(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被乾燥材料を装入する乾燥庫(DC)と、該乾燥庫(DC)内に装入された被乾燥材料から発生する水蒸気を凝結捕集するコールドトラップ(CT)と、前記乾燥庫(DC)と前記コールドトラップ(CT)とを連通する主管(a)と、該主管(a)を開閉する主弁(MV)と、前記乾燥庫(DC)内の真空度を調節する真空度調節手段と、前記乾燥庫(DC)内の絶対圧力及び前記コールドトラップ(CT)内の絶対圧力を検出する真空検出手段と、前記乾燥庫(DC)、前記コールドトラップ(CT)及び前記開度調節手段の稼働を自動制御する制御装置(CR)とを備えた凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度、底部品温及び昇華速度の算出方法において、
前記制御装置(CR)は、所要の関係式及び計算プログラムを記憶しており、前記被乾燥材料の一次乾燥期に、前記真空度調節手段を駆動して前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)を一時的に高める方向に変化させ、少なくとも当該変化の前後における前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)及び前記コールドトラップ(CT)内の真空度(Pdt)を含む測定データと前記関係式とから、前記一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度、平均底部品温及び昇華速度を算出することを特徴とする、凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出方法。
前記真空度調節手段として、ダンパ方式の開度調節器(C)を前記主管(a)内に備えると共に、前記制御装置には、前記関係式として、前記主弁(MV)を全開とした状態における水負荷による昇華速度(Qm)と前記開度調節器(C)の開度角度(θ)と主管抵抗R(θ)との関係式を記憶しておき、
前記制御装置(CR)は、前記乾燥庫(DC)内に装入された被乾燥材料の一次乾燥期に、前記開度調節器(C)を少なくとも1回開方向に回動操作することにより、前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)を高める方向に変化させ、当該開度調節器(C)の開方向への回動操作の前後における前記開度調節器(C)の開度角度(θ)と乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)及びコールドトラップ(CT)内の真空度(Pdt)の測定データから、一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度、平均底部品温及び昇華速度を算出することを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出方法。
前記真空度調節手段として、リーク制御弁(LV)付きの真空制御回路(f)を前記乾燥庫(DC)に備えると共に、前記制御装置には、前記関係式として、前記主弁(MV)を全開とした状態における水負荷による昇華速度(Qm)と前記主管(a)の水蒸気流動抵抗係数(Cr)との関係式を記憶しておき、
前記制御装置(CR)は、前記乾燥庫(DC)内に装入された被乾燥材料の一次乾燥期に、前記リーク制御弁(LV)を少なくとも1回閉操作することにより、前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)を高める方向に変化させ、当該リーク制御弁(LV)の閉操作の前後における前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)及び前記コールドトラップ(CT)内の真空度(Pdt)の測定データから、一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度、平均底部品温及び昇華速度を算出することを特徴とする、請求項1に記載の凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出方法。
被乾燥材料を装入する乾燥庫(DC)と、該乾燥庫(DC)内に装入された被乾燥材料から発生する水蒸気を凝結捕集するコールドトラップ(CT)と、前記乾燥庫(DC)と前記コールドトラップ(CT)とを連通する主管(a)と、該主管(a)を開閉する主弁(MV)と、前記乾燥庫(DC)内の真空度を調節する真空度調節手段と、前記乾燥庫(DC)内の絶対圧力及び前記コールドトラップ(CT)内の絶対圧力を検出する真空検出手段と、前記乾燥庫(DC)、前記コールドトラップ(CT)及び前記開度調節手段の稼働を自動制御する制御装置(CR)とを備えた凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度、底部品温及び昇華速度の算出装置において、
所要の関係式及び計算プログラムを記憶したシーケンサ(PLC)又はパーソナルコンピュータ(PC)を前記制御装置(CR)として備え、
前記制御装置(CR)は、前記被乾燥材料の一次乾燥期に、前記真空度調節手段を駆動して前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)を一時的に高める方向に変化させ、少なくとも当該変化の前後における前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)及び前記コールドトラップ(CT)内の真空度(Pdt)を含む測定データと前記関係式により求められた計算データとから、前記一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度、平均底部品温及び昇華速度を算出することを特徴とする、凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出装置。
前記真空度調節手段として、ダンパ方式の開度調節器(C)が前記主管(a)内に備えられた凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度、底部品温及び昇華速度の算出装置であり、
前記制御装置(CR)には、前記関係式として、前記主弁(MV)を全開とした状態における水負荷による昇華速度(Qm)と前記開度調節器(C)の開度角度(θ)と主管抵抗R(θ)との関係式が記憶され、
前記制御装置(CR)は、前記乾燥庫(DC)内に装入された被乾燥材料の一次乾燥期に、前記開度調節器(C)を少なくとも1回開方向に回動操作することにより、前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)を高める方向に変化させ、当該開度調節器(C)の開方向への回動操作の前後における前記開度調節器(C)の開度角度(θ)と乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)及びコールドトラップ(CT)内の真空度(Pdt)の測定データから、一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度、平均底部品温及び昇華速度を算出することを特徴とする、請求項4に記載の凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出装置。
前記真空度調節手段として、リーク制御弁(LV)付きの真空制御回路(f)が前記乾燥庫(DC)に備えられた凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出装置であり、
前記制御装置(CR)には、前記関係式として、前記主弁(MV)を全開とした状態における水負荷による昇華速度(Qm)と前記主管(a)の水蒸気流動抵抗係数(Cr)との関係式が記憶され、
前記制御装置(CR)は、前記乾燥庫(DC)内に装入された被乾燥材料の一次乾燥期に、前記リーク制御弁(LV)を少なくとも1回閉操作することにより、前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)を高める方向に変化させ、当該リーク制御弁(LV)の閉操作の前後における前記乾燥庫(DC)内の真空度(Pdc)及び前記コールドトラップ(CT)内の真空度(Pdt)の測定データから、一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度、平均底部品温及び昇華速度を算出することを特徴とする、請求項4に記載の凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、医薬品等の凍結乾燥は、制御装置により自動制御される凍結乾燥装置を用い、当該凍結乾燥装置の乾燥庫内に、被乾燥材料を充填した多数のトレイやバイアル等の容器を装入し、各容器内の被乾燥材料を所定の含水率になるまで乾燥させることにより行われる。この種の凍結乾燥装置を用いた被乾燥材料の凍結乾燥工程では、多数の容器内に充填された全ての被乾燥材料についての平均昇華面温度を正確に測定することが、乾燥プロセスの適正な監視と最適化を実現する上で重要である。従来、凍結乾燥工程の一次乾燥期における被乾燥材料の昇華面温度の測定方法としては、乾燥庫内に装入された多数の容器の少なくとも1つに熱電対等の温度センサを挿入し、当該容器内に充填された被乾燥材料の温度を直接測定する方法が知られている。乾燥プロセスの監視は、被乾燥材料を充填した容器が載置される乾燥庫内の棚段の温度(棚温)、乾燥庫内の真空度、及び被乾燥材料の昇華面温度(品温)を凍結開始から継続的に測定することにより行われる。
【0003】
しかしながら、温度センサを用いて品温の測定を行った場合には、以下の問題がある。
(1)温度センサにより検出される品温は、温度センサが挿入された被乾燥材料についての熱電対挿入部位の温度であり、乾燥庫内に装入された全ての被乾燥材料についての品温を反映していない。
(2)温度センサを設置する場所が毎回同じとならないことから、再現性に難がある。
(3)温度センサが挿入された容器内の被乾燥材料は、核形成温度と氷晶成長に影響を受け、過冷却度が減少するので、平均氷晶サイズの増大が引き起こされ、既乾燥層の水蒸気抵抗が減少して昇華速度が増大する。また、温度センサが挿入される容器の棚内の位置によっては乾燥庫壁からの輻射入熱を受けるので、乾燥庫壁から離れた位置に装入された容器内の被乾燥材料とは乾燥速度が異なり、全体の容器を代表できない。
(4)上述のように温度センサが挿入された被乾燥材料は乾燥速度が速いので、この温度センサが挿入された被乾燥材料の品温と棚温度との温度差がなくなったときを一次乾燥終了点として判断すると、棚中央部に配置される容器内の被乾燥材料にはまだ氷がある場合があり、昇華未了のまま二次乾燥工程に入って、被乾燥材料がコラプス(被乾燥材料が所要の乾燥度まで乾燥されず、再生不可能な不良品となる状態)する危険性がある。
(5)容器内への温度センサのセットは、作業効率を考慮した場合、人が手作業で行わざるを得ない。しかしながら、薬品の無菌製剤に際しては、半打栓状態の容器は重要プロセスゾーンで取り扱わなければならないと定められているにも拘らず、そのグレードAの層流の上に身を乗り出し、容器配列の上に覆い被さって温度センサを取り付けることは問題であるとの指摘が規制当局からされている。そのために、少なくとも薬品の無菌製剤に関しては、温度センサをセットするためにグレードAに人が立ち入ることは困難となっている。今日では、薬液を充填されて半打栓状態の容器を凍結乾燥装置の棚に移動させる工程についても、各国の規制ガイドラインは厳しい規制を打ち出してきている。この扱いは、人手による搬送、棚への移載は、半打栓容器への汚染の原因を発生させる危険性を指摘しており、半打栓状態の容器を充填機から凍結乾燥装置の棚上に移動させる工程を自動化することが最新技術となっている。しかし、自動ローディング装置では、個々の容器についての品温測定を行うことができないので、品温の測定をしていない。このため、薬品の無菌製剤においては、生産立ち上げ段階の3ロットのバリデーション時に個々の容器についての品温測定を実施し、所要の製品評価が得られた場合には、棚温度及び真空度のパラメータ管理のみで、以後の生産をしているのが実情である。
【0004】
このような事情から、被乾燥材料の昇華面温度を直接測定するのではなく、他のパラメータの測定値より計算により求める、MTM(Manometric Temperature Measurement)法と呼ばれる方法が従来提案されている。この方法は、
図1に示すように、被乾燥材料を装入する乾燥庫DCと、乾燥庫DC内に装入された被乾燥材料から発生する水蒸気を凝結捕集するコールドトラップCTとが、主弁MVを備えた主管aを介して連通されている凍結乾燥装置Wに適用されるもので、被乾燥材料の一次乾燥期に一定時間間隔毎に主弁MVを十数秒間閉じて、その間の乾燥庫DC内の真空度変化を絶対真空計を用いて1秒以下の測定速度で測定し、その真空度変化から昇華面温度Tsと既乾燥層水蒸気抵抗Rpを計算により求める方法である(非特許文献1参照。)。
【0005】
このように、MTM法は、被乾燥材料を乾燥庫DCに装入し、凍結真空乾燥装置を作動させて一次乾燥工程を開始するとき、一定時間間隔で周期的に乾燥庫DCとコールドトラップCTとの間の主弁MVを閉じ、乾燥庫DCとコールドトラップCTとを遮断することで、一時的に乾燥庫DC内の被乾燥材料から発生する水蒸気を、コールドトラップCTで凝結捕集できなくするものである。乾燥庫DCとコールドトラップCTとを遮断すると、被乾燥材料から昇華した水蒸気により乾燥庫DC内の圧力が急速に被乾燥材料の昇華面圧力へ上昇し、その後品温の上昇と共に乾燥庫内の真空圧力が上がってゆく。この乾燥庫内の真空度変化から被乾燥材料の平均昇華面温度を計算により求める。なお、乾燥庫内の真空度測定には、絶対圧を計測可能な真空計bを用いなくてはならず、かつ1秒以内の早い記録速度でデータを収集する必要がある。
【0006】
しかるに、このMTM法には、以下の2つの問題点がある。
(1)主弁MVを全閉することで、乾燥庫DC内の圧力が被乾燥材料の昇華面圧力以上に上昇し、昇華面温度が被乾燥材料のコラプス温度以上まで上昇するので、乾燥品がコラプスして凍結乾燥が失敗する危険性がある。
(2)MTM法を実施するためには、主弁MVを瞬間的に開閉する必要があるが、一般的な生産機では、主弁MVの開閉に数分間かかるので、昇華面温度の計算が複雑なものとなる。また、主弁MVの開閉が遅れることによって乾燥庫DC内の真空度がさらに低くなるので、この点からも被乾燥材料がコラプスしやすくなる。
【0007】
図2に、MTM法による凍結乾燥プロセスの監視結果の一例を示す。被乾燥材料はスクロース(Sucrose:ショ糖)の5%水溶液で、一次乾燥期にMTM法により、乾燥庫DCの棚上に装入された被乾燥材料について昇華面温度Tsを算出した。また、検証のために棚端部と棚中央部に装入されたバイアル中の被乾燥材料について温度センサ(熱電対)を装入し、棚端部の品温Tm(side)と棚中央部の品温Tm(center)を測定すると共に、棚温(Th)の測定も行った。
図2から明らかなように、MTM法により算出された被乾燥材料の昇華面温度Tsは、温度センサにより測定された棚端部の品温Tm(side)及び棚中央部の品温Tm(center)とほぼ一致しており、MTM法を用いて被乾燥材料の昇華面温度Tsを正確に算出可能であることが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度、底部品温及び昇華速度の算出方法及び算出装置を、実施形態毎に説明する。
【0021】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る算出方法及び算出装置は、乾燥庫とコールドトラップとをつなぐ主管内に、乾燥庫内の真空度を調節するための開度調節器(ダンパ)を備えた流路開度真空制御方式の凍結乾燥装置に適用されるものである。
【0022】
即ち、
図3に示すように、第1実施形態に係る真空乾燥装置W1は、被乾燥材料を装入する乾燥庫DCと、乾燥庫DC内に装入された被乾燥材料から発生する水蒸気をトラップコイルCtにて凝結捕集するコールドトラップCTと、乾燥庫DCとコールドトラップCTを連通する主管aと、主管aを開閉する主弁MVと、主管a内に備えられたダンパ方式の開度調節器Cと、コールドトラップCTに付設された引口弁Vと、引口弁Vに接続された真空ポンプPと、乾燥庫DC内の絶対圧力及びコールドトラップCT内の絶対圧力を検出する真空計bと、上述した装置各部の稼働を自動制御する制御装置CRとから主に構成されている。本例においては、制御装置CRとして、シーケンサPLC及び記録計eが組み込まれた制御盤が用いられており、シーケンサPLCには、主弁MVを全開とした状態における水負荷による昇華速度Qmと開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式と、所要の計算プログラムとが予め記憶されている。なお、制御盤を用いる構成に代えて、上述の関係式及び計算プログラムが記録されたパーソナルコンピュータを制御装置CRとして用いることもできる。また、乾燥庫DCとコールドトラップCTのそれぞれに絶対圧力を検出する真空計bを備える構成に代えて、乾燥庫DC内の絶対圧力とコールドトラップCT内の絶対圧力の差圧を検出する差圧真空計を備えることもできる。開度角度θとは、全開状態(0°)からの開度調節器Cの回転角度をいう。
【0023】
制御装置CRは、乾燥庫DC内に装入された被乾燥材料の一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度Ts、平均底部品温Tb及び昇華速度Qmを算出するに際し、一次乾燥期に、
図4に示すように、開度調節器Cを少なくとも1回開方向に回動することにより、各操作毎に乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させ、当該開度調節器Cの開方向への回動操作の前後における開度調節器Cの開度角度θと乾燥庫DC内の真空度Pdc及びコールドトラップCT内の真空度Pdtの測定データを求める。
【0024】
〈平均昇華面温度Tsの算出方法〉
乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させると、その真空度変化の測定データから被乾燥材料の全体の平均昇華面温度Tsを以下の計算により求めることができる。
まず、昇華面から被乾燥材料の既乾燥層を通して乾燥庫内へ移動する水蒸気流量(昇華速度)Qmは、昇華面圧力をPs(Pa)、乾燥庫内の真空度をPdc(Pa)、被乾燥材料の既乾燥層の水蒸気移動抵抗をRp(KPa・S/Kg)としたとき、
Qm=dm/dt=(Ps−Pdc)/Rp
で求められる。
ここで、乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させる前の水蒸気流量をQm1、昇華面圧力をPs1、乾燥庫内の真空度をPdc1とし、乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させた後の水蒸気流量をQm2、昇華面圧力をPs2、乾燥庫DC内の真空度をPdc2とすると、
乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させる前の水蒸気流量Qm1は、
Qm1=3.6×(Ps1−Pdc1)/Rp
で表され、
乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させた後の水蒸気流量Qm2は、
Qm2=3.6×(Ps2−Pdc2)/Rp
で表される。
【0025】
Pdc2はPdc1より小さいので、乾燥庫DC内の真空度Pdcを変化させた後においては、昇華面温度Tsが下がる。
即ち、乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させる前後の昇華速度Qmの比をCとすると、上式より、
C=Qm1/Qm2=(Ps1−Pdc1)/(Ps2−Pdc2)
と表される。ここで、Ps1=Ps、Ps2=Ps−ΔPsと置くと、
C=(Ps−Pdc1)/(Ps−ΔPs−Pdc2)
Ps−C×Ps=Pdc1−C×(ΔPs+Pdc2)
Ps=〔C×(Pdc2+ΔPs)−Pdc1〕/(C−1)
ここで、ΔPsは、乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させる間に発生する昇華面温度の降下による昇華面圧力の減少分である。
また、クラウジウス・クラベイロンの式LnPs=28.91−6144.96/Tsを微分すると、ΔPs/Ps=6144.96×ΔTs/Ts
2となるので、この式から、被乾燥材料の平均昇華面温度Ts=6144.96/(28.911−LnPs)−273.15が得られる。
以上の計算式から、一次乾燥時に一定間隔で乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させた前後の昇華速度Qm1とQm2を正確に測定すれば、被乾燥材料の全体の平均昇華面温度を算出することができる。
【0026】
〈平均底部品温Tbの算出方法〉
一次乾燥期と、一次乾燥から二次乾燥への過渡期における被乾燥材料の全体の平均底部品温Tbは、次式から算出できる。
まず、気体伝導による棚段から容器底部への入熱量Qhは、次の式で計算される。
Qh=Ae×K×(Th−Tb)
但し、Aeは有効伝熱面積(m
2)、Kは気体伝導による棚段から容器底部への熱伝達係数、Thは棚温(℃)、Tbは底部品温(℃)である。
有効伝熱面積Aeは、Ae=2/(1/Av+1/At)で算出でき、
気体伝導による棚段から容器底部への熱伝達係数K(W/m
2℃)は、
K=16.86/(δ+2.12×29×0.133/Pdc)である。
有効伝熱面積Aeの計算式において、Avは容器底部面積(m
2)であり、Atはトレイ枠面積(m
2)である。
容器底部面積Avは、Av=π/4×n1×d
2(但し、n1はバイアル本数、dはバイアル直径)で算出でき、トレイ枠面積Atは、At=n2×W×L(但し、n2は枠枚数;Wは枠の幅寸法、Lは枠の長さ寸法)で算出できる。
また、気体伝導による棚段から容器底部への熱伝達係数Kの計算式において、δは容器底部の隙間であり、単位はmmである。
【0027】
一方、乾燥庫壁から全容器への幅射入熱量Qrは、次式から求められる。
Qr=5.67×ε×Ae×〔(Tw/100)
4−(Tb/100)
4〕
但し、式中のεは輻射係数、Twは乾燥庫壁温度、Tbは底部品温である。
また、この乾燥庫壁から全容器への幅射入熱量Qrは、次式で近似的に計算できる。
Qr=Ae×Kr×(Tw−Tb)
但し、Krは輻射入熱による相当熱伝達係数であり、試験機でKr=0.7W/m
2℃、生産機でKr=0.2W/m
2℃と近似できる。
【0028】
入熱量と昇華潜熱との関係から、下式が成り立つ。
Qm×ΔHs=3.6×〔Ae ×K×(Th−Tb)+Ae×Kr×(Tw−Tb)〕但し、ΔHsは昇華潜熱であり、ΔHs=2850KJ/Kgである。
被乾燥材料の平均底部品温は以下の式で計算できる。
Tb=〔K×Th+Kr×Tw−(Qm×ΔHs)/(3.6×Ae) 〕/(K+Kr)
したがって、以上の計算式から、一次乾燥期と一次乾燥から二次乾燥への過渡期に昇華速度Qmを測定すれば、被乾燥材料の全体の平均底部品温Tbを算出することができる。
【0029】
〈昇華速度Qmの算出方法〉
昇華速度Qmについては、凍結乾燥装置W1の乾燥庫DCとコールドトラップCTにそれぞれ付設した真空計bで測定した乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctとから算出する。この方法によると、真空計以外の高価な計測器機を装備する必要がないので、昇華速度Qmの算出を容易かつ低コストに行うことができる。
【0030】
以下に、第1実施形態に係る昇華速度Qmの算出方法について説明する。
上述したように、被乾燥材料の昇華面から昇華した水蒸気は、乾燥庫DCから主管aを通してコールドトラップCT内に流れ、トラップコイルCtにて凝結捕集される。流路開度真空制御の場合、Pct/Pdc<0.53になり、主管a内における水蒸気の流れが噴流状態となるので、被乾燥材料からの昇華速度Qmは、主管抵抗をRとしたとき、次の式で計算できる。
Qm=3.6×Pdc/R
ここで、乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させる前における被乾燥材料からの昇華速度、乾燥庫真空度、主管抵抗をそれぞれQm1、Pdcl、R(θ1)とし、乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させた後における被乾燥材料からの昇華速度、乾燥庫真空度、主管抵抗をそれぞれQm2、Pdc2、R(θ2)とすると、
Qml=3.6×Pdcl/R(θ1)
Qm2=3.6×Pdc2/R(θ2)
と表記できる。
【0031】
主管抵抗Rは、水負荷を掛けたときの被乾燥材料からの昇華量を測定するか、算出することにより求められる。また、主管抵抗Rが求まれば、乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctの測定データから昇華速度Qmを求めることができる。
【0032】
具体的には、乾燥庫DC内に被乾燥材料を装入した状態で
図4に示した凍結乾燥装置W1を作動させ、棚温をThに設定し、かつ乾燥庫DC内の真空度Pdcを開度調節器Cにて制御値に設定して乾燥するとき、その一次乾燥期間に一定時間間隔(0.5時間あるいは1時間)で乾燥庫DC内の真空度を高める方向に開度調節器Cを回転させ、その前後の開度調節器Cの開度角度θ、乾燥庫DC内の真空度Pdc及びCT真空度Pctを記録計eにて記録する。そして、それらの測定データをシーケンサ(PLC)に取り込み、該シーケンサ(PLC)に記憶された計算プログラムに従って、以下の手順で被乾燥材料の全体の平均昇華面温度Ts、平均底部品温Tb及び昇華速度Qmを計算する。
【0033】
(1)乾燥庫DC内の真空度を高める方向に変化させる前後の乾燥庫真空度Pdc1,Pdc2とコールドトラップ真空度Pct1,Pct2との圧力差ΔPを計算する。
(2)水負荷で測定した主管抵抗R(θ)と開度調節器Cの開度角度θとの関係から、乾燥庫DC内の真空度を高める方向に変化させる前後の主管抵抗R1,R2を計算する。
(3)主管a内の水蒸気流動が噴流状態となるPct/Pdc<0.53で、Qm1=3.6×Pdc1/R1と、Qm2=3.6×Pdc2/R2と、C=Qm1/Qm2を計算する。
(4)これらの計算結果に基づいて、昇華面圧力Ps=〔C×(Pdc2+ΔPs)−Pdc1〕/(C−1)を計算する。ΔPsは、開度調節弁Cを開操作したときに昇華面温度が降下することに伴う昇華面圧力の減少分であり、先に説明したように、クラウジウス・クラベイロンの式LnPs=28.91−6144.96/Tsを微分することにより得られる式ΔPs/Ps=6144.96×ΔTs/Ts
2式に、開度調節弁Cの開操作前後の昇華面温度の降下分ΔTsを代入することにより求められる。
(5)クラウジウス・クラベイロンの式に氷の定数を入れて、昇華面温度Ts=6144.96/(28.911−LnPs)−273.15を計算する。
(6)昇華速度Qm(Kg/hr)=3.6×Pdc1/R1を計算する。
(7)底部品温Tb=〔K×Th+Kr×Tw−(Qm×ΔHs)/(3.6×Ae) 〕/(K+Kr)を計算する。
【0034】
流路開度真空制御方式の凍結乾燥装置W1では、乾燥庫DCとコールドトラップCTを連通する主管aと開度調節器Cとを通して流れる水蒸気の主管抵抗R(θ)は、R(θ)=(Pdc−Pct)/Qmで表され、Pct/Pdc<0.53で水蒸気の流れが噴流となるので、R(θ)=Pdc/Qmで計算できる。以下にその計算方法を示す。
【0035】
(1)主管aの入口、主弁MV及び主管a内の抵抗R1(θ)は、圧力降下の粘性流計算式Pdc−P1=Cr×ρ×u
2/2から、Pdc−P1=R1(θ)×Qm、R1(θ)=Cr×R×T/(2×Pdc×M×A0
2)×Qmで計算できる。
(2)開度調節器Cの抵抗R2(θ)は、開度調節器Cの前後の圧力の比Pct/Plが0.53以下となったときに噴流となり、噴流の計算式は、
Qm=ρ×A´×u´で表される。
但し、u´は局所音速であり、u´=(K×R×T/M)
1/2である。
また、A´は収縮面積であり、A´=0.6〜0.7×Aである。
従って、噴流の計算式は、R2(θ)=(R×T/(K×M))
1/2/A´と置いたとき、
Qm=P1×A´×〔K×M/(R×T)〕
1/2=P1/R2(θ)
と書き換えられる。
(3)一方、主管抵抗R(θ)は、
R(θ)=R1(θ)+R2(θ)
=[〔CO+(R2(θ)/2)
2]
1/2+R2(θ)/2
で表される。
但し、CO=Cr×R×T/(2×Pdc×M×A0
2)=3408.65、
R2(θ)=・2223.7/Aであり、
開度調節器Cの断面積A(cm
2)は、Dを主管aの内径、d1を開度調節器Cの直径、tを開度調節器Cの厚みとしたとき、
A=0.01×(π×D
2/4−d1×t×cosθ−π×d1
2/4×sinθ)
で計算される。
この事例の計算結果を下記の表1に示す。
【0037】
〈開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式の導出〉
昇華面温度Ts及び昇華速度Qmの算出に際しては、事前に、水負荷で昇華速度Qm(Kg/hr)と乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctを測定し、開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を求める。その方法は、トレイ底部に品温センサを取り付け、トレイに水を入れ、−40℃まで凍結し、一次乾燥時に棚温を設定して、乾燥庫内の真空度を26.7Paから6.7Paまで順次に制御し、棚温Thと底部品温Tbを測定し、庫内圧力PdcとCT圧力Pctを絶対圧真空計にて記録する。各真空制御値における開度調節器Cの開度角度θも計測する。
【0038】
昇華速度抵抗Qm(Kg/hr)の確定は、昇華前後の被乾燥材料の重量差から昇華量を求める方法と、入熱量計算から解析する方法の二つの方法がある。解析による場合には、乾燥庫DC内の真空度Pdcにて棚からトレイ底部への熱伝達係数αを計算し、次にQ=A1×α×(Th−Tb)の計算式でトレイ底部への熱流量を計算し、昇華速度Qmが氷の昇華潜熱2850KJ/Kgより計算式Qm=Q/2850で求められる。それにより開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式が得られる。
【0039】
次いで、凍結乾燥プログラムにしたがって被乾燥材料の凍結乾燥を行うときに、開度調節器Cの開度角度θ、乾燥庫DC内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctを計測して記録すれば、上述した水負荷の測定で得られた開度調節器Cの開度角度θと水蒸気抵抗R(θ)との関係式から、個別容器の品温を測定することなく、一次乾燥期における全体の平均昇華面温度Ts、平均底部品温Tb及び昇華速度Qmの監視が可能になる。
【実施例1】
【0040】
以下、流路開度真空制御方式の凍結乾燥装置に適用される被乾燥材料の昇華面温度Tsと昇華速度Qmの算出方法及び算出装置のより具体的な実施例を示す。
【0041】
〈開度調節器の開度角度と主管抵抗との関係式の導出〉
先ず、水負荷の試験で、開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を求める。凍結乾燥装置W1は、乾燥庫DC内に、水を充填したトレイが装入され、制御装置CRにより制御されて所定の乾燥工程を開始している。トレイ内の水を−45℃まで凍結し、一次乾燥時に棚温Thを−20℃に設定し、乾燥庫DC内の真空度Pdcを4Pa、6.7Pa、10Pa、13.3Pa、20Pa、30Pa、40Pa、60Paに制御して、それぞれ3時間保持し、合計8例の水負荷試験を実施した。そのときの開度調節器Cの開度角度θ、棚温Th、トレイ底部の氷温度Tb、乾燥庫DC内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctをそれぞれ測定して記録した。
【0042】
氷の昇華速度Qm(Kg/h)を昇華量の測定や入熱量による計算で決定し、開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)との関係式を求めた。表2及び
図5に、開度調節器Cの開度角度θと計算により求められた主管抵抗R(θ)との関係、及び開度調節器Cの開度θと測定により求められた主管抵抗R(θ)との関係を示す。
【0043】
【表2】
【0044】
次いで、
図5から、以下に示す主管抵抗R(θ)の計算式、及び開度調節器Cの断面積A(cm
2)の計算式を求めた。
R(θ)=〔3408.65+(2223.7/A)
2〕
1/2+2223.7/A、
A=0.01×(π×D
2/4−d1×t×cosθ−π×d1
2/4×sinθ)
但し、Dは主管aの内径、d1は開度調節器Cの直径、tは開度調節器Cの厚みである。
以上の手順で水負荷テストで開度調節器Cの開度角度θと主管抵抗R(θ)と昇華速度Qmとの関係式が得られる。
【0045】
〈平均昇華面温度Ts、品温Tb及び昇華速度Qmの算出〉
次に、実負荷を用いた凍結乾燥テストを行って、被乾燥材料の全体の平均昇華面温度を計算した。凍結乾燥装置W1は、乾燥庫DC内に被乾燥材料マンニトール(Mannitol、分子式:C
6H
14O
6)の10%水溶液を分注したバイアル660本が装入され、制御装置CRにより制御され所定の乾燥工程を開始している。なお、本発明に係る算出方法及び算出装置の適切性を検証するために、棚中央部に装入された3本のバイアルには品温センサを挿入して、バイアル内に分注された被乾燥材料マンニトールの品温を測定した。溶液を−45℃で3時間凍結させ、一次乾燥時に棚温Thを−10℃に設定すると共に、開度調節器Cの開度角度θを調整して乾燥庫DC内の真空度Pdcを13.3Paに制御し、被乾燥材料を凍結乾燥した。この一次乾燥中に30分間隔で開度調節器Cの開度角度θを120秒間開方向へ回動し、回動前後における乾燥庫DC内の真空度Pdc1,Pdc2と、開度調節器Cの開度角度θ1,θ2と、主管の断面積A1,A2と、主管抵抗R1,R2と、昇華速度Qm1,Qm2と、昇華速度Qm1と昇華速度Qm2の比Cと、昇華面圧力Psと、昇華面温度Tsと、品温の実測値Tmとを測定・算出して記録した。表3に、その測定・算出結果を示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3から明らかなように、
(1)乾燥開始から1時間で、開度調節器Cの開度角度θを120秒間開方向へ回転させ、角度θが70.794°から57.195°へ、乾燥庫DC内の真空度Pdcが13.31Paから7.53Paに変化し、算出した昇華面温度Tsは−31.1℃、品温の実測値Tbは―28.6℃、昇華速度Qmは0.137Kg/hrであった。
(2)乾燥開始から1時間30分で、開度調節器Cの開度角度θが71.37°から57.78°へ、乾燥庫DC内の真空度Pdcが13.26Paから7.26Paに変化し、算出した昇華面温度Tsは−30.1℃、品温の実測Tbは−27.7℃、昇華速度Qmは0.131Kg/hrであった。
(3)乾燥開始から5時間で、開度調節器Cの開度角度θが74.349°から60.705°へ、乾燥庫DC内の真空度Pdcが13.32Paから6.52Paに変化し、算出した昇華面温度Tsは−27.2℃、品温の実測値Tbは―24.0℃、昇華速度Qmは0.107Kg/hrであった。
(4)乾燥開始から10時間で、開度調節器Cの開度角度θが76.878°から63.288°へ、乾燥庫DC内の真空度Pdcが13.32Paから6.02Paに変化し、算出した昇華面温度Tsは−24.5℃、品温の実測値Tbは−21.7℃、昇華速度Qmは0.089Kg/hrであった。
算出した昇華面温度Tsは、品温の実測値よりも約2.1〜3.5℃低かった。この差は、昇華面温度Tsと容器底部品温Tbの温度差に相当する。
【0048】
このように、本例の算出方法及び算出装置は、一次乾燥期に真空制御値に対して、一定時間間隔で開度調節器Cの開度角度θを開方向へ回転させ、乾燥庫DC内の真空度を高める方向に変化するので、真空度の変化前後の開度調節器Cの開度角度θ、乾燥庫DCの真空度Pdc及びコールドトラップCTの真空度Pctを測定することにより、全体の平均昇華面温度、平均底部品温及び昇華速度を計算により求められることが実証された。よって、温度センサを用いて乾燥庫DC内に装入された被乾燥材料の品温を直接測定する場合に比べて、一次乾燥の終点の監視を正確かつ安全に行うことができる。また、開度調節器Cを開方向へ回転する期間中において、品温(実測値)が約0.5℃低下しており、従来のMTM法による場合のように、昇華面温度Tsの算出時に乾燥庫内の真空度が劣化して被乾燥材料の昇華面温度が上昇するということがなく、被乾燥材料のコラプスを完全に防止できることが実証された。
【0049】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る算出方法及び算出装置は、乾燥庫内の真空度を調節するためのリーク弁を乾燥庫に備えたリーク式真空制御方式の凍結乾燥装置に適用されるものである。
【0050】
即ち、
図6に示すように、第2実施形態に係る真空乾燥装置W2は、被乾燥材料を装入する乾燥庫DCと、乾燥庫DC内に装入された被乾燥材料から発生する水蒸気をトラップコイルCtにて凝結捕集するコールドトラップCTと、乾燥庫DCとコールドトラップCTを連通する主管aと、主管aを開閉する主弁MVと、乾燥庫DCに接続されたリーク制御弁LV付きの真空制御回路fと、コールドトラップCTに付設された引口弁Vと、引口弁Vに接続された真空ポンプPと、乾燥庫DC内の絶対圧力及びコールドトラップCT内の絶対圧力を検出する真空計bと、上述した装置各部の稼働を自動制御する制御装置CRとから主に構成されている。本例においては、制御装置CRとして、シーケンサPLC及び記録計eが組み込まれた制御盤が用いられており、シーケンサPLCには、主弁MVを全開とした状態において求めた水負荷による昇華速度Qmと主管a内の水蒸気流動抵抗係数Crとの関係式と、所要の計算プログラムとが予め記憶されている。その他については、第1実施形態に係る凍結乾燥装置W1と同じであるので、対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
制御装置CRは、乾燥庫DC内に装入された被乾燥材料の一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度Ts、平均底部品温Tb及び昇華速度Qmを算出するに際し、一次乾燥期に、
図7に示すように、少なくとも1回リーク制御弁LVを数十秒間閉めることにより、各操作毎に乾燥庫DC内の真空度Pdcを高める方向に変化させ、当該リーク制御弁LVの閉操作の前後における乾燥庫DC内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctを記録計eに記録し、それらの測定データをシーケンサ(PLC)に取り込んで、被乾燥材料の全体の平均昇華面温度Ts、平均底部品温Tb及び昇華速度Qmを計算する。
【0052】
〈平均昇華面温度Ts及び平均底部品温Tbの算出方法〉
平均昇華面温度Ts及び平均底部品温Tbについては、第1実施形態と同様の方法で算出される。従って、本項では、重複を避けるために説明を省略する。
【0053】
〈昇華速度Qmの算出方法〉
第2実施形態に係る昇華速度Qmの算出方法も、第1実施形態に係る昇華速度Qmの算出方法と同様に、凍結乾燥装置W2の乾燥庫DCとコールドトラップCTにそれぞれ付設した真空計bで測定した乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctとから算出する。この方法によると、真空計以外の高価な計測器機を装備する必要がないので、昇華速度Qmの算出を容易かつ低コストに行うことができる。
【0054】
以下に、第2実施形態に係る昇華速度Qmの算出方法について説明する。
上述したように、被乾燥材料の昇華面から昇華した水蒸気は、乾燥庫DCから主管aを通してコールドトラップCT内に流れ、トラップコイルCtにて凝結捕集される。リーク式真空制御の場合、主管a内における水蒸気の流れは粘性流となるので、被乾燥材料からの昇華速度Qmは、次の式で計算できる。
Qm=3・6×(Pdc−Pct)/R=3・6×ΔP/R
上式において、Pdcは乾燥庫DC内の真空度(乾燥庫真空度)
PctはコールドトラップCT内の真空度(コールドトラップ真空度)
ΔPは乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctとの差圧
Rは主管抵抗である。
【0055】
差圧ΔPは、粘性流の管路圧力降下の計算式から、以下のように表される。
ΔP=Cr/2×ρ×u
2=Cr/2×ρ×〔Qm/(3600×A×ρ)〕
2
但し、Crは主管流路の水蒸気流動抵抗係数
ρは理想気体の状態方程式ρ=P×M/(R×T)で表される値(Pは気体の圧力、Mは気体の分子量、Rは気体定数、Tは気体の温度)
Aは主管aの流路面積である。
上記ΔPの式に、理想気体状態方程式ρ=P×M/(R×T)、分子量M=18、気体定数R=8314、気体温度T=288、ΔP=Pdc−Pctを代入し、昇華速度Qmの式に変換すると、
Qm=A×〔(Pdc
2−Pct
2)/(8314×288/(18×36002)×Cr)〕
1/2
となる。
したがって、リーク制御弁LVを閉めて乾燥庫DC内の真空度を高める方向へ変化させる前における被乾燥材料の昇華速度をQm1とすると、Qm1は下式で表わせる。
Qm1=A×〔(Pdc1
2−Pct1
2)/(0.0103×Cr)〕
1/2
また、リーク制御弁LVを閉めて乾燥庫DC内の真空度を高める方向へ変化させた後の被乾燥材料の昇華速度をQm2とすると、Qm2は下式で表わせる。
Qm2=A×〔(Pdc2
2−Pct2
2)/(0.0103×Cr)〕
1/2【0056】
〈昇華速度Qmと主管流路の水蒸気流動抵抗係数Crとの関係式の導出〉
主管流路の水蒸気流動抵抗係数Crは、水負荷で実際の昇華量を測定する方法と計算による方法の二つ方法で求めることができる。
計算により求める場合には、主管aの流路面積Aは既知であるので、上述した
Qm=A×〔(Pdc
2−Pct
2)/(8314×288/(18×36002)×Cr)〕
1/2
の式より、主管流路の水蒸気流動抵抗係数Crが求めれば、乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctを測定することによって、昇華速度Qmを算出できる。なお、乾燥庫真空度Pdcの測定及びコールドトラップ真空度Pctの測定には、高精度の真空計bを設置することが要求される。
即ち、昇華速度Qmが小さくなると、乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctの差圧ΔP=Pdc−Pctが小さくなるので、真空計bの精度によっては、PdcがPctより低くなって、ΔP<0、昇華速度Qm<0となり、昇華速度の算出ができなくなる場合もあるからである。
このような不都合を回避するため、真空計bに代えて真空差圧計を乾燥庫DCとコールドトラップCTとの間に設置し、乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctの差圧ΔPを直接測定する構成とすることがより好ましい。
【0057】
具体的には、乾燥庫DC内に被乾燥材料を装入した状態で
図6に示した凍結乾燥装置W2を稼動させ、棚温をThに設定し、かつ乾燥庫内の真空度Pdcをリーク制御弁LVの開閉にて制御値に設定して乾燥するとき、その一次乾燥期間に一定時間間隔(0.5時間或いは1時間)で自動でリーク制御弁LVを数十秒間閉める。リーク制御弁LVを閉じると、乾燥庫DC内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctが共に高くなる方向に変化するので、リーク制御弁LVを閉じる前後の乾燥庫DC内の真空度Pdc及びCT真空度Pctを記録計eにて記録する。そして、それらの測定データをシーケンサ(PLC)に取り込み、該シーケンサ(PLC)に記憶された計算プログラムに従って、以下の手順で被乾燥材料の全体の平均昇華面温度Ts、平均底部品温Tb及び昇華速度Qmを計算する。
【0058】
(1)リーク制御弁LVを閉めた時点から最初3秒間の乾燥庫DC内の平均真空度Pdc1及びコールドトラップCT内の平均真空度Pct1と、リーク制御弁LVを閉めてから10秒後の時点から3秒間の乾燥庫DC内の平均真空度Pdc2及びコールドトラップCT内の平均真空度Pct2を計算する。
(2)水負荷で測定した主管aの水蒸気流動抵抗係数Crと昇華速度Qmとの関係式から、リーク制御弁LVを開閉する前後の水蒸気流動抵抗係数Cr値と主管流路の断面積Aをシーケンサ(PLC)に取り込む。
(3)粘性流の管路圧力降下の計算式
ΔP=Cr/2×ρ×u
2=Cr/2×ρ×〔Qm/(3600×A×ρ)〕
2
から、リーク制御弁LVを閉める前の昇華速度Qm1と、リーク制御弁LVを閉めた後の昇華速度Qm2と、それらの比とを、下式により算出する。
Qml=A×〔(Pdc1
2−Pct1
2)/(0.0103×Cr)〕
1/2
Qm2=A×〔(Pdc2
2−Pct2
2)/(0.0103×Cr)〕
1/2、
C=Qm1/Qm2
(4)次に、これらの計算結果に基づいて、被乾燥材料の昇華面圧力Psを下式により算出する。
Ps=〔C×(Pdc2+ΔPs)−Pdcl〕/(C−1)
ここで、ΔPsは、リーク制御弁LVが閉状態に切り換えられている間における昇華面温度の降下による昇華面圧力の減少分であり、クラウジウス・クラベイロンの式LnPs=28.91−6144.96/Tsを微分することにより得られる式ΔPs/Ps=6144.96×ΔTs/Ts
2に、リーク制御弁LVを閉じる前後の昇華面温度の降下分ΔTsを代入することにより求められる。なお、リーク制御弁LVを10秒間閉じた場合の昇華面温度の降下ΔTsは僅かである。
(5)クラウジクス・クラベイロンの式により氷の定数を入れて、昇華面温度Ts=6144.96/(28.911−LnPs)−273.15を求める。
(6)昇華速度Qm=A×〔(Pdc1
2−Pct1
2)/(0.0103×Cr)]
1/2を計算する。
(7)底部品温Tb=〔K×Th+Kr×Tw−(Qm×ΔHs)/(3.6×Ae) 〕/(K+Kr)を計算する。
【0059】
次いで、乾燥庫DCとコールドトラップCTを連通する主管aを通して流れる水蒸気の流動抵抗係数Crを求める。水蒸気の流動抵抗係数Crは、主管aの入口から出口までに至る各区間の水蒸気流動抵抗係数の総和であり、本試験例では、主管aを、主管入口、主管出口、エルボ箇所、主弁MVの設置箇所、及び主管aの入口区間(水蒸気の流れの助走区間)を除く流れが十分に発達した区間の5区間に分け、主管入口の流動抵抗係数Cr1=0.5、主管出口の流動抵抗係数Cr2=0.5、エルボ箇所の流動抵抗係数Cr3=1.2、主弁MVの設置箇所の流動抵抗係数Cr4=1.7とした。
なお、エルボ箇所の流動抵抗係数Cr3は、1.13×n(90°×n箇所)で求められる。本試験例においては、
図8に示すように、乾燥庫DCとコールドトラップCTとをつなぐ主管a内に開度調節器Cを備えると共に、乾燥庫DCに乾燥庫DC内の真空度を調節するためのリーク弁LVを備えた凍結乾燥装置を用いたので、これをエルボに相当する流動抵抗として、Cr3=1.2とした。
主管aの入口区間(水蒸気の流れの助走区間)を除く流れが十分発達する区間の流動抵抗係数Cr5は、Cr5=λ×L/D+ξ(但し、ξ=2.7、Lは主管の長さ、Dは主管内径、λは摩擦係数)で求められ、摩擦係数λは、λ=64/Re(但し、Reはレイノルズ数)で求められ、レイノルズ数Reは、Re=u×D/ν≒40×Qm/D(但し、Qmは昇華速度、Dは主管aの内径)で求められる。
本例の試験機では、L=0.7mで、Qm=0.17Kg/hrのとき、Cr=6.6+1.6×0.7/0.17=13.19となった。
【0060】
一方、測定により主管流路の水蒸気流動抵抗係数Crと昇華速度Qmの関係式を求める場合には、トレイ底部に品温センサを取り付け、トレイに水を入れ、−40℃まで凍結し、一次乾燥期に棚温を設定して、乾燥庫内の真空度を26.7Paから6.7Paまで順次に制御し、棚温Thと底部品温Tbを測定し、乾燥庫DC内の真空度PdcとコールドトラップCT内の真空度Pctとを絶対圧真空計にて記録する。
【0061】
昇華速度Qm(Kg/hr)の確定は、昇華前後の被乾燥材料の重量差から昇華量を求める方法と、入熱量計算から解析する方法の二つの方法がある。解析による場合には、乾燥庫DC内の真空度Pdcにて棚からトレイ底部への熱伝達係数αを計算し、次にQ=A1×α×(Th−Tb)の計算式でトレイ底部への熱流量を計算し、昇華速度Qmが氷の昇華潜熱2850KJ/Kgより計算式Qm=Q/2850で求められる。それにより主管流路の水蒸気流動抵抗係数Crと昇華速度Qmとの関係式が得られる。
【0062】
本例のリーク式真空制御では、実際に凍結乾燥プログラムを設定して被乾燥材料の凍結乾燥を行うとき、乾燥庫内の真空度PdcとCT内の真空度Pctを計測して記録すれば、水負荷の測定で得られた主管流路の水蒸気抵抗係数Crと昇華速度Qmとの関係式を利用して、一次乾燥時に昇華した水蒸気流量が求められ、昇華速度も算出できる。
【実施例2】
【0063】
以下に、リーク式真空制御方式の凍結乾燥装置W2に適用される被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出方法及び算出装置のより具体的な実施例を示す。
【0064】
〈水蒸気流動抵抗係数Crと昇華速度Qmとの関係式の導出〉
先ず、水負荷の試験で、主管流路の水蒸気流動抵抗係数Crと昇華速度Qmとの関係式を求める。水負荷の試験は、乾燥庫DC内に水を充填したトレイを装入した状態で、制御装置CRにより凍結乾燥装置W2の稼動を制御し、所定の乾燥工程を実行することにより行われる。本例においては、トレイ内の水を−45℃まで凍結した後の一次乾燥時に、棚温Thを−20℃に設定すると共に乾燥庫DC内の真空度Pdcを6.7Paに設定して3時間保持した。また、棚温Thを−10℃に設定すると共に乾燥庫DC内の真空度Pdcを6.7Pa、13.3Pa、20Paに制御してそれぞれ3時間保持した。また、棚温Thを5℃に設定すると共に乾燥庫DC内の真空度Pdcを6.7Pa、13.3Paに制御して、3時間保持した。また、棚温Thを20℃に設定すると共に乾燥庫DC内の真空度Pdcを6.7Pa、13.3Paに制御して、それぞれ3時間保持した。上記9条件の水負荷試験を実施しながら、棚温Th、トレイ底部品温Tb、乾燥庫真空度Pdc及びコールドトラップ真空度Pctを測定して記録した。更に、これらの測定結果から、氷の昇華速度Qm(Kg/h)と主管流路の水蒸気流動抵抗係数Crを求めた。表4に、水負荷の試験で求められた棚温Th、乾燥庫真空度Pdc、コールドトラップ真空度Pct、昇華速度Qm及び水蒸気流動抵抗係数Crを示す。
【0065】
【表4】
【0066】
図9に、表4のデータに基づいて作成した主管流路の水蒸気流動抵抗係数Crと昇華速度Qmとの関係を表すグラフを示す。このグラフから、
Cr=5.4+0.85/Qm
1.25
の関係式が得られた。
本実施例では、主管aの長さが比較的短いために、主管a全体が入口区間(助走区間)となっており、水蒸気の流れが十分に発達した区間での計算式Cr=6.6+1.6×L/Qmと比べると、水蒸気流動抵抗係数Crが昇華速度Qm
1.25に反比例している。
【0067】
〈被乾燥材料の平均昇華面温度Tsと昇華速度Qmの算出〉
真空制御回路fに備えられた可変リーク弁及びリーク制御弁LVを経由して、外部空気を凍結乾燥装置W2内に導入することによって、乾燥庫DC内の真空度Pdcを13.3Paに制御し、しかる後に30分間隔でリーク制御弁LVを40秒間閉じ、その間に乾燥庫真空度Pdcとコールドトラップ真空度Pctをそれぞれ測定して記録し、シーケンサPLCに記憶された計算ソフトを用いて、被乾燥材料の平均昇華面温度Tsと昇華速度Qmを計測した。表5に、その計測結果を示す。
【0068】
【表5】
【0069】
(1)乾燥開始から35分経過後、リーク制御弁LVを40秒間閉じた。リーク制御弁LVの閉止時点から最初3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは12.926Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは12.580Paであった。また、リーク制御弁LVを閉じてから10秒後の時点から3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは10.604Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは10.106Paであった。その結果、これらの測定データから算出した昇華面温度Tsは−31.1℃であり、昇華速度Qmは0.133Kg/hrから0.148Kg/hrに変化し、品温の実測値Tbは−28.7℃であった。
(2)乾燥開始から1時間3分経過後、リーク制御弁LVを40秒間閉じた。リーク制御弁LVの閉止時点から最初3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは13.369Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは12.977Paであった。また、リーク制御弁LVを閉じてから10秒後の時点から3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは11.066Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは10.515Paであった。その結果、これらの測定データから算出した昇華面温度Tsは−30.5℃であり、昇華速度Qmは0.148Kg/hrから0.163Kg/hrに変化し、品温の実測値Tbは−27.9℃であった。
(3)乾燥開始から2時間8分経過後、リーク制御弁LVを40秒間閉じた。リーク制御弁LVの閉止時点から最初3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは13.315Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは12.902Paであった。また、リーク制御弁LVを閉じてから10秒後の時点から3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは10.769Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは10.195Paであった。その結果、これらの測定データから算出した昇華面温度Tsは−27.7℃であり、昇華速度Qmは0.153Kg/hrから0.164Kg/hrに変化し、品温の実測値Tbは−26.2℃であった。
(4)乾燥開始から3時間40分経過後、リーク制御弁LVを40秒間閉じた。リーク制御弁LVの閉止時点から最初3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは12.580Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは12.180Paであった。また、リーク制御弁LVを閉じてから10秒後の時点から3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは10.353Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは9.820Paであった。その結果、これらの測定データから算出した昇華面温度Tsは−27.2℃であり、昇華速度Qmは0.144Kg/hrから0.152Kg/hrに変化し、品温の実測値Tbは−24.7℃であった。
(5)乾燥開始から4時間40分経過後、リーク制御弁LVを40秒間閉じた。リーク制御弁LVの閉止時点から最初3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは12.860Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは12.486Paであった。また、リーク制御弁LVを閉じてから10秒後の時点から3秒間の平均乾燥庫真空度Pdcは10.209Pa、平均コールドトラップ真空度Pctは9.689Paであった。その結果、これらの測定データから算出した昇華面温度Tsは−26.4℃であり、昇華速度Qmは0.139Kg/hrから0.148Kg/hrに変化し、品温の実測値Tbは−24.5℃であった。
表5から明らかなように、算出した昇華面温度Tsは、品温の実測値よりも約0.6〜1.9℃低くなる。これは昇華面温度と容器底部温度の温度差に相当する。
【0070】
リーク制御弁LVを閉じた40秒間では、品温(実測値)が約0.5℃低下しており、従来のMTM法による場合のように、昇華面温度Tsの算出時に乾燥庫内の真空度が劣化して被乾燥材料の昇華面温度が上昇するということがなく、被乾燥材料のコラプスを完全に防止できることが実証された。また、表5のデータから、本発明に係る被乾燥材料の昇華面温度の算出方法は、乾燥庫DC内に装入された多数の被乾燥材料の平均昇華面温度を正確に算出できることが実証された。
【0071】
以下に、本発明に係る被乾燥材料の昇華面温度、底部品温及び昇華速度の算出方法及び算出装置の利点を列挙する。
【0072】
上述のように、MTM法は、一次乾燥期に主弁MVを閉じるので、主弁MVを閉じている間に乾燥庫DC内の真空度が下がって品温が1〜2℃上昇し、被乾燥材料がコラプスする危険性がある。これに対して、本発明に係る被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出方法及び算出装置は、被乾燥材料の一次乾燥期に乾燥庫DC内のPdc真空度を高める方向へ変化させるので、
図10に示すように被乾燥材料の昇華面温度Tsを下げることができ、MTM法とは異なり被乾燥材料のコラプスを完全に防止することができる。
【0073】
また、本発明に係る被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出方法及び算出装置は、人が介在することなく、一次乾燥期における被乾燥材料の平均昇華面温度Tsと昇華速度Qmを監視できるので、原材料液を充填機から凍結乾燥装置へ自動ローディングする凍結乾燥装置を用いて製剤を行うことにより、米国FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)が推奨する非接触による工程監視方法PAT(Process Analytical Technology)を実現できる。
【0074】
また、本発明に係る被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出方法及び算出装置によると、凍結乾燥の一次乾燥期に、個別容器の品温を測定せずに被乾燥材料全体の平均昇華面温度Tsの算出と同時に、昇華面から昇華した水蒸気流量、即ち昇華速度Qm(Kg/h)も算出できるので、一次乾燥期における昇華速度Qmの変化曲線が得られて、乾燥工程のより適正な監視が可能になる。薬品は力価により、容器への原材料液の分注量が変更されるので、可変となる製剤では毎回一次乾燥時間が変動する。このため、棚温度Thと乾燥時間のみの管理では一次乾燥終了の判断が困難である。本発明に係る被乾燥材料の昇華面温度と昇華速度の算出方法及び算出装置によれば、昇華速度Qmの変化曲線が得られるので、一次乾燥の終了の判断を正確におこなうことができる。
【0075】
さらに、平均昇華面温度Tsと昇華速度Qmを測定することにより、既乾燥層からの水蒸気移動抵抗のデータも収集できるので、コラプス温度を考慮した被乾燥材料の最適乾燥プログラムを作成することができる。