(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、両面をクレープ紙で包まれると共に前記表面シートと前記裏面シートとの間に介装される吸収体とを備えたペット用吸収性シートにおいて、
シート体である前記表面シート側の前記クレープ紙に形成された水溶性被膜と、
この水溶性被膜上に濡れることで機能を発揮する機能性インクで形成されたpH判別部と
を備えたことを特徴とするペット用吸収性シート。
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、両面をクレープ紙で包まれると共に前記表面シートと前記裏面シートとの間に介装される吸収体とを備えたペット用吸収性シートにおいて、
シート体である前記表面シートに形成された水溶性被膜と、
この水溶性被膜上に濡れることで機能を発揮する機能性インクで形成されたpH判別部と
を備えたことを特徴とするペット用吸収性シート。
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、両面をクレープ紙で包まれると共に前記表面シートと前記裏面シートとの間に介装される吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される液移送シートとを備えたペット用吸収性シートにおいて
シート体である前記液移送シートに形成された水溶性被膜と、
この水溶性被膜上に濡れることで機能を発揮する機能性インクで形成されたpH判別部と
を備えたことを特徴とするペット用吸収性シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、pH判別部が形成されるシート体のpHは様々であるため、pH判別部は、直接接触している当該シート体のpHの影響を受けて、形成初期の色が変色したり、想定どおりに変色が生じなかったりする場合があった。
このため、シート体のpHに合わせてpHインク内にpH調整剤を添加して形成初期の色を調整したり、シート体自体のpHを所望のpHに調整したりすることにより形成初期の色を調整する等の方法が存在するものの、いずれ方法であってもシート体のpHを常に考慮する必要性があり、煩雑であり実用的ではないと言った問題点があった。
【0008】
本発明の課題は、シート体のpHの影響を受けることなく、形成後もpH判別部の色を所望の色にできるペット用吸収性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、両面をクレープ紙で包まれると共に表面シートと裏面シートとの間に介装される吸収体とを備えたペット用吸収性シートにおいて、
シート体である表面シート側のクレープ紙に形成された水溶性被膜と、この水溶性被膜上に濡れることで機能を発揮する機能性インクで形成されたpH判別部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、両面をクレープ紙で包まれると共に表面シートと裏面シートとの間に介装される吸収体とを備えたペット用吸収性シートにおいて、
シート体である表面シートに形成された水溶性被膜と、この水溶性被膜上に濡れることで機能を発揮する機能性インクで形成されたpH判別部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、両面をクレープ紙で包まれると共に表面シートと裏面シートとの間に介装される吸収体と、表面シートと吸収体との間に配置される液移送シートとを備えたペット用吸収性シートにおいて
シート体である液移送シートに形成された水溶性被膜と、この水溶性被膜上に濡れることで機能を発揮する機能性インクで形成されたpH判別部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のペット用吸収性シートにおいて、水溶性被膜とpH判別部が同一形状であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のペット用吸収性シートにおいて、水溶性被膜が、シート体の全表面に形成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のペット用吸収性シートにおいて、水溶性被膜の面積がpH判別部の面積よりも大きく、且つ、pH判別部が水溶性被膜の上に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、機能性インクで形成されたpH判別部とシート体との間に、尿によって溶解する水溶性被膜を形成することにより、機能性インクが直接シート体に触れることがないので、シート体のpHの影響を受けることなく、形成後も機能性インクの色を所望の色にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態であるペット用吸収性シートを詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態のペット用吸収性シートについて、
図1及び
図2に基づいて説明する。
【0019】
ペット用吸収性シート100、
図1に示すように、略長方形の形状となっており、例えば、ペット用トイレの床面に敷いて使用され、ペットにより排泄された排泄物の水分を表面からシート内に吸収する。また、ペット用吸収性シート100にはpHインクでpH判別部1が形成されている。
【0020】
ペット用吸収性シート100は、尿等の液体を速やかに透過させる透液性の表面シート、表面シートの裏面側に配置される不透液性の裏面シート、これら表面シートと裏面シートとの間に介装される吸収体等を備えて構成されている。
【0021】
表面シートは、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシート等により形成されている。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。また、不織布を製造する方法としては、公知の方法を適宜用いることができ、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、又はこれらを組み合わせた方法が挙げられる。
表面シートに多数の透孔を形成した場合には、尿等の液体がより速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0022】
裏面シートは、不透液性の素材であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シート等を用いることができる。また、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくしたり、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤を塗布したりして、プラスチックフィルムを用いずに不透液性としたシートを裏面シートとして用いることができる。
【0023】
ペット用吸収性シート100の周縁において、表面シートと裏面シートとは、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シール等により貼り合わされている。
【0024】
吸収体は、尿等の水様成分を吸収するものであり、例えば、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。また、繊維集合体に、高吸水性樹脂(SAP;Super Absorbent Polymer)を組み合わせて吸収体を構成することもできる。
【0025】
高吸水性樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの、又はイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。
さらに、消臭機能を持たせるため、吸収体に消臭剤を入れてもよい。消臭剤としては、例えば、活性炭や天然鉱物(例えば、ベンナイト、カオリナイト、カネマイト等)、合成無機物(ゼオライト、アモルファスシリカ等)を用いることができる。
【0026】
図2に示すように、パルプとポリマーを含む吸収体2の上面及び下面は、クレープ紙3及び4で包まれており、表面シート7側のクレープ紙3上に尿によって溶解する水溶性被膜5が形成され、当該水溶性被膜5の上にpHインクでpH判別部6が形成される。
また、
図2において、水溶性被膜5とpHインクで形成されるpH判別部6とを同一形状(例えば、
図1中のpH判別部1のような形状)にする。
【0027】
ここで、ペットの排尿時における尿のpHを判別する過程を説明する。ペット用吸収性シートにペットが排尿すると、排泄された尿は表面シート7及びクレープ紙3を透過して吸収体2で吸収される。
この時、クレープ紙3上に形成された水溶性被膜5は、浸透してきた尿によって溶解して、pHインクは、浸透してきた尿やクレープ紙3と接触して、排泄された尿のpHに応じて変色することになる。
【0028】
一方、ペット用吸収性シートの製造時からペットの排尿時までの間では、pHインクは、水溶性被膜5を介してクレープ紙3に接しているため、クレープ紙3のpHの影響を受けることがない。
特に、pH判別部6は吸収体2の外包体であるクレープ紙3にpHインクで形成するのが最も好適である。
【0029】
pHインクで形成されたpH判別部6とシート体であるクレープ紙3との間に、尿によって溶解する水溶性被膜5を形成することにより、pHインクが直接クレープ紙3に触れることがないので、シート体であるクレープ紙3のpHの影響を受けることなく、形成後もpHインクの色を所望の色にすることができる。
【0030】
また、
図2に示すように、水溶性被膜5とpHインクで形成されるpH判別部6とを同一形状(例えば、
図1中のpH判別部1のような形状)とすることにより、水溶性被膜を形成する面積を最小限に抑えることが可能になる。
【0031】
(実施例)
以下に、これまで説明した第1実施形態のペット用吸収性シートの効果を、水溶性被膜及びpHインクの成分比率、並びに、印刷条件の実施例を用いて説明する。
水溶性被膜は、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)樹脂(或いは、澱粉)…5%、メタノール…47.5%、及び、水…47.5%の成分比率のインク形態にて印刷し、乾燥によりPVAを薄く被膜させたものである。
また、pHインクは、例えば、pH指示薬(BTB(ブロモチモールブルー))…1%、アクリル樹脂…10%、シリカ…2%、pH調整剤…1.3%、イソプロピルアルコール…85.7%の成分比率である。(但し、BTBは酸性で黄色、中性で緑色、アルカリ性で青色と変色するように初期のpHインク色を緑色となるように調製されているものとする。)
さらに、
図2に示すような断面構造において、印刷条件として、例えば、クレープ紙(目付16gsm、pH6.3)にグラビア印刷(版深度30μm)で印刷した。
【0032】
このような実施例において、印刷後のpHインクの初期色は、水溶性被膜がないと「黄色」となり、水溶性被膜があると「緑色」となるので、シート体とpHインクとの間に水溶性被膜を介することによる効果が明らかである。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態のペット用吸収性シートについて、
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0034】
ペット用吸収性シート101、
図3に示すように、略長方形の形状となっており、例えば、ペット用トイレの床面に敷いて使用され、ペットにより排泄された排泄物の水分を表面からシート内に吸収する。また、ペット用吸収性シート101にはpHインクでpH判別部9が形成されている。
【0035】
図4に示すように、パルプとポリマーを含む吸収体10の上面及び下面は、クレープ紙11及び12で包まれており、表面シート13上に尿によって溶解する水溶性被膜15が形成され、当該水溶性被膜15の上にpHインクでpH判別部16が形成される。
【0036】
ここで、ペットの排尿時における尿のpHを判別する過程を説明する。ペット用吸収性シートにペットが排尿すると、排泄された尿は表面シート13及びクレープ紙11を透過して吸収体10で吸収される。
この時、表面シート13上に形成された水溶性被膜15は、表面シート13表面に流れた尿によって溶解して、pHインクは、尿や表面シート13と接触して、排泄された尿のpHに応じて変色することになる。
【0037】
一方、ペット用吸収性シートの製造時からペットの排尿時までの間では、pHインクは、水溶性被膜15を介して表面シート13に接しているため、表面シート13のpHの影響を受けることがない。
特に、表面シート13は、不織布やメッシュシートであってもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂であるため疎水性であり、透液性を付加するため親水化剤を添加、若しくは、コーティング等の処理を施している。
このような、親水化剤とpHインクが反応してしまうことを避けるためにも、pHインクで形成されたpH判別部16と表面シート13との間に、水溶性被膜15を形成することは好ましい。
【0038】
pHインクで形成されたpH判別部16と表面シート13との間に、尿によって溶解する水溶性被膜15を形成することにより、pHインクが直接表面シート13に触れることがないので、表面シート13のpHの影響を受けることなく、形成後もpHインクの色を所望の色にすることができる。
また、
図4に示すように、水溶性被膜15とpHインクで形成されるpH判別部16とを同一形状(例えば、
図3中のpH判別部9のような形状)とすることにより、水溶性被膜を形成する面積を最小限に抑えることが可能になる。
【0039】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態のペット用吸収性シートについて、
図5及び
図6に基づいて説明する。
【0040】
ペット用吸収性シート102、
図5に示すように、略長方形の形状となっており、例えば、ペット用トイレの床面に敷いて使用され、ペットにより排泄された排泄物の水分を表面からシート内に吸収する。また、ペット用吸収性シート102にはpHインクでpH判別部17が形成されている。
【0041】
図6に示すように、パルプとポリマーを含む吸収体18の上面及び下面は、クレープ紙19及び20で包まれており、また、クレープ紙19と表面シート21との間に配置される液移送シート23(表面シートと同じでも良いし、異なっていても良い。透液性のシートであれば良い)上に尿によって溶解する水溶性被膜24が形成され、当該水溶性被膜24の上にpHインクでpH判別部25が形成される。
【0042】
ここで、ペットの排尿時における尿のpHを判別する過程を説明する。ペット用吸収性シートにペットが排尿すると、排泄された尿は表面シート21、液移送シート23及びクレープ紙19を透過して吸収体18で吸収される。
この時、液移送シート23上に形成された水溶性被膜24は、液移送シート23表面に流れた尿によって溶解して、pHインクは、尿や液移送シート23と接触して、排泄された尿のpHに応じて変色することになる。
【0043】
一方、ペット用吸収性シートの製造時からペットの排尿時までの間では、pHインクは、水溶性被膜24を介して液移送シート23に接しているため、液移送シート23のpHの影響を受けることがない。
【0044】
pHインクで形成されたpH判別部25と液移送シート23との間に、尿によって溶解する水溶性被膜24を形成することにより、pHインクが直接液移送シート23に触れることがないので、液移送シート23のpHの影響を受けることなく、形成後もpHインクの色を所望の色にすることができる。
また、
図6に示すように、水溶性被膜24とpHインクで形成されるpH判別部25とを同一形状(例えば、
図5中のpH判別部17のような形状)とすることにより、水溶性被膜を形成する面積を最小限に抑えることが可能になる。
【0045】
(変形例1)
本発明の第1実施形態から第3実施形態の変形例1について、
図7に基づいて説明する。
図7は変形例1のペット用吸収性シートのpH判別部の断面の一例を示す図であり、ペット用吸収性シートのpH判別部の断面は、シート体26の全表面に尿によって溶解する水溶性被膜27が形成され、当該水溶性被膜27の上の一部分にpHインクでpH判別部28が形成される構造になっている。
但し、
図7において、水溶性被膜27は、pHインクで形成されたpH判別部28と同一形状(例えば、
図1、
図3及び
図5中のpH判別部1、9及び17のような形状)ではなく、シート体26の全表面に形成される。
【0046】
特に、
図7に示す変形例1では、例えば、形成過程においてpHインクで形成されるpH判別部28が通常の形成位置からずれた場合であっても、pHインクとシート体26との間には、水溶性被膜27が介在することになるので、pHインクは、シート体26のpHの影響を受けることはない。
【0047】
(変形例2)
本発明の第1実施形態から第3実施形態の変形例2について、
図8に基づいて説明する。
図8は変形例2のペット用吸収性シートのpH判別部の断面の一例を示す図であり、ペット用吸収性シートのpH判別部の断面は、シート体29の表面の一部分に尿によって溶解する水溶性被膜30が形成され、当該水溶性被膜30の上の一部分にpHインクでpH判別部31が形成される構造になっている。
但し、
図8において、水溶性被膜30は、pHインクで形成されたpH判別部31と同一形状(例えば、
図1、
図3及び
図5中のpH判別部1、9及び17のような形状)ではなく、少なくともpHインクで形成されるpH判別部31の形状を包含する形状、言い換えれば、水溶性被膜30の面積がpH判別部31の面積よりも大きく、且つ、pH判別部31が水溶性被膜30の上に形成されれば良い。
【0048】
特に、水溶性被膜30を、少なくともpHインクで形成されるpH判別部31の形状を包含する形状とすることにより、水溶性被膜30をシート体29の全表面に形成する場合(
図7に示す変形例1)と比較して、水溶性被膜を形成する面積を抑えることが可能になる。
【0049】
また、変形例1及び変形例2も本発明の第1実施形態と同様に、
図7及び
図8に示すような断面構造において、クレープ紙上の全表面等に形成した水溶性被膜を介してそれぞれpHインクでpH判別部を形成することにより、クレープ紙のpHの影響を受けることを防止できる。
【0050】
また、変形例1及び変形例2も本発明の第2実施形態と同様に、
図7及び
図8に示すような断面構造において、表面シート上の全表面等に形成した水溶性被膜を介してそれぞれpHインクでpH判別部を形成することにより、表面シートのpHの影響を受けることを防止できる。
【0051】
また、変形例1及び変形例2も本発明の第3実施形態と同様に、
図7及び
図8に示すような断面構造において、表面シート上の全表面等に形成した水溶性被膜を介してそれぞれpHインクでpH判別部を形成することにより、表面シートのpHの影響を受けることを防止できる。