(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンに連結される入力軸からの動力が入力される第1要素およびモータの動力が入力される第2要素、並びにそれら第1要素および第2要素と係合すると共に変速装置に動力を伝達する第3要素を有する遊星歯車装置と、
それら3要素のいずれかの要素および前記変速装置に連結されると共に、前記3要素のいずれかの要素と一体に回転する第1軸と、
その第1軸と一体に回転する前記3要素のいずれかを除く他の要素の一つ及び前記モータに連結される第2軸と、
その第2軸から前記第1軸または前記入力軸へ動力を遮断可能に伝達する一方、前記第1軸または前記入力軸から前記第2軸への動力の伝達を遮断する第1クラッチとを備え、
その第1クラッチは、前記第2軸と前記第1軸または前記入力軸との相対回転により機械的に係合して前記第2軸から前記第1軸または前記入力軸へ動力を伝達し、前記第2軸と前記第1軸または前記入力軸との相対回転により機械的に係合を解除して前記第2軸から前記第1軸または前記入力軸への動力の伝達を遮断することを特徴とする動力伝達装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施の形態における動力伝達装置1が搭載される車両200を模式的に示した模式図である。なお、
図1の矢印F−B,L−Rは、車両200の前後方向、左右方向をそれぞれ示している。
【0021】
まず、車両200の概略構成について説明する。車両200は、
図1に示すように、前輪201(左の前輪201FL及び右の前輪201FR)及び後輪(左の後輪
202BL及び右の後輪
202BR)と、後輪202を駆動するユニット210とを備えている。ユニット210は、動力源としてのエンジン211及び後述するジェネレータモータ60と、それらエンジン211及びジェネレータモータ60の動力を伝達する動力伝達装置1と、その動力伝達装置1から動力が伝達される変速装置212とを主に備え、エンジン211及びジェネレータモータ60の2つの動力を使い分けて、ディファレンシャル装置213を介して後輪202を駆動可能に構成されている。また、このユニット210は、ジェネレータモータ60が発電機としての機能を兼ね備えており、ジェネレータモータ60により発電した電力を回生可能に構成されている。
【0022】
次いで、
図2を参照して、動力伝達装置1の詳細構成について説明する。
図2は、動力伝達装置1及び変速装置212の内部構造を模式的に示した模式図である。なお、
図2では、理解を容易とするために、動力を伝達する機能を担う構成のみを図示している。動力伝達装置1は、
図2に示すように、エンジン211の動力を伝達する入力軸2が連結される遊星歯車装置30と、遊星歯車装置30から変速装置212までの動力伝達経路上に配設される第1クラッチ10及び第2クラッチ20とを主に備えて構成されている。なお、動力伝達装置1から後輪202(駆動輪)までの動力伝達経路上に変速装置212が配設されており、変速装置212に入力された動力は所定の変速比で出力され、ディファレンシャル装置213を介して後輪202を駆動する。
【0023】
遊星歯車装置30は、サンギヤ31と、そのサンギヤ31に外接噛合する複数のピニオンギヤ32を回転自在に支持するキャリヤ33と、ピニオンギヤ32に内接噛合するリングギヤ34とを備えて構成されている。本実施の形態では、キャリヤ33は、エンジン211の動力が入力される入力軸2に連結されており、第1要素を構成している。また、リングギヤ34は、ジェネレータモータ60のステータ61に対して回転するロータ62が連結されており、第2要素を構成している。さらに、サンギヤ31は、変速装置212に向かって動力を伝達する第1軸3が連結されており、第3要素を構成している。
【0024】
第1クラッチ10は、リングギヤ34(第2要素)に連結される第2軸4と第1軸3との間の動力の伝達および遮断を行うためのものであり、第2軸4から入力される動力を第1軸3に遮断可能に伝達する一方、第1軸3から第2軸4への動力の伝達を遮断するように構成されている。
【0025】
ここで、
図3及び
図4を参照して、第1クラッチ10の詳細構成について説明する。
図3は、第1クラッチ10の断面図であり、
図4は、
図3のIV−IV線における第1クラッチ10の断面図である。第1クラッチ10は、
図3及び
図4に示すように、第1内輪11と、その第1内輪11の外周を囲む第1外輪12と、それら第1内輪11と第1外輪12との間に配設される複数の第1スプラグ13と、それら第1スプラグ13を保持する保持器14と、荷重付与装置15とを主に備えて構成されている。
【0026】
第1内輪11は、動力を伝達する機能を担う部材であり、
図3及び
図4に示すように、断面円形状の外周面11aを備え、軸心O回りに回転可能に構成されている。また、この第1内輪11は第1軸3(
図2参照)と連結されている。第1外輪12は、第1内輪11と共に動力を伝達する機能を担う部材であり、
図3及び
図4に示すように、第1内輪11の外周面11aに対向する断面円形状の内周面12aを備え、第1内輪11と同様に軸心O回りに回転可能に構成されている。また、この第1外輪12は第2軸4(
図2参照)と連結されている。
【0027】
第1スプラグ13は、第1内輪11と第1外輪12とを係合する機能を担う部材であり、外周面11a及び内周面12aにそれぞれ接する係合面13a,13b(
図5参照)を備え、
図4に示すように、外周面11a及び内周面12aの対向間において円周方向に等間隔で複数配設されている。また、この第1スプラグ13は、第1付勢部材16(
図5参照)により内周面11a及び外周面12aの円周方向に付勢されている。ここで、
図5を参照して、第1付勢部材16について説明する。
図5は、
図4のVで示す部分を拡大して示した第1クラッチ10の部分拡大断面図である。
【0028】
第1付勢部材16は、第1スプラグ13に付勢力を付与して、外周面11a及び内周面12aに係合面13a,13bが接するように第1スプラグ13に
図5の矢印S方向(以下「セルフロック方向」と称す)の回転モーメントを発生させる部材である。本実施の形態では、第1付勢部材は、
図5に示すように、金属材料に波状の曲げ加工を施して形成されるリボンスプリングにより構成され、その弾性を利用して第1スプラグ13に付勢力を付与可能に構成されている。但し、この第1付勢部材16は、コイルばねにより構成しても良い。この第1付勢部材16により第1スプラグ13に付勢力が付与されることで、外周面11a及び内周面12aに係合面13a,13bが接するように第1スプラグ13がセルフロック方向へ傾動する。その結果、
図5に示すように、内周面12aと係合面13bとの接点A及び外周面11aと係合面13aとの接点Bに摩擦力が発生すると共に、外周面11a及び内周面12aの円周方向における各接点A,Bの位置ずれにより、第1内輪11及び第1外輪12が所定の方向へ回転する場合には、第1内輪11及び第1外輪12に第1スプラグ13が係合する。
【0029】
即ち、第1外輪12が第1スプラグ13に対して、第1内輪11との相対回転で第1内輪11側から見て、
図5の矢印Ro方向(以下「ロック方向」と称す)へ回転する場合には、第1内輪11及び第1外輪12に第1スプラグ13が係合する。これにより、第1内輪11(
図2参照)は第1外輪12と共に回転する。一方、第1外輪12が第1スプラグ13に対して、第1内輪11との相対回転で第1内輪11側から見て、
図5の反矢印Ro方向(以下「フリー方向」と称す)へ回転する場合には、接点Aに作用する摩擦力により第1スプラグ13が第1付勢部材16の付勢力に抗して反セルフロック方向へ傾動し、第1内輪11及び第1外輪12への第1スプラグ13の係合が解除される。その結果、第1外輪12は第1内輪11を空転する。
【0030】
また、第1内輪11が第1スプラグ13に対して、第1外輪12との相対回転で第1外輪12側から見て、
図5の矢印Ri方向(ロック方向)へ回転する場合には、第1内輪11及び第1外輪12に第1スプラグ13が係合する。その結果、第1外輪12は第1内輪11(
図2参照)と共に回転する。一方、第1内輪11が第1スプラグ13に対して、第1外輪12との相対回転で第1外輪12側から見て、
図5の反矢印Ri方向(フリー方向)へ回転する場合には、接点Bに作用する摩擦力により第1スプラグ13が第1付勢部材16の付勢力に抗して反セルフロック方向へ傾動し、第1外輪12は第1内輪11(
図2参照)を空転する。
【0031】
図3及び
図4に戻って説明する。保持器14は、第1スプラグ13を外周面11a及び内周面12aの円周方向へ傾動可能に保持する部材であり、
図3及び
図4に示すように、保持部14aと、荷重伝達部14bとを備えて構成されている。保持部14aは、第1スプラグ13を保持する部位であり、
図3及び
図4に示すように、軸心O方向に延設され、第1スプラグ13の上端側を保持している。
【0032】
荷重伝達部14bは、第1荷重付与装置15から荷重が伝達される部位であり、
図3に示すように、軸心O方向と交差する方向に延設されている。これにより、荷重伝達部14bを軸心O方向に延設する場合と比較して、保持器14の軸心O方向の寸法を短縮でき、第1クラッチ10の小型化を図ることができる。また、この荷重伝達部14bは、
図4に示すように、歯車状に形成され、後述するピニオン15bとの間に構成される歯車機構を介して第1荷重付与装置15から荷重が伝達されるように構成されている。これにより、第1荷重付与装置15から保持器14までの荷重の伝達経路中に生じるエネルギー損失を小さくでき、効率良く保持器14に荷重を伝達することができる。
【0033】
第1荷重付与装置15は、第1付勢部材16の付勢力に抗して第1スプラグ13に荷重を付与して第1スプラグ13を反セルフロック方向(
図5の反矢印S回転方向)へ傾動させるための装置であり、
図3及び
図4に示すように、アクチュエータ15aと、ピニオン15bとを備えて構成されている。
【0034】
アクチュエータ15aは、第1スプラグ13に付与する荷重を生み出す動力源であり、電動機(交流モータ又は直流モータ)により構成され、電源(図示せず)から供給される電力により駆動可能に構成されている。このように、アクチュエータ15aが電動機により構成されているので、例えば、アクチュエータ15aをシリンダやソレノイド等により構成する場合と比較して、第1荷重付与装置15の構造を簡素化すると共に小型化を図ることができる。また、第1荷重付与装置15の構造が複雑な場合には、第1荷重付与装置15が大型化し、第1クラッチ10の大型化を招くところ、第1荷重付与装置15の構造を簡素化すると共に小型化を図ることができれば、第1クラッチ10の小型化を図ることができる。
【0035】
ピニオン15bは、アクチュエータ15aの動力を保持器14に伝達するための部材であり、
図3に示すように、保持器14の荷重伝達部14bと噛み合う歯車状に形成され、荷重伝達部14bとの間に歯車機構を構成している。このピニオン15bによりアクチュエータ15aの動力が保持器14に伝達されることで、保持器14を介して第1スプラグ13に荷重が付与される。このように、第1荷重付与装置15は、保持器14を介して第1スプラグ13に荷重を付与するので、複数の第1スプラグ13に一度に荷重を付与することができ、効率良く第1スプラグ13に荷重を付与することができる。
【0036】
上述したように構成される第1荷重付与装置15によれば、第1付勢部材16の付勢力に抗して第1スプラグ13に荷重を付与することで、第1スプラグ13を反セルフロック方向へ傾動させて、第1内輪11及び第1外輪12への第1スプラグ13の係合を強制的に解除することができる。これにより、ジェネレータモータ60から第2軸4に伝達された動力が第1クラッチ10の第1外輪12に入力されて、第1外輪12が第1スプラグ13に対してロック方向(
図5の矢印Ro方向)へ回転する場合でも、第1荷重付与装置15により第1内輪11及び第1外輪12への第1スプラグ13の係合を強制的に解除することで第1外輪12を空転させて、第1軸3と第2軸4との動力の伝達を遮断することができる。また、第1軸3に伝達された動力が第1クラッチ10の第1内輪11に入力されて、第1内輪11が第1スプラグ13に対してロック方向(
図5の矢印Ri方向)へ回転する場合でも、第1荷重付与装置15により第1内輪11及び第1外輪12への第1スプラグ13の係合を強制的に解除することで第1内輪11を空転させて、第1軸3と第2軸4との動力の伝達を遮断することができる。
【0037】
図2に戻って第2クラッチ20について説明する。第2クラッチ20は、第2軸4と第1軸3との間の動力の伝達および遮断を行うためのものであり、第1軸3から入力される動力を第2軸4に伝達する一方、第2軸4から第1軸3への動力の伝達を遮断するように構成されている。この第2クラッチ20は、第1荷重付与装置15が省略されている以外は第1クラッチ10と同様に構成されているため、詳細な説明を省略する。
【0038】
第2クラッチ20の第2内輪21は第1軸3に連結されており、第2外輪22は第2軸4と連結されている。また、第2内輪21は軸方向に沿って第1内輪11と一体に形成されており、第2外輪22は軸方向に沿って第1外輪12と一体に形成されている。第1内輪11の外径と第2内輪21の外径は同一であり、第1外輪12と第2外輪22の内径は同一である。第2内輪21と第2外輪22との間には複数の第2スプラグ23が配設されており、第2内輪21及び第2外輪22の相対回転により、第2内輪21及び第2外輪22へ第2スプラグ23の係合および係合解除が行われ、動力伝達および遮断が切り換えられる。なお、ジェネレータモータ60は、ステータ61及びロータ62を主に備えて構成されている。ロータ62は第2軸4を介してリングギヤ34(第2要素)に連結されている。
【0039】
ここで、
図6を参照して、遊星歯車装置30の動作について説明する。
図6は第1要素、第2要素および第3要素の回転数と車両200の走行速度との関係を示す模式図である。
図6の横軸は車両200の走行速度を示し、縦軸は第3要素、第1要素および第2要素の回転数を示している。なお、
図2に示すように、ロータ62は第2軸4を介してリングギヤ34(第2要素)に連結されているので、第2要素の回転数はロータ62及び第2軸4の回転数と等しくなる。また、エンジン211は入力軸2を介してキャリヤ33(第1要素)に連結されているので、第1要素の回転数は入力軸2の回転数と等しくなる。さらに、第1軸3はサンギヤ31(第3要素)及びドライブギヤ5aに連結されているので、第3要素の回転数は第1軸3の回転数およびドライブギヤ5aの回転数と等しくなる。なお、
図6では、車両200の走行速度に対して第1要素の回転数が一定、即ちエンジン211及び入力軸2の回転数が一定(R
1)の特性を図示している。
【0040】
図6において、第2要素の回転数が0のとき(ジェネレータモータ60(
図2参照)の回転数が0のとき)、第1要素(キャリヤ33)から動力を入力すると、
図6に示すように、第3要素(サンギヤ31)は増速される(第1要素<第3要素)。サンギヤ31及びリングギヤ34の歯数をそれぞれZa,Zcとすると、その変速比は(Za+Zc)/Zcとなる。一方、第2要素(リングギヤ34)が固定され(回転数=0)、第3要素(サンギヤ31)から動力を入力したときは、
図6に示すように、第1要素(キャリヤ33)は減速される(第1要素<第3要素)。これにより第1要素(キャリヤ33)の駆動トルクは増大し、その変速比はZa/(Za+Zc)となる。
【0041】
また、ジェネレータモータ60(ロータ62)により第2要素の回転数>0となると、
図6に示すように、第3要素(サンギヤ31)は、第2要素(リングギヤ34)の回転数に応じて任意の変速比で出力される。なお、第2要素および第1要素の回転数が等しく共にR
1のときは(このときの走行速度をVoとする)、第1要素に入力されるエンジン211の動力がそのまま第3要素(サンギヤ31)に出力されることを示している。さらに、ロータ62(
図2参照)の回転数を上げて(第2要素の回転数を上げて)第2要素の回転数=R
2になると、第3要素の回転数=0となる。第2要素の回転数がR
2を上回ると、第3要素の回転数<0となる。即ち、第3要素(サンギヤ31)の回転方向は逆転する。
【0042】
なお、サンギヤ31(第3要素)の回転数は、リングギヤ34(第2要素)の回転数が一定の場合、キャリヤ33(第1要素)の回転数がプラス方向に変化するとプラス方向に変化し、キャリヤ33(第1要素)の回転数がマイナス方向に変化するとマイナス方向に変化すると共に、キャリヤ33の回転数が所定回転数以下になると回転方向は逆転する。
【0043】
図2に戻って、次に変速装置212について説明する。変速装置212は、動力伝達装置1の第1軸3に連結されるドライブギヤ5aと、そのドライブギヤ5aに噛合するドリブンギヤ5bとにより入力軸5cに伝達される動力を、任意の変速比で出力する装置である。変速装置212は、ドリブンギヤ5bを介して動力が入力される入力軸5cと、入力軸5cに平行に配設された出力軸5dと、出力軸5d及び入力軸5cに配設され互いに噛み合って異なる変速比となるように設定された複数の第1歯車対6,7と、出力軸5d及び入力軸5cに配設され互いに噛み合う第2歯車対8とを主に備えて構成されている。なお、出力軸5dに伝達された動力が後輪202に伝達されるように構成されている。
【0044】
変速装置212の第1歯車対6,7は、入力軸5cに配設され入力軸5cに伝達される動力により駆動される駆動歯車6a,7aと、出力軸5dに配設され駆動歯車6a,7aにより従動駆動される被動歯車6b,7bとを備えている。ここで、第1歯車対6,7は、変速比(被動歯車の歯数÷駆動歯車の歯数)の大きなものから、ドリブンギヤに近い順に第1速、第2速とされ、本実施の形態においては、第1歯車対6が第1速、第1歯車対7が第2速である。また、ピニオン歯車で構成される後進歯車対9が第1歯車対6,7の間に配設されている。後進歯車対9はスライディングメッシュ構造とされ、出力軸5dに配設されるギヤを軸方向に摺動させて噛み合わせることにより後進可能となる。
【0045】
第1歯車対6,7を構成する駆動歯車6a,7aは、それぞれ入力軸5cと一体に形成されている。一方、駆動歯車6a,7aにそれぞれ対向して噛み合う被動歯車6b,7bは、後述する第4クラッチ40を介して出力軸5dに固定されている。第4クラッチ40は、入力軸5cから出力軸5dへ動力を伝達する一方、出力軸5dから入力軸5cへの動力の伝達を遮断するものであり、入力軸5cから出力軸5dへの動力の伝達を遮断可能に構成されている。この第4クラッチ40は、第1クラッチ10と同様に構成されているため、詳細な説明を省略する。また、第1クラッチ10と同一の部分については同一の符号を用いて以下説明を省略する。
【0046】
第4クラッチ40の第4内輪41は、出力軸5dと一体に形成されており、第4外輪42は被動歯車6b,7bと一体に形成されている。第4クラッチ40によれば、エンジン211やジェネレータモータ60の動力が入力軸5c、駆動歯車6a,7aを経て、被動歯車6b,7bから入力されて、被動歯車6b,7bと連結する第4外輪42が第4スプラグ43に対して、第4内輪41との相対回転で、第4内輪41側から見てロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転する場合には、第4内輪41及び第4外輪42へ第4スプラグ43が係合する。その結果、出力軸5dは被動歯車6b,7bと共に回転し動力が伝達される。一方、第4外輪42が第4スプラグ43に対して、第4内輪41との相対回転で、第4内輪41側から見てフリー方向(
図5の反矢印Ro方向)に回転する場合には、第4内輪41及び第4外輪42への第4スプラグ43の係合が解除され、被動歯車6b,7bは出力軸5dを空転する。
【0047】
また、出力軸5dから第4クラッチ40の第4内輪41に動力が伝達され、第4内輪41が第4スプラグ43に対して、第4外輪42との相対回転で第4外輪42側から見て、フリー方向(
図5の反矢印Ri方向)に回転すると、第4内輪41及び第4外輪42への第4スプラグ43の係合が解除される。その結果、被動歯車6b,7bは出力軸5dを空転し、出力軸5dから入力軸5cへの動力の伝達が遮断される。一方、第4内輪41が第4スプラグ43に対して、第4外輪42との相対回転で第4外輪42側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ri方向)に回転すると、第4内輪41及び第4外輪42へ第4スプラグ43が係合する。その結果、被動歯車6b,7bは出力軸5dと共に回転し動力が伝達される。
【0048】
第4クラッチ40は、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15(
図4参照)と同様に構成される第4荷重付与装置45を備えているので、第4内輪41や第4外輪42に動力が伝達されて、第4内輪41や第4外輪42が第4スプラグ43に対してロック方向(
図5の矢印Ri方向または矢印Ro方向)へ回転する場合でも、第4荷重付与装置45により第4内輪41及び第4外輪42への第4スプラグ43の係合を強制的に解除できる。これにより、第4外輪42を空転させて動力の伝達を遮断することができる。
【0049】
第2歯車対8を構成する駆動歯車8aは、後述する第5クラッチ50を介して入力軸5cと一体に形成されている。一方、駆動歯車8aに対向して噛み合う被動歯車8bは、出力軸5dに固定されている。第5クラッチ50は、出力軸5dから入力軸5cへ動力を伝達する一方、入力軸5cから出力軸5dへの動力の伝達を遮断するものである。この第5クラッチ50は、第1荷重付与装置15が省略されている以外は第1クラッチ10(
図5参照)と同様に構成されているため、詳細な説明を省略する。また、第1クラッチ10と同一の部分については同一の符号を用いて以下説明を省略する。
【0050】
第5クラッチ50の第5内輪51は、入力軸5cと一体に形成されており、第5外輪52は駆動歯車8aと一体に形成されている。第5クラッチ50によれば、エンジン211やジェネレータモータ60の動力が入力軸5cに伝達されて、第5クラッチ50の第5内輪51が第5スプラグ53に対して、第5外輪52との相対回転で、第5外輪52側から見てフリー方向(
図5の反矢印Ri方向)に回転する場合には、第5内輪51及び第5外輪52への第5スプラグ53の係合が解除され、入力軸5cは駆動歯車8aを空転し、入力軸5cから出力軸5dへの動力の伝達が遮断される。一方、第5内輪51が第5スプラグ53に対して、第5外輪52との相対回転で、第5外輪52側から見てロック方向(
図5の矢印Ri方向)に回転する場合には、第5内輪51及び第5外輪52へ第5スプラグ53が係合する。その結果、入力軸5cは駆動歯車8aと共に回転し動力が伝達される。
【0051】
また、出力軸5dから被動歯車8b及び駆動歯車8aを介して第5クラッチ50に動力が伝達されると、第5外輪52が第5スプラグ53に対して、第5内輪51との相対回転で、第5内輪51側から見てロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転し、第5内輪51及び第5外輪52へ第5スプラグ53が係合する。その結果、駆動歯車8aは入力軸5cと共に回転し動力が伝達される。一方、第5外輪52が第5スプラグ53に対して、第5内輪51との相対回転で、第5内輪51側から見てフリー方向(
図5の反矢印Ro方向)に回転すると、第5内輪51及び第5外輪52への第5スプラグ53の係合が解除される。その結果、駆動歯車8aは入力軸5cを空転し、出力軸5dから入力軸5cへの動力の伝達が遮断される。
【0052】
次いで、
図7から
図8を参照して、上述したように構成される第1実施の形態における動力伝達装置1及び変速装置212の動作について説明する。
図7及び
図8は、動力伝達装置1及び変速装置212の内部構造の正面視を模式的に示している。
図7及び
図8は、理解を容易とするために、動力の伝達経路を矢印Pで示すと共に、リングギヤ34、ピニオンギヤ33、サンギヤ31、駆動歯車6a,7a,8a、被動歯車6b,7b,8b、第1クラッチ10、第2クラッチ20、第4クラッチ40及び第5クラッチの第1外輪12、第2外輪22、第4外輪42及び第5外輪52の各回転方向を矢印(実線)で示している。また、ピニオンギヤ32の上部から右方向に延びる矢印(破線)(
図7(a)、
図7(c)、
図8(a)、
図8(b)参照)は、リングギヤ34とピニオンギヤ32との関係において、ロータ62(
図2参照)がリングギヤ34を介してピニオンギヤ32を駆動する状態を示している。一方、ピニオンギヤ32の上部から左方向に延びる矢印(破線)(
図7(b)、
図8(c)参照)は、ロータ62(
図2参照)がリングギヤ34を介してピニオンギヤ32を制動する状態を示している。また、ピニオンギヤ32の下部から左方向または右方向に延びる矢印(破線)は、サンギヤ31の回転方向を示しており、ピニオンギヤ32の中心から右方向に延びる矢印(破線)は、キャリヤ33(
図2参照)の回転方向を示している。
【0053】
また、第1荷重付与装置15及び第4荷重付与装置45を作動させて、第1内輪11及び第1外輪12、第4内輪41及び第4外輪42への第1スプラグ13及び第4スプラグ43の係合を解除した場合を「ON」と表記し、第1荷重付与装置15及び第4荷重付与装置45を非作動として、第1スプラグ13及び第4スプラグ43の係合が可能な場合を「OFF」と表記している。
【0054】
また、上述のとおり、本実施の形態においては、第1歯車対6,7は、ドリブンギヤ5b(
図2参照)に近い順に、変速比(被動歯車の歯数÷駆動歯車の歯数)の大きなものから配設されている。第1歯車対6,7及び第2歯車対8の変速比を順にk1,k2,k3とすると、変速比はk1>k2>k3の関係となる。また、第2歯車対8の被動歯車8bの歯数は、第1歯車対6,7の被動歯車6b,7bの内の最小歯数(本実施の形態においては被動歯車7bの歯数)より小さくなるように形成されている。このため、入力軸5cから出力軸5dに動力が伝達された場合、被動歯車6b,7b,8bの回転速度をそれぞれα1,α2,α3とすると、各回転速度は入力軸5cの回転速度によって一義的に定まり、変速比の関係からα1<α2<α3となる。また、出力軸5dの回転速度は、変速段に応じた回転速度となる。
【0055】
次に、
図7を参照して、エンジン211の始動時および車両200の発進時における動力伝達装置1及び変速装置212の動作について説明する。まず、エンジン211を始動する場合について説明する。
図7(a)は、エンジン211の始動時における動力伝達装置1および変速装置212の内部構造を模式的に示した模式図である。
【0056】
エンジン211の始動時においては、
図7(a)に示すように、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15(
図2参照)を非作動(OFF)とすると共に、第4クラッチ40の第4荷重付与装置45(
図2参照)を作動(ON)させる。この状態において、ジェネレータモータ60(
図2参照)を作動させてロータ62を回転させると、動力が第2軸4及びリングギヤ34に伝達される。第2軸4に伝達された動力により、第1クラッチ10の第1外輪12が、第1内輪11との相対回転で第1内輪11側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転する。また、第2クラッチ20の第2外輪22が、第2内輪21との相対回転で第2内輪21側から見て、フリー方向(
図5の反矢印Ro方向)に回転する。これにより、第1クラッチ10の第1内輪11及び第1外輪12に第1スプラグ13が係合し、動力が第2軸4から第1軸3に伝達される。その結果、第1軸3に連結されるサンギヤ31(第3要素)が回転する。
【0057】
一方、ロータ62(
図2参照)の動力はリングギヤ34にも伝達される。動力が伝達されたリングギヤ34はピニオンギヤ32に係合し、サンギヤ31を回転させる。ここで、サンギヤ31には第1クラッチ10を介してロータ62の動力が伝達されているので、遊星歯車装置30の変速比以上に増速される。その結果、キャリヤ33(
図2参照)が回転する。これにより、キャリヤ33に連結される入力軸2に動力が伝達され、エンジン211が始動される。
【0058】
また、第1軸3に伝達される動力は、ドライブギヤ5a及びドリブンギヤ5bを介して変速装置212の入力軸5cに伝達される。動力が入力軸5cに伝達されると、第1歯車対6,7の被動歯車6b,7bが回転し第4クラッチ40の第4外輪42(
図2参照)が回転すると共に、第5クラッチ50の第5内輪51(
図2参照)が回転する。第4クラッチ40の第4外輪42は、第4内輪41との相対回転で第4内輪41側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転するが、第4クラッチ40の第
4荷重付与装置
45(
図2参照)が作動されているため(ON)、第4外輪42は第4内輪41を空転する。このため、出力軸5dに動力は伝達されない。また、第5クラッチ50の第5内輪51(
図2参照)は、第5外輪52との相対回転で第5外輪52側から見て、フリー方向(
図5の反矢印Ri方向)に回転するため、第5内輪51は第5外輪52を空転する。よって、出力軸5dに動力は伝達されない。従って、エンジン211の始動時に後輪202に動力が伝達されることを防止でき、セルモータ(スタータ)が搭載されていなくても、ジェネレータモータ60を用いて入力軸2からエンジン211に動力を伝達し、エンジン211を始動できる。
【0059】
次に、
図7(b)及び
図7(c)を参照して、車両200の発進時の動力伝達装置1及び変速装置212の動作について説明する。
図7(b)は発進(低速)における動力伝達装置1及び変速装置212の内部構造を模式的に示した模式図であり、
図7(c)は発進(高速)における動力伝達装置1及び変速装置212の内部構造を模式的に示した模式図である。なお、低速とは、
図6に示す車両200の走行速度(
図6横軸)が0<走行速度<Voのことをいい、高速とは、走行速度≧Voのことをいうものとする。
【0060】
エンジン211の始動後、ロータ62(
図2参照)の駆動を維持したままロータ62の回転数を調整して、リングギヤ34(第2要素)の回転数がサンギヤ31(第1要素)の回転数より高回転数(但し、
図6に示すR
2未満)になるように維持する(
図6参照)。これにより、第2軸4の回転数(第2要素の回転数と等しい)は第1軸3の回転数(第3要素の回転数と等しい)より高回転数となる(
図6参照)。また、
図7(b)に示すように、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15(
図2参照)を作動(ON)すると共に、第1歯車対6における第4クラッチ40の第4荷重付与装置45(
図2参照)を非作動(OFF)とし、第1歯車対7における第4クラッチ40の第4荷重付与装置45(
図2参照)を作動(ON)する。
【0061】
この場合は、第2軸4に伝達された動力により、第1クラッチ10の第1外輪12(
図2参照)が、第1内輪11との相対回転で、第1内輪11側から見てロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転する。しかし、第1荷重付与装置15を作動しているので、第1スプラグ13は第1内輪11及び第1外輪12に係合できない。また、第2クラッチ20の第2外輪22が、第2内輪21との相対回転で、第2内輪21側から見てフリー方向(
図5の反矢印Ro方向)に回転する。以上のことから、第2軸4から第1軸3への動力の伝達は遮断される。
【0062】
一方、エンジン211の動力はキャリヤ33(
図2参照)(第1要素)に伝達され、その動力はサンギヤ31(第3要素)に出力される。ジェネレータモータ60の負荷を増してロータ62の回転数を減少させリングギヤ34(第2要素)の回転数を減少させるか、或いはエンジン211の回転数を上げると、遊星歯車装置30の運動状態は(
図6参照)、第3要素の線上を右上の方向に移動する。サンギヤ31に出力された動力は第1軸3に伝達され、ドライブギヤ5a(
図2参照)及びドリブンギヤ5bを介して入力軸5cに伝達される。以上のようにエンジン211及びジェネレータモータ60による動力が分配され、ハイブリッドモードでの無段変速状態の前進走行が実現される。
【0063】
入力軸5cに動力が伝達されると、第1歯車対6,7の被動歯車6b,7bが回転し、第4クラッチ40の第4外輪42(
図2参照)及び第5クラッチ50の第5内輪51が回転する。第4クラッチ40の第4外輪42は、第4内輪41との相対回転で第4内輪41から見て、ロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転するが、第1歯車対7の第4クラッチ40の第4荷重付与装置45(
図2参照)が作動されているため(ON)、第1歯車対7の第4クラッチ40の第4外輪42(
図2参照)は第4クラッチ40の第4内輪41を空転する。これに対し、第1歯車対6の第4クラッチ40の第4荷重付与装置45(
図2参照)は非作動のため(OFF)、第1歯車対6の第4クラッチ40の第4外輪42(
図2参照)から第4内輪41に動力が伝達され、出力軸5dは回転する。出力軸5dの回転速度は、第1歯車対6の被動歯車6bの回転速度と等しいα1である。
【0064】
一方で、この場合には、出力軸5dから被動歯車8bを介して、駆動歯車8aが回転する。本実施の形態においては、第2歯車対8の変速比(被動歯車の歯数÷駆動歯車の歯数)k3が、第1歯車対6の変速比k1より小さく設定されているので、第2歯車対8の駆動歯車8aの回転速度(α1・k3=k3/k1・α)は、入力軸5cの回転速度(α)より小さくなる。このため、第5クラッチ50では、第5外輪52(
図2参照)の回転速度が第5内輪51の回転速度αよりも遅くなり、相対的に第5外輪52がフリー方向(
図5の反矢印Ro方向)へ回転している状態と等しくなる。よって、第5クラッチ50では、第5スプラグ53は第5内輪51及び第5外輪52へ係合できず、第5外輪52は第5内輪51を空転する。これにより、出力軸5dの回転(回転速度α1)が後輪202(
図2参照)に伝達され、車両200(
図1参照)は前進走行する。
【0065】
車両200を前進走行させ、第2軸4の回転数が第1軸3の回転数(R
1)と等しくなると(
図6参照)、
図7(c)に示すように、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15(
図2参照)を非作動(OFF)とする。なお、第4クラッチ40の第4荷重付与装置45は、
図7(b)に示す状態を維持するものとする。
【0066】
第1軸3の回転数と第2軸4の回転数とが等しいときは、第1クラッチ10の第1内輪11及び第1外輪の回転数も等しくなる。このときに第1荷重付与装置15(
図2参照)を非作動とすると、第1内輪11(
図5参照)及び第1外輪12に第1スプラグ13が係合し、
図7(c)に示すように、第2軸4から第1軸3に動力が伝達される。第1スプラグ13が係合するときには第1内輪11と第1外輪12との速度差がないため、慣性トルクが生じることを防ぎ衝撃を防止できる。
【0067】
また、第1荷重付与装置15を非作動とした後、第3要素(サンギヤ31)の回転数が第2要素(リングギヤ34)の回転数を超えると(
図6に示す走行速度>V
0のとき)、サンギヤ31が連結された第1軸3の回転数が、リングギヤ34が連結された第2軸4の回転数を超える。このとき第1クラッチ10では、第1外輪12(
図5参照)との相対回転で第1外輪12側から見て、第1内輪11はフリー方向に回転する。その結果、第1スプラグ13は反セルフロック方向に傾動するので、第1軸3から第2軸4への動力の伝達は第1クラッチ10では遮断される。その結果、エンジン211の動力が第1軸3からドライブギヤ5a(
図2参照)に伝達され、エンジン211の動力による前進走行が実現される。
【0068】
一方、第2クラッチ20では、第2外輪22との相対回転で第2内輪21はロック方向に回転する。その結果、第2スプラグ23は第2内輪21及び第2外輪22に係合し、第2内輪21から第2外輪22へ、即ち第1軸3から第2軸4へ動力が伝達される。これによりジェネレータモータ60を発電機として機能させて、発電された電力を電源に回生できる。
【0069】
次に、ドライブギヤ5a(
図2参照)に伝達された動力は、ドリブンギヤ5bを介して入力軸5cに伝達され、変速装置212に入力される。変速装置212では、
図7(c)に示すように、第1歯車対6における第4クラッチ40の第4荷重付与装置45(
図2参照)を非作動(OFF)とし、第1歯車対7における第4クラッチ40の第4荷重付与装置45(
図2参照)を作動(ON)しているので、上述のように、動力は第1歯車対6を介して出力軸5dに伝達される。
【0070】
次に、シフトアップ変速を行うときは、第1歯車対6より高段側の第1歯車対7の第4クラッチ40の第4荷重付与装置45(
図2参照)の作動を停止する(OFF)。その結果、第1歯車対7の第4クラッチ40においても、第1歯車対6の第4クラッチ40と同様に、第4内輪41(
図2参照)及び第4外輪42へ第4スプラグ43が係合可能な状態となる。
【0071】
ここで、第1歯車対7の被動歯車7bの回転速度α2は、第1歯車対6の被動歯車6bの回転速度α1より速いため(α1<α2)、被動歯車7bの回転速度α2が、出力軸5dの回転速度(α1)を超えることになる。よって、第1歯車対7の第4クラッチ40では、第4外輪42(
図2参照)が、第4内輪41との相対回転で第4内輪41側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ro方向)へ回転する。その結果、第4外輪42から第4内輪41に向かって動力が伝達され、被動歯車7bは出力軸5dと共に回転し、出力軸5dがα2の回転速度で回転する。
【0072】
一方、第1歯車対6の被動歯車6bの回転速度(α1)は、出力軸5dの回転速度(α2)より遅くなる(α1<α2)。このため、第1歯車対6の第4クラッチ40では、第4外輪42の回転速度が第4内輪41の回転速度よりも遅くなり、相対的に第4内輪41がフリー方向(
図5の反矢印Ri方向)へ回転している状態と等しくなる。よって、第1歯車対6の第4クラッチ40では、第4スプラグ43は第4内輪41及び第4外輪42へ係合できない。この結果、被動歯車6bは出力軸5dを空転し動力は伝達されない。また、第5クラッチ50の第5外輪52(
図2参照)は、出力軸5dと一体の被動歯車8bを介して、第5内輪51との相対回転で第5内輪51側から見て、フリー方向(
図5の反矢印Ro方向)に回転するため、第5外輪52は第5内輪51を空転し、動力は伝達されない。
【0073】
このように、変速装置212においてシフトアップ変速を行う場合には、高段側の第1歯車対7の第4クラッチ40の第4荷重付与装置45の作動を停止するだけで、低段側(本実施の形態においては第1歯車対6)については何も操作することなく変速が可能となる。また、第1歯車対7の第4クラッチ40は、第4荷重付与装置45の作動を停止することにより、第4スプラグ43がセルフロック方向へ傾動し、瞬時に第4内輪41と第4外輪42との一定回転方向への相対回転が規制される。よって、切り替えに要する時間を短縮でき、素早い変速が可能となる。また、切り替えに要する時間を短縮できるため、動力を伝達しない状態から動力を伝達する状態になるまでの間に第4内輪41と第4外輪42とが空転することもなく、変速時の衝撃を防止することができる。
【0074】
さらに、第4クラッチ40の第4荷重付与装置45の作動と非作動とを切り替えるだけで変速が可能となるため、変速装置212は複雑な噛合機構やシフトフォークなどが不要となり、重量低減や小型化を図ることができる。これにより、限られた変速装置212のスペース内に多数の第1歯車対を収装でき、例えば6速以上の多数段の動力伝達装置1を実現できる。
【0075】
なお、アイドルストップ(走行中に信号などで停車したときにエンジン211の駆動を停止させて燃料消費量および排気ガス排出量の削減を図ること)の実行後は、上述したエンジン始動および発進を連続して行うことで、アイドルストップ後、車両200を短時間で発進させることが可能である。具体的には、第1歯車対6,7における第4クラッチ40の第4荷重付与装置45を作動させた状態(動力の伝達を遮断する状態)でエンジン211を始動させ(
図7(a)参照)、エンジン211の始動後に第1歯車対6における第4クラッチ40の第4荷重付与装置45を非作動とする(動力の伝達を可能にする)ことで(
図7(b)参照)、車両200を発進できる。メインクラッチの断続操作が不要なため、素早く発進することが可能となる。
【0076】
次に、
図8(a)を参照して、コースト走行や制動の際に行われる回生時の動力伝達装置1及び変速装置212について説明する。
図8(a)は、回生時における動力伝達装置1及び変速装置212の内部構造を模式的に示した模式図である。なお、
図8(a)は、シフトアップ変速後の状態、即ち第1歯車対6,7における第4クラッチ40の第4荷重付与装置45をいずれも非作動(OFF)としている場合について説明する。
【0077】
回生時においては、
図8(a)に示すように、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15(
図2参照)を非作動とする(OFF)。アクセルペダル(図示せず)を操作しない状態では、
図8(a)に示すように、動力が出力軸5d(回転速度をα2とする)から変速装置212に入力される。その結果、出力軸5dから第2歯車対8の被動歯車8bを介して駆動歯車8aに動力が伝達され、第5クラッチ50の第5外輪52(
図2参照)に動力が伝達される。
【0078】
ここで、駆動歯車8aと一体の第5外輪52(
図2参照)の回転速度は、第2歯車対8の変速比がk3であり被動歯車8bの回転速度がα2であるから、k3・α2である。一方、第5クラッチ50の第5内輪51は入力軸5cからの駆動力が無い状態なので、その回転速度は、駆動歯車8aの回転速度より遅くなる。その結果、第5外輪52が、第5内輪51との相対回転で、第5内輪51側から見てロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転し、第5外輪52及び第5内輪51へ第5スプラグ53が係合する。その結果、第5クラッチ50の第5外輪52から第5内輪51に向かって動力が伝達され、駆動歯車8aは入力軸5cと共に回転する(回転速度k3・α2)。駆動歯車8aの回転につれて入力軸5cが回転し、第1歯車対6,7の駆動歯車6a,7aも回転する(回転速度k3・α2)。
【0079】
この結果、第1歯車対6,7の駆動歯車6a,7aと噛み合う被動歯車6b,7bに動力が伝達され、被動歯車6b,7bは各々の変速比に応じた速度で回転する。被動歯車6bの回転速度β1はk3/k1・α2であり、被動歯車7bの回転速度β2はk3/k2・α2である。k1>k2>k3であるから、被動歯車6b,7bの回転速度β1,β2は、いずれもα2より小さくなる。
【0080】
一方、出力軸5dの回転速度はα2であるため、第1歯車対7の第4クラッチ40では、第4内輪41(
図2参照)がα2の速度で回転する。このため、第1歯車対7の第4クラッチ40では、第4内輪41の回転速度が第4外輪42の回転速度よりも速くなり、相対的に第4内輪41がフリー方向(
図5の反矢印Ri方向)へ回転している状態と等しくなる。このことは第1歯車対6においても同様である。よって、第1歯車対6,7の第4クラッチ40では、第4スプラグ43は第4内輪41及び第4外輪42へ係合できない。従って、第1歯車対6,7の第4クラッチ40の第4荷重付与装置45は非作動の状態で(OFF)、出力軸5dからの動力を入力軸5cへ伝達できる。
【0081】
入力軸5cに伝達された動力は、ドリブンギヤ5c(
図2参照)及びドライブギヤ5aを介して第1軸3に伝達される。動力が第1軸3に伝達されると、第1クラッチ10では、第1内輪(
図2参照)が第1外輪12との相対回転で第1外輪12側から見て、フリー方向(
図5の反矢印Ri方向)に回転するため、動力の伝達は遮断される。一方、第2クラッチ20では、第2内輪21(
図2参照)が第2外輪22との相対回転で第2外輪22側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ri方向)に回転する。
【0082】
このため、第2クラッチ20の第2内輪21は第2外輪22と共に回転し、
図8(a)に示すように、動力が伝達される。第2クラッチ20の第2外輪22の回転に伴い、第2軸4及びリングギヤ34並びにロータ62(
図2参照)が回転する。これらの結果、出力軸5dから入力される動力によりジェネレータモータ60を発電機として機能させて、ジェネレータモータ60により発電した電力を電源に回生することができる。一方、第1軸3に伝達された動力は、
図8(a)に示すように、第1軸3に連結されたサンギヤ31(第3要素)を回転させ、さらにキャリヤ33(
図2参照)を回転させる。そのキャリヤ33の回転に伴い、動力がエンジン211に入力されエンジンブレーキが発揮される。
【0083】
次いで、
図8(b)及び
図8(c)を参照して、車両200を後進させるときの動力伝達装置1及び変速装置212の動作について説明する。
図8(b)は後進段が選択されたときの動力伝達装置1及び変速装置212の内部構造を模式的に示した模式図であり、
図8(c)は後進段に変速後の動力伝達装置1及び変速装置212の内部構造を模式的に示した模式図である。
【0084】
後進段が選択されると、
図8(b)に示すように、動力伝達装置1の第1クラッチ10の第1荷重付与装置15(
図2参照)を作動(ON)させる。次いでモータ60を駆動し、R
2を超える高回転数に第3要素(リングギヤ34)を回転させる(
図6参照)。その結果、
図6及び
図8(b)に示すように、第3要素(サンギヤ31)は、車両200が前進するときの回転方向(
図8(a)に示すサンギヤ31の回転方向)とは逆向きに回転し(
図6において第3要素の回転数<0)、第1軸3も車両200が前進する場合と逆向きに回転する。
【0085】
なお、このときはロータ62(
図2参照)の駆動により第2軸4に動力が伝達されるため、第1クラッチ10の第1外輪12(
図5参照)は、第1内輪11との相対回転で、第1内輪11からみてロック方向に回転する。しかし、第1荷重付与装置15(
図2参照)が作動されているので、第1クラッチ10では第2軸4から第1軸3への動力の伝達が遮断される。
【0086】
また、第1軸3が、車両200が前進するときの回転方向とは逆向きに回転するので、第2クラッチ20では、第2内輪21はわずかにロック方向に回転しようとする。しかし、第2軸4による第2外輪22の回転数は第2内輪21の回転数より大きい(
図6における走行速度<Voの領域では、第2要素の回転数の絶対値は第3要素の回転数の絶対値より大きい)ので、第2外輪22は、第2内輪21との相対回転で、第2内輪21からみてフリー方向に回転する。従って、第2クラッチ20においても、第2軸4から第1軸3への動力の伝達が遮断される。
【0087】
また、後進段が選択されると変速装置212においては、
図8(b)に示すように、入力軸5cと出力軸5dとの間が後進歯車対9により係合される。ここで、第1軸3は車両200が前進する場合と逆向きに回転するので、後進段が選択されているにも関わらず、出力軸5dは車両200が前進する場合と同じ方向に回転する(
図8(b)に示す出力軸5dの回転方向は、
図8(a)に示す出力軸5dの回転方向と同じ)。即ち、出力軸5dの回転方向は、車両200が前進するときと、後進段が選択されたときとで変わらない。
【0088】
このように、車両200の前進から後進への変速前後において出力軸5dの回転方向を同じくすることができるので、変速装置212は同期噛合機構がなくても、回転数さえ合わせればギヤ鳴りが生ずることなく後進歯車対9を噛み合わせることができる。また、操作性を高めるために変速装置212に同期噛合機構を設ける場合でも、同期噛合機構を小型・簡素化することができ、ひいては変速装置212を小型・簡素化できる。さらに同期噛合機構の小型・簡素化に伴い、同期噛合機構の作動に要するエネルギー消費量を少なくすることができる。
【0089】
後進歯車対9を噛み合わせた後は(後進段に変速後は)、ジェネレータモータ60(
図2参照)の回転数を低下させることにより、第2要素(リングギヤ34)の回転数をR
1〜R
2の任意の回転数(
図6参照)に低下させる。これにより、車両200が前進する場合と逆方向に回転していた第3要素(サンギヤ31)の回転方向が、正方向(車両200が前進する場合の回転方向)に変化する(
図6において第3要素の回転数>0)。その結果、8(c)に示すように、出力軸5dの回転方向が、
図8(b)の回転方向に対して変化し、車両200は後進を始める。
【0090】
次いで、
図9を参照して、動力伝達装置1の制御装置70の電気的構成について説明する。
図9は動力伝達装置1の制御装置70の電気的構成を示したブロック図である。制御装置70は、
図9に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、第1荷重付与装置15等の装置が接続されている。
【0091】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、
図10に図示されるフローチャートのプログラム)などの固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。
【0092】
シフトスイッチセンサ装置80は、運転者によるアップシフト操作またはダウンシフト操作の有無を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置である。本実施の形態においては、シフトレバー装置(図示せず)に内蔵されたシーケンシャルスイッチと、そのシーケンシャルスイッチの出力信号を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0093】
走行速度検出装置81は、車軸の回転速度に比例したパルスを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置である。CPU71は、走行速度検出装置81から入力された検出結果から、車両200の走行速度を取得することができる。
【0094】
荷重付与センサ装置82は、第1荷重付与装置15の作動(ON)又は非作動(OFF)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、第1荷重付与装置15の作動(ON)又は非作動(OFF)をそれぞれ検出する荷重付与センサ(図示せず)と、それら各荷重付与センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0095】
アクセルペダルセンサ装置83は、アクセルペダル(図示せず)の操作量およびアクセルペダルの踏み込み加減速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダルの踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、アクセルペダルの踏み込み加減速度を検出する角速度センサ(図示せず)と、その角度センサや角速度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0096】
第1軸回転数センサ装置84及び第2軸回転数センサ装置85は、第1軸3(
図2参照)及び第2軸4の回転数を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、回転数センサ(図示せず)と、その回転数センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
【0097】
図8に示す他の入出力装置86としては、例えば、車両200の加速度を検出する加速度センサなどが例示される。車両200の加速度の検出結果を考慮して、CPU71は変速要求があるかの判断を行うことも可能である。
【0098】
次いで、
図10を参照して、動力伝達装置1の制御装置70における動力伝達制御処理について説明する。
図10は第1実施の形態における動力伝達装置1の制御装置70の動力伝達制御処理を示すフローチャートである。この処理は、制御装置70に電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
【0099】
CPU71は動力伝達制御処理に関し、車両200が発進するときに(
図7(b)参照)、第1軸3及び第2軸4の回転数を取得する(S1)。なお、この処理は、上述したように、第1軸回転数センサ装置84(
図9参照)及び第2軸回転数センサ装置85の検出結果を用いて行われる。また、車両200が発進することは、シフトスイッチセンサ装置80、走行速度検出装置81及びアクセルペダルセンサ装置83の各検出結果を用いて検知する。
【0100】
次にCPU71は、第1軸3の回転数と第2軸4の回転数とを比較する(S2)。その結果、第1軸3の回転数が第2軸4の回転数と一致しないと判断される場合には(S2:No)、第1荷重付与装置15を作動(ON)して、この動力伝達制御処理を終了する。第1軸3の回転数が第2軸4の回転数より小さいときは、第1荷重付与装置15を作動することにより、第2軸4から第1軸3への動力の伝達を遮断し、遊星歯車装置30が第1クラッチ10の影響を受けることを防止する。
【0101】
また、第1軸3の回転数が第2軸4の回転数より大きいときは、第1クラッチ10では、第1外輪12(
図5参照)との相対回転で第1外輪12側から見て、第1内輪11はフリー方向に回転し、第1スプラグ13は反セルフロック方向に傾動する。この結果、第1荷重付与装置15を作動しなくても、第1軸3から第2軸4への動力の伝達は遮断される。
【0102】
一方、S2の処理の結果、第1軸3の回転数と第2軸4の回転数とが一致すると判断される場合には(S2:Yes)、第1荷重付与装置15を非作動(OFF)として、この動力伝達制御処理を終了する。第1軸3の回転数と第2軸4の回転数とが一致するときは、第1荷重付与装置15を非作動とすることにより、第1荷重付与装置15の動作の切換え時に生じる衝撃を防止できると共に、エネルギー損失を防止できる。即ち、第1軸3の回転数と第2軸4の回転数とが等しいときは、第1クラッチ10(
図5参照)の第1内輪11および第1外輪12の回転数も等しくなる。このときに第1荷重付与装置15(
図2参照)を非作動とすると、第1内輪11及び第1外輪12に第1スプラグ13が係合するが、第1内輪11と第1外輪12との速度差が生じないため、第1スプラグ13が係合するときに慣性トルクが生じることを防ぎ、衝撃を防止できる。また、第1荷重付与装置15を非作動とした後、エンジン211の回転数を上げて第1軸3の回転数が第2軸4の回転数を超えると、第1スプラグ13は反セルフロック方向に傾動するので、第1軸3から第2軸4への動力の伝達は遮断される。従って、第1軸3から第2軸4への動力の伝達によるエネルギー損失を防止できる。さらに、第1軸3の回転数が第2軸4の回転数以上のときに第1荷重付与装置15を非作動とするので、第1荷重付与装置15の作動時間を減らすことができ、第1荷重付与装置15の作動によるエネルギー損失を抑制できる。
【0103】
なお、
図10に示すフローチャート(動力伝達制御処理)において、請求項6記載の第1軸回転数取得手段および第2軸回転数取得手段としてはS1の処理が、回転数判断手段としてはS2の処理が、荷重制御手段としてはS4の処理がそれぞれ該当する。
【0104】
次いで、
図11を参照して、本発明の第2実施の形態における動力伝達装置101について説明する。上記第1実施の形態においては、動力伝達装置1の遊星歯車装置30がサンギヤ31、リングギヤ34及びキャリヤ33を1つずつ備える場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、遊星歯車装置130が2個のサンギヤ131,132を有し、ピニオンギヤ133がそれらを結合する複合遊星歯車機構である場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0105】
図11は、第2実施の形態における動力伝達装置101及び変速装置212を模式的に示した模式図である。動力伝達装置101の遊星歯車装置130は、第1のサンギヤ131と、その第1のサンギヤ131と所定間隔をあけて配設される第2のサンギヤ132と、それら第1のサンギヤ131及び第2のサンギヤ132に外接噛合する複数のピニオンギヤ133を回転自在に支持するキャリヤ134とを備えて構成されている。本実施の形態では、第1のサンギヤ131は、エンジン211の動力が入力される入力軸2に連結されており、第1要素を構成している。また、キャリヤ134は、ジェネレータモータ60のロータ62が連結されており、第2要素を構成している。さらに、第2のサンギヤ132は、変速装置212に向かって動力を伝達する第1軸3が連結されており、第3要素を構成している。なお、第2実施の形態における動力伝達装置101の動作は、第1実施の形態における動力伝達装置1の動作と同様なので、その説明を省略する。
【0106】
次いで、
図12を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、動力伝達装置1が、キャリヤ33(第1要素)、リングギヤ34(第2要素)及びサンギヤ31(第3要素)を備える遊星歯車装置30のサンギヤ31に第1軸3が連結されると共にリングギヤ34に第2軸4が連結されており、第1クラッチ10の第1外輪12及び第2クラッチ20の第2外輪11が第2軸4と一体に構成され、第1クラッチ10の第1内輪11及び第2クラッチ20の第2内輪21が第1軸3と一体に構成される場合について説明した。
【0107】
これに対し第3実施の形態における動力伝達装置301は、キャリヤ333(第1要素)、リングギヤ334(第2要素)、サンギヤ331(第3要素)及びサンギヤ331とリングギヤ334とに噛み合うピニオンギヤ332を備える点、遊星歯車装置330のサンギヤ331に第1軸3が連結される点、第1クラッチ10の第1外輪12及び第2クラッチ20の第2外輪22が第2軸4と一体に構成され、第1クラッチ10の第1内輪11及び第2クラッチ20の第2内輪21が第1軸3と一体に構成される点では、第1実施の形態と共通するが、第2軸4がキャリヤ333と連結されている点が第1実施の形態と相違する。
【0108】
図12は第3実施の形態における動力伝達装置301の内部構造を模式的に示した模式図である。なお、第1実施の形態と同一の部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
図12では、理解を容易とするために、動力を伝達する機能を担う構成のみを図示している。また、
図2に示す変速装置212の記載を省略している。
【0109】
動力伝達装置301は車両200(
図1参照)に搭載されるものであり、
図12に示すように、エンジン211の動力を伝達する入力軸2が連結される遊星歯車装置330と、遊星歯車装置330から変速装置(図示せず)までの動力伝達経路上に配設される第1クラッチ10及び第2クラッチ20とを主に備えて構成されている。なお、遊星歯車装置330の第1要素、第2要素及び第3要素の回転数と車両200の走行速度との関係は、
図6に示すものと同様であるので、その説明を省略する。
【0110】
第1クラッチ10は、キャリヤ333(第1要素)に連結される第2軸4と、サンギヤ331に連結される第1軸3との間の動力の伝達および遮断を行うためのものであり、第2軸4から入力される動力を第1軸3に遮断可能に伝達する一方、第1軸3から第2軸4への動力の伝達を遮断するように構成されている。また、第2クラッチ20は、第2軸4と第1軸3との間の動力の伝達および遮断を行うためのものであり、第1軸3から入力される動力を第2軸4に伝達する一方、第2軸4から第1軸3への動力の伝達を遮断するように構成されている。
【0111】
次に、エンジン211の始動時における動力伝達装置301の動作について説明する。エンジン211の始動時においては、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15を非作動(OFF)とする。この状態において、ジェネレータモータ60を作動させてロータ62を回転させると、動力がリングギヤ334(第2要素)に伝達される。
図6に示すように、遊星歯車装置330の第2要素(リングギヤ334)の回転数がプラス方向に増加すると、第3要素(サンギヤ331)の回転数がマイナス方向に増加するので、リングギヤ334に伝達された動力はサンギヤ331を回転させ、第1軸3を回転させる。第1軸3に伝達された動力により、第2クラッチ20の第2内輪21が、第2外輪22との相対回転で第2外輪22側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ri方向)に回転する。一方、第1クラッチ10の第1内輪11が、第1外輪12との相対回転で第1外輪12側から見て、フリー方向(
図5の反矢印Ri方向)に回転する。
【0112】
これにより、第2クラッチ20の第2内輪21及び第2外輪22に第2スプラグ23が係合し、動力が第1軸3から第2軸4に伝達される。その結果、第2軸4に連結されるキャリヤ333(第1要素)が回転する。これにより、キャリヤ333に連結される入力軸2に動力が伝達され、エンジン211が始動される。なお、エンジン211の始動後は、第1実施の形態で説明したのと同様に、車両200(
図1参照)の前進や後進、シフトアップやシフトダウン、コースト走行、回生を行うことができる。第3実施の形態における動力伝達装置301においても、第2軸4から第1軸3への動力の伝達と遮断を第1クラッチ10によって切り替えることにより、第1実施の形態と同様に、エンジン211及びモータ60の動力切換えを行うことができる。
【0113】
次いで、
図13を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態では、動力伝達装置1が、キャリヤ33(第1要素)、リングギヤ34(第2要素)及びサンギヤ31(第3要素)を備える遊星歯車装置30のサンギヤ31に第1軸3が連結されると共にリングギヤ34に第2軸4が連結されており、第1クラッチ10の第1外輪12及び第2クラッチ20の第2外輪22が第2軸4と一体に構成され、第1クラッチ10の第1内輪11及び第2クラッチ20の第2内輪21が第1軸3と一体に構成される場合について説明した。
【0114】
これに対し第4実施の形態は、第1クラッチ10の第1外輪12及び第2クラッチ20の第2外輪22が第2軸4と一体に構成され、第1クラッチ10の第1内輪11及び第2クラッチ20の第2内輪21が第1軸3と一体に構成される点では、第1実施の形態と共通しているが、リングギヤ434(第1要素)、サンギヤ431(第2要素)、キャリヤ433(第3要素)及びサンギヤ431とリングギヤ434とに噛み合うピニオンギヤ432を備える遊星歯車装置430のキャリヤ433に第1軸3が連結されると共に、サンギヤ431に第2軸4が連結される場合について説明する。
【0115】
図13は、第4実施の形態における動力伝達装置401の内部構造を模式的に示した模式図である。なお、第1実施の形態と同一の部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
図13では、理解を容易とするために、動力を伝達する機能を担う構成のみを図示している。また、
図2に示す変速装置212の記載を省略している。動力伝達装置401は車両200(
図1参照)に搭載されるものであり、
図13に示すように、エンジン211の動力を伝達する入力軸2が連結される遊星歯車装置430と、遊星歯車装置430から変速装置(図示せず)までの動力伝達経路上に配設される第1クラッチ10及び第2クラッチ20とを主に備えて構成されている。
【0116】
遊星歯車装置430のリングギヤ434は、エンジン211の動力が入力される入力軸2に連結されており、第1要素を構成している。また、サンギヤ431は、ジェネレータモータ60のロータ62が連結されており、第2要素を構成している。さらに、キャリヤ433は、変速装置(図示せず)に向かって動力を伝達する第1軸3が連結されており、第3要素を構成している。
【0117】
第1クラッチ10は、サンギヤ431(第2要素)に連結される第2軸4と、キャリヤ433に連結される第1軸3との間の動力の伝達および遮断を行うためのものであり、第2軸4から入力される動力を第1軸3に遮断可能に伝達する一方、第1軸3から第2軸4への動力の伝達を遮断するように構成されている。また、第2クラッチ20は、第2軸4と第1軸3との間の動力の伝達および遮断を行うためのものであり、第1軸3から入力される動力を第2軸4に伝達する一方、第2軸4から第1軸3への動力の伝達を遮断するように構成されている。
【0118】
ここで、
図14を参照して、遊星歯車装置430の動作について説明する。
図14は遊星歯車装置430の第1要素、第2要素および第3要素の回転数と車両200(
図1参照)の走行速度との関係を示す模式図である。
図14の横軸は車両200の走行速度を示し、縦軸は第3要素、第1要素および第2要素の回転数を示している。なお、
図13に示すように、ロータ62は第2軸4を介してサンギヤ431(第2要素)に連結されているので、第2要素の回転数はロータ62及び第2軸4の回転数と等しくなる。また、エンジン211は入力軸2を介してリングギヤ434(第1要素)に連結されているので、第1要素の回転数は入力軸2の回転数と等しくなる。さらに、第1軸3はキャリヤ433(第3要素)及びドライブギヤ5aに連結されているので、第3要素の回転数は第1軸3の回転数およびドライブギヤ5aの回転数と等しくなる。なお、
図14では、車両200の走行速度に対して第1要素の回転数が一定、即ちエンジン211及び入力軸2の回転数が一定(R
1)の特性を図示している。
【0119】
図14に示すように、遊星歯車装置430においては、第2要素の回転数>−R
3かつ第2要素の回転数<R
1のとき、第1要素(リングギヤ434)から動力を入力すると第3要素(キャリヤ433)は減速され(第1要素>第3要素)、第2要素の回転数に応じて任意の変速比で出力される。また、第2要素の回転数=R
1となると、第1要素に入力されるエンジン211の動力がそのまま第3要素(キャリヤ433)に出力される。さらに、ロータ62(
図13参照)の回転数を上げて(第2要素の回転数を上げて)第2要素の回転数>R
1になると、第3要素(キャリヤ433)は増速され(第1要素<第3要素)、第2要素の回転数に応じて任意の変速比で出力される。
【0120】
一方、第2要素の回転数=−R
3のときは第3要素の回転数=0となる。第2要素の回転数<−R
3となると、第3要素の回転数<0となる。即ち、第3要素(キャリヤ433)の回転方向は逆転する。これにより、第4実施の形態においても、第1実施の形態と同様に、出力軸5d(
図2参照)の回転方向を、車両200が前進するときと後進段が選択されたときとで変わらなくすることができる。
【0121】
その結果、変速装置212(
図2参照)は同期噛合機構がなくても、回転数さえ合わせればギヤ鳴りが生ずることなく後進歯車対9を噛み合わせることができる。また、操作性を高めるために変速装置212に同期噛合機構を設ける場合でも、同期噛合機構を小型・簡素化することができ、ひいては変速装置212を小型・簡素化できる。さらに同期噛合機構の小型・簡素化に伴い、同期噛合機構の作動に要するエネルギー消費量を少なくすることができる。
【0122】
また、遊星歯車装置430においては、サンギヤ431(第2要素)の回転数は、キャリヤ433(第3要素)の回転数が一定の場合、リングギヤ434(第1要素)の回転数がマイナス方向に変化するとプラス方向に変化し、リングギヤ434(第1要素)の回転数がプラス方向に変化するとマイナス方向に変化すると共に、リングギヤ434の回転数が所定回転数以下になると回転方向が逆転する。
【0123】
次に、車両200(
図1参照)がジェネレータモータ60の駆動力で発進する場合の動力伝達装置401の動作について説明する。エンジン211は停止しているものとする。この場合は、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15を作動(ON)させる。この状態において、ジェネレータモータ60を作動させてロータ62を回転させると、動力が第2軸4及びサンギヤ431に伝達される。第2軸4に伝達された動力により、第1クラッチ10の第1外輪12が、第1内輪11との相対回転で第1内輪11側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転する。しかしながら、第1荷重付与装置15が作動(ON)しているため、第1クラッチ10を介して第2軸4から第1軸3への動力の伝達は遮断される。また、第2クラッチ20の第2外輪22が、第2内輪21との相対回転で第2内輪21側から見て、フリー方向(
図5の反矢印Ro方向)に回転する。これらの結果、ジェネレータモータ60の動力は第2軸4から第1軸3に伝達されない。
【0124】
一方、ロータ62の動力はサンギヤ431にも伝達されるので、動力が伝達されたサンギヤ431はピニオンギヤ432に係合し、キャリヤ433を回転させる。これにより、キャリヤ433に連結される第1軸3に動力が伝達され、動力が変速装置212(
図1参照)に伝達される。その結果、車両200はジェネレータモータ60の駆動力で発進する。
【0125】
次に、車両200がエンジン211の駆動力で発進する場合の動力伝達装置401の動作について説明する。ロータ62は停止しているものとする。この場合は、図示しないセルモータでエンジン211を始動させた後、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15を非作動(OFF)とする。この状態においてエンジン211の回転数を増加すると、リングギヤ434の回転数がプラス方向に増加し、それに伴ってサンギヤ431の回転数がマイナス方向に増加し、動力が第2軸4に伝達される。第2軸4に伝達された動力により、第1クラッチ10の第1外輪12が、第1内輪11との相対回転で第1内輪11側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ro方向)に回転する。
【0126】
その結果、第1クラッチ10を介して第2軸4から第1軸3への動力が伝達され、動力が変速装置212(
図1参照)に伝達される。これにより、車両200はエンジン211の駆動力で発進する。なお、第4実施の形態においても、第1実施の形態で説明したのと同様に、車両200の前進や後進、シフトアップやシフトダウン、コースト走行、回生を行うことができる。このように、第4実施の形態における動力伝達装置401においても、第2軸4から第1軸3への動力の伝達と遮断を第1クラッチ10によって切り替えることにより、第1実施の形態と同様に、エンジン211及びモータ60の動力切換えを行うことができる。
【0127】
次いで、
図15を参照して、第5実施の形態について説明する。第1実施の形態では、動力伝達装置1が、キャリヤ33(第1要素)、リングギヤ34(第2要素)及びサンギヤ31(第3要素)を備える遊星歯車装置30のサンギヤ31に第1軸3が連結されると共にリングギヤ34に第2軸4が連結されており、第1クラッチ10の第1外輪12及び第2クラッチ20の第2外輪22が第2軸4と一体に構成され、第1クラッチ10の第1内輪11及び第2クラッチ20の第2内輪21が第1軸3と一体に構成される場合について説明した。
【0128】
これに対し第5実施の形態は、第1クラッチ10の第1外輪12及び第2クラッチ20の第2外輪22が第1軸3と一体に構成され、第1クラッチ10の第1内輪11及び第2クラッチ20の第2内輪21が第2軸4と一体に構成されると共に、リングギヤ534(第1要素)、サンギヤ531(第2要素)、キャリヤ533(第3要素)及びサンギヤ531とリングギヤ534とに噛み合うピニオンギヤ532を備える遊星歯車装置530のキャリヤ533に第1軸3が連結されると共に、サンギヤ531に第2軸4が連結される場合について説明する。
【0129】
図15は第5実施の形態における動力伝達装置501の内部構造を模式的に示した模式図である。なお、第1実施の形態と同一の部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
図15では、理解を容易とするために、動力を伝達する機能を担う構成のみを図示している。また、
図2に示す変速装置212の記載を省略している。動力伝達装置501は車両200(
図1参照)に搭載されるものであり、
図15に示すように、エンジン211の動力を伝達する入力軸2が連結される遊星歯車装置530と、遊星歯車装置530から変速装置212(
図1参照)までの動力伝達経路上に配設される第1クラッチ10及び第2クラッチ20とを主に備えて構成されている。
【0130】
遊星歯車装置530のリングギヤ534は、エンジン211の動力が入力される入力軸2に連結されており、第1要素を構成している。また、サンギヤ531は、ジェネレータモータ60のロータ62が連結されており、第2要素を構成している。さらに、キャリヤ533は、変速装置212に向かって動力を伝達する第1軸3が連結されており、第3要素を構成している。
【0131】
第1クラッチ10は、サンギヤ531(第2要素)に連結される第2軸4と、キャリヤ533(第3要素)に連結される第1軸3との間の動力の伝達および遮断を行うためのものであり、第2軸4から入力される動力を第1軸3に遮断可能に伝達する一方、第1軸3から第2軸4への動力の伝達を遮断するように構成されている。また、第2クラッチ20は、第2軸4と第1軸3との間の動力の伝達および遮断を行うためのものであり、第1軸から入力される動力を第2軸4に伝達する一方、第2軸4から第1軸3への動力の伝達を遮断するように構成されている。なお、遊星歯車装置530の第1要素、第2要素及び第3要素の回転数と走行速度との関係は、
図14に示すものと同様であるので、その説明を省略する。
【0132】
次に、車両200(
図1参照)がジェネレータモータ60の駆動力で発進する場合の動力伝達装置501の動作について説明する。エンジン211は停止しているものとする。この場合は、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15を作動(ON)させる。この状態において、ジェネレータモータ60を作動させてロータ62を回転させると、動力が第2軸4及びサンギヤ531に伝達される。第2軸4に伝達された動力により、第1クラッチ10の第1内輪11が、第1外輪12との相対回転で第1外輪12側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ri方向)に回転する。しかしながら、第1荷重付与装置15が作動(ON)しているため、第1クラッチ10を介して第2軸4から第1軸3への動力の伝達は遮断される。また、第2クラッチ20の第2内輪21が、第2外輪22との相対回転で第2外輪22側から見て、フリー方向(
図5の反矢印Ri方向)に回転する。これらの結果、ジェネレータモータ60の動力は第2軸4から第1軸3に伝達されない。
【0133】
一方、ロータ62の動力はサンギヤ531にも伝達される。動力が伝達されたサンギヤ531はピニオンギヤ532に係合し、キャリヤ533を回転させる。これにより、キャリヤ533に連結される第1軸3に動力が伝達され、動力が変速装置212(
図1参照)に伝達される。その結果、車両200(
図1参照)はジェネレータモータ60の駆動力で発進する。
【0134】
次に、車両200がエンジン211の駆動力で発進する場合の動力伝達装置501の動作について説明する。ロータ62は停止しているものとする。この場合は、図示しないセルモータでエンジン211を始動させた後、第1クラッチ10の第1荷重付与装置15を非作動(OFF)とする。この状態においてエンジン211の回転数を増加すると、リングギヤ534の回転数がプラス方向に増加し、それに伴ってサンギヤ531の回転数がマイナス方向に増加し、動力が第2軸4に伝達される。第2軸4に伝達された動力により、第1クラッチ10の第1内輪11が、第1外輪12との相対回転で第1外輪12側から見て、ロック方向(
図5の矢印Ri方向)に回転する。
【0135】
その結果、第1クラッチ10を介して第2軸4から第1軸3への動力が伝達され、動力が変速装置212(
図1参照)に伝達される。これにより、車両200はエンジン211の駆動力で発進する。なお、第5実施の形態においても、第1実施の形態で説明したのと同様に、車両200の前進や後進、シフトアップやシフトダウン、コースト走行、回生を行うことができる。このように、第5実施の形態における動力伝達装置501においても、第2軸4から第1軸3への動力の伝達と遮断を第1クラッチ10によって切り替えることにより、第1実施の形態と同様に、エンジン211及びモータ60の動力切換えを行うことができる。
【0136】
次いで、
図16から
図21を参照して、第6実施の形態について説明する。第1実施の形態では、動力伝達装置1が、キャリヤ33(第1要素)、リングギヤ34(第2要素)及びサンギヤ31(第3要素)を備える遊星歯車装置30のサンギヤ31に第1軸3が連結されると共に、リングギヤ34に第2軸4が連結されていた。また、第1クラッチ10の第1外輪12及び第2クラッチ20の第2外輪22が第2軸4と一体に構成され、第1クラッチ10の第1内輪11及び第2クラッチ20の第2内輪21が第1軸3と一体に構成されていた。また、第1クラッチ10の第1スプラグ13は第1内輪11及び第1外輪12に係合する方向に第1付勢部材16により付勢され、第1荷重付与装置15は第1内輪11及び第1外輪12と第1スプラグ13との係合を解除する方向に荷重を付与する場合について説明した。
【0137】
これに対し第6実施の形態は、第1クラッチ610の第1外輪12及び第2クラッチ20の第2外輪22が第2軸4と一体に構成されると共に、サンギヤ631(第1要素)、キャリヤ633(第2要素)、リングギヤ634(第3要素)及びサンギヤ631とリングギヤ634とに噛み合うピニオンギヤ632を備える遊星歯車装置630のリングギヤ634に第1軸3が連結され、キャリヤ633に第2軸4が連結され、サンギヤ631に入力軸2が連結される場合について説明する。
【0138】
図16は第6実施の形態における動力伝達装置601の内部構造を模式的に示した模式図である。なお、第1実施の形態と同一の部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
図16では、理解を容易とするために、動力を伝達する機能を担う構成のみを図示すると共に、変速装置212の図示を省略している。動力伝達装置601は車両200(
図1参照)に搭載されるものであり、
図16に示すように、エンジン211の動力を伝達する入力軸2が連結される遊星歯車装置630と、エンジン211から遊星歯車装置630までの動力伝達経路上に配設される第1クラッチ610及び第2クラッチ20とを主に備えて構成されている。
【0139】
次に、
図17を参照して、第1クラッチ610について説明する。
図17は、第1クラッチ610の円周方向における断面図であり、
図18は第1クラッチ610の一部の分解立体図である。
【0140】
第1クラッチ610は、
図17及び
図18に示すように、入力軸2に連結される内輪11と、その内輪11の外周を囲み第2軸4に連結される外輪12と、それら内輪11と外輪12との間に配設される複数のスプラグ613と、それらスプラグ613を保持する保持器614とを主に備えて構成されている。
【0141】
スプラグ613は、外周面11a及び内周面12aにそれぞれ接する係合面613a,613b(
図18及び
図19参照)を備えている。スプラグ613は、
図18に示すように、2つの係合面613a,613bを連絡する2つの側面613cに溝部613dが各々形成されている。溝部613dは、後述する付勢部材616が装着される部位である。
【0142】
保持器614は、スプラグ613を外周面11a及び内周面12aの円周方向へ傾動可能に保持する部材であり、軸心O方向に環状に延設された保持部614aと、その保持部614aから軸心O方向と交差する方向に延設された荷重伝達部14bとを備えて構成されている。
【0143】
保持部614aは、スプラグ613を保持する部位であり、
図18に示すように、円周方向に亘って等間隔に形成された孔部614a1を複数備えている。内輪11側に位置するスプラグ613の部位(係合面613a側)が孔部614a1に挿入され、スプラグ613の2つの係合面613a,613bを連絡する2つの前後面613eと孔部614a1との間には適当な大きさの遊間が形成される。これにより、スプラグ613は保持部614aによって、円周方向に大きく傾動可能に外周面11aと内周面12aとの対向間に保持される。
【0144】
付勢部材616は、
図17に示すように、環状のコイルスプリングにより形成されており、拡径する方向に付勢力を作用させる部材である。ここで、
図19(a)を参照して、付勢部材616により付勢されるスプラグ613について説明する。
図19(a)は、
図17のXIXで示す部分を拡大して示した動力の伝達を遮断する第1クラッチ610の部分拡大断面図である。なお、
図19において、外輪12はジェネレータモータ60(
図16参照)によって駆動され、矢印T方向(
図19反時計回り)に回転しているものとする。
【0145】
付勢部材616は、スプラグ613の溝部613dに装着されており、拡径する方向に付勢力を作用させることで、スプラグ613の係合面613bと外輪12の内周面12aとに生じる摩擦力を利用して、スプラグ613の係合面613aを
図19の矢印S方向(以下「反ロック方向」と称す)へ傾動させる。これにより、内輪11及び外輪12は相対回転が可能となり、外輪12から内輪11への動力の伝達は遮断される。また、
図19(a)に示すように、外周面11aと係合面613aとに隙間が生じる。その結果、外周面11aとスプラグ613の係合面613aとの摩擦をなくすことができ、摩擦によるエネルギー損失を抑制できる。
【0146】
また、スプラグ613の2つの係合面613a,613bを連絡する2つの前後面613e(
図18参照)と、保持部614aに形成された孔部614a1との間には適当な大きさの遊間が形成されているので、
図19(a)に示すように、スプラグ613は反ロック方向に大きく傾動されることで互いに当接する。互いに当接する位置までスプラグ613を傾かせると、スプラグ613は互いに拘束し合う。これにより、外周面11aと係合面613aとの隙間を十分に確保できる。その結果、内輪11と外輪12とが相対回転をするときに、外周面11aと係合面613aとが接触して、意図せずにスプラグ613が外周面11a及び内周面12aに係合して内輪11及び外輪12の相対回転が規制されてしまうことを防止できる。
【0147】
また、スプラグ613の2つの係合面613a,613bを連絡する2つの側面613cに溝部613dが各々形成され、付勢部材616が、これら溝部613dに装着されるので、付勢部材616の付勢力によって、スプラグ613をバランス良く反ロック方向へ傾動させることが可能である。
【0148】
上述の第1クラッチ610によれば、内輪11及び外輪12へスプラグ613を係合させるには、付勢部材616の付勢力に抗してスプラグ613に外力を付与する必要がある。そこで、第1クラッチ610には、荷重付与装置15(
図16参照)が設けられている。荷重付与装置15は、付勢部材616の付勢力に抗してスプラグ613に荷重を付与して、スプラグ613を
図19の反矢印S方向(以下「ロック方向」と称す)へ傾動させるための装置である。
【0149】
図19(b)に示すように、荷重付与装置15により付勢部材616の付勢力に抗して保持器614を介して、スプラグ613にロック方向(
図19の反矢印S方向)の荷重を付与することで、スプラグ613の係合面613bを略中心にして、スプラグ613をロック方向へ傾動させることができる。その結果、外周面11a及び内周面12aにスプラグ613の係合面613a,613bが接することで、内周面12aと係合面613bとの接点および外周面11aと係合面613aとの接点に摩擦力が発生すると共に、外周面11a及び内周面12aの円周方向における各接点の位置ずれにより、内輪11及び外輪12にスプラグ613が係合して内輪11と外輪12との相対回転が規制される。これにより、外輪12から内輪11に動力が伝達され、外輪12の回転(矢印T方向)に伴い内輪11が回転する。
【0150】
内輪11及び外輪12にスプラグ613が係合して内輪11と外輪12との相対回転が規制されるとき、内輪11との相対回転で内輪11側からみて、外輪12がロック方向(矢印Lo方向)に回転するときは、荷重付与装置15による荷重の付与を停止しても、外輪12の回転によってスプラグ613はロック方向に傾動され、内輪11及び外輪12とスプラグ613との係合は維持される。
【0151】
これに対し、内輪11及び外輪12にスプラグ613が係合して内輪11と外輪12との相対回転が規制されるときに、内輪11との相対回転で内輪11側からみて、外輪12が反ロック方向(反矢印Lo方向)に回転するときは、荷重付与装置15を停止するか荷重付与装置15が付与する荷重を小さくすることで、付勢部材616の付勢力により、スプラグ613は反ロック方向(
図19の矢印S方向)に傾動する。これにより、内輪11及び外輪12とスプラグ613との係合が解除され、外輪12から内輪11への動力の伝達が遮断される。
【0152】
以上のように構成される第1クラッチ610によれば、
荷重付与装置15によりスプラグ613に荷重が付与されることで、内輪11及び外輪12にスプラグ613が係合して内輪11と外輪12との一定回転方向への相対回転が規制される。これに対し、
荷重付与装置15による荷重の付与が解除されると、付勢部材616によりスプラグ613に付勢力が付与されているので、内輪11及び外輪12へのスプラグ613の係合が解除され、内輪11と外輪12とが両回転方向に相対回転する。これにより、一定方向への回転の伝達および遮断の切り替えを行うことができる。
【0153】
次いで、
図20を参照して、スプラグ613に作用する付勢力および荷重の関係について説明する。
図20は反ロック方向へ傾動されたスプラグ613の模式図である。
図20に示すように、内輪11及び外輪12との係合が解除されているスプラグ613は、付勢部材616によって付与される付勢力(荷重P)により、当接面613bと内周面12aとの接点Aの回りに、反ロック方向(
図20時計回り)へ傾動される回転モーメントが生じる。また、スプラグ613が内輪11及び外輪12に係合して内輪11及び外輪12の回転に伴い軸心O回りに公転すると、スプラグ613に遠心力Kが働く。これらに伴い、接点Aに押付け荷重が作用する。その反力として、スプラグ613に対して、接点Aにおいて内周面12aの法線方向へ反力F
Aが作用する。これに対して、スプラグ613をロック方向へ傾動させるために、保持部614aは、スプラグ613と接する接点Cにロック方向の荷重Rを付与する。
【0154】
ここで、スプラグ613に作用する接点A回りの回転モーメントM
Aを考えると、スプラグ613には荷重P、荷重R及び遠心力Kが作用するので、回転モーメントM
Aは、以下の式(1)で表される。
【0155】
M
A=Lp・P+Lk・K−Lr・R …式(1)
但し、式(1)において、Lpは接点Aから荷重Pの作用点(溝部613d)までの水平距離であり、Lkは接点Aから遠心力Kの作用点(スプラグ613の重心G)までの水平距離であり、Lrは接点Aから荷重Rの作用点(接点C)までの垂直距離である。なお、回転モーメントM
Aは接点A回りの時計回りを正とする。また、荷重P,K及びRは、厳密にいえば、荷重の水平成分および垂直成分による誤差を考慮する必要があるが、その誤差は荷重P,K及びRの大きさに比べて著しく小さいため、荷重P及びKは垂直方向に作用し、荷重Rは水平方向に作用するものとする。
【0156】
ここで、スプラグ613の係合面613aを外周面11aに係合させるためには、スプラグ613の係合面613bが内周面12aを滑らずに、スプラグ613が
図20の反時計回りに傾動されることが必要である。即ちM
A<0であることが必要である。また、
図20に示す状態では、内輪11及び外輪12とスプラグ613との係合が解除されているので、外輪12や内輪11は軸心O回りに回転できるが、外輪12や内輪11の駆動力ではスプラグ613は軸心O回りに公転できない。従って、スプラグ613に遠心力Kは作用しない(K=0)。以上のことから、スプラグ613の係合面613aを外周面11aに係合させる必要条件は、式(1)にM
A<0,K=0を代入して、以下の式(2)で表される。
【0157】
R>Lp/Lr・P …式(2)
ここで、Lp<Lrであるとすれば、Lp/Lr<1である。よって、式(2)より、荷重R>Lp/Lr・P<Pとなる。従って、荷重付与装置15は、付勢部材616の付勢力(荷重P)よりも大きな荷重をスプラグ613に付与しなくとも、外輪12及び内輪11へスプラグ613を係合させることができる。これにより、荷重付与装置15を小型化できると共に、小さな荷重で済むので、エネルギー損失を抑制できる。ひいては第1クラッチ610を小型化できる。
【0158】
また、
図20において、接点Aにおける法線と垂直方向とのなす角をαとすると、内周面12aからスプラグ613に作用する反力F
Aの水平方向の分力成分F
Ahの大きさはF
A・sinαであり、その向きはロック方向(
図20反時計回り)と同じ向きである。また、接点Aにおける摩擦係数をμ、反力F
Aの垂直方向の分力成分をF
Apとすると、摩擦の大きさはμ・F
Ap=μ・F
A・cosαであり、その向きもロック方向と同じ向きである。
【0159】
以上のように、内周面12aが係合面613bと接する接点Aにおいて内周面12aからスプラグ613に作用する反力F
Aは、荷重付与装置15により保持部614aを介してスプラグ613に作用する荷重Rの荷重方向(水平方向であり
図20の左右方向)の分力成分の向きが、ロック方向(
図20反時計回り)と同じ向きであるので、荷重付与装置15によってスプラグ613に荷重Rが付与されると、内周面12aの上を係合面613bが滑ることが防止され、接点Aを略中心にスプラグ613を確実に傾動させることができる。これにより、荷重付与装置15から荷重が付与されることで、スプラグ613の2つの係合面613a,613bを外周面11a及び内周面12aに確実に係合させることができる。
【0160】
次に
図21を参照して、遊星歯車装置630の動作について説明する。
図21は第1要素、第2要素および第3要素の回転数と車両200の走行速度との関係を示す模式図である。
図21の横軸は車両200の走行速度を示し、縦軸は第3要素、第1要素および第2要素の回転数を示している。なお、
図16に示すように、ロータ62は第2軸4を介してキャリヤ633(第2要素)に連結されているので、第2要素の回転数はロータ62及び第2軸4の回転数と等しくなる。また、エンジン211は入力軸2を介してサンギヤ631(第1要素)に連結されているので、第1要素の回転数は入力軸2の回転数と等しくなる。さらに、第1軸3はリングギヤ634(第3要素)及びドライブギヤ5aに連結されているので、第3要素の回転数は第1軸3の回転数およびドライブギヤ5aの回転数と等しくなる。なお、
図21では、車両200の走行速度に対して第1要素の回転数が一定、即ちエンジン211及び入力軸2の回転数が一定(R
1)の特性を図示している。
【0161】
エンジン211の始動時においては、第1クラッチ610(
図16参照)の第1荷重付与装置15を作動させ、第1スプラグ613を第1内輪11及び第1外輪12に係合させる。この状態において、ジェネレータモータ60を作動させてロータ62を回転させると、動力が第2軸4及びキャリヤ633に伝達される。第2軸4に伝達された動力により、第1クラッチ610の第1外輪12が、第1内輪11との相対回転で第1内輪11側から見て、ロック方向(矢印Lo方向)に回転する。これにより、動力が第1外輪12から第1内輪11及び入力軸2に伝達され、エンジン211が始動される。
【0162】
また、ロータ62の回転はキャリヤ633からリングギヤ634に伝達され、第1軸3が回転する。変速装置212(
図1参照)を動力伝達可能な状態にしておけば、第1軸3の回転を後輪202に伝達することができる。これによりエンジン211の始動と同時に、ジェネレータモータ60の動力により車両200を前進(発進)させることができる。車両200の発進と同時にエンジン211を始動させることで、エンジン211の始動時の振動やショックを緩和できる。
【0163】
車両200の発進後、ジェネレータモータ60の負荷を増してロータ62の回転数を減少させキャリヤ633(第1外輪12)の回転数を減少させるか、或いはエンジン211の回転数を上げて入力軸2(第1内輪11)の回転を上げると、第1内輪11及び第1外輪12と第1スプラグ613との係合が解除される。この状態ではエンジン211及びジェネレータモータ60によるハイブリッドモードでの前進走行を実現できる。
【0164】
車両200を前進走行させて加速し、第2軸4の回転数が第1軸3の回転数(R
1)と等しくなると(
図21参照)、第1クラッチ610(
図16)の第1荷重付与装置15を作動させ、第1スプラグ613を第1内輪11及び第1外輪12に係合させる。遊星歯車装置630の3要素を共回り状態にすることで、エンジン211の動力による前進走行が実現される。なお、車両200のコースト走行や制動のときの回生動作や後進動作は、第1実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0165】
次いで、
図22から
図28を参照して、第7実施の形態について説明する。第7実施の形態は、第1クラッチ710の第1外輪12及び第2クラッチ720の第2外輪22が第2軸4と一体に構成されている。また、遊星歯車装置730は、キャリヤ733(第1要素)、サンギヤ731(第2要素)、リングギヤ734(第3要素)及びサンギヤ731とリングギヤ734とに噛み合うピニオンギヤ732を備え、リングギヤ734に第1軸3が連結され、サンギヤ731に第2軸4が連結され、キャリヤ733に入力軸2が連結される場合について説明する。
【0166】
図22は第7実施の形態における動力伝達装置701の内部構造を模式的に示した模式図である。なお、第1実施の形態と同一の部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
図17では、理解を容易とするために、動力を伝達する機能を担う構成のみを図示すると共に、変速装置212の図示を省略している。動力伝達装置701は車両200(
図1参照)に搭載されるものであり、
図22に示すように、エンジン211の動力を伝達する入力軸2が連結される遊星歯車装置730と、エンジン211から遊星歯車装置730までの動力伝達経路上に配設される第1クラッチ710及び第2クラッチ720とを主に備えて構成されている。
【0167】
次に、
図23を参照して、第1クラッチ710及び第2クラッチ720について説明する。
図23は、第1クラッチ710の円周方向における断面図である。なお、
図23においては、図の簡略化のために、第1スプラグ713に並設される第2スプラグ723(
図23紙面奥側)の図示を省略している。本実施の形態では、第1内輪11及び第2内輪21は入力軸2に連結され、第1外輪12及び第2外輪22は第2軸4に連結されている。
【0168】
第1クラッチ710の第1スプラグ713は、内輪11と外輪12との相対回転を規制するための機能を担う部材であり、外周面11a及び内周面12aの間の収容空間gにおいて円周方向に等間隔で複数配設されている。第1スプラグ713は、内輪11及び外輪12の一方向への相対回転により、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに係合面713a,713bが係合可能に構成されている。
【0169】
第2クラッチ720の第2スプラグ723は、第1スプラグ713と共に、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aの間の収容空間gにおいて、第1スプラグ713に併せて円周方向に等間隔で複数配設されている。第2スプラグ723は、内輪11及び外輪12の他方向への相対回転により、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに係合面723a,723bが係合可能に構成されている。
【0170】
内保持器717は、ポケット717bが円周方向に複数貫通形成されると共に軸方向に並設された円筒状の部材であり、ポケット717bに挿入される第1スプラグ713及び第2スプラグ723(
図24参照)の内輪11側の部位を保持している。
【0171】
外保持器718は、ポケット718dが円周方向に複数貫通形成されると共に軸方向に並設された円筒状の部材であり、ポケット718dに挿入される第1スプラグ713及び第2スプラグ723(
図24参照)の外輪12側の部位を保持している。また、外保持器718は第1スプラグ713を保持する第1保持部718b(
図24参照)と、その第1保持部718bから軸方向に分離されると共に第2スプラグ723を保持する第2保持部718cとを備えて構成されている。第1保持部718b及び第2保持部718cは円周方向にポケット718dが等間隔に配列され、それらポケット718dに第1スプラグ713及び第2スプラグ723が挿入される。
【0172】
図22に戻って説明する。内保持器717及び外保持器718は、軸方向と交差する方向に歯車状の荷重伝達部717a,718aが延設されている。荷重伝達部717a,718aは、第1荷重付与装置715から荷重が伝達される部位である。
【0173】
第1荷重付与装置715は、荷重伝達部717a,718aに荷重を付与し、内保持器717及び外保持器718を相対回転させる、或いは、相対回転を規制するための装置である。第1荷重付与装置715により内保持器717及び外保持器718を相対回転させることで、第1内輪11及び第1外輪12と第1スプラグ713との係合および係合解除(第2内輪21及び第2外輪22と第2スプラグ723との係合および係合解除)を切り換えることができる。第1荷重付与装置715は、電動機715a,715cと、それら電動機715a,715cに連結され荷重伝達部717a,718aと噛合するピニオン715b,715dとを備えて構成されている。
【0174】
次に
図24から
図27を参照して、第1保持部718b及び第2保持部718cの構成および動作を説明する。まず、
図24(a)を参照して第1保持部718b及び第2保持部718cの構成を説明する。
図24(a)は相対移動が規制される第1保持部718b及び第2保持部718cの要部斜視図である。なお、
図24から
図27においては、第1保持部718b及び第2保持部718cに保持される第1スプラグ713及び第2スプラグ723の一部の図示を省略し、図面を簡素化している。
【0175】
図24(a)に示すように、第1保持部718bは、第2保持部718cとの相対面に第2保持部718cに向かって凸部718eが突設されている。凸部718eは、円周方向の一方に第1面718e1が形成され、他方に第3面718e2が形成されている。第2保持部718cは、第1保持部718bとの相対面に凸部718eを受け入れる凹部718gが形成されている。凹部718gの円周方向における長さは、凸部718eの円周方向における長さより大きく設定されており、凹部718gは、円周方向の一方に第1面718e1と当接可能な第2面718g1が形成され、他方に第3面718e2と当接可能な第4面718g2が形成されている。凹部718gの内側を凸部718eが移動可能な範囲で第1保持部718b及び第2保持部718cは相対移動が可能であるが、凸部717eの第1面718e1に凹部718gの第2面718g1が当接することで、第1保持部718b及び第2保持部718cの円周方向の一方の相対移動が規制される。また、凸部718eの第3面718e2に凹部718gの第4面718g2が当接することで、第1保持部718b及び第2保持部718cの円周方向の他方の相対移動が規制される。
【0176】
係止部718f,718hは、第1保持部718b及び第2保持部718cの各々に形成され、第2付勢部材(図示せず)の両端部が係止される部位である。本実施の形態では、係止部718f,718hは、第1保持部718b及び第2保持部718cの内周面から外周面に亘って貫通形成され、第2付勢部材はねじりコイルばねで形成されている。第2付勢部材は、両端部が係止部718f,718hに係止されると共に、環状の部位が外保持器718の内周面に沿って第1スプラグ713及び第2スプラグ723の間に配設される。その結果、第2付勢部材は、第1保持部718bの第1面718e1が第2保持部718cの第2面718g1に当接するように、第1保持部718b及び第2保持部718cを円周方向の一方に付勢する。荷重付与装置715(
図22参照)により第2保持部718cに荷重が付与されると、第2付勢部材(図示せず)の付勢力により第2保持部718cに第1保持部718bが随伴され、第1保持部718b及び第2保持部718cを外保持器718として一体に移動させることができる。
【0177】
次に、
図24(b)及び
図24(c)を参照して、内保持器717及び外保持器718を円周方向の一方に相対移動したときの第1スプラグ713及び第2スプラグ723の動作について説明する。
図24(b)は第1保持部718bの円周方向断面図であり、
図24(c)は第2保持部718cの円周方向断面図である。
【0178】
第1荷重付与装置715により、
図24(b)に示すように、内保持器717及び外保持器718(第1保持部718b)にそれぞれ矢印B方向の荷重が付与され、内保持器717及び外保持器718(第1保持部718b)が相対移動され、内保持器717及び第1保持部718bのポケット717b,718dに挿入される第1スプラグ713が傾動される。これにより、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに第1スプラグ713の係合面713a,713bを接触させ、内輪11及び外輪12に第1スプラグ731を係合可能な状態にできる。このとき、第1スプラグ713は、隣に位置する第1スプラグ713に向かって凸設される当接部713cが当接することなく、外周面11aと内周面12aとの対向間の円周方向に所定の間隔をあけて位置される。
【0179】
また、上述したように第2保持部718cは第1保持部718bと一体に移動するので、内保持器717及び外保持器718(第2保持部718c)にそれぞれ矢印B方向の荷重が付与されると、内保持器717及び外保持器718(第2保持部718c)が相対移動され、内保持器717及び第2保持部718cのポケット717b,718dに挿入された第2スプラグ723が傾動される。これにより、内輪11の外周面11a又は外輪12の内周面12aの少なくとも一方と第2スプラグ723の係合面723a,723bとが非接触状態にされる。その結果、内輪11及び外輪12と第2スプラグ723とは係合できなくなる。
【0180】
図24(b)に示す状態において、内輪11又は外輪12に動力が伝達されて、
図24の時計回りに内輪11が回転するか、又は、
図24の反時計回りに外輪12が回転すると、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに第1スプラグ713の係合面713a,713bが係合し、第1スプラグ713を介して動力が伝達される。
【0181】
一方、第2スプラグ723では、内輪11の外周面11a又は外輪12の内周面12aの少なくとも一方と第2スプラグ723の係合面723a,723bとが非接触状態にされることで、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aを第2スプラグ723の係合面723a,723bが摺動することが防止される。これにより、第2スプラグ723の係合面723a,723bに引き摺りトルクが生じることを抑制できる。また、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aを第2スプラグ723の係合面723a,723bが摺動することが防止されるので、磨耗や発熱等が生じることを抑制できる。
【0182】
また、第1スプラグ713が内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに係合した状態(
図24(b)参照)で内保持器717及び外保持器718の相対位置が決まり、このとき第2スプラグ723の係合面723aは、
図24(c)に示すように、内輪11の外周面11aと非接触状態にされる。その結果、第1スプラグ713が内輪11及び外輪12に係合されているときに、第2スプラグ723が意図せずに内輪11及び外輪12に係合することを防止できる。これにより、第1スプラグ713及び第2スプラグ723の両方が内輪11及び外輪12に係合してしまう二重ロックを確実に防止できる。
【0183】
また、第1スプラグ713を介して伝達されるトルクが増大し、内保持器717及び外保持器718が矢印B方向に相対移動すると、
図24(c)に示すように、第2スプラグ723は、当接部723cが隣に位置する第2スプラグ723に当接し、それ以上の傾動が規制される。その結果、内保持器717及び外保持器718(第2保持部718c)は第2スプラグ723を挟持する状態となり、内保持器717及び外保持器718(第2保持部718c)のそれ以上の相対移動が規制される。従って、内保持器717及び外保持器718の相対移動量を規制する位置決め部材等を設ける必要がなく、装置構成を簡素化できる。
【0184】
次に、
図25を参照して、第1スプラグ713が内輪11及び外輪12に強く係合するときの第1保持部718b及び第2保持部718cの動作について説明する。
図25(a)は相対移動される第1保持部718b及び第2保持部718cの要部斜視図であり、
図25(b)は第1保持部718bの円周方向断面図であり、
図25(c)は第2保持部718cの円周方向断面図である。
【0185】
図24に示す状態において、大きなトルクにより
図24の時計回りに内輪11が回転されるか、又は、
図24の反時計回りに外輪12が回転されると、
図25(b)に示すように、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに第1スプラグ713の係合面713a,713bが強く係合され、第1スプラグ713が大きく傾動される。すると、その傾動により第1保持部718bが押されて円周方向(
図25反時計回り)に変位する。一方、第2スプラグ723は、
図24の時計回りの内輪11の回転、又は、
図24の反時計回りの外輪12の回転では内輪11及び外輪12に係合できない。そのため、第2保持部718cは第2スプラグ723の影響を受けることなく円周方向に変位しない。従って、内保持器717に対する第1保持部718bの円周方向の変位は、内保持器717に対する第2保持部718cの円周方向の変位より大きくなる。
【0186】
ここで、第1保持部718b及び第2保持部718c(外保持器718)が剛体として一体的に形成されている場合は、第1保持部718bの変位につれて第2保持部718cが円周方向に変位する。そうすると、外保持器718から第2スプラグ723が外れたり、内保持器717や外保持器718が破損したりすることがある。
【0187】
これに対し、第1保持部718b及び第2保持部718cは軸方向に分離されており、且つ、円周方向に相対移動可能に構成されているので、第1スプラグ713が傾動して第1保持部718bが押されると、第3面718e2(
図25(a)参照)が第4面718g2に当接するまで、第1保持部718bだけが第2保持部718cに対して相対移動する。その結果、第1保持部718bの変位の影響を第2保持部718c(
図25(c)参照)が受けることを防止でき、第2保持部718cのポケット718dから第2スプラグ723が外れたり、内保持器717や第2保持部718cが破損したりすることを防止できる。
【0188】
次に、
図26を参照して、内保持器717及び外保持器718を円周方向の他方(
図24とは反対方向)に相対移動したときの第1スプラグ713及び第2スプラグ723の動作について説明する。
図26(a)は相対移動が規制される第1保持部718b及び第2保持部718cの要部斜視図であり、
図26(b)は第1保持部718bの円周方向断面図であり、
図26(c)は第2保持部718cの円周方向断面図である。
【0189】
荷重付与装置715(
図22参照)を作動させ、内保持器717及び外保持器718(第1保持部718b)にそれぞれ矢印R方向の荷重を付与すると、内保持器717及び外保持器718(第1保持部718b)が相対移動され、内保持器717及び第1保持部718bのポケット717b,718dに挿入される第1スプラグ713が傾動される。これにより、内輪11の外周面11a又は外輪12の内周面12aの少なくとも一方と第1スプラグ713の係合面713a,713bとが非接触状態にされる。その結果、内輪11及び外輪12と第1スプラグ713とは係合できなくなる。
【0190】
また、上述したように第2保持部718cは第1保持部718bと一体に移動するので、荷重付与装置715により内保持器717及び外保持器718(第2保持部718c)にそれぞれ矢印R方向の荷重が付与されると(
図26(c)参照)、内保持器717及び外保持器718(第2保持部718c)が相対移動され、内保持器717及び第2保持部718cのポケット717b,718dに挿入された第2スプラグ723が傾動される。これにより、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに第2スプラグ723の係合面723a,723bを接触させ、内輪11及び外輪12に第2スプラグ723を係合可能な状態にできる。このとき、第2スプラグ723は、隣に位置する第2スプラグ723に向かって凸設される当接部723cが当接することなく、外周面11aと内周面12aの対向間の円周方向に所定の間隔をあけて位置される。
【0191】
図26(c)に示す状態において、内輪11又は外輪12に動力が伝達されて、
図26の時計回りに外輪12が回転するか、又は、
図26の反時計回りに内輪11が回転すると、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに第2スプラグ723の係合面723a,723bが係合し、第2スプラグ723を介して動力が伝達される。
【0192】
一方、
図26(b)に示すように第1スプラグ713では、内輪11の外周面11a又は外輪12の内周面12aの少なくとも一方と第1スプラグ713の係合面713a,713bとが非接触状態にされることで、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aを第1スプラグ713の係合面713a,713bが摺動することが防止される。これにより、第1スプラグ713の係合面713a,713bに引き摺りトルクが生じることを抑制できる。また、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aを第1スプラグ713の係合面713a,713bが摺動することが防止されるので、磨耗や発熱等が生じることを抑制できる。
【0193】
また、第2スプラグ723が内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに係合した状態(
図26(c)参照)で内保持器717及び外保持器718の相対位置が決まり、このとき第1スプラグ713の係合面713aは、
図26(b)に示すように、内輪11の外周面11aと非接触状態にされる。その結果、第2スプラグ723が内輪11及び外輪12に係合されているときに、第1スプラグ713が意図せずに内輪11及び外輪12に係合することを防止できる。これにより、第1スプラグ713及び第2スプラグ723の両方が内輪11及び外輪12に係合してしまう二重ロックを確実に防止できる。
【0194】
また、第2スプラグ723を介して伝達されるトルクが増大し、内保持器717及び外保持器718が矢印R方向に相対移動すると、
図26(b)に示すように、第1スプラグ713は、当接部713cが隣に位置する第1スプラグ713に当接し、それ以上の傾動が規制される。その結果、内保持器717及び外保持器718(第1保持部718b)は第1スプラグ713を挟持する状態となり、内保持器717及び外保持器718(第1保持部718b)のそれ以上の相対移動が規制される。従って、内保持器717及び外保持器718の相対移動量を規制する位置決め部材等を設ける必要がなく、装置構成を簡素化できる。
【0195】
次に、
図27を参照して、第2スプラグ723が内輪11及び外輪12に強く係合するときの第1保持部718b及び第2保持部718cの動作について説明する。
図27(a)は相対移動される第1保持部718b及び第2保持部718cの要部斜視図であり、
図27(b)は第1保持部718bの円周方向断面図であり、
図27(c)は第2保持部718cの円周方向断面図である。
【0196】
図26に示す状態において、大きなトルクにより
図26の反時計回りに内輪11が回転されるか、又は、
図26の時計回りに外輪12が回転されると、
図27(c)に示すように、内輪11の外周面11a及び外輪12の内周面12aに第2スプラグ723の係合面723a,723bが強く係合され、第2スプラグ723が大きく傾動される。すると、その傾動により第2保持部718cが押されて円周方向(
図27時計回り)に変位する。一方、第1スプラグ713は、
図26の反時計回りの内輪11の回転、又は、
図26の時計回りの外輪12の回転では内輪11及び外輪12に係合できない。そのため、第1保持部718bは第1スプラグ713の影響を受けることなく円周方向に変位しない。従って、内保持器717に対する第2保持部718cの円周方向の変位は、内保持器717に対する第1保持部718bの円周方向の変位より大きくなる。
【0197】
しかし、上述したように第1保持部718b及び第2保持部718cは軸方向に分離されており、且つ、円周方向に相対移動可能に構成されているので、第2スプラグ723が傾動して第2保持部718cが押されると、第4面718g2(
図27(a)参照)が第3面718e2に当接するまで、第2保持部718cだけが第1保持部718bに対して相対移動する。その結果、第2保持部718cの変位の影響を第1保持部718b(
図27(b)参照)が受けることを防止でき、第1保持部718bのポケット718dから第1スプラグ713が外れたり、内保持器717や外保持器718が破損したりすることを防止できる。
【0198】
次に
図28を参照して、遊星歯車装置730の動作について説明する。
図28は第1要素、第2要素および第3要素の回転数と車両200の走行速度との関係を示す模式図である。
図28の横軸は車両200の走行速度を示し、縦軸は第3要素、第1要素および第2要素の回転数を示している。なお、
図22に示すように、ロータ62は第2軸4を介してサンギヤ731(第2要素)に連結されているので、第2要素の回転数はロータ62及び第2軸4の回転数と等しくなる。また、エンジン211は入力軸2を介してキャリヤ733(第1要素)に連結されているので、第1要素の回転数は入力軸2の回転数と等しくなる。さらに、第1軸3はリングギヤ734(第3要素)及びドライブギヤ5aに連結されているので、第3要素の回転数は第1軸3の回転数およびドライブギヤ5aの回転数と等しくなる。なお、
図28では、車両200の走行速度に対して第1要素の回転数が一定、即ちエンジン211及び入力軸2の回転数が一定(R
1)の特性を図示している。
【0199】
エンジン211の始動時においては、第1荷重付与装置715(
図22参照)を作動させ、第1スプラグ713及び第2スプラグ723を第1内輪11及び第1外輪12(第2内輪21及び第2外輪22)に係合させる。この状態において、ジェネレータモータ60を作動させてロータ62を回転させると、第1外輪12及び第2外輪22に動力が伝達される。第1外輪12と第1内輪11との相対回転により、動力が第1内輪11及び入力軸2に伝達され、エンジン211が始動される。
【0200】
エンジン211の始動後、第1荷重付与装置715を作動させ、第1スプラグ713及び第2スプラグ723と第1内輪11及び第1外輪12(第2内輪21及び第2外輪22)との係合を解除する。この状態において、ジェネレータモータ60の負荷を増してロータ62の回転数を減少させサンギヤ731(第1外輪12)の回転数を減少させるか、或いはエンジン211の回転数を上げて入力軸2(第1内輪11)の回転を上げると、遊星歯車装置730の運動状態は、
図28に示す第3要素の線上を右下の方向に移動する。この運転状態では、エンジン211及びジェネレータモータ60によるハイブリッドモードでの無段変速状態の前進走行を実現できることを示している。この状態では、高回転・低トルクのジェネレータモータ60でサンギヤ731を回転駆動できるので、ジェネレータモータ60の負荷(ブレーキ要素の容量)を小さくできる。
【0201】
車両200を前進走行させて加速し、第2軸4の回転数が第1軸3の回転数(R
1)と等しくなると(
図28参照)、第1荷重付与装置715(
図22参照)を作動させ、第1スプラグ713及び第2スプラグ723を第1内輪11及び第1外輪12(第2内輪21及び第2外輪22)に係合させる。遊星歯車装置730の3要素を共回り状態にすることで、エンジン211の動力による前進走行が実現される。
【0202】
なお、車両200のコースト走行や制動のときの回生動作や後進動作は、第1実施の形態と同様であるため説明を省略する。但し、コースト走行のときのエネルギ回生は、サンギヤ731によりジェネレータモータ60を高回転数にすることができるので、発電量を大きくすることができる。
【0203】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0204】
上記各実施の形態では、第1荷重付与装置15,715、第4荷重付与装置45が電動機(交流電動機または直流電動機)により構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の動力源を採用することは当然可能である。他の動力源としては、例えば、直流電動機、油圧モータ、空気圧シリンダ、油圧シリンダ、交流ソレノイド及び直流ソレノイド等が例示される。
【0205】
ここで、アクチュエータ15a,715a,715c(第1荷重付与装置15,715)をソレノイドにより構成する場合には、歯車機構などにより第1スプラグ13,613,713に荷重を付与する場合に限られず、例えば、電磁力を利用して第1スプラグ13,613,713に荷重を付与するように構成しても良い。
【0206】
上記各実施の形態では、第1クラッチ10,610,710が、第1スプラグ13,613,713の解除機能付きのスプラグ型ワンウェイクラッチを備えて構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。一定の方向に動力が伝達され、その動力の伝達を遮断できる機能を有していれば、他のクラッチを用いることが可能である。他のクラッチとしては、ローラ等により動力が伝達されるクラッチを挙げることができる。
【0207】
上記各実施の形態では、第2クラッチ20,720がスプラグ型ワンウェイクラッチを備えて構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。一定の方向に動力が伝達される機能を有していれば、他のクラッチを用いることが可能である。他のクラッチとしては、ローラ等により動力が伝達されるクラッチを挙げることができる。
【0208】
上記各実施の形態において、第1クラッチ10,610,710や第2クラッチ20,720の構造を相互に置き換えることは当然可能である。第1クラッチ610の構造を第2クラッチ20にも採用することにより、第1スプラグ613及び第2スプラグが内輪2及び外輪3に同時に係合する不具合を防止できる。
【0209】
なお、第1クラッチ710及び第2クラッチ720は保持器(内保持器717や外保持器718)が破損することを防止できるが、第1クラッチ610にこの構造を採用することでも、同様の効果を実現できる。第1クラッチ610によって荷重を伝達するときに、第1荷重付与装置15を作動させて第1スプラグ613を係合させるため、第1スプラグ613が第スプラグ23と同時に第1内輪11及び第1外輪12に噛み込まれることを抑制できるからである。
【0210】
上記各実施の形態では、ジェネレータモータ60を用いた場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ジェネレータモータ60に代えて、発電機能を有しないモータを用いることも当然可能である。
【0211】
上記各実施の形態では、エンジン211及びジェネレータモータ60が車両200の後輪202を駆動する場合について説明したが、これに限られるものではなく、前輪201の駆動や、前輪201及び後輪202の駆動とすることも当然可能である。
【0212】
上記各実施の形態では、エンジン211から動力が入力される入力軸2を断続するクラッチは配設されていないが、入力軸2にクラッチを配設することも当然可能である。入力軸2にクラッチを配設することにより、回生時にエンジン211を遊星歯車装置30,130,330,430,530,630,730から切り離すことが可能となる。その結果、エンジン211がジェネレータモータ60の駆動抵抗となることを防止でき、エネルギー損失をなくし回生量を増加できる。
【0213】
上記各実施の形態では、並行軸型の変速装置212を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、他の変速装置を用いることも当然可能である。他の変速装置としては、例えばトルクコンバータ式オートマチックトランスミッション、湿式多板クラッチ遊星歯車式、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)等のセミオートマチックトランスミッション、無段変速機(CVT)を挙げることができる。また、第1軸3と変速装置212との間の動力の伝達を遮断するクラッチを必要に応じて設けることも可能である。
【0214】
上記第7実施の形態では、係止部718f,718hに係止される第2付勢部材がねじりコイルばねにより構成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ゴム等の弾性部材を用いることは当然可能である。
<その他>
<手段>
技術的思想1の動力伝達装置は、エンジンに連結される入力軸からの動力が入力される第1要素およびモータの動力が入力される第2要素、並びにそれら第1要素および第2要素と係合すると共に変速装置に動力を伝達する第3要素を有する遊星歯車装置と、それら3要素のいずれかの要素および前記変速装置に連結される第1軸と、その第1軸が連結された前記3要素のいずれかを除く他の要素の一つ及び前記モータに連結される第2軸と、その第2軸から前記第1軸または前記入力軸へ動力を遮断可能に伝達する一方、前記第1軸または前記入力軸から前記第2軸への動力の伝達を遮断する第1クラッチとを備えている。
技術的思想2の動力伝達装置は、技術的思想1において、前記第1クラッチは、断面円形状の外周面を有し軸心回りに回転可能に構成され前記第1軸、前記第2軸または前記入力軸のいずれかに連結される第1内輪と、その第1内輪の外周面に対向する断面円形状の内周面を有し前記軸心回りに回転可能に構成され前記第1軸、前記第2軸または前記入力軸のいずれかに連結される第1外輪と、その第1外輪の内周面および前記第1内輪の外周面にそれぞれ接する2つの係合面を有し前記第1内輪の外周面および前記第1外輪の内周面の対向間において円周方向に複数配設される第1スプラグと、その第1スプラグを前記第1内輪の外周面および前記第1外輪の内周面の円周方向へ傾動可能に保持する保持器と、その保持器を介して前記第1スプラグに荷重を付与し前記第1スプラグを傾動させて前記第1内輪の外周面および前記第1外輪の内周面と前記第1スプラグの係合面との係合または係合解除を行う第1荷重付与装置とを備えている。
技術的思想3の動力伝達装置は、技術的思想1又は2において、前記第1軸または前記入力軸から前記第2軸へ動力を伝達する一方、前記第2軸から前記第1軸または前記入力軸への動力の伝達を遮断する第2クラッチを備え、前記モータは、ジェネレータモータである。
技術的思想4の動力伝達装置は、技術的思想2又は3において、前記第1クラッチは、前記第1内輪の外周面または前記第1外輪の内周面の一方と前記第1スプラグの係合面の一方とが接するように前記第1スプラグに付勢力を付与して前記第1スプラグを円周方向の反ロック方向へ傾動させる第1付勢部材を備え、前記第1荷重付与装置は、その第1付勢部材の付勢力に抗し前記保持器を介して前記第1スプラグに荷重を付与し前記第1内輪の外周面および前記第1外輪の内周面に前記第1スプラグの2つの係合面が接するように前記反ロック方向とは逆方向であって円周方向のロック方向へ前記第1スプラグを傾動させ、前記第1内輪の外周面および前記第1外輪の内周面に前記第1スプラグの2つの係合面を係合させて前記第1内輪と前記第1外輪の相対回転を規制する。
技術的思想5の動力伝達装置は、技術的思想3又は4において、前記第2クラッチは、断面円形状の外周面を有し軸心回りに回転可能に構成され前記第1軸、前記第2軸または前記入力軸のいずれかに連結されると共に、軸方向に沿って前記第1内輪と一体に形成される第2内輪と、その第2内輪の外周面に対向する断面円形状の内周面を有し前記軸心回りに回転可能に構成され前記第1軸、前記第2軸または前記入力軸のいずれかに連結されると共に、軸方向に沿って前記第1外輪と一体に形成される第2外輪と、その第2外輪の内周面および前記第2内輪の外周面にそれぞれ接する係合面を有し前記第2内輪の外周面および前記第2外輪の内周面の対向間において円周方向に複数配設される第2スプラグとを備え、前記保持器は、前記第1スプラグ及び前記第2スプラグの前記外輪側の部位を前記外輪の内周面の円周方向へ傾動可能に保持する外保持器と、前記第1スプラグ及び前記第2スプラグの前記内輪側の部位を前記内輪の外周面の円周方向へ傾動可能に保持する内保持器とを備え、その内保持器または前記外保持器は、前記第1スプラグを保持する第1保持部と、その第1保持部から軸方向に分離されると共に、前記第1保持部に対し円周方向の相対移動を可能にしつつ前記第2スプラグを保持する第2保持部と、それら第1保持部および第2保持部に形成され互いに当接して前記第1保持部および前記第2保持部の円周方向の一方の相対移動を規制する第1面および第2面と、それら第1面および第2面が互いに当接するように前記第1保持部および前記第2保持部を円周方向の一方に付勢する第2付勢部材とを備え、前記第1荷重付与装置は、前記内保持器または前記外保持器の少なくとも一方に荷重を付与して前記内保持器および前記外保持器を軸心回りに相対移動させる。
技術的思想6の動力伝達装置は、技術的思想2から5のいずれかにおいて、前記第1軸および前記第2軸の回転数を取得する第1軸回転数取得手段および第2軸回転数取得手段と、前記第1軸回転数取得手段および前記第2軸回転数取得手段により取得された前記第1軸の回転数と前記第2軸の回転数とが一致するかを判断する回転数判断手段と、前記回転数判断手段により前記第1軸の回転数と前記第2軸の回転数とが一致すると判断されるときに前記第1荷重付与装置を作動させ前記保持器を介して前記第1スプラグへの荷重の付与の有無を制御する荷重制御手段とを備えている。
<効果>
技術的思想1の動力伝達装置は、エンジンに連結される入力軸からの動力が入力される第1要素およびモータの動力が入力される第2要素、並びにそれら第1要素および第2要素と係合すると共に変速装置に動力を伝達する第3要素を有する遊星歯車装置と、それら3要素のいずれかの要素および変速装置に連結される第1軸と、その第1軸が連結された3要素のいずれかを除く他の要素の一つ及びモータに連結される第2軸と、第2軸から第1軸または入力軸へ動力を遮断可能に伝達する一方、第1軸または入力軸から第2軸への動力の伝達を遮断する第1クラッチとを備えている。その結果、第1クラッチにより第2軸から第1軸または入力軸への動力の伝達と遮断とを切り替えることにより、エンジン及びモータの動力の分配や動力切換えを行うことができる。これにより動力伝達装置の構造や制御を簡素化できる効果がある。
また、湿式多板クラッチを断続させて動力切換えを行う構成の場合には、湿式多板クラッチの接続時に熱エネルギーが放出されエネルギー損失が生じるが、湿式多板クラッチを削減できるため、エネルギー損失を抑制できる効果がある。
技術的思想2の動力伝達装置によれば、第1クラッチは、第1スプラグが第1内輪および第1外輪に係合することにより、第1内輪と第1外輪との一定回転方向への相対回転が規制され動力が伝達される。第1荷重付与装置により第1スプラグの係合または係合解除が行われ、一定方向への回転の伝達および遮断の切換えができるので、技術的思想1の動力伝達装置の奏する効果に加え、切換え時間を短縮できる効果がある。
また、第1スプラグを傾動させて一定方向への動力の伝達および遮断を行うので、動力の伝達が遮断された状態から動力が伝達される状態になる切換え時に、第1内輪と第1外輪とが空転することを防止できる。よって、切換え時の衝撃を防止できる効果がある。
また、第1スプラグにより動力が伝達されるので、第1クラッチは小型であっても伝達トルク容量を大きくできる。その結果、動力伝達装置の小型化を図ることができる効果がある。
技術的思想3の動力伝達装置によれば、第1軸または入力軸から第2軸へ動力を伝達する一方、第2軸から第1軸または入力軸への動力の伝達を遮断する第2クラッチにより、惰性走行(コースト走行)等のときに変速装置からジェネレータモータへ動力を伝達させ、エネルギー回生を行うことができる効果がある。
技術的思想4の動力伝達装置によれば、第1付勢部材により第1内輪の外周面または第1外輪の内周面の一方と第1スプラグの係合面の一方とが接するように第1スプラグに付勢力が付与され、第1スプラグが円周方向の反ロック方向へ傾動される。第1荷重付与装置は、第1付勢部材の付勢力に抗し保持器を介して第1スプラグに荷重を付与し、第1内輪の外周面および第1外輪の内周面に第1スプラグの2つの係合面が接するように、反ロック方向とは逆方向であって円周方向のロック方向へ第1スプラグを傾動させる。その結果、第1内輪の外周面および第1外輪の内周面に第1スプラグの2つの係合面が係合され、第1内輪と第1外輪との相対回転が規制される。
第1スプラグは、第1内輪の外周面または第1外輪の内周面と第1スプラグの係合面との接点の回りのモーメントのバランスにより傾動される。従って、第1付勢部材の付勢力よりも小さな荷重でスプラグを傾動させることができる。これにより技術的思想2又は3の効果に加え、第1荷重付与装置を小型化できると共に、第1スプラグに付与する荷重を小さくできるため、エネルギー損失を抑制できる効果がある。
技術的思想5の動力伝達装置によれば、内保持器または外保持器は、軸方向に分離される第1保持部および第2保持部を備え、その第1保持部により第1スプラグが保持される一方、第2保持器により第2スプラグが保持される。また、第1保持部および第2保持部は円周方向に相対移動可能に構成されると共に、第2付勢部材により第1保持部および第2保持部が円周方向の一方に付勢される。その結果、第2付勢部材の付勢力により、第1保持部および第2保持部に形成される第1面および第2面が互いに当接し、第1保持部および第2保持部の円周方向の一方の相対移動が規制される。その結果、第2付勢部材の付勢力により第1保持部および第2保持部を一体に移動させることができ、第1荷重付与装置により荷重を付与することで、第1保持部に保持される第1スプラグ及び第2保持部に保持される第2スプラグを傾動させることができる。
ここで、内保持器および外保持器の円周方向の相対移動により第1スプラグ又は第2スプラグの一方が第1内輪および第1外輪、又は、第2内輪および第2外輪に係合している場合、第1スプラグ又は第2スプラグの他方は内保持器および外保持器に保持され、第1内輪等との係合が解除されている。内保持器および外保持器がそれぞれ一体に形成されていると、第1内輪および第1外輪等に係合する第1スプラグ又は第2スプラグの一方がさらに強く係合するように傾動すると、その傾動により内保持器および外保持器が押されて内保持器および外保持器がさらに相対移動する。そうすると、第1スプラグ又は第2スプラグの他方が内保持器や外保持器から外れたり、内保持器や外保持器が破損したりすることがある。
これに対し技術的思想5の動力伝達装置によれば、第1保持部および第2保持部は円周方向に相対移動可能に構成されているので、第1内輪および第1外輪等に係合する第1スプラグ又は第2スプラグの一方がさらに強く係合するように傾動すると、その傾動により第1保持部または第2保持部の一方だけが第1保持部または第2保持部の他方に対して相対移動する。その結果、第1保持部または第2保持部の他方が影響を受けることを防止でき、技術的思想3又は4の効果に加え、第1スプラグ又は第2スプラグの他方が内保持器や外保持器から外れたり内保持器や外保持器が破損したりすることを防止できる効果がある。
技術的思想6の動力伝達装置によれば、第1軸回転数取得手段および第2軸回転数取得手段により第1軸および第2軸の回転数が取得され、第1軸回転数取得手段および第2軸回転数取得手段により取得された第1軸の回転数と第2軸の回転数とが一致するか回転数判断手段により判断される。判断の結果、第1軸の回転数と第2軸の回転数とが一致するときに、荷重制御手段により第1荷重付与装置を作動させ保持器を介して第1スプラグへの荷重の付与の有無を制御するので、技術的思想2から5のいずれかの効果に加え、慣性トルクによる衝撃が生じることを防止でき、運転者に違和感を与えることを防止できる効果がある。
即ち、第1軸の回転数と第2軸の回転数とが等しいときは、第1クラッチの第1内輪および第1外輪の回転数も等しくなる。このときに第1内輪および第1外輪に第1スプラグが係合すると、第1内輪と第1外輪との速度差が生じないため、慣性トルクが生じることを防ぎ衝撃を防止できる。