(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薬物含有粒子(1)が、薬物及び水膨潤性高分子を含有しない核粒子(P)の表面に、薬物及び水膨潤性高分子を含有する膜層(A)と、水不溶性高分子、水溶性物質及び無機化合物を含有する膜層(B)とを含む複数膜層が形成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の口腔内崩壊錠剤。
前記薬物含有粒子(1)を形成してなる前記複数膜層のうち、膜層(A)が最内膜層であり、前記薬物含有粒子(1)全量100質量%中、核粒子(P)の質量の割合が30質量%以下、薬物の含有量が40質量%以下、水膨潤性高分子の含有量が13〜30質量%、水不溶性高分子の含有量が7〜11質量%、及び前記膜層(B)に含まれる水溶性物質の含有量が水不溶性高分子の含有量の0.4〜0.6倍であり、かつ前記膜層(B)100質量%中、無機化合物の含有量が25〜35質量%である請求項4に記載の口腔内崩壊錠剤。
前記薬物含有粒子(1)全量100質量%中、薬物の含有量が5〜35質量%、水膨潤性高分子の含有量が15〜25質量%、及び水不溶性高分子の含有量が8〜10質量%であり、かつ前記膜層(B)100質量%中、無機化合物の含有量が27〜32質量%である請求項4〜6のいずれかに記載の口腔内崩壊錠剤。
予め調製した薬物含有粒子(1)に、球形マンニトール結晶粒子(2)、部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)を加えて混合し、得られた混合物を圧縮成型する請求項1記載の口腔内崩壊錠剤の製造方法。
予め調製した薬物含有粒子(1)に、球形マンニトール結晶粒子(2)及びデンプン粉末(4)を加えて混合し、得られた混合物に部分アルファ化デンプン(3)を含む懸濁液を噴霧して造粒物を調製し、得られた造粒物を圧縮成型する請求項1記載の口腔内崩壊錠剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において、薬物含有粒子(1)及び球形マンニトール結晶粒子(2)でいう平均粒径とは、一般にメディアン径と呼ばれるものであり、粉体粒子積算分布の50%を与える粒子径を意味する。
【0016】
本発明で用いる薬物含有粒子(1)は、平均粒径が150〜300μmであり、好ましくは150〜250μmであり、より好ましくは150〜200μmである。このように従来のものよりも微細な粒子を採用することにより、得られる錠剤において優れた服用感を発揮させるのに大きく寄与することができる。なお、本明細書において、薬物含有粒子(1)の平均粒径とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器「LMS−30」(株式会社セイシン企業製)を用い、乾式・ワンショット測定により測定した値を意味する。
このような粒径の薬物含有粒子としては、例えば、特許4019374号、特許4277904号又は特許3317444等記載の製造方法に準じて製造される薬物含有粒子が考えられるが、好ましくは以下の製造方法に準じて製造される薬物含有粒子が挙げられる。
【0017】
上記薬物含有粒子(1)に含まれる薬物としては、服用した際に医薬活性成分として疾患の治療や予防に効力を奏しうるものであれば特に制限されず、所望に応じて適宜選択することができる。かかる薬物としては、中枢神経系用薬、末梢神経系用薬、感覚器官用薬、循環器官用薬、呼吸器官用薬、消化器官用薬、ホルモン剤、泌尿生殖器官及び肛門用薬、ビタミン剤、滋養強壮薬、血液・体液用薬、その他の代謝性医薬品、細胞賦活用薬、腫瘍用薬、アレルギー用薬、生薬、漢方製剤、抗生物質製剤、化学療法剤、寄生動物用薬、アルカロイド系麻薬、非アルカロイド系麻薬などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられるが、これらに限定されない。これら薬物のなかでも、口腔内では苦味等の不快な味を有効に遮断し得るという本発明の効果を活用する点から、不快な味の薬物であるのが望ましく、具体的には、ラニチジン塩酸塩、シメチジン、ファモチジン、ラフチジン等の抗潰瘍剤を含む消化器官用薬が挙げられ、なかでもラフチジンが好ましい。また、ラフチジンは、(±)−2−(フルフリルスルフィニル)−N−[4−[4−(ピペリジノメチル)−2−ピリジル]オキシ−(Z)−2−ブテニル]アセトアミドであるが、本発明においては、この立体異性体及び光学異性体を含み、またこれから当業者が容易に誘導しうる塩又は誘導体をも含み、例えば、特開昭63−225371号公報記載の方法に準じて合成される。
【0018】
薬物の含有量は、薬物含有粒子(1)全量100質量%中、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは5〜35質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。上記範囲内の含有量であれば、薬物が不快な味を有する場合であっても、かかる不快な味を充分に抑制しつつ所望の薬効を有効に発揮することができる。
【0019】
上記薬物含有粒子(1)として好ましいものとしては、薬物及び水膨潤性高分子を含有しない核粒子(P)の表面に、薬物及び水膨潤性高分子を含有する膜層(A)と、水不溶性高分子、水溶性物質及び無機化合物を含有する膜層(B)とを含む複数膜層が形成されてなるものであるのが好ましい。このように、核粒子(P)の表面に複数膜層が形成されてなり、これらの層が核粒子を被覆し、かかる複数膜層のうち、少なくとも1つの膜層が薬物を含有してなり、核粒子(P)中には薬物及び水膨潤性高分子が含まれないのがよい。すなわち、上記複数膜層には、薬物及び水膨潤性高分子を含む膜層(A)と、水不溶性高分子、水溶性物質及び無機化合物が少なくとも含有される膜層(B)との少なくとも2層が含まれ、薬物及び水膨潤性高分子を含む膜層(A)が最内膜層として核粒子(P)の表面に形成されてなることを意味する。
【0020】
薬物含有粒子(1)を上記のような層構成を有する被覆粒子とすることにより、後述する球形マンニトール結晶粒子(2)、特定の部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)とも相まって、適度な硬度と崩壊時間とを有しつつ優れた速崩壊性を発揮しながら、薬物が不快な味を有する場合には、その不快な味を有効に遮蔽することができる。
【0021】
上記薬物とともに上記膜層(A)に含まれる水膨潤性高分子としては、水に殆ど溶解せず(溶解性は、第十六改正日本薬局方の通則に規定されているように、水膨潤性高分子を25±5℃の水に入れ、5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき30分以内に溶ける度合から評価し、「水に殆ど溶解しない」とは、水膨潤性高分子1gを溶解するのに要する水の量が10000mL以上の場合を意味する)、かつ水を含んで膨潤する高分子物質であって、水不溶性高分子以外の高分子物質であれば特に限定されないが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンなどが挙げられる。なかでも、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。ここで、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロポキシル基の置換度(質量%)が5.0〜16.0質量%のものであり、10〜13質量%のものがより好ましい。上記ヒドロキシプロポシル基の置換度が5.0%未満のものは膨潤力に乏しく、また、16.0%より多いものは水を含んだ時に粘ちょうとなりやすいため、服用時にベタツキを感じやすくなる。
なお、ヒドロキシプロピルセルロースの置換度とは、セルロースのピラノース環が持つ水酸基を置換したヒドロキシプロポキシル基の量(%)を意味し、具体的には、第十六改正日本薬局方に規定されている低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの定量法に従い、ガスクロマトグラフ法を用いて測定される値を意味する。
【0022】
水膨潤性高分子の含有量は、薬物含有粒子(1)全量100質量%中、好ましくは13〜30質量%であり、より好ましくは15〜25質量%であり、さらに好ましくは17〜22質量%である。上記範囲内の含有量であれば、形成される他の膜層を充分に破断することができるので、膜層(A)に含有される薬物を有効に放出させることが可能となる。また、後述するように核粒子(P)の表面上にこの水膨潤性高分子が効率良く配置されることで、少量の添加量でありながらも膜層を破断するのに必要な力が得られるものと考えられる。含有量が所望の値より大きくなると薬物含有粒子(1)全体に占める他のコーティング剤の比率が低下するため、溶出性が早くなりすぎることとなり、溶出性と苦味遮蔽効果のバランスが悪化するおそれがある。
【0023】
なお、上記膜層(A)の膜層の厚さは、70μm以下が好ましく、20〜50μmがより好ましい。上記範囲の厚さであると、薬物含有粒子(1)のサイズを可能な限り低減することができるので、服用時にザラツキを感じない。
【0024】
また、上記膜層(A)にはヒドロキシプロピルセルロース(以下、特に「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」と称しない限り、「ヒドロキシプロピルセルロース」と称する場合は、日本薬局方に収載のヒドロキシプロピルセルロース」を意味するものとする)、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール及びポビドン等の結合剤、オレンジ、レモン等の各種香料、l-メントール、ハッカ油、ネオテーム、ソーマチン、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、サッカリンナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アセスルファムカリウム等の矯味剤を必要に応じて1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記核粒子(P)とは、被覆の核となる粒子を意味するものであり、その表面に上記膜層(A)を最内膜層として形成できるものであれば特に限定されず、市販の球形造粒品、市販の噴霧造粒品を挙げることができる。さらに、これらの核粒子を公知の粉砕方法あるいは造粒方法により製造して用いてもよい。これらの核粒子は、市販品をそのまま用いても、篩過して所望の粒子径を有する粒子を調製してもよい。かかる核粒子としては、マンニトール、結晶セルロース、乳糖、精製白糖、トウモロコシデンプンなどから選ばれる1種または2種以上の組み合わせからなる核粒子が挙げられる。なお、この核粒子(P)中に薬物及び水膨潤性高分子は含まれない。
【0026】
上記核粒子(P)の形状は、均一な物性を有する粒子を得るという観点及び核粒子(P)の表面上に上記水膨潤性高分子をより効果的に配置する観点から、球形粒子が好ましい。不定形の形状であると、形成される膜層の厚さが不均一になりやすく、特に薬物が不快な味を有する場合には、その不快な味の遮蔽効果が不十分になるおそれがある。核粒子(P)の平均粒径は、これを用いて薬物含有粒子(1)を調製したときに口腔内でザラツキを感じないサイズであればよい。具体的には、かかる平均粒径は、10〜200μmが好ましく、50〜170μmがより好ましく、100〜150μmがさらに好ましい。このようなサイズであると、得られる薬物含有粒子(1)のサイズも充分小さく、口腔内でザラツキを感じない。
【0027】
かかる核粒子(P)としては、市販品である「ノンパレル−108(100)」(フロイント産業株式会社製)、「セルフィアCP−102」、「セルフィアSCP−100」(いずれも旭化成ケミカルズ株式会社製)などの球形造粒品、「FlowLac90」「FlowLac100」「Cellactose80」「MicroceLac100」「StarLac100」(いずれもメグレ社製)、「Super Tab 11SD」「Super Tab 14SD」(いずれもDMV−Fonterra Excipients製)等の噴霧造粒品を用いることができる。
上記核粒子(P)の質量の割合は、薬物含有粒子(1)全量100質量%中、30質量%以下であるのが好ましく、14〜20質量%であるのがより好ましい。
【0028】
上記膜層(B)に含まれる水不溶性高分子としては、水に殆ど溶解せず(溶解性は、第十六改正日本薬局方の通則に規定されているように、水不溶性高分子を25±5℃の水に入れ、5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき30分以内に溶ける度合から評価し、「水に殆ど溶解しない」とは、水不溶性高分子1gを溶解するのに要する水の量が10000mL以上の場合を意味する)、かつ水を含んでも膨潤しない高分子物質、すなわち水膨潤性高分子以外の高分子物質であって、医薬品の添加剤として一般に用いられるものであれば特に制限されず、通常コーティング剤として用いられるものが挙げられる。このような水不溶性高分子としては、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー等が挙げられ、なかでもエチルセルロースが好ましい。本発明に用いるエチルセルロースとしては、日本医薬品添加物規格に従うもの、すなわちエトキシル基含有量が46.5〜51.0%であり、5%エチルセルロース/トルエン・エタノール溶液の25±0.1℃における粘度が約4〜約100cpsのものが好ましく、約7〜約20cpsのものがより好ましい。
【0029】
上記水不溶性高分子の含有量は、薬物含有粒子(1)全量100質量%中、好ましくは7〜11質量%であり、より好ましくは8〜10質量%である。上記下限値未満であると、薬物が不快な味を有する場合にその不快な味の遮蔽が不十分となるおそれがあり、上記上限値を超えると薬物の放出が必要以上に遅延する可能性がある。
【0030】
上記膜層(B)に上記水不溶性高分子とともに含まれる水溶性物質としては、水にある程度溶解する(溶解性は、第十六改正日本薬局方の通則に規定されているように、水溶性高分子を25±5℃の水に入れ、5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき30分以内に溶ける度合から評価し、「水にある程度溶解する」とは、具体的には、「極めて溶けやすい」または「溶けやすい」の用語で示される性状に相当し、水溶性物質1gを溶解するのに要する水の量が10mL未満の場合を意味する)か、粘ちょうなコロイド分散液となるものであり、医薬品の添加剤として一般に用いられるものであれば特に制限されず、通常コーティング剤として用いられるものが挙げられる。このような水溶性物質としては、精製白糖、D−ソルビトール、D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、メチルセルロース、カルメロースナトリウムなどが挙げられる。
【0031】
上記膜層(B)に含まれる水溶性物質の薬物含有粒子(1)全量100質量%を基準とする含有量は、薬物含有粒子(1)全量100質量%中における水不溶性高分子の含有量によって変動しうるものであり、かかる水不溶性高分子の含有量の0.4〜0.6倍であり、0.45〜0.55倍が好ましく、0.5倍が最も好ましい。
【0032】
上記膜層(B)に、さらに含まれる無機化合物としては、薬物含有粒子(1)の凝集や付着防止に有効なものが好ましい。かかる無機化合物としては、タルク、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。なかでも酸化チタンが好ましい。
【0033】
上記無機化合物の含有量は、上記膜層(B)100質量%中、好ましくは25〜35質量%であり、より好ましくは27〜32質量%である。上記下限値未満であると得られる薬物含有粒子(1)の凝集や付着防止に充分な効果が得られないおそれがあり、上記上限値を超えると製膜が困難となる可能性がある。また、上記範囲内の量であると更に良好な保存安定性をも付与しうる。
【0034】
また、上記膜層(B)100質量%中、水不溶性高分子の含有量:水溶性物質の含有量:無機化合物の含有量は質量比で1:0.4〜0.6:0.5〜0.7が好ましく、1:0.5:0.6がより好ましい。これらの含有量が上記範囲内の比であると、得られる薬物含有粒子(1)の凝集や付着を有効に防止しつつ、薬物の溶出性が良好であり、薬物が不快な味を有する場合には、その不快な味の遮蔽効果と薬物の溶出性との優れたバランスを保持することが可能となる。
【0035】
上記核粒子の表面に形成される複数膜層として、更に中間膜層を含んでもよい。かかる中間膜層は、単層であっても複数層であってもよく、上記最内膜層である膜層(A)と、上記膜層(B)との間に形成するのがよい。すなわち、水不溶性高分子、水溶性物質及び無機化合物を含有する膜層(B)が最外膜層であるのがよい。このように、最内膜層と最外膜層との間に中間膜層を形成することで、保存安定性や味等の改善をも図ることができる。
【0036】
上記中間膜層に含まれる成分としては、上記薬物含有粒子(1)の効果を妨げないものであれば制限されず、具体的には精製白糖、D−ソルビトール、D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポビドン、メチルセルロース、カルメロースナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの成分のうち、容易にコーティング可能であるという観点から、D−マンニトール、ヒプロメロースが好ましく、ヒプロメロースがより好ましい。さらに、中間膜層をコーティングする際の付着性を低減する目的で、タルク、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸等を必要に応じて添加してもよい。
【0037】
上記中間膜層の質量は、上記薬物含有粒子(1)の効果を妨げない範囲であれば制限されず、核粒子(P)のサイズにより変動しうるが、核粒子(P)と膜層(A)との総量100質量部に対し、15〜25質量部が好ましく、18〜22質量部がより好ましい。
【0038】
本発明の口腔内崩壊錠剤における薬物含有粒子(1)の含有量は、適度な硬度と崩壊時間との両立を阻害することなく、所望の薬効を充分に発揮する観点から、錠剤全量100質量%中、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。
【0039】
上記薬物含有粒子(1)は、常法に従って篩過することにより、平均粒径150〜300μmに調整すればよい。さらに、薬物含有粒子(1)を、上記核粒子(P)の表面に上記膜層(A)と膜層(B)とを含む複数膜層が形成されてなるものとするには、各膜成分を含有する被覆用液剤を核粒子(P)に噴霧することにより製造すればよい。具体的には、流動層造粒機等を用い、(i)先ず、最内膜層成分である薬物及び水膨潤性高分子をエタノール、メタノールなどの有機溶媒に溶解または分散させて調製した噴霧液を核粒子(P)に噴霧する。噴霧液中の膜成分の含有量は多くとも30質量%までが好ましい。30質量%を超えるとスプレーガンが閉塞して噴霧が困難となるおそれがある。
【0040】
(ii)続いて、中間膜層を形成する場合には、所望の膜成分を水等に溶解して噴霧液を調製し、(i)で得られた粒子に噴霧する。噴霧液中の膜成分の含有量は5〜15質量%が好ましく、8〜12質量%がより好ましい。上記下限値未満の含有量であると膜層形成効率が悪化して生産性が低下するおそれがあり、上記上限値を超える含有量であると薬物含有粒子(1)が凝集し団粒となるおそれがある。
【0041】
(iii)最後に、水不溶性高分子、水溶性物質及び無機化合物をエタノール、メタノールなどの有機溶媒と水からなる混液に溶解または分散して調製した噴霧液を(ii)で得られた粒子に噴霧することで、所望の薬物含有膜被覆粒子を得る。噴霧液中の膜成分の含有量は、3〜7質量%が好ましく、4〜6質量%がより好ましい。上記下限値未満の含有量であると膜層形成効率が悪化して生産性が低下するおそれがあり、上記上限値を超える含有量であると薬物含有粒子(1)が凝集し、団粒となるおそれがある。
【0042】
被覆の方法としては、上方噴霧式、側方噴霧式、下方噴霧式等の方法が種々選択されうるが、各膜層が緻密に形成され、粒子同士の凝集がない狭い粒度分布の薬物含有粒子(1)を効率よく得る観点から、側方噴霧法が好ましい。
【0043】
上述の薬物含有粒子(1)全量100質量%中、核粒子(P)の質量の割合が30質量%以下、薬物の含有量が40質量%以下、水膨潤性高分子の含有量が13〜30質量%、水不溶性高分子の含有量が7〜11質量%、及び上記膜層(B)に含まれる水溶性物質の含有量が水不溶性高分子の含有量の0.4〜0.6倍であり、かつ上記膜層(B)100質量%中、無機化合物の含有量が25〜35質量%であるものが好ましく、更には、薬物の含有量が5〜35質量%、水膨潤性高分子の含有量が15〜25質量%、及び水不溶性高分子の含有量が8〜10質量%であり、かつ上記膜層(B)100質量%中、無機化合物の含有量が27〜32質量%であるものがより好ましい。
【0044】
本発明の口腔内崩壊錠剤に用いる薬物含有粒子(1)として、上述のような核粒子(P)の表面に膜層(A)と膜層(B)とを含む複数膜層が形成されてなる粒子を採用した場合、かかる粒子は、錠剤を服用した直後、口腔内に留まる間は薬物の溶出が極力抑制され、錠剤中の粒子が崩壊しながら口腔内から体内へと移行する段階になって、薬物が速やかに溶出され、特に薬物が不快な味を有する場合には、不快な味の遮蔽性と薬物の溶出性とのバランスに優れた好ましい溶出プロファイルを発現する。したがって、服用時に口腔内で不快な味を感じることがなく、適切な時間が経過するにつれ速やかに薬物を放出するため、生物学的利用能及び通常製剤との生物学的同等性の確保が可能となる。なお、かかる好ましい溶出プロファイルとは、具体的には、日本薬局方一般試験法 製剤試験法収載溶出試験法に記載の溶出試験第2液900mLを用い、第2法(50rpm)で試験を行ったとき、2分後の溶出率が5%以下、好ましくは2%以下であり、かつ30分後の溶出率が85%以上であり、好ましくは15分後の溶出率が85%以上であることを意味する。
【0045】
また、上記薬物含有粒子(1)における不快な味の遮蔽時間は、薬物の種類により変動し得るものではあるが、30〜300秒が好ましく、120〜300秒がより好ましい。
【0046】
本発明の口腔内崩壊錠剤は、上述のように予め調製された薬物含有粒子(1)と、後述する球形マンニトール結晶粒子(2)、特定の部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)とを含有する。
【0047】
本発明で用いる球形マンニトール結晶粒子(2)は、真球に近い形状を有し、かつその内部に空隙を有する特異な構造を有している。この球形マンニトール結晶粒子(2)を本発明の口腔内崩壊錠剤に含有させると、良好な錠剤硬度を保持しながらも短時間で錠剤を崩壊させることを可能とする。これは、球形マンニトール結晶粒子(2)が非常に微細な針状結晶により構成されており、打錠により球形粒子が崩れた場合、針状結晶同士が絡み合うことで高い成形性を発現し、針状結晶間の空隙及び一部残存した球形粒子内の空隙に水が浸透することで速やかな崩壊性が得られるためと推測される。
【0048】
また、球形マンニトール結晶粒子(2)を薬物含有粒子(1)とともに造粒した場合も、電子顕微鏡写真における観察から、球形マンニトール結晶粒子(2)は造粒した粒子中においてもその形状を維持しており、造粒によってその特徴が失われることはない。
【0049】
上記球形マンニトール結晶粒子(2)は、かさ密度が小さく、真球度が高い球形粒子であることが好ましい。かかるかさ密度は、具体的には、0.3〜0.7g/mLが好ましく、0.35〜0.50g/mLがより好ましい。
【0050】
なお、球形マンニトール結晶粒子(2)のかさ密度は、通常公知の測定手法により求めることができる。例えば、国際公開第2010/021300号記載の方法に準じ、100mL容積のカップ(質量Wa)に球形マンニトール結晶粒子(2)を軽く山盛りに入れてすりきり、秤量した質量Wbから下記式(I)により求めた値を複数回測定して、その平均値を求めればよい。
かさ密度(g/mL)=(Wb-Wa)/100 ・・・(I)
【0051】
球形マンニトール結晶粒子(2)の真球度は、アスペクト比(粒子の長径と短径との比)を目安とすればよく、具体的には、アスペクト比が1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましい。なお、本明細書では、上記アスペクト比は、ランダムに置かれた球形マンニトール結晶粒子(2)を走査型電子顕微鏡により写真撮影し、複数個の球形粒について長軸の長さ(長径)と長軸の中点から垂直に引いた短軸の長さ(短径)を各々測定して、各々の短径に対する長径の比を求め、その比の平均値により求めた値とした。
【0052】
球形マンニトール結晶粒子(2)内に存在する空隙は、以下に示す試験法Aによる吸油率1および2により評価でき、吸油率1が25〜60%であり、かつ吸油率2が15〜40%であることが好ましい。
【0053】
試験法Aによる吸油率は、以下の手順により求めることができる。中鎖脂肪酸トリグリセライド30gと試料マンニトール15gを100mLのガラス製ビーカーに入れ、粉体を破損しないように穏やかにスパチュラで油と粉末試料とをかき混ぜた後、真空定温乾燥機に入れ、室温で0.67パスカルまで減圧して3時間油を含浸させる。次に、325メッシュ(目開き45μm)のろ布を用いた遠沈管(底に孔のあるもの)に移し、遠心分離器を用いて約1300Gで10分間遠心分離する。遠心分離後の試料入り遠沈管質量と遠沈管風袋質量との測定値から、遠心分離後に遠沈管内に残った粉末試料の質量(Wc)を求め、下記式(II)により計算された値を吸油率1とする。
吸油率1(%)=[(Wc−15)/15]×100 ・・・(II)
【0054】
さらに、100mLのガラス製ビーカーに遠心分離後の試料入り遠沈管を入れ、n−ヘキサン20gを粉末試料の上から加え、遠心分離器を用いて約1300Gで10分間遠心分離する。次に、遠心分離後の試料入り遠沈管質量と遠沈管風袋質量との測定値から、遠心分離後に遠沈管内に残った粉末試料の質量(Wd)を求め、下記式(III)により計算された値を吸油率2とする。
吸油率2(%)=[(Wd−15)/15]×100 ・・・(III)
【0055】
球形マンニトール結晶粒子(2)の平均粒径は、15〜165μmであることが好ましく、15〜85μmであることがより好ましく、15〜65μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書において、球形マンニトール結晶粒子(2)の平均粒径とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器「MT−3000」(日機装株式会社製)および分散溶媒として2−プロパノールを用いて測定した値を意味する。
【0056】
球形マンニトール結晶粒子(2)の安息角は、30〜50度であることが好ましい。ここで、安息角とは、粉体を円板上に自然落下させた状態で形成される山の角度を意味する。安息角は、通常公知の測定手法により求めることができ、例えば、A.B.D粉体特性測定器を用いて、以下の手法で測定する。試料用ホッパーに投入した試料を振動棒、網(目開き1000μm)、排出ロート、ノズル(内径1cm)を通し、安息角試料台の円板上に落下させて山を作り、異なる向き3箇所でその山の角度を角度計で測定し、その平均値を求める。この安息角とする操作を3回繰り返し、この3回の平均値により求めることができる。
【0057】
上記球形マンニトール結晶粒子(2)は、例えば、国際公開第2010/021300号、国際公開第2008/146590号等記載の方法に準じて製造することができる。また、以下に示す製法により製造することもできる。
【0058】
製造装置として、スプレードライヤ「ODT−20型」(大川原化工機株式会社製)を用いる。まず、装置下部に製品回収缶を備え、装置上部にMピン型ディスク(φ84mmディスク、大川原化工機株式会社製)が装着されたアトマイザーを設置し、マンニトール水溶液を2本のテフロン(登録商標)製チューブ(外径6mm、内径4mm)を通じてアトマイザー内に導入する。熱風は、噴霧される液に対して同一方向に空気を噴出して渦流を生ずる並流式で、装置上部から導入し、装置下部から排出する。
【0059】
ここで、マンニトール水溶液は、市販の結晶マンニトール「マンニットP」(三菱商事フードテック株式会社製)に純水を加え、固形物が完全に溶解し、澄明な溶液になるまで加温しながら溶解して得たものであり、これを噴霧乾燥する。
【0060】
すなわち、予め調製したマンニトール水溶液を装置に導入した後、スプレードライヤ下部の製品缶内に蓄積された粉末物を回収し、流動層乾燥機「FLO−5」(株式会社大川原製作所製)を用いてこれを乾燥することで、球形マンニトール結晶粒子(2)を得ることができる。
【0061】
本発明の口腔内崩壊錠剤における球形マンニトール結晶粒子(2)の含有量は、崩壊時間の延長を有効に防止しつつ良好な錠剤硬度を付与する観点から、薬物含有粒子(1)中の薬物(1a)を除く錠剤中の成分全量100質量%中、40〜80質量%であるのが好ましく、45〜60質量%であるのがより好ましい。
【0062】
本発明で用いる部分アルファ化デンプン(3)は、本発明の口腔内崩壊錠剤の結合剤として作用するものであり、25℃、10質量%水懸濁液の粘度が5〜45mPa・sである部分アルファ化デンプンである。このような特定の部分アルファ化デンプン(3)であれば、結合剤として充分な効果を発揮しつつ、錠剤の崩壊性を妨げることがない。単に、薬物含有粒子(1)、球形マンニトール結晶粒子(2)及び後述するデンプン粉末(4)を混合するだけでは、互いに平均粒径、かさ密度及び流動性に差異がある複数の粒子が混在することになるため、打錠工程において偏析が生じ、打錠工程を経る前に予め造粒する場合にも造粒性の低下を招き、錠剤間における薬物含有量の均一性を確保できない可能性が高い。そこで、本発明では、部分アルファ化デンプン(3)を結合剤として作用させることにより、これら薬物含有粒子(1)、球形マンニトール結晶粒子(2)及びデンプン粉末(4)を均一に分散させ、打錠工程における偏析を有効に防止することができるとともに、打錠工程を経る前に予め造粒する場合にも良好な造粒性を発揮させることができ、十分な錠剤硬度を保持しつつ錠剤間における薬物含有量の均一性をも充分に確保することができる。
【0063】
上記部分アルファ化デンプン(3)の25℃、10質量%水懸濁液の粘度は、好ましくは8〜35mPa・sである。なお、結合液の粘度は、回転粘度計(R型粘度計、東機産業株式会社製)を用いて測定できる。25℃、10質量%水懸濁液の粘度が上記上限値を超えるものを用いると、充分な崩壊性が得られずに崩壊時間が延長するおそれがあり、25℃、10質量%水懸濁液の粘度が上記下限値未満のものを用いると、造粒が難しくなる。なお、当該発明で使用する部分アルファ化デンプン(3)における好ましいアルファ化度は60〜80%であり、より好ましくは70〜80%である。ここで、部分アルファ化デンプン(3)のアルファ化度とは、常法であるグルコアミラーゼ法(二國二郎編、「澱粉化学ハンドブック」、朝倉書店、1977年、p.242)の測定方法を採用して求められる値を意味し、例えば、国際公開第2008/032767号に記載の方法に準じて求められる。
【0064】
このような部分アルファ化デンプン(3)として、市販品である「PCS(登録商標)」(旭化成ケミカルズ株式会社製)を用いることができ、アルファ化度は75.9%とされている(国際公開第2008/032767号)。部分アルファ化デンプン(3)の含有量は、錠剤間における薬物含有量の均一性と錠剤の崩壊性とを両立させる観点から、口腔内崩壊錠剤全量100質量%中、好ましくは3〜7.5質量%であり、より好ましくは3〜6質量%である。部分アルファ化デンプン(3)は、結合剤として充分な効果を発揮させ、かつ錠剤間における薬物含有量の均一性を図る観点から、精製水に分散させて得られる懸濁液を結合液として用いて、予め造粒物を調製した後、打錠するのが好ましいが、特にこの使用方法に限定されない。
【0065】
部分アルファ化デンプン(3)を含む懸濁液を結合液として用いて予め造粒物を調製する場合、良好な造粒性を発揮して、粒度分布幅が狭い造粒物を得ることができる。具体的には、累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)との比(D90/D10)の値が、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3.5である。
なお、本明細書において、上記累積粒度分布曲線とは、レーザー回折・散乱粒度分布測定装置「LMS−30」(株式会社セイシン企業製)を用いて得られるものを意味する。
【0066】
本発明で用いるデンプン粉末(4)は、上記部分アルファ化デンプン(3)以外のデンプンであり、粉末状を呈している。かかるデンプン粉末(4)としては、医薬品の添加剤として一般に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプンが挙げられる。なかでも、添加に伴う錠剤硬度の低下が少ないという観点から、コメデンプン又はトウモロコシデンプンが好ましい。デンプン粉末(4)の含有量(質量%)は、崩壊性と錠剤硬度を両立させる観点から、口腔内崩壊錠剤全量100質量%中、5〜20質量%であるのが好ましく、10〜15質量%であるのがより好ましい。
【0067】
本発明について、好ましい口腔内崩壊錠剤としては、全量100質量%中、上記薬物含有粒子(1)を1〜30質量%、部分アルファ化デンプン(3)を3〜7.5質量%、及びデンプン粉末(4)を5〜20質量%含有する口腔内崩壊錠剤である。
【0068】
本発明の口腔内崩壊錠剤には、上記薬物含有粒子(1)、球形マンニトール結晶粒子(2)、部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)以外に、本発明の効果を妨げない範囲でその他の添加物を使用することができる。かかる添加物としては、一般に口腔内崩壊錠剤の製造に用いられる種々の製剤用添加物であれば特に限定されず、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、着香剤、矯味剤等を挙げることができる。
【0069】
賦形剤としては、例えば、キシロース、ブドウ糖、果糖等の単糖類;ショ糖、乳糖、麦芽糖、還元麦芽糖、イソマルトース等のオリゴ糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、軽質無水ケイ酸及びケイ酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0070】
結合剤としては、上記部分アルファ化デンプン(3)以外のもの、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0071】
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン等が挙げられる。これらの崩壊剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0072】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。なかでも、少量の添加で充分な滑沢効果が得られるという観点から、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。これらの滑沢剤は、錠剤内部に含有させてもよいし、錠剤表面に局在させた形態(外部滑沢)としてもよい。
【0073】
着香剤としては、例えば、オレンジ、レモン各種香料等を挙げることができる。
【0074】
矯味剤としては、L−メントール、カンフル、ハッカ、ネオテーム、ソーマチン、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、サッカリンナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アセスルファムカリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0075】
本発明の口腔内崩壊錠剤は、口腔内に服用したときに、唾液により速やかに崩壊するものであり、その崩壊時間としては90秒以内、好ましくは60秒以内、より好ましくは30秒以内である。
【0076】
本発明の口腔内崩壊錠剤の錠剤硬度は、全自動錠剤分包機による調剤や押出式薬剤包装機(PTP)からの押出し時の負荷等の通常の取り扱いや負荷に耐えうるレベルであればよく、具体的には、錠剤硬度/錠剤質量の値が0.022kgf/mg以上(錠剤質量180mgの場合、錠剤硬度3.96kgf以上)であるのが好ましい(医療薬学Vol.29、No.3(2003)、367−374)。なお、本発明の口腔内崩壊錠剤の錠剤硬度は、通常公知の測定手法により求めることができ、例えば、錠剤硬度計を用い、直径方向の硬度を測定し、複数錠の平均値により求めればよい。
【0077】
本発明の口腔内崩壊錠剤は、公知の錠剤製造法によって製造することができる。例えば、予め薬物含有粒子(1)を調製し、これに、球形マンニトール結晶粒子(2)、部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)、さらに必要に応じてステアリン酸マグネシウムを含む成分を加え、全て一括して混合した後、その混合物を圧縮成型することによって得ることができるが、この方法に限定されない。特に、結合剤としての部分アルファ化デンプン(3)による効果を充分に発揮させて錠剤間における薬物含有量の良好な均一性を図る観点からすれば、予め調製された薬物含有粒子(1)に球形マンニトール結晶粒子(2)及びデンプン粉末(4)を配合して混合し、次いで部分アルファ化デンプン(3)を配合する方法によって、口腔内崩壊錠剤を得るのが好ましい。すなわち、かかる方法は、より具体的には、予め薬物含有粒子(1)を調製し、これに、球形マンニトール結晶粒子(2)及びデンプン粉末(4)を混合した後、部分アルファ化デンプン(3)を含む懸濁液を調製して結合液として用い、これを噴霧して造粒・乾燥して予め造粒物を調製し、得られた造粒物にステアリン酸マグネシウムを含む成分を加えて混合後、その混合物を圧縮成型する方法である。
【0078】
造粒の方法としては、例えば流動層造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法等が選択され得るが、生産性の面から流動層造粒法が好ましい。この際、造粒物の品温を35〜50℃に保ち、造粒物の水分量を5%以下に保つように、給気温度、風量、結合剤液量、噴霧空気圧等を調節することが好ましい。また、造粒物が局所的に濡れることを防ぐ目的で、間欠スプレーによる造粒を施すことが好ましい。間欠スプレーとは、液噴霧と乾燥を繰り返すスプレー方法である。打錠の方法は、例えば単発打錠機またはロータリー打錠機等通常の打錠機を用いて行うことができる。また、外部滑沢打錠機を用いて錠剤とすることもできる。ここで、圧縮成型時の圧力は、充分な錠剤硬度を保持しながら速やかな崩壊性を持たせる観点から、400〜1000kgfが好ましく、600〜900kgfがより好ましく、700〜850kgfがさらに好ましい。
【0079】
本発明の口腔内崩壊錠剤は、水なしで、又は水とともに服用される。服用方法としては、口に含みそのまま飲み込まず少量の水、又は水なしで口腔内の唾液で崩壊させて服用する方法、更には水とともにそのまま飲み込んで服用する方法が挙げられる。また、錠剤を水で崩壊させた後、服用してもよい。本発明の口腔内崩壊錠剤は、水なしで服用する必要が多い場合、錠剤を飲み込むことが困難な患者が服用する場合、又は通常の錠剤なら喉に詰まらせてしまう恐れのある高齢者や子供が服用する場合などに有利に用いられる。
【0080】
本発明の口腔内崩壊錠剤は、
[1](1)平均粒径150〜300μmの薬物含有粒子、
(2)球形マンニトール結晶粒子、
(3)25℃、10質量%水懸濁液の粘度が5〜45mPa・sである部分アルファ化デンプン、及び
(4)デンプン粉末
を含有する口腔内崩壊錠剤である。
【0081】
本発明は、さらに以下の口腔内崩壊錠剤が好ましい。
[2]前記口腔内崩壊錠剤全量100質量%中、前記薬物含有粒子(1)を1〜30質量%、好ましくは10〜30質量%、部分アルファ化デンプン(3)を3〜7.5質量%、好ましくは3〜6質量%、及びデンプン粉末(4)を5〜20質量%、好ましくは10〜15質量%含有する前記[1]に記載の口腔内崩壊錠剤。
[3]前記薬物含有粒子(1)に含まれる薬物が、不快な味の薬物であり、好ましくは抗潰瘍剤である前記[1]又は[2]の口腔内崩壊錠剤。
[4]前記薬物含有粒子(1)中の薬物を除く前記口腔内崩壊錠剤中の成分全量100質量%中、前記球形マンニトール結晶粒子(2)を40〜80質量%、好ましくは45〜60質量%含有する前記[1]〜[3]の口腔内崩壊錠剤。
[5]前記球形マンニトール結晶粒子(2)のかさ密度が0.3〜0.7g/mL、好ましくは0.35〜0.50g/mLである前記[1]〜[4]の口腔内崩壊錠剤。
[6]前記部分アルファ化デンプン(3)の25℃、10質量%水懸濁液の粘度が8〜35mPa・sである前記[1]〜[5]の口腔内崩壊錠剤。
[7]前記部分アルファ化デンプン(3)のアルファ化度が60〜80%、好ましくは70〜80%である前記[1]〜[6]の口腔内崩壊錠剤。
【0082】
[8]前記薬物含有粒子(1)が、薬物及び水膨潤性高分子を含有しない核粒子(P)の表面に、薬物及び水膨潤性高分子を含有する膜層(A)と、水不溶性高分子、水溶性物質及び無機化合物を含有する膜層(B)とを含む複数膜層が形成されてなる前記[1]〜[7]の口腔内崩壊錠剤。
[9]前記薬物含有粒子(1)を形成してなる前記複数膜層のうち、膜層(A)が最内膜層であり、前記薬物含有粒子(1)全量100質量%中、核粒子(P)の質量の割合が30質量%以下、薬物の含有量が40質量%以下、水膨潤性高分子の含有量が13〜30質量%、水不溶性高分子の含有量が7〜11質量%、及び前記膜層(B)に含まれる水溶性物質の含有量が水不溶性高分子の含有量の0.4〜0.6倍であり、かつ前記膜層(B)100質量%中、無機化合物の含有量が25〜35質量%である前記[8]の口腔内崩壊錠剤。
[10]前記薬物含有粒子(1)を形成してなる前記複数膜層のうち、前記膜層(B)が最外膜層である前記[8]又は[9]の口腔内崩壊錠剤。
[11]前記薬物含有粒子(1)全量100質量%中、薬物の含有量が5〜35質量%、水膨潤性高分子の含有量が15〜25質量%、及び水不溶性高分子の含有量が8〜10質量%であり、かつ前記膜層(B)100質量%中、無機化合物の含有量が27〜32質量%である前記[8]〜[10]の口腔内崩壊錠剤。
[12]前記不快な味の薬物が、ラニチジン塩酸塩、シメチジン、ファモチジン及びラフチジンから選ばれる1種の抗潰瘍剤であり、好ましくはラフチジンである前記[3]〜[11]の口腔内崩壊錠剤。
【0083】
本発明は、さらに以下の製造方法であるのが好ましい。
[13]予め調製した薬物含有粒子(1)に、球形マンニトール結晶粒子(2)、部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)を加えて混合し、得られた混合物を圧縮成型する前記[1]〜[12]の口腔内崩壊錠剤の製造方法。
[14]予め調製した薬物含有粒子(1)に、球形マンニトール結晶粒子(2)、部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)を加え、さらにステアリン酸マグネシウムを含む成分を加えて混合する前記[13]の口腔内崩壊錠剤の製造方法。
[15]予め調製した薬物含有粒子(1)に、球形マンニトール結晶粒子(2)及びデンプン粉末(4)を加えて混合し、得られた混合物に部分アルファ化デンプン(3)を含む懸濁液を噴霧して造粒物を調製し、得られた造粒物を圧縮成型する前記[1]〜[12]の口腔内崩壊錠剤の製造方法。
[16]得られた造粒物に、さらにステアリン酸マグネシウムを含む成分を加えて混合した後、圧縮成型する前記[16]の口腔内崩壊錠剤の製造方法。
【0084】
本発明は、さらに以下の方法により得られる口腔内崩壊錠剤であるのが好ましい。
[17]予め調製した薬物含有粒子(1)に、球形マンニトール結晶粒子(2)、部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)を加えて混合し、得られた混合物を圧縮成型することにより得られる前記[1]〜[12]の口腔内崩壊錠剤。
[18]予め調製した薬物含有粒子(1)に、球形マンニトール結晶粒子(2)、部分アルファ化デンプン(3)及びデンプン粉末(4)を加え、さらにステアリン酸マグネシウムを含む成分を加えて混合することにより得られる前記[17]の口腔内崩壊錠剤。
[19]予め調製した薬物含有粒子(1)に、球形マンニトール結晶粒子(2)及びデンプン粉末(4)を加えて混合し、得られた混合物に部分アルファ化デンプン(3)を含む懸濁液を噴霧して造粒物を調製し、得られた造粒物を圧縮成型することにより得られる前記[1]〜[12]の口腔内崩壊錠剤。
[20]得られた造粒物に、さらにステアリン酸マグネシウムを含む成分を加えて混合した後、圧縮成型することにより得られる前記[19]の口腔内崩壊錠剤。
【実施例】
【0085】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0086】
[参考例1]:薬物含有粒子(粒子A)の製造
(1)薬物含有最内膜層の形成
ヒドロキシプロピルセルロース「HPC−SSL」(日本曹達株式会社製)90gをエタノール(95)1610gに溶かし、ラフチジン(セントラル硝子株式会社製)300g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース「L−HPC(LH−31)」(信越化学工業株式会社製)300gを加え、懸濁液(1)−1とした。核粒子(P:薬物及び水膨潤性高分子を含有しない核粒子)としてノンパレル−108(100)250gを流動層造粒コーティング装置(装置名「マルチプレックス MP−01」、株式会社パウレック製)に仕込み、設定温度60〜65℃、噴霧速度5.0g/minで懸濁液(1)−1を1916.7g噴霧し、乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、ラフチジン含有粒子を得た。
なお、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(LMS−30、株式会社セイシン企業製)を用い、乾式・ワンショット測定により測定したところ、ノンパレル―108(100)の平均粒径は100μmであった。
また、後述する核粒子の平均粒径、及び得られたラフチジン含有粒子の平均粒径についても同様にして求めた。
【0087】
(2)中間層膜の形成
ヒプロメロース「TC−5E」(信越化学工業株式会社製)50gとタルク「PKP−81」(富士タルク工業株式会社製)50gとを精製水に加え、懸濁液(2)−1を1000g調製した。上記(1)で調製したラフチジン含有粒子350gを流動層造粒コーティング装置「マルチプレックスMP−01」に仕込み、設定温度70℃、固形分として仕込みの20%量の懸濁液(2)−1を噴霧速度3.8g/minで噴霧し、乾燥の後、上記タルク2.1gを加えた。これを目開き500μmの篩で篩過し、中間層を被覆したラフチジン含有粒子を得た。
【0088】
(3)最外膜層の形成
ヒプロメロース「TC−5E」60gを精製水140g、エタノール(95)400gからなる混液に溶解した(A液とする)。エチルセルロース「ETHOCEL STD 7Premium」(The Dow Chemical Company製)50gをエタノール(95)950gに溶解し、A液250gを加えた(B液とする)。酸化チタン「NA65」(東邦チタニウム株式会社製)32.2gを精製水200gに分散し、B液に加え、懸濁液(3)−1とした。上記(2)で調製したラフチジン含有粒子300gを流動層造粒コーティング装置「マルチプレックスMP−01」に仕込み、設定温度60℃、固形分として仕込みの30%量の懸濁液(3)−1を噴霧速度5.2g/minで噴霧し、乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、エチルセルロース含有最外層を被覆したラフチジン含有粒子(粒子A:平均粒径200μm)を得た。
【0089】
[参考例2]:薬物含有粒子(粒子B)の製造
(1)薬物含有最内膜層の形成
ヒドロキシプロピルセルロース「HPC−SSL」920gをエタノール(95)12.88kgに溶かし、ラフチジン2.3kg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース「L−HPC(LH−31)」2.3kgを加え懸濁液(1)−2とした。核粒子(P)として乳糖「FlowLac90」(MEGGLE製)(平均粒径120μm)2kgを流動造粒コーティング装置(装置名「フローコーター NFLO−5(2)SJ」、フロイント産業株式会社製)に仕込み、吸気温度54〜67℃、噴霧速度20.9g/minで懸濁液(1)−2を16kg噴霧し、乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、ラフチジン含有粒子を得た。
【0090】
(2)中間層膜の形成
ヒプロメロース「TC−5E」700gとタルク「PKP−81」700gを精製水に加え、懸濁液(2)−2を14kg調製した。上記(1)で調製したラフチジン含有粒子6.3kgを流動造粒コーティング装置「フローコーター NFLO−5(2)SJ」に仕込み、吸気温度76−82℃、噴霧速度17.2g/minで懸濁液(2)−2を12.6kg噴霧し、乾燥の後、上記タルク76gを加えた。これを目開き500μmの篩で篩過し、中間層を被覆したラフチジン含有粒子を得た。
【0091】
(3)最外膜層の形成
ヒプロメロース「TC−5E」468gとエチルセルロース「ETHOCEL STD7Premium」938.1gを精製水2.145kg、エタノール(95)33.069kgからなる混液に溶解した(C液とする)。酸化チタン「NA65」602.7gを精製水2.9472kgに分散し、C液に加え、懸濁液(3)−2とした。上記(2)で調製したラフチジン含有粒子7.2kgを流動層造粒コーティング装置「フローコーター NFLO−5(2)SJ」に仕込み、吸気温度62〜68℃、噴霧速度24.0g/minで懸濁液(3)−2を36kg噴霧し、乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、エチルセルロース含有最外層を被覆したラフチジン含有粒子(粒子B:平均粒径180μm)を得た。
【0092】
[参考例3]:薬物含有粒子(粒子C)の製造
(1)薬物含有最内膜層の形成
ヒドロキシプロピルセルロース「HPC−SSL」57gをエタノール(95)1019.7gに溶かし、ラフチジン380gを加え懸濁液(1)−3とした。核粒子として水膨潤性高分子であるカルボキシメチルスターチナトリウム「Primojel」(平均粒径40μm)350gを流動層造粒コーティング装置「マルチプレックス MP−01」に仕込み、設定温度60℃、噴霧速度5.1g/minで懸濁液(1)−3を1341.7g噴霧し、乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、ラフチジン含有粒子を得た。
【0093】
(2)中間層膜の形成
参考例1の(2)と同様の方法に従って、中間層を被覆したラフチジン含有粒子を得た。
【0094】
(3)最外膜層の形成
参考例1の(3)と同様の方法に従って、エチルセルロース含有最外層を被覆したラフチジン含有粒子(粒子C:平均粒径210μm)を得た。
【0095】
[参考例4]:薬物含有粒子(粒子D)の製造
(1)薬物含有最内膜層の形成
ヒドロキシプロピルセルロース「HPC−SSL」64gをエタノール(95)800gに溶かし、ラフチジン320g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース「L−HPC(LH−31)」160gを加え懸濁液(1)−4とした。核粒子(P)としてノンパレル−108(100) 300gを流動層造粒コーティング装置「マルチプレックス MP−01」に仕込み、設定温度60〜65℃、噴霧速度5.6g/minで懸濁液(1)−4を1700g噴霧し、乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、ラフチジン含有粒子を得た。
【0096】
(2)中間層膜の形成
参考例1の(2)と同様の方法に従って、中間層を被覆したラフチジン含有粒子を得た。
(3)最外膜層の形成
参考例1の(3)と同様の方法に従って、エチルセルロース含有最外層を被覆したラフチジン含有粒子(粒子D:平均粒径230μm)を得た。
【0097】
[参考例5]:薬物含有粒子(粒子E)の製造
(1)薬物含有最内膜層の形成
参考例1の(1)と同様の方法に従って、ラフチジン含有粒子を得た。
(2)中間層膜の形成
参考例1の(2)と同様の方法に従って、中間層を被覆したラフチジン含有粒子を得た。
【0098】
(3)最外膜層の形成
ヒプロメロース「TC−5E」30gを精製水70g、エタノール(95)200gからなる混液に溶解した(D液とする)。エチルセルロース「ETHOCEL STD 7Premium」78.4gをエタノール(95)1488.8gに溶解し、D液196.2gを加えた(E液とする)。酸化チタン「NA65」42gを精製水260.9gに分散し、E液に加え、懸濁液(3)−4とした。上記(2)で調製したラフチジン含有粒子300gを流動層造粒コーティング装置「マルチプレックスMP−01」に仕込み、設定温度60℃、固形分として仕込みの30%量の懸濁液(3)−4を噴霧速度5.4g/minで噴霧し、乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、エチルセルロース含有最外層を被覆したラフチジン含有粒子(粒子E:平均粒径210μm)を得た。
【0099】
[参考例6]:薬物含有粒子Fの製造
(1)薬物含有最内膜層の形成
参考例1の(1)と同様の方法に従って、ラフチジン含有粒子を得た。
(2)中間層膜の形成
参考例1の(2)と同様の方法に従って、中間層を被覆したラフチジン含有粒子を得た。
【0100】
(3)最外膜層の形成
ヒプロメロース「TC−5E」40gを精製水93.3g、エタノール(95)266.7gからなる混液に溶解した(F液とする)。エチルセルロース「ETHOCEL STD 7Premium」74.6gをエタノール(95)1417.4gに溶解し、F液196.2gを加えた(G液とする)。酸化チタン「NA65」28gを精製水173.9gに分散し、G液に加え、懸濁液(3)−5とした。上記(2)で調製したラフチジン含有粒子300gを流動層造粒コーティング装置「マルチプレックスMP−01」に仕込み、設定温度60℃、固形分として仕込みの30%量の懸濁液(3)−5を噴霧速度5.3g/minで噴霧し、乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、エチルセルロース含有最外層を被覆したラフチジン含有粒子(粒子F:平均粒径220μm)を得た。
【0101】
[参考例7]:薬物含有粒子Gの製造
(1)薬物含有造粒核粒子の形成
ヒドロキシプロピルセルロース「HPC−SSL」82.4g、ラフチジン205.9g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース「L−HPC(LH−31)」205.9g及び乳糖水和物「Lactochem」(DOMO製)205.9gを高速撹拌造粒機(装置名「バーチカルグラニュレーター VG−05」、株式会社パウレック製)に仕込み、2分間混合後、エタノール(95)127.2gを加えて造粒した。流動層造粒コーティング装置「マルチプレックス MP−01」を用いて乾燥の後、目開き355μmの篩で篩過し、ラフチジン含有造粒核粒子を得た。
【0102】
(2)中間層膜の形成
参考例1の(2)と同様の方法に従って、中間層(最内層なし)を被覆したラフチジン含有膜被覆粒子を得た。これ以降、参考例1の(2)で得られたラフチジン含有膜被覆粒子の代わりに、このラフチジン含有造粒核粒子を用いた。
【0103】
(3)最外膜層の形成
懸濁液(3)−1の噴霧量を固形分として仕込みの25%量とした以外は、参考例1の(3)と同様の方法に従って、エチルセルロース含有最外層を被覆したラフチジン含有粒子(粒子G:平均粒子径189μm)を得た。
これらの結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
[試験例1:溶出率の評価]
参考例1〜7で得られた粒子A〜Gを用い、以下の方法に従って試料を調製し、得られた試料を用いて日本薬局方一般試験法 製剤試験法収載溶出試験法に従い、下記測定条件下で溶出率(%)を評価した。結果を表2に示す。
【0106】
《試料の調製》
ラフチジン10mg相当量の各薬物含有粒子を秤取し、国際公開第2008/146590の記載に準じて製造された球形マンニトール結晶粒子(以下、球形マンニトール結晶粒子)/低置換度ヒドロキシプロピルセルロース「L−HPC(LH−21)」/フマル酸ステアリルナトリウム「PRUV(JRS製)」=160/8/1で混合した混合物169mgと混合し、調製粉を得た。この調製粉を、φ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、250kgfで圧縮成型して各試料を得た。
【0107】
《測定条件》
溶出試験法:第2法(50rpm)
試験液:溶出試験第2液(900mL)
測定波長:λ=271nm
【0108】
【表2】
【0109】
表2の結果から明らかなように、参考例1及び2の薬物含有粒子からは2分後でも5%以下の溶出率であるにもかかわらず、15分後には85%以上の溶出率を示した。一方、薬物層に水膨潤性高分子を含まない参考例3及び薬物含有造粒核粒子を用いた参考例7では、15分後には85%以上の溶出率を示すものの、2分後の溶出率が5%を超え、不快な味の遮蔽性が不十分であった。また、粒子全量中における水膨潤性高分子の量が不足している参考例4、水不溶性高分子(エチルセルロース)量に対して水溶性物質の量が少ない参考例5、及び最外層中の無機化合物量が不足している参考例6のいずれも、2分後の溶出率は5%以下であるものの、30分後の溶出率は85%以下であり、生物学的利用能の低下及び通常製剤との生物学的同等性の確保が懸念される結果であった。
【0110】
[参考例8〜16]
参考例1と同様の方法に従って、表3に示す処方でエチルセルロース含有最外層を被覆したラフチジン含有膜被覆粒子を得た。表4に所定の含有量(質量%)及び比の値を示す。なお、いずれの参考例も参考例1と同等程度に、2分後までの溶出率は低く、不快な味の遮蔽性は充分であることがわかった。また、その後は速やかな溶出性を示した。
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
[試験例2:不快な味の遮蔽性の評価]
参考例2及び参考例3で得られた薬物含有粒子、並びにラフチジン原末の味を、以下の評価方法及び評価基準に従って評価した。結果を表5に示す。
《評価方法》
健康な成人男性3名がラフチジン10mg相当量の薬物含有粒子又はラフチジン原末を30秒間含んだ後、これを吐き出し、不快な味を評価した。
《不快な味の評価基準》
−: 不快な味を感じない
±: 僅かに味を感じるが許容できる
+: 不快な味を感じる
++:不快な味を強く感じる
【0114】
【表5】
【0115】
表5の結果から明らかなように、ラフチジン原末は不快な味を強く呈する薬物であるが、参考例2の被覆粒子は口に含んだ直後のみならず、1分後も不快な味を感じないか、許容できる範囲であった。一方、参考例3の被覆粒子は不快な味を感じた。
【0116】
[参考例17:錠剤Aの製造]
球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)9.9gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)0.1gを加え、ガラス瓶中で1分間混合して調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、250kgfで圧縮成型して質量200mgの錠剤Aを得た。
【0117】
[参考例18:錠剤Bの製造]
球形マンニトール結晶粒子の代わりに、D−マンニトール「PEARLITOL 50C」(ロケットジャパン株式会社製)を用いた以外は、参考例17と同様の方法に従って、錠剤Bを得た。
【0118】
[参考例19:錠剤Cの製造]
球形マンニトール結晶粒子の代わりに、D−マンニトール「PEARLITOL 200SD」(ロケットジャパン株式会社製)を用いた以外は、参考例17と同様の方法に従って、錠剤Cを得た。
【0119】
[試験例3:錠剤の硬度及び崩壊時間の測定(1)]
参考例17〜19により製造された錠剤について、錠剤硬度計(6D、Schleuniger製)を用い、直径方向の硬度を測定し、3錠の平均値より錠剤硬度を求めた。崩壊時間は、口腔内崩壊錠試験器(ODT−101、富山産業株式会社製)を用いて、試験液:水(37±1℃)、錘質量:20g、回転数:75rpmの条件にて測定した。なお、硬度と崩壊時間は、打錠直後(Initial)、及び無包装状態にて40℃75%相対湿度条件下1日間静置後(40℃75%RH(open))に測定した。結果を表6に示す。
【0120】
【表6】
【0121】
表6の結果から明らかなように、参考例17〜19により製造された錠剤は、40℃75%RH(open)条件下で、いずれも吸湿による崩壊遅延を認めた。
【0122】
[実施例1:錠剤Dの製造]
精製水360gに部分アルファ化デンプン「PCS PC−10」(旭化成ケミカルズ株式会社製)40gを分散し、結合液(25℃、粘度:35mPa・s)とした。流動層造粒コーティング装置「マルチプレックス MP−01」に参考例2で製造した薬物含有粒子(粒子B)200.64g、球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)333.12g、トウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)90gを仕込み、混合した後、上記結合液のうち300gを噴霧して造粒し、乾燥して造粒物を得た。得られた造粒物9.9gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)0.1gを加え、ガラス瓶中で1分間混合して調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、1000kgfで圧縮成型して質量200mgの錠剤Dを得た。
【0123】
[実施例2:錠剤Eの製造]
精製水360gにトウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)40gを分散し、67℃で1時間加温して、結合液(25℃、粘度:8mPa・s)とした。この結合液を用いた以外は、実施例1と同様の方法に従って、錠剤Eを得た。
【0124】
[比較例1:錠剤Fの製造]
精製水360gに部分アルファ化デンプン「Starch 1500G」(日本カラコン株式会社製)40gを分散し、結合液(25℃、粘度:50mPa・s)とした。この結合液を用いた以外は、実施例1と同様の方法に従って、錠剤Fを得た。
【0125】
[比較例2:錠剤Gの製造]
精製水360gにトウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)40gを分散し、結合液(25℃、粘度:2mPa・s)とした。この結合液を用いた以外は、実施例1と同様の方法に従って、錠剤Gを得た。
【0126】
[比較例3:錠剤Hの製造]
精製水360gにヒドロキシプロピルセルロース「HPC−SSL」(日本曹達株式会社製)40gを溶解し、結合液とした。この結合液を用いた以外は、実施例1と同様の方法に従って、錠剤Hを得た。
【0127】
[比較例4:錠剤Iの製造]
精製水360gにポビドン「Kollidon 30」(BASFジャパン株式会社製)40gを溶解し、結合液とした。この結合液を用いた以外は、実施例1と同様の方法に従って、錠剤Iを得た。
【0128】
[試験例4:錠剤の硬度及び崩壊時間の測定(2)]
実施例1〜2、及び比較例1〜4により製造された錠剤について、試験例3と同様の方法に従って、錠剤硬度及び崩壊時間を測定した。結果を表7に示す。
【0129】
[試験例5:造粒物の粒度分布の測定]
実施例1〜2、及び比較例1〜4により得られた造粒物について、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LMS―30」(株式会社セイシン企業製)を用い、乾式・ワンショット測定により粒度分布を測定し、累積粒度分布曲線より得られる累積度90%粒度(D90)と累積度10%粒度(D10)の比(D90/D10)を求めた。結果を表7に示す。
【0130】
【表7】
【0131】
表7の結果から明らかなように、結合剤として、25℃、10質量%水懸濁液の粘度が5〜45mPa・sである部分アルファ化デンプンを用いた実施例1〜2では、良好な造粒性が得られ、崩壊性も十分であった。さらに、40℃75%RH(open)といった苛酷条件下においても吸湿による大幅な崩壊遅延を認めず、十分な錠剤硬度を維持した。一方、25℃、10質量%水懸濁液の粘度が45mPa・s超である部分アルファ化デンプンを用いた比較例1では、十分な崩壊性が得られず、さらに25℃、10質量%水懸濁液の粘度が5mPa・s未満であるデンプンを結合剤に用いた比較例2では、良好な造粒性が発揮できなかった。また、ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤に用いた比較例3及びポビドンを結合剤に用いた比較例4においては、良好な造粒性は得られたが、速崩壊性は得られなかった。
【0132】
[実施例3:錠剤Jの製造]
精製水270gに部分アルファ化デンプン「PCS PC−10」(旭化成ケミカルズ株式会社製)30gを分散し、結合液とした。流動層造粒コーティング装置「マルチプレックス MP−01」に参考例2で製造した薬物含有粒子(粒子B)200.64g、球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)343.12g、トウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)90gを仕込み、混合した後、上記結合液のうち200gを噴霧して造粒し、乾燥して造粒物を得た。得られた造粒物9.9gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)0.1gを加え、ガラス瓶中で1分間混合して調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、1000kgfで圧縮成型して質量200mgの錠剤Jを得た。
【0133】
[実施例4:錠剤Kの製造]
精製水540gに部分アルファ化デンプン「PCS PC−10」(旭化成ケミカルズ株式会社製)60gを分散し、結合液とした。流動層造粒コーティング装置「マルチプレックス MP−01」に参考例2で製造した薬物含有粒子(粒子B)200.64g、球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)313.52g、トウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)90gを仕込み、混合した後、上記結合液のうち496gを噴霧して造粒し、乾燥して造粒物を得た。得られた造粒物9.9gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)0.1gを加え、ガラス瓶中で1分間混合して調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、1000kgfで圧縮成型して質量200mgの錠剤Kを得た。
【0134】
[実施例5:錠剤Lの製造]
参考例2で製造した薬物含有粒子(粒子B)3.0g、球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)5.9g、トウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)0.5g、部分アルファ化デンプン「PCS PC−10」(旭化成ケミカルズ株式会社製)0.5gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)0.1gを加え、ガラス瓶中で1分間混合して調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、1000kgfで圧縮成型して質量200mgの錠剤Lを得た。
【0135】
[実施例6:錠剤Mの製造]
参考例2で製造した薬物含有粒子(粒子B)3.0g、球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)5.4g、トウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)1.0g、部分アルファ化デンプン「PCS PC−10」(旭化成ケミカルズ株式会社製)0.5gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)0.1gを加え、ガラス瓶中で1分間混合して調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、1000kgfで圧縮成型して質量200mgの錠剤Mを得た。
【0136】
[実施例7:錠剤Nの製造]
参考例2で製造した薬物含有粒子(粒子B)3.0g、球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)4.4g、トウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)2.0g、部分アルファ化デンプン「PCS PC−10」(旭化成ケミカルズ株式会社製)0.5gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)0.1gを加え、ガラス瓶中で1分間混合して調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、1000kgfで圧縮成型して質量200mgの錠剤Nを得た。
【0137】
[試験例6:錠剤の硬度及び崩壊時間の測定(3)]
実施例3〜7により製造された錠剤について、試験例3と同様の方法に従って、錠剤硬度及び崩壊時間を測定した。結果を表8に示す。
【0138】
[試験例7:造粒物の粒度分布の測定]
実施例3〜4により得られた造粒物について、試験例5と同様の方法に従って、粒度分布を測定し、D90/D10を求めた。結果を表8に示す。
【0139】
【表8】
【0140】
表8の結果から明らかなように、口腔内崩壊錠剤100質量%中、部分アルファ化デンプンが3〜7.5質量%であると、十分な造粒性と十分な崩壊性が得られることが判明した。同様に、口腔内崩壊錠剤100質量%中、デンプン粉末であるトウモロコシデンプンが5〜20質量%であると、十分な錠剤硬度と十分な崩壊性が得られ、40℃75%RH(open)条件下で、吸湿による大幅な崩壊遅延や硬度低下が認めないことが判明した。
【0141】
[実施例8:錠剤Oの製造]
参考例2で製造した薬物含有粒子(粒子B)0.1g、球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)7.9g、トウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)1.4g、部分アルファ化デンプン「PCS PC−10」(旭化成ケミカルズ株式会社製)0.5gにステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)0.1gを加え、ガラス瓶中で1分間混合して調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵および油圧プレス(理研精機株式会社製)を用い、1000kgfで圧縮成型して質量200mgの錠剤Oを得た。得られた錠剤は、十分な錠剤硬度と十分な崩壊性を有し、40℃75%RH(open)条件下で、吸湿による大幅な崩壊遅延や硬度低下は認められなかった。
【0142】
[実施例9:錠剤Pの製造]
表9に示す成分のうち、部分アルファ化デンプン「PCS PC−10」(旭化成ケミカルズ株式会社製)を精製水に分散し、これを結合液とした。流動層造粒コーティング装置「マルチプレックス MP−01」に参考例2で製造した薬物含有粒子(粒子B)、球形マンニトール結晶粒子(三菱商事フードテック株式会社製;平均粒径44μm)、トウモロコシデンプン「日食コーンスターチW」(日本食品化工株式会社製)を仕込み、混合した後、上記結合液を噴霧して造粒し、乾燥して造粒物を得た。得られた造粒物にクロスポビドン「Kollidon CL−SF」(BASFジャパン株式会社製)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム「ノイシリンUFL2」(富士化学工業株式会社製)、アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ株式会社製)、L−メントール(高砂香料工業株式会社製)、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)を加えて混合し、調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵およびロータリー式打錠機「12TU−AW」(菊水製作所製)を用い、800kgfで圧縮成型して質量180mgの錠剤Pを得た。
【0143】
[実施例10:錠剤Qの製造]
表9に示す成分を全て一括して混合し、調製粉を得た。この調製粉をφ8mm、R12mmの杵およびロータリー式打錠機「12TU−AW」(菊水製作所製)を用い、900kgfで圧縮成型して質量180mgの錠剤Qを得た。
【0144】
[試験例8:錠剤の硬度及び崩壊時間の測定(4)]
実施例9、10により製造された錠剤について、打錠直後(Initial)における錠剤硬度を試験例3に従って測定した。崩壊時間は、健康な成人男性が錠剤を口に含み、錠剤が唾液のみで完全に崩壊するまでの時間を測定することにより求めた。
さらに、錠剤中における薬物含有量のばらつき(C.V.:単位=%)は、錠剤30錠について個々の含量を測定し、次式により算出した。
C.V.=個々の含量の標準偏差/含量の平均値×100
結果を表9に示す。
【0145】
【表9】
【0146】
表9の結果から明らかなように、実施例9及び10は錠剤硬度及び崩壊時間について良好な結果を示したが、実施例10に比べて、実施例9のC.V.値は低い値を示したことから、成分を全て一括して混合するよりも、部分アルファ化デンプンを後から配合する方が、さらに錠剤間における薬物含有量のばらつきを有効に抑制して、均一性の高い錠剤が得られることが示された。