特許第5876468号(P5876468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5876468経皮または経粘膜投与のためのアジュバントおよびこれを含む医薬製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876468
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】経皮または経粘膜投与のためのアジュバントおよびこれを含む医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20160218BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20160218BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   A61K39/39
   A61K39/00
   A61K9/06
   A61K9/14
   A61K9/02
   A61K9/70 401
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-501136(P2013-501136)
(86)(22)【出願日】2012年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2012054544
(87)【国際公開番号】WO2012115222
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-40283(P2011-40283)
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】森本 久美
(72)【発明者】
【氏名】徳本 誠治
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/093772(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/015441(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/013601(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/001671(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0006645(US,A1)
【文献】 Journal of Immunology,1998年,Vol.161,No.7,p3262−3270
【文献】 Microbiology and Immunology,2009年,Vol.53,No.2,p89−100
【文献】 Acta Microbiologica Sinica (Wei Sheng Wu Xue Bao),2010年,Vol.50,No.7,p949−954
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/39
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮または経粘膜投与のための免疫活性増強用アジュバントであって、
免疫活性増強の有効成分が、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オレイン酸モノグリセリンおよびトリアセチンからなる群から選択される1または2以上からなり、抗原投与後に皮膚もしくは粘膜に適用する、前記アジュバント。
【請求項2】
請求項1に記載のアジュバントを含む、医薬製剤。
【請求項3】
経皮または経粘膜投与に用いられる、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、座剤、パップ剤、ローション剤、液剤、含浸剤またはブリスター剤である、請求2または3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
アジュバントが、75〜100重量%で含まれる、請求項2〜4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
マトリックス型もしくは積層型のテープ製剤、またはリザーバー型の製剤である、請求項2〜5に記載の医薬製剤。
【請求項7】
無傷の皮膚もしくは粘膜または物理的もしくは化学的な処理を施された皮膚もしくは粘膜に適用される、請求項2〜6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
物理的もしくは化学的な処理が、レーザー照射、皮膚研磨、またはマイクロニードル、サーマル、超音波、電場、磁場、圧力もしくはアルカリ処理の少なくとも1つである、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
皮膚研磨、マイクロニードルおよび無針注射の少なくとも1つによって適用される、請求項2〜8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
マイクロニードルの針部の一部または全面に抗原および/またはアジュバントをコーティングする、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
角質層のラメラ構造変化、水和、変性、小孔形成、剥離またはバイパス形成の少なくとも1つによって適用される、請求項2〜10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
イオントフォレーシス、ソノフォレーシスまたはエレクトロポレーションの少なくとも1つによって適用される、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
請求項1に記載のアジュバントまたは請求項2〜12のいずれか一項に記載の医薬製剤を含む、キット。
【請求項14】
抗原またはワクチン、および/または抗原投与のための器具を含む、請求項13に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全かつ効率的な皮膚免疫活性増強のためのアジュバントおよび主として経皮または経粘膜投与のための医薬製剤、ならびにそれらを用いた免疫賦活方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、最外層の角質層、表皮、真皮、および皮下組織結合組織からなり、通常、死細胞層および脂質二重層からなる角質層は、多くの物質に対して強力なバリア機能を示す。
表皮層には、ランゲルハンス細胞と呼ばれる抗原提示細胞が存在し、免疫機能を担っている。粘膜もまた、口腔、鼻腔、呼吸器、消化器、生殖器を被う、外部環境との境界であり、皮膚の最外層の角質層がないことを除いては皮膚と同じ構造である。粘膜は、食物摂取、呼吸などを通して種々の異物と接しており、例えば病原微生物にとっては宿主体内へ侵入する主要な経路となっている。そのために、粘膜における免疫防御機構もまた生命バリアとして重要である。
【0003】
ランゲルハンス細胞は、皮膚内に侵入したタンパク質抗原を捕捉し、内部で分解し、MHC分子上にペプチド断片を表出する。MHC−ペプチド複合体は、輸入リンパ管から所属リンパ節の皮質下層へと移動し、指状突起細胞を介してT細胞と接触する。ランゲルハンス細胞が、このように移動することによって、抗原が皮膚からリンパ節内に存在するTH細胞へと効率よく伝えられる。ランゲルハンス細胞は、抗原をTH細胞へ提示するために必要なMHCクラスII分子を豊富に有している。
【0004】
近年のワクチンは、安全性向上を目的として生ワクチンから不活化ワクチン(全粒子、コンポーネントワクチンなど)へシフトしつつあり、感染などのリスクが低減する反面、その免疫効果を補うためにアジュバントの添加を必要とするものが多い。アジュバントとは、抗原に対する免疫応答を増強させる物質であり、ワクチン接種においてはワクチン用量および投与回数の低減、免疫応答の立ち上がりを早める点で非常に有用である。
【0005】
これまでに、アジュバントに関する多くの研究がなされており、いくつかの例としてアルミニウム塩、免疫刺激複合体(ISCOM)、細菌由来物質などが知られている。しかしながら、これらアジュバントの多くは、皮下あるいは筋肉内に直接投与されることが多く、かかる場合接触性過敏症、皮下小結節および肉芽腫などの組織障害を誘発する。したがって、ヒトのワクチン接種などの免疫賦活において、安全かつ効率的な投与の可能なアジュバントおよび製剤に関する要望は高い。
【0006】
アジュバントとしては、弱毒化された病原体またはタンパク質サブユニット抗原を含む多数のワクチン処方物がこれまで多く開発されてきている。従来のワクチン調整物には、大抵の場合、免疫応答を強化するアジュバントを含む。例えば、デポー(Depot)を形成するアジュバントがよく知られている。このアジュバントは、投与された抗原を吸収/または沈降せしめ、注射位置でデポーを形成する。典型的なデポー形成アジュバントとして、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムゲルなどのアルミニウム化合物および水中油エマルジョンなどが挙げられる。
【0007】
しかしながら、デポー形成アジュバントは、抗原性を高める一方で、皮下/または筋肉中に投与された場合、紅斑、接触過敏症、肉芽腫形成などの局所組織障害を惹起するため、使用面における問題がある。さらに、経皮投与においては、アルミニウム塩の吸収性の問題も生じる。このような、アジュバント自身の経皮吸収性の問題は、アジュバントとしての免疫刺激複合体(ISCOM)、細菌由来物質、サイトカイン類においても同様な問題を抱えている。例えば、ムラミルジペプチドは、注射の際に、流感に類似の症状の発熱性反応またはライター症候群、一般的な関節痛、さらに、時には前部ブドウ膜炎、関節炎および尿道炎を引き起こすことなどが知られている。
【0008】
以上のようにこれまでのアジュバントは、皮下投与あるいは筋肉投与時に激しい局所組織障害を引き起こす場合が多かった。そこでこの局所組織障害を回避すべく経皮での投与が考えられたが、これまでのアジュバントは免疫刺激複合体(ISCOM)や細菌由来物質などの巨大分子であるか、アルミニウム化合物などであり、いずれも経皮投与には不向きな化合物ばかりであった。
【0009】
また、最近では透過を高める手段としてイオントフォレーシスあるいはマイクロニードルを装着した装置による外用投与形態の検討も行われているが、巨大分子の抗原に加えアジュバントが吸収性の悪いものであると、抗原とアジュバントを効率よく透過させることができないのが現状である。
【0010】
例えば、特許文献1には、巨大分子抗原の皮膚細胞内への送達方法としてエレクトロポレーションが開示されているが、アジュバントについては記載されていない。
【0011】
特許文献2には、微小突起アレイ、抗原性作用物質および免疫応答増強アジュバントを含有するリザーバを有する皮膚貼付剤、ならびに動物(例えば、ヒト)にワクチン接種するためのそれの使用方法を開示している。しかしながら、同文献に記載されているアジュバントは金属塩や巨大分子(ペプチドなど)のみであって、皮膚透過性を有するアジュバントについては記載されていない。
【0012】
特許文献3には、長鎖脂肪族アルコール、それらとC1〜C6アルカン酸とのエステル、または長鎖脂肪酸とアルカノールおよびポリオールとの特定のエステルが注入によって投与される低分子アジュバントとして開示されている。また、特許文献4には、ヒドロキシ不飽和脂肪酸またはその誘導体であるアジュバントが経口投与されることが記載されている。しかしながら、経皮投与における抗原に対するそれらの免疫応答、とくに抗体価を上昇させることについては具体的に記載されていない。
【0013】
さらに、特許文献5には、抗原と親油性溶媒の混合物を投与する段階と、その投与後にランゲルハンス細胞の遊走の誘導物質を投与する段階からなる局所投与方法が開示されている。しかしながら、同文献の記載によれば、ランゲルハンス細胞の遊走誘導する物質としては、ジブチルフタレートなどの二価の不飽和カルボン酸エステルに限定されている。
【0014】
特許文献6には、コレラ毒素または関連ADP−リボシル化毒素をアジュバントとして含む乾燥製剤が開示されている。かかる製剤において、コレラ毒素または関連ADP−リボシル化毒素のアジュバントが、皮膚を通過し免疫応答を誘導するとされている。一方、このようなアジュバントについては安全性に関する情報が少なく、高分子であることから皮膚に対する透過性も低いうえに、高価であるという欠点がある。
【0015】
特許文献7には、免疫原性組成物を皮内コンパートメントに送達する方法および該方法に使用する賦形剤が記載されている。しかしながら、抗原とは別に投与する免疫賦活アジュバントとしての多価アルコール、およびそれを用いた免疫賦活方法については、記載されていない。
【0016】
特許文献8および9には、経皮または経粘膜投与のためのアジュバントとして脂肪族アジュバント類、遊離脂肪酸および脂肪酸誘導体が開示されている。しかしながら、グリセリンなどの多価アルコール類およびそれら誘導体のアジュバント効果については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特表2002−535100号
【特許文献2】特表2004−538048号
【特許文献3】特表2004−526757号
【特許文献4】WO2002/017961号
【特許文献5】特表2002−512186号
【特許文献6】特表2001−517233号
【特許文献7】特表2007−516968号
【特許文献8】WO2007/015441号
【特許文献9】WO2008/093772号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のとおり、従来の注射などで用いられるアジュバントには、局所組織障害などの問題がある。また、経皮吸収製剤は、注射剤と比較して簡便かつ安全性に優れているのが特徴であるが、経皮的に投与されたアジュバントの作用を効率よく示すような物質、とくに低分子化合物は極めて少ない。さらに臨床の場においても、安価で安全に提供可能なアジュバントが強く望まれている。
したがって、本発明の目的は、経皮または経粘膜投与により皮膚刺激などを誘発することなく安全に投与可能であり、抗原の免疫原性を効率よく増強するための低分子アジュバントおよびその製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行う中で、驚くべきことに、ある種の低分子化合物、とくに、グリセリンなどの多価アルコールおよびそれら誘導体が、経皮または経粘膜投与において強い免疫増強作用を示すのみならず皮膚刺激や組織障害が回避されることを見いだし、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[15]を提供するものである。
[1]多価アルコールまたはその誘導体である、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびトリアセチンからなる群から選択される1または2以上を含む、経皮または経粘膜投与のためのアジュバント。
[2][1]に記載のアジュバントを含む、医薬製剤。

[3]経皮または経粘膜投与に用いられる、[2]に記載の医薬製剤。
[4]軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、座剤、パップ剤、ローション剤、液剤、含浸剤またはブリスター剤である、[2]または[3]に記載の医薬製剤。
[5]アジュバントが、75〜100重量%で含まれる、[2]〜[4]のいずれか一項に記載の医薬製剤。
[6]マトリックス型もしくは積層型のテープ製剤、またはリザーバー型の製剤である、[2]〜[5]に記載の医薬製剤。
[7]無傷の皮膚もしくは粘膜または物理的もしくは化学的な処理を施された皮膚もしくは粘膜に適用される、[2]〜[6]のいずれか一項に記載の医薬製剤。
[8]物理的もしくは化学的な処理が、レーザー照射、皮膚研磨、またはマイクロニードル、サーマル、超音波、電場、磁場、圧力もしくはアルカリ処理の少なくとも1つである、[7]に記載の医薬製剤。
[9]皮膚研磨、マイクロニードルおよび無針注射の少なくとも1つによって適用される、[2]〜[8]のいずれか一項に記載の医薬製剤。
[10]マイクロニードルの針部の一部または全面に抗原および/またはアジュバントをコーティングする、[9]に記載の医薬製剤。
[11]角質層のラメラ構造変化、水和、変性、小孔形成、剥離またはバイパス形成の少なくとも1つによって適用される、[2]〜[10]のいずれか一項に記載の医薬製剤。
[12]イオントフォレーシス、ソノフォレーシスまたはエレクトロポレーションの少なくとも1つによって適用される、[11]に記載の医薬製剤。
[13]抗原投与前または抗原投与後、あるいは、抗原投与と同時に、皮膚もしくは粘膜に適用される、[2]〜[12]のいずれか一項に記載の医薬製剤。
[14][1]に記載のアジュバントまたは[2]〜[13]のいずれか一項に記載の医薬製剤を含む、キット。
[15]抗原またはワクチン、および/または抗原投与のための器具を含む、[14]に記載のキット。
【発明の効果】
【0021】
グリセリンおよびその誘導体は、医薬品としての実績があり、注射剤としても使用前例のある安価で、安全性の高いものである。これまで、経皮または経粘膜投与においては、特許文献8および9に記載されるような経皮吸収性の高い脂肪族アルコールや脂肪酸によってのみアジュバント効果が得られると考えられていたが、本発明者らによって、本発明の多価アルコール類およびそれら誘導体においても、経皮または経粘膜投与におけるアジュバント効果を奏することが示された。
【0022】
以上のとおり、本発明によれば、経皮または経粘膜投与において強い免疫増強作用を有し、かつ皮膚刺激や組織障害を与えることがない安全なアジュバントが提供される。また、本発明のアジュバントは、透過または吸収促進剤としてのアジュバントとは異なり、高濃度で皮膚などに適用することによって、さらに優れた免疫増強効果を奏する。したがって、本発明のアジュバントは、経皮または経粘膜投与のための皮膚刺激の少ないアジュバントとして、とくに優れている。
【0023】
また、本発明のアジュバントは、透過または吸収促進剤としてのアジュバントとは異なり、抗原と混合して投与する必要はなく、抗原とは異なる経路で投与することができる。とくに、本発明のアジュバントを、抗原またはワクチンとは独立して経皮または経粘膜で投与することにより、優れたアジュバント効果を得ることができる。したがって、アジュバントの投与時には抗原などの投与量およびその他の条件を考慮する必要がなく、アジュバント自体の濃度、適用時間、および投与量などを自在に選択することもできる。さらに、抗原などの投与時に発生する投与部位の腫脹や、投与時にともなう疼痛を回避することができる。
【0024】
また、アジュバントと抗原などを混合して投与する場合には、他の生理活性物質や配合剤に対する免疫原性が高まり、それらに対する感作などが生じる可能性を考慮しなければならない。したがって、アジュバントを混合して投与する場合に比べて、安全性や有用性が非常に高いといえる。
【0025】
さらに、本発明の経皮または経粘膜吸収用のアジュバントは低融点、低分子量であるため高い経皮または経粘膜吸収性を示すことから、種々の経皮吸収製剤、例えば液剤、貼付剤、軟膏剤、ゲル剤、含浸剤、クリーム剤、ローション剤などへの製剤適用が可能であり、安価に提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明アジュバントのIgG抗体価上昇効果を示す。
図2図2は、本発明アジュバント(グリセリン)のアジュバント効果を示す。
図3図3は、OVA抗原皮内注射適用およびマイクロニードル適用による、本発明のアジュバント効果を示す。
図4図4は、本発明のアジュバントのOVA抗原皮内注射適用およびマイクロニードル適用による、IgG抗体価の経時推移を示す。
図5図5は、本発明のアジュバント(グリセリンおよびグリセリン誘導体)のアジュバント効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のアジュバントには、多価アルコールまたはその誘導体である、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびトリアセチンからなる群から選択される1または2以上が含まれる。本発明のアジュバントに使用するポリエチレングリコール(例えば、マクロゴール400)は、好ましくは、平均分子量が200〜4000であり、さらに好ましくは200〜1000である。また、オレイン酸モノグリセリンなどの多価アルコール誘導体も使用することができる。
【0028】
本発明のアジュバントは、低分子であることが好ましく、グリセリンおよびその誘導体のように直鎖の炭素数が3であることがとくに好ましい。
また、式I
CH(CHRCH (I)
式中、R、R、Rは、それぞれ相互に独立して、H、OH、OCORから選択され、
nは、0、1または2であり、
nが2であるとき、Rは同一でも異なってもよく、
は、直鎖または分枝の炭素原子数1〜3のアルキル基、または直鎖または分枝の炭素原子数2または3のアルケニル基またはアルキニル基であり、
ただし、2以上のR、RおよびRが、同時にHではない、
で示される化合物であってもよい。
【0029】
本発明のアジュバントは、単独あるいは組み合わせてのいずれにおいても用いることができる。とくに、アジュバント間の相乗効果がある場合には、これらを組み合わせて用いるとよい。他の場合には、アジュバントを単独で用いてもよいが、目的に応じて、組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明のアジュバントは、とくに経皮または経粘膜投与により簡便に抗原効果を高めることができ、アジュバント自体に抗原効果を高める効果を有する。したがって、抗原またはワクチンなどとは異なる投与形態、または独立した経路で投与することができる。
【0031】
さらに、本発明のアジュバントは、抗原などとは異なるタイミングまたは手順で投与することができ、抗原投与前、抗原投与時、または抗原投与後に、同一または異なる投与形態で本発明のアジュバントを投与することができる。したがって、抗原などの投与形態などを選ぶことなく、対象の適した部位に、好ましい時期に適用することができる。
【0032】
本発明のアジュバントは、医薬製剤に含有させて使用することもでき、製剤中に様々な濃度で用いることができる。本発明のアジュバントは、医薬製剤中に高濃度で用いることが好ましい。本発明のアジュバントは、製剤中に50〜100重量%でも使用することができるが、好ましくは75〜100重量%、より好ましくは85〜100重量%、さらに好ましくは95〜100重量%である。
【0033】
また、本発明のアジュバントは、医薬製剤中に75重量%以上の濃度にすることによって、とくに優れた免疫賦活効果を示す。そのため、本発明のアジュバントの高濃度での使用によって、製剤中に用いられる賦形剤などの他の成分との効果の違いが明確なものとなる。
【0034】
本発明のアジュバントは、従来から用いられている経皮投与製剤に含有せしめることによって、外用形態の医薬製剤における非侵襲的体内投与が可能となる。かかる医薬製剤の形態としては、本発明のアジュバントが含まれる剤型であって、該アジュバントを経皮的に投与できる形態が好ましく、パップ剤、パッチ製剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤、含浸剤、ローション剤などから必要に応じて選択できる。
なお、本明細書においてパッチ製剤にはマトリックス型、積層型のテープ製剤およびリザーバー型の製剤が包含され、これらのうち、マトリックス型テープ製剤およびリザーバー型製剤が好ましく用いられ、マトリックス型テープ製剤がとくに好ましく用いられる。
【0035】
含浸剤または含浸製剤とは、活性成分を含む液剤をパッドに含浸して保持させた状態で、粘着カバー材でパッド部を覆う製剤である。その組成は、とくに限定されないが、支持体、液剤に対する不浸透性の裏あて部材(フィルム)、粘着カバー剤、パッド、およびライナーなどを含んでもよく、パッド部に含浸させた液剤、軟膏またはゲルなどを安定に保持可能な製剤とすることができる。また、ブリスター容器などに液剤などを保持させた状態で保管し、適用時にパッド部に含浸させる製剤もこれに含まれる。
【0036】
なお、本発明に示されるパッドとは、ガーゼ、脱脂綿などの天然織物部材、ポリエステル、ポリエチレン、ポリビニルなどの合成繊維織物部材、およびパルプなどを用いることができ、これらを組み合わせて織布、不織布など加工して使用することができる。
【0037】
本発明のアジュバントまたは医薬製剤は、免疫賦活方法のためのキットとすることもできる。本発明のキットには、本発明のアジュバントまたは医薬製剤が含まれていればよく、抗原またはワクチン、もしくは抗原投与のための器具を含んでもよい。抗原投与のための器具は、例えば、マイクロニードルまたは注射器などの投与器具とすることができる。
【0038】
好ましくは、本発明のキットは、本発明のアジュバントまたは医薬製剤、抗原またはワクチン、もしくは抗原投与のための器具を含む。本発明のキットの一態様として、例えば、針部に抗原をコーティングしたマイクロニードルおよび本発明のアジュバントを含有するパッチ製剤を含むキットとすることができる。
【0039】
本発明の一側面によれば、本発明のアジュバントまたは医薬製剤を用いる免疫賦活方法または免疫調節方法を提供する。とくに、本発明の方法は、抗原またはワクチンなどの免疫原性を高め、抗体価を上昇させることに優れている。本発明の方法において、本発明のアジュバントまたは医薬製剤の適用は、好ましくは経皮または経粘膜による投与形態で行われる。
【0040】
本発明の免疫賦活方法または免疫調節方法は、抗原またはワクチンと同時に投与しても、時間差で投与してもよい。また、本発明の方法は、本発明のアジュバントと抗原とを混合しないで、別経路で投与することが好ましい。したがって、抗原またはワクチンとは異なる投与形態または独立した経路で、本発明のアジュバントまたは医薬製剤を適用してもよい。
また、本発明のアジュバントまたは医薬製剤を適用する部位は、抗原などを適用する部位または領域と同一であっても、異なっていてもよい。
【0041】
とくに限定はされないが、好ましい投与形態の組み合わせとしては、抗原などを皮下注射または穿刺投与し、アジュバントなどを経皮または経粘膜で投与する方法である。さらに、マイクロニードルなどの投与器具を使用した場合には、投与器具を適用したまま、本発明のアジュバントなどを適用することもできる。
【0042】
本明細書において、マトリックス型テープ製剤とは、テープ製剤のうち、粘着性を備えた本質的にゴム状(ガラス状)ポリマーまたはゲルを含む基剤中に薬理活性物質を分散・含有してなる粘着剤層を有するものをいい、粘着剤層の一方の面に支持体、他方の面に剥離ライナーを備える。また、積層型テープ製剤とは、テープ製剤のうち、複数の、粘着性を備えた基剤中に薬理活性物質を分散・含有してなる粘着剤層を有し、粘着剤層の一方の面に支持体、他方の面に剥離ライナーを貼り合わせたものをいう。リザーバー型製剤とは、薬理活性物質を貯蔵するリザーバーを有し、このリザーバーの一方の面に薬剤に対して不浸透性の裏あて部材(支持体)を備え、他方の面に剥離ライナー、あるいは、薬剤浸透性の粘着剤層および剥離ライナーを備えるものをいう。
また、かかる経皮または経粘膜投与製剤は、基剤として溶解剤、溶解補助剤、pH調整剤、防腐剤、吸収促進剤、安定化剤、充填剤、増粘剤、粘着剤、湿潤剤などの任意の成分を、本発明のアジュバントとを組み合わせたものを用いることによって、常法により製造することができる。また、本発明の医薬製剤のうち、他の剤型の医薬製剤も、常法により製造することができる。
【0043】
例えば、本発明の経皮または経粘膜投与製剤における基剤の成分のうち、増粘剤としては、水分を30〜80%安定に保持でき、かつ保水性を有することが好ましい。この具体例としては、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム(アカシアガム)、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、澱粉などの植物系、ザンサンガムなどの微生物系、ゼラチン、コラーゲンなどの動物系などの天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプンなどのデンプン系の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレートなどのビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどのアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体などの合成高分子などの水溶性高分子などが好適に用いられる。とくに、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。ゲル強度が強く、かつ保水性に優れるからである。さらに、平均重合度20000〜70000のポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。平均重合度が20000より小さくなると増粘効果が乏しくなり十分なゲル強度が得られなくなる傾向があり、平均重合度が70000より大きくなると増粘効果が強すぎ作業性が低下する傾向にある。
また、前記水溶性高分子を2種類以上併用することにより、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムの強イオン高分子と高分子コンプレックスを形成し、より一層ゲル強度の大きい弾性ゲルを得ることができる。
【0044】
グリセリンおよびプロピレングリコールなどは、湿潤剤としての効果も奏するが、必要に応じて、さらにソルビトールなどの多価アルコールなどを湿潤剤として使用してもよい。また、充填剤として、カオリン、酸化亜鉛、タルク、チタン、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを添加してもよい。湿潤剤や充填剤の配合量は、粘着剤層の組成全体に基づき合計で0.1〜30重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましい。
また、溶解補助剤または吸収促進剤として、炭酸プロピレン、クロタミトン、l−メントール、ハッカ油、リモネン、ジイソプロピルアジペートなどや、薬効補助剤として、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、チモール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキスなどを添加してもよい。さらに、必要に応じて、安定化剤や抗酸化剤、乳化剤、界面活性剤などを添加してもよい。
【0045】
本発明において界面活性剤とは、非イオン性活性剤、イオン性活性剤(カチオン、アニオン、両性)のいずれでもよいが、安全性の面から通常医薬品基剤に用いられる非イオン性活性剤が望ましい。さらに詳しくは、ショ糖脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0046】
本発明の経皮投与製剤には、その他必要に応じて、架橋剤や重合剤などを添加してもよい。膏体を強固にするとともに保水性を持たせることができる。この架橋剤や重合剤は、増粘剤などの種類に応じて適宜選択される。例えば、増粘剤にポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩を適用した場合は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物、Ca、Mg、Alなどの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの無機酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、ステアリン酸塩などの有機酸塩、酸化亜鉛、無水珪酸などの酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物などの多価金属化合物などが好適に用いられる。
【0047】
また、増粘剤にポリビニルアルコールを適用した場合は、アジピン酸、チオグリコール酸、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン)、アルデヒド類、N−メチロール化合物、Al、Ti、Zr、Sn、V、Cu、B、Crなどの化合物の錯化物などが好適に用いられる。
また、増粘剤にポリビニルピロリドンを適用した場合は、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリアシッド化合物またはそのアルカリ金属塩(ポリアクリル酸やタンニン酸およびその誘導体)などが好適に用いられる。また、増粘剤にポリエチレンオキサイドを適用した場合は、パーオキサイド、ポリスルホンアザイドなどが好適に用いられる。
【0048】
また、増粘剤にメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を適用した場合は、多官能ヒドロキシ化合物、ポリアミン、ヨウ素、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、鉄、水銀、鉛塩などが好適に用いられる。増粘剤にゼラチンを適用した場合は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプンなどのアルデヒド類、グリオキサール、ブタジエンオキシドなどのジエポキシド類、ジビニルケトンなどのジケトン類、ジイソシアネート類などが好適に用いられる。また、増粘剤にポリアクリル酸ナトリウムを適用した場合、架橋剤として、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ほう酸ナトリウムなどの多価金属塩が添加されるのが好ましい。
とくに、亜鉛塩、アルミニウム塩が好ましい。架橋反応が促進されるからである。架橋剤として添加される多価金属塩の濃度は、増粘剤(または水溶性高分子)1当量に対し0.5〜1.5当量が好ましい。多価金属塩の濃度を0.5当量以上とすることによって、反応が促進されてゲル強度が高くなり、多価金属塩の濃度を1.5当量以下とすることによって、反応を適度な速度において行わせしめ、ゲル化を均一とし、作業性が向上するからである。
【0049】
本発明の貼付剤に用いられる粘着剤としては、アクリル系高分子またはゴム系の高分子が好ましい。アクリル系高分子としては、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレートなどに代表される(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも一種含有させて共重合したものであればとくに限定されないが、好ましくは2−エチルヘキシルアクリレートを50%以上含有するものが望ましい。具体的な粘着剤としては、医薬品添加物事典2000(日本医薬品添加剤協会編集)に粘着剤として収載されているアクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体溶液、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂アルカノールアミン液に包含されるアクリル系高分子などの粘着剤、DURO−TAKアクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)、オイドラギットシリーズ(樋口商会)などを使用することができる。
【0050】
ゴム系の高分子としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、SISと略記する)、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(以下、PIBと略記する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、SBSと略記する。)、スチレン−ブタジエンゴム(以下、SBRと略記する)、ポリシロキサンなどが挙げられ、その中でも、SIS、PIBおよびポリシロキサンが好ましく、とくにSIS、PIBが好ましい。
このような疎水性高分子は2種以上混合して使用してもよく、これら高分子の組成全体の重量に基づく配合量は、粘着剤層の形成および充分な皮膚への透過性を考慮して、5〜90重量%であることが好ましく、さらに10〜70重量%であることが好ましい。
【0051】
本発明の貼付剤の粘着マトリクス(粘着剤層)には可塑剤を配合してもよい。使用され得る可塑剤としては、石油系オイル(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなど)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油)、シリコンオイル、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、液状ゴム(例えば、ポリブテン、液状イソプレンゴム)、液状脂肪酸エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル)、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトンなどが挙げられる。その中でも、流動パラフィン、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシルが好ましく、とくに、液状ポリブテン、ミリスチン酸イソプロピルおよび流動パラフィンが好ましい。
【0052】
これらの成分は2種以上を混合して使用してもよく、このような可塑剤は、充分な皮膚への透過性および貼付剤としての充分な凝集力の維持を考慮して、粘着剤層の組成全体に基づき合計で、10〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%の量で配合することができる。
【0053】
本発明の貼付剤の粘着マトリクス(粘着剤層)には、粘着力が不足している場合には粘着付与樹脂を配合することが望ましく、使用され得る粘着付与樹脂としては、ロジン誘導体(例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステルなど)、脂環族飽和炭化水素樹脂(例えばアルコンP100、荒川化学工業)、脂肪族系炭化水素樹脂(例えばクイントンB170、日本ゼオン)、テルペン樹脂(例えばクリアロンP-125ヤスハラケミカル)、マレイン酸レジンなどが挙げられる。とくに水添ロジンのグリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂が好ましい。
このような粘着付与樹脂は、貼付剤としての充分な粘着力および剥離時の皮膚への刺激性を考慮して、粘着剤層の組成全体に基づき5〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%の量で配合することができる。
【0054】
本発明の貼付剤の粘着マトリクス(粘着剤層)には吸収促進剤を含有させてもよく、使用され得る吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物であればいずれでもよいが、例えば、炭素数6〜20の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、アミド、またはエーテル類、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステルまたはエーテル(以上は飽和、不飽和のいずれでもよく、また、環状、直鎖状、分枝状のいずれでもよい)、さらに、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン(Azone)誘導体、ピロチオデカン、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類(Span系)、ポリソルベート系(Tween系)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系(HCO系)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油などが挙げられる。
【0055】
このような吸収促進剤は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよく、貼付剤としての充分な皮膚への透過性および発赤、浮腫などの皮膚への刺激性などを考慮して、粘着剤層の組成全体の重量に基づいて、好ましくは0.01〜40重量%、さらに好ましくは0.05〜10重量%、とくに好ましくは0.1〜5重量%で配合することができる。
【0056】
また、本発明のアジュバントは、免疫賦活効果を得るためにも、抗原とは別に投与することが好ましいが、抗原とともに体内に投与することも可能である。この場合においても、抗原が経皮投与可能であれば、アジュバントと抗原とを含有する経皮的な非侵襲性製剤とすることができる。この経皮投与製剤の形態としては、パップ剤、パッチ製剤、軟膏剤、クリーム剤、液剤、含浸剤、ゲル剤、ローション剤などの経皮投与製剤を必要に応じて選択でき、抗原および低分子アジュバントが含まれる剤型で経皮から投与できる形態であればとくに限定されないが、含浸剤が好ましい。前記のとおり、本明細書においてパッチ製剤にはマトリックス型、積層型のテープ製剤およびリザーバー型のパッチ製剤が包含される。
【0057】
また、かかる経皮製剤も、基剤として溶解剤、溶解補助剤、pH調整剤、防腐剤、吸収促進剤、安定化剤、充填剤、増粘剤、粘着剤などの任意の成分を用い、抗原および本発明のアジュバントとを組み合わせることによって、常法により製造することができる。なお、基剤には前記吸収促進剤として、アジュバントおよび/または抗原の皮膚透過性を高めるものを含むことができるが、かかる吸収促進剤を含まなくても、本発明のアジュバントは抗原の免疫原性を増強することができる。
一方、併用される抗原が十分な経皮もしくは経粘膜活性を有していない場合には、本発明のアジュバントのみを経皮もしくは経粘膜投与し、併用される抗原は非経皮的もしくは非経粘膜的に投与してもよく、例えば、注射による投与、経口による投与が考えられる。
【0058】
本発明の医薬製剤の好ましい投与方法は、抗原を非経皮的もしくは非経粘膜的に投与する前または後に、あるいは、投与するのと同時に、本発明のアジュバントを含有する医薬製剤(とくに好ましくはパッチ製剤)を適用することである。とくに好ましくは、抗原を非経皮的もしくは非経粘膜的に投与した後に本発明の医薬製剤を適用することであり、かかる場合には抗原を投与しながら、本発明の医薬製剤を継続して貼付することができる。例えば、抗原をマイクロニードルなどで投与したまま、本発明の医薬製剤を適用してもよい。また、抗原を非経皮的もしくは非経粘膜的に投与する前に、本発明の医薬製剤を貼付した場合には、抗原投与時、さらに抗原投与後においても本発明の医薬製剤を継続して貼付してもよい。
【0059】
上記抗原とアジュバントとの併用製剤における抗原とアジュバントの配合量は、抗原とアジュバントの組み合わせによって適宜決定することができ、限定されるものではないが、高濃度のアジュバントを使用することが好ましい。
また、かかる製剤中におけるアジュバントの含量もとくに限定されることはなく、経皮経路により十分な抗原免疫応答を誘起せしめる量であればよいが、高濃度のアジュバントであることが好ましい。
【0060】
なお、本明細書において、抗原とは、免疫細胞上の抗原レセプターに結合し、免疫応答を惹起する物質を意味し、例としては、とくに限定されることなく、ポリヌクレオチド(DNAワクチン、RNAワクチン)、タンパク質ベースのワクチンなどが挙げられる。具体的には、タンパク質、多糖、オリゴ糖、リポタンパク質、弱毒化もしくは不活性化した、サイトメガロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、風疹ウイルスおよび水痘帯状疱疹のようなウイルス、弱毒化もしくは不活性化した、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、グループA連鎖球菌属、レジオネラ・ニューモフィラ菌、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎連鎖球菌、梅毒トレポネーマおよびコレラ菌のような細菌、ならびにそれらの混合物の形態の抗原が包含される。
【0061】
商業的に入手可能な、抗原性作用物質を含有するワクチンもまた、本発明において用いることができる。そして、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳ワクチンおよびジフテリアワクチン、さらには、癌、動脈硬化、神経疾患、アルツハイマーなどのワクチン療法で使用される抗原も包含される。
【0062】
また、抗原は、抗原性(感作性)を有するアレルゲン物質であってもよく、多種多様な金属、化学物質がそれにあたる。例えば、アトピー性皮膚炎の抗原を明らかにするアレルギー検査および治療の場合は、ホコリ、不活化ダニなどのハウスダスト、各種の花粉などが使用されてもよい。また、T細胞性介在性の自己免疫疾患または症状に関連する炎症性T細胞により認識される抗原も包含される。
【0063】
これらの抗原の投与経路はとくに限定されないが、経口、注射(筋肉内、皮下、皮内)による投与方法や経粘膜、経皮投与が挙げられる。経皮投与の場合は、抗原の皮膚透過性と必要な投与量に応じた経皮投与手段が選択される。
【0064】
本発明のアジュバントを経皮もしくは経粘膜投与手段で投与することによって、皮膚もしくは粘膜のランゲルハンス細胞が活性化され、皮膚もしくは粘膜からリンパ節内に存在するTH細胞へと効率よく伝えられることにより高い免疫応答が完成される。このことにより、外用医薬品、化粧品あるいはアレルゲン物質の抗原性の簡便な評価や、感染症、癌、アレルギーなどの、ワクチンによる予防または治療、T細胞介在性の自己免疫疾患の治療などが可能となる。
【0065】
本発明の医薬製剤の好ましい投与方法は、抗原を投与する前または後、あるいは、抗原を投与するのと同時に、本発明アジュバント医薬製剤を経皮または経粘膜投与する方法であり、より好ましくは、抗原を投与した後に、本発明のアジュバントを含有する医薬製剤を貼付することである。なお、抗原を投与する前に、本発明の医薬製剤を貼付した場合には、抗原投与時、さらに抗原投与後においても本発明の医薬製剤を継続して貼付してもよい。
【0066】
本発明の医薬製剤の貼付時間は、貼付を抗原投与前または抗原投与後にした場合であっても、あるいは、抗原投与と同時にした場合であっても、本発明のアジュバントが皮膚もしくは粘膜を充分に透過してその効果を充分に発揮できる時間であればとくに限定されないが、好ましくは0.1〜96時間、より好ましくは0.5〜48時間、とくに好ましくは2〜24時間である。
【0067】
本発明のアジュバントを含む医薬製剤は、無傷の皮膚もしくは粘膜に適用することができるが、さらに経皮的もしくは経粘膜的な吸収性を上げることを目的として、皮膚研磨処理もしくは粘膜研磨処理、マイクロニードルによる処理、レーザー照射、サーマル処理、電場処理、磁場処理、圧力処理、あるいはアルカリ処理などの物理的または化学的処理を施した皮膚もしくは粘膜に適用することも可能である。さらにまた、イオントフォレーシス、エレクトロポレーション、ソノフォレーシス(超音波)などのデバイスを用いる方法、マイクロカニューレ、マイクロニードル、無針注射などを装着した装置による経皮もしくは経粘膜投与形態を取ることによって、さらに高い効率で、安全性の高い抗原に対する免疫応答を完成させることができる。
【0068】
これらの中でも、研磨、マイクロニードル、または無針注射により経皮もしくは経粘膜投与を行うのがとくに好ましい。また、上記投与形態はとくに限定されず、抗原の皮膚もしくは粘膜への透過性や必要とされる投与量に応じて最適な投与手段を選択することができる。
【0069】
また、他の好ましい本発明の医薬製剤の投与方法は、針部の一部または全面に、抗原および本発明のアジュバントを担体などの基剤とともに含む本発明の医薬製剤をコーティングしたマイクロニードルを用いて投与する方法である。
また、抗原を、マイクロニードルの針部の一部または全面にコーティングすることにより、マイクロニードルを用いて投与し、本発明のアジュバントを含む医薬製剤は、マイクロニードルによって投与せずに、皮膚もしくは粘膜に塗布または貼付するなどして、抗原投与前もしくは抗原投与後に皮膚もしくは粘膜に適用してもよく、また、抗原投与と同時に皮膚もしくは粘膜に適用することも可能である。
例えば、マイクロニードルの針部へのコーティングの記載は、特表2004−504120号公報、特表2004−528900号公報、WO2005/016440などにある。
【0070】
本発明の医薬製剤を用いた免疫賦活の好ましい方法の1つは、マイクロニードルの針部の一部または全面に抗原をコーティングすることにより、抗原をマイクロニードルを用いて投与し、抗原を投与する前または後に、あるいは抗原を投与するのと同時に、本発明のアジュバントを含む医薬製剤を経皮または経粘膜投与する方法である。より好ましくは、マイクロニードルの針部の一部または全面に抗原をコーティングすることにより、抗原をマイクロニードルを用いて投与した後に、本発明のアジュバントを含有する医薬製剤を貼付することである。
【0071】
さらにまた、マイクロニードルの針部の一部または全面に抗原をコーティングすることにより、抗原をマイクロニードルを用いて投与し、本発明の医薬製剤を抗原投与と同時または抗原投与後に皮膚もしくは粘膜に投与する方法のうち、とくに好ましいものとしては、抗原投与をマイクロニードルによる穿刺投与により行い、穿刺されるそのマイクロニードル全体を本発明の医薬製剤が皮膚もしくは粘膜上で覆うように適用する(投与する)ことにより、本発明のアジュバントを含む医薬製剤をワンステップで抗原と共に投与する方法が挙げられる。
【0072】
かかる方法においては、抗原投与に用いられるマイクロニードルが皮膚もしくは粘膜に穿刺される際に、その穿刺されるマイクロニードルの針のない側の基盤面と、該基盤面の周囲に隣接するマイクロニードルが穿刺されない部分の皮膚もしくは粘膜とが、本発明の医薬製剤によって共に覆われて安定に固定されることにより、簡便かつ確実な投与が実現される。
【0073】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。
【0074】
(実施例1)
雌性8週齢のヘアレスラット背側部を剃毛し、(i)マイクロニードル(OVA)適用群、(ii)マイクロニードル(OVA)適用+アジュバント候補適用群に分けた。マイクロニードルは針先端部にOVA抗原20μgをコーティングし、30分間穿刺投与した(コーティング液はOVA/プルラン溶液とし、針長約500μm、625本/cmのポリ乳酸製マイクロニードルを使用した)。さらに(ii)の群では、マイクロニードル30分間穿刺投与後、穿刺部位に各アジュバント候補(グリセリン、エタノール、およびグリセリン/エタノール(1/1)混液)を6時間経皮投与した。各アジュバント候補適用方法は、グリセリン、エタノール、およびグリセリン/エタノール(1/1)混液についてはパッチテスト用テープ;スモールサイズ(鳥居薬品)のパット部に各アジュバント候補原液を120μL含浸させたものを貼付した。いずれの群もコーバンおよびスキナゲートで固定した。
抗原およびアジュバント投与は0、2、4週間後、採血は2、4、5週間後に行い、OVA特異的IgG抗体価をELISAにて測定した(図1に5週間後の各抗体価を示す)。
【0075】
また、本実施例中に示すグリセリンは、特別な記載がない限り全て濃グリセリン(Merck)を使用した。
図1に示すとおり、OVAを単独でマイクロニードル投与する群と比較して、アジュバント候補適用群ではいずれも顕著に高いIgG抗体価を示しており、グリセリン、エタノール、およびグリセリン/エタノール:1/1混液のいずれも高いアジュバント効果を有することが確認された。
【0076】
(実施例2)
上記(ii)マイクロニードル(OVA)適用+アジュバント候補適用群において、各アジュバント剥離24時間後の皮膚状態を観察し、皮膚刺激の程度をスコアで評価した(表1)。
表1に示すとおり、ラウリルアルコール(テープ)適用群は剥離直後にはほとんど刺激が認められないものの、剥離24時間後に若干の鱗屑が認められる個体が存在した。また、エタノール適用群では壊死を伴う顕著な皮膚刺激、エタノール/グリセリン混液適用群でもそれに準ずる皮膚刺激が認められた。これに対し、グリセリン適用群では皮膚刺激は認められず、グリセリンは顕著な抗体価上昇効果を有しながら皮膚刺激リスクの少ない、優れたアジュバントであることが認められた。
なお、前記のラウリルアルコール40%配合テープ製剤(マトリックス型テープ製剤)は、4.0gのLA(日油)、13.3g(乾燥重量6.0g)のDURO−TAK 87−2194(Henkel社製アクリル系粘着剤)を混合、剥離ライナー上に展膏し、80℃15分間乾燥させて厚み50μmとした後、支持体を付着させて製造した。
【表1】
【0077】
(実施例3)
雌性8週齢のヘアレスラット背側部を剃毛し、(i)マイクロニードル(OVA)適用群、(ii)マイクロニードル(OVA)適用+アジュバント候補適用群に分けた。マイクロニードルは針先端部にOVA抗原20μgをコーティングし、30分間穿刺投与した(コーティング液はOVA/プルラン溶液とし、針長約500μm、625本/cmのポリ乳酸製マイクロニードルを使用した)。さらに(ii)の群では、マイクロニードル30分間穿刺投与後、穿刺部位にアジュバント候補としてグリセリン(Merck)、グリセリン(花王)、スクワレン、コントロールとして精製水を用い、パッチテスト用テープ;スモールサイズ(鳥居薬品)のパット部に各アジュバント候補原液を120μL含浸させたものを6時間貼付した。いずれの群もコーバンおよびスキナゲートで固定した。
【0078】
抗原およびアジュバント投与は0、2、4週間後、採血は2、4、5週間後に行い、OVA特異的IgG抗体価をELISAにて測定した(図2に5週間後の各抗体価を示す)。
図2に示すとおり、グリセリンによるアジュバント効果はメーカーを変更した場合も同様に確認された。本発明に用いたグリセリンは濃グリセリン(Merck:純度99.0%以上, 花王:純度98.0%以上)であり、アジュバント効果は不純物の影響によるものではなく、グリセリン自体が有するものと推測される。
また、グリセリン同様に刺激が認められず、他社でアジュバントとしての使用実績を有するスクワレンはコントロールと同様の低いIgG抗体価を示した。このことより、グリセリンの優れたアジュバント効果が確認された。
【0079】
(実施例4)
雌性8週齢のヘアレスラット背側部を剃毛し、(i)皮内注射(OVA)適用群、(ii)皮内注射(OVA)適用+グリセリン適用群、(iii)マイクロニードル(OVA)適用群、(iv)マイクロニードル(OVA)適用+グリセリン適用群に分けた。(i)および(ii)は皮内にOVA 20μg/50 mL(生理食塩水)を投与した。(iii)および(iv)はマイクロニードル針先端部にOVA抗原20μgをコーティングし、30分間穿刺投与した(コーティング液はOVA/プルラン溶液とし、針長約500μm、625本/cmのポリ乳酸製マイクロニードルを使用した)。さらに(ii)および(iv)の群では、マイクロニードル30分間穿刺投与後、穿刺部位にパッチテスト用テープ;スモールサイズ(鳥居薬品)のパット部にグリセリンを120μL含浸させたものを6時間貼付した。いずれの群もコーバンおよびスキナゲートで固定した。
【0080】
抗原およびアジュバント投与は0、2週間後、採血は2、4週間後に行い、OVA特異的IgG抗体価をELISAにて測定した(図3に4週間後の各抗体価、図4に抗体価の経時推移を示す)。
図3に示すとおり、OVA抗原皮内注射適用の場合と比較して、マイクロニードル適用ではグリセリンのアジュバント効果がより顕著に示された。また図4に示すように、皮内注射群ではグリセリン併用時も2週間後にIgG抗体が検出されなかったが、マイクロニードル群にグリセリンを併用することにより、2週間後からIgG抗体価の上昇が認められた。
よって、グリセリンによるアジュバント効果はマイクロニードルで抗原投与することによってより顕著に得られ、IgG抗体価の立ち上がりもより早いことが示された。
【0081】
(実施例5)
雌性8週齢のヘアレスラット背側部を剃毛し、(i)マイクロニードル(OVA)適用群、(ii)マイクロニードル(OVA)適用+アジュバント候補(グリセリンまたはグリセリン誘導体)適用群に分けた。マイクロニードルは針先端部にOVA抗原20μgをコーティングし、30分間穿刺投与した(コーティング液はOVA/プルラン溶液とし、針長約500μm、625本/cmのポリ乳酸製マイクロニードルを使用した)。さらに(ii)の群では、マイクロニードル30分間穿刺投与後、穿刺部位にアジュバント候補としてグリセリンの他に、グリセリン誘導体および多価アルコールとしてプロピレングリコール(PG)、マクロゴール400、オレイン酸モノグリセリン(GMO)またはトリアセチンを用い、パッチテスト用テープ;スモールサイズ(鳥居薬品)のパット部に各アジュバント候補原液を120μL含浸させたものを6時間貼付した。いずれの群もコーバンおよびスキナゲートで固定した。
抗原およびアジュバント投与は0、2、4週間後、採血は2、4、5週間後に行い、OVA特異的IgG抗体価をELISAにて測定した(図5に5週間後の各抗体価を示す)。
【0082】
図5に示すとおり、OVAを単独で投与する群と比較して、グリセリン、グリセリン誘導体および多価アルコールをアジュバントとして投与した群ではいずれも明らかなIgG抗体価の上昇が認められた。なかでも、炭素数3のグリセリン、PG、およびトリアセチン(グリセリンの3つのOH基を全てアセチル化)において、高いアジュバント効果が示された。
【0083】
ポリエチレングリコール系のマクロゴール400およびグリセリンの炭素1つに長鎖炭化水素(C18)がエステル結合したGMOでは、グリセリンなどの低分子に準ずるアジュバント効果が得られた。よってグリセリン、グリセリン誘導体および多価アルコールにおいて、より皮膚移行性がよく、アジュバント効果が高いことが考えられる。
また、グリセリンのみならず、これらグリセリン誘導体においても皮膚刺激性は認められず、高いアジュバント効果を有しながら安全性の高いアジュバントとなり得ることが示された。
【0084】
(実施例6)
雌性8週齢のヘアレスラット背側部を剃毛し、マイクロニードル(OVA)適用+アジュバント(0、25、75%グリセリン溶液)適用を行った。マイクロニードルは針先端部にOVA抗原として20μgをコーティングし、30分間穿刺投与した(コーティング液はOVA/プルラン溶液とし、針長約500μm、625本/cmのマイクロニードルを使用した)。その後、パッチテスト用テープ;スモールサイズ(鳥居薬品)のパット部に各アジュバント溶液120μLを含浸させたものを6時間貼付した。いずれの群もコーバンおよびスキナゲートで固定した。
抗原およびアジュバント投与は0、2週間後、採血は2、4週間後に行い、OVA特異的IgG抗体価をELISAにて測定した(表2に4週間後の各抗体価を示す)。
【表2】
【0085】
表2に示すとおり、グリセリン濃度75重量%で優れたアジュバント効果が確認された。なお、グリセリン濃度100重量%では、とくに顕著なアジュバント効果が得られる。
【0086】
(実施例7)
雌性8週齢のヘアレスラット背側部を剃毛し、(i)マイクロニードル(OVA/プルラン/41%グリセリン混合)適用群、(ii)マイクロニードル(OVA)適用+アジュバント(100%グリセリン)適用群に分けた。マイクロニードルは針先端部にOVA抗原として20μgをコーティングし、30分間穿刺投与した(コーティング液はOVA/プルラン溶液とし、針長約500μm、625本/cmのマイクロニードルを使用した)。また、(ii)の群では、マイクロニードル30分間穿刺投与後、10分間静置してから、パッチテスト用テープ;スモールサイズ(鳥居薬品)のパット部にアジュバント溶液120μLを含浸させたものを6時間貼付した。いずれの群もコーバンおよびスキナゲートで固定した。
抗原およびアジュバント投与は0、2週間後、採血は2、4週間後に行い、OVA特異的IgG抗体価をELISAにて測定した(表3に4週間後の各抗体価を示す)。
【表3】
【0087】
表3に示すとおり、OVAとグリセリンを混合してマイクロニードル投与した群ではアジュバント効果が認められない一方で、抗原投与後にグリセリンを含浸貼付した群では、明らかなIgG抗体価の上昇が認められた。また、OVA投与10分後に含浸貼付した場合においても高いIgG抗体価が得られた。
また、抗原投与後、時間間隔をあけてアジュバントを貼付しても、免疫活性増強効果を達成することが示された。
【0088】
これらのことから、本発明によるグリセリンのアジュバント効果は、他の既存アジュバントと比較して、効果や安全性の面のみならず、投与の面からも一線を画することが示された。すなわち、本発明のアジュバント効果は、他の注射剤用アジュバントで一般的に見られるような抗原との混合投与により達成されるのではなく、抗原とは別に投与すること、とくに抗原を投与した後に、高濃度のアジュバント製剤を貼付または塗布することによって達成されることが示された。さらに、含浸状態の高濃度で貼付しても、皮膚刺激がなく、安全に抗体価の上昇を達成し得ることが明確に示された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明によれば、安全かつ効率的な皮膚免疫活性増強のための多価アルコールまたはその誘導体から選ばれる低分子アジュバントおよび経皮投与製剤が提供される。すなわち、本発明のアジュバントおよび医薬製剤は、そのまま経皮投与などするか、あるいは皮膚研磨処理後の塗布、あるいはイオントフォレーシス、マイクロニードルなどを用いて経皮投与することによって、外用医薬品、化粧品あるいはアレルゲン物質の評価、感染症、癌、動脈硬化症、アルツハイマー病などの脳神経疾患、アレルギーなどのワクチン治療などに幅広く利用される。また、本発明は、T細胞介在性の疾患のための治療用の抗炎症性免疫調節物質としても利用される。したがって、本発明は、医薬産業およびその関連産業の発展に寄与するところ大である。
図1
図2
図3
図4
図5