【実施例】
【0013】
以下、本発明を適用したディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」と称する)について説明する。
図1は、実施例のエンジンの構成を示す図であって、低負荷時の状態を示す図である。
図2は、実施例のエンジンの構成を示す図であって、中負荷以上時の状態を示す図である。
図3は、実施例のエンジンの構成を示す図であって、コースト時の状態を示す図である。
【0014】
エンジン10は、ターボチャージャ20、吸気系30、排気系40、EGR装置50等を備えて構成されている。
エンジン10は、例えば乗用車等の自動車の走行用動力として用いられる4ストロークのコモンレール直噴ディーゼルエンジンである。
【0015】
ターボチャージャ20は、エンジン10の排ガスのエネルギを用いて、燃焼用空気(新気)を圧縮する過給機である。
ターボチャージャ20は、コンプレッサ21、タービン22を備えている。
コンプレッサ21は、新気を圧縮する遠心式圧縮機である。
タービン22は、排気エネルギを用いてコンプレッサ21を駆動する可変ノズルタービンである。
【0016】
吸気系30は、エンジン10に空気を導入するものであって、インテークダクト31、エアクリーナ32、インタークーラ33、スロットル34、インテークマニホールド35等を備えて構成されている。
インテークダクト31は、外部から導入した空気をエンジン10に導入する管路である。
エアクリーナ32は、インテークダクト31の上流側の端部に設けられ、外部から導入された空気を濾過し、ダスト等を除去するものである。エアクリーナ32を出た空気は、ターボチャージャ20のコンプレッサ21に導入され、ここで圧縮される。
インタークーラ33は、ターボチャージャ20のコンプレッサ21を出た空気を、走行風との熱交換によって冷却するものである。
スロットル34は、インタークーラ33の下流側に設けられ、運転状態により吸入空気量を絞るものである。
インテークマニホールド35は、スロットル34から出た空気を、エンジン10の各気筒の吸気ポートに分配する分岐管である。
【0017】
排気系40は、エンジン10から出た排ガス(既燃ガス)を後処理して外部へ排出するものである。
排気系40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)43、排気絞りバルブ44、マフラ45等を有して構成されている。
エキゾーストマニホールド41は、エンジン10の各気筒の排気ポートから出た排ガスを集合させ、ターボチャージャ20のタービン22に導入するものである。
エキゾーストパイプ42は、タービン22から出た排ガスを外部に排出する管路である。
DPF43は、エキゾーストパイプ42の中間部に設けられ、排ガス中のスート(煤)等の粒子状物質を捕集するものである。
排気絞りバルブ44は、エキゾーストパイプ42におけるDPF43の下流側に設けられ、運転状態等に応じて排気を絞るものである。
マフラ45は、排ガスの音響エネルギを低減する消音器である。
【0018】
EGR装置50は、排気系40から排ガスの一部を抽出し、これをEGRガスとしてインテークダクト31におけるコンプレッサ21の上流側に導入するものである。
EGR装置50は、第1EGRライン51、第2EGRライン52、EGR導入ライン53、EGRクーラ54、EGRバルブ55、切替弁56〜58等を有して構成されている。
第1EGRライン51は、エキゾーストパイプ42におけるタービン22の下流側でありかつDPF43の上流側の領域と連通し、排ガスを抽出するEGR流路である。
第2EGRライン52は、エキゾーストパイプ42におけるDPF43の下流側でありかつ排気絞りバルブ44の上流側の領域と連通し、排ガスを抽出するEGR流路である。
第1EGRライン51及び第2EGRライン52は、下流側の端部において集合してEGR導入ライン53に接続され、これらは相互に連通している。
【0019】
EGR導入ライン53は、第1EGRライン51、第2EGRライン52から導入された排ガスを、インテークダクト31内に導入するEGR流路である。
EGRクーラ54は、EGR導入ライン53の途中に設けられ、通過する排ガスを冷却水等との熱交換によって冷却するものである。
EGRバルブ55は、EGR導入ライン53におけるEGRクーラ54の下流側に設けられ、インテークダクト31内に導入される排ガス量(EGRガス量)を調節するものである。
【0020】
切替弁56は、第1EGRライン51の途中に設けられた開閉弁である。
切替弁57は、第2EGRライン52の途中に設けられた開閉弁である。
切替弁58は、EGR導入ライン53の途中に設けられた開閉弁である。
上述したEGRバルブ55及び切替弁56〜58は、図示しないエンジン制御ユニットによって、エンジン10の運転状態に応じて開閉及び開度が切り替えられる。
【0021】
以下、上述したEGR装置50の動作について説明する。
図1に示す低負荷時においては、切替バルブ56を閉じるとともに、切替バルブ57,58を開くことによって、DPF43の下流側から、第2EGRライン52により抽出された排ガスをEGRするLP−EGRを行なう。
このようなLP−EGRにおいては、エンジン10から出た排ガスの全量が直接DPF43を通過するため、排ガスの温度が低い低負荷時であっても、DPF43の温度低下を防止し、多量の燃料を消費するDPF再生モードが実行される頻度を低減し、燃費を向上することができる。
【0022】
図2に示す中負荷〜高負荷時においては、切替バルブ56,58を開くとともに、切替バルブ57を閉じることによって、DPF43の上流側から、第1EGRライン51により抽出された排ガスをEGRするMP−EGRを行なう。このようなLP−EGRからMP−EGRへの切替は、エンジン10の負荷状態が、LP−EGRを行なう所定の低負荷状態よりも高負荷である所定の高負荷状態となった場合に行われる。また、その後エンジン10の負荷状態が低負荷状態に戻った場合には、MP−EGRからLP−EGRへの切替が行なわれる。
図4は、排気系の各部位における排ガス圧力の推移を模式的に示すグラフである。
図4に示すように、排ガス圧力は、エンジン10のポート直下から、タービン22、DPF43を順次通過する際に逐次低下する。このため、LP−EGRにおいては、排ガス圧力が下がったところから排ガスを抽出するため、新気側との圧力差が小さく、多量のEGRガスが必要となる中負荷、高負荷領域では、燃費悪化を伴う排気絞り等を行なわなければ必要なEGRガス量を確保することが困難である。
【0023】
MP−EGRにおいては、LP−EGRよりも圧力が高いDPF43の上流側から排ガスを抽出することによって、排気絞りバルブ44の絞り量を大きくしなくてもEGRガス量を増加させることが可能となり、ポンピングロス増加による燃費悪化を防止することができる。
また、過給前の低圧場にEGRガスを導入することによって、大量のEGRガスを吸気系20に導入することができる。
さらに、EGRガスがEGRクーラ54及びインタークーラ33で2段冷却されることによって、エンジン10に導入されるEGRガスの温度を低下させることができる。
【0024】
図3に示すコースト(惰行)時においては、切替バルブ56,57を開くとともに、切替バルブ58を閉じ、排気絞りバルブ44を絞ることによって、DPF43の下流側から出た排ガスをDPF43の上流側に導入し、高温の排ガスをループさせる。
これによって、燃料の噴射カットが実行されDPF43の温度が低下しやすいコースト時に、DPF43を高温に維持し、DPF再生モードが実行される頻度を低減して燃費悪化を防止することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、燃費を悪化させることなくEGRガス量を増加させることが可能なディーゼルエンジンを提供することができる。
【0025】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、ディーゼルエンジン及びその補機類の構成や配置は、上述した実施例に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、排気系は、実施例で示した構成以外に、酸化触媒や選択還元触媒等を備える構成としてもよい。