音波センサを2つ備え、第2の超音波送受信部が配管の外周に設置される超音波センサを2つ備える。これにより、超音波の送信および受信を行う第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を、配管工事を行うことなく、配管に容易に設けることができる。
【0017】
また、第1の超音波送受信部が2つの超音波センサを備え、第2の超音波送受信部が2つの超音波センサを備えるので、例えば、第1の超音波送受信部の一方の超音波センサおよび第2の超音波送受信部の一方の超音波センサを用いて第1の伝搬時間差を計測し、第1の超音波送受信部の他方の超音波センサおよび第2の超音波送受信部の他方の超音波センサを用いて第2の伝搬時間差を計測することが可能となる。
【0018】
また、第1の流体伝搬経路は、前述の配管の内部を径方向に3回横断する経路であり、第2の流体伝搬経路は、前述の配管の内部を径方向に1回横断する経路である。
【0019】
かかる構成によれば、第1の流体伝搬経路が配管の内部を径方向に3回横断する経路であり、第2の流体伝搬経路が配管の内部を径方向に1回横断する経路である。これにより、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、配管の内部を径方向に2回横断する経路の伝搬時間差を容易に求めることができ、流体の速度における配管の軸に平行な成分を算出する本体部を、容易に実現(構成)することができる。
【0020】
また、第1の流体伝搬経路は、前述の配管の内部を径方向に5回横断する経路であり、第2の流体伝搬経路は、前述の配管の内部を径方向に3回横断する経路である。
【0021】
かかる構成によれば、第1の流体伝搬経路が配管の内部を径方向に5回横断する経路であり、第2の流体伝搬経路が配管の内部を径方向に3回横断する経路である。これにより、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、配管の内部を径方向に2回横断する経路の伝搬時間差を容易に求めることができ、流体の速度における配管の軸に平行な成分を算出する本体部を、容易に実現(構成)することができる。
【0022】
また、第1の流体伝搬経路は、前述の配管の内部を径方向に7回横断する経路であり、第2の流体伝搬経路は、前述の配管の内部を径方向に5回横断する経路である。
【0023】
かかる構成によれば、第1の流体伝搬経路が配管の内部を径方向に7回横断する経路であり、第2の流体伝搬経路が配管の内部を径方向に5回横断する経路である。これにより、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、配管の内部を径方向に2回横断する経路の伝搬時間差を容易に求めることができ、流体の速度における配管の軸に平行な成分を算出する本体部を、容易に実現(構成)することができる。
【0024】
本発明に係る流体速度測定方法によれば、内部を流体が流れる配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第1の超音波送受信部と、第1の超音波送受信部に対して下流側の配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第2の超音波送受信部と、前述の流体の速度を測定する本体部と、を備え、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部は、前述の流体を挟んで配置される超音波流量計が使用する流体速度測定方法であって、前述の配管の内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1の伝搬時間差と、前述の配管の内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2の伝搬時間差と、に基づいて、前述の流体の速度における前述の配管の軸に平行な成分を算出するステップを含む。
【0025】
かかる構成によれば、配管の内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1の伝搬時間差と、配管の内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2の伝搬時間差と、に基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を算出するステップが含まれる。ここで、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差との差から、配管の内部を径方向に2(n−m)回、すなわち、偶数回横断する流体伝搬経路について、超音波が下流側から上流側に伝搬する時間と超音波が上流側から下流側に伝搬する時間との伝搬時間差を求めることが可能である。そして、流体の速度における配管の軸に平行な成分は、流体の速度の測定前に既知の値と、配管の内部を径方向に偶数回横断するときの伝搬時間差と、を用いて表される。よって、本体部は、流体の流れが配管の軸に対して角度を有し、流体の速度が配管の軸に垂直な成分を含む場合でも、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を、正確に算出することができる。
【0026】
また、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分が算出されるので、流体の速度における配管の軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。
【0027】
さらに、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部が、配管の内部を流れる流体を挟んで配置される。これにより、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。
【0028】
また、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を、配管の内部を流れる流体を挟んで配置することにより、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を配管の同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。
【0029】
本発明に係る流体速度測定プログラムによれば、内部を流体が流れる配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第1の超音波送受信部と、第1の超音波送受信部に対して下流側の配管に設けられ、超音波の送信および受信を行う第2の超音波送受信部と、前述の流体の速度を測定する本体部と、を備え、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部は、前述の流体を挟んで配置される超音波流量計が実行する流体速度測定プログラムであって、前述の配管の内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1の伝搬時間差と、前述の配管の内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2の伝搬時間差と、に基づいて、前述の流体の速度における前述の配管の軸に平行な成分を算出するステップを含む。
【0030】
かかる構成によれば、配管の内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1の伝搬時間差と、配管の内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2の流体伝搬経路を、第2の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間と第1の超音波送受信部から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2の伝搬時間差と、に基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を算出するステップが含まれる。ここで、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差との差から、配管の内部を径方向に2(n−m)回、すなわち、偶数回横断する流体伝搬経路について、超音波が下流側から上流側に伝搬する時間と超音波が上流側から下流側に伝搬する時間との伝搬時間差を求めることが可能である。そして、流体の速度における配管の軸に平行な成分は、流体の速度の測定前に既知の値と、配管の内部を径方向に偶数回横断するときの伝搬時間差と、を用いて表される。よって、本体部は、流体の流れが配管の軸に対して角度を有し、流体の速度が配管の軸に垂直な成分を含む場合でも、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を、正確に算出することができる。
【0031】
また、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分が算出されるので、流体の速度における配管の軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。
【0032】
さらに、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部が、配管の内部を流れる流体を挟んで配置される。これにより、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。
【0033】
また、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を、配管の内部を流れる流体を挟んで配置することにより、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を配管の同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の超音波流量計によれば、本体部は、流体の流れが配管の軸に対して角度を有し、流体の速度が配管の軸に垂直な成分を含む場合でも、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を、正確に算出することができる。したがって、超音波流量計は、流体の速度における配管の軸に平行な成分に基づいて、流体の流量を正確に測定することができる。
【0035】
また、流体の速度における配管の軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。したがって、超音波流量計は、設置位置の制約(制限)を緩和することができ、例えば、屈曲した配管の直後に設置するなど、任意の場所に設置することができる。
【0036】
さらに、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。したがって、超音波流量計は、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)を大きくして測定可能な流速範囲を容易に拡げることができる。
【0037】
また、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を配管の同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。したがって、超音波流量計は、SN比を向上させることができる。
【0038】
本発明の流体速度測定方法によれば、本体部は、流体の流れが配管の軸に対して角度を有し、流体の速度が配管の軸に垂直な成分を含む場合でも、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を、正確に算出することができる。したがって、超音波流量計は、流体の速度における配管の軸に平行な成分に基づいて、流体の流量を正確に測定することができる。
【0039】
また、流体の速度における配管の軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。したがって、超音波流量計は、設置位置の制約(制限)を緩和することができ、例えば、屈曲した配管の直後に設置するなど、任意の場所に設置することができる。
【0040】
さらに、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。したがって、超音波流量計は、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)を大きくして測定可能な流速範囲を容易に拡げることができる。
【0041】
また、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を配管の同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。したがって、超音波流量計は、SN比を向上させることができる。
【0042】
本発明の流体速度測定プログラムによれば、本体部は、流体の流れが配管の軸に対して角度を有し、流体の速度が配管の軸に垂直な成分を含む場合でも、第1の伝搬時間差と第2の伝搬時間差とに基づいて、流体の速度における配管の軸に平行な成分を、正確に算出することができる。したがって、超音波流量計は、流体の速度における配管の軸に平行な成分に基づいて、流体の流量を正確に測定することができる。
【0043】
また、流体の速度における配管の軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。したがって、超音波流量計は、設置位置の制約(制限)を緩和することができ、例えば、屈曲した配管の直後に設置するなど、任意の場所に設置することができる。
【0044】
さらに、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。したがって、超音波流量計は、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部の寸法(配管の軸方向の長さ)を大きくして測定可能な流速範囲を容易に拡げることができる。
【0045】
また、第1の超音波送受信部および第2の超音波送受信部を配管の同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。したがって、超音波流量計は、SN比を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0048】
<第1実施形態>
図1ないし
図15は、本発明に係る超音波流量計、流体速度測定方法および流体速度測定プログラム、および流体速度測定方法の第1実施形態を示すためのものである。
図1は、第1実施形態における超音波流量計100の概略構成を示す構成図である。
図1に示すように、超音波流量計100は、配管Aの内部を流れる流体、例えば、気体(ガス)や液体の流速を測定するためのものである。配管Aは、例えば、ステンレス鋼(SUS)などの金属製、または、プラスチックなどの樹脂製の管(管体)である。配管Aは、配管Aの軸(長手方向)が
図1における左右方向、配管Aの径(短手方向)が
図1における上下方向になるように配置されている。超音波流量計100の測定対象である流体は、
図1において白抜き矢印で示す方向(
図1における左から右の方向)に流れている。超音波流量計100は、第1超音波送受信部20と、第2超音波送受信部30と、本体部50と、を備える。
【0049】
第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30のそれぞれは、超音波の送信および受信を行うためのものである。第1超音波送受信部20は配管Aの所定の位置に設けられ、第2超音波送受信部30は第1超音波送受信部20に対して下流側(
図1における右側)の配管Aに設けられる。言い換えれば、第1超音波送受信部20は第2超音波送受信部30に対して上流側(
図1における左側)の配管Aに設けられる。また、第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30は、配管Aの内部を流れる流体を間に挟み、対向して配置される。
【0050】
配管Aの上流側に配置される第1超音波送受信部20は、例えば、配管Aの外周に設置される第1超音波センサ20Aを備える。また、配管Aの下側に配置される第2超音波送受信部30は、例えば、配管Aの外周に設置される第2超音波センサ30Aを備える。これにより、超音波の送信および受信を行う第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30を、配管工事を行うことなく、配管Aに容易に設けることができる。
【0051】
第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aは、相互に超音波を送受信する。すなわち、第1超音波センサ20Aが送信した超音波は、第2超音波センサ30Aによって受信され、第2超音波センサ30Aが送信した超音波は、第1超音波センサ20Aによって受信される。
【0052】
図2は、
図1に示した第1超音波センサ20Aの構成を説明する拡大断面図である。
図2に示すように、第1超音波センサ20Aは、くさび21と、超音波送受信器22と、を備える。
【0053】
くさび21は、配管Aに対して所定の鋭角で超音波を入射させるためのものであり、例えば、樹脂製または金属製の部材である。くさび21は、底面21aが配管Aの外周面に接触するように設置される。また、くさび21は、底面21aに対して所定の角度を有する斜面21bが形成されている。斜面21bには、超音波送受信器22が設置される。
【0054】
本実施形態では、底面21aが配管Aの外周面に直接接触する例を示したが、これに限定されない。第1超音波センサ20Aは、底面21aと配管Aの外周面との間に、接触媒質(カプラント)を介在させてもよい。
【0055】
超音波送受信器22は、超音波を送信するとともに、超音波を受信するためのものである。超音波送受信器22は、例えば、圧電素子などで構成することが可能である。超音波送受信器22には、リード線(図示省略)が電気的に接続されている。リード線を介して所定周波数の電気信号が印加されと、超音波送受信器22は、当該所定周波数で振動して超音波を発する。これにより、超音波送受信器22から超音波が送信される。また、
図2において破線の矢印で示すように、超音波送受信器22の寸法(縦横の長さ)で送信された超音波は、斜面21bの角度でくさび21を伝搬する。くさび21を伝搬する超音波は、くさび21と配管Aの外壁との界面で屈折して入射角が変化し、配管Aの内壁と配管Aの内部を流れる流体との界面でさら屈折して入射角が変化し、当該流体を伝搬する。界面おける屈折は、スネルの法則に従うので、配管Aを伝搬するときの超音波の速度、流体を伝搬するときの超音波の速度に基づいて、斜面21bの角度をあらかじめ設定することにより、くさび21は超音波を所望の角度で配管Aの内部を流れる流体に入射させることができる。
【0056】
一方、超音波送受信器22に超音波が到達すると、超音波送受信器22は、当該超音波の周波数で振動して電気信号を発生させる。これにより、超音波送受信器22によって超音波が受信される。超音波送受信器22に発生した電気信号は、リード線を介して後述する本体部50で検出される。
【0057】
なお、第2超音波センサ30Aは、第1超音波センサ20Aと同様の構成を備える。すなわち、第2超音波センサ30Aも、くさび21と、超音波送受信器22と、を備える。よって、前述した第1超音波センサ20Aの説明をもって、第2超音波センサ30Aの詳細な説明を省略する。
【0058】
図1に示す本体部50は、配管Aの内部を流れる流体の速度を測定するためのものである。本体部50は、切替部51と、送信回路部52と、受信回路部53と、計時部54と、演算制御部55と、入出力部56と、を備える。
【0059】
切替部51は、超音波の送信および受信を切り替えるためのものである。切替部51は、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aに接続されている。切替部51は、例えば、切替スイッチなどを含んで構成することが可能である。切替部51は、演算制御部55から入力される制御信号に基づいて切替スイッチを切り替え、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aのうちの一方を送信回路部52に接続させるとともに、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aのうちの他方を受信回路部53に接続させる。これにより、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aのうちの一方が超音波を送信し、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aのうちの他方が当該超音波を受信することができる。
【0060】
送信回路部52は、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aに超音波を送信させるためのものである。送信回路部52は、例えば、所定周波数の矩形波を生成する発振回路、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aを駆動する駆動回路などを含んで構成することが可能である。送信回路部52は、演算制御部55から入力される制御信号に基づいて、駆動回路が発振回路により生成された矩形波を駆動信号として第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aのうちの一方の超音波送受信器22に出力する。これにより、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aの一方の超音波送受信器22が駆動され、当該超音波送受信器22が超音波を送信する。
【0061】
一般に、超音波は、20[kHz]以上の周波数帯の音波を意味する。よって、超音波送受信器22が送信する超音波は、20[kHz]以上の周波数帯の音波である。好ましくは、超音波送受信器22が送信する超音波は、100[kHz]以上であって2.0[MHz]以下の周波数帯の超音波である。なお、いずれの場合であっても、第1超音波センサ20Aの超音波送受信器22が送信する超音波と第2超音波センサ30Aの超音波送受信器22が送信する超音波とは、同一周波数であってもよいし、異なる周波数であってもよい。
【0062】
受信回路部53は、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aが受信した超音波を検出するためのものである。受信回路部53は、例えば、信号を所定の利得(ゲイン)で増幅する増幅回路、所定周波数の電気信号を取り出すためのフィルタ回路などを含んで構成することが可能である。受信回路部53は、演算制御部55から入力される制御信号に基づいて、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aのうちの一方の超音波送受信器22から出力された電気信号を増幅し、フィルタリングして受信信号に変換する。受信回路部53は、変換した受信信号を演算制御部55に出力する。
【0063】
計時部54は、所定の期間における時間を計測するためのものである。計時部54は、例えば、発振回路などで構成することが可能である。なお、発振回路は、送信回路部52と共有するようにしてもよい。計時部54は、演算制御部55から入力されるスタート信号およびストップ信号に基づいて、発振回路の基準波の数をカウントして時間を計測する。計時部54は、計測した時間を演算制御部55に出力する。
【0064】
演算制御部55は、配管Aの内部を流れる流体の流量を演算により算出するためのものである。演算制御部55は、例えば、CPU、ROMやRAMなどのメモリ、入出力インターフェースなどで構成することが可能である。また、演算制御部55は、切替部51、送信回路部52、受信回路部53、計時部54、および、入出力部56などの本体部50の各部を制御する。
【0065】
入出力部56は、ユーザ(利用者)が情報を入力し、かつ、ユーザに対して情報を出力するためのものである。入出力部56は、例えば、操作ボタンなどの入力手段、表示ディスプレイなどの出力手段などで構成することが可能である。ユーザが操作ボタンなどを操作することにより、設定などの各種の情報が入出力部56を介して演算制御部55に入力される。また、入出力部56は、演算制御部55により算出された流体の流量、流体の速度、所定期間における積算流量などの情報を、表示ディスプレイなどに表示して出力する。
【0066】
なお、以下の
図3、
図4、および
図6ないし
図15において、特に明記した場合を除き、配管Aの軸に平行な方向をx軸(またはx軸方向)、x軸に垂直であって、配管Aの径に平行な方向をy軸(またはy軸方向)、x軸およびy軸に垂直な方向をz軸(またはz軸方向)として説明する。
【0067】
また、以下の
図3、
図4、および
図6ないし
図15において、特に明記した場合を除き、流体の速度をV[m/s]、流体中を超音波が伝搬するときの速度(以下、音速という)をC[m/s]、流体を伝搬する超音波の伝搬経路長をL[m]とし、配管Aの軸に平行な方向、例えば、配管Aの内壁と、超音波の伝搬経路とのなす角度をθとして説明する。
【0068】
図3は、配管Aの内部を配管Aの軸に平行な方向に流れる流体の速度の算出方法を説明するための側方断面図である。
図3に示すように、流体は、配管Aの内部をx軸方向に沿って速度Vで流れている。ここで、配管Aの上流側(
図3において左側)に設置された第1超音波センサ20Aが超音波を送信し、配管Aの下流側(
図3において右側)に設置された第2超音波センサ30Aが当該超音波を受信するときに、当該超音波が配管Aの内部の流体を伝搬する伝搬時間t
1dは、以下の式(1)で表される。
t
1d=L/(C+Vcosθ) …(1)
【0069】
一方、配管Aの下流側に設置された第2超音波センサ30Aが超音波を送信し、配管Aの上流側に設置された第1超音波センサ20Aが当該超音波を受信するときに、当該超音波が配管Aの内部の流体を伝搬する伝搬時間t
1uは、以下の式(2)で表される。
t
1u=L/(C−Vcosθ) …(2)
【0070】
式(1)および式(2)から、伝搬時間t
1uと伝搬時間t
1dの伝搬時間差Δt
1(=t
1u−t
1d)は、以下の式(3)で表される。
Δt
1=2LVcosθ/(C
2―V
2cosθ
2) …(3)
【0071】
ここで、音速Cは、例えば、流体が水(液体)である場合に1500[m/s]程度であり、流体が空気(気体)である場合に343[m/s]程度である。一方、超音波流量計100が測定する流体の速度Vは、最大で30[m/s]程度である。このため、式(3)の分母において、値V
2cosθ
2は、音速Cの二乗と比較して極めて小さいので、これを省略しても構わないと考えられる。そうすると、伝搬時間差Δt
1は、以下の式(4)として表すことができる。
Δt
1=2LVcosθ/C
2 …(4)
【0072】
式(4)から、流体の流速Vは以下の式(5)で表される。
V=C
2・Δt
1/2Lcosθ …(5)
【0073】
式(5)において、音速C、伝搬経路長L、および角度θは、流体の速度の測定前に既知の値であるから、伝搬時間差Δt
1を計測することで、流体の速度Vは式(5)から算出することができる。
【0074】
そして、配管Aの内部を流れる流体の流量Q[m
3/s]は、補正係数Kおよび配管Aの断面積S[m
2]と、流体の速度V[m/s]と、を用いて以下の式(6)で表される。
Q=KSV …(6)
【0075】
したがって、流体が配管Aの内部をx軸方向に沿って流れている場合、演算制御部55は、式(5)により算出した流体の速度Vに基づいて、式(6)から配管Aの内部を流れる流体の流量Qを算出することが可能となる。
【0076】
図4は、配管Aの内部を配管Aの軸に対して角度を有して流れる流体の速度の算出方法を説明するための側方断面図である。
図4に示すように、流体は配管Aの軸(x軸)に対して角度εを有して流れており、流体の速度Vは配管Aの軸(x軸)に垂直な方向(y軸方向)の成分を含んでいる。この場合、配管Aの上流側(
図4において左側)に設置された第1超音波センサ20Aが超音波を送信し、配管Aの下流側(
図4において右側)に設置された第2超音波センサ30Aが当該超音波を受信するときに、当該超音波が配管Aの内部の流体を伝搬する伝搬時間T
1dは、以下の式(11)で表される。
T
1d=L/{C+Vcos(θ+ε)} …(11)
【0077】
一方、配管Aの下流側に設置された第2超音波センサ30Aが超音波を送信し、配管Aの上流側に設置された第1超音波センサ20Aが当該超音波を受信するときに、当該超音波が配管Aの内部の流体を伝搬する伝搬時間T
1uは、以下の式(12)で表される。
T
1u=L/{C−Vcos(θ+ε)} …(12)
【0078】
式(11)および式(12)から、伝搬時間T
1uと伝搬時間T
1dの伝搬時間差ΔT
1(=T
1u−T
1d)は、以下の式(13)で表される。
ΔT
1=2LVcos(θ+ε)/{C
2―V
2cos(θ+ε)
2} …(13)
【0079】
ここで、前述した式(3)の場合と同様に、式(13)の分母において、値V
2cos(θ+ε)
2は、音速Cの二乗と比較して極めて小さいので、これを省略しても構わないと考えられる。そうすると、伝搬時間差ΔT
1は、以下の式(14)として表すことができる。
ΔT
1=2LVcos(θ+ε)/C
2 …(14)
【0080】
式(14)から、流体の流速Vは以下の式(5)で表される。
V=C
2・ΔT
1/2Lcos(θ+ε) …(15)
【0081】
式(15)において、伝搬経路長Lおよび角度θは、流体の速度の測定前に既知の値である一方、角度εは流体の速度の測定前には分からない。また、流体の速度の測定中に角度εを測定することは困難である。さらに、流体が僅かに角度εを有する場合でも、角度εが式(15)おける流速に与える影響が大きいため、式(15)から流体の速度Vを算出することは困難である。
【0082】
そのため、従来の超音波流量計では、第1超音波センサ20Aのさらに上流側(
図4において左側)に十分に長い直管を配置し、配管Aの内部を流れる流体において、角度εを低減させ、流体が配管Aの軸方向に平行な方向に流れるようにしていた。
【0083】
次に、超音波流量計100が流体の速度を測定する動作について説明する。
【0084】
図5は、
図1に示した超音波流量計100が配管Aの内部を流れる流体の速度を測定する動作の一例を説明するフローチャートである。
【0085】
超音波流量計100は、例えば起動時に、演算制御部55が、ROMなどに記憶されたプログラムを読み出し、
図5に示す流体速度測定処理S200を実行する。
【0086】
最初に、演算制御部55は、所定の設定値が設定されているか否かを判定する(S201)。演算制御部55は、所定の設定値が設定されるまで、S201のステップを繰り返す。
【0087】
所定の設定値は、例えば、音速C、伝搬経路長L、角度θ、補正係数K、配管Aの断面積Sなどが挙げられる。ユーザ(利用者)は、流体の速度を測定する前に、入出力部56を介して配管Aの情報や流体の情報などを入力する。演算制御部55は、入力された情報に基づいて、対応する所定の設定値を読み出し、または、所定の設定値を算出し、当該所定の設定値を不揮発性のメモリなどに記憶しておく。演算制御部55は、当該メモリにアクセスすることで、S201のステップを判定することが可能となる。
【0088】
なお、演算制御部55は、S201のステップを繰り返す間に、入出力部56を介して、表示ディスプレイなどの出力手段に、ユーザ(利用者)に情報の入力を促す旨のメッセージなどを表示させるようにしてもよい。
【0089】
S201の判定の結果、所定の設定値が設定されている場合、演算制御部55は、配管Aの内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1流体伝搬経路について、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aから送信された超音波が伝搬する時間と、第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aから送信された超音波が伝搬する時間との差である第1伝搬時間差を計測する(S202)。
【0090】
具体的には、まず、演算制御部55は、切替部51に制御信号を出力し、例えば、第1超音波センサ20Aを送信回路部52に接続させるとともに、第2超音波センサ30Aを受信回路部53に接続させる。そして、演算制御部55は、送信回路部52に制御信号を出力して第1超音波センサ20Aから超音波を送信させるとともに、計時部54にスタート信号を出力する。次に、演算制御部55は、受信回路部53から入力される受信信号に基づいて、計時部54にストップ信号を出力し、第1流体伝搬経路を超音波が上流側から下流側に伝搬する伝搬時間を計測する。
【0091】
次に、演算制御部55は、切替部51に制御信号を出力し、例えば、第2超音波センサ30Aを送信回路部52に接続させるとともに、第1超音波センサ20Aを受信回路部53に接続させる。そして、演算制御部55は、送信回路部52に制御信号を出力して第2超音波センサ30Aから超音波を送信させるとともに、計時部54にスタート信号を出力する。次に、演算制御部55は、受信回路部53から入力される受信信号に基づいて、計時部54にストップ信号を出力し、第1流体伝搬経路を超音波が下流側から上流側に伝搬する伝搬時間を計測する。
【0092】
次に、演算制御部55は、第1流体伝搬経路を上流側から下流側に伝搬する伝搬時間と、第1流体伝搬経路を下流側から上流側に伝搬する伝搬時間とから、第1伝搬時間差を求める。
【0093】
図6は、第1流体伝搬経路の第1伝搬時間差の計測の一例を説明するための側方断面図である。
図6に示すように、第1流体伝搬経路は、例えばn=2、すなわち、配管Aの内部を径方向に3回横断する(横切る)経路である。この場合、演算制御部55は、
図6において矢印で示す伝搬時間T
3dおよび伝搬時間T
3uを計測する。そして、演算制御部55は、伝搬時間T
3dおよび伝搬時間T
3uから、第1伝搬時間差として、伝搬時間差ΔT
3(=T
3u−T
3d)を求める。
【0094】
次に、
図5に示すように、演算制御部55は、2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2流体伝搬経路について、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aから送信された超音波が伝搬する時間と、第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aから送信された超音波が伝搬する時間との差である第2伝搬時間差を計測する(S203)。
【0095】
具体的には、まず、演算制御部55は、切替部51に制御信号を出力し、例えば、第1超音波センサ20Aを送信回路部52に接続させるとともに、第2超音波センサ30Aを受信回路部53に接続させる。そして、演算制御部55は、送信回路部52に制御信号を出力して第1超音波センサ20Aから超音波を送信させるとともに、計時部54にスタート信号を出力する。次に、演算制御部55は、受信回路部53から入力される受信信号に基づいて、計時部54にストップ信号を出力し、第2流体伝搬経路を超音波が上流側から下流側に伝搬する伝搬時間を計測する。
【0096】
次に、演算制御部55は、切替部51に制御信号を出力し、例えば、第2超音波センサ30Aを送信回路部52に接続させるとともに、第1超音波センサ20Aを受信回路部53に接続させる。そして、演算制御部55は、送信回路部52に制御信号を出力して第2超音波センサ30Aから超音波を送信させるとともに、計時部54にスタート信号を出力する。次に、演算制御部55は、受信回路部53から入力される受信信号に基づいて、計時部54にストップ信号を出力し、第2流体伝搬経路を超音波が下流側から上流側に伝搬する伝搬時間を計測する。
【0097】
次に、演算制御部55は、第2流体伝搬経路を上流側から下流側に伝搬する伝搬時間と、第2流体伝搬経路を下流側から上流側に伝搬する伝搬時間とから、第2伝搬時間差を求める。
【0098】
図7は、第2流体伝搬経路の第2伝搬時間差の計測の一例を説明するための側方断面図である。
図7に示すように、第2流体伝搬経路は、例えばm=1、すなわち、配管Aの内部を径方向に1回横断する(横切る)経路である。この場合、演算制御部55は、
図7において矢印で示す伝搬時間T
1dおよび伝搬時間T
1uを計測する。そして、演算制御部55は、伝搬時間T
1dおよび伝搬時間T
1uから、第2伝搬時間差として、伝搬時間差ΔT
1(=T
1u−T
1d)を求める。
【0099】
次に、
図5に示すように、演算制御部55は、S202で計測した第1伝搬時間差とS203で計測した第2伝搬時間差との差を算出する(S204)。
【0100】
ここで、S204で算出する差は、配管Aの内部を径方向に2(n−m)回(m≠n)、すなわち、偶数回横断する経路について、超音波が下流側から上流側に伝搬する時間と超音波が上流側から下流側に伝搬する時間との時間差に相当する。
【0101】
図8は、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差との差の算出の一例を説明するための側方断面図である。例えば、
図6に示したように、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に3回横断する(横切る)経路であり、
図7に示したように、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に1回横断する(横切る)経路である場合、第1流体伝搬経路と第2流体伝搬経路との差分の経路は、
図8において配管Aの内部に実線で示すように、配管Aの内部を径方向に2回横断する(横切る)経路となる。
【0102】
この配管Aの内部を径方向に2回横断する(横切る)経路を、二つに分けて考える。最初に、
図8における配管Aの下側の内壁で反射し、配管Aの内部を流れる流体を配管Aの経方向に下から上方向へ横断する経路について、配管Aの上流側(
図8において左側)に設置された第1超音波センサ20Aから送信された超音波が伝搬する伝搬時間T
21dは、流体が配管Aの軸に対して角度εを有して流れている場合に、以下の式(21)で表される。
T
21d=L/{C+Vcos(θ−ε)} …(21)
【0103】
一方、同じ経路について、配管Aの下流側(
図8において左側)に設置された第2超音波センサ30Aから送信された超音波が伝搬する伝搬時間T
21uは、以下の式(22)で表される。
T
21u=L/{C−Vcos(θ−ε)} …(22)
【0104】
式(21)および式(22)から、伝搬時間T
21uと伝搬時間T
21dの伝搬時間差ΔT
21(=T
21u−T
21d)は、以下の式(23)で表される。
ΔT
21=2LVcos(θ−ε)/{C
2―V
2cos(θ−ε)
2} …(23)
【0105】
ここで、前述した式(3)および式(13)の場合と同様に、式(23)の分母において、値V
2cos(θ−ε)
2は、音速Cの二乗と比較して極めて小さいので、これを省略しても構わないと考えられる。そうすると、伝搬時間差ΔT
21は、以下の式(24)として表すことができる。
ΔT
21=2LVcos(θ−ε)/C
2 …(24)
【0106】
次に、
図8における配管Aの上側の内壁で反射し、配管Aの内部を流れる流体を配管Aの経方向に上から下方向へ横断する経路において、配管Aの上流側(
図8において左側)に設置された第1超音波センサ20Aから送信された超音波が伝搬する伝搬時間T
22dは、流体が配管Aの軸に対して角度εを有して流れている場合に、以下の式(25)で表される。
T
22d=L/{C+Vcos(θ+ε)} …(25)
【0107】
一方、同じ経路において、配管Aの下流側(
図8において左側)に設置された第2超音波センサ30Aから送信された超音波が伝搬する伝搬時間T
22uは、以下の式(26)で表される。
T
22u=L/{C−Vcos(θ+ε)} …(26)
【0108】
式(25)および式(26)から、伝搬時間T
22uと伝搬時間T
22dの伝搬時間差ΔT
22(=T
22u−T
22d)は、以下の式(27)で表される。
ΔT
22=2LVcos(θ+ε)/{C
2―V
2cos(θ+ε)
2} …(27)
【0109】
ここで、前述した式(23)の場合と同様に、式(27)の分母において、値V
2cos(θ+ε)
2は、音速Cの二乗と比較して極めて小さいので、これを省略しても構わないと考えられる。そうすると、伝搬時間差ΔT
22は、以下の式(28)として表すことができる。
Δt
22=2LVcos(θ+ε)/C
2 …(28)
【0110】
ここで、S202において計測した第1伝搬時間差が、
図6を用いて説明したように伝搬時間差ΔT
3であり、S203において計測した第2伝搬時間差が、
図7を用いて説明したように伝搬時間差ΔT
1である場合、伝搬時間差ΔT
3と伝搬時間差ΔT
3との差である伝搬時間差ΔT
2(=ΔT
3−ΔT
1)は、伝搬時間差ΔT
21と伝搬時間差ΔT
22との合計であるから、式(24)と式(28)とを加算し、三角関数の加法定理を用いて以下の式(29)で表される。
ΔT
2=2LV(cosθcosε+sinθsinε+cosθcosε−sinθsinε)/C
2=4LVcosθcosε/C
2 …(29)
【0111】
また、配管Aの軸に対して角度εを有する流体の流速Vにおいて、配管Aの軸に平行な成分はVcosεで表されるので、式(29)から、流体の流速Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεは、以下の式(30)で表される。
Vcosε=C
2・ΔT
2/4Lcosθ …(30)
【0112】
式(30)には、前述した式(15)とは異なり、角度εを含む項が存在しない。そして、式(30)において、音速C、伝搬経路長L、および角度θは、流体の速度の測定前に既知の値であるので、式(30)から、伝搬時間差ΔT
2に基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出することができる。
【0113】
よって、
図5に示すように、演算制御部55は、メモリなどに記憶された音速C、伝搬経路長L、および角度θを読み出し、S204において算出した差、例えば伝搬時間差ΔT
2と、式(30)とから、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出する(S205)。
【0114】
また、配管Aの内部を流れる流体の流量Q[m
3/s]は、補正係数Kおよび配管Aの断面積S[m
2]と、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosε[m/s]と、を用いて以下の式(31)で表される。
Q=KSVcosε …(31)
【0115】
よって、演算制御部55は、メモリなどに記憶された補正係数Kおよび断面積Sを読み出し、S205において算出した流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεと、式(31)とから、配管Aの内部を流れる流体の流量Qを算出し(S206)、流体速度測定処理S200を終了する。
【0116】
なお、
図6ないし
図8では、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に3回横断する(横切る)経路であり、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に1回横断する(横切る)経路である例を示したが、これに限定されない。
【0117】
図9は、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差との差の算出の他の例を説明するための側方断面図である。
図9に示す例は、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に5回横断する(横切る)経路であり、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に3回横断する(横切る)経路である。この場合、第1流体伝搬経路と第2流体伝搬経路との差分の経路は、
図9において配管Aの内部に実線で示すように、
図8に示した場合と同様に、配管Aの内部を径方向に2回横断する(横切る)経路となる。
【0118】
よって、演算制御部55は、前述した
図6ないし
図8の例の場合と同様に、S204において算出した時間差、例えば伝搬時間差ΔT
2と、式(30)とから、S205において流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出することができる。
【0119】
図10は、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差との差の算出のさらに他の例を説明するための側方断面図である。
図10に示す例は、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に7回横断する(横切る)経路であり、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に5回横断する(横切る)経路である。この場合、第1流体伝搬経路と第2流体伝搬経路との差分の経路は、
図10において配管Aの内部に実線で示すように、
図8および
図9に示した場合と同様に、配管Aの内部を径方向に2回横断する(横切る)経路となる。
【0120】
よって、演算制御部55は、前述した
図6ないし
図8および
図9の例の場合と同様に、S204において算出した差、例えば伝搬時間差ΔT
2と、式(30)とから、S205において流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出することができる。
【0121】
また、
図8ないし
図10の例では、第1流体伝搬経路と第2流体伝搬経路との差分の経路が配管Aの内部を径方向に2回横断する(横切る)経路である場合を示したがこれに限定されない。第1流体伝搬経路と第2流体伝搬経路との差分の経路は、配管Aの内部を径方向に2(n−m)回(m≠n)、すなわち、任意の偶数回横断する(横切る)経路である。
【0122】
ここで、前述した配管Aの内部を径方向に2回横断する(横切る)経路の例を、配管Aの内部を径方向に2(n−m)回(m≠n)、すなわち、任意の偶数回横断する(横切る)経路にまで拡張または一般化して説明する。
【0123】
配管Aの内部を径方向に2n−1回横断する(横切る)経路について、配管Aの上流側に設置された第1超音波センサ20Aから送信された超音波が伝搬する伝搬時間T
2ndは、流体が配管Aの軸に対して角度εを有して流れている場合に、前述した式(25)で表される伝搬時間T
22dのn回分と、前述した式(21)で表される伝搬時間T
21dのn−1回分との和であるから、以下の式(41)で表される。
T
2nd=nL/{C+Vcos(θ+ε)}+(n−1)L/{C+Vcos(θ−ε)} …(41)
一方、同じ経路について、配管Aの下流側に設置された第2超音波センサ30Aから送信された超音波が伝搬する伝搬時間T
2nuは、前述した式(26)で表される伝搬時間T
22uのn回分と、前述した式(22)で表される伝搬時間T
21uのn−1回分との和であるから、以下の式(42)で表される。
T
2nu=nL/{C−Vcos(θ+ε)}+(n−1)L/{C−Vcos(θ−ε)} …(42)
【0124】
式(41)および式(42)から、伝搬時間T
2nuと伝搬時間T
2ndの伝搬時間差ΔT
2n(=T
2nu−T
2nd)は、以下の式(43)で表される。
ΔT
2n=2nLVcos(θ+ε)/{C
2―V
2cos(θ+ε)
2}+2(n―1)LVcos(θ−ε)/{C
2―V
2cos(θ−ε)
2} …(43)
【0125】
ここで、前述した式(27)の場合と同様に、式(43)の第1項の分母において、値V
2cos(θ+ε)
2は、音速Cの二乗と比較して極めて小さいので、これを省略しても構わないと考えられる。また、前述した式(23)の場合と同様に、式(43)の第2項の分母において、値V
2cos(θ−ε)
2は、音速Cの二乗と比較して極めて小さいので、これを省略しても構わないと考えられる。そうすると、伝搬時間差ΔT
2nは、以下の式(44)として表すことができる。
ΔT
2n=2LV{n・cos(θ+ε)+(n−1)cos(θ−ε)}/C
2 …(44)
【0126】
次に、配管Aの内部を径方向に2m−1回横断する(横切る)経路について、配管Aの内部を径方向に2n−1回横断する(横切る)経路と同様であるため詳細な説明を省略するが、配管Aの上流側に設置された第1超音波センサ20Aから送信された超音波が伝搬する伝搬時間T
2mdと配管Aの下流側に設置された第2超音波センサ30Aから送信された超音波が伝搬する伝搬時間T
2muの伝搬時間差ΔT
2m(=T
2mu−T
2md)は、以下の式(45)で表される。
ΔT
2m=2LV{m・cos(θ+ε)+(m−1)cos(θ−ε)}/C
2 …(45)
【0127】
伝搬時間差ΔT
2nと伝搬時間差ΔT
2mとの差である伝搬時間差ΔT
2(n-m)(=ΔT
2n−ΔT
2m)は、式(44)および式(45)と三角関数の加法定理を用いて、以下の式(46)で表される。
ΔT
2(n-m)=2LV(n−m){cos(θ+ε)+sin(θ−ε)]/C
2=4LV(n−m)cosθcosε/C
2 …(46)
【0128】
配管Aの軸に対して角度εを有する流体の流速Vにおいて、配管Aの軸に平行な成分はVcosεで表されるので、式(46)から、流体の流速Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεは、以下の式(47)で表される。
Vcosε=C
2・ΔT
2(n-m)/4L(n−m)cosθ …(47)
【0129】
前述した式(30)と同様に、式(47)には、角度εを含む項が存在しない。そして、式(47)において、音速C、伝搬経路長L、角度θ、および(n−m)の値は、流体の速度の測定前に既知の値であるので、式(47)から、伝搬時間差ΔT
2(n-m)に基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出することができる。
【0130】
よって、演算制御部55は、
図5に示すS205において、メモリなどに記憶された音速C、伝搬経路長L、および角度θを読み出し、S204において算出した差、すなわち、伝搬時間差ΔT
2(n-m)と、式(47)とから、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出する(S205)。
【0131】
このように、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差との時間差から、配管Aの内部を径方向に2(n−m)回、すなわち、偶数回横断する流体伝搬経路ついて、超音波が下流側から上流側に伝搬する時間と超音波が上流側から下流側に伝搬する時間との伝搬時間差を求めることが可能である。そして、式(47)に示したように、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεは、流体の速度Vの測定前に既知の値と、配管Aの内部を径方向に偶数回横断するときの伝搬時間差、例えば伝搬時間差ΔT
2(n-m)と、を用いて表される。よって、本体部50の演算制御部55は、流体の流れが配管Aの軸に対して角度εを有し、流体の速度Vが配管Aの軸に垂直な成分を含む場合でも、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差とに基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを、正確に算出することができる。
【0132】
また、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差とに基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分が算出されるので、流体の速度Vにおける配管Aの軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。
【0133】
次に、超音波流量計100の第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30の配置について説明する。
【0134】
図11は、
図1に示した第1超音波センサ20Aが送信する超音波の角度を説明する拡大断面図である。
図11に示すように、第1超音波センサ20Aの超音波送受信器22から発せられた超音波は、入射角θ
Aで配管Aの外周面(外壁)に入射する。屈折角θ
Bは、前述しようにスネルの法則により定められる。例えば、入射角θ
Aが45度であり、配管Aの材料がステンレス鋼(SUS)である場合、屈折角θ
Bは65°程度になる。また、配管Aを伝搬する超音波は、屈折角θ
Bに基づく入射角(90°−θ
B)で配管Aの内壁に入射する。屈折角θ
cも、前述しようにスネルの法則により定められる。例えば、前述した例で、配管Aの内部を流れる流体が液体、例えば水である場合、屈折角θ
Cは16°程度になる。この場合、前述した角度θは、74°程度である。また、前述した例で、配管Aの内部を流れる流体が気体、例えば空気である場合、屈折角θ
Cは5°程度になる。この場合、前述した角度θは、85°程度である。
【0135】
このように、流体を伝搬する超音波の角度θは比較的大きく、第1超音波センサ20Aから送信された超音波は、配管Aの内部の流体を垂直に近い角度θで伝搬する。特に、配管Aの内部を流れる流体が気体である場合、流体が液体である場合と比較して、音速Cが遅くなるため、角度θは大きくなる傾向にある。また、くさび21と配管Aの外壁との界面および配管Aの内壁と配管Aの内部の流体との界面において、超音波の入射角が臨界角を越えないようにしようとすると、入射角θ
Aは選択し得る範囲が狭くなり、超音波の角度θは選択の余地が少ないさらに、前述した例では、ステンレス鋼(SUS)製の配管Aの場合を示したが、配管Aが、他の部材、例えば、樹脂製であっても、同様に、超音波の角度θは比較的大きくなる傾向は変わらない。
【0136】
なお、
図11では、第1超音波センサ20Aが送信する超音波の例を示したが、第2超音波センサ30Aが送信する超音波も同様である。よって、前述した第1超音波センサ20Aが送信する超音波の説明をもって、第2超音波センサ30Aが送信する超音波の説明を省略する。
【0137】
図12は
図1に示した第1超音波センサ20Aから送信された超音波を第2超音波センサ30Aが受信する様子を説明する側方断面図であり、
図13は
図1に示した第2超音波センサ30Aから送信された超音波を第1超音波センサ20Aが受信する様子を説明する側方断面図である。
図12に示すように、第1超音波センサ20Aから超音波送受信器22の寸法(縦横の長さ)で送信された超音波は、流体の速度Vが0(ゼロ)[m/s]であるときに、
図12において配管Aの内部に実線で示す経路で、配管Aの内部の流体を伝搬する。第2超音波センサ30Aは当該超音波の全てを受信するように配置され、第2超音波センサ30Aの超音波送受信器22は寸法(縦横の長さ)が決められる。同様に、
図13に示すように、第2超音波センサ30Aから超音波送受信器22の寸法(縦横の長さ)で送信された超音波は、流体の速度Vが0(ゼロ)[m/s]であるときに、
図13において配管Aの内部に実線で示す経路で、配管Aの内部の流体を伝搬する。第1超音波センサ20Aは当該超音波の全てを受信するように配置され、第1超音波センサ20Aの超音波送受信器22は寸法(縦横の長さ)が決められる。
【0138】
一方、流体の速度Vが0(ゼロ)[m/s]でない場合、配管Aの内部の流体を伝搬する超音波は、流体の速度Vの影響を受けて下流側(
図12および
図13において右側)に流される。すなわち、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aから送信された超音波は、
図12および
図13において配管Aの内部に破線で示す経路で、配管Aの内部の流体を伝搬する。よって、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aは、この場合も考慮して、超音波流量計100が測定可能な流体の速度Vの最大値、例えば30[m/s]のときに、超音波送受信器22の寸法(縦横の長さ)で送信された超音波のうちの所定の割合、例えば50%の超音波を受信するように、くさび21の寸法、特に、配管Aの軸方向の長さを決定する。
【0139】
このように、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aの配置および寸法を決定することで、例えば、配管Aの口径(サイズ)が、例えば50Aや150Aの場合であっても、超音波流量計100は、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aを配管Aの外周に設置することができる。
【0140】
なお、
図12および
図13では、説明の簡略化のため、流体は、配管Aの軸に対して平行な方向に沿って速度Vで流れており、超音波が配管Aの内部を径方向に1回横断する(横切る)経路の例を示した。しかしながら、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aから送信された超音波は、前述したように、配管Aの内部を径方向に2n−1回横断する第1流体伝搬経路と、配管Aの内部を径方向に2m−1回横断する第2流体伝搬経路と、を伝搬する。よって、実際には、第1流体伝搬経路および第2流体伝搬経路を考慮して、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aの配置と、超音波送受信器22およびくさび21の寸法とが決定される。また、流体が配管Aの軸に対して角度εを有して流れている場合、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεに基づいて、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aの配置と、超音波送受信器22およびくさび21の寸法とが決定される。
【0141】
図14および
図15は、仮想的な超音波流量計における第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aの配置を説明する側方断面図である。なお、仮想的な超音波流量計は、超音波流量計100の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aと同一構成の第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aを備え、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aとの配置が異なる以外は、超音波流量計100と同様である。
図14および
図15に示すように、仮想的な超音波流量計では、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aは、配管Aの一方側(
図14および
図15における上側)において、同一直線上に配置される。
【0142】
前述したように、流体を伝搬する超音波の角度θは比較的大きいため、流体の速度Vが0(ゼロ)[m/s]である場合、超音波がx軸方向に沿って進む(移動する)距離は非常に短い。よって、仮想的な超音波流量計において、
図12および
図13の場合と同様に、流体の速度Vが0(ゼロ)[m/s]であるときに、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aが、超音波送受信器22の寸法(縦横の長さ)で送信される超音波の全てを受信するように配置すると、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aを近接して配置する必要がある。
【0143】
ここで、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aから送信された超音波は、配管Aの内部の流体を伝搬する流体伝搬波と、配管Aの管壁で反射して配管Aを伝搬する配管伝搬波とに分けられる。流体伝搬波は検出すべき信号(信号成分)であるのに対し、配管伝搬波は信号に対するノイズ(ノイズ成分)である。
図14および
図15に示すように、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aを近接して配置すると、ノイズ成分である配管伝搬波を受信し易くなり、流体伝搬波と配管伝搬波との識別が困難になる。
【0144】
また、仮想的な超音波流量計において、
図12および
図13の場合と同様に、測定可能な流体の速度Vの最大値、例えば30[m/s]のときに、超音波送受信器22の寸法(縦横の長さ)で送信された超音波のうちの50%の超音波を受信するように、くさび21の寸法(配管Aの軸方向の長さ)を決定すると、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aが互いに干渉して設置の障害(妨げ)となる。
【0145】
そのため、
図14および
図15に示す仮想的な超音波流量計では、測定可能な流体の速度Vの最大値を、例えば20[m/s]未満に制限し、くさび21の寸法(配管Aの軸方向の長さ)を小さくする必要がある。
【0146】
これに対し、超音波流量計100は、
図12および
図13に示したように、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aが、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置される。これにより、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aの寸法(配管Aの軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。
【0147】
また、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aを、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置することにより、
図14および
図15に示した仮想的な超音波流量のように、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aを配管Aの同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。
【0148】
本実施形態では、第1伝搬経路が第2伝搬経路より長い場合(n>m)を示したが、これに限定されない。第1伝搬経路と第2伝搬経路とが等しい場合(n=m)でなければよく、第2伝搬経路が第1伝搬経路より長い場合(m>n)であってもよい。この場合、演算制御部55は、S204において第2伝搬時間差と第1伝搬時間差との差を算出し、S205において、この差と式(47)とから、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出する。
【0149】
このように、本実施形態における超音波流量計100によれば、第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30が、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置され、本体部50の演算制御部55が、配管Aの内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1流体伝搬経路を、第2超音波送受信部30から送信された超音波が伝搬する時間と第1超音波送受信部20から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1伝搬時間差と、配管Aの内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2流体伝搬経路を、第2超音波送受信部30から送信された超音波が伝搬する時間と第1超音波送受信部20から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2伝搬時間差と、に基づいて、流体の速度における配管Aの軸に平行な成分を算出する。ここで、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差との時間差から、配管Aの内部を径方向に2(n−m)回、すなわち、偶数回横断する流体伝搬経路について、超音波が下流側から上流側に伝搬する時間と超音波が上流側から下流側に伝搬する時間との伝搬時間差を求めることが可能である。そして、式(47)に示すように、流体の速度における配管Aの軸に平行な成分Vcosεは、流体の速度Vの測定前に既知の値と、配管Aの内部を径方向に偶数回横断するときの伝搬時間差、例えば伝搬時間差ΔT
2(n-m)と、を用いて表される。よって、本体部50の演算制御部55は、流体の流れが配管Aの軸に対して角度εを有し、流体の速度Vが配管Aの軸に垂直な成分を含む場合でも、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差とに基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを、正確に算出することができる。したがって、超音波流量計100は、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεに基づいて、流体の流量Qを正確に測定することができる。
【0150】
また、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差とに基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分が算出されるので、流体の速度Vにおける配管Aの軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。したがって、超音波流量計100は、設置位置の制約(制限)を緩和することができ、例えば、屈曲した配管の直後に設置するなど、任意の場所に設置することができる。
【0151】
さらに、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aが、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置される。これにより、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aの寸法(配管Aの軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。したがって、超音波流量計100は、第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30の寸法(配管Aの軸方向の長さ)を大きくして測定可能な流速範囲を容易に拡げることができる。
【0152】
また、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aを、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置することにより、
図14および
図15に示す仮想的な超音波流量のように、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aを配管Aの同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。したがって、超音波流量計100は、SN比を向上させることができる。
【0153】
また、本実施形態における超音波流量計100によれば、第1超音波送受信部20が配管Aの外周に設置される第1超音波センサ20Aを備え、第2超音波送受信部30が配管Aの外周に設置される第2超音波センサ30Aを備える。これにより、超音波の送信および受信を行う第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30を、配管工事を行うことなく、配管Aに容易に設けることができる。
【0154】
また、本実施形態における超音波流量計100によれば、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に3回横断する経路であり、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に1回横断する経路である。これにより、伝搬時間差Δt
3と伝搬時間差Δt
1とに基づいて、配管Aの内部を径方向に2回横断する経路の伝搬時間差ΔT
2を容易に求めることができ、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出する本体部50を、容易に実現(構成)することができる。
【0155】
また、本実施形態における超音波流量計100によれば、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に5回横断する経路であり、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に3回横断する経路である。これにより、伝搬時間差Δt
5と伝搬時間差Δt
3とに基づいて、配管Aの内部を径方向に2回横断する経路の伝搬時間差ΔT
2を容易に求めることができ、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出する本体部50を、容易に実現(構成)することができる。
【0156】
また、本実施形態における超音波流量計100によれば、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に7回横断する経路であり、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に5回横断する経路である。これにより、伝搬時間差Δt
7と伝搬時間差Δt
5とに基づいて、配管Aの内部を径方向に2回横断する経路の伝搬時間差ΔT
2を容易に求めることができ、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出する本体部50を、容易に実現(構成)することができる。
【0157】
また、本実施形態における超音波流量計100が使用する流体速度測定方法によれば、配管Aの内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1流体伝搬経路を、第2超音波送受信部30から送信された超音波が伝搬する時間と第1超音波送受信部20から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1伝搬時間差と、配管Aの内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2流体伝搬経路を、第2超音波送受信部30から送信された超音波が伝搬する時間と第1超音波送受信部20から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2伝搬時間差と、に基づいて、流体の速度における配管Aの軸に平行な成分を算出するステップが含まれる。ここで、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差との時間差から、配管Aの内部を径方向に2(n−m)回、すなわち、偶数回横断する流体伝搬経路について、超音波が下流側から上流側に伝搬する時間と超音波が上流側から下流側に伝搬する時間との伝搬時間差を求めることが可能である。そして、式(47)に示すように、流体の速度における配管Aの軸に平行な成分Vcosεは、流体の速度Vの測定前に既知の値と、配管Aの内部を径方向に偶数回横断するときの伝搬時間差、例えば伝搬時間差ΔT
2(n-m)と、を用いて表される。よって、本体部50の演算制御部55は、流体の流れが配管Aの軸に対して角度εを有し、流体の速度Vが配管Aの軸に垂直な成分を含む場合でも、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差とに基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを、正確に算出することができる。したがって、超音波流量計100は、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεに基づいて、流体の流量Qを正確に測定することができる。
【0158】
また、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差とに基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分が算出されるので、流体の速度Vにおける配管Aの軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。したがって、超音波流量計100は、設置位置の制約(制限)を緩和することができ、例えば、屈曲した配管の直後に設置するなど、任意の場所に設置することができる。
【0159】
さらに、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aが、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置される。これにより、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aの寸法(配管Aの軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。したがって、超音波流量計100は、第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30の寸法(配管Aの軸方向の長さ)を大きくして測定可能な流速範囲を容易に拡げることができる。
【0160】
また、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aを、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置することにより、
図14および
図15に示す仮想的な超音波流量のように、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aを配管Aの同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。したがって、超音波流量計100は、SN比を向上させることができる。
【0161】
また、本実施形態における超音波流量計100が実行する流体速度測定プログラムによれば、流体速度測定処理S200が、配管Aの内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する第1流体伝搬経路を、第2超音波送受信部30から送信された超音波が伝搬する時間と第1超音波送受信部20から送信された超音波が伝搬する時間との差である第1伝搬時間差と、配管Aの内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する第2流体伝搬経路を、第2超音波送受信部30から送信された超音波が伝搬する時間と第1超音波送受信部20から送信された超音波が伝搬する時間との差である第2伝搬時間差と、に基づいて、流体の速度における配管Aの軸に平行な成分を算出するステップを含む。ここで、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差との時間差から、配管Aの内部を径方向に2(n−m)回、すなわち、偶数回横断する流体伝搬経路について、超音波が下流側から上流側に伝搬する時間と超音波が上流側から下流側に伝搬する時間との伝搬時間差を求めることが可能である。そして、式(47)に示すように、流体の速度における配管Aの軸に平行な成分Vcosεは、流体の速度Vの測定前に既知の値と、配管Aの内部を径方向に偶数回横断するときの伝搬時間差、例えば伝搬時間差ΔT
2(n-m)と、を用いて表される。よって、流体速度測定処理S200は、流体の流れが配管Aの軸に対して角度εを有し、流体の速度Vが配管Aの軸に垂直な成分を含む場合でも、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差とに基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを、正確に算出することができる。したがって、超音波流量計100は、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεに基づいて、流体の流量Qを正確に測定することができる。
【0162】
また、第1伝搬時間差と第2伝搬時間差とに基づいて、流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分が算出されるので、流体の速度Vにおける配管Aの軸に垂直な成分の影響を抑制するために、上流側に長い直管を配置する必要がない。したがって、超音波流量計100は、設置位置の制約(制限)を緩和することができ、例えば、屈曲した配管の直後に設置するなど、任意の場所に設置することができる。
【0163】
さらに、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aが、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置される。これにより、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aの寸法(配管Aの軸方向の長さ)が大きくなっても、互いに干渉して設置の障害(妨げ)とならない。したがって、超音波流量計100は、第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30の寸法(配管Aの軸方向の長さ)を大きくして測定可能な流速範囲を容易に拡げることができる。
【0164】
また、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aおよび第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aを、配管Aの内部を流れる流体を挟んで配置することにより、
図14および
図15に示す仮想的な超音波流量のように、第1超音波センサ120Aおよび第2超音波センサ130Aを配管Aの同一直線上に配置する場合と比較して、配管伝搬波を受信しにくくなる。したがって、超音波流量計100は、SN比を向上させることができる。
【0165】
<第2実施形態>
図16および
図17は、本発明に係る超音波流量計、流体速度測定方法および流体速度測定プログラム、および流体速度測定方法の第2実施形態を示すためのものである。なお、特に記載がない限り、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、前述した第1実施形態と類似する構成部分は類似の符号をもって表し、その詳細な説明を省略する。さらに、図示しない構成、動作、および配置は、前述した第1実施形態と同様とする。
【0166】
図16は、第2実施形態における超音波流量計100Aの概略構成を示す構成図である。
図16に示すように、超音波流量計100Aは、超音波流量計100と同様に、第1超音波送受信部20と、第2超音波送受信部30と、本体部50と、を備える。
【0167】
第1超音波送受信部20は、配管Aの外周に設置される第1超音波センサ20Aおよび第1超音波センサ20Bの2つを備える。また、第2超音波送受信部30は、配管Aの外周に設置される第2超音波センサ30Aおよび第2超音波センサ30Bの2つを備える。これにより、超音波の送信および受信を行う第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30を、配管工事を行うことなく、配管Aに容易に設けることができる。
【0168】
第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aは配管Aの所定の位置に設けられ、第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aは第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aに対して下流側(
図16における右側)の配管Aに設けられる。言い換えれば、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aは第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aに対して上流側(
図16における左側)の配管Aに設けられる。
【0169】
同様に、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Bは配管Aの所定の位置に設けられ、第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Bは第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Bに対して下流側(
図16における右側)の配管Aに設けられる。言い換えれば、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Bは第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Bに対して上流側(
図16における左側)の配管Aに設けられる。
【0170】
また、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Aと第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Aとは、配管Aの内部を流れる流体を間に挟み、対向して配置される。同様に、第1超音波送受信部20の第1超音波センサ20Bと第2超音波送受信部30の第2超音波センサ30Bとは、配管Aの内部を流れる流体を間に挟み、対向して配置される。
【0171】
本体部50の切替部51には、第1超音波センサ20A、第1超音波センサ20B、第2超音波センサ30A、および第2超音波センサ30Bの4つが接続される。切替部51は、演算制御部55から入力される制御信号に基づいて切替スイッチを切り替え、例えば、第1超音波センサ20A、第1超音波センサ20B、第2超音波センサ30A、および第2超音波センサ30Bのうちのいずれか一つを送信回路部52に接続させるとともに、当該一つから送信された超音波を受信可能なものを受信回路部53に接続させる。具体的には、例えば、第1超音波センサ20Aを送信回路部52に接続させたときには、第1超音波センサ20Aから送信された超音波を受信可能な第2超音波センサ30Aを受信回路部53に接続させる。
【0172】
図17は、第2実施形態における第1伝搬時間差と第2伝搬時間差との差の算出の一例を説明するための側方断面図である。なお、第1実施形態と同様に、
図17において、配管Aの軸に平行な方向をx軸(またはx軸方向)、x軸に垂直であって、配管Aの径に平行な方向をy軸(またはy軸方向)、x軸およびy軸に垂直な方向をz軸(またはz軸方向)とする。また、
図17において、流体の速度をV[m/s]、流体中を超音波が伝搬するときの速度(以下、音速という)をC[m/s]、流体を伝搬する超音波の伝搬経路長をL[m]とし、配管Aの内壁と超音波の伝搬経路とのなす角度をθとして説明する。
図17に示す例は、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に5回横断する(横切る)経路であり、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に3回横断する(横切る)経路である。この場合、
図9に示した場合と同様に、第1流体伝搬経路と第2流体伝搬経路との差分の経路は、
図17において配管Aの内部に実線で示すように、配管Aの内部を径方向に2回横断する(横切る)経路となる。
【0173】
一方、
図9に示した場合と異なり、
図17では、第1流体伝搬経路を第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aを用いて第1伝搬時間差を計測し、第2流体伝搬経路を第1超音波センサ20Bおよび第2超音波センサ30Bを用いて第2伝搬時間差を計測する。
【0174】
図17に示す場合であっても、演算制御部55は、第1実施形態と同様に、
図5に示したS204において算出した時間差、例えば伝搬時間差ΔT
2(n-m)と、式(47)とから、S205において流体の速度Vにおける配管Aの軸に平行な成分Vcosεを算出することができる。
【0175】
本実施形態では、
図17において、第1流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に5回横断する(横切る)経路であり、第2流体伝搬経路が配管Aの内部を径方向に3回横断する(横切る)経路である例を示したが、これに限定されない。第1実施形態と同様に、第1流体伝搬経路は配管Aの内部を径方向に2n−1回(nは正の整数)横断する(横切る)経路であればよく、第2流体伝搬経路は配管Aの内部を径方向に2m−1回(mはn以外の正の整数)横断する(横切る)経路であればよい。
【0176】
このように、本実施形態における超音波流量計100Aによれば、第1超音波送受信部20が配管Aの外周に設置される第1超音波センサ20Aおよび第1超音波センサ20Bの2つを備え、第2超音波送受信部30が配管Aの外周に設置される第2超音波センサ30Aおよび第2超音波センサ30Bの2つを備える。これにより、第1実施形態の超音波流量計100と同様の作用効果を得ることができるとともに、超音波の送信および受信を行う第1超音波送受信部20および第2超音波送受信部30を、配管工事を行うことなく、配管Aに容易に設けることができる。
【0177】
また、第1超音波送受信部20が2つの第1超音波センサ20Aおよび第1超音波センサ20Bを備え、第2超音波送受信部30が2つの第2超音波センサ30Aおよび第2超音波センサ30Bを備えるので、例えば、第1超音波センサ20Aおよび第2超音波センサ30Aを用いて第1伝搬時間差を計測し、第1超音波センサ20Bおよび第2超音波センサ30Bを用いて第2伝搬時間差を計測することが可能となる。
【0178】
また、本実施形態における超音波流量計100Aが使用する流体速度測定方法によれば、第1実施形態の超音波流量計100が使用する流体速度測定方法と同様の作用効果を得ることができる。
【0179】
また、本実施形態における超音波流量計100Aが実行する流体速度測定プログラムによれば、第1実施形態の超音波流量計100が実行する流体速度測定プログラムと同様の作用効果を得ることができる。
【0180】
なお、前述した各実施形態の構成は、組み合わせたり、あるいは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本発明の構成は前述した各実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。