【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、反射面を有するミラー部と、給電により該ミラー部を駆動するアクチュエータと、該アクチュエータに給電するための複数の電極とを備える光スキャナの製造方法であって、
前記光スキャナを形成するウエハを所定の光スキャナ素子パターンに従って加工する際に、前記ウエハの表面側の加工に先行して裏面側の加工を行う第1工程と、
前記加工を行ったウエハの裏面側に支持基板を恒久的に接合する第2工程と、
該ウエハの表面側の加工のためのレジストパターンを形成する第3工程と、
該ウエハの表面側からフルダイシングしながら、前記支持基板にはハーフダイシングを行う第4工程と、
該第4工程を実施した後、該ウエハの表面側の加工を行う第5工程と、
リムに張られた粘着フィルムの上に、前記支持基板を該
粘着フィルム側に向けて前記ウエハを接着する第6工程と、
該粘着フィルムをエキスパンドさせながら前記ウエハの裏面側から前記支持基板に突き上げ力を加えてブレーキングカットすることにより、前記ウエハを個々の光スキャナ素子チップに分離する第7工程と、
各チップをピックアップしてパッケージングする第8工程と
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の製造方法では、従来の加工工程の順番を見直すとともに、光スキャナを形成する加工ウエハの裏面に支持基板を恒久的に接合するようにした。
【0014】
具体的には、従来の加工工程は、ウエハ表面のフォトリソ→Deep-RIEによる表面側のエッチング加工→裏面側のフォトレジスト→Deep-RIEによる裏面側のエッチング加工→ダイシングの順番である。これに対し、本発明では、ウエハの裏面側のフォトレジスト→裏面のエッチング加工→同裏面への支持基板の恒久的接合→表面側のフォトレジスト→ダイシング→表面側のエッチング加工である。
【0015】
このように、加工工程の順番を変え、かつウエハの裏面に支持基板を恒久的に接合することにより、光スキャナのミラーを中心とした可動部をダイシングテープや保護剤に接触させることなく、加工ウエハから個々のチップに個片化することができるので、個片化工程における光スキャナの可動部の破損や劣化が防止される。MEMS光スキャナのミラー又はトーションバーのような可動部の破損を防止することができる。
【0016】
従って、本発明によれば、ウエハレベルパッケージ等の複雑で高価な工法を用いずに、MEMS光スキャナの素子構造の破損を防止しながら、歩留りよく各素子を個片として加工できる。
【0017】
また、個片化の手法としては、一般的なブレードダイシング、すなわち「純水を噴射しながら回転ダイヤモンド刃でウエハを切断する」技術を利用できるので、ステルスレーザダイシングやDeep-RIEダイシングなどの高価な設備を使わず、安価で生産性の良い加工を実現できる。
【0018】
ダイシング時には、ウエハの表面はエッチング加工されていないので、ブレードダイシングの純水が噴射されても、構造が破損することはない。また、フォトリソは完了して、ウエハの殆どの領域がレジストで覆われているので、ダイシング時に発生するシリコンの切削屑による汚染も防止できる。
【0019】
また、ダイシング時にウエハはフルダイス(切り込み)するが、ウエハの裏面に接合した支持基板はハーフダイスに止めるので、ダイシング後も1枚のウエハとして、その後のウエハ表面のエッチング加工を実施できる。
【0020】
最後に、リムに張った粘着フィルム上に支持基板をフィルム側にして加工ウエハを接着させ、同フィルムをエキスパンドしながら支持基板をピストンヘッドで突き上げてブレーキングカットすることにより、ハーフダイスされた状態だった支持基板が各個片に分離し、支持基板ごと光スキャナ素子がチップとしてピックアップ可能な状態になる。
【0021】
その後、角錐コレットを用いてMEMS光スキャナ素子の可動部以外のフレーム部を吸着することにより、ミラー及びトーションバーには一切接触せずにパッケージング加工を実施できる。
【0022】
更に、パッケージング工程の前に各チップのテスティングによって不良チップの選別が可能であり、レーザ光の迷光が気になる例では、封止ガラスを設けない大気開放型のパッケージ形態を選択することも可能になる。
【0023】
本発明の実施態様では、前記第1工程において、光スキャナ素子の構造パターンに従って、前記ウエハの裏面に加工のためのレジストパターンを形成した後、該裏面をエッチング加工することで、前記光スキャナのミラーが揺動可能な空間が形成される。
【0024】
また、前記支持基板は、ガラス又はシリコンウエハであることが好ましい。
【0025】
更に、前記ウエハに対する支持基板の接合は、接着剤、AuSn共晶、ハンダ、陽極接合、Au-Au固相接合のいずれかによって行われうる。
【0026】
本発明の実施態様によれば、コストの安い装置で実行できる通常のブレードダイシングを用いながらも、ミラー及びトーションバーの構造形成前にダイシングが完了するので、同構造形成後は何にも接触しないで個片化される。従って、素子構造が破損することはない。
【0027】
また、Deep-RIEによるエッチング加工の途中にダイシング工程を持ってくるために、加工ウエハの裏面を支持基板に恒久的接合するが、ウエハレベルパッケージが前提ではないので、MEMS光スキャナ素子構造は、シリコン貫通電極を形成する必要がなく、一般的な電極構造でよい。このため、歩留りが良いと共に低コストである。