(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記モデルを用いて、前記第1および第2の電動機の角加速度に基づいて前記トルク容量を推定し、その推定されたトルク容量を用いて前記第1および第2のトルクを算出する、請求項5に記載のハイブリッド車両。
前記制御装置は、前記モデルを用いて、前記第1および第2の電動機の角加速度に基づいて前記内燃機関のトルクをさらに推定し、その推定された内燃機関のトルクをさらに用いて前記第1および第2のトルクを算出する、請求項6に記載のハイブリッド車両。
前記制御装置は、前記第1および第2の電動機の回転数の測定値に低域通過フィルタ処理を施し、その低域通過フィルタ処理が施された測定値に基づいて前記第1および第2の電動機の角加速度を算出する、請求項6または7に記載のハイブリッド車両。
前記制御装置は、前記第1および第2の角加速度が前記制約条件を満たしていないとき、前記第1および第2の角加速度が前記制約条件を満たすように前記第1および第2の角加速度の目標を補正する、請求項1から9のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0025】
[実施の形態1]
(ハイブリッド車両の全体構成)
図1は、この発明の実施の形態1によるハイブリッド車両10の全体構成図である。
図1を参照して、ハイブリッド車両10は、エンジン12と、差動部20と、変速部30と、差動歯車装置42と、駆動輪44とを備える。また、ハイブリッド車両10は、インバータ52と、蓄電装置54と、制御装置60とをさらに備える。
【0026】
エンジン12は、内燃機関であり、たとえばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等によって構成される。エンジン12は、燃料の燃焼による熱エネルギーをピストンやロータなどの運動子の運動エネルギーに変換し、その変換された運動エネルギーを差動部20へ出力する。たとえば、運動子がピストンであり、その運動が往復運動であれば、所謂クランク機構を介して往復運動が回転運動に変換され、ピストンの運動エネルギーが差動部20に伝達される。
【0027】
差動部20は、エンジン12に連結される。差動部20は、後述のように、インバータ52によって駆動されるモータジェネレータと、エンジン12の出力を変速部30への伝達部材とモータジェネレータとに分割する動力分割装置とを含む。差動部20の構成については、後ほど説明する。
【0028】
変速部30は、差動部20に連結され、差動部20に接続される上記伝達部材(変速部30の入力軸)の回転速度と差動歯車装置42に接続される駆動軸(変速部30の出力軸)の回転速度との比(変速比)を変更可能に構成される。なお、この実施の形態1では、変速部30は、変速比を段階的に変更可能な有段式の変速機によって構成されるものとするが、無段式の変速機によって構成してもよい。差動歯車装置42は、変速部30の出力軸に連結され、変速部30から出力される動力を駆動輪44へ伝達する。変速部30の構成についても、差動部20とともに後ほど説明する。
【0029】
インバータ52は、蓄電装置54に電気的に接続され、制御装置60からの制御信号に基づいて、差動部20に含まれるモータジェネレータを駆動する。インバータ52は、たとえば、三相分の電力用半導体スイッチング素子を含むブリッジ回路によって構成される。なお、特に図示しないが、インバータ52と蓄電装置54との間に電圧コンバータを設けてもよい。
【0030】
蓄電装置54は、再充電可能な直流電源であり、代表的には、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池によって構成される。蓄電装置54は、走行用の電力を蓄え、その蓄えられた電力をインバータ52へ供給する。また、蓄電装置54は、差動部20のモータジェネレータによって発電される電力をインバータ52から受けることによっても充電される。なお、二次電池に代えて電気二重層キャパシタなどの蓄電要素によって蓄電装置54を構成してもよい。
【0031】
制御装置60は、エンジンECU(Electronic Control Unit)62と、MG−ECU64と、電池ECU66と、ECT−ECU68と、HV−ECU70とを含む。これらの各ECUは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置、入出力バッファ等を含み(いずれも図示せず)、後述の各種制御を実行する。なお、各ECUにより実行される制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。なお、この実施の形態1では、制御装置60は、上記の各ECUによって構成されるものとするが、制御装置60を1つのECUによって構成してもよい。
【0032】
エンジンECU62は、HV−ECU70から受けるエンジントルク指令等に基づいて、エンジン12を駆動するためのスロットル信号や点火信号、燃料噴射信号等を生成し、その生成した各信号をエンジン12へ出力する。MG−ECU64は、HV−ECU70からの指令に基づいて、インバータ52を制御するための制御信号を生成し、その生成した制御信号をインバータ52へ出力する。
【0033】
電池ECU66は、図示されない電圧センサおよび電流センサによって検出される蓄電装置54の電圧および電流に基づいて、蓄電装置54の充電状態(「SOC(State Of Charge)」とも称され、たとえば満充電状態を100%として0〜100%で表わされる。)を推定し、その推定結果をHV−ECU70へ出力する。ECT−ECU68は、HV−ECU70から受けるトルク容量指令等に基づいて、変速部30を制御するための油圧指令を生成し、その生成した油圧指令を変速部30へ出力する。
【0034】
HV−ECU70は、各種センサの検出信号を受け、ハイブリッド車両10の各機器を制御するための各種指令を生成する。HV−ECU70により実行される主要な制御の一つとして、HV−ECU70は、アクセルペダルの操作量や車両速度等に基づいて、エンジン12、差動部20および変速部30を所望の状態に制御して走行する走行制御を実行する。また、HV−ECU70は、変速部30の変速中、エンジン12および差動部20の挙動を所望の目標に制御する変速制御を実行する。
【0035】
この実施の形態1では、変速中のエンジン12および差動部20の挙動の目標は、エンジン12の
回転の角加速度、および差動部20に含まれるモータジェネレータの
回転の角加速度によって与えられる。そして、この角加速度に対して種々の所定の制約条件が付与され、制約条件によって補正された角加速度を実現するように変速中のエンジン12および差動部20が制御される。この制御については、後ほど詳しく説明する。
【0036】
図2は、
図1に示した制御装置60に対して入出力される主な信号を示したものである。
図2を参照して、HV−ECU70は、ハイブリッド車両10の速度を検出する車速センサからの信号、アクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサからの信号、エンジン12の回転数を検出するエンジン回転数センサからの信号を受ける。また、HV−ECU70は、差動部20に含まれるモータジェネレータMG1(後述)の回転数を検出するMG1回転数センサからの信号、差動部20に含まれるモータジェネレータMG2(後述)の回転数を検出するMG2回転数センサからの信号、差動部20の出力軸(変速部30の入力軸に相当する。)の回転数を検出する出力軸回転数センサからの信号をさらに受ける。
【0037】
さらに、HV−ECU70は、エンジン12のクランク角を検出するエンジンクランク角センサからの信号、エンジン12の冷却水の温度を検出するエンジン水温センサからの信号、エンジン12に吸気された空気の温度を検出する吸気温センサからの信号をさらに受ける。さらに、HV−ECU70は、差動部20および変速部30の潤滑油の温度を検出する潤滑油温度センサからの信号、ハイブリッド車両10の周囲の外気温度を検出する外気温センサからの信号、シフトレバーによって指示されるシフトポジションを検出するシフトポジションセンサからの信号をさらに受ける。さらに、HV−ECU70は、蓄電装置54のSOCを示す信号、蓄電装置54の充電電力の上限を示す充電可能電力Winを示す信号、蓄電装置54の放電電力の上限を示す放電可能電力Woutを示す信号等を電池ECU66から受ける。
【0038】
そして、HV−ECU70は、上記の信号に基づいて、たとえばエンジン12の出力トルクの目標を示すエンジントルク指令Terを生成してエンジンECU62へ出力する。エンジントルク指令Terを受けたエンジンECU62は、エンジン12を駆動するためのスロットル信号や点火信号、燃料噴射信号等を生成してエンジン12へ出力する。
【0039】
また、HV−ECU70は、差動部20のモータジェネレータMG1,MG2を駆動するためのトルク指令Tgr,Tmrを生成してMG−ECU64へ出力し、変速部30を制御するためのトルク容量指令Tcrを生成してECT−ECU68へ出力する。
【0040】
トルク指令Tgr,Tmrを受けたMG−ECU64は、トルク指令Tgr,Tmrに相当するトルクをモータジェネレータMG1,MG2が発生するようにインバータ52を制御するための信号PWIを生成し、その生成された信号PWIをインバータ52へ出力する。また、トルク容量指令Tcrを受けたECT−ECU68は、トルク容量指令Tcrに相当するトルク容量を変速部30が有するように油圧指令を生成し、その生成された油圧指令を変速部30へ出力する。
【0041】
(差動部および変速部の構成)
図3は、
図1に示した差動部20および変速部30の構成を示した図である。なお、この実施の形態1では、差動部20および変速部30は、その軸心に対して対称的に構成されているので、
図3では、差動部20および変速部30の下側を省略して図示されている。
【0042】
図3を参照して、差動部20は、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割装置24とを含む。モータジェネレータMG1,MG2の各々は、交流電動機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機によって構成される。モータジェネレータMG1,MG2は、インバータ52によって駆動される。
【0043】
動力分割装置24は、シングルピニオン型のプラネタリギヤによって構成され、サンギヤS0と、ピニオンギヤP0と、キャリアCA0と、リングギヤR0とを含む。キャリアCA0は、入力軸22すなわちエンジン12の出力軸に連結され、ピニオンギヤP0を自転および公転可能に支持する。サンギヤS0は、モータジェネレータMG1の回転軸に連結される。リングギヤR0は、伝達部材26に連結され、ピニオンギヤP0を介してサンギヤS0と噛み合うように構成される。伝達部材26には、モータジェネレータMG2の回転軸が連結される。すなわち、リングギヤR0は、モータジェネレータMG2の回転軸とも連結される。
【0044】
動力分割装置24は、サンギヤS0、キャリアCA0およびリングギヤR0が相対的に回転することによって差動装置として機能する。サンギヤS0、キャリアCA0およびリングギヤR0の各回転数は、後述(
図5)するように共線図において直線で結ばれる関係になる。動力分割装置24の差動機能により、エンジン12から出力される動力がサンギヤS0とリングギヤR0とに分配される。そして、サンギヤS0に分配された動力によってモータジェネレータMG1が発電機として作動し、モータジェネレータMG1により発電された電力は、モータジェネレータMG2に供給されたり、蓄電装置54(
図1)に蓄えられたりする。動力分割装置24により分割された動力を用いてモータジェネレータMG1が発電したり、モータジェネレータMG1により発電された電力を用いてモータジェネレータMG2を駆動したりすることによって、差動部20は無段変速機として機能する。
【0045】
変速部30は、シングルピニオン型のプラネタリギヤ32,34と、クラッチC1〜C3と、ブレーキB1,B2と、ワンウェイクラッチF1とを含む。プラネタリギヤ32は、サンギヤS1と、ピニオンギヤP1と、キャリアCA1と、リングギヤR1とを含む。プラネタリギヤ34は、サンギヤS2と、ピニオンギヤP2と、キャリアCA2と、リングギヤR2とを含む。
【0046】
クラッチC1〜C3およびブレーキB1,B2の各々は、油圧により作動する摩擦係合装置であり、重ねられた複数枚の摩擦板が油圧により押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻付けられたバンドの一端が油圧によって引き締められるバンドブレーキ等によって構成される。ワンウェイクラッチF1は、互いに連結されるキャリアCA1およびリングギヤR2を一方向に回転可能とし、かつ、他方向に回転不能に支持する。
【0047】
この変速部30においては、クラッチC1〜C3およびブレーキB1,B2、ならびにワンウェイクラッチF1の各係合装置が、
図4に示される係合作動表に従って係合されることにより、1速ギヤ段〜4速ギヤ段および後進ギヤ段が択一的に形成される。なお、
図4において、「○」は係合状態であることを示し、「(○)」はエンジンブレーキ時に係合されることを示し、「△」は駆動時にのみ係合されることを示し、空欄は解放状態であることを示す。また、クラッチC1〜C3およびブレーキB1,B2の各係合装置をすべて解放状態にすることにより、ニュートラル状態(動力伝達が遮断された状態)を形成することができる。
【0048】
再び
図3を参照して、差動部20と変速部30とは、伝達部材26によって連結される。そして、プラネタリギヤ34のキャリアCA2に連結される出力軸36が差動歯車装置42(
図1)に連結される。
【0049】
図5は、差動部20および変速部30によって構成される変速機構の共線図である。
図5とともに
図3を参照して、差動部20に対応する共線図の縦線Y1は、動力分割装置24のサンギヤS0の回転数を示し、すなわちモータジェネレータMG1の回転数を示す。縦線Y2は、動力分割装置24のキャリアCA0の回転数を示し、すなわちエンジン12の回転数を示す。縦線Y3は、動力分割装置24のリングギヤR0の回転数を示し、すなわちモータジェネレータMG2の回転数を示す。なお、縦線Y1〜Y3の間隔は、動力分割装置24のギヤ比に応じて定められている。
【0050】
また、変速部30に対応する共線図の縦線Y4は、プラネタリギヤ34のサンギヤS2の回転数を示し、縦線Y5は、互いに連結されたプラネタリギヤ34のキャリアCA2およびプラネタリギヤ32のリングギヤR1の回転数を示す。また、縦線Y6は、互いに連結されたプラネタリギヤ34のリングギヤR2およびプラネタリギヤ32のキャリアCA1の回転数を示し、縦線Y7は、プラネタリギヤ32のサンギヤS1の回転数を示す。そして、縦線Y4〜Y7の間隔は、プラネタリギヤ32,34のギヤ比に応じて定められている。
【0051】
クラッチC1が係合すると、差動部20のリングギヤR0にプラネタリギヤ34のサンギヤS2が連結され、サンギヤS2がリングギヤR0と同じ速度で回転する。クラッチC2が係合すると、リングギヤR0にプラネタリギヤ32のキャリアCA1およびプラネタリギヤ34のリングギヤR2が連結され、キャリアCA1およびリングギヤR2がリングギヤR0と同じ速度で回転する。クラッチC3が係合すると、リングギヤR0にプラネタリギヤ32のサンギヤS1が連結され、サンギヤS1がリングギヤR0と同じ速度で回転する。ブレーキB1が係合するとサンギヤS1の回転が停止し、ブレーキB2が係合するとキャリアCA1およびリングギヤR2の回転が停止する。
【0052】
たとえば、
図4の係合作動表に示したように、クラッチC1およびブレーキB1を係合し、その他のクラッチおよびブレーキを解放すると、変速部30の共線図は「2nd」で示される直線のようになる。プラネタリギヤ34のキャリアCA2の回転数を示す縦線Y5が、変速部30の出力回転数(出力軸36の回転数)を示す。このように、変速部30において、クラッチC1〜C3およびブレーキB1,B2を
図4の係合作動表に従って係合または解放させることにより、1速ギヤ段〜4速ギヤ段、後進ギヤ段、およびニュートラル状態を形成することができる。
【0053】
一方、差動部20においては、モータジェネレータMG1,MG2を適宜回転制御することにより、キャリアCA0に連結されるエンジン12の所定の回転数に対して、リングギヤR0の回転数すなわち伝達部材26の回転数を連続的に変更可能な無段変速が実現される。このような無段変速機能を有する差動部20に、伝達部材26と出力軸36との間の変速比を変更可能な変速部30を連結することによって、差動部20による無段変速機能を有しつつ、差動部20の変速比を小さくすることができ、モータジェネレータMG1,MG2の損失を小さくすることができる。
【0054】
なお、
図5では、一例として、モータジェネレータMG1の回転数(サンギヤS0の回転数)が零の状態が示されている。このような状態は、モータジェネレータMG1に電力が流れず、エンジン12の動力が電気的に変換されることなく伝達される「メカニカルポイント」と称される。「メカニカルポイント」は、エンジン12の動力を用いてモータジェネレータMG1が発電した電力がモータジェネレータMG2に供給されて駆動力を発生する「動力分流」や、モータジェネレータMG2が発電した電力がモータジェネレータMG1に流れる「動力循環」が発生せず、動力伝達効率が高い。そして、このハイブリッド車両10では、変速部30の変速段に応じて、差動部20において複数の「メカニカルポイント」を形成することができ、様々な走行状況においても高い動力伝達効率を実現することができる。
【0055】
なお、上記の差動部20および変速部30による変速は、たとえば
図6に示される変速線図に基づいて制御される。
図6を参照して、横軸は車速を示し、縦軸は、アクセル開度および車速等から算出される、ハイブリッド車両10の出力トルクを示す。なお、変速を決定するパラメータは、これらに限られるものではない。
【0056】
実線がアップシフト線であり、点線がダウンシフト線である。また、一点鎖線で囲まれる領域は、エンジン12を停止してモータジェネレータMG2の駆動力のみを用いて走行するEV走行の領域を示す。EV走行中は、蓄電装置54のSOC低下による充電要求や触媒(図示せず)の暖機要求等がない限り、エンジン12は停止される。一方、一点鎖線で囲まれた領域の外側では、エンジン12が作動することによって、エンジン12から出力される駆動力のみを用いて、またはエンジン12から出力される駆動力にモータジェネレータMG2の駆動力を加えて走行するHV走行が行なわれる。なお、EV走行中においても変速は行なわれる。
【0057】
(変速制御の説明)
図7は、変速部30のある変速時におけるモータジェネレータMG2の回転数Nmおよび角加速度dNm/dtの一例を示した図である。
図7を参照して、時刻t1において変速が開始し、時刻t4において変速が終了する。変速中のモータジェネレータMG2の挙動は、その
回転の角加速度dNm/dtによって規定される。この
図7で示される変速例では、変速開始直後の時刻t1〜t2および変速終了直前の時刻t3〜t4において時刻t2〜t3に対して角加速度dNm/dtが小さい値に設定されることにより、変速ショックの抑制が図られている。
【0058】
この実施の形態1では、エンジン12の
回転の角加速度dNe/dt、およびモータジェネレータMG2の
回転の角加速度dNm/dtを目標に制御することによって、変速部30の変速中におけるエンジン12および差動部20の挙動が制御される。なお、モータジェネレータMG1については、エンジン12およびモータジェネレータMG2の回転数が決まると、モータジェネレータMG1の回転数は、
図5に示した共線図に従い一意に決まる。
【0059】
そして、変速に対しては、種々の制約条件が付与されるところ、この実施の形態1では、角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標に対して制約条件が付与される。具体的には、変速中のドライバビリティ、変速の進行、部品保護(蓄電装置54の過放電/過充電防止や、エンジン12の過回転/ストール防止)、モータジェネレータMG1,MG2のトルク上下限等の観点から、角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標に対して制約条件が付与される。以下、この点について説明する。
【0060】
図8は、変速部30のある変速時におけるエンジン12およびモータジェネレータMG2の角加速度の目標と制約条件の一例とを角加速度平面上に示した図である。
図8を参照して、横軸は、エンジン12の
回転の角加速度dNe/dtを示し、縦軸は、モータジェネレータMG2の
回転の角加速度dNm/dtを示す。
【0061】
点P0は、この変速時における角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標の初期設定値を示す(以下「目標P0」とも称する。)。なお、この目標P0は、変速種毎(ギヤ段の変更だけでなくアップシフト/ダウンシフトの変更も異なる変速種である。)に予め設定される。なお、ここでは、目標P0は変速中のドライバビリティを考慮して設定されるものとするが(すなわち、目標P0には所望のドライバビリティを実現するためのドライバビリティ要件が既に付与されている。)、ドライバビリティ要件として目標P0に対する制約条件をこの角加速度平面上で別途設けてもよい。一例として、アクセル開度が小さいときの変速時は、エンジン12の回転数Neを極力変化させないように角加速度dNe/dtを小さくしたり、アクセルペダルが踏み込まれたときのダウンシフト時は、加速感を演出するために角加速度dNe/dtを大きくしたりしてもよい。
【0062】
線A1,A2,B1,B2,C1,C2,Dは、角加速度dNe/dt,dNm/dtに付与される制約条件の一例を示す。線A1,A2は、制約条件の1つである変速進行要件を示す。すなわち、変速過程において変速の逆戻りや停滞等なく変速が進行するように、角加速度dNm/dtに対して上下限が設定される。なお、変速の終盤には、変速部30の係合を優先して、角加速度dNm/dtが小さくなるように線A1,A2を変化させてもよい。
【0063】
線B1,B2,C1,C2は、制約条件の1つである部品保護要件を示す。線B1,B2は、蓄電装置54の保護要件であり、具体的には、線B1は蓄電装置54の放電電力に上限をかけるためのものであり、線B2は蓄電装置54の充電電力に上限をかけるためのものである。
【0064】
図9は、蓄電装置54の保護要件を説明するための図である。
図9を参照して、横軸は、モータジェネレータMG1のトルクTgを示し、縦軸は、モータジェネレータMG2のトルクTmを示す。蓄電装置54は、モータジェネレータMG1,MG2へ電力を供給し、また、モータジェネレータMG1,MG2により発電される電力を受ける。そして、線b1は、蓄電装置54の放電電力の上限を示す放電可能電力Woutを示し、線b2は、蓄電装置54の充電電力の上限を示す充電可能電力Winを示す。
【0065】
このモータジェネレータMG1,MG2のトルク平面上で示される放電可能電力Wout(線b1)および充電可能電力Winを(線b2)を、
図8に示した角加速度平面に座標変換することによって、
図8に示される線B1,B2が得られる。線B1が放電可能電力Woutに対応し、線B2が充電可能電力Winに対応する。
【0066】
再び
図8を参照して、線C1,C2は、エンジン12の保護要件である。具体的には、線C1は、エンジン12が過回転とならないように、エンジン12の角加速度dNe/dtに上限を設けるものであり、線C2は、エンジン12が停止しないように、エンジン12の角加速度dNe/dtに下限を設けるものである。
【0067】
線Dは、制約条件の1つである、モータジェネレータMG1,MG2のトルク上下限要件を示す。再び
図9を参照して、線dは、モータジェネレータMG1,MG2のトルク上下限を示す。このモータジェネレータMG1,MG2のトルク平面上で示されるトルク上下限(線d)を、
図8に示した角加速度平面に座標変換することによって、
図8に示される線Dが得られる。
【0068】
再び
図8を参照して、目標P0は、部品保護要件の1つである、線B1,B2で示される蓄電装置54の保護要件を満たしていないので、目標P0は、蓄電装置54の保護要件を満たすように目標PFに補正される。なお、
図8では、角加速度dNm/dtの目標は変化させずに角加速度dNe/dtの目標を変化させることによって目標P0を目標PFに補正しているが、角加速度dNe/dtの目標は変化させずに角加速度dNm/dtの目標を変化させたり、角加速度dNe/dt,dNm/dtの双方を変化させたりして目標P0を目標PFに補正してもよい。
【0069】
また、この実施の形態1では、上記のように複数の制約条件が存在するところ、各制約条件には優先順位が付与される。一例として、この実施の形態1では、絶対的な制約条件であるモータジェネレータMG1,MG2のトルク上下限要件が最も優先順位が高く、以降、重要と考えられる順に、部品保護要件、変速進行要件、ドライバビリティ要件の順に優先順位が与えられる。すなわち、角加速度dNe/dt,dNm/dtに制約条件を付与する演算の順序としては、ドライバビリティ要件、変速進行要件、部品保護要件、およびモータジェネレータMG1,MG2のトルク上下限要件の順に実行される。なお、上記のように、ドライバビリティ要件は、目標P0に含まれていてもよい。また、部品保護要件に含まれる、蓄電装置54の保護要件およびエンジン12の保護要件については、いずれか一方が適宜優先される。
【0070】
図10は、制御装置60の構成を機能的に示す機能ブロック図である。
図10を参照して、制御装置60は、角加速度目標設定部102と、制約条件設定部104と、目標補正部106と、MGトルク算出部108とを含む。また、制御装置60は、トルク指令算出部110と、トルク推定部114と、フィードバック補正部116とをさらに含む。なお、システム112は、指令値が付与される制御対象であり、すなわち、エンジン12、差動部20および変速部30である。
【0071】
角加速度目標設定部102は、これから実行される変速に応じた角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標P0(
図8)を設定する。目標P0は、変速中のエンジン12およびモータジェネレータMG2の回転数が所望の挙動を示すように変速種毎に予め求められており、角加速度目標設定部102は、
図6に示した変速線図に基づいて、実行される変速に応じた目標P0を設定する。
【0072】
制約条件設定部104は、これから実行される変速に応じて、変速中に角加速度dNe/dt,dNm/dtに対して付与される各種制約条件を設定する。一例として、制約条件設定部104は、上述の変速進行要件、部品保護要件(蓄電装置54の過放電/過充電防止、およびエンジン12の過回転/ストール防止)、モータジェネレータMG1,MG2のトルク上下限要件を実行される変速に応じて設定する。なお、ドライバビリティ要件については、角加速度の目標P0に含まれているものとしているが、この制約条件設定部104において、実行される変速に応じて設定されるようにしてもよい。
【0073】
目標補正部106は、制約条件設定部104により設定される制約条件を満たすように、角加速度目標設定部102により設定された目標P0を補正する。一例として、
図8に示したように、角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標が制約条件を満たすように、目標補正部106は、目標P0を目標PFに補正する。
【0074】
MGトルク算出部108は、目標補正部106により補正された角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標を実現するモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令Tgr,Tmrを算出する。具体的には、MGトルク算出部108は、以下の式(1)に示される差動部20の運動方程式を用いて、目標補正部106により算出された角加速度dNe/dt,dNm/dtに基づいて、トルク指令Tgr,TmrとしてトルクTg,Tmを算出する。
【0076】
ここで、ρは、差動部20における動力分割装置24(
図3)のギヤ比を示す。また、Ieはエンジン12の慣性モーメントを示し、Ig,ImはそれぞれモータジェネレータMG1,MG2の慣性モーメントを示す。
【0077】
なお、式(1)において、エンジン12のトルクを示すエンジントルクTe、および変速部30のトルク容量Tcは、この実施の形態1においては、後述のトルク指令算出部110により算出されるエンジントルク指令Terおよびトルク容量指令Tcrに基づいて算出される。一例として、エンジントルク指令Terおよびトルク容量指令Tcrに対してむだ時間や一次遅れ処理を施した値が式(1)中のエンジントルクTeおよびトルク容量Tcにそれぞれ与えられる。
【0078】
そして、MGトルク算出部108は、算出されたモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令Tgr,Tmrを、制御対象であるシステム112へ出力するとともに、後述のトルク推定部114へ出力する。
【0079】
トルク指令算出部110は、出力軸36(
図3)に対する要求駆動トルクおよびその他各種信号に基づいて、エンジントルク指令Terおよび変速部30のトルク容量指令Tcrを算出する。なお、駆動要求トルクは、アクセル開度および車両速度に基づいて算出される。そして、エンジントルク指令Terおよびトルク容量指令Tcrは、後述のフィードバック補正部116により算出されるフィードバック補正量が加算されて、制御対象であるシステム112へ出力される。
【0080】
トルク推定部114は、モータジェネレータMG1,MG2のトルクTg,Tmおよび回転数Ng,Nmに基づいて、エンジントルクTeおよびトルク容量Tcを推定する。具体的には、トルク推定部114は、モータジェネレータMG1,MG2の回転数Ng,Nm(測定値)から角加速度dNg/dt,dNm/dtを算出し、差動部20の運動方程式から導出される以下の式(2)を用いて、モータジェネレータMG1,MG2のトルクTg,Tmおよび角加速度dNg/dt,dNm/dtに基づいてエンジントルクTeおよびトルク容量Tcを推定する。
【0082】
トルクTgには、トルク指令Tgrを用いてもよく、モータジェネレータMG1の電流指令値から算出されるトルクを用いてもよい。同様に、トルクTmには、トルク指令Tmrを用いてもよく、モータジェネレータMG2の電流指令値から算出されるトルクを用いてもよい。モータジェネレータMG1,MG2の回転数Ng,Nmは、図示されないレゾルバ等の回転数センサによって検出される。
【0083】
フィードバック補正部116は、トルク推定部114により推定されたエンジントルクTeおよびトルク容量Tcの推定値を受け、比例積分制御等のフィードバック演算を行なう。そして、フィードバック補正部116により算出された補正量は、トルク指令算出部110により算出されたエンジントルク指令Terおよびトルク容量指令Tcrに加算されて、制御対象であるシステム112へ出力される。
【0084】
図11は、制御装置60により実行される角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標算出処理を説明するためのフローチャートである。なお、このフローチャートについては、予め格納されたプログラムがメインルーチンから呼び出されて実行されることにより実現される。あるいは、全部または一部のステップについて、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0085】
図11を参照して、制御装置60は、変速部30の変速中であるか否かを判定する(ステップS10)。なお、変速中であれば、どの変速であるか(ギヤ段およびアップシフト/ダウンシフト)も特定される。変速中でないときは(ステップS10においてNO)、後述のステップS110へ処理が移行される。
【0086】
ステップS10において変速中であると判定されると(ステップS10においてYES)、制御装置60は、角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標(初期値)を設定する(ステップS20)。なお、上述のように、角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標は、実行される変速に応じて設定される。
【0087】
次いで、制御装置60は、ステップS20において設定された角加速度dNe/dt,dNm/dtがドライバビリティ要件を満足しているか否かを判定する(ステップS30)。ドライバビリティ要件が満足されていると判定されたときは(ステップS30においてYES)、後述のステップS50へ処理が移行される。
【0088】
ステップS30においてドライバビリティ要件を満たしていないと判定されると(ステップS30においてNO)、制御装置60は、ドライバビリティ要件が満たされるように角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標を補正する(ステップS40)。なお、上述のように、ステップS20において設定される目標に既にドライバビリティ要件が含まれている場合には、このステップS30,S40は省略される。
【0089】
次いで、制御装置60は、角加速度dNe/dt,dNm/dtが変速進行要件を満足しているか否かを判定する(ステップS50)。ステップS40において角加速度が補正されている場合には、その補正後の角加速度に対して変速進行要件が判定される。変速進行要件が満足されていると判定されたときは(ステップS50においてYES)、後述のステップS70へ処理が移行される。ステップS50において変速進行要件を満たしていないと判定されると(ステップS50においてNO)、制御装置60は、変速進行要件が満たされるように角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標を補正する(ステップS60)。
【0090】
続いて、制御装置60は、角加速度dNe/dt,dNm/dtが部品保護要件を満足しているか否かを判定する(ステップS70)。ステップS40,S60において角加速度が補正されている場合には、その補正後の角加速度に対して部品保護要件が判定される。部品保護要件が満足されていると判定されたときは(ステップS70においてYES)、後述のステップS90へ処理が移行される。ステップS70において部品保護要件を満たしていないと判定されると(ステップS70においてNO)、制御装置60は、部品保護要件が満たされるように角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標を補正する(ステップS80)。
【0091】
次いで、制御装置60は、角加速度dNe/dt,dNm/dtがモータジェネレータMG1,MG2のトルク上下限要件を満足しているか否かを判定する(ステップS90)。ステップS40,S60,S80において角加速度が補正されている場合には、その補正後の角加速度に対してMGトルク上下限要件が判定される。MGトルク上下限要件が満足されていると判定されたときは(ステップS90においてYES)、後述のステップS110へ処理が移行される。ステップS90においてMGトルク上下限要件を満たしていないと判定されると(ステップS90においてNO)、制御装置60は、MGトルク上下限要件が満たされるように角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標を補正する(ステップS100)。
【0092】
そして、制御装置60は、設定または補正された角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標に基づいて、上述の式(1)を用いてモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令Tgr,Tmrを算出する(ステップS110)。
【0093】
以上のように、この実施の形態1においては、変速部30の変速中、エンジン12の角加速度dNe/dtおよびモータジェネレータMG2の角加速度dNm/dtの目標が与えられ、その目標に対して変速中の制約条件が付与される。そして、制約条件に基づき補正された角加速度の目標を実現するモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令Tg,Tmが、運動方程式から導かれるモデル(式(1))に基づいて算出される。このように、この実施の形態1によれば、各種制約条件を考慮した適切な制御目標を付与して精度の高い変速を実行することができる。
【0094】
そして、この実施の形態1によれば、角加速度dNe/dt,dNm/dtに対して制約条件を与え、制約条件を考慮した角加速度の目標に基づいて、運動方程式から導かれるモデルを用いて変速制御を実行するので、多数の適合ポイントをマップ等で有することなく、各種制約条件を満足する変速制御を実現することができる。
【0095】
また、この実施の形態1によれば、制約条件として、ドライバビリティ要件、変速進行要件、部品保護要件(蓄電装置54の過放電/過充電防止や、エンジン12の過回転/ストール防止)、モータジェネレータMG1,MG2のトルク上下限要件を、角加速度dNe/dt,dNm/dtに対して所望の優先順位で付与することができる。
【0096】
[実施の形態2]
実施の形態1では、角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標に基づいてモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令Tgr,Tmrを算出する際に、式(1)中のエンジントルクTeおよびトルク容量Tcについては、それぞれエンジントルク指令Terおよびトルク容量指令Tcrを用いるものとした。この実施の形態2では、トルク指令Tgr,Tmrを算出する際に、トルク推定部114により推定されるエンジントルクTeおよびトルク容量Tcの推定値が用いられる。これにより、さらに精度の高い変速制御が実現される。
【0097】
この実施の形態2によるハイブリッド車両の全体構成、ならびに差動部20および変速部30の構成は、実施の形態1によるハイブリッド車両10の構成と同じである。
【0098】
図12は、実施の形態2における制御装置60Aの構成を示す機能ブロック図である。
図12を参照して、この制御装置60Aは、
図10に示した実施の形態1における制御装置60の構成において、MGトルク算出部108に代えてMGトルク算出部108Aを含む。
【0099】
MGトルク算出部108Aは、目標補正部106により補正された角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標値、およびトルク推定部114により推定されたエンジントルクTeおよび変速部30のトルク容量Tcの推定値に基づいて、上記の式(1)を用いてモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令Tgr,TmrとしてトルクTg,Tmを算出する。なお、エンジントルクTeおよびトルク容量Tcの推定値については、上記の式(2)を用いて算出される。
【0100】
この実施の形態2によれば、角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標を実現するモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令TG,Tmを算出する際に、トルク推定部114により推定されるエンジントルクTeおよびトルク容量Tcが用いられるので、より精度の高い変速制御を実現することができる。
【0101】
[実施の形態3]
エンジントルクTeおよびトルク容量Tcを推定するトルク推定部114では、モータジェネレータMG1,MG2の回転数Ng,Nmの測定値が用いられる。この実施の形態3では、トルク推定部114に用いられる上記回転数Ng,Nmに対して低域通過フィルタ処理が施され、そのフィルタ処理された測定値を用いてエンジントルクTeおよびトルク容量Tcが推定される。そして、その低域通過フィルタ処理の時定数が、種々の条件によって可変とされる。
【0102】
この実施の形態3によるハイブリッド車両の全体構成、ならびに差動部20および変速部30の構成も、実施の形態1によるハイブリッド車両10の構成と同じである。
【0103】
図13は、実施の形態3における制御装置により実行されるエンジントルクTeおよびトルク容量Tcのトルク推定に関する部分のブロック図である。
図13を参照して、実施の形態3における制御装置は、実施の形態1または2における制御装置60(または60A)の構成において、ローパスフィルタ120と、時定数調整部122とをさらに含む。
【0104】
ローパスフィルタ120は、モータジェネレータMG1,MG2の回転数Ng,Nm(測定値)に対して低域通過フィルタ処理を行なう。ローパスフィルタ120に用いられる時定数は、時定数調整部122によって調整される。
【0105】
時定数調整部122は、予め設定される諸条件に応じてローパスフィルタ120の時定数を調整する。具体的には、時定数調整部122は、たとえば、車両のスリップ発生中は、スリップが発生していないときに対してローパスフィルタ120の時定数を大きくする。スリップ発生時は、モータジェネレータMG1,MG2の回転数Ng,Nmが急峻に変動するところ、この急峻な変動に応じてトルク推定値およびトルク指令を変化させると、スリップによるショックを悪化させる可能性があるからである。なお、スリップの発生有無は、駆動輪の回転変動等に基づいて判定される。
【0106】
また、時定数調整部122は、エンジン12の運転モードがアイドリングやモータリング(燃料噴射および点火が行なわれることなくエンジン12が回転させられている状態)のときも、ローパスフィルタ120の時定数を相対的に大きくしてもよい。上記運転モードのときは、エンジン12のトルクは急激に変化しない傾向が高いので、制御の安定性を優先させるものである。
【0107】
また、モータジェネレータMG1,MG2の回転数Ng,Nmの変化率が高いとき(スリップ検出時を除く)や、運転者が要求する駆動要求パワーが大きい場合には、時定数調整部122は、回転数Ng,Nmの変化に追従できるように、ローパスフィルタ120の時定数を相対的に小さくしてもよい。
【0108】
そして、トルク推定部114は、モータジェネレータMG1,MG2のトルクTg,Tm、およびローパスフィルタ120を通過させた回転数Ng,Nmに基づいて、エンジン12のエンジントルクTeおよび変速部30のトルク容量Tcを推定する。
【0109】
なお、上記においては、モータジェネレータMG1,MG2の回転数Ng,Nm(測定値)に対して低域通過フィルタ処理を行なうものとしたが、回転数Ng,Nmから算出される角加速度dNg/dt,dNm/dtに対して低域通過フィルタ処理を行なってもよい。
【0110】
なお、特に図示しないが、この実施の形態3における制御装置のその他の構成は、実施の形態1における制御装置60、または実施の形態2における制御装置60Aと同じである。
【0111】
この実施の形態3によれば、エンジントルクTeおよびトルク容量Tcについてより高精度な推定が可能となり、その結果、より精度の高い変速制御を実現することができる。
【0112】
なお、上記の各実施の形態においては、差動部20と駆動軸(出力軸36)との間の動力伝達経路に変速部30が設けられるものとしたが、変速部30に代えて、動力伝達経路の動力伝達を遮断可能なクラッチを係合装置として備えるハイブリッド車両にも、この発明は適用可能である。たとえば、
図3に示される変速部30に代えてクラッチが設けられる車両であってもよいし、
図14に示すように、動力分割装置24と出力軸36との間の動力伝達を遮断可能なクラッチ38が設けられる車両であってもよい。そして、このようなクラッチの係合状態が変化する際の角加速度dNe/dt,dNm/dtの目標が与えられ、その目標に対して制約条件が付与され、その制約条件に基づき補正された角加速度の目標を実現するモータジェネレータMG1,MG2のトルク指令Tg,Tmが算出される。
【0113】
また、上記の各実施の形態においては、エンジン12の角加速度dNe/dt、およびモータジェネレータMG2の角加速度dNm/dtを目標に制御するものとしたが、エンジン12およびモータジェネレータMG1,MG2のうちの2つの回転数が決まると、残りの要素の回転数は
図5の共線図に従い一意に決まることから、この発明は、エンジン12およびモータジェネレータMG1,MG2のうち任意の2つの角加速度を目標に制御するものを含む。
【0114】
また、上記の各実施の形態においては、モータジェネレータMG2は出力軸36に接続されるものとしたが、モータジェネレータMG2と出力軸36との間に減速部を設けてもよい。また、変速部30は、自動変速機(AT)、デュアルクラッチ変速機(DCT)、手動変速機(MT)等の有段変速機であってもよいし、無段変速機(CVT)であってもよい。また、エンジン12とモータジェネレータMG1との間に動力を遮断可能なクラッチが設けられてもよい。
【0115】
なお、上記において、差動部20は、この発明における「差動装置」の一実施例に対応し、モータジェネレータMG1,MG2は、それぞれこの発明における「第1の電動機」および「第2の電動機」の一実施例に対応する。また、エンジン12は、この発明における「内燃機関」の一実施例に対応し、変速部30およびクラッチ38は、この発明における「係合装置」の一実施例に対応する。
【0116】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。