特許第5876428号(P5876428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876428
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】ローラゲート
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/30 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   E02B7/30
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-40637(P2013-40637)
(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公開番号】特開2014-169541(P2014-169541A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2013年3月22日
【審判番号】不服2015-10122(P2015-10122/J1)
【審判請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 友一
(72)【発明者】
【氏名】西川 雅章
【合議体】
【審判長】 中田 誠
【審判官】 赤木 啓二
【審判官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−129452(JP,A)
【文献】 特開平8−27763(JP,A)
【文献】 特開2012−158924(JP,A)
【文献】 実開昭60−151926(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20-7/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電所の洪水吐口や取水口等の開口を開閉させるローラゲートであって、
水圧を受けるスキンプレートと、該スキンプレートの水圧を受ける面と反対側の面に設けられる、主桁と縦桁とを縦横に組み合わせて構成した補強桁とからなり、前記洪水吐口、取水口等の開口に上昇および自重による下降を可能に設けられる扉体と、扉体の左右端に回転自在に設けられるローラと、前記開口を形成する両側壁に設けられるとともに、ローラを回転自在に案内するローラガイドとを備え、
前記主桁の上部の複数個所に、少なくとも1枚の重り板からなる重り体を着脱可能に載置させたことを特徴とするローラゲート。
【請求項2】
前記主桁の上部の複数箇所には、前記重り体を支持する支持軸が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のローラゲート。
【請求項3】
前記支持軸は、前記主桁の上部に前記主桁の長手方向に所定の間隔ごとに複数箇所に、かつ前記主桁の幅方向に少なくとも1列に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のローラゲート。
【請求項4】
前記重り板には、前記支持軸を挿通させる切欠き又は挿通孔が設けられ、該切欠き又は該挿通孔内に前記支持軸を挿通させることにより、前記重り板が前記主桁の上部に載置された状態に支持されることを特徴とする請求項2又は3に記載のローラゲート。
【請求項5】
前記重り板は、金属板からなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のローラゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラゲートに関し、特に、水力発電所の洪水吐ゲート、取水ゲート等に有効なローラゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所の洪水吐ゲート、取水ゲート等として用いられるローラゲートは、扉体の両側にローラを取り付け、ローラを洪水吐口、取水口等の両側壁に設けたローラガイドによって案内し、ウインチの作動によって扉体に取り付けたワイヤロープを上下させることにより、扉体を上下させて洪水吐口、取水口等の開口を開閉させるように構成したものである。
【0003】
この場合、扉体は、鋼材からなる複数の主桁と縦桁とを縦横に組み合わせて構成した補強桁と、補強桁の前面側に貼り付けられる鋼板からなるスキンプレートとを備えており、左右端の縦桁の外側にそれぞれローラが取り付けられ、上端の主桁の上部にウインチから繰り出されたワイヤロープが連結されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、上記のような構成のローラゲートにあっては、ウインチからワイヤロープを繰り出すことにより、自重によって扉体を下降させているが、ローラとローラガイドとの間の摩擦力、スキンプレートに作用する水圧等によって扉体を円滑に下降させることができないことがある。
【0005】
このため、補強桁の主桁(上端の主桁を除く)の上部にコンクリート、砂等からなるバラストを載せて、バラストによって扉体の重量を増やしているが、主桁の上面がバラストで覆われているため、主桁等のメンテナンスを行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3168348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、主桁等のメンテナンスに影響することなく、扉体の重量を増やすことのできるローラゲートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、水力発電所の洪水吐口や取水口等の開口を開閉させるローラゲートであって、水圧を受けるスキンプレートと、該スキンプレートの水圧を受ける面と反対側の面に設けられる、主桁と縦桁とを縦横に組み合わせて構成した補強桁とからなり、前記洪水吐口、取水口等の開口に上昇および自重による下降を可能に設けられる扉体と、扉体の左右端に回転自在に設けられるローラと、前記開口を形成する両側壁に設けられるとともに、ローラを回転自在に案内するローラガイドとを備え、前記主桁の上部の複数個所に、少なくとも1枚の重り板からなる重り体を着脱可能に載置させたことを特徴とする。
【0009】
本発明のローラゲートによれば、扉体の主桁の上部に少なくとも1枚の重り板からなる重り体を載置させることにより扉体の自重を増やすことができるので、ローラとローラガイドとの間の摩擦力、スキンプレートに作用する水圧等に影響されることなく、扉体を円滑に下降させることができる。また、主桁等のメンテナンスの際には、主桁の上部から重り体の重り板を取り外すことにより、主桁等のメンテナンスを行うことができる。
【0010】
また、本発明において、前記主桁の上部の複数箇所には、前記重り体を支持する支持軸が設けられていることとしてもよい。
【0011】
本発明のローラゲートによれば、主桁の上部の重り体を設ける位置を調整することができるので、扉体の重心位置が河川の流れ方向の上流側、下流側、又は河川の幅方向にずれた場合に、そのずれに応じて主桁の上部に設ける重り体の位置を調整することにより、扉体のずれた重心の位置を元に戻すことができ、扉体が河川の上流側、下流側、又は河川の幅方向に傾いて、扉体の上下方向の移動が妨げられるのを防止できる。
【0012】
また、本発明において、前記支持軸は、前記主桁の上部に前記主桁の長手方向に所定の間隔ごとに複数箇所に、かつ前記主桁の幅方向に少なくとも1列に設けられていることとしてもよい。
【0013】
本発明のローラゲートによれば、複数の支持軸から重り体を支持する支持軸を選択して、その選択した支持軸の位置に重り体を取り付けることにより、扉体の重心の位置を調整することができる。
【0014】
また、本発明において、前記重り板には、前記支持軸を挿通させる切欠き又は挿通孔が設けられ、該切欠き又は該挿通孔内に前記支持軸を挿通させることにより、前記重り板が前記主桁の上部に載置させた状態に支持されることとしてもよい。
【0015】
本発明のローラゲートによれば、重り板の切欠き又は挿通孔内に支持軸を挿通させることで、重り板が支持軸によって主桁の上部に載置された状態に支持されることになる。
【0016】
また、本発明において、前記重り板は、金属板からなることとしてもよい。
【0017】
本発明のローラゲートによれば、重り板を金属板で構成することにより、コンクリートや砂等のバラストと同等の重量をコンクリートや砂等のバラストよりも小さい体積で扉体に加えることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明のローラゲートによれば、主桁等のメンテナンスに影響することなく、扉体の重量を摩擦力や水圧等によって下降が妨げられない程度に増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明によるローラゲートの一実施の形態を示した概略図である。
図2図1のA−A線に沿って見た断面図である。
図3】ローラゲートの重心位置の調整方法を示した概略図である。
図4】ローラゲートの重心位置の調整方法を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2には、本発明によるローラゲートの一実施の形態が示されている。本実施の形態のローラゲート1は、水力発電所の洪水吐ゲート、取水ゲート等に適用可能なものであって、ローラゲート1の主桁4等のメンテナンスに影響することなく、ローラゲート1の扉体2の重量を調整できるように構成したものである。
【0021】
本実施の形態のローラゲート1は、スキンプレート7と、スキンプレート7の裏面側に設けられる、複数の主桁4と縦桁6とを縦横に組み合わせて構成した補強桁3とからなる扉体2と、補強桁3の左右端の縦桁6の外側にそれぞれ回転自在に設けられるローラ8と、主桁4に着脱可能に取り付けられる重り体13と、洪水吐口、取水口等の両側壁16に設けられるとともに、ローラ8を回転自在に案内するローラガイド9と、扉体2を昇降させるウインチ(図示ぜず)とから構成されている。
【0022】
スキンプレート7は、鋼板からなるものであって、このスキンプレート7の裏面側にH形鋼等の鋼材から形成される補強桁3の主桁4及び縦桁6が格子状等をなすように縦横に組み合わされた状態で設けられ、スキンプレート7の前面側で河川の上流側からの水圧を受けるようになっている。
【0023】
補強桁3の各主桁4(上端の主桁4を除く)のウエブ5の上面5aの複数箇所には、支持軸12が垂直に設けられ、これらの支持軸12によって各主桁4のウエブ5の上面5aに載置させた重り体13が支持され、重り体13が各主桁4のウエブ5の上面5aから脱落するのが防止される。
【0024】
支持軸12は棒ネジ等からなるものであって、各主桁4のウエブ5の上部5aに溶接等の手段によって固定されている。支持軸12は、各主桁4のウエブ5の上面5aに直接に固定してもよいし、ウエブ5に設けられている既設の水抜き孔を利用して固定してもよいし、ウエブ5に支持軸12を挿通させる孔を設け、この孔を利用して固定してもよい。
【0025】
支持軸12は、各主桁4のウエブ5の上面5aに長手方向に所定の間隔ごとに複数箇所に、かつ、ウエブ5の幅方向に複数列に設けられている。このように支持軸12を各主桁4のウエブ5の上面5aに配置することにより、重り体13による扉体2の重心の位置の調整幅を広げることができる。
【0026】
なお、本実施の形態においては、上から2番目と3番目の主桁4のウエブ5の上面5aの中央部に3本の支持軸12を2列(合計6本)に設けているが、4番目と5番目の主桁4のウエブ5の上面5aにも同様の配置で支持軸12を設けてもよい。
【0027】
重り体13は、鋼板からなる重り板14を複数枚重ねて構成したものであって、各主桁4のウエブ5の上面5aの各支持軸12に対応する位置にそれぞれ載置可能に構成されている。重り板14は、四角形板状をなすものであって、中心から一側に延びる切欠き15が設けられ、この切欠き15に各主桁4のウエブ5の上面5aの各支持軸12を挿通させることで、各主桁4のウエブ5の上面5aに載置させた状態に支持されるようになっている。
【0028】
重り体13の重り板14を鋼板で構成することにより、コンクリート、砂等からなるバラストよりも比重を大きくすることができるので、コンクリート、砂等のバラストよりも小さい容積でコンクリート、砂等のバラストと同様の重量を得ることができる。
【0029】
なお、重り板14は、四角形板状に限らず、円板状等の他の形状に形成してもよい。また、切欠き15の代わりに重り板14の中心部に挿通孔を設け、この挿通孔内に支持軸12を挿通させるように構成してもよい。また、重り板14は、鋼板に限らず、銅、鉛等の比重の大きい金属で形成してもよい。
【0030】
補強桁3の上端の主桁4には、ウインチ(図示せず)から繰り出されたワイヤロープ11が連結され、ウインチを作動させてワイヤロープ11を上下方向に移動させることにより扉板2を昇降させることができ、洪水吐口、取水口等の開口17を扉板2で開閉させることができる。
【0031】
そして、上記のように構成した本実施の形態のローラゲート1の扉体2の各主桁4のウエブ5の上面5aの各支持軸12に対応する位置に、所定の枚数の重り板14からなる重り体13をそれぞれ載置させて、各重り体13の各重り板14の切欠き15がスキンプレート7側を向くように、各重り板14の切欠き15に各支持軸12を挿通させることで、各重り体13の各重り板14を各主桁4のウエブ5の上面5aに載置させた状態に支持する。この場合、重り体13の上端の重り板14から上方に突出している支持軸12の部分にナット(図示せず)を螺合させて締め付けることにより、重り体13を固定するように構成してもよい。
【0032】
これにより、扉体2の自重に重り体13の重量を加えて扉体2の重量を増加させることができるので、扉体2を下降させて洪水吐口、取水口等の開口17を閉じる場合に、ローラ8とローラガイド9との間の摩擦力、スキンプレート7の前面に作用する河川の上流側からの水圧等の影響を受けることなく、扉体2を円滑に下降させることができる。
【0033】
また、扉体2の主桁4等のメンテナンスの際には、扉体2を上昇させた状態で、各主桁4のウエブ5の上面5aから重り体13を取り外すことにより、各主桁4のウエブ5の上面5aを露出させることができるので、各主桁4のメンテナンス等を行うことが可能となる。
【0034】
また、図3に示すように、扉体2の重心位置が河川の上流側(Y1方向)にずれた場合には、各主桁4のウエブ5の手前側に重り体13を載置させて、扉体2の手前側に重量を加えることにより、河川の上流側(Y1方向)にずれた重心位置を河川の下流側(Y2方向)に移動させることができるので、扉体2が河川の上流側(Y1方向)に傾いて扉体2の上下動が鈍くなるのを防止でき、扉体2を円滑に上下動させることができる。
なお、図3においては、奥側の支持軸12の図示を省略している。
【0035】
また、図4に示すように、扉体2の重心位置が河川の下流側(Y2方向)にずれた場合には、各主桁4のウエブ5の奥側に重り体13を載置させて、扉体2の奥側に重量を加えることにより、河川の下流側(Y2方向)にずれた重心位置を河川の上流側(Y1方向)に移動させることができるので、扉体2が河川の下流側(Y2方向)に傾いて扉体2の上下動が鈍くなるのを防止でき、扉体2を円滑に上下動させることができる。
なお、図4においては、手前側の支持軸12の図示を省略している。
【0036】
また、図示はしないが、扉体2の重心位置が河川の幅方向にずれた場合には、各主桁4のウエブ5の各列の重り体13の重量を左右で異なるように調整することにより、扉体2の重心位置をずれた方向と反対方向に移動させることができるので、扉体2が河川の幅方向に傾いて扉体2の上下動が鈍くなるのを防止でき、扉体2を円滑に上下動させることができる。
【0037】
上記のように構成した本実施の形態のローラゲート1にあっては、扉体2の各主桁4のウエブ5の上面5aに重り体13を着脱可能に載置させるように構成したので、扉体2の主桁4等のメンテナンスを行う場合に、重り体13を各主桁4のウエブ5の上面5aから取り外すことにより、主桁4等のメンテナンスを行うことができる。
【0038】
また、扉体2の重心の位置が河川の上流方向(Y1方向)、下流方向(Y2方向)、河川の幅方向にずれた場合に、扉体2の各主桁4のウエブ5の上面5aに載置させる重り体13の位置、又は左右のバランスを調整することにより、重心の位置のずれを直すことができるので、扉体2が河川の上流方向(Y1方向)、下流方向(Y2方向)、河川の幅方向に傾いて、扉体2の上下動が鈍くなるのを防止でき、扉体2を円滑に上下動させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ローラゲート
2 扉体
3 補強桁
4 主桁
5 ウエブ
5a 上面
6 縦桁
7 スキンプレート
8 ローラ
9 ローラガイド
11 ワイヤロープ
12 支持軸
13 重り体
14 重り板
15 切欠き
16 側壁
17 開口
図1
図2
図3
図4