特許第5876329号(P5876329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876329
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】光スキャナの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   G02B26/10 104Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-48640(P2012-48640)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-186145(P2013-186145A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 喜昭
【審査官】 弓指 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−181040(JP,A)
【文献】 特開2008−155314(JP,A)
【文献】 特開2004−181619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00−26/12
G02B 6/35
B81B 1/00−7/04
B81C 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を有するミラー部と、給電により該ミラー部を駆動するアクチュエータと、該アクチュエータに給電するための複数の電極とを備える光スキャナの製造方法であって、
前記光スキャナを形成するウエハを所定の光スキャナ素子パターンに従って加工する際に、前記ウエハの表面側の加工に先行して裏面側の加工を行う第1工程と、
前記加工を行ったウエハの裏面側に支持基板を恒久的に接合する第2工程と、
該ウエハの表面側の加工のためのレジストパターンを形成する第3工程と、
該ウエハの表面側からフルダイシングしながら、前記支持基板にはハーフダイシングを行う第4工程と、
該第4工程を実施した後、該ウエハの表面側の加工を行う第5工程と、
リムに張られた粘着フィルムの上に、前記支持基板を該粘着フィルム側に向けて前記ウエハを接着する第6工程と、
該粘着フィルムをエキスパンドさせながら前記ウエハの裏面側から前記支持基板に突き上げ力を加えてブレーキングカットすることにより、前記ウエハを個々の光スキャナ素子チップに分離する第7工程と、
各チップをピックアップしてパッケージングする第8工程と
を備えることを特徴とする光スキャナの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光スキャナの製造方法において、
前記第1工程では、光スキャナ素子の構造パターンに従って、前記ウエハの裏面に加工のためのレジストパターンを形成した後、該裏面をエッチング加工することで、前記光スキャナのミラーが搖動可能な空間を形成することを特徴とする光スキャナの製造方法。
【請求項3】
前記支持基板がガラス又はシリコンウエハであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光スキャナの製造方法。
【請求項4】
前記ウエハに対する前記支持基板の接合は、接着剤、AuSn共晶、ハンダ、陽極接合、Au-Au固相接合のいずれかによって行われることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の光スキャナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(micro electro mechanical systems)技術を用いた光スキャナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の一形態として、光偏向器を用いて光源からの光を偏向してスクリーンに投影し、スクリーン上に画像を映し出すようにしたプロジェクションディスプレイが提案されている。光偏向器は、例えば、半導体プロセスやマイクロマシン技術で製造されるMEMSデバイスを用いて構成される。光偏向器に用いられるMEMSデバイスとしては、半導体基板上にミラーや圧電アクチュエータ等の機構部品を一体的に形成したMEMS光スキャナが挙げられる。
【0003】
このMEMS光スキャナでは、圧電アクチュエータの一端が枠部(支持部)に連結されて支持され、圧電アクチュエータが発生したトルクを他端に連結されたトーションバー(弾性梁)に伝え、トーションバーの先に備え付けられたミラーを揺動駆動する。このような光スキャナは、小型で簡単な構造で大きな駆動力が得られるという利点がある。その製造に際して、MEMSデバイスとしての光スキャナ素子は、シリコンウエハを一括でパターン加工した後にダイシング工程により個片として切り出され、その後セラミック等のパッケージに実装されて製品となる。
【0004】
従来知られているMEMS光スキャナ素子の構造は、直径1mm程度の円形ミラーを細いトーションバーで支持してアクチュエータに連結し、アクチュエータの作動でトーションバーが捩れることによりミラーを揺動させるものである。この揺動ミラーにレーザ光線を照射することによって1次元又は2次元の走査光線が得られる。このミラーの揺動を妨げないようにミラーの周辺には比較的広い空間が設けられている。
【0005】
このような構造のMEMS光スキャナ素子に対して、ダイシング工程で一般的に用いられる保護テープを貼り付けると、後で同テープを剥離する際に光スキャナ素子の構造が壊れてしまうという不具合が多発する。また、テープを使わず、レジストを塗布して保護層とした場合でも、後の工程でレジストを除去する際に光スキャナ素子の構造が破損する不具合が多発する。
【0006】
このような不具合をなくすための手段として、ウエハレベルでガラスウエハ等と接合しておいてミラーの揺動空間を確保してからダイシングするウエハレベルパッケージ技術が開発されている(例えば、下記の特許文献1参照)。この技術によれば、ダイシング工程において素子構造が破損する不具合はなくなるが、次のような問題がある。
【0007】
まず、ガラスウエハでサンドイッチされた状態でダイシングカットされることにより、チッピングによる割れや欠けという不具合が生じる場合がある。そのため、不良チップも含めて一括でパッケージを形成するためにパッケージとしての良品率が低下することになる。
【0008】
また、ウエハレベルパッケージのために、光スキャナ素子にシリコン貫通電極(TSV)を形成するか或いはガラスウエハに貫通電極を形成する必要があり、工程が複雑になるとともに製造コストも増大する。
【0009】
更に、MEMS光スキャナ素子のミラーに近接した形でガラス封止した場合には、レーザ光線を同ミラーに入射するとガラス面での反射光が迷光となって、投影画像の表示品質を低下させる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−19966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、保護テープに貼り付けてダイシングした後に同テープをエキスパンドする際又は剥離する際に、MEMS光スキャナのミラー又はトーションバーが破損してしまうという従来の問題点に鑑み、本発明は、ウエハレベルパッケージ等の複雑で高価な工法を用いずに、光スキャナ素子構造の破損を防止しながら各素子を個片として加工できる光スキャナの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、反射面を有するミラー部と、給電により該ミラー部を駆動するアクチュエータと、該アクチュエータに給電するための複数の電極とを備える光スキャナの製造方法であって、
前記光スキャナを形成するウエハを所定の光スキャナ素子パターンに従って加工する際に、前記ウエハの表面側の加工に先行して裏面側の加工を行う第1工程と、
前記加工を行ったウエハの裏面側に支持基板を恒久的に接合する第2工程と、
該ウエハの表面側の加工のためのレジストパターンを形成する第3工程と、
該ウエハの表面側からフルダイシングしながら、前記支持基板にはハーフダイシングを行う第4工程と、
該第4工程を実施した後、該ウエハの表面側の加工を行う第5工程と、
リムに張られた粘着フィルムの上に、前記支持基板を該粘着フィルム側に向けて前記ウエハを接着する第6工程と、
該粘着フィルムをエキスパンドさせながら前記ウエハの裏面側から前記支持基板に突き上げ力を加えてブレーキングカットすることにより、前記ウエハを個々の光スキャナ素子チップに分離する第7工程と、
各チップをピックアップしてパッケージングする第8工程と
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の製造方法では、従来の加工工程の順番を見直すとともに、光スキャナを形成する加工ウエハの裏面に支持基板を恒久的に接合するようにした。
【0014】
具体的には、従来の加工工程は、ウエハ表面のフォトリソ→Deep-RIEによる表面側のエッチング加工→裏面側のフォトレジスト→Deep-RIEによる裏面側のエッチング加工→ダイシングの順番である。これに対し、本発明では、ウエハの裏面側のフォトレジスト→裏面のエッチング加工→同裏面への支持基板の恒久的接合→表面側のフォトレジスト→ダイシング→表面側のエッチング加工である。
【0015】
このように、加工工程の順番を変え、かつウエハの裏面に支持基板を恒久的に接合することにより、光スキャナのミラーを中心とした可動部をダイシングテープや保護剤に接触させることなく、加工ウエハから個々のチップに個片化することができるので、個片化工程における光スキャナの可動部の破損や劣化が防止される。MEMS光スキャナのミラー又はトーションバーのような可動部の破損を防止することができる。
【0016】
従って、本発明によれば、ウエハレベルパッケージ等の複雑で高価な工法を用いずに、MEMS光スキャナの素子構造の破損を防止しながら、歩留りよく各素子を個片として加工できる。
【0017】
また、個片化の手法としては、一般的なブレードダイシング、すなわち「純水を噴射しながら回転ダイヤモンド刃でウエハを切断する」技術を利用できるので、ステルスレーザダイシングやDeep-RIEダイシングなどの高価な設備を使わず、安価で生産性の良い加工を実現できる。
【0018】
ダイシング時には、ウエハの表面はエッチング加工されていないので、ブレードダイシングの純水が噴射されても、構造が破損することはない。また、フォトリソは完了して、ウエハの殆どの領域がレジストで覆われているので、ダイシング時に発生するシリコンの切削屑による汚染も防止できる。
【0019】
また、ダイシング時にウエハはフルダイス(切り込み)するが、ウエハの裏面に接合した支持基板はハーフダイスに止めるので、ダイシング後も1枚のウエハとして、その後のウエハ表面のエッチング加工を実施できる。
【0020】
最後に、リムに張った粘着フィルム上に支持基板をフィルム側にして加工ウエハを接着させ、同フィルムをエキスパンドしながら支持基板をピストンヘッドで突き上げてブレーキングカットすることにより、ハーフダイスされた状態だった支持基板が各個片に分離し、支持基板ごと光スキャナ素子がチップとしてピックアップ可能な状態になる。
【0021】
その後、角錐コレットを用いてMEMS光スキャナ素子の可動部以外のフレーム部を吸着することにより、ミラー及びトーションバーには一切接触せずにパッケージング加工を実施できる。
【0022】
更に、パッケージング工程の前に各チップのテスティングによって不良チップの選別が可能であり、レーザ光の迷光が気になる例では、封止ガラスを設けない大気開放型のパッケージ形態を選択することも可能になる。
【0023】
本発明の実施態様では、前記第1工程において、光スキャナ素子の構造パターンに従って、前記ウエハの裏面に加工のためのレジストパターンを形成した後、該裏面をエッチング加工することで、前記光スキャナのミラーが揺動可能な空間が形成される。
【0024】
また、前記支持基板は、ガラス又はシリコンウエハであることが好ましい。
【0025】
更に、前記ウエハに対する支持基板の接合は、接着剤、AuSn共晶、ハンダ、陽極接合、Au-Au固相接合のいずれかによって行われうる。
【0026】
本発明の実施態様によれば、コストの安い装置で実行できる通常のブレードダイシングを用いながらも、ミラー及びトーションバーの構造形成前にダイシングが完了するので、同構造形成後は何にも接触しないで個片化される。従って、素子構造が破損することはない。
【0027】
また、Deep-RIEによるエッチング加工の途中にダイシング工程を持ってくるために、加工ウエハの裏面を支持基板に恒久的接合するが、ウエハレベルパッケージが前提ではないので、MEMS光スキャナ素子構造は、シリコン貫通電極を形成する必要がなく、一般的な電極構造でよい。このため、歩留りが良いと共に低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態の製造工程を示す図。
図2】実施例の方法で製造されるMEMS光スキャナの例を示す図で、(A)は表面側から見た斜視図、(B)は(A)のB−B線に沿った模式的断面図。
図3】実施例の製造工程を示す図。
図4図3に続く製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1を参照して、本発明の実施形態のMEMS光スキャナ製造方法について説明する。なお、図においては、理解しやすくするためにMEMS光スキャナの電極、配線、層間絶縁膜、アクチュエータ及びミラーの作製工程は省略し、SOIウエハのシリコン加工の部分のみを示している。
【0030】
まず、図1(a)に示すように、MEMS光スキャナを形成するウエハ11(表面側のSOI層11aと裏面側のHandle層11bで構成される)に対して、例えば後述する実施例の光スキャナ素子1の構造パターンに従って、Handle層11bの裏面にDeep-RIE加工用のレジストパターン層12をフォトリソ工程によって形成する。
【0031】
次に、図1(b)に示すように、Handle層11bをDeep-RIEでエッチング加工して、ミラーの搖動空間(キャビティ)13を形成する。これは、光スキャナのミラーやトーションバーなどの可動部が後述の支持基板14に接触しないようにするために形成される。その後、BOX層と呼ばれる埋込み酸化膜のフォトレジスト層12をBOE処理によって除去する。
【0032】
ここで、Deep-RIE(Reactive Ion Etching)とは、「Boschプロセス」と称されるエッチングと側壁保護とを交互に繰り返すことにより、シリコンウエハを垂直に深掘り(数100μm深さに)加工する技術である。また、BOE(Buffered Oxide Etching)とは、バッファードフッ酸(BHF)溶液によりシリコン酸化膜をウェットエッチングで除去する技術である。
【0033】
上記の図1(a)及び(b)に示す工程は、本発明の製造方法の第1工程に相当する。
【0034】
その後、図1(c)に示すように、Handle層11bの裏面側に接合材15を介して支持基板(ガラス又はシリコンウエハ)14を恒久的に接合する。接合材としては、接着剤、AuSn共晶接合、ハンダ接合、陽極接合、Au-Au固相拡散接合等が利用できる。この工程は、本発明の製造方法の第2工程に相当する。
【0035】
その後、加工ウエハをひっくり返して表面側のSOI層11aを上に向け、図1(d)に示すように、光スキャナの素子構造に従ってレジストパターン16を形成する。この工程は、本発明の製造方法の第3工程に相当する。
【0036】
次に、図1(e)に線20で示すように、この状態のウエハを、ブレードダイシング装置によって、SOIウエハ(SOI層11aとHandle層11bを含む)をフルダイスする(切り込む)。この時、Handle層11bの裏面に接合した支持基板14はハーフダイスに止め、基板としての一体性を維持する。この工程は、本発明の製造方法の第4工程に相当する。
【0037】
その後、図1(f)に示すように、レジストパターン16をマスクとして、SOI層11aをDeep-RIE装置によって深堀エッチング加工する。そして、レジストパターン16を除去した後、図1(g)に示すように、リムに張った粘着フィルムシート17の上に、支持基板14をフィルム側に向けて加工ウエハ11を接着する。この2つの工程は、本発明の製造方法の第5及び第6工程に相当する。
【0038】
その後、図1(h)に示すように、粘着フィルムシート17を矢印Aの方向にエキスパンドしながら、矢印Bで示すようにピストンヘッドで加工ウエハ11の裏面側を突き上げることにより、ハーフダイスされている支持基板14をブレーキングカットする。この工程は、本発明の製造方法の第7工程に相当する。これにより、MEMS光スキャナの各チップが個片としてピックアップできる状態になる。
【0039】
その後、ダイボンド工程の前にテスティングを実施し、良品素子と不良素子との選別マーキングを行い、良品素子のみをパッケージ品として仕上げることができる。この工程は、本発明の製造方法の第8工程に相当する。
【0040】
なお、別の実施形態では、支持基板として、ウエハとの接合面と反対側の表面に対して予めハーフダイスした基板を用いることもできる。この場合、ブレードダイシング工程では、ウエハをフルダイシングするが、支持基板は、殆ど切らないようにブレードの押し込み量を調整する。この方法によれば、支持基板のブレーキング面がSOI層のDeep-RIEエッチング工程で汚染されることを完全に防止できる。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、装置コストの安い通常のブレードダイシングを用いながらも、ミラー及びトーションバーの構造形成前にダイシングが完了する。従って、その構造の形成後は、MEMS光スキャナの各チップが何にも接触しないで個片化されるので、素子構造が破損することはない。
【0042】
また、加工ウエハの裏面を支持基板に恒久的に接合するが、ウエハレベルパッケージが前提ではないので、MEMS光スキャナの素子構造は、シリコン貫通電極を形成する必要がなく一般的な電極構造でよい。従って、歩留りが高く、低コストである。
【0043】
更に、従来のウエハレベルパッケージと異なり、パッケージングの前にテスト可能であるから、不良素子までもパッケージの形にしてしまうことがなく、効率の良い生産が可能である。
【0044】
[実施例]
以下、図2に示すMEMS光スキャナ素子1を、図3に示す工程で作製する実施例について説明する。
【0045】
光スキャナ素子1は、反射面を有するミラー部2と、他の回路からの給電によりミラー部2を、素子の表面側において直交する2方向の軸x,yの周りに回転するように駆動する圧電アクチュエータ3,4と、各圧電アクチュエータに接続した複数の電極5を表面に配置したフレーム6と、フレーム6の下面側に接合した支持基板7とを備える圧電駆動型の2軸MEMS光スキャナを構成するものであり、アクチュエータには、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の薄膜が用いられる。
【0046】
本実施例では、SOI層の厚み50μm、BOX酸化膜層の厚み2μm、Handle層の厚み400μmのSOIウエハを用いた。
【0047】
まず、図3(A)に示すように、SOIウエハ21の両面に拡散炉によって厚さ500nmの熱酸化シリコン膜22を形成する。
【0048】
次に、図3(B)に示すように、SOIウエハ21の表面側にスパッタ法によってTi膜23及びPt膜24をそれぞれの厚みが50、150 nmになるように順次成膜し、下部電極を形成する。次に、反応性アーク放電イオンプレーティング法により、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の膜を厚み3μmで前記下部電極上に成膜し、圧電PZT膜25を形成する。その後、スパッタ法により圧電PZT膜25上にPt膜26を厚み150 nmで成膜して上部電極を形成する。
【0049】
次に、図3(C)に示すように、基板表面にフォトリソ技術及びドライエッチング技術により、図2に示すような、非共振でミラー部の可動外枠を駆動する連結圧電アクチュエータ(以下、第一アクチュエータという)3、及び共振でミラー部を駆動する内側の圧電アクチュエータ(以下、第二アクチュエータという)4に対応するパターンを形成する。
【0050】
詳細には、上部電極のPt膜26とPZT膜25のパターニングを行い、第一アクチュエータ3に対応する上部電極及び圧電PZT膜と、第二アクチュエータ4に対応する上部電極及び圧電PZT膜のパターンを形成する。同様に、下部電極とその下の酸化シリコン膜もパターニングを行い、第一アクチュエータ3と第二アクチュエータ4のパターンを作製する。
【0051】
その後、図3(D)に示すように、ウエハ表面全体にプラズマCVDで厚み500 nmの酸化シリコン膜27を形成する。
【0052】
次に、図4(E)に示すように、基板表面にフォトリソでレジストパターンを形成して、ドライエッチングで酸化シリコン膜27の一部を除去し、下部電極及び上部電極に対応するコンタクトホール28を形成し、単結晶シリコンを加工する箇所の酸化シリコンをドライエッチングで除去する。
【0053】
続いて、図4(F)に示すように、フォトリソでレジストパターンを形成してからAlCu(1%Cu)膜29をスパッタ成膜し、リフトオフにより配線パターンを形成する。すなわち、AlCu膜の配線を介して、圧電アクチュエータ3,4の下部電極と上部電極を光スキャナ外周部の電極5(図2)に電気的に接続する。
【0054】
次に、図4(G)に示すように、フォトリソでレジストパターンを形成してからTi、Agを順次スパッタ成膜し、リフトオフによってミラー部2の反射層を形成する。そして、同様にリフトオフ手法を用いて、図4(H)に示すようにAu電極パッド30を形成する。ここまでの工程で、シリコン加工の前工程が完了する。
【0055】
その後、図1の実施形態で説明したように、まず、SOIウエハのHandle層を所定のパターンに従ってDeep-RIEエッチング加工し、BOX層もBOE処理で除去する。その後、Handle層の裏面に、支持基板としてガラスウエハ(厚み0.5mm)を、接着剤により恒久的接合後、表面SOI層のレジストパターンを形成する。この状態の加工ウエハをブレードダイシングでフルダイシングするが、支持基板はハーフダイシングに止めておく。その後、表面SOI層をレジストパターンに従ってDeep-RIE加工して、MEMS光スキャナの素子構造が完成する。このように、表面SOI層のDeep-RIE加工前にダイシングすることにより、MEMS光スキャナの可動部を破損することなく、SOI層の加工を実施することができる。これらの工程は,基本的に図1に示した方法と同じである。
【0056】
その後、テスティングによってPZT膜及び配線の電気特性を評価して不良素子にマーキングした後、良品素子のみをセラミックパッケージに実装して、MEMS光スキャナパッケージが完成する。本実施例では、最も単純な大気開放型のパッケージ形態とした。光源からのレーザ光は直接、MEMS光スキャナのミラー部2で反射走査され、画像投影に利用される。
【0057】
上記のように作製したMEMS光スキャナパッケージに対して、水平軸走査用の共振アクチュエータ4にVpp = 20V、駆動周波数(共振周波数)27kHzの交流電圧を印加し、垂直軸走査用の非共振アクチュエータ3にはVpp = 20V、駆動周波数60Hzの交流電圧を印加したところ、水平軸で±13°、垂直軸で±9°の機械的振れ角が観測された。
【0058】
本実施例の製法では、ダイシング工程でのミラー周辺部の損傷がないので、ウエハ内の良品率は90%を超え、振れ角と共振周波数のばらつきも±3%以内と非常に良好な歩留りを示した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、以下の機器に使用される光スキャナの製造方法として好適である。
【0060】
・ モバイル機器搭載の超小型レーザプロジェクタ
・ ゲーム等の映像娯楽システム用レーザプロジェクタ
・ 車載用ヘッドアップディスプレイ
・ 車載インパネ用リアプロジェクションディスプレイ
・ 車載Aピラー用プロジェクションディスプレイ
【符号の説明】
【0061】
1・・・光スキャナ素子、2・・・ミラー部、3,4・・・圧電アクチュエータ、5・・・電極、6・・・フレーム、7・・・支持基板、11・・・加工ウエハ、12・・・レジストパターン層、13・・・キャビティ、14・・・支持基板、15・・・接合材、16・・・レジストパターン、17・・・粘着フィルムシート。
図1
図2
図3
図4