(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三相配電線のねん架位置付近に電力負荷がある場合、前記ねん架位置を境界として隣り合う第1及び第2区間のうちの前記第1区間に前記電力負荷が含まれることとしたときの前記三相配電線の第1電圧不平衡率と、前記第2区間に前記電力負荷が含まれることとしたときの前記三相配電線の第2電圧不平衡率とを演算する第1演算装置と、
前記第1及び第2電圧不平衡率に基づいて、前記第1区間の第1ねん架位置と前記第2区間の第2ねん架位置とを定める決定装置と、
を備えたことを特徴とするねん架位置決定装置。
前記決定装置は、前記第1電圧不平衡率が前記第2電圧不平衡率よりも小さい場合、前記電力負荷が前記第1区間に含まれていることとして前記第1及び第2ねん架位置を定め、前記第2電圧不平衡率が前記第1電圧不平衡率よりも小さい場合、前記電力負荷が前記第2区間に含まれていることとして前記第1及び第2ねん架位置を定める
ことを特徴とする請求項1に記載のねん架位置決定装置。
前記三相配電線の三相のうちの何れか二相に接続される複数の電力負荷が前記三相配電線の三組の二相夫々に均等に接続されていることとして、前記三相配電線の第3電圧不平衡率に応じた第1影響度と、前記三相配電線の三相夫々が同等な線路インピーダンスであることとして、前記三相配電線の第4電圧不平衡率に応じた第2影響度とを演算する第2演算装置と、
前記第1及び第2影響度に基づいて、前記三相配電線の三相夫々の線路インピーダンスの偏りに基づく第1原因が、前記複数の電力負荷が接続される前記三相配電線の二相の偏りに基づく第2原因よりも、電圧不平衡の発生原因としては支配的であることを判別する判別装置と、を更に備え、
前記第1演算装置は、前記第1原因が前記第2原因よりも前記電圧不平衡の発生原因としては支配的であると前記判別装置が判別した場合、前記第1及び第2電圧不平衡率を演算し、
前記決定装置は、前記第1原因が前記第2原因よりも前記電圧不平衡の発生原因としては支配的であると前記判別装置が判別した場合、前記第1及び第2ねん架位置を定める
ことを特徴とする請求項1に記載のねん架位置決定装置。
三相配電線のねん架位置付近に電力負荷がある場合、前記ねん架位置を境界として隣り合う第1及び第2区間のうちの前記第1区間に前記電力負荷が含まれることとしたときの前記三相配電線の第1電圧不平衡率と、前記第2区間に前記電力負荷が含まれることとしたときの前記三相配電線の第2電圧不平衡率とを、演算装置が演算する第1ステップと、
前記第1及び第2電圧不平衡率に基づいて、前記第1区間の第1ねん架位置と前記第2区間の第2ねん架位置とを、決定装置が定める第2ステップと、を含む
ことを特徴とするねん架位置決定方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
===配電系統===
以下、
図1を参照して、本実施形態における配電系統について説明する。
図1は、本実施形態における配電系統を示す図である。
【0011】
配電系統100は、負荷R1乃至R3に対して電力を供給するための電力系統である。配電系統100は、配電用変圧器101、配電線L100、柱上変圧器Tr1乃至Tr3、負荷R1乃至R3、位置決定装置3(ねん架位置決定装置)を有する。尚、柱上変圧器及び負荷は、配電系統100に複数設けられているが、説明の便宜上、例えば3個ずつ設けられていることとする。
【0012】
配電用変圧器101は、例えば一次側の電圧を所定の変圧比で変圧して、当該変圧された電圧を二次側から出力する装置である。配電用変圧器101の一次側は、送電線L200の一端に接続される。配電用変圧器101の二次側は、配電線L100の一端に接続される。
【0013】
配電線L100は、配電用変圧器101からの電力を負荷R1乃至負荷R3に供給するための三相配電線であり、上流側の配電用変圧器101から下流側に向かって延びている。配電線L100は、配電用変圧器101からのU相、V相、W相の三相交流電力を供給するための電力線である。配電線L100は、U相の電力を供給する配電線L1、V相の電力を供給する配電線L2、W相の電力を供給する配電線L3を有する。
【0014】
柱上変圧器Tr1乃至Tr3は、配電線L100に接続される変圧器である。柱上変圧器Tr1乃至Tr3は、例えば一次側の電圧を所定の変圧比で変圧して、当該変圧された電圧を二次側から出力する変圧器である。柱上変圧器Tr1乃至Tr3の一次側は夫々、配電線L1乃至L3のうち何れか二相(2本)の配電線に接続される。柱上変圧器Tr1乃至Tr3の二次側は夫々、負荷R1乃至R3に接続される。柱上変圧器Tr1乃至Tr3は夫々、配電線L100におけるノード71乃至73に対応した位置に接続される。
【0015】
負荷R1乃至R3は、配電線L100に接続される例えば電灯負荷等の電力負荷である。負荷R1乃至R3は夫々、柱上変圧器Tr1乃至Tr3を介して配電線L100に接続される。つまり、負荷R1乃至R3は夫々、配電線L1乃至L3のうち何れか二相(2本)の配電線に接続されて、電力が供給される。
【0016】
位置決定装置3は、配電線L100におけるねん架が行われるべき位置(「ねん架位置」とも称する)を決定する装置である。尚、ねん架は、配電線L100の電圧不平衡率を低下させるために行われる。
【0017】
===位置決定装置===
以下、
図2及び
図3を参照して、本実施形態における位置決定装置について説明する。
図2は、本実施形態における位置決定装置のハードを示すブロック図である。
図3は、本実施形態における位置決定装置を示すブロック図である。
【0018】
位置決定装置3は、ねん架位置を決定する装置である。位置決定装置3は、CPU(Central Processing Unit)31、通信装置32、記憶装置33、表示装置34、入力装置35を有する。CPU31は、記憶装置33に記憶されているプログラムを実行することにより位置決定装置3の各種機能を実現し、位置決定装置3を統括制御する。記憶装置33には、前述のプログラム、各種情報が記憶されている。表示装置34は、位置決定装置3の情報を表示するディスプレイである。入力装置35は、位置決定装置3に対して情報を入力するための例えばキーボード、マウス等である。通信装置32は、ネットワーク300を介して各種測定装置との間で通信を行う。
【0019】
位置決定装置3は、更に、第1決定部36、第2決定部37、第3決定部38(「位置決定装置3の各種機能」とも称する)を有する。尚、位置決定装置3の各種機能は、記憶装置33に記憶されているプログラムのCPU31による実行により実現される。
【0020】
第1決定部36(第2演算装置、判別装置)は、各影響度を算出し、当該各影響度に基づいてねん架の要否を決定する。第2決定部37(調整装置)は、仮ねん架区間を決定する。第3決定部38(第1演算装置、決定装置)は、第2決定部37の決定結果に基づいて、ねん架位置を決定する。
【0021】
===第1決定部===
以下、
図1及び
図4を参照して、本実施形態における位置決定装置について説明する。
図4は、本実施形態における各電圧不平衡率を示す図である。尚、
図4においては、第1乃至第4条件下における配電線L100の上流側から下流側への各位置での電圧不平衡率が示されている。第1乃至第4条件については、後述する。
【0022】
=影響度=
第1決定部36は、第1線路インピーダンス影響度、第2線路インピーダンス影響度、第1接続相影響度、第2接続相影響度(「各影響度」とも称する)を算出する。
【0023】
第1及び第2線路インピーダンス影響度(第1影響度)とは、線路インピーダンスの偏りが配電線L100の電圧不平衡率に与えると推定される影響の度合いを示している。線路インピーダンス影響度は、負荷が平衡であったときに、線路インピーダンスに基づいて発生する配電線L100の電圧不平衡率の最大値であることとする。尚、負荷が平衡であるとは、配電線L1乃至L3の各線間に接続される柱上変圧器の合計容量が略等しいことを示している。つまり、配電線L1乃至L3に均等に柱上変圧器が接続されていることを示している。
【0024】
第1及び第2接続相影響度(第2影響度)とは、接続相の偏りが配電線L100の電圧不平衡率に与えると推定される影響の度合いを示している。各影響度は、接続相の偏り及び線路インピーダンスの偏りの何れが、配電線L100の電圧不平衡を増大させる要因として支配的であるかについての判定(決定)を行う際に用いられる指標でもある。接続相影響度は、線路インピーダンスが平衡であったときに、柱上変圧器Tr1乃至Tr3の接続相に基づいて発生する電圧不平衡率の最大値であることとする。線路インピーダンスが平衡であるとは、配電線L1乃至L3夫々の線路インピーダンスが略等しいことを示している。
【0025】
=線路インピーダンス影響度の算出=
第1決定部36は、負荷が平衡であり、且つ、配電線L100に対してねん架が行われておらず、且つ、配電系統100に設けられている電柱として全て水平配列の装柱が用いられていることとして(「第1条件」とも称する)、配電線L100の各位置における電圧不平衡率を算出する(
図4の実線)。第1決定部36は、第1条件下における電圧不平衡率の中での最大値を、第1線路インピーダンス影響度とする。
【0026】
第1決定部36は、負荷が平衡であり、且つ、配電線L100に対してねん架が行われておらず、且つ、配電系統100に設けられている電柱として全て垂直配列の装柱が用いられていることとして(「第2条件」とも称する)、配電線L100の各位置における電圧不平衡率を算出する(
図4の破線)。第1決定部36は、第2条件下における電圧不平衡率の中での最大値を、第2線路インピーダンス影響度とする。
【0027】
=接続相影響度=
第1決定部36は、接続相任意割当て、接続相合計が均等下での任意割当て等に基づいて、第1及び第2接続相影響度を算出する。
【0028】
<接続相任意割当て>
接続相任意割当てとは、柱上変圧器Tr1乃至Tr3が夫々、同等な確率で配電線L1乃至L3のうちの2相に接続されることである。接続相任意割当てとは、例えば、柱上変圧器Tr1が配電線L1及びL2に接続される確率と、柱上変圧器Tr1が配電線L2及びL3に接続される確率と、柱上変圧器Tr1が配電線L3及びL1に接続される確率とが相互に同等となることを示している。接続相任意割当ての下では、柱上変圧器Tr1乃至Tr3は、この同等な確率の下で何れかの組み合わせの配電線に接続される。
【0029】
<接続相合計が均等下での任意割当て>
接続相合計が均等下での任意割当てとは、配電線L1乃至L3に接続される柱上変圧器の個数が同等となるという条件の下で、柱上変圧器Tr1乃至Tr3が夫々、配電線L1乃至L3のうちの2相に接続されることである。各2相に接続される柱上変圧器は、同等な確率の下で決定される。接続相合計が均等下での任意割当ての下では、配電線L1及びL2に接続される柱上変圧器の個数、配電線L2及びL3に接続される柱上変圧器の個数、
配電線L3及びL1に接続される柱上変圧器の個数は夫々同等となる。
【0030】
第1決定部36は、線路インピーダンスが平衡であり、且つ、接続相任意割当てを行うこととして(「第3条件」とも称する)、第1接続相影響度を算出する。具体的には、第1決定部36は、第3条件下において配電線L100の各位置における電圧不平衡率を複数回算出し、当該算出結果の各位置における平均値を配電線L100の各位置における電圧不平衡率として算出する(
図4の一点鎖線)。この後、第1決定部36は、第3条件下における電圧不平衡率の中での最大値を、第1接続相影響度とする。つまり、第1決定部36は、複数回分の各位置の電圧不平衡率の平均値の中の最大値を、第1接続相影響度とする。
【0031】
第1決定部36は、線路インピーダンスが平衡であり、且つ、接続相合計が均等下での任意割当てを行うこととして(「第4条件」とも称する)、第2接続相影響度を算出する。具体的には、第1決定部36は、第4条件下において配電線L100の各位置における電圧不平衡率を複数回算出し、当該算出結果の各位置における平均値を配電線L100の各位置における電圧不平衡率として算出する(
図4の二点鎖線)。この後、第1決定部36は、第4条件下における電圧不平衡率の中での最大値を、第2接続相影響度とする。つまり、第1決定部36は、複数回分の各位置の電圧不平衡率の平均値の中の最大値を、第2接続相影響度とする。
【0032】
尚、例えば、配電系統100には、配電線L100の電圧及び力率等を測定する測定装置(不図示)が設けられていることとする。記憶装置33には配電線L100の線路インピーダンスの値等の配電線L100の電圧不平衡率を算出するための系統情報が記憶されていることとする。第1決定部36は、測定装置の測定結果、系統情報等を所定のアルゴリズムに適用して、配電線L100の各位置における電圧不平衡率を算出することとする。尚、所定のアルゴリズムは、例えば、対称座標法等を用いて電圧不平衡率を算出するためのものであることとしてもよい。
【0033】
=ねん架の要否=
第1決定部36は、各影響度に基づいてねん架の要否を決定する。第1決定部36は、各影響度同士の大小関係に基づいて、配電線L100に対してねん架を行う必要があるか否か(ねん架の要否)を決定(判別)する。
【0034】
例えば、第1及び第2線路インピーダンス影響度の双方が第1及び第2接続装置影響度の双方よりも大きい場合、第1決定部36は、ねん架が必要であると決定(判別)する。一方、例えば、第1及び第2線路インピーダンス影響度の双方が第1及び第2接続装置影響度の双方よりも小さい場合、第1決定部36は、ねん架が必要でないと決定(判別)する。
【0035】
===第2決定部===
以下、
図5乃至
図8を参照して、本実施形態における第2決定部について説明する。
図5は、本実施形態における配電系統におけるねん架対象位置を示す図である。尚、
図5においては、説明の便宜上、ねん架対象位置61乃至69が示されている。ねん架対象位置61乃至69とは、配電線L100におけるねん架が行われる候補位置を示している。
図6は、本実施形態における電柱の正面図を示す図である。
図7は、本実施形態における電柱の平面図を示す図である。
図8は、本実施形態におけるねん架間隔と電圧不平衡率との関係を示す図である。
【0036】
第2決定部37は、ねん架間隔を調整する毎の電圧不平衡率に基づいて、仮ねん架区間を決定する。
【0037】
=ねん架間隔=
ねん架間隔とは、配電線L100における隣り合っている2つのねん架対象位置の間の距離を示している。つまり、ねん架間隔とは、例えば、ねん架対象位置61、62の間の距離、ねん架対象位置62、63の間の距離等を示している。尚、配電線L100における送出端102とねん架対象位置61との間の距離についても、ねん架間隔とされることとする。
【0038】
=ねん架区間=
ねん架区間は、配電線L100における連続している3つのねん架間隔に対応する区間を示している。つまり、例えば、第1ねん架区間D1は、配電線L100における送出端102とねん架対象位置63との間の区間に対応し、第2ねん架区間D2は、配電線L100におけるねん架対象位置63、66の間の区間に対応し、第3ねん架区間D3は、配電線L100におけるねん架対象位置66、69の間の区間に対応している。
【0039】
ここで、各ねん架対象位置においてねん架が行われた場合、各ねん架対象位置では、配電線L100における各配電線L1、L2、L3の架設位置が変更される。例えば、配電線L100のねん架対象位置61に電柱40(
図6、
図7)が設けられて、ねん架が行われた場合、配電線L1乃至L3の位置は変更されることになる。配電線L11、L21、L31が夫々配電線L1、L2、L3にけるねん架対象位置61よりも上流側の配電線に対応し、配電線L13、L23、L33が夫々配電線L1、L2、L3にけるねん架対象位置61よりも下流側の配電線に対応していることとする。
【0040】
ねん架対象位置61において、配電線L1の架設位置が配電線L1乃至L3のうちの一方側(−X)の端の位置から配電線L2、L3の間の位置に変更されることになる。又、配電線L2、L3も配電線L1と同様に架設位置が変更されることになる。ねん架対象位置62、63においてもねん架対象位置61と同様に、配電線L1乃至L3の架設位置が変更される。従って、各ねん架区間は、配電線L1乃至L3の架設位置をねん架間隔ごとに順に変更して、各架設位置が1回転する区間に対応している。
【0041】
=ねん架間隔、電圧不平衡率=
第2決定部37は、ねん架間隔を調整する毎の電圧不平衡率を算出する。第2決定部37は、各ねん架対象位置においてねん架が行われていることとして、各電圧不平衡率を算出する。尚、第2決定部37は、第1決定部36と同様にして、電圧不平衡率を算出することとする。
【0042】
第2決定部37は、例えば、ねん架間隔が8(km)のときの配電線L100の上流側から下流側における複数の位置の電圧不平衡率の最大値(「最大電圧不平衡率」とも称する)を30回算出する(
図8)。第2決定部37は、各回において接続相任意割当て(上述)を行い、最大電圧不平衡率を算出する。この後、第2決定部37は、1回目乃至30回目に算出された最大電圧不平衡率の平均値としての、平均電圧不平衡率を算出する。
図8においては、1回目、2回目、30回目に算出された最大電圧不平衡率がE81、E82、E83であり、平均電圧不平衡率がE84であることが示されている。
【0043】
第2決定部37は、ねん架間隔が4(km)、2(km)、1(km)のとき夫々における平均電圧不平衡率を、ねん架間隔が8(km)のときにおける平均電圧不平衡率と同様にして算出する。尚、
図8においては、ねん架間隔が4(km)、2(km)、1(km)のとき夫々における平均電圧不平衡率がE44、E24、E14であることが示されている。
【0044】
=ねん架基準間隔、仮ねん架区間=
第2決定部37は、目標電圧不平衡率と算出された平均電圧不平衡率とに基づいて、ねん架基準間隔及び仮ねん架区間を決定する。目標電圧不平衡率とは、配電線L100における目標とされる電圧不平衡率を示している。配電系統100においては、平均電圧不平衡率が目標電圧不平衡率よりも低くなるように、ねん架が行われる。目標電圧不平衡率は、例えば3(%)に設定されている。尚、例えば、目標電圧不平衡率は、3(%)以外の5(%)等の所定値に設定されていることとしてもよい。
【0045】
第2決定部37は、ねん架間隔が長いほうから短いほうに順に、平均電圧不平衡率の値の大きさと目標電圧不平衡率の値の大きさとを比較する。第2決定部37は、値が目標電圧不平衡率以下となる平均電圧不平衡率のうちの、ねん架間隔が最大となる平均電圧不平衡率を選択し、当該選択された平均電圧不平衡率に対応するねん架間隔をねん架基準間隔に決定する。第2決定部37は、配電線L100における各ねん架間隔が当該ねん架基準間隔となるように、配電線L100における各ねん架対象位置を上流側(送電端102側)から下流側に向かって順次決定する。第2決定部37は、この決定された各ねん架間隔に基づくねん架区間を仮ねん架区間と決定する。
【0046】
=ねん架基準間隔、仮ねん架区間の決定の一例=
例えば、説明の便宜上、E84、E44、E24、E14(
図8)のうちの、E84、E44が目標電圧不平衡率の値よりも大きい値であり、E24、E14が目標電圧不平衡率よりも小さい値であることとする。
【0047】
第2決定部37は、ねん架間隔が8(km)のときの平均電圧不平衡率として、E84を算出する。第2決定部37は、E84の値と目標電圧不平衡率の値とを比較する。E84の値が目標電圧不平衡率の値よりも大きいので、第2決定部37は、ねん架基準間隔を決定せずに、ねん架間隔が8(km)の次に短い4(km)のときの平均電圧不平衡率として、E44を算出する。第2決定部37は、E44の値と目標電圧不平衡率の値とを比較する。E44の値が目標電圧不平衡率の値よりも大きいので、第2決定部37は、ねん架基準間隔を決定せずに、ねん架間隔が4(km)の次に短い2(km)のときの平均電圧不平衡率として、E24を算出する。第2決定部37は、E24の値と目標電圧不平衡率の値とを比較する。E24の値が目標電圧不平衡率の値よりも小さいので、第2決定部37は、E24に対応するねん架間隔である2(km)をねん架基準間隔に決定する。
【0048】
この後、第2決定部37は、この決定されたねん架基準間隔に基づくねん架区間を仮ねん架区間と決定する。第2決定部37は、配電線L100における各ねん架間隔が当該ねん架基準間隔としての2(km)となるように、配電線L100における各ねん架対象位置を上流側(送電端102側)から下流側に向かって順次決定する。第2決定部37は、この決定された各ねん架間隔に基づくねん架区間を仮ねん架区間と決定する。つまり、第2決定部37は、各ねん架対象位置においてねん架が行われていることとしたときの平均電圧不平衡率が目標電圧不平衡率以下となるように、ねん架間隔を調整する。
【0049】
===第3決定部===
以下、
図5、
図9及び
図10を参照して、本実施形態における第3決定部について説明する。
図9は、本実施形態におけるねん架対象位置を微調整した際の電圧不平衡率を示す図である。
図10は、本実施形態におけるねん架対象位置が微調整された際の配電系統を示す図である。尚、
図10においては、負荷R1が第1ねん架区間D1内に設けられ、且つ、負荷R2が第2ねん架区間D2内に設けられるように、ねん架対象位置が調整されたときの配電系統100が示されている。
【0050】
第3決定部38は、第2決定部37によって決定された仮ねん架区間の境界付近に設けられている負荷(「境界負荷」とも称する)を選択する。第3決定部38は、選択された負荷が境界の上流側におけるねん架区間内に設けられるように、境界の位置をずらして最大電圧不平衡率を算出する。又、第3決定部38は、選択された負荷が境界の下流側におけるねん架区間内に設けられるように、境界の位置をずらして最大電圧不平衡率を算出する。この後、第3決定部38は、算出された最大電圧不平衡率に基づいて、ねん架位置を決定する。
【0051】
例えば、第2決定部37によって決定された仮ねん架区間に対応する配電系統100が
図5に示されており、境界負荷としての負荷R1が第1ねん架区間D1に設けられるように境界としてのねん架対象位置63がねん架対象位置63Bにずらされたときの配電系統100が
図10に示されていることとして、説明する。尚、
図10においては、説明の便宜上、ずらされる前の境界としてのねん架対象位置63が点線で示されており、ずらされた後の境界としてのねん架対象位置63Bが実線で示されている。
【0052】
<境界負荷の選択>
第3決定部38は、負荷R1乃至R3から境界負荷を選択する。第3決定部38は、例えば、各ねん架区間の距離に対する、各負荷から当該各負荷の直近の境界としてのねん架対象位置までの距離の比率に基づいて、境界負荷を選択することとしてもよい。例えば、当該比率が10%以下となる負荷が、境界負荷として選択されることとしてもよい。第3決定部38は、例えば、境界負荷として負荷R1、R2を選択する。
【0053】
<最大電圧不平衡率の算出>
第3決定部38は、境界負荷としての負荷R1、R2が夫々第1ねん架区間D1内、第2ねん架区間D2内に設けられるように(
図9の第1の場合となるように)、境界としてのねん架対象位置63、66(
図5)の位置を調整する。この後、第3決定部38は、最大電圧不平衡率を30回算出する。第3決定部38は、各回において接続相任意割当て(上述)を行い、最大電圧不平衡率を算出する。第3決定部38は、1回目乃至30回目に算出された最大電圧不平衡率の最大値を求める。
図9においては、1回目、2回目、30回目に算出された最大電圧不平衡率がF11、F12、F13であり、最大電圧不平衡率の最大値がF13であることが示されている。
【0054】
第3決定部38は、第2の場合、第3の場合、第4の場合(
図9)のとき夫々における最大電圧不平衡率の最大値を、第1の場合のときにおける最大電圧不平衡率の最大値と同様にして算出する。尚、
図9においては、第2の場合、第3の場合、第4の場合のとき夫々における最大電圧不平衡率の最大値がF23、F33、F43であることが示されている。
【0055】
尚、境界負荷として負荷R1、R2の2個が選択されているので、2の2乗個の平均電圧不平衡率が算出されている。例えば、境界負荷としての負荷がn個(nは整数)選択されている場合、2のn乗個の平均電圧不平衡率が算出されることになる。
【0056】
第3決定部38は、F13、F23、F33、F43のうちの値が最小の場合に対応するねん架対象位置を、ねん架位置に決定する。例えば、F13、F23、F33、F43のうち、F13の値が最小の場合、第3決定部38は、
図10に示されているねん架対象位置61、62、63B、64乃至69を、ねん架が行われるべきねん架位置に決定する。
【0057】
===動作===
以下、
図11を参照して、本実施形態における位置決定装置について説明する。
図11は、本実施形態における位置決定装置の動作を示すフローチャートである。
【0058】
位置決定装置3は、各影響度を算出する(ステップSt11)。位置決定装置3は、各影響度に基づいて、ねん架の要否を判別する(ステップSt12)。例えば、ねん架を行うことが必要でないと判別した場合(ステップSt12のNO)、位置決定装置3は、動作を終了する。一方、例えば、ねん架を行うことが必要であると判別した場合(ステップSt12のYES)、位置決定装置3は、仮ねん架区間を決定する(ステップSt13)。位置決定装置3は、ねん架間隔の微調整を行う(ステップSt14)。このとき、ねん架位置が決定される。例えば、この後、位置決定装置3は、ステップSt14において決定されたねん架位置を示す情報を出力した後、動作を終了することとしてもよい。
【0059】
上述したように、位置決定装置3は、第3決定部38を有する。第3決定部38は、配電系統100における第1ねん架区間D1、第2ねん架区間D2のねん架位置を決定する。第3決定部38は、配電線L100のねん架対象位置63付近に境界負荷がある場合、配電線L100の電圧不平衡率を演算する。ねん架対象位置63付近に負荷R1があるので、第3決定部38は、第1ねん架区間D1に負荷R1が含まれることとしたときの配電線L100の電圧不平衡率を第1電圧不平衡率として演算し、第2ねん架区間D2に負荷R1が含まれることとしたときの配電線L100の電圧不平衡率を第2電圧不平衡率をとして演算する。第3決定部38は、第1及び第2電圧不平衡率に基づいて、第1ねん架区間D1のねん架位置としての第1ねん架位置と、第2ねん架区間D2のねん架位置としての第2ねん架位置とを定める。よって、位置決定装置3は、配電線L100における第1及び第2ねん架位置を確実に決定することができる。位置決定装置3によって決定された第1及び第2ねん架位置においてねん架を行った場合、配電線L100における電圧不平衡率を低下させることができる。又、配電系統100の管理者は、位置決定装置3からの出力に基づいて配電線L100のねん架を行えば良いので、比較的容易に配電系統100の管理作業を行うことができる。又、配電線L100の電圧不平衡率を低下させるための電圧補償機器(不図示)が不要となるために、配電線L100の電圧を調整管理するためのコストを低減することができる。
【0060】
又、第3決定部38は、第1電圧不平衡率が第2電圧不平衡率よりも小さい場合、負荷R1が第1ねん架区間D1に含まれていることとして第1及び第2ねん架位置を定め、第2電圧不平衡率が第1電圧不平衡率よりも小さい場合、負荷R1が第2ねん架区間D2に含まれていることとして第1及び第2ねん架位置を定める。よって、配電線L100の電圧不平衡率を低下させることができるように、第1及び第2ねん架位置を定めることができる。
【0061】
又、第3決定部38は、配電線L100の上流側から下流側への複数の位置夫々において第1及び第2電圧不平衡率を演算する。第3決定部38は、複数の位置夫々における第1電圧不平衡率の最大値としての第1最大電圧不平衡率と、複数の位置夫々における第2電圧不平衡率の最大値としての第2最大電圧不平衡率とに基づいて、第1及び第2ねん架位置を定める。よって、配電線L100の上流側から下流側への複数の位置夫々における電圧不平衡率の最大値を低下させることができるように、第1及び第2ねん架位置を定めることができる。
【0062】
又、第3決定部38は、負荷R1が配電線L100の三組の二相夫々に同等な確率で接続されることとして、第1及び第2電圧不平衡率を夫々複数回演算する。第3決定装置38は、複数回分の第1電圧不平衡率の最大値と、複数回分の第2電圧不平衡率の最大値とに基づいて、第1及び第2ねん架位置を定める。よって、負荷R1の接続先の二相がどの二相となっている場合においても、配電線L100の電圧不平衡率を低下させることができるように、第1及び第2ねん架位置を定めることができる。
【0063】
又、配電線L100には、ねん架対象位置が複数設けられている。第2決定装置37は、各ねん架対象位置においてねん架が行われることとしたときの配電線L100の電圧不平衡率としての第3電圧不平衡率が所定値としての目標電圧不平衡率以下となるように、各ねん架対象位置の間隔を調整する。境界としてのねん架位置63、63Bと第1ねん架区間D1及び第2ねん架区間D2は、この調整結果に基づいて定められている。第3決定部38は、第1ねん架区間D1に含まれている各ねん架対象位置を第1ねん架位置と定め、第2ねん架区間D2に含まれている各ねん架対象位置を第2ねん架位置と定める。よって、配電線L100の電圧不平衡率を目標電圧不平衡率以下とできるような、第1及び第2ねん架位置を定めることができる。
【0064】
又、第1決定部36は、各影響度を演算する。第1決定部36は、演算された各影響度に基づいて、配電線L100の三相夫々の線路インピーダンスの偏りに基づく第1原因が、複数の負荷R1乃至R3が接続される配電線L100の二相の偏りに基づく第2原因よりも、配電線L100の電圧不平衡の発生原因としては支配的であることを判別する。第3決定部38は、第1原因が第2原因よりも電圧不平衡の発生原因としては支配的であると第1決定部36が判別した場合(ステップSt12のYES)、第1及び第2電圧不平衡率を演算し、第1及び第2ねん架位置を定める。よって、配電線L100に対してねん架を行うことが配電線L100の電圧不平衡率を低減させるのに効果的である場合にのみ、第1及び第2ねん架位置を定めることができる。
【0065】
尚、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0066】
上記実施形態においては、各ねん架間隔における最大電圧不平衡率と目標電圧不平衡率とに基づいて、ねん架基準間隔を第2決定部37が決定することについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、位置決定装置3に対して第4決定部(不図示)を設けて、配電線L100における各ねん架対象位置の間における線路インピーダンスの値が相互に同等な値となるように、第4決定部がねん架基準間隔(各ねん架対象位置)を決定することとしてもよい。この場合、第3決定部38は、第4決定部の決定結果に基づいて、ねん架位置を決定する。尚、第3決定部38が第4決定部の決定結果に基づいてねん架位置を決定する構成は、第3決定部38が第2決定部37の決定結果に基づいてねん架位置を決定する構成と同様であることとする。