(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、盗難防止用として駐車時にステアリングをロックし、ハンドルが回らないように固定する技術が広く知られている。さらに、車両のイグニションのオン/オフ状態やシフトポジションにより、ステアリングのロック/アンロックを制御する技術も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、イグニションオフ時にステアリングロックを自動で作動させることを目的として、車両操舵装置が開示されている。この車両操舵装置は、ステアリングホイールの回転を操舵輪に伝達し、モータの駆動によってステアリングホイールと操舵輪の間の伝達比を可変とする伝達比可変装置を備える。そして、イグニションキーがオフ位置にされたとき、伝達比可変装置が、モータを駆動して、ステアリングホイールを所定のロック位置まで回転させる。
【0004】
また、特許文献2では、車両走行中の誤ったステアリングロックを防止することを目的として、ステアリングロック装置が開示されている。このステアリングロック装置は、ステアリング操作に連動するステアリングシャフトに対し係脱してステアリング操作をロック状態とアンロック状態とに切り替えるロック部材を有している。そのロック部材は、モータでロック位置とアンロック位置とに移動される。そして、このステアリングロック装置は、モータに対する通電方向をロック方向とアンロック方向とに切り替える通電方向切替回路を備えている。
【0005】
特許文献2の発明では、イグニションスイッチがオフ操作されたと判定した後、ABSなどの車速検出部で検出された車速が零か否かを判定している。そして、イグニションのオフ後に車速が零でないと判定したとき、通電方向切替回路に電気を供給する給電回路を遮断する。従って、車両の走行中にイグニションがオフとなっても、ステアリングがロック状態とならない。このような構成にてイグニションスイッチのオフ後に車速を検出するためには、イグニションスイッチがオフ操作された後でも車速検出部に対して電源が供給されている必要がある。この点について特許文献2では詳しく述べられていない。
【0006】
イグニションスイッチがオフ操作された後でも車速検出部に電源を供給する場合、イグニションスイッチのオフ後でも電源供給が可能な構成を車速検出部に別途設ける必要がある。そして、当然にイグニションスイッチのオフ後に車速検出部が電力を消費することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、車両の走行中にステアリングがロック状態となることで走行中にもかかわらずステアリングが操作できなくなる危険を回避するため、緊急にエンジンを停止した場合であっても、車両がまだ走行中の場合はステアリングをロック状態としない車両用制御装置に係るものである。
そして、本発明は、イグニションスイッチがオフ操作された後であっても、適切に車両の走行の有無を検出し、ステアリングロックの制御を行うことができる車両用制御装置に係るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、車両のステアリングのロック/アンロック状態を切り替える制御を行う車両用制御装置であって、車両のイグニションのオン/オフ状態を示す信号を受信するためのイグニション状態信号入力部と、車両の車速を検出する車速検出部が出力する車速情報を示す信号を受信するための車速情報信号入力部と、車速情報信号入力部が受信した車速情報を記憶する記憶部と、イグニション状態信号入力部が車両のイグニションがオフ状態となったことを示す信号を受信した場合、記憶部に記憶された車速情報に基づいて、車両のステアリングのアンロック状態を切り替えるまたは切り替えない制御を行う制御部と、を備える車両用制御装置が提供される。
これによれば、走行中にイグニションがオフ状態となる緊急エンジン停止の場合であっても、ステアリングをロック状態としない車両用制御装置を提供することができる。
【0010】
さらに、制御部は、記憶部に記憶された車速情報の車速がゼロである場合、ステアリングをロック状態にし、記憶部に記憶された車速情報の車速がゼロでない場合、ステアリングのアンロック状態を維持する制御を行うことを特徴としてもよい。
これによれば、記憶された車速の有無に従い、車速がある場合にはステアリングをロック状態とせず、車速がない場合にはステアリングをロック状態とすることができる。
【0011】
さらに、制御部は、イグニション状態信号入力部が、イグニションがオフ状態となったことを示す信号を受信する直前の車速情報に基づいて前記ステアリングのアンロック状態を切り替えるまたは切り替えない制御を行うことを特徴としてもよい。
これによれば、エンジン停止となった直前の車速の有無に従い、車速がある場合にはステアリングをロック状態とせず、車速がない場合にはステアリングをロック状態とすることができる。
【0012】
さらに、記憶部は、イグニション状態信号入力部が受信した信号が、イグニションがオン状態であることを示す信号である間、定期的に、車速情報信号入力部が受信した最新の車速情報を記憶することを特徴としてもよい。
これによれば、イグニションがオフ状態となる緊急エンジン停止の直前の車速に基づいて、ステアリングのロック/アンロック状態を制御できる。
【0013】
さらに、ユーザが操作するイグニションスイッチからの入力を受信するためのスイッチ操作入力部をさらに有し、記憶部は、スイッチ操作入力部によりユーザによるイグニションスイッチのオフ操作が行われたことを示す信号を受信した場合、車速情報信号入力部が受信した車速情報の記憶を行い、制御部は、記憶部による車速情報の記憶が完了した後に、エンジン制御装置に対してエンジン停止を指令する信号を出力することを特徴としてもよい。
これによれば、いち早く緊急停止された状況を把握し、係る状況になった時の車速情報を記憶部が確実に記憶した後に、エンジン停止を行い、ステアリングのロック/アンロック状態を制御することができる。
【0014】
さらに、2つの異なる前記車速検出部が出力する車速情報を示す信号を受信するための、それぞれの車速検出部に対応した車速情報信号入力部を備え、一の車速情報信号入力部が受信した車速情報は、制御部が車両のステアリングのアンロック状態を切り替えるまたは切り替えない制御を行うために使用され、他の車速情報信号入力部が受信した車速情報は、制御部が車両のステアリングのロック/アンロック状態を切り替える装置の電源のオン/オフ状態を切り替えるまたは切り替えない制御を行うために使用されることを特徴としてもよい。
これによれば、制御装置の誤作動により異なる出力を出した場合であっても、安全側の制御を行うことができる。
【0015】
さらに、車両の使用者が、車両のイグニションのオン操作を行った場合、記憶部に記憶された車速情報の車速がゼロである場合、ステアリングをアンロック状態にした後イグニションをオンにし、記憶部に記憶された車速情報の車速がゼロでない場合、ステアリングのロック/アンロック状態を制御することなくイグニションをオンにすることを特徴としてもよい。
これによれば、エンジンをスタートさせた時に、通常にエンジンを停止した場合と緊急にエンジンを停止した場合とで異なるステアリングのロック/アンロック状態の制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、緊急にエンジンを停止した場合であっても、車両がまだ走行中の場合はステアリングをロック状態としない車両用制御装置を提供することができる。また、緊急エンジン停止後再度エンジンをスタートさせた場合においても、ステアリングのロック/アンロック状態の制御を適切に行うことができる。
そして、本発明によれば、イグニションスイッチがオフ操作された後であっても、車速を検出するために電源供給が可能な構成を設けることで、イグニションがオフ状態となった後に適切に車両の走行の有無を検出し、ステアリングロックの制御を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1は、本発明に係る第一実施例における車両用の制御装置10等を示すブロック図である。制御装置10は、施解錠命令を発して、車両のステアリングのロック/アンロック状態を切り替える電子ステアリングロック(ESL)30の制御を行う車両用制御装置である。なお、電子ステアリングロック30は、実際にステアリングのロック/アンロックを動作させるESLモータ、ESLモータを駆動するモータ駆動回路、ESL駆動回路を制御するESLCPU、ESLCPUに電力を供給するESL制御電源、およびモータ駆動回路に電力を供給するESL負荷電源などを備え、制御装置10から施解錠命令を受けて、その命令に従い、実際に車のステアリングロックまたはアンロックを行う装置である。
【0019】
制御装置10は、イグニション状態信号入力部11と、車速情報信号入力部12と、記憶部13と、制御部14とを備える。イグニション状態信号入力部11は、その車両のイグニションIGのオン/オフ状態を示す信号を受信する。イグニションIGは、車の使用者などがイグニションスイッチを使い、オン操作またはオフ操作を行うことにより、オン/オフが切り替えられる。通常、運転者がエンジンを開始させるときにイグニションIGをオンさせ、エンジンを停止させるときにオフさせる。また、緊急時の場合、運転者が走行中に押しボタン式のイグニションスイッチを長押しなどすることで、緊急エンジン停止を行うために、イグニションIGをオフにする。
【0020】
イグニション状態信号入力部11は、イグニションIGのオン/オフ状態の変化をイグニションIGから直接的に入力を受け付けるために、イグニションIGと間に入力線を備える。
【0021】
また、制御装置10は、車両の車速を検出する車速検出部20が出力する車速情報を示す信号を受信するための車速情報信号入力部12を備える。車速検出部20は、一般的には、車両の車軸の回転数に比例して信号を発生させ、信号量に比例した車両移動が生じたとして車速を検出するECU(Electronic Control Unit)である。しかし、車速検出部20はこれに限定されず、いかなる方法であっても、車両の速度を検出できるものであればよい。例えば、タイヤの回転から車速を検出してもよいし、GPS(Global Positioning System)から車速を検出してもよい。また、ABS(Antilocked Braking System)のECUや、VSA(Vehicle Stability Assist)のECUから車速情報を得てもよい。
【0022】
車速情報信号入力部12は、車速検出部20から車速情報を示す信号が伝達される入力線を含み、その入力線を介して車速情報を示す信号を受信する入力回路である。受信する車速情報は、具体的な車両の速度を示す数値であってもよいし、車速があるか否か(車両の速度がゼロかそれ以外か)の情報であってもよい。
【0023】
また、制御装置10は、車速情報信号入力部12が受信した車速情報を記憶する記憶部13を備える。記憶部13は、後述する制御部14により車速情報信号入力部12が受信した車速情報を書き込まれる。記憶部13は、典型的には不揮発性のメモリーであるが、特に限定されない。
【0024】
また、制御装置10は、イグニション状態信号入力部11が車両のイグニションがオフ状態となったことを示す信号を受信した場合、記憶部13に記憶された車速情報に基づいて、車両のステアリングのアンロック状態を切り替えるまたは切り替えない制御を行う制御部14を備える。
【0025】
制御部14は、イグニション状態信号入力部11と車速情報信号入力部12から入力を受け付け、記憶部13に対して車速情報の読み書きを行い、電子ステアリングロック30に対して施解錠命令の信号を出力する。制御部14は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)から構成され、後述の制御を行う。これによれば、走行中にイグニションがオフ状態となる緊急エンジン停止の場合であっても、記憶部13に記憶された車速情報に基づいてステアリングをロック状態としない車両用制御装置を提供することができる。即ち、イグニションスイッチがオフ操作された後であっても、車速を検出するために電源供給が可能な構成を設けることで、イグニションがオフ状態となった後に適切に車両の走行の有無を検出し、ステアリングロックの制御を行うことができる。
【0026】
好ましくは、制御部14は、記憶部13に記憶された車速情報の車速がゼロである場合、電子ステアリングロック30に対して施錠命令の信号を出力し、ステアリングをロック状態にし、記憶部13に記憶された車速情報の車速がゼロでない場合、電子ステアリングロック30に対して特に信号を出力せず、ステアリングのアンロック状態を維持する制御を行う。これによれば、記憶部13に記憶された車速の有無に従い、車速が少しでもある場合にはステアリングをロック状態とせず、車速が全くない場合にはステアリングをロック状態とすることができる。しかし、これに限定されず、例えば、制御部14は、車速が非常に小さな場合は実質的に停車しているとして、電子ステアリングロック30に対して施錠命令の信号を出力し、ステアリングをロック状態にしてもよい。
【0027】
図2を参照しながら、制御装置10の制御方法を説明する。なお、フローチャートにおけるステップはSと省略して記載する。まず、イグニション状態信号入力部11が、S100において、イグニションIGがオフ状態であることを示す信号を受信し、オン状態からオフ状態への状態遷移があったことを検知する。
【0028】
制御部14は、イグニション状態信号入力部11から上記状態遷移があったことを受け付けると、S102において、イグニションIGがオフ状態となる直前の車速情報、即ちイグニション状態信号入力部が、イグニションがオフ状態となったことを示す信号を受信する直前の車速情報を記憶部13に記憶する。例えば、車速検出部20に電源が供給されている間、車速検出部20は定期的に車速情報を送信する。制御部14は、送信されてくる車速情報を随時受信し、その車速情報を一時的に記憶する。そして、制御部14は、イグニッション電源がオフ状態になり、車速検出部20からの車速情報の定期的な送信が途絶した場合に、途絶する直前の車速情報をイグニッションIGのオフ操作時の車速として記憶部13に記憶する。
【0029】
そうすると、制御部14は、S104において、イグニション状態信号入力部11が、イグニションIGがオフ状態となったことを示す信号を受信する直前の車速情報に基づいて判断する。具体的には、制御部14は、その車速情報における車速がゼロの場合は、ステアリングのアンロック状態を切り替えてロック状態とし、車速がゼロでない場合は、ステアリングのアンロック状態を切り替えずに維持する制御を行う。すなわち、エンジン停止となった直前の車速の有無に従い、車速がある場合にはステアリングをロック状態とせず、車速がない場合にはステアリングをロック状態とすることができる。
【0030】
記憶部13が車速情報を記憶するタイミングのバリエーションとして、記憶部13は、イグニション状態信号入力部11が受信した信号が、イグニションがオフ状態となったことを示す信号であるときに、車速情報信号入力部12が受信した車速情報を記憶してもよい。これによれば、制御装置10は、イグニションがオフ状態となる緊急エンジン停止の瞬間の車速に基づいて、ステアリングのロック/アンロック状態を制御できる。
【0031】
また、記憶部13は、イグニション状態信号入力部11が受信した信号が、イグニションがオン状態であることを示す信号である間、定期的に、車速情報信号入力部12が受信した最新の車速情報を記憶してもよい。これによれば、制御装置10は、イグニションがオフ状態となる緊急エンジン停止の直前の車速に基づいて、ステアリングのロック/アンロック状態を制御できる。
【0032】
上述のように、記憶部13に記憶された車速情報に基づき車速がないと判断された場合には、制御部14は、通常処理のS112〜S116を行い、車速があると判断された場合には緊急停止時処理S106〜S110を行う。
【0033】
制御部14は、通常処理の場合、まずS112において緊急でなく正常にイグニションIGがオフされたと判断し、続いてS114において、電子ステアリングロック30の状態がアンロック状態であること確認する。そして、制御部14は、S116において、電子ステアリングロック30に対して施錠命令を出力する。その結果、電子ステアリングロック30は、ステアリングをロック状態にする。
【0034】
一方、緊急停止時処理を行う場合、制御部14は、まずS106において、記憶部13に記憶された車速情報において車速があったので緊急停止が行われたと判断し、続いてS108において、電子ステアリングロック30の状態がアンロック状態であることを確認する。そして、制御部14は、S110において、電子ステアリングロック30に対して施錠命令を出力せず、アンロック状態を維持する。その結果、電子ステアリングロック30は、ステアリングのアンロック状態を維持継続する。
【0035】
<第二実施例>
図3は、本発明に係る第二実施例における車両用の制御装置10Aを示すブロック図である。なお、重複記載を避けるため第一実施例と異なる部分を中心に記載する。制御装置10Aは、2つの異なる車速検出部20A/20A’が出力する車速情報を示す信号を受信するための、それぞれの車速検出部20A/20A’に対応した車速情報信号入力部12A/12A’を備える。従って、車速検出部1(20A)に対応して車速情報信号入力部1(12A)が、また、車速検出部2(20A’)に対応して車速情報信号入力部2(12A’)が備えられる。ここで、2つの異なる車速検出部20A/20A’は、第一実施例を示したようなタイヤの回転からの車速検出やGPS、ABS、VSA等のECUからの車速検出、またはその他の車速を検出できるものであれば良い。
【0036】
さらに、車速情報信号入力部1(12A)および車速情報信号入力部2(12’)のそれぞれに対応して、制御部1(14A)および制御部2(14A’)が備えられ、また、制御部1(14A)および制御部2(14A’)のそれぞれに対応して、記憶部1(13A)および記憶部2(13A’)が備えられる。
【0037】
制御部2(14A’)は、第一実施例の制御部14と同じ機能を備える。即ち、制御部2(14A’)は、イグニション状態信号入力部11Aと車速情報信号入力部2(12A’)から入力を受け付け、記憶部2(13A’)に対して車速情報の読み書きを行い、電子ステアリングロック30Aに対して施解錠命令の信号を出力する。
【0038】
一方、制御部1(14A)は、イグニション状態信号入力部11Aと車速情報信号入力部1(12A)から入力を受け付け、記憶部1(13A)に対して車速情報の読み書きを行い、電子ステアリングロック30Aに対して負荷電源操作命令の信号を出力する。なお、電子ステアリングロック30Aは、施解錠命令だけでなく、ESL負荷電源をオン/オフする操作命令を受け付ける電子ステアリングロックである。
【0039】
従って、制御部1(14A)は、車速検出部1(20A)の車速情報に基づいて負荷電源操作命令を出力し、制御部2(14A’)は、車速検出部2(20A’)の車速情報に基づいて施解錠命令を出力する。即ち、一の車速情報信号入力部2(12A’)が受信した車速情報は、制御部2(14A’)が車両のステアリングのアンロック状態を切り替えるまたは切り替えない制御を行うために使用され、他の車速情報信号入力部1(12A)が受信した車速情報は、制御部1(14A)が車両のステアリングのロック/アンロック状態を切り替える装置の電源のオン/オフ状態を切り替えるまたは切り替えない制御を行うために使用される。
【0040】
このようにすることで、車速検出部から、車速情報信号入力部、制御部、記憶部、電子ステアリングロックまでの間がすべて冗長構成となり、仮に何らかの誤動作により異なる出力をしても安全側の制御を行うことができる。これによれば、厳しい規格にも対応することができる。
【0041】
例えば、車速情報信号入力部1(12A)が車速検出部1(20A)から車速がゼロであるとの車速情報を得、車速情報信号入力部2(12A’)が車速検出部2(20A’)から車速がゼロでないとの車速情報を得た場合を想定する。この場合、制御部1(14A)は、電子ステアリングロック30Aをロック状態とするためにESL負荷電源をオンする負荷電源操作命令を出力する。一方、制御部2(14A’)は、電子ステアリングロック30Aのアンロック状態を維持するまたはアンロック状態とするために、電子ステアリングロック30に対して施錠命令を出力せずまたは解錠命令を出力する。従って、一方の制御部がステアリングをロックするための命令を出力しても、他方の制御部がステアリングのアンロック状態を維持する出力を行った場合には、電子ステアリングロック30Aは、ロック状態となることはなく、アンロック状態となる。
【0042】
図4は、本実施例の制御装置10Aにおけるイグニションがオフ状態になった場合の制御を示すフローチャートである。なお、重複記載を避けるため、第一実施例の
図2の説明と異なる部分のみを説明する。S300〜S314までは、
図2のS100〜S114と同じである。
【0043】
制御部1(14A)は、通常処理の場合、S314において、電子ステアリングロック30Aの状態がアンロック状態であること確認した後、S316において、ESL負荷電源をオンするための負荷電源操作命令を出力する。そして、制御部2(14A’)は、電子ステアリングロック30に対して施錠命令を出力する。その結果、電子ステアリングロック30は、ステアリングをロック状態にする。本実施例では、制御装置10Aが電子ステアリングロック30Aへの施解錠命令の出力を制御するのに加えて電源供給も制御する。そして、その施解錠命令と電源供給の制御は、別々の制御部が行う。これにより、一方の制御部が誤動作を起こしたとしても、誤ってステアリングがロック状態になることを防止することができる。
【0044】
<第三実施例>
図5は、本発明に係る第三実施例における車両用の制御装置10Bを示すブロック図である。なお、重複記載を避けるため第二実施例と異なる部分を中心に記載する。制御装置10Bは、制御装置10Bが備える車速検出部2との接続端子を備えず、1つの接続端子でもって、車速検出部20Bと車速情報信号入力部1(12B)および車速情報信号入力部2(12B’)を接続する。
【0045】
このようにすることで、車速検出部より後の、車速情報信号入力部から、制御部、記憶部、電子ステアリングロックまでの間がすべて冗長構成となり、仮に制御装置10B内において何らかの誤動作により異なる出力をしても安全側の制御を行うことができる。これによれば、比較的厳しい規格にも対応することができると共に、第二実施例に比して、コスト低減が可能である。
【0046】
図6は、本実施例の制御装置10Bにおける制御を示すフローチャートである。制御装置10BがS400において制御を開始した後、S402において、制御部1(14B)は車速情報信号入力部1(12B)が受信した車速情報を記憶部1(13B)に記憶し、および、制御部2(14B’)は車速情報信号入力部2(12B’)が受信した車速情報を記憶部2(13B’)に記憶する。
【0047】
制御部1(14B)と制御部2(14B’)は、S404において、イグニション状態信号入力部11Bが受信するイグニションの状態を示す信号においてオン状態からオフ状態への状態遷移があるか否かを監視する。状態遷移がない場合はS402に戻り、制御部1(14B)は車速情報信号入力部1(12B)が直近に受信した車速情報を記憶部1(13B)に記憶することで更新し、および、制御部2(14B’)は車速情報信号入力部2(12B’)が直近に受信した車速情報を記憶部2(13B’)に記憶することで更新する。イグニションの状態を示す信号がオン状態からオフ状態への変化ない以上、制御装置10Bは、記憶部内の車速情報を更新し続けるので、記憶部内の車速情報は常に最新の車速情報が記憶される。
【0048】
イグニション状態信号入力部11Bが受信したイグニションの状態を示す信号においてオン状態からオフ状態への状態遷移があった場合、S406において、制御部1(14B)と制御部2(14B’)は、それぞれ記憶部1(13B)と記憶部2(13B’)に記憶された最新の車速情報を、イグニションがオフ状態となる直前の車速情報であると判定する。
【0049】
制御部1(14B)と制御部2(14B’)は、S408において、イグニションがオフ状態となる直前の車速情報であると判定した記憶部1(13B)と記憶部2(13B’)内の車速情報が車速がある(車速がゼロでない)ことを示すのか否かを検査する。記憶部1(13B)および記憶部2(13B’)に記憶された車速情報に基づき車速がないと判断された場合には、制御部1(14B)および制御部2(14B’)は、通常処理のS416〜S420を行い、車速があると判断された場合には緊急停止時処理のS410〜S414を行う。
【0050】
具体的には後述するように、制御部1(14B)および制御部2(14B’)は、それぞれの記憶部に記憶された車速情報における車速がゼロの場合は、ステアリングのアンロック状態を切り替えてロック状態とし、車速がゼロでない場合は、ステアリングのアンロック状態を切り替えずに維持する制御を行う。すなわち、エンジン停止となった直前の車速の有無に従い、車速がある場合にはステアリングをロック状態とせず、車速がない場合にはステアリングをロック状態とすることができる。
【0051】
制御部1(14B)および制御部2(14B’)は、通常処理の場合、まずS416において緊急でなく正常にイグニションIGがオフされたと判断し、続いてS418において、電子ステアリングロック30Bの状態がアンロック状態であること確認する。そして、制御部1(14B)は、S418において、ESL負荷電源をオンするための負荷電源操作命令を出力する。そして、続いて、制御部2(14B’)は、S420において、電子ステアリングロック30Bに対して施錠命令を出力する。その結果、電子ステアリングロック30Bは、ステアリングをロック状態にする。
【0052】
一方、緊急停止時処理を行う場合、制御部1(14B)および制御部2(14B’)は、まずS410において、それぞれの記憶部に記憶された車速情報において車速があったので緊急停止が行われたと判断し、続いてS412において、電子ステアリングロック30Bの状態がアンロック状態であることを確認する。そして、S414において、制御部1(14B)は、ESL負荷電源をオンするための負荷電源操作命令を出力せずに、ESL負荷電源をオフするための負荷電源操作命令を出力する。または、S414において、制御部2(14B’)は、電子ステアリングロック30Bに対して施錠命令などを何ら出力しない。その結果、電子ステアリングロック30Bは、ステアリングのアンロック状態を維持継続する。
【0053】
本実施例では、制御装置10Bが電子ステアリングロック30Bへの施解錠命令の出力を制御するのに加えて電源供給も制御する。そして、その施解錠命令と電源供給の制御は、別々の制御部が行う。これにより、一方の制御部が誤動作を起こしたとしても、誤ってステアリングがロック状態になることを防止することができる。
【0054】
なお、何らかの理由により、一方の記憶部が車速があることを示し、他方の記憶部が車速がないことを示した場合であっても、通常処理のS418かS420のいずれかが機能しないため、電子ステアリングロック30Bは、ステアリングをロック状態となることがない。従って、制御装置10Bは、電子ステアリングロック30Bを、誤って、ロック状態とすることがない。
【0055】
引き続き、S422〜S438は、車両の使用者が、緊急停止操作を行った後または通常に停止した後に、車両のイグニションのオン操作を行った場合の制御を示す。まず、イグニション状態信号入力部11Bが、S422において、イグニションIGがオン状態を示す信号を受信し、オフ状態からオン状態への状態遷移があったことを検知する。
【0056】
次いで、制御部1(14B)および制御部2(14B’)は、S424において、それぞれの記憶部に記憶された車速情報に基づいて判断し、その車速情報における車速がゼロでない場合は緊急停止後処理を、車速がゼロの場合は通常処理を行う。
【0057】
緊急停止後処理を行う場合、制御部1(14B)および制御部2(14B’)は、S426において、電子ステアリングロック30Bの状態がアンロック状態であることを確認する。そして、制御部1(14B)および制御部2(14B’)は、S428において、イグニションをオンにすることを出力する。即ち、記憶部1(13B)および記憶部2(13B’)に記憶された車速情報の車速がゼロでない場合、ステアリングのロック/アンロック状態を制御することなくイグニションをオンにする出力を行う。
【0058】
一方、通常処理を行う場合、制御部1(14B)および制御部2(14B’)は、S430において、電子ステアリングロック30Bの状態がロック状態であることを確認する。そして、制御部1(14B)は、S432において、電子ステアリングロック30Bに対してESL負荷電源をオンするための負荷電源操作命令を出力する。そして、制御部2(14B’)は、S434において、電子ステアリングロック30Bに対して解錠命令を出力する。
【0059】
その結果、電子ステアリングロック30Bは、ステアリングのアンロック状態とする。そして、制御部1(14B)または制御部2(14B’)は、S436において、イグニションをオンにすることを車両の電源供給やエンジン始動を制御する制御装置に対して出力する。即ち、記憶部1(13B)および記憶部2(13B’)に記憶された車速情報の車速がゼロである場合、ステアリングをアンロック状態にした後イグニションをオンにする。これによれば、エンジンをスタートさせた時に、通常にエンジンを停止した場合と緊急にエンジンを停止した場合とで異なるステアリングのロック/アンロック状態の制御を適切に行うことができる。
【0060】
<第四実施例>
図7は、本発明に係る第四実施例における車両用の制御装置10Cを示すブロック図である。なお、重複記載を避けるため第一実施例と異なる部分を中心に記載する。制御装置10Cは、イグニション状態信号入力部11Cと、車速情報信号入力部12Cと、記憶部13Cと、制御部14Cと、スイッチ操作入力部15Cを備える。イグニション状態信号入力部11Cは、その車両のイグニションIGのオン/オフ状態を示す信号を受信する。イグニション状態信号入力部11は、イグニションIGのオン/オフ状態の変化をイグニションIGから直接的に入力を受け付けるために、イグニションIGと間に入力線を備える。
【0061】
また、制御装置10Cは、車両の車速を検出する車速検出部20Cが出力する車速情報を示す信号を受信するための車速情報信号入力部12Cを備える。車速情報信号入力部12Cは、車速検出部20Cから車速情報を示す信号が伝達される入力線を含み、その入力線を介して車速情報を示す信号を受信する入力回路である。また、制御装置10Cは、第一実施例と同様、車速情報信号入力部12Cが受信した車速情報を記憶する記憶部13Cを備える。
【0062】
また、制御装置10Cは、ユーザが操作するイグニションスイッチ40Cからの入力を受信するためのスイッチ操作入力部15Cを有する。スイッチ操作入力部15Cは、イグニションスイッチ40Cから直接的に入力を受け付けるために、イグニションスイッチ40Cと間に入力線を備える。
【0063】
記憶部13Cは、スイッチ操作入力部15Cによりユーザによるイグニションスイッチ40Cのオフ操作が行われたことを示す信号を受信した場合、車速情報信号入力部12Cが受信した車速情報を記憶する。または、記憶部13Cは、かかるオフ操作が行われたことを示す信号を受信した場合、車速情報信号入力部12Cが受信した最新の車速情報を記憶するために、以前記憶された車速情報に上書きして更新する。また、記憶部13Cは、この上書き更新を、イグニション状態信号入力部11Cでイグニションのオフ検出まで行うことが好ましい。
【0064】
制御部14Cは、スイッチ操作入力部15C、イグニション状態信号入力部11C、および車速情報信号入力部12Cから入力を受け付け、記憶部13Cに対して車速情報の読み書きを行い、電子ステアリングロック30Cに対して施解錠命令の信号、電源供給制御装置へIG電源開始/停止指令およびエンジン制御装置へエンジン開始/停止指令を出力する。
【0065】
そして、制御部14Cは、記憶部13Cによる車速情報の記憶や更新が完了した後に、エンジン制御装置に対してエンジン停止を指令する信号を出力する。これによれば、いち早く緊急停止された状況を把握し、係る状況になった時の車速情報を記憶部13Cが確実に記憶した後に、エンジン制御装置へエンジン停止指令を出力しエンジン停止を行い、ステアリングのロック/アンロック状態を制御することができる。即ち、イグニションスイッチがオフ操作された後であっても、車速を検出するために電源供給が可能な構成を設けることで、イグニションがオフ状態となった後に適切に車両の走行の有無を検出し、ステアリングロックの制御を行うことができる。
【0066】
図8は、本実施例の制御装置10Cにおける制御を示すフローチャートである。制御装置10CがS500において制御を開始した後、ユーザがイグニションスイッチ40C(エンジンスタートスイッチ)をオフ操作した場合、S502において、スイッチ操作入力部15Cは、イグニションスイッチ40Cでのそのオフ操作を検出する。記憶部13Cは、S504において、制御部14Cがそのオフ操作が行われたことを示す信号を受信した場合、車速情報信号入力部12Cが車速検出部20Cから受信した車速情報を記憶する。
【0067】
そして、制御部14Cは、S506において、電源供給制御装置へIG電源の供給停止指令を出力する。なお、本実施例における制御装置10Cは、他のECUに対するIG電源の供給や停止の制御を行う機能を有するものとする。このタイミングで、制御部14Cは、エンジン制御装置へエンジン停止指令も出力する。続いて、制御部14Cは、S508において、車速情報信号入力部12Cが受信した車速情報を記憶部13Cに記憶し直し、更新することにより直近の車速情報を記憶する。
【0068】
制御部14Cは、S510において、イグニション状態信号入力部11Cが受信するイグニションの状態を示す信号においてオン状態からオフ状態への状態遷移があるか否かを監視する。状態遷移がない場合はS508に戻り、制御部14Cは車速情報信号入力部12Cが直近に受信した車速情報を記憶部13Cに記憶することで更新する。なお、制御装置10Cは、他のECUに対するIG電源の供給や停止の制御を行う機能を有するので、S506〜S510の処理は省略してもよい。その場合、イグニション状態信号入力部11Cは設けても設けなくても良い。また、エンジン制御装置が電源供給制御も一緒に行ってもよい。
【0069】
イグニション状態信号入力部11Bが受信したイグニションの状態を示す信号においてオン状態からオフ状態への状態遷移があった場合、S512において、制御部14Cは、記憶部13Cに記憶された最新の車速情報を、イグニションがオフ状態となる直前の車速情報であると判定する。
【0070】
制御部14Cは、S514において、イグニションがオフ状態となる直前の車速情報であると判定した記憶部13C内の車速情報が車速があることを示すのか否かを検査する。記憶部13Cに記憶された車速情報に基づき車速がないと判断された場合には、制御部14Cは、通常処理のS522〜S526を行い、車速があると判断された場合には緊急停止時処理のS516〜S520を行う。なお、S516〜S520の処理は、S410〜414と同じであり、S522〜526の処理は、S416、S418、S420と同等なので説明を省略する。
【0071】
これによれば、走行中にイグニションがオフ状態となる緊急エンジン停止の場合であっても、確実にステアリングをロック状態としない車両用制御装置を提供することができる。即ち、イグニションスイッチがオフ操作された後であっても、車速を検出するために電源供給が可能な制御を行うことで、イグニションがオフ状態となった後に適切に車両の走行の有無を検出し、ステアリングロックの制御を行うことができる。
【0072】
また、本実施例において、イグニッションスイッチは、キーを挿入して回転させるものであっても良いし、キーの挿入無しに回転させる回転スイッチでも、押ボタン式のスイッチでも良い。
【0073】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。