特許第5876465号(P5876465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876465
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】骨間装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20160218BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   A61F2/44
   A61B17/56
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-267400(P2013-267400)
(22)【出願日】2013年12月25日
(62)【分割の表示】特願2013-519697(P2013-519697)の分割
【原出願日】2011年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-121615(P2014-121615A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2013年12月25日
(31)【優先権主張番号】61/364,521
(32)【優先日】2010年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512101774
【氏名又は名称】スパイン ウェイブ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】マランダン ユーグ
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0222100(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0128713(US,A1)
【文献】 特表2008−502374(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/078468(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0281346(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0159813(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0118222(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0192671(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0260260(US,A1)
【文献】 特表2002−528223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する骨表面により規定される骨間空間内に配置するための整形外科用安定化装置であって、
長手方向軸及び横軸を有する変形可能なモノリシック本体を備え、
a)前記モノリシック本体は、前記モノリシック本体の変形により第1の低い高さから第2の高い拡張された高さまで高さ軸に沿って拡張可能であり、前記モノリシック本体は、上側骨接触面構造及び下側骨接触面構造を有し、前記モノリシック本体は、前記モノリシック本体が拡張された場合、隣接する骨表面と接触するように作用し、
b)前記モノリシック本体は、前記第1の高さでは耐荷重支柱を形成せず、前記第2の高さでは、前記上側骨接触面構造と前記下側骨接触面構造との間の隔たりを前記高さ軸に沿って結びつける耐荷重支柱を形成するように作用する耐荷重支柱を有し、
前記モノリシック本体は、近位面、遠位面、前記近位面に隣接する位置決めアーム及び前記遠位面に隣接する位置決めアームを有し、
前記位置決めアームは、塑性的に変形可能なジョイントによって前記上側骨接触面構造及び前記下側骨接触面構造に接合される、装置。
【請求項2】
前記耐荷重支柱は、前記モノリシック本体の内部に突出する部分的支柱を有し、
前記モノリシック本体は、係合面を有し、
前記係合面は、前記第1の高さでは、前記耐荷重支柱を形成するために前記部分的支柱と係合することを行わず、
前記部分的支柱は、前記耐荷重支柱を形成するため、前記第2の高さにおいて前記係合面と直接係合する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記係合面は、前記第2の高さにおいて前記部分的支柱と直接的に相互作用し、ラッチするためのラッチ構造を有する、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記モノリシック本体は、骨形成材料を前記モノリシック本体の中に、前記隣接する骨表面に向けて流すことを可能にする開口部を有する、請求項1からのいずれかに記載の装置。
【請求項5】
隣接する骨表面により規定される骨間空間内に配置するための整形外科用安定化装置であって、
変形可能なモノリシック本体を備え、
前記モノリシック本体は、遠位面及び近位面、上側骨接触面構造及び下側骨接触面構造、並びに前記遠位面に隣接する遠位位置決めアーム及び前記近位面に隣接する近位位置決めアームを有し、
各々の前記位置決めアームは、変形ジョイントによってそれぞれの上側骨接触構造と下側骨接触構造とにジョイントされ、
前記上側骨接触面構造は、前記下側骨接触面構造に相対して前記変形ジョイントの周囲を移動可能であり、
前記モノリシック本体は、前記複数の位置決めアームの間に形成可能な耐荷重支柱を有し、
少なくとも一部の耐荷重支柱は、前記上側骨接触面構造及び前記下側骨接触面構造の一方から突出し、
前記モノリシック本体は、前記上側骨接触面構造と前記下側骨接触面構造との間の異なる動きによって、第1の相対的に低い高さから第2の相対的に高い拡張された高さへと高さ軸に沿って拡張することができ、
前記耐荷重支柱は、前記第1の高さでは耐荷重支柱を形成せず、前記第2の高さでは、前記上側骨接触面構造と前記下側骨接触面構造との間の隔たりを前記高さ軸に沿って結びつける耐荷重支柱を形成するように作用する、装置。
【請求項6】
前記耐荷重支柱は、前記上側骨接触面構造及び前記下側骨接触面構造の一方から突出する部分的支柱を有し、
前記部分的支柱は、この部分的支柱にあるラッチ構造と通常時は噛み合っておらず、前記モノリシック本体に設けられている他のラッチ構造と拡張時に噛み合うラッチ構造を有し、
前記耐荷重支柱は、前記モノリシック本体の内部に設けられている他の部分的支柱を有し、
前記他のラッチ構造は、前記他の部分的支柱に設けられている、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記他の部分的支柱は、前記上側骨接触面構造と前記下側骨接触面構造との間に位置する前記モノリシック本体の中心部分に設けられ、
前記中心部分は、横方向から高さ方向に向けて移動可能である、請求項に記載の装置。
【請求項8】
隣接する骨表面により規定される骨間空間内に配置するための整形外科用安定化装置であって、
変形可能なモノリシック本体を備え、
前記モノリシック本体は、遠位面及び近位面と、上側骨接触面構造及び下側骨接触面構造と、前記遠位面に隣接する遠位位置決めアーム及び前記近位面に隣接する近位位置決めアームと、遠位面及び近位面を含み、前記上側骨接触面構造と下側骨接触面構造との間に中心部分を有し、
各々の前記位置決めアームは、変形ジョイントによって、前記上側骨接触面構造と、前記下側骨接触面構造と、各々の前記遠位面及び前記近位面での中心部分とにジョイントされ、
前記上側骨接触面構造上にある第1の部分的支柱が前記中心部分に向けて突出し、
前記下側骨接触面構造上にある第2の部分的支柱が前記中心部分に向けて突出し、
前記中心部分は、前記上側骨接触面構造に向けて突出する第3の部分的支柱と、前記下側骨接触面構造に向けて突出する第4の部分的支柱とを有し、
前記モノリシック本体は、前記位置決めアームが前記変形ジョイントに関して変形されるときに高さを拡張するように前記中央部が移動するときに、第1の相対的に低い高さから第2の相対的に高い拡張された高さへと高さ軸に沿って拡張することができ、
前記部分的支柱は、前記第1の相対的に低い高さにおいて互いに係合せず、前記第1の部分的支柱と前記第3の部分的支柱との直接的な係合、及び前記第2の部分的支柱と前記第4の部分的支柱との直接的な係合によって前記高さ軸に沿って耐荷重支柱を拡張し、
前記耐荷重支柱は、前記上側骨接触面構造と前記下側骨接触面構造との間の隔たりを前結びつける、装置。
【請求項9】
前記第1から第4の部分的支柱は、ラッチ構造を含み、このラッチ構造は、前記拡張された高さで前記モノリシック本体を維持するために前記拡張された高さで接触するように作用し、
前記上側骨接触面構造及び前記下側骨接触面構造は、各々、骨形成材料を前記モノリシック本体の中に流すことを可能にする開口部を有する、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば椎体を固定するため、椎間板ヘルニアを治療するため、または脊椎圧迫骨折を治療するための、骨内および骨間での使用に好適な変形可能なモノリシックの安定化装置またはインプラントが本明細書に記載される。そのインプラントは、最初に低い高さで選択された部位に導入され、次いで第2であるが一意的な予め選択された高い高さを達成するように塑性的に変形可能である。装置の変形により、1つ以上の特定の高い高さが提供される。その装置は特に、隣接する椎体を固定化するための椎間脊椎固定インプラントとして好適である。インプラントを配置する方法およびそのような配置のための器具もまた、記載される。
【0002】
器具を寸法測定(sizing)するのに特に好適な装置の変形もまた記載される。それらの型は、弾性、すなわち塑性的でなく変形可能であり、それらの元のサイズに復元できる。記載される変形の多くは、ヒンジとして作用する変形可能な領域を含む。他の変形は非モノリシックであるか、または変形可能な領域と置き換えられる1つ以上の古典的なヒンジを有してもよい。
【背景技術】
【0003】
脊椎の一部の状態は、骨構造、例えば脊椎の椎体に対する劣化または損傷に起因する。それらの状態は、骨粗鬆症または外傷などによる、あるいは圧迫骨折などの損傷による骨変性の結果であり得る。それらの疾患のいずれかは大きな痛みを引き起こす場合がある。
【0004】
脊椎の他の病気は椎体の間の椎間空間において脊椎円板の変性を生じる。それらには、変性円板疾患および外傷が含まれる。いずれの場合も、円板変性が痛みおよび他の合併症を引き起こす場合がある。その変形は一般に、椎間板ヘルニアまたは「椎間板破裂」(slipped disc)として知られている。部分的に閉塞した孔を通して脊柱管から出る脊髄神経の1つ以上を突出部が押す場合があり、それにより、脊髄神経に影響する領域において痛みまたは麻痺を引き起こす。保存療法としては、患者が彼らのライフスタイルを調節し、鎮痛剤を服用し、根本的な痛みのレベルに耐えることを必要とする、非手術的治療が挙げられ得る。手術的治療法には円板除去が含まれる。これは短期間で痛みを軽減できるが、多くの場合、長期間の問題の危険性も増加し、外科手術から生じる運動および知覚欠損を生じる恐れがある。円板除去およびより一般に円板変性疾患は、後年において外科的治療を必要とする可能性が高い。融合または固定は、固定または融合される椎骨の間の相対運動を最小化するか、または実質的に排除する。外科的治療において、隣接する椎骨は、装置または骨移植を用いて互いに固定または融合されてもよい。それらとしては、例えば、ネジおよび棒システム、体間スペーサ、ネジ融合ケージなどが挙げられ得る。
【0005】
一部の固定または融合装置は後部から椎骨に取り付けられる。そのような装置は後部から突出し、各々の椎骨に別に取り付けるためのハードウェアを必要とする。融合ケージおよび同種移植片は椎間空間内に含まれるが、椎間空間を占めることが望まれる場合、同じ寸法で椎間空間内に挿入されなければならない。これは、ケージまたは移植片が椎間空間内に挿入できるように、ケージまたは移植片が周囲組織を通して形成されなければならないのに十分な開口部を必要とする。
【0006】
記載されているインプラントは、それらの椎骨の間の生来の円板の少なくとも一部が除去されるが、配置後、より大きな外形(プロファイル(profile))に拡張される小さな外形で容積内に組み込まれる、隣接する椎骨を融合するのに好適である。
【0007】
ヒト椎体は、小型の高密度の皮質骨(時々、「皮質」と称される)の硬い外殻および比較的柔らかい海綿骨の内部塊を有する。円板に隣接する皮質の真下は、「軟骨下領域」と称される骨の領域である。脊椎円板および下層の軟骨下領域に隣接する緻密骨の外殻(骨端板)は、多くの場合、骨の「端板領域」と称される。端板領域は融合インプラントを支持するのに利用可能な最も密度の高い骨である。骨表面を処理することによる、例えば皮質内を切断または皮質内に穴を開けることによる端板領域の除去、または損傷により、インプラントは、端板の下にある柔らかくかつ密度の低い海綿骨と接触できる。可能な場合、融合装置を埋め込む際に、皮質の完全性を維持することが望まれる。
【0008】
円板に隣接する椎骨表面の完全性を維持するための複雑なこの要求は、その表面がいくらかドーム形状であるという事実による。そのようなドーム形状の表面は、融合装置を配置するのに予測可能な表面を常に提供するわけではない。さらに、円板に関連する多くの疾患により、処置の一部として円板の転位(distraction)を必要とする状態が引き起こされる。このことは、椎骨の間の空間が小さいことを意味する。
【0009】
現在使用されている、脊椎固定術のための種々のインプラントが存在する。
【0010】
1つのそのようなインプラントは、修飾された円筒形または先細の円筒形状を有する。そのようなインプラントの埋込は、椎間空間および端板の表面にわたる穴内に適切な開口部を形成するためにドリルする(穴を開ける)工程を必要とする。円板空間に隣接する上側および下側椎体はドーム形状の表面であるので、融合を達成するために椎体とインプラントとの間に適切な接触を得るためにいくらかさらに考慮しなければならない。
【0011】
1つの解決策がAttaliらによる特許文献1に示されており、円筒形プラグが椎間内の穴に挿入され、次いで拡張される。
【0012】
椎間板切除後、円板空間に押される円筒形でないインプラントもまた知られている。これらの押し込みインプラントは、脊椎端板の十分な部分を接触させることにより隣接する椎体を支持する利点を有するが、それらは、それらの最終的な完全に着座した位置にそれらのインプラントを十分に固定して保持するために隣接する椎体における穴にねじ込まれるねじ式の円筒形インプラントに関連する利点を与えない。さらに、端板が少なくとも部分的に皮質を剥離しない限り、すなわち、端板自体の最外面まで血管分布に深く到達するように作用するまで、融合は起こらない。
【0013】
インプラントは椎体形成術における主要なものとして好適である。椎骨が、骨粗鬆症もしくは癌などの疾患、または外圧による破砕により弱くなっているかに関わらず、椎体形成術は、画像誘導による、侵襲性の少ない、非外科的、分散的治療であり、損傷した椎骨を増強するために使用される。
【0014】
脊椎固定術および椎体形成術処置は、多くの場合、椎間空間または骨折した骨に整形外科セメント混合物を注入する工程を含む。セメント混合物は微粒子の骨形成材料、例えば他のリン酸カルシウム化合物、多くの場合、アパタイトまたは以下に記載する他のものを形成するために水と反応する1つまたは複数のリン酸カルシウム粉末の混合物を含有してもよい。それらのセメント混合物は、かなり粘性があり、小さな直径の開口部を通して注入することは困難である。インプラントを通る大きな経路を与えることにより、インプラントを通してセメントが通過することが可能となる。
【0015】
引用文献のどれもここに記載した変形可能なインプラントを開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願第2006/0241774号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
骨間空間、すなわち、空間が、骨表面の間に直接的または間接的であるように全体として規定される、骨の内部または骨の間に使用され得る骨固定化装置が本明細書に記載される。特に、記載した装置は、小さな外形(プロファイル)で導入され、埋込部位において大きな外形まで拡張される椎間脊椎固定インプラントとして好適である。インプラントは、モノリシックであってもよく、そのモノリシック本体の変形により拡張されてもよい。多くの変形において、インプラントは特定の予め選択された高さまで拡張されてもよい。インプラントの他の変形が、2つ以上の特定の予め選択された高さから選択される特定の別の高さまで拡張されてもよい。最終的な高さの外形に到達する、小さな外形からのインプラントの拡張は、1つ以上の部分的な耐荷重性の一体化した支柱の構成要素を配置構造内で回転させる。拡張は単一平面または単一方向で行われる。支柱の構成要素は互いにラッチ(latch)(留める)してもよいか、または拡張を特定の別の規定の高さに制限するか、またはインプラントに高圧縮強度を与えながら、拡張構造にインプラントを固定するために互いに相互作用もしくは係合してもよい。
【0018】
特定の平面におけるインプラントの恒久的な塑性変形により、低い高さから高い高さまで拡張されるモノリシックのインプラントが本明細書に記載される。インプラントは、変形(および拡張)プロセスの間に配置される部分的な支持要素を組み込んでおり、典型的には、インプラントに付与される圧力の主要部分を支持する完全な支持要素を形成するために協働する。インプラントの一部の変形において、拡張後、部分的な支持要素の間に小さな間隙が存在してもよく、小さな間隙は使用中の圧縮時に消失してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1A〜1Cはそれぞれ、折り畳まれた形態、部分的に拡張された形態、および完全に拡張された形態のインプラントの1つの変形の斜視図を示す。
図2図2Aおよび2Bは、インプラントの一部の変形の操作を示す概略図である。
図3図3Aおよび3Bはそれぞれ、折り畳まれた形態および完全に拡張された形態のインプラントの1つの変形の斜視図を示す。
図4図4A、4Bおよび4Cはそれぞれ、図3Aおよび3Bに示すインプラントの変形の側面図、上面図および端面図を示す。
図5図5は、図3Aおよび3Bに示すインプラントの特定の変形の可能な拡張性を示すグラフおよび表である。
図6図6Aおよび6Bはそれぞれ、折り畳まれた形態および完全に拡張された形態のインプラントの1つの変形の側面図を示す。
図7図7は、記載したインプラントのマルチセルバージョンの側面図を示す。
図8図8は、記載したインプラントのマルチセルバージョンの側面図を示す。
図9図9は、複数の拡張点を有するインプラントの型の側面図を示す。
図10図10A、10B、および10Cはそれぞれ、折り畳まれた形態、部分的に拡張された形態、および完全に拡張された形態のインプラントの複数のレベルの変形の側面図を示す。
図11図11Aおよび11Bはそれぞれ、折り畳まれた形態および拡張された形態の埋込ツールの1つの変形の斜視図を示す。
図12図12Aおよび12Bはそれぞれ、折り畳まれたインプラントおよび拡張されたインプラントの図11Aおよび11Bに示した埋込ツールの遠位部の斜視詳細図を示す。
図13図13Aおよび13Bは、図11Aおよび11Bに示した埋込ツールの遠位部の斜視詳細図を示す。
図14図14は、インプラントのための埋込手順の例を示す。
図15図15は、インプラントのための埋込手順の例を示す。
図16図16は、インプラントのための埋込手順の例を示す。
図17図17は、インプラントのための埋込手順の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1A〜1Cは、変形により一般化された拡張を示し、インプラントおよびその形状の要素についての一連の共通した関係を提供するインプラントの変形を示す。
【0021】
図1Aは、治療部位内へのインプラントの最初の導入の間に利用され得る、その小さな外形構造におけるインプラント(100)を示す。図1Bは、拡張の過程の間のインプラント(100)を示す。図1Cは、装置の完全な拡張および恒久的な変形の後のインプラント(100)を示す。
【0022】
図1Aに戻ると、インプラント(100)が拡張される場合、通常、隣接する骨表面、例えば脊柱(装置を埋め込む準備においてその脊柱から生来の円板が除去される)における椎骨の間の容積に面するか、その容積を規定する椎骨表面と接触する、上側骨接触面(102)および下側骨接触面(104)をインプラント(100)が備える。以下に説明するように、インプラントは、脊椎安定化または固定ブロック以外の種々の用途を有する。
【0023】
多くの場合、骨接触面(102、104)は、以下に説明するように、一部の設計、例えば鋭利、鋸歯状、フィンなどの固定要素を含む。それらの固定要素は、骨表面に沿った(または骨表面と平行した)インプラントの制限移動の目的を有し、一部の場合、骨とインプラントとの間の恒久的な内部拡張を提供する。
【0024】
上側骨接触面(102)および下側骨接触面(104)の各々は、インプラント(100)の長手方向軸(103)に略垂直である幅(101)、およびインプラント(100)の軸(103)に沿って、略平行である長さ(105)を有する。インプラント(100)のこの変形の折り畳まれた高さ(107)は、拡張前の上側骨接触表面(102)と下側骨接触表面(104)との間の距離である。
【0025】
上側骨接触面(102)および下側骨接触面(104)は、骨形成材料が、インプラントの中心容積内に流れることができ、隣接する骨表面までその容積を通過できる開口部(106、108)を備えてもよく、それにより、隣接する骨表面に対するおよびその間のインプラントの固定に役立つ。
【0026】
いずれにしても、装置は、変形ジョイント領域(112)周囲を回転する複数の回転または位置決めアーム(110)を備える。この位置決めアーム(110)の設計は、骨接触面構造(116)上の表面と接触する、位置決めアーム(110)の各端部におけるランド(114)を含む。位置決めアーム(110)の回転および変形ジョイント領域(112)の生じる変形により、図1Cに示した拡張された高さ(109)までのインプラント(100)の拡張が生じる。
【0027】
装置のこの変形の中心となるのは変形ジョイント領域(112)である。それらのジョイント(112)は、装置の実質的に柔軟性のない領域または構造の間に位置する装置の領域または面積である。ジョイントは2つの機能を有する:1.)各々は、回転の中心または隣接する柔軟性のない領域の間で屈曲する場所、ヒンジ効果を提供し、2.)各々は、拡張後、装置における変形の全てが特定される領域を提供する。
【0028】
図1A〜1Cに示した変形ジョイント(112)は、図1A〜1Cに見られ得るように、変形が比較的小さな領域で特定される、急な屈曲を提供するように作動されてもよいか、または変形が比較的大きな領域で特定される、大きな屈曲を提供するように作動されてもよい。
【0029】
変形ジョイント(112)は構造要素の減少した断面積を提供することにより形成されてもよい。減少した断面は、減少した強度および局所的屈曲および適切に選択された材料において塑性変形の領域を提供する。
【0030】
図1A〜1Cに示した変形において、変形ジョイント領域(112)は、実質的に柔軟性のない位置決めアーム(110)と実質的に柔軟性のない上側または下側骨接触面構造(116)との間の屈曲および変形を可能にする。位置決めアームおよび支柱に対して「実質的に柔軟性のない」という用語を使用しているが、それらの要素の構造は、要素を製造するサイズおよび材料に起因して一部の割合の柔軟性を有する。通常、位置決めアームおよび支柱は、ほとんど柔軟性がなく、典型的には変形ジョイント領域より顕著に柔軟性がない。
【0031】
図1Bは、角(α)で部分的に変形された後のインプラント(100)を示す。インプラントは、上側骨接触面(102)と下側骨接触面(104)との間の差動、相対的運動を提供することにより拡張される。その差動運動により、単一方向、高さのみに装置が拡張する。
【0032】
装置(100)が変形し、図1A〜1Cに示した順序により拡張する場合、部分的な耐荷重支柱である、上側の部分的支柱(120)および下側の部分的支柱(122)が協働し、配置構造内で動き、拡張が完了すると、完全な支柱を形成するように係合する。「係合(engage)」という用語は、本明細書において、2つの部分的な耐荷重支柱(120、122)が接触し、2つの部分的な耐荷重支柱(120、122)が、拡張後、それらの間に小さな間隙を含むが、使用中の荷重下で間隙が消失する状況を包含することを意味する。
【0033】
図1Cに示すように、部分的耐荷重支柱(120、122および124、126)は、拡張後、上側骨接触面(102)および下側骨接触面(104)に負荷される荷重のための主要な耐荷重要素を提供する。一対の部分的耐荷重支柱(124、126)は装置(100)の反対側に配置される。
【0034】
図1A〜1Cに示したインプラントの変形は、実質的に平行である上側骨接触面(102)および下側骨接触面(104)を備える。以下に説明するように、それらの表面は必ずしも平行にする必要はない。例えば、インプラントが椎間板の代わりに使用される場合、インプラントは、骨接触面を埋込んだ後、前弯角を提供するように平行でないように設計されてもよい。この概念を以下にさらに説明する。
【0035】
上側骨接触面(102)および下側骨接触面(104)は実質的に平らであるように示されているが、例えば部分的に円筒形、円形、楕円形、球形などの形状または形態を有してもよい。そのような形状は、例えば、特定の機能を実施もしくは提供するように、または解剖学的形状に適合するように選択されてもよい。
【0036】
図2Aおよび2Bは、概略的な様式で、インプラントの作動の1つの態様の例を示し、特に、装置が折り畳まれる(埋込まれる)場合および拡張される場合の両方の、上記の全体的に柔軟性のない部材の形状を説明する。
【0037】
図2Aは、図1A〜1Cおよび3A〜3Bに示したものと同様のインプラントの変形を示す。この変形において、装置(200)は、実質的に平行な下側骨接触面構造(202)および上側骨接触面構造(204)を有する。この変形において位置決めアーム(206)もまた、実質的に平行である。上側骨接触面構造(204)および下側骨接触面構造(202)ならびに位置決めアーム(206)の各々は柔軟性がないとみなされる。
【0038】
工程(a)において、装置(200)は折り畳まれた形態で示される。下側骨接触面構造(202)および上側骨接触面構造(204)は、矢印(208、210)で示した方向に移動するので、柔軟性のない回転アーム(206)は、工程(b)に示した拡張された状態を生じるようにそれらの変形ジョイント(212)周囲で回転する。
【0039】
図2Bは、柔軟性のない部材の対、すなわち上側骨接触面構造(222)および下側骨接触面構造(224)または遠位位置決めアーム(226)および近位位置決めアーム(228)が平行でない、装置(220)を示す。他の場所で記載しているように、骨接触面構造(227、224)が平行でない拡張された構造は、隣接する骨表面が略平行でなく、平行でなくすべきであるかまたは平行にせず、そのように維持すべきである、生体構造の特定の状態または部分の治療に有益であり得る。
【0040】
工程(a)は、折り畳まれた形態の装置(220)を示す。上側骨接触面構造(222)および下側骨接触面構造(224)は、互い(230、232)に略対向する相対方向で移動する。種々の柔軟性のない部材(222、224、226、228)は、変形ジョイント(230)周囲を回転して、工程(b)に概略的に示した構造を生じる。
【0041】
インプラント(220)の最終的な拡張形状は、図2Aおよび2Bに示していない要素(上記および図1A〜1Cに示した部分的支柱)を用いて固定する。
【0042】
図3Aおよび3Bはそれぞれ、折り畳まれた形態および拡張された形態の装置(250)の別の変形の斜視図を示す。図4A、4Bおよび4Cは、インプラント(250)の側面図、上面図および端面図を示す。それらの図は、インプラントのより詳細な特定の付属的な特徴、例えば、好適な器具、骨固着特徴、および支柱の部分として作動するラッチ要素と協働する装置の拡張および埋め込みに有用な要素を提供する。
【0043】
図3A、3Bおよび4A〜4Cに示した変形(250)は、圧縮形態および拡張形態の両方において平行である骨接触面(252、254)を含む。上記のように、インプラントの柔軟性のない要素の形状は、必ずしも平行な面を含む必要はなく、所望の場合、平行でなくてもよい。
【0044】
図3Aは、下部の骨接触面構造(256)により規定される上側骨接触面(252)を示す。下側骨接触面(254)は、図示されていないが、下側骨接触面構造により規定される。上側骨接触面(252)は、骨固着機能として役立つ複数の鋸歯状の縁(259)を備える。それらの機能的な固着は、埋込の間、所定の位置にインプラント(250)上に骨接触面を保持するのを支援し得るか、または埋込後、所定の位置にインプラントを保持し得る。機能的な骨固着要素の他の形態、例えばフィン、スパイク、フックなどが、設計者の望むように置き換えられてもよい。
【0045】
変形可能なジョイント領域(鋭角(260)および鈍角(262)を含む)が、装置(250)の各々の角に見られる。これらのジョイント領域は、装置(250)の拡張の間および最終的に装置(250)が完全に拡張した後のそれらの実際の変形により物理的に規定される。変形ジョイント領域(260、262)の間の柔軟性のない領域は、骨接触面構造(256、258)または位置決めアーム(264)のいずれかである。
【0046】
インプラント(250)のこの変形は、インプラントが拡張され、上側および下側の部分的耐荷重支柱(266、268)の頂部において一対の歯(270)がかみ合うことにより最終的に一緒にラッチする(留まる)と、(図3Bに示すように)接触するように動く上側および下側の部分的耐荷重支柱(266、268)を含む。ラッチした後、2つの部分的耐荷重支柱(266、268)は完全な耐荷重支柱を形成する。
【0047】
図4Aはインプラント(250)の側面図を示す。変形ジョイント領域(260、262)は、それらの領域のみを変形する装置の性質を際立たせる薄くなった領域を含む。実際に、インプラントがモノリシックである場合、「ヒンジ」作用のための変形領域を形成するようにインプラントの領域を薄化することは、そのような領域を生成する優れた方法である。他の方法、例えば、所望の変形領域の局所的なアニーリング、非変形領域の局所的な硬化、および変形領域において異なる弾性的な組成を提供することもまた、好適であるが、それほど容易ではない。
【0048】
図4Aは別の任意選択の特徴を示す:ラッチする歯(270)が、拡張時に耐荷重支柱を形成するまで、互いに隣接する部分的耐荷重支柱(268)の面(269)または端部は互いに接触しない。それらの面(270)は、勿論、接触してもよい。
【0049】
図4Bは、骨接触面およびその鋸歯状の縁(259)を示すインプラント(250)の上面図である。特に、その図面は、例えば、骨形成材料、骨セメント、粒状骨などが、インプラント(250)の中心を通して適切に配置されるインプラントに隣接する骨表面(258)に導入され得る、インプラント(250)の内部からアクセス可能な大きな開口部(274)を示す。好適な骨形成材料は以下に説明する。開口部のサイズは、所望のようにまたはインプラントの使用により決定されるように、大きくても、または小さくてもよい。
【0050】
図4Cはインプラント(250)の端面図を提供する。鋭角の変形ジョイント領域(260)が見られ得る。その図面はまた、骨形成充填材料の通過を可能にする長手方向軸の経路(276)を示す。
【0051】
図5は、図3A、3Bおよび4A〜4Cに示した設計のインプラントの複数の例の拡張に関するグラフおよび表である。6mmの折り畳まれた高さを有する小さなインプラントは、7.5mm、25%の高さの増加まで拡張する。10mmの折り畳まれた高さを有する、より大きなインプラントは、14.5mm、45%の高さの増加まで拡張する。他のサイズおよび拡張比が設計されてもよい。5mmから30mmの間の拡張された長さおよび約2mmから15mmの拡張された高さが実務的なサイズであり、本明細書に提供した方向に基づいて容易に設計される。同様に、0.5および4:1の間の拡張された縦横比(長さ:高さ)が容易に設計されるが、我々は、ヒト脊椎固定術のためのインプラントにかなり有用である1.5:1.0〜3:1.0の範囲の比を見出した。
【0052】
図6Aおよび6Bはそれぞれ、折り畳まれた形態および拡張された形態の装置(271)の別の変形の斜視図を示す。この変形(271)は、インプラントが2セットのかみ合う歯(270)を含むことを除いて図3Aおよび3Bに示した変形と実質的に同様である。
【0053】
具体的には、インプラント(271)のこの変形は、インプラントが拡張され、上側および下側の部分的耐荷重支柱(266、268)の頂部において2対の歯(270)をかみ合わせることにより最終的に一緒にラッチする場合、(図6Bに示すように)接触するように動く上側および下側の部分的耐荷重支柱(266、268)を含む。ラッチした後、2つの部分的耐荷重支柱(266、268)は完全な耐荷重支柱を形成する。
【0054】
図7および8は、本質的に、図3A〜4Cに示したもののマルチセルの変形であるインプラントを示す。
【0055】
図7は、単一のモノリシック装置において2つの積層された一体化セル(282)を有するマルチセルインプラント(280)を示す。この変形は、椎体置換(「VBR(vertebral body replacement)」)、すなわち脊椎における一対の円板および椎骨の置換に好適である。複数であるが、短い部分的支柱(289)は、このような長い装置に付与される安定性を提供する。装置(280)は折り畳まれた状態で示される。この変形において、装置(280)の拡張は、上側骨接触領域(288)および下側骨接触領域(290)に対する矢印(286)の方向における中心部分(284)の差動または相対運動を含む。
【0056】
図8は、単一のモノリシック装置において端部間に配置される2つの一体化セル(302)を有するマルチセルインプラント(300)を示す。装置(300)は折り畳まれた状態で示される。
【0057】
図9は、複数、この場合、2つの別個の規定の拡張サイズを有するインプラント(304)の変形を示す。全体の設計は図3A〜4Cに見られる設計と同様である。装置(304)は、上側の部分的耐荷重支柱(306)および下側の部分的耐荷重支柱(308)を有する。下側の部分的耐荷重支柱(308)は、拡張ラッチの一部を形成するその頂部において一対の歯(310)を備える。上側の部分的耐荷重支柱(306)は、2つのラッチ部位、上側の部分的耐荷重支柱(306)の中間位置における低い高さ部位(312)および上側の部分的耐荷重支柱(306)の頂部における高い高さ部位(314)を備える。下側の部分的耐荷重支柱(308)に配置される対の歯(310)を、1つまたは他の低い高さ部位(312)または高い高さ部位(314)とラッチした後、2つの部分的耐荷重支柱(306、308)は規定の高さの1つにおいて完全な耐荷重支柱を形成する。
【0058】
図10A〜10Cは、複数の拡張されたサイズが、埋込時に選択され得る、我々の装置(320)のさらに別の変形の側面図を示す。図10A、10Bおよび10Cはそれぞれ、折り畳まれた装置、第1の高さまで拡張された装置、および第2の高さまで拡張された装置を示す。インプラント(320)は図9に示した装置(304)と同様の外表面であるが、上側変形ジョイント領域(324)に隣接する変形領域(322)は、図9の装置の上側の拡張された骨接触面(307)と比較して実質的に剛性ではない。最終的に作用する場合、この変形は、その下側骨接触面(328)より小さな上側骨接触面(326)を有する拡張されたインプラントを提供する。これらの変形領域(322)は、おおよそ台形において種々の高さまで全体構造の再構成を可能にする。
【0059】
我々の装置(320)のこの変形はまた、上側の部分的耐荷重支柱(330)および下側の部分的耐荷重支柱(332)を有する。上側の部分的耐荷重支柱(330)は、2つのラッチ部位、上側の部分的耐荷重支柱(330)の中間位置における低い高さ部位(340)および上側の部分的耐荷重支柱(330)の頂部における高い高さ部位(338)を備える。下側の部分的耐荷重支柱(332)は、拡張ラッチの一部を形成するその頂部において一対の歯(334)を備える。下側の部分的耐荷重支柱(332)に配置される対の歯(334)を1つまたは他の低い高さ部位(340)または高い高さ部位(338)とラッチした後、2つの部分的耐荷重支柱(330、332)は規定の高さの1つにおいて完全な耐荷重支柱を形成する。変形領域(332)および変形ジョイント領域(324)は図10Bまたは図10Cに見られる形状に変形される。
【0060】
図9または10A〜10Cに示されるようなこの装置は、部分的耐荷重支柱におけるラッチ部位(または他の係合部位)の形状および配置を予め選択することによって特定の一意の規定の高さまで拡張されてもよい。高さを指す場合、「特定」または「別個」または「一意」または「規定」とは、装置が、実質的に単一の値であり、安定している高さの値まで拡張され得ることのみを意味する。すなわち、装置は、その位置において解剖学的荷重を支持できる。器具。拡張後に解剖学的圧力を使用する装置の圧縮の結果、全体の拡張された高さの約5%未満になる。図7および9に示した装置に関して説明したように、拡張される高さの複数の固有の別個の値が存在してもよい。最終的に、特定の装置についての一意の拡張された高さの値の数は、予め構成された安定構造の数、例えば装置に含まれるラッチ部位または他の係合部位に等しい。
【0061】
上記のインプラントのいずれかのキットは、インプラントが、種々の拡張された高さを含むように選択されるか、または同じ拡張された高さおよび異なる折り畳まれた高さもしくは異なる装置の幅を有するように選択されるか、または上部と底部の骨接触領域との間の異なる角度を含むように選択されるか、または折り畳まれた状態と拡張された状態との間の等しい差を有する種々の拡張高さを有するように選択される。それらのキットの各々はさらに、インプラントをヒト体内の選択された部位に導入する器具を含んでもよい。それらのキットの各々はさらに、使用するための指示書を含んでもよい。
【0062】
図11Aは、折り畳まれたインプラント(402)を有する器具または埋込器具(400)の1つの変形の斜視図を示し、図11Bは、拡張されたインプラント(404)を有する埋込可能な器具(400)の斜視図を示す。図11Aおよび11Bにおけるインプラント(402、404)は図3A〜4Cに示した変形である。
【0063】
いずれかに記載したように、インプラント(402)のこの変形は、インプラント(402)の1つの骨接触面と他の面との間の相対動作を提供することにより拡張される。埋込器具(400)はこのような押し引き(プッシュプル(push−pull))動作を達成する。図13Aおよび13Bに関してより詳細に説明するように、器具(400)は、インプラントにおける遠位面を引くため、および近位面(通常軸方向において)を押すため、およびインプラントをアクティブに拡張するためにインプラント(402)における表面と接触する種々の表面を組み込んでいる。
【0064】
インプラント器具(400)は、インプラント(402)と協働して嵌合するための固定具(408)を備える引き棒(406)を有し、かつ、インプラント(402)における表面と取り外し可能に嵌合する遠位嵌合固定具(図11Aおよび11Bに図示せず)も備える固定棒(410)を有する真っ直ぐな設計である。インプラント器具(400)は、ねじれノブ(412)および固定把持体(414)を組み込んでいる。ノブ(412)に適用される回転運動(416)は、引き棒(406)に線形の引き動作を与える。引き棒(406)の近位端には、そのような線形の動作を与えるために、例えば、ねじれノブ(412)と結合したねじと協働するためにねじ山(図示せず)が設けられてもよい。ねじれノブ(412)のねじれ方向を制御するためのラチェット(420)が備えられ、使用前に一定の順序で器具(400)/インプラント構造(402)を維持するための固定部を備えてもよい。
【0065】
この器具(400)は、図11Bに示すようにインプラント(404)を拡張するための所望の押し−引き動作を提供する。
【0066】
図12Aは、埋込器具(400)の遠位先端部(400a)の拡大斜視図を示し、折り畳まれたインプラント(402)と接触する引き棒嵌合固定具(408)のより詳細な図を与える。引き棒(406)は固定棒(410)におけるチャネル内に着座する。
【0067】
図12Bは、拡張後にインプラント(404)を有する埋込器具(400)の遠位先端部(400a)の拡大斜視図を示す。埋込器具(400)のこの変形例において、引き棒嵌合固定具(408)は拡張傾斜部(413)を備える。引き棒(406)が近位に引っ張られると、拡張傾斜部(413)は固定棒(410)に結合した協働傾斜部(415)上を摺動する。類似の傾斜構成要素がより遠位に位置し、引き棒嵌合固定具(408)上の傾斜部(416)および固定棒端部(410)上の遠位協働傾斜部(418)を移動する。
【0068】
図13Aおよび13Bは、器具がインプラントで遮られていない埋込器具(図11Aおよび11Bにおいて400)の遠位端の拡大斜視図を提供する。図13Aは、引き棒(406)、引き棒嵌合固定具(408)、および固定棒(410)を示す。この図は、固定棒協働傾斜部(415)と接触する近位拡張傾斜部(413)を示す。この図はまた、固定棒(410)上の遠位協働傾斜部(418)と接触する遠位に位置する引き棒移動傾斜部(416)を示す。
【0069】
インプラントは、埋込の間、引き棒嵌合固定具(408)に重要な2つの表面と接触する。遠位面(432)は、所定の位置にあり、インプラントを軸方向に固定し、インプラントの側部が拡張の間に近位に引っ張れると、中央面(434)はインプラントの長さを支持する。拡張が完了した後、近位面(430)は、引き棒(406)がその開始位置に戻ると、インプラントおよび引き棒嵌合固定具(408)を外し、拡張したインプラントから埋込器具(400)の除去を可能にする。
【0070】
同様に、固定面(440)はインプラントと接触し、インプラントの反対側が、近位に引かれ、対の協働する傾斜部(413、415)および(416、418)を用いて拡張すると、長手方向面(442)と共に、それを所定の位置に維持する。
【0071】
図13Bは、引き棒(406)がインプラントを拡張するために近位に引っ張られた後の引き棒嵌合固定具(408)の位置を示す。この最終的な位置において、インプラントは、完全に拡張され、部分的な荷重性支柱(図1A〜1Cにおける120、122および図3A〜4Aにおける268)によりその拡張したサイズで固定される。図13Bに見られ得るように、近位拡張傾斜部(413)は、固定棒協働傾斜部(415)ともはや接触しない。引き棒移動傾斜部(416)は遠位協働傾斜部(418)ともはや接触しない。引き棒嵌合固定具(408)上の中央面(434)は表面(442)から離れて移動し、インプラントの拡張を示す。
【0072】
脊椎のための固定装置として使用される場合、装置は、種々のアプローチ、前方、後方、側方などのいずれかを用いて埋込まれてもよい。装置の最初の小さな外形のために、装置は、より低い危険性の経椎間孔(transforaminal)処置、例えばTLIF処置、または後方処置、例えばPLIF処置において利点を与える。
【0073】
さらに、装置は、最終的な配置部位において拡張されてもよいか、または最終的な配置部位付近において拡張されてもよく、次いで最終的な配置部位に移動する。インプラントは、脊椎を転位するため、脊椎を適切に並べるため、または椎間空間を容易に維持するために使用されてもよい。装置は、脊椎の軸に沿った方向に拡張されてもよいか、または椎間空間において横方向に拡張されてもよい。
【0074】
生体適合性材料
装置は、好適な金属または高分子材料を含んでもよい。
【0075】
好適な生体適合性材料としては、純チタン、タンタル、コバルト−クロム合金、チタン合金(例えば、ニッケルチタン合金およびタングステンチタン合金)、およびステンレス鋼合金が挙げられる。好適な高分子材料としては、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ファミリーのメンバー、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、炭素強化PEEK、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、または架橋UHMWPEが挙げられる。酸化アルミニウムまたはアルミナ、酸化ジルコニウムまたはジルコニア、粒子ダイヤモンドの成形体、または熱分解炭素などの特定の材料がそのような高分子に含まれてもよい。
【0076】
骨形成成分
インプラントの内部または周辺の全てまたは一部は、通常、埋込後に好適な骨形成材料または治療成分で充填されてもよい。骨形成材料としては、合成または天然の自家移植片、同種移植片、異種移植片、脱塩骨、骨ペースト、骨チップ、骨ストリップ、構造的骨移植、ヒドロキシアパタイト、およびリン酸カルシウム;合成および天然の骨移植物質、例えばバイオセラミックおよびポリマー;硬組織、結合組織、脱塩骨マトリクスおよび組み合わせ、ならびに骨誘導因子を含む他の組織材料が挙げられる。他の骨成長促進物質は、血小板由来成長因子、骨髄吸引物、幹細胞、骨成長タンパク質、骨成長ペプチド、骨結合タンパク質、骨結合ペプチド、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、スタチン、および他の好適な骨成長促進物質を含んでもよい。
【0077】
骨形成成分は、別々にまたは好適な担体材料内に保持されて、有効量の骨形態形成タンパク質(BMP)、TGFβ1、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、線維芽細胞増殖因子、LIM鉱化タンパク質(LMP)、骨髄吸引物、幹細胞、骨成長タンパク質、骨成長ペプチド、およびそれらの組み合わせまたは他の治療もしくは感染耐性剤を含んでもよい。
【0078】
これらの材料は、ポリラクチドポリマー、ポリグリコライドポリマー、チロシン誘導ポリカーボネートポリマー、ポリ無水物ポリマー、ポリオルトエステルポリマー、ポリホスファゼン、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、生体活性ガラス、PLLA、PLDA、および組み合わせなどの再吸収可能な材料と混合されてもよい。
【0079】
使用方法
いずれかに記載したように、インプラントは、複数の異なるアプローチ、前方、後方、側方、後方−側方などを用いて治療部位に組み込むことができる。挿入時の小さな外形のために、インプラントは、特に側方および後方アプローチ、例えばPLIFおよびTLIFアプローチにおいて有用である。
【0080】
図14は、損傷した円板および脊椎すべり症(すなわち、脊椎が下位椎骨に対して前方にずれた状態)の両方を有する部位へのインプラントの変形の埋込を示す。図14は、近位位置決めアーム(508)より長い遠位位置決めアーム(506)を有するインプラント(504)により分離された上側椎骨(500)および下側椎骨(502)の側面図である。図14における工程(a)は、適切に配置されているが、拡張されていないインプラント(504)の損傷した円板および脊椎すべり症の両方を有する部位を示す。工程(b)において、インプラント(504)は拡張されている。描いたインプラント(504)の示した変形の拡張により、脊椎(500、502)の転位、上側脊椎(502)の後方変位、および正常な前弯角の復元が引き起こされる。
【0081】
図15、工程(a)は、高さの保存のみを必要とする上側脊椎(500)と下側脊椎(502)との間の椎間部位の側面図を示す。
【0082】
工程(a)は、埋込のために適切に配置された折り畳まれたインプラント(510)を示す。工程(b)において、インプラント(510)は脊椎骨の表面と接触するように拡張される。しかしながら、脊椎(500、502)は転位も変形もしない。
【0083】
図16は、脊椎すべり症ではないが、損傷した円板に起因して転位を必要とする椎間空間内へインプラントを挿入するための手順を提供する。工程(a)において、図14に関して説明した種類のインプラント(504)(近位位置決めアーム(508)より長い遠位位置決めアーム(506)を有する)が椎間空間内に組み込まれ、脊椎(500、502)との接触を可能にするように十分に拡張される。工程(b)において、インプラント(504)は、徐々に拡張され、椎間空間内に挿入(512の矢印)しながら、脊椎(500、502)を転位させる。工程(c)において、インプラント(504)は完全に拡張され、椎間空間内に誘導(512の矢印)され、脊椎(500、502)の間に前弯角を形成する。この段階的な挿入および拡張手順を用いて、インプラント(504)は、脊椎の適切な転位に最適な範囲にのみ、椎間空間内に挿入される。
【0084】
図17、工程(a)は、インプラント(520)が側方に組み込まれている円板空間の上面図を示す。本明細書に記載した他の変形と異なり、このインプラント(520)はスペーサとしてのみ使用される。工程(b)において、インプラントは拡張される。
【0085】
他の変形
この装置はインプラント以外にも使用されてよい。例えば、弾性材料から装置を構築することにより、その装置は骨間容積のサイズを測定するために使用されてもよい。例えば、図11A〜11Bに示した器具は、装置の拡張の間、引き棒(図13Aおよび13Bにおける406)により動かされる、押す−引く距離を示す。
【0086】
さらに、特に明記する場合、1つ以上の変形ジョイントは古典的な複数部分ヒンジと置き換えられてもよい。1つ以上の変形領域はそのままであってもよい。2つ以上の古典的なヒンジの利用は、装置がモノリシックでないことを必要とする。
【0087】
「水平」、「垂直」、「上部」、「上側」、「下側」、「底部」、「左」、および「右」などの全ての空間についての言及は、例示の目的のみであり、典型的に相対位置を表し、本開示の範囲内で変更されてもよいことは理解される。
【0088】
本開示の他の修飾は当業者に自明であろう。全てのこのような修飾および代替は、添付の特許請求の範囲に規定されるように本開示の範囲内に含まれることを意図する。当業者はまた、そのような修飾および等価の構成または方法は、本開示の精神および範囲から逸脱せず、それらは、本開示の精神および範囲から逸脱せずに種々の変更、置換、および代替をされてもよいことを理解するべきである。
【符号の説明】
【0089】
100 インプラント
101 幅
102 上側骨接触面
103 長手方向軸
104 下側骨接触面
105 長さ
106 開口部
107 高さ
108 開口部
109 拡張された高さ
110 位置決めアーム
112 変形ジョイント領域
114 ランド
116 骨接触面構造
120 上側の部分的支柱
122 下側の部分的支柱
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17