(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
注射部位(7)に製剤(6)を自動注射する器具(1)であって、前記製剤は容器(2)により担持され、前記容器は、開放近位端(3)と、針(5)を担持して前記容器の製剤排出ポートを提供する、略閉鎖された遠位端(4)と、を有し、ピストン(8)は、前記容器内に設置されて前記容器に関して遠位側に移動可能であり、前記ピストンが遠位側に移動することによって、前記製剤が容器から針を通って押し出され、それによって前記製剤の注射が実現され、
前記器具(1)は、
注射中、遠位方向に前記ピストン(8)に結合されることになっているピストンロッド(9;109;209;309;409)と、
注射中、前記ピストンロッド(9;109;209;309;409)を前記容器(2)に関して遠位側に移動させるための付勢手段(18;118;218;418)と、
少なくとも部分的に前記容器(2)、前記ピストンロッド(9;109;209;309;409)および前記付勢手段(18;118;218;418)を受けるように設計されたハウジング(14;214)と、
前記ピストン(8)が前記容器(2)の前記遠位端(4)の付近にあり、前記製剤(6)が略完全に容器から押し出されると可聴指摘音を発生させることにより、使用者に対して、前記製剤の注射が完了したという指摘をもたらすように設計された制御手段(13,22;110,121,117;213,214a,215;309,321;409,421)と、を備え、
前記制御手段は、柔軟であって、注射中、前記ハウジング(14;214)または前記ピストンロッド(9;109;209;309;409)に直接的または間接的に結合される少なくとも1つの第一の要素(121;213)と、少なくとも1つの第二の要素(110,117;214a,215)と、を備え、前記第二の要素は、注射中、前記ピストンロッド(9;109;209;309;409)または前記ハウジング(14;214)に直接的または間接的に結合され、前記第一と第二の要素は、注射終了時に前記付勢手段(18;118,218,418)の影響下で相互に協働して、前記可聴指摘音を発生させ、
前記第一の要素は、応力位置から自由位置に偏向可能な少なくとも1つの半径方向に撓む部品(121;213)を備え、前記半径方向に撓む部品は、その応力位置からその自由位置に移動したときに音を発生させ、前記半径方向に撓む部品は、その全てが前記応力位置と前記自由位置の両方において前記ハウジングの内面の内側に含まれ、前記第二の要素は、少なくとも1つの当接面(110;215)を有し、前記当接面は、注射が終了する前は、前記半径方向に撓む部品に緊張力を加えてその応力位置に移動させ、前記当接面は、注射終了時に、前記付勢手段の影響下で前記緊張力を解放するようになされ、
前記第一の要素(121;213)は、少なくとも1つの長さ方向の柔軟脚部(121;213)を備え、前記当接面(110;215)は、注射終了前は、前記長さ方向の柔軟脚部(121;213)と接触して、そこに緊張力を加え、その応力位置へと偏向させ、前記当接面(110;215)は、注入終了時には、前記付勢手段(18;118;218;418)の影響下で前記長さ方向の柔軟脚部(121;213)から外れることによって、前記緊張力を解放することを特徴とする器具(1)。
前記長さ方向の柔軟脚部(121;213)は、前記ハウジング(14;214)に固定された近位端と自由な遠位端とを有し、前記当接面(110;215)は、前記ピストンロッド(109)の外壁(110)を含むことを特徴とする請求項1に記載の器具(1)。
前記長さ方向の柔軟脚部(121;213)は、前記ピストンロッドの外壁に固定された遠位端を有し、前記当接面(110;215)は、前記ハウジングの内壁の長さ方向の突起を含むことを特徴とする請求項1に記載の器具(1)。
前記器具(1)は、前記ハウジング(14;214)の内壁に位置付けられた接触面(117;214a)をさらに含み、前記長さ方向の柔軟脚部(121;213)は、その自由位置に戻る際に前記接触面(117;214a)に当たり、それによって音を発生させることを特徴とする請求項2または3に記載の器具(1)。
【背景技術】
【0002】
本願において、ある構成要素または器具の遠位端とは、適正使用中に使用者の手から最も遠い端を意味し、近位端とは、適正使用中に使用者の手に最も近い端を意味すると理解されるものとする。同様に、本願において、「遠位方向」とは注射方向を定義し、「近位方向」とは注射方向と反対の方向を定義するものである。
【0003】
いくつかの疾患では、定期的、たとえば毎日、薬剤または製剤を注射する必要がある。このような疾患の治療を容易にするために、患者が自分で注射できるような自動注射用の器具がいくつか開発されてきた。
【0004】
もちろん、患者は通常、看護師でもなければ、医療用器具に関する教育を受けてもいないため、こうした自動注射用器具は、きわめて使いやすく、きわめて安全であることが明らかでなければならない。特に、決められた量の製剤がこのような器具で確実に注射されるようにすることが重要であり、すなわち、注射が最後まで完全に実行されなければならない。さらに、場合によっては、使用者は注射が完了する前に、自動注射用器具を引き抜いてしまうかもしれない。したがって、製剤が略完全に注射され、注射部位から器具を抜いてもよいことを使用者が知らされることが重要である。
【0005】
特許文献1から、注射中ずっと音が発せられ、音が止まった時に注射が完了したことを患者に知らせるような自動注射器具が知られている。
【0006】
注射が完了したことを使用者に明確に知らせる自己注射器具に対するニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述の装置の代替物を提供することによって、上記のニーズを満たす。本発明は、注射部位への製剤の自動注射用器具であって、注射が完了したときに、可聴指摘音を発生する器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、注射部位に製剤を自動注射する器具に関し、前記製剤は容器により担持され、前記容器は、開放近位端と、針を担持して前記容器の製剤排出ポートを提供する、略閉鎖された遠位端と、を有し、ピストンは、前記容器内に設置されて前記容器に関して遠位側に移動可能であり、前記ピストンが遠位側に移動することによって、前記製剤が容器から針を通って押し出され、それによって前記製剤の注射が実現され、
前記器具は、
注射中、遠位方向に前記ピストンに結合されることになっているピストンロッドと、
注射中、前記ピストンロッドを前記容器に関して遠位側に移動させるための付勢手段と、
少なくとも部分的に前記容器、前記ピストンロッドおよび前記付勢手段を受けるように設計されたハウジングと、
前記ピストンが前記容器の前記遠位端の付近にあり、前記製剤が略完全に容器から押し出されると可聴指摘音を発生させることにより、使用者に対して、前記製剤の注射が完了したという指摘をもたらすように設計された制御手段と、を備え、
前記制御手段は、柔軟または破断可能で、注射中、前記ハウジングまたは前記ピストンロッドに直接的または間接的に結合される少なくとも1つの第一の要素と、少なくとも1つの第二の要素と、を備え、前記第二の要素は、注射中、前記ピストンロッドまたは前記ハウジングに直接的または間接的に結合され、前記第一と第二の要素は、注射終了時に前記付勢手段の影響下で相互に協働して、前記可聴指摘音を発生させることを特徴とする。
【0010】
本発明の器具によって、使用者は注射の終了を明確に知らされることができる。
【0011】
本願において、「AがBにXの方向に結合される」という表現は、AがX方向に移動させられると、AがBに接続されることを意味する。換言すれば、AがX方向に移動させられると、Bもまた、Aによって引っ張られて、X方向に移動させられる。
【0012】
本願において、「AはBに直接的または間接的に結合される」という表現は、Aが直接Bに接続されるか、AとBをつなぐ中間部品を介してAがBに接続されるか(間接的結合)のいずれかによって、AとBが相互に固定されていることを意味する。
【0013】
本発明のある実施形態において、前記第一の要素は前記付勢手段とは別のものである。
【0014】
本発明のある実施形態において、前記第一の要素は、応力位置から自由位置に偏向可能な少なくとも1つの半径方向に撓む部品を備え、前記半径方向に撓む部品は、その応力位置からその自由位置に移動したときに音を発生させ、前記第二の要素は、少なくとも1つの当接面を有し、前記当接面は、注射が終了する前は、前記半径方向に撓む部品に緊張力を加えてその応力位置に移動させ、前記当接面は、注射終了時に、付勢手段の影響下で前記緊張力を解放するようになされる。
【0015】
たとえば、注射終了時に、付勢手段が半径方向に撓む部品または当接面にかける力を受けて、前記半径方向に撓む部分、または前記当接面は、前記当接面、または前記半径方向に撓む部品から外れ、前記部品の前記表面との摩擦によって音が発生する。実施形態において、別の音を発生させてもよく、例えば、前記半径方向に撓む部品がその自由位置に戻るときに接触面に当たり、それによって別の音を発生させる。
【0016】
本発明のある実施形態において、前記ピストンロッドは、その近位端にカラーが設けられた中空シリンダを備え、前記カラーの壁は半径方向に外側に撓み、前記器具は、注射中、前記ハウジングに関して固定された長さ方向のロッドをさらに備え、前記長さ方向のロッドは、前記ピストンロッドに関して近位側に離間され、前記長さ方向のロッドの遠位端は、前記中空シリンダの中にスライド可能に受けられ、また前記カラーの内径より大きい外径を有する突起が設けられており、前記半径方向に撓む部品は前記カラーの前記壁を含み、前記当接面は前記突起を含み、前記突起は、注射終了前は前記カラーの壁に緊張力を加え、注射終了時には、前記付勢手段の影響下で、前記カラーから外れることによって前記緊張力を解放する。
【0017】
このような実施形態において、前記突起が付勢手段により加えられる力を受けてカラーから外れたときに、カラーと突起との摩擦が音を発生させる。したがって、使用者は注射が完了したことを知らされる。
【0018】
本発明の別の実施形態において、前記半径方向に撓む部品は、前記ハウジングに固定された近位端と自由な遠位端を有する少なくとも1つの長さ方向の柔軟脚部を備え、前記当接面は前記ピストンロッドの外壁を含み、前記ピストンロッドの前記外壁は、注射終了前は、前記長さ方向の柔軟脚部の遠位端と接触し、そこに緊張力を加えて、その応力位置に偏向させ、注射終了時には、前記ピストンロッドの前記外壁が、前記付勢手段の影響下で、前記長さ方向の柔軟脚部から外れることによって、前記緊張力を解放する。
【0019】
本発明の別の実施形態において、前記半径方向に撓む部品は、少なくとも1つの長さ方向の柔軟脚部を含み、前記長さ方向の柔軟脚部は前記ピストンロッドの外壁に固定された遠位端を有し、前記当接面は前記ハウジングの内壁の長さ方向の突起を含み、前記長さ方向の突起は、注射終了前は、前記長さ方向の柔軟脚部の近位端と接触して、そこに緊張力を加え、その応力位置へと偏向させ、注入終了時に、前記長さ方向の突起は、前記付勢手段の影響下で前記長さ方向の柔軟脚部から外れることによって、前記緊張力を解放する。
【0020】
本発明の器具は、前記ハウジングの内壁上に位置付けられた接触面をさらに含んでいてもよく、前記長さ方向の柔軟脚部は、その自由位置に戻った時に前記接触面に当たり、これによって音を発生する。
【0021】
本発明の別の実施形態において、前記第一の要素は破断可能な部品を含み、前記破断可能な部品は、前記ハウジングに直接的また間接的に結合された近位端と、前記ピストンロッドに直接的または間接的に結合された遠位端を有し、前記破断可能な部品は、注射終了時に、付勢手段の影響下で破断させられ、これによって前記可聴指摘音を発生させる。
【0022】
本発明のある実施形態において、前記破断可能な部品は、近位端と遠位端を有する変形可能なワイヤを含み、前記変形可能なワイヤの近位端は、前記ハウジングの近位領域に位置付けられた固定地点に固定され、前記固定地点は注射中、前記ハウジングに関して固定され、前記変形可能なワイヤの遠位端は、前記ピストンロッドの近位端に固定され、前記変形可能なワイヤの長さは、注射終了時に前記ピストンロッドの前記近位端が前記固定地点から分離される距離より短く、前記付勢手段の影響下で前記ピストンロッドが遠位側に移動すると、前記変形可能なワイヤは注射終了時に破断する。例えば、前記ワイヤは、剛性または半剛性でありながら破断可能な材料で作製してもよい。ある実施形態において、前記ワイヤはナイロンまたはポリプロピレンで作製される。
【0023】
本発明の別の実施形態において、前記ピストンロッドは、その近位端にカラーが設けられた中空シリンダを備え、前記破断可能な部品は近位端と遠位端を有する剛性ケーブルを含み、前記剛性ケーブルの近位端は、前記ハウジングの近位領域に位置付けられた固定地点に固定され、前記固定地点は、注射中、前記ハウジングに関して固定され、前記剛性ケーブルの前記遠位端は前記中空シリンダの中にスライド可能に受けられ、前記剛性ケーブルの前記遠位端には、前記カラーの内径より大きな外径を有する突起が設けられ、前記剛性ケーブルの長さは、注射終了時に前記ピストンロッドの前記カラーが前記固定地点から分離される距離より短く、前記ピストンロッドが前記付勢手段の影響下で遠位側に移動することによって、前記剛性ケーブルは注射終了時に破断する。例えば、前記剛性ケーブルは破断可能な材料で作製されてもよい。別の実施形態において、前記剛性ケーブルはポリプロピレン作製される。
【0024】
本発明の器具を、以下の記述と添付の図面を参照しながらさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、図面を参照し、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明による自動注射用器具の第一の実施形態の、使用前に使用者に提供される状態の長さ方向の断面図であり、以下の説明の中でこれを器具1という。器具1は、近位側開放端3と、針5を担持する略閉鎖された遠位端4と、を有する容器2を備え、容器2は、注射部位7に注射されることになる製剤(product)6を収容する。容器2には、近位端に外側フランジ2aが設けられている。ピストン8が容器2の中に設置され、前記容器2に関して移動可能である。以下の説明からわかるように、ピストン8が遠位方向に移動すると、容器2から製剤6が押し出されることになっている。器具1はまた、ピストンロッド9を備える。以下の説明から分かるように、ピストンロッド9は、注射中、ピストン8に遠位方向に結合されることになっている。
【0027】
ピストンロッド9は、
図1から
図3に示される例において、その遠位端にフランジ11が設けられ、その近位端にカラー12が設けられた中空シリンダ10を備え、前記カラー12の内径は、前記中空シリンダ10の内径より小さい。カラー12には、その近位端において、外側フランジ12aが設けられている。カラー12の壁13は、半径方向に外側に撓み、すなわち、カラー12の内径は、前記カラー12の壁13の内面の周辺に遠心方向に加えられる緊張力の影響下で、若干拡張可能である。
【0028】
器具1は、ハウジング14をさらに備え、ハウジング14は世界的に、両端が開放するチューブの形状である。ハウジング14は、容器2とピストンロッド9を受ける。以下の説明から分かるように、容器2は、注射段階において、ハウジング14に関して固定される。容器2は、注射段階において、クリップ等、相互に係合する協働部品である、どのような結合または固定手段によって固定されてもよく、このような結合および/または固定手段は、特許文献1に記載されており、ここでは割愛する。
【0029】
ハウジング14はその近位領域において、遠位側当接面17を形成する周縁16が設けられた内側シリンダ15を備える。
【0030】
図1から
図3の器具は、注射時にピストンロッド9を遠位側に自動的に押すための付勢手段をさらに備える。図の例において、これらの付勢手段は、ピストンロッド9の周囲に位置付けられた螺旋ばね18の形態をとる。螺旋ばね18の近位端は、ハウジング14の内側シリンダ15の周縁16の遠位側当接面17に支持され、前記螺旋ばね18の遠位端は、ピストンロッド9の近位端のフランジ11の近位面に支持される。
【0031】
図1に示されるような使用前の位置では、螺旋ばね18は圧縮位置にあり、ピストンロッド9のカラー12の外側フランジ12aは、ハウジング14の内側シリンダ15の上に位置付けられた2つの柔軟な歯(図示せず)の近位側当接面に支持される。
【0032】
図1から
図3に示される実施形態において、器具1は、注射を開始させるためのプッシュボタン19をさらに備える。図の例において、プッシュボタン19は、ハウジング14の近位領域内に位置付けられ、使用者が前記プッシュボタン19の近位側横断壁19aに加える圧力を受けて、遠位方向に若干移動することができる。このために、プッシュボタン19には、その近位側横断壁19aの内面に、遠位方向に延びる2つの歯20が設けられている。注射を開始させる時点で、これら2つの歯20は、内側シリンダ15の2つの柔軟な歯(図示せず)と接触し、これを偏向させることになっており、内部シリンダの上にはピストンロッド9の外側フランジ12aが支持されているため、前記ピストンロッド9を前記シリンダ15から解放する。すると、プッシュボタン19は注射のトリガ手段として機能する。
【0033】
プッシュボタン19には、プッシュボタン19の近位側横断壁19aの内面に取り付けられた近位端21aと、自由な遠位端21bと、を有する長さ方向のロッド21がさらに設けられている。長さ方向のロッド21の外径は、ピストンロッド9の中空シリンダ10の内径より小さい。長さ方向のロッド21は、
図1に示されるように、ピストンロッド9に関して近位側に離間され、その遠位端21bはピストンロッド9の中空シリンダ10の中にスライド可能に受けられる。
【0034】
長さ方向のロッド21の遠位端21bには、中空シリンダ10の内径より小さく、カラー12の内径より大きい外径を有する突起22が設けられている。
【0035】
ここで、
図1から
図3の器具の機能を説明する。
【0036】
使用者には、
図1に示されるような使用前の位置にある器具1が提供される。この位置では、前述のように、螺旋ばね18は圧縮位置にある。この位置ではまた、長さ方向のロッド21がピストンロッド9の中空シリンダ10の中に受けられる。
【0037】
使用者は、製剤の注射を行うことに決めると、注射部位7に器具1を当て、プッシュボタン19の近位側横断壁19aに遠位方向の圧力を加えることによって、注入をトリガする。プッシュボタン19はこれによって、ハウジング14に関して遠位側に移動させられ、前述のように、歯20がピストンロッド9を内部シリンダ15から解放し、これによって螺旋ばね18を解放して、螺旋ばねは遠位方向に伸張し、その本来の伸長位置に戻る。本発明の器具1の螺旋ばね18のような付勢手段を解放する作動ステップは、特許文献1に記載されている。
【0038】
螺旋ばね18が遠位方向に伸張すると、ばねはピストンロット9を、ピストンロッド9のフランジ11に支持されるその遠位端によって遠位側に押す。その遠位側への移動の結果として、ピストンロッド9はピストン8と接触し、容器2と結合して、それによって、容器2が限定的に遠位側に移動し、針5が注射部位7に挿入される(
図3参照)。このような挿入ステップは、例えば特許文献1に記載されている。すると、容器2はそれ以上遠位側に移動しないように、その外側フランジ2aが中間ばね30を介して、ハウジング14の遠位領域の中に受けられ、前記ハウジング14に、例えば特許文献1に記載されているもののような古典的な手段を介して連結される針シールド40と当接することによって、停止される。
図3に示されるように、針シールド40の遠位端は、注射部位7と当接する。その結果、ピストンロッド9がさらに遠位側に移動すると、ピストン8が遠位側に移動し、注射ステップが開始する。したがって、ピストンロッド9は遠位方向にピストン8に結合される。
【0039】
挿入および注射ステップ中、プッシュボタン19はハウジング14に関して、例えば、結合手段または固定手段(図示せず)によって固定されたままである。したがって、長さ方向のロッド21は、注射中、ハウジングに関して固定される。その結果、ピストンロッド9が遠位側に移動して、挿入および注射ステップを実行すると、長さ方向のロッド21は、前記ピストンロッド9の中空シリンダ10に関してスライドする。
【0040】
図2には、注射終了前の、ピストンロッド9と長さ方向のロッド21の相互に関する相対的位置を示している。この図から明らかであるように、長さ方向のロッド21の遠位端21bの突起22は、ピストンロッド9の中空シリンダ10のカラー12の壁13の内面と接触する。カラー12の壁13は半径方向に撓み、突起22の外径はカラー12の内径より大きく、前記カラー12の前記壁13は半径方向に外側に偏向させられる。換言すれば、当接面の役割を果たす突起22によってカラー12の壁13の内面に加えられる緊張力を受けて、カラー12の内径は若干拡張させられる。
【0041】
図3は、ピストンロッド9がさらに遠位側に移動させられた、まさに注射終了時のピストンロッド9のカラー12と長さ方向のロッド21の突起22との相対的位置を示している。螺旋ばね18の力を受けて、突起22はカラー12から外れ、カラーはその自由位置に戻る。前記突起が前記カラー12から外れる時のカラー12の壁13と突起22との摩擦が音を発生させ、これが、使用者に対して、注射の完了を知らせる可聴指摘音となる。
図3から分かるように、ピストン8はこの時点で、容器2の遠位端に近く、製剤は略完全に容器2から押し出される。
【0042】
この例において、カラー12の壁13は、ピストンロッド9に位置付けられた第一の柔軟な要素として機能し、突起22は、ハウジングに結合された第二の要素として機能し、前記第一と第二の要素は、付勢手段18の影響下で相互に協働し、可聴指摘音を発生させる。
【0043】
図4から
図6に、本発明の器具の第二の実施形態が器具101として示されており、この中では第一の柔軟な要素はハウジングに結合されている。これらの図において、
図1−
図3と同じ部品の参照番号はそのままである。
【0044】
図4から
図6の器具101は、その遠位端が横断壁111によって閉じられる中空シリンダ110の形状を有する。これらの図の実施形態において、付勢手段は、ピストンロッド109の中空シリンダ110の中に受けられる螺旋ばね118の形状を採る。
図1から
図3で説明したものと同様の方法で、螺旋ばね118の遠位端は、ピストンロッド109の横断壁111の近位面に支持され、螺旋ばね118の近位端は、ハウジング14の内側シリンダ15の上に位置付けられた当接面(図示せず)に支持される。
【0045】
使用前、ピストンロッド109は、ピストンロッド109の外壁の近位領域に設置された近位側リセス112と係合する内側シリンダ15の半径方向の突起116によって、ハウジング14に結合されている。
【0046】
ピストンロッド109の外壁には、前記近位側リセス112に関して遠位方向に離間された遠位側リセス113がさらに設けられる。
【0047】
器具101は、2つの長さ方向の柔軟脚部121をさらに備え、長さ方向の柔軟脚部121の近位端121aはハウジング14に固定され、前記長さ方向脚部121の遠位端121bは自由である。
図4に示されるように、使用前の位置において、長さ方向の柔軟脚部121の自由な遠位端121bは、ピストンロッド109の外壁の遠位側リセス113と当接する。この位置において、長さ方向の柔軟脚部121はその自由位置にあり、長さ方向の柔軟脚部121の各々の内壁122は、
図4に示されるように、ハウジング14の内側シリンダ15の遠位側の長さ方向の壁117に平行であり、そこにそっと接触する。
【0048】
注射を行うためには、使用者はプッシュボタン19を押して、
図1から
図3に関して説明したものと同じ方法でピストンロッド109を解放する。
図1から
図3の実施形態に関して既に説明したように、ピストンロッド109が遠位側に移動することによって、針5が挿入され、注射が行われる。
【0049】
前述のように、プッシュボタン19は、注射中、ハウジング14に関して固定される。
【0050】
注射段階において、ピストンロッド109は、ハウジング14に対して固定された長さ方向の柔軟脚部121に関してスライドする。その結果、長さ方向の柔軟脚部121の遠位端121bは、遠位側リセス113から外れ、したがって、
図5に示されるように、ピストンロッド109の中空シリンダ110の外径が変化することによって、半径方向に外側に偏向させられる。したがって、ピストンロッド109の外壁は、長さ方向の柔軟脚部121に緊張力を加える。この図から分かるように、長さ方向の柔軟脚部121がこの応力位置にあると、前記長さ方向の柔軟脚部121の内壁122は、内側シリンダ15の遠位側の長さ方向の壁117と接触しなくなる。
【0051】
ピストン8が、
図6に示されるように、容器2の遠位端に到達すると、ピストンロッド109は、螺旋ばね118が伸張する力を受けて、長さ方向の柔軟脚部121から外れる。ピストンロッド109の外壁は、長さ方向の柔軟脚部121の遠位端121bに緊張力を加えなくなっているため、
図6に示されるように、長さ方向の柔軟脚部121はその自由位置に戻る。長さ方向の柔軟脚部121は、その自由位置に戻ることによって、内側シリンダの遠位側の長さ方向の壁117に、特にその遠位端121bを介して当たり、これによって音を発生して、使用者に注射の完了を知らせる。内側シリンダの遠位側の長さ方向の壁117は、長さ方向の柔軟脚部のための接触面として機能し、そこで音が発生される。
【0052】
図7から
図8に、本発明の器具の第三の実施形態の第一の柔軟な要素と第二の要素の協働状態の部分断面図が示されている。
【0053】
図7から
図8の器具201はピストンロッド209を備え、そのピストンロッドは、横断壁211によってその遠位端で閉じられて、その中に付勢手段としての螺旋ばね218を受ける中空シリンダ210を有する。ピストンロッド209には、その外壁において、近位側リセス212と、前記近位側リセス212に関して遠位方向に離間された柔軟な長さ方向の脚部213と、が設けられる。柔軟な長さ方向の脚部213の遠位端213bはピストンロッド209の外壁に固定され、その近位端213aは自由である。器具201は、その内壁に長さ方向の突起215を有するハウジング214をさらに備える。ハウジング214の内壁には、前記長さ方向の突起215から近位方向に離間された半径方向の歯216と、前記長さ方向の突起215から遠位方向に離間された接触面214aと、が設けられている。
【0054】
図7に示されるように、器具201の使用前の位置において、柔軟な長さ方向の舌状部213の近位端213aは、ハウジング214の長さ方向の突起215と当接し、半径方向の歯216は、ピストンロッド209の外壁の近位側リセス212と係合する。
【0055】
注射をトリガする時に、半径方向の歯216は、近位側リセス212から外れ(ステップは図示せず)、ピストンロッド209は解放され、解放された螺旋ばね218の動作を受けて遠位側に移動させられる。
図8に示されるように、注射段階において、ピストンロッド209は遠位側に移動し、柔軟な長さ方向の舌状部213の遠位端213aは、ハウジング214の長さ方向の突起215に関して遠位側にスライドする。このステップ中に、長さ方向の突起215は、その応力位置にある柔軟な長さ方向の舌状部213に緊張力を加える。
【0056】
注入終了時には、
図9に示されるように、柔軟な長さ方向の舌状部213の遠位端213aが突起215の遠位端に到達し、前記長さ方向の突起215から外れ、その応力を受けていない位置に戻る。その応力を受けていない位置に戻ることによって、柔軟な長さ方向の舌状部213の遠位端213aは、ハウジング2145の内壁の接触面214aに当たり、これによって音を発生し、注射の完了を使用者に知らせる。
【0057】
図10a、
図10bにおいて、第一の要素が破断可能である、本発明の器具の第四の実施形態が部分的に示されている。
図10a、
図10bの器具301はピストンロッド309を備え、その近位端309aには、ワイヤ321の遠位端321bが固定されている。ワイヤ321の近位端321aは、注入中、ハウジング(図示せず)に結合される、プッシュボタン319の横断壁319aの固定地点320に固定される。固定地点320はしたがって、ハウジング14の近位領域内に位置付けられ、注射中、前記ハウジング14に関して固定されている。ワイヤ321は変形可能であり、器具301の使用前の位置では、
図10aに示されるように、曲げ縮めておくことができる。
【0058】
ワイヤ321の長さは、器具301が注射終了時の位置にあるときに、ピストンロッド309の近位端309aが固定地点320から分離する距離より短い。その結果、ピストン(図示せず)が容器(図示せず)の遠位端に到達すると、ワイヤ321は
図10bに示されるように、ピストンロッド309を遠位方向に引っ張る螺旋ばね(図示せず)の力を受けて、伸ばされて、破断する。
【0059】
ワイヤ321が破断すると、
図10aに示されるように、音を発生し、それによって注射の完了を使用者に知らせる。
【0060】
ワイヤ321は、緊張力を受けて破断可能などのような材料で作製してもよい。例えば、ワイヤ321はナイロン、ポリプロピレンまたはその他、剛性または半剛性であるが破断可能な材料で作製される。
【0061】
図11は、本発明の器具の第五の実施形態を部分的に示しており、この実施形態では、
図10a、
図10bのワイヤの代わりに剛性ケーブル421が使用され、剛性ケーブル421の近位端421aはプッシュボタン419に位置付けられた固定地点420に固定され、前記プッシュボタン419は、注射段階中、ハウジング(図示せず)に結合される。剛性ケーブル421は、ピストンロッド410の中空シリンダ410の中でスライドすることができる。
【0062】
剛性ケーブル421の遠位端421bには、突起422が設けられ、その外径は、ピストンロッド409の中空シリンダ410の近位端409aに設けられるカラーの内径より大きい。カラー412の壁は柔軟でなく、カラー412の内径は緊張力を受けても拡張することができない。
【0063】
剛性ケーブル421の長さは、固定地点420がカラー412から分離する距離より短い。
【0064】
注射段階中、突起422は、ピストンロッド409の中空シリンダ10の中でスライドでは、最終的に、注入終了直前にカラー412と接触する。
【0065】
突起422がカラーと接触すると、前記カラー412の壁は柔軟でないため、前記カラー412から外れない。その結果、ピストンロッド309を遠位側に移動させる螺旋ばね418の力を受けて、剛性ケーブルは注射終了時に破断し、これによって音を発生させ、注射の完了を使用者に知らせる。
【0066】
剛性ケーブル421は、緊張力を受けると破断可能などのような材料で作製してもよい。例えば、剛性ケーブル421はポリプロピレンまたはその他の破断可能な材料で作製される。
【0067】
本発明の器具によって、使用者は、注射が完了したことを明確に知ることができる。これは、注射が付勢手段等の自動手段を通じて実現され、使用者が何の影響も与えないような自己注射器具において特に重要である。使用者は患者であり、一般に注射器具には慣れていないため、注射が終了したことと、製剤が略完全に押し出されたことが本人に知らされ、注射部位から注射器具を安全に引き抜くことができるようにすることが重要である。