【文献】
J.M.Curling,Methods of plasma protein fractionation,1980年,p.12,13,248,249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の沈殿工程、前記第2の沈殿工程、または前記第3の沈殿工程の少なくとも1つの前記pHは前記アルコール添加後、pH調整溶液の添加により達成される、請求項1または請求項2に記載の方法。
前記第1の沈殿工程、前記第2の沈殿工程、および前記第3の沈殿工程の全ての前記pHは前記アルコール添加後、pH調整溶液の添加により達成される、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の方法。
前記沈殿工程のpHは、前記アルコール添加前および添加後、前記アルコール添加中および添加後、または前記アルコール添加前、添加中および添加後に調整される、請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の方法。
工程(j)において前記懸濁液に加えられた二酸化ケイ素の量が、工程(h)で形成された沈殿物1gあたり0.02gから0.06gである、請求項13〜請求項21の何れか1項に記載の方法。
工程(m)で使用された前記界面活性剤が0.1%(重量/体積)から0.3%(重量/体積)のポリソルベート−80を含む、請求項11〜請求項25の何れか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本明細書で用いられる場合、「抗体」は、分析物(抗原)と特異的に結合しかつ認識する免疫グロブリン遺伝子に実質的にコードされるポリペプチド、または、それらの断片を指す。認識される免疫グロブリン遺伝子として、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに、ミリアド免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEの順で、免疫グロブリン型を定義する。
【0026】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造ユニットは、2対のポリペプチド鎖で構成され、各々の対は、1つの「軽」鎖(約25kD)と1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各々の鎖のN末端は、抗原認識に寄与する約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を定める。用語、可変軽鎖(V
L)および可変重鎖(V
H)は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「限外濾過(UF)」という用語は、水圧が液体を半浸透性膜に押し付ける、様々な膜濾過方法を包含する。懸濁された高分子量の固体および溶質は保持されるが、水および低分子量の溶質は膜を通過する。この分離プロセスは、マクロ分子(10
3〜10
6Da)の溶液、特に、タンパク質溶液を精製し、濃縮するのに利用されることが多い。数多くの限外薄膜は、それらの膜が保持する分子の大きさに応じて、入手することができる。限外濾過は、典型的には、1kDaと1000kDaの間の膜ポアサイズおよび0.01と10barの間の操作圧力を特徴とし、糖類および塩類のような小分子からタンパク質のようなコロイドを分離するのに特に有用である。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「透析濾過」という用語は、限外濾過と同じ膜を用いて実行され、接線流濾過である。透析濾過の間、緩衝液を再利用タンク内に導入するのに対し、濾過液はユニット操作から取り除く。生成物が残余物内にある(例えば、IgG)プロセスでは、透析濾過は、成分を生成物プールから濾過液内へ洗い出し、それにより、緩衝液を交換し、望ましくない種の濃度を低減させる。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、特定値から正負10%の近似範囲を表す。例えば、語句「約20%」は、18〜22%の範囲を含む。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「混合」という用語は、いずれかの形式の撹拌により溶液または懸濁液中に2つ以上の別個の化合物または物質を等しく配分する行為を説明する。この用語が本願に利用される場合、「混合」の結果として、溶液または懸濁液中で全ての成分を完全に均等に配分する必要はない。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「溶媒」という用語は、1つ以上の他の物質を溶解または分散することを可能にする、任意の液体物質を包含する。溶媒は、本質的に、水等の無機質である可能性があり、エタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、石油エーテル等のような有機液体である可能性がある。溶媒は、「溶媒界面活性剤処理」という用語で用いられる場合、溶液中の脂質エンベロープウイルスを不活性にするのに利用される溶媒界面活性剤混合物の一部である、有機溶媒(例えば、リン酸トリ−N−ブチル)を表す。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「界面活性剤(detergent)」という用語は、本出願で、用語「界面活性剤(surfactant)」または「界面活性剤(surface acting agent)」と交換可能に利用される。界面活性剤は、典型的には、両媒性の、即ち、疎水基(「尾部」)と親水基(「頭部」)の両方を含む有機化合物であり、それらの官能基により、界面活性剤は、有機溶媒と水の両方に溶ける。界面活性剤は、その頭部が形式的に荷電基の存在により分類され得る。非イオン性界面活性剤は、その頭部に荷電基がないのに対し、イオン性界面活性剤は、その頭部が電荷を帯びている。双性イオン界面活性剤は、2つの反対に帯電された基を有する頭部を含む。通常の界面活性剤の幾つかの実例として、(硫酸塩陰イオン、スルホン酸塩陰イオンまたはカルボン酸塩陰イオンに基づく)陰イオン性では、ペルフルオロオクタン酸塩(PFOAまたはPFO)、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、および他のアルキル硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、またはSLESとしても知られている)、アルキルベンゼンスルホン酸塩と、(第四級アンモニウム陽イオンに基づく)陽イオン性では、セチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)、別名、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、および他のアルキルトリメチルアンモニウム塩類、セチルピリジニウム塩化物(CPC)、ポリエトキシル化獣脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)と、カプリル酸塩、カプリル酸、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ナノ酸、デカン酸等を含む長鎖脂肪酸およびそれらの塩類と、双性イオン性(両性)では、ドデシルベタイン、ヤシ酸アミドプロピルベタイン、ココ両性グリシネートと、非イオン性では、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)との共重合体(ポロキサマー類またはポロキサミン類として市場で知られている)、オクチルグルコシド、デシルマルトシド、脂肪アルコール(例えば、セチルアルコールおよびオレイルアルコール)、コカミドMEA、コカミドDEA、ポリソルベート類(ツイン20、ツイン80等)、トリトン界面活性剤、およびドデシルジメチルアミンオキシドを含むアルキルポリグルコシド類が挙げられる。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「静脈注射IgG」または「IVIG」処置という用語は、一般に、IgG免疫グロブリンの組成物を患者に静脈内投与、皮下投与または筋肉内投与して、免疫不全、炎症、および自己免疫疾患等の数多くの症状を治療する治療方法を指す。IgG免疫グロブリンは、典型的には、プールされており、血漿から調製される。抗体全体または断片を利用することができる。IgG免疫グロブリンは、皮下投与のために高濃度(例えば、10%超過)に製剤化されるか、または筋肉内投与のために製剤化され得る。これは、特定の抗原(例えば、Rho D因子、百日咳毒素、破傷風毒素、ボツリヌス毒素、狂犬病等)に対する平均タイターよりも高いタイターで調製される、特化されたIgG製剤に特に共通のことである。議論し易くするために、そのような皮下投与または筋肉内投与用に製剤化されるIgG組成物も、本願では、用語「IVIG」に含まれる。
【0034】
「治療上有効な量または投与量」または「十分な/有効な量または投与量」は、投与されて効果を作り出す投与量を意味する。正確な投与量は、治療目的に依存することになり、当業者により、公知の技術を利用して確認されるであろう(例えば、リバーマン、医薬適用法(第1〜3巻、1992年)、ロイド、医薬調合の技術、科学技術(1999年)、ピッカー、投与量計算法(1999年)、および、レミングトン、調剤科学および実践、第20版(2003年、ジェンナロ、リピンコット、ウィリアムズ&ウィルキンス出版を参照のこと)。
【0035】
本願において用いられる場合、用語「スプレー」は、例えば、改変コーン分画法IまたはII+III沈殿工程などのアルコール沈殿工程の間に液体の物質をその細かい水滴または霧の形状で系に送達する手段を意味する。スプレーヘッドまたはノズルを有し、手動で、または、自動で操作されて液体から微細な霧を発生させる容器(例えば、スプレーボトル)などのいかなる加圧装置によってもスプレーを達成することができる。典型的には、系内で液体の急速かつ均等な分配を確実にするために系を連続的に撹拌するかまたは混合しながらスプレーを実行する。
【0036】
本発明の詳細な説明
I.概要
現代の医薬で通常実施されているように、濃縮された免疫グロブリン類(特に、IgG類)の無菌製剤が、3つの主要な種類に分類される病状:免疫不全,炎症および自己免疫疾患、および急性感染症の治療に用いられる。一般に用いられているIgG製品の1つである静脈注射用免疫グロブリン、すなわちIVIGは、例えば、10%または約10%のIgG濃度で静脈内投与用に製剤化されている。濃縮免疫グロブリン類は、例えば、20%または約20%のIgG濃度で皮下投与用または筋肉内投与用に製剤化されることもできる。議論し易くするために、そのような皮下投与または筋肉内投与用に製剤化されたIgG組成物はまた、「IVIG」という言葉で本願に含まれる。
【0037】
ある態様では、本発明は、生成物の最終収率を上昇させるIVIG製造方法を提供し、さらに、同等の、または、より高い品質の、いくつかの場合ではさらに高い濃度のIVIG組成物を提供する。1つの実施形態では、本発明は、1つ以上の沈殿工程でIgG損失を低減させる改変コーン分画法を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、本明細書において提供される改良された製造方法に従って調製されるIgG組成物を提供する。好都合なことに、これらの組成物は、本明細書において提供される方法により与えられた収率の向上のため、現在入手可能な市販品よりも製造費が少ない。さらに、これらの組成物は、商業ベースの方法を用いて製造された組成物と少なくとも同程度に純粋である。重要なことに、これらの組成物は、免疫不全、炎症および自己免疫疾患、および急性感染症のIVIG療法での使用に適切である。1つの実施形態では、IgG組成物は静脈内投与のために10%または約10%のIgGである。別の実施形態では、IgG組成物は皮下または筋肉内投与のために20%または約20%である。
【0039】
別の態様では、本発明は、本明細書において提供される改良された製造方法論に従って調製されたIgG組成物の医薬組成物および製剤を提供する。ある実施形態では、これらの組成物および製剤は、現在市販されている他のIVIG組成物と比較して向上した特性を提供する。例えば、ある実施形態では、本明細書において提供される組成物および製剤は長期間安定である。
【0040】
さらに別の態様では、本発明 は、本明細書において提供される改良された方法を用いて調製されたIgG組成物の投与を含む、免疫不全、炎症および自己免疫疾患、および急性感染症の治療方法を提供する。
【0041】
II.IVIG製造方法
一般に、任意の適切な出発原料、例えば、回収血漿または原料血漿から本発明による免疫グロブリン製剤を調製することができる。典型的な例では、健康な提供者から血液または血漿が採取される。通常、血液は、免疫グロブリン製剤が投与されるであろう対象と同じ動物種から採取される(典型的には"相同"免疫グロブリン類と称される)。免疫グロブリン類は、例えば、沈殿(アルコール分画法またはポリエチレングリコール分画法)、クロマトグラフィー法(イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫アフィニティークロマトグラフィー等)、超遠心分離法および電気泳動調製法等のような適切な方法によって血液から単離される(例えば、Cohn et al., J. Am. Chem. Soc. 68:459-75 (1946); Oncley et al., J. Am. Chem. Soc. 71:541-50 (1949); Barundern et al., Vox Sang. 7:157-74 (1962); Koblet et al., Vox Sang. 13:93-102 (1967); 米国特許第5,122,373号および米国特許第5,177,194号を参照のこと;これらの開示は、あらゆる目的のために、引用によりその全てがここに組み込まれる)。
【0042】
多くの場合では、当業者に周知のアルコール分画法および/またはイオン交換クロマトグラフィー法およびアフィニティークロマトグラフィー法により作製されたγグロブリン含有産物から免疫グロブリン類が調製される。例えば、精製コーンフラクションIIは免疫グロブリン類の単離の出発点として一般に用いられる。出発コーンフラクションIIペーストは、典型的にはIgGの濃度が約95%であり、4つのIgGサブタイプからなる。異なるサブタイプは、それらが得られたプールされたヒト血漿中に見いだされるのとほぼ同じ割合で、フラクションII中に存在する。フラクションIIは、投与可能な生成物への製剤の前にさらに精製される。例えば、フラクションIIペーストを冷精製アルコール水性溶液に溶解し、沈殿および濾過によって不純物を除去することができる。最後の濾過に続いて、アルコールを除去するために免疫グロブリン懸濁液を(例えば、100,000ダルトン以下の公称分画分子量を有する限外濾過膜を用いて)透析または透析濾過することができる。所望のタンパク質濃度を得るために溶液を濃縮または希釈することができ、当業者に周知の技術により前記溶液をさらに精製することができる。
【0043】
さらに、免疫グロブリンの特定のアイソタイプまたはサブタイプを濃縮するために追加の調製工程を用いることができる。例えば、IgGまたは特定のIgGサブタイプの免疫グロブリン類の混合物を濃縮するためにプロテインA、プロテインGまたはプロテインHセファロースクロマトグラフィーを用いることができる。Harlow and Lane, Using Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988)、および、米国特許第5,180,810号を全体として参照のこと。これらの開示は、あらゆる目的のために、引用によりその全てがここに組み込まれる。
【0044】
上記の方法と異なり、1つの態様では本発明は、脱クリオ出発原料を用いる濃縮IgG組成物の調製方法を提供する。一般に、本明細書において提供される方法は、現在市販されているIVIG製剤に見られる品質と少なくとも同じ品質を維持しつつ、優れたIgGの収率をもたらすために改変コーン−オンクレイ(Cohn−Oncley)アルコール分画工程とイオン交換クロマトグラフィーの両方を利用する。例えば、ある実施形態では、原料血漿出発物質に見られるIgG含有量の75%近くを含む最終バルクIgG組成物を産出する方法が提供される。これらの方法は、既存の最新式の精製方法よりも少なくとも10%〜12%の増産を全IgG収量において意味する。例えば、GAMMAGARD(登録商標)LIQUIDの製造方法により、出発原料に見られるIgG含有量の約60%と65%の間の最終収量がもたらされると推定されている。したがって、本明細書において提供される方法により、既存のIgG精製技術に著しい改良がもたらされる。
【0045】
1つの実施形態では、本発明は、原料血漿出発物質に見られるIgG含有量の少なくとも70%を含む精製IgG組成物を提供する。別の実施形態では、原料血漿出発物質に見られるIgG含有量の少なくとも75%を含む精製IgG組成物を提供する。他の実施形態では、本明細書において提供される精製IgG組成物は、原料血漿出発物質に見られるIgG含有量の少なくとも約65%を含み、または、原料血漿出発物質に見られるIgG含有量の少なくとも66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%もしくはそれ以上を含むであろう。
【0046】
A.改変アルコール沈殿/イオン交換クロマトグラフィー分画法
1つの態様では、本発明は、IVIG療法での使用に適切なIgG組成物の改良された製造方法を提供する。一般的に、これらの方法は、市販のIVIG製品の製造に用いられている現在の方法よりも高い収率を有し、そして、少なくともそれに比較し得る純度のIgG製剤を提供する。
【0047】
1つの特定の態様では、本発明は、血漿から濃縮されたIgG組成物、例えば、10%の濃度のIVIGを調製する方法であって、少なくとも1つのアルコール沈殿工程および少なくとも1つのイオン交換クロマトグラフィー工程の実施を含む方法を提供する。特に、改良された上流処理におけるいくつかの工程、例えば、低温での25%のエタノールの使用、スプレーによるエタノール添加、スプレーによるpH調整およびシリカ微粒子の使用は以前の処理と異なる。
【0048】
ある実施形態では、前記方法は、(a)第1沈殿工程において、約6.7と約7.3の間のpHで約6%と約10%の間の濃度のアルコールを用いて脱クリオ
血漿画分を沈殿させてIgGが濃縮された上清を得る工程、(b)約6.7と約7.3の間のpHで約20%と約30%の間の濃度のアルコールを低温で用いて上清からIgGを沈殿させて第1の沈殿物を形成する工程、(c)工程(b)で形成された第1の沈殿物を再懸濁して懸濁液を形成する工程、(d)工程(c)で形成された懸濁液を界面活性剤で処理する工程、(e)約6.7と約7.3の間のpHで約20%と約30%の間の濃度のアルコールを用いて懸濁液からIgGを沈殿させて第2の沈殿物を形成する工程、(f)工程(e)で形成された第2の沈殿物を再懸濁して懸濁液を形成する工程、(g)工程(f)で形成された懸濁液を溶媒および/または界面活性剤で処理する工程、ならびに(h)少なくとも1回のイオン交換クロマトグラフィー分画を実行し、それによって濃縮されたIgGの組成物を調製する工程を含む。1つの実施形態では、前記方法は、工程(c)で形成された懸濁液を微粉化した二酸化ケイ素(SiO
2)で処理し、工程(d)の前に溶液を濾過することをさらに含む。
【0049】
1つの実施形態では、血漿から濃縮IgG組成物を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法が提供される:(a)脱クリオ血漿画分のpHを約7.0に調整する工程、(b)約−5℃と約−9℃の間の温度で工程(a)の脱クリオ血漿画分のエタノール濃度を25%(体積/体積)または約25%(体積/体積)に調整し、それによって混合物を形成する工程であって、エタノール濃度をスプレーによって調整することができる工程、(c)工程(b)の混合物から液体と沈殿物を分離する工程、(d)1000Lの緩衝液あたり約400mLと約700mLの間の氷酢酸を用いてpHが調整されたリン酸塩および酢酸塩を含む緩衝液で工程(c)の沈殿物を再懸濁し、それによって懸濁液を形成する工程、(e)細かく分割した(SiO
2)を工程(d)の懸濁液と少なくとも約30分間混合する工程、(f)加圧濾過機を用いて懸濁液を濾過し、それによって濾過液を形成する工程、(g)加圧濾過機のデッドボリュームの少なくとも3倍の、リン酸塩および酢酸塩を含む緩衝液であって、1000Lの緩衝液あたり約150mLの氷酢酸を用いてpHが調整された緩衝液を用いて、加圧濾過機を洗浄し、それによって洗浄溶液を形成する工程、(h)工程(f)の濾過液を工程(g)の洗浄溶液と混合し、それによって溶液を形成し、そして、その溶液を界面活性剤で処理する工程、(i)工程(h)の溶液のpHを約7.0に調整し、そして、25%または約25%の終濃度にまでエタノールを添加し、それによって沈殿物を形成する工程であって、エタノール濃度および/またはpHはスプレーによって調整され得る工程、(j)工程(i)の混合物から液体と沈殿物を分離する工程、(k)溶媒または界面活性剤を含む水性溶液に沈殿物を溶解し、そして、その溶液を少なくとも60分間維持する工程、(l)工程(k)の後に溶液を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに通し、そして、カラムに吸着されたタンパク質を溶離液中に溶出する工程、(m)工程(l)からの溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに通して流出液(すなわち、通過画分)を精製する工程、(n)工程(m)からの流出液をナノフィルターに通してナノ濾過液を生成する工程、(o)工程(n)からのナノ濾過液を限外濾過膜に通して限外濾過液を生成する工程、ならびに(p)工程(o)からの限外濾過液を透析濾過緩衝液に対して透析濾過して約8%(重量/体積)と約22%(重量/体積)の間のタンパク質濃度を有する透析濾過液を生成し、それによって濃縮されたIgGの組成物を得る工程。1つの実施形態では、工程(b)の温度は−7℃または約−7℃である。1つの特定の実施形態では、工程(d)の懸濁緩衝液は約600mLの氷酢酸を用いて調整される。
【0050】
ある実施形態では、透析濾過液は、約8%と約12%の間のタンパク質濃度、例えば、約8%または約9%、10%、11%または12%のタンパク質濃度を有するであろう。好ましい実施形態では、透析濾過液は10%または約10%のタンパク質濃度を有するであろう。別の好ましい実施形態では、透析濾過液は11%または約11%のタンパク質濃度を有するであろう。さらに別の好ましい実施形態では、透析濾過液は12%または約12%のタンパク質濃度を有するであろう。他の実施形態では、透析濾過液は約13%と約17%の間のタンパク質濃度、例えば、約13%または約14%、15%、16%または17%のタンパク質濃度を有するであろう。さらに他の実施形態では、透析濾過液は約18%と約22%の間のタンパク質濃度、例えば、約18%または約19%、20%、21%または22%のタンパク質濃度を有するであろう。好ましい実施形態では、透析濾過液は20%または約20%のタンパク質濃度を有するであろう。別の好ましい実施形態では、透析濾過液は21%また約21%のタンパク質濃度を有するであろう。さらに別の好ましい実施形態では、透析濾過液は22%または約22%のタンパク質濃度を有するであろう。
【0051】
本発明のある実施形態では、本明細書において提供される方法は2つ以上の上記の分画処理工程に改良を含むことができる。例えば、実施形態は、第1沈殿工程、改変フラクションII+III沈殿工程、改変フラクションII+III溶解工程および/または改変フラクションII+III懸濁液濾過工程に改良を含むことができる。
【0052】
1つの実施形態では、第1沈殿工程になされる改良はスプレーによるアルコール添加である。別の実施形態では、第1沈殿工程になされる改良はスプレーによるpH調整剤の添加である。さらなる実施形態では、第1沈殿工程になされる改良はアルコール添加後の溶液のpH調整である。関連する実施形態では、第1沈殿工程になされる改良はアルコール添加中のpHの維持である。別の関連する実施形態では、第1沈殿工程になされる改良は、溶液の連続的なpH調整による沈殿インキュベーション時間中のpHの維持である。ある実施形態では、第1沈殿工程はこれらの改良のうちの2つ以上を実施することによって改良され得る。本工程で実現され得るさらなる改良は、第1沈殿工程〜改変分画法Iについて論じる下記の節から明らかとなるだろう。1つ以上の上記の改良を実施することによって、第1沈殿工程の沈殿物画分で失われるIgGの量が減少し、および/または、沈殿工程中に不可逆的に変性するIgGの部分が減少する。
【0053】
1つの実施形態では、改変フラクションII+III沈殿工程になされる改良はスプレーによるアルコール添加である。別の実施形態では、改変フラクションII+III沈殿工程になされる改良はスプレーによるpH調整剤の添加である。さらなる実施形態では、改変フラクションII+III沈殿工程になされる改良はアルコール添加後の溶液のpH調整である。関連する実施形態では、改変フラクションII+III沈殿工程になされる改良はアルコール添加中のpHの維持である。別の関連する実施形態では、改変フラクションII+III沈殿工程になされる改良は溶液の連続的なpH調整による沈殿インキュベーション時間中のpHの維持である。別の態様では、改変フラクションII+III沈殿工程は、25%または約25%にアルコールの濃度を増加させることにより改良される。さらに別の実施形態では、改変フラクションII+III沈殿工程は、約−7℃と−9℃の間にインキュベーション温度を下げることにより改良される。ある実施形態では、改変フラクションII+III沈殿工程は、これらの改良の2つ以上を実施することによって改良され得る。本工程で実現され得るさらなる改良は、第2沈殿工程〜改変分画法II+IIIについて論じる下記の節から明らかとなるだろう。1つ以上の上記の改良を実施することによって、改変フラクションII+III沈殿工程において失われる上清画分中のIgGの量がより少なくなり、および/または、沈殿工程中に不可逆的に変性するIgGの部分が減少する。
【0054】
1つの実施形態では、改変フラクションII+III溶解工程になされる改良は、溶解緩衝液の氷酢酸含有量を約0.06%に増加することによって達成される。別の実施形態では、改変フラクションII+III溶解工程になされる改良は、溶液の連続的なpH調整により溶解インキュベーション中に溶液のpHを維持することによって達成される。別の実施形態では、改変フラクションII+III溶解工程になされる改良は、濾過の前に微粉化した二酸化ケイ素(SiO
2)をフラクションII+III懸濁液と混合することによって達成される。ある実施形態では、改変フラクションII+III溶解工程は、これらの改良の2つ以上を実施することによって改良され得る。本工程で実現され得るさらなる改良は、改変フラクションII+III溶解工程〜改変フラクションII+III沈殿物の抽出について論じる下記の節から明らかとなるだろう。1つ以上の上記の改良を実施することによって、フラクションII+III懸濁液中に回収されるIgGの量が増加し、および/または、フラクションII+III懸濁液において不純物の量が減少する。
【0055】
改変フラクションII+III懸濁液濾過工程になされる改良の例は、1000Lあたり150mLまたは約150mLの氷酢酸を含む、デッドボリュームの少なくとも約3.6倍の溶解緩衝液を用いてフィルターを後洗浄することにより実現される。本工程で実現され得るさらなる改良は、改変フラクションII+III懸濁液濾過工程〜改変フラクションII+III懸濁液の前処理および濾過について論じる下記の節から明らかとなるだろう。1つ以上の上記の改良を実施することによって、改変フラクションII+III懸濁液濾過工程中に失われるIgGの量が減少する。
【0056】
1つの実施形態では、前記方法は、第1沈殿工程と改変フラクションII+III沈殿工程に改良を含み得る。
【0057】
別の実施形態では、前記方法は、第1沈殿工程と改変フラクションII+III溶解工程に改良を含み得る。
【0058】
別の実施形態では、前記方法は、第1沈殿工程と改変フラクションII+III懸濁液濾過工程に改良を含み得る。
【0059】
別の実施形態では、前記方法は、改変フラクションII+III沈殿工程と改変フラクションII+III溶解工程に改良を含み得る。
【0060】
別の実施形態では、前記方法は、改変フラクションII+III沈殿工程と改変フラクションII+III懸濁液濾過工程に改良を含み得る。
【0061】
別の実施形態では、前記方法は、改変フラクションII+III溶解工程と改変フラクションII+III懸濁液濾過工程に改良を含み得る。
【0062】
別の実施形態では、前記方法は、第1沈殿工程、改変フラクションII+III沈殿工程および改変フラクションII+III溶解工程に改良を含み得る。
【0063】
別の実施形態では、前記方法は、第1沈殿工程、改変フラクションII+III沈殿工程および改変フラクションII+III懸濁液濾過工程に改良を含み得る。
【0064】
別の実施形態では、前記方法は、第1沈殿工程、改変フラクションII+III溶解工程および改変フラクションII+III懸濁液濾過工程に改良を含み得る。
【0065】
別の実施形態では、前記方法は、改変フラクションII+III沈殿工程、改変フラクションII+III溶解工程および改変フラクションII+III懸濁液濾過工程に改良を含み得る。
【0066】
別の実施形態では、前記方法は、第1沈殿工程、改変フラクションII+III沈殿工程、改変フラクションII+III溶解工程および改変フラクションII+III懸濁液濾過工程に改良を含み得る。
【0067】
ある実施形態では、本明細書において提供されるIgG精製方法における一つの処理方法の改良は、他の方法であれば流動添加によって血漿画分に添加されるであろう1つ以上の溶液をスプレーで添加することを含む。例えば、ある実施形態では、処理方法の改良は、1つ以上のタンパク質種の沈殿を目的とする、血漿画分へのスプレーによるアルコール(例えば、エタノール)添加を含む。他の実施形態では、スプレーにより血漿画分に添加され得る溶液は、これらに限定されないが、pH調整溶液,溶媒溶液、界面活性剤溶液、希釈緩衝液、伝導度調整溶液などを含む。好ましい実施形態では、1つ以上のアルコール沈殿工程は血漿画分へのスプレーによるアルコール添加によって実行される。第2の好ましい実施形態では、1つ以上のpH調整工程は、血漿画分へのスプレーによるpH調整溶液の添加によって実行される。
【0068】
ある実施形態では、別の処理方法の改良はその他のどんな処理方法の改良とも組み合わせることができ、それは沈殿している血漿画分のpHを沈殿剤(例えば、アルコールまたはポリエチレングリコール)の添加の後に、および/または、添加と同時に調整することを含む。いくつかの実施形態では、沈殿インキュベーションまたは保持工程の全体を通じて、活発に沈殿している血漿画分のpHをpHの連続的なモニターと調整により維持する処理方法の改良が提供される。好ましい実施形態では、pHの調整はpH調整溶液のスプレー添加によって実行される。
【0069】
他の実施形態では、別の処理方法の改良はその他のどんな処理方法の改良とも組み合わせることができ、それは不純物を除去するための微粉化したシリカで処理する工程の使用を含む。
【0070】
1.脱クリオ血漿の調製
濃縮IgG組成物の調製に用いられる出発原料は、一般的に、回収血漿(すなわち、体外で全血から分離された血漿)または原料血漿(すなわち、血漿交換法によって回収された血漿)のどちらかよりなる。典型的には、精製方法は、安全上および品質上の考慮すべき事項について既に評価されている前もって凍結されたプール血漿の解凍で始まる。典型的には、6℃以下の温度で解凍が実行される。低温での凍結血漿の解凍が完了した後、固形のクリオ沈殿物を液体の上清から分離するために、遠心分離が低温で(例えば、≦6℃)実行される。あるいは、分離工程は、遠心分離法よりはむしろ濾過によって実行することができる。その後、(新鮮な解凍血漿から遠心分離によって低温不溶性タンパク質が除去された後の「脱クリオ血漿」とも呼ばれる)液体の上清はその次の工程において処理される。この時点で、第VIII因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)、第IX因子複合体、第VII因子濃縮物またはアンチトロンビンIII複合体の単離のために様々な追加の工程をとることができる。
【0071】
2.第1沈殿事象〜改変分画法I
この工程で、典型的には、脱クリオ血漿は約0±1℃に冷却され、そして、pHは約7.0と約7.5の間に調整され、好ましくは約7.1と約7.3の間に調整され、最も好ましくは約7.2に調整される。1つの実施形態では、脱クリオ血漿のpHは7.2または約7.2のpHに調整される。次に血漿を撹拌しつつ8%(体積/体積)または約8%(体積/体積)の目的のエタノール濃度まで前もって冷却されたエタノールを添加する。同時に、温度を約−4℃と約0℃の間の温度にまでさらに低下させる。好ましい実施形態では、α
2−マクログロブリン、β
1A−およびβ
1C−グロブリン、フィブリノーゲンおよび第VIII因子などの夾雑物を沈殿させるために温度を−2℃または約−2℃まで低下させる。典型的には、前記沈殿事象は、より短い、または、より長い保持時間を用いることもできるけれども、少なくとも約1時間の保持時間を含むであろう。その後、理想的には脱クリオ血漿に存在するIgG含有量を完全に含む上清(上清I)が遠心分離法、濾過法または他の適切な方法によってさらに収集される。
【0072】
本発明は、いくつかの実施形態では、脱クリオ血漿のための第1の分画工程として用いられる従来の方法(Cohn et al., 上記、 Oncley et al., 上記)と比較して、上清I画分におけるIgGの収率を向上することになる方法を提供する。1つの実施形態では、IgGの収率の向上はスプレーによるアルコール添加により達成される。別の実施形態では、IgGの収率の向上はスプレーによるpH調整剤添加により達成される。さらに別の実施形態では、IgGの収率の向上はアルコール添加後に溶液のpHを調整することによって達成される。関連する実施形態では、IgGの収率の向上はアルコール添加中に溶液のpHを調整することによって達成される。
【0073】
1つの特定の態様では、前記改良は、第1沈殿工程の沈殿物画分において失われるIgGの量が減少する方法に関連する。例えば、ある実施形態では、コーン法6のプロトコルの第1沈殿工程で失われるIgGの量と比較して、前記の第1沈殿工程の沈殿物画分において失われるIgGの量が減少する。
【0074】
ある実施形態では、処理方法の改良は、沈殿用アルコールの添加後に、約7.0と約7.5の間に溶液のpHを調整することによって実現される。他の実施形態では、沈殿用アルコールの添加後に、約7.1と約7.3の間に溶液のpHを調整する。さらに他の実施形態では、沈殿用アルコールの添加後に、約7.0または約7.1、7.2、7.3、7.4または7.5に溶液のpHを調整する。特定の実施形態では、沈殿用アルコールの添加後に、約7.2に溶液のpHを調整する。したがって、ある実施形態では、沈殿用アルコールの添加後ではなく添加前に溶液のpHを調整する類似の沈殿工程と比較して、第1沈殿工程の沈殿物画分において失われるIgGの量が減少する。1つの実施形態では、沈殿保持またはインキュベーション時間の間に溶液のpHを連続的に調整することによって、所望のpHにpHが維持される。1つの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0075】
他のある実施形態では、処理方法の改良は、流動添加よりはむしろスプレーによる沈殿用アルコールおよび/またはpH調整用溶液の添加によって実現される。したがって、ある実施形態では、アルコールおよび/またはpH調整用溶液が流動添加によって導入される類似の沈殿工程と比較して、第1沈殿工程の沈殿物画分において失われるIgGの量が減少する。1つの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0076】
さらに他のある実施形態では、前記改良は、約7.0と約7.5の間に溶液のpHを調整することによって実現される。好ましい実施形態では、溶液のpHを約7.1および約7.3の間に調整する。他の実施形態では、沈殿用アルコールの添加の後に、流動添加よりはむしろスプレーによって沈殿用アルコールおよび/またはpH調整用溶液を添加することにより、溶液のpHを7.0、7.1、7.2、7.3、7.4もしくは7.5または約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4もしくは7.5に調整する。特定の実施形態では、沈殿用アルコール添加の後に、流動添加よりはむしろスプレーによって沈殿用アルコールおよび/またはpH調整用溶液を添加することにより、溶液のpHを7.2または約7.2に調整する。1つの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0077】
3.第2沈殿事象〜改変分画法II+III
さらに分画のIgG含量および純度を高めるために、改変コーン−オンクレイフラクションII+III分画法である第2沈殿工程に上清Iをかける。一般的に、溶液のpHを約6.6と約6.8の間のpHに調整する。好ましい実施形態では、溶液のpHを6.7または約6.7に調整する。次に、撹拌しながら約20%と約25%(体積/体積)の間の終濃度までアルコール、好ましくはエタノールを溶液に添加して画分中のIgGを沈殿させる。好ましい実施形態では、25%(体積/体積)または約25%(体積/体積)の終濃度までアルコールを添加して画分中のIgGを沈殿させる。一般的に、α
1−リポプロテイン、α
1−アンチトリプシン、Gc−グロブリン類、α
1X−グリコプロテイン、ハプトグロブリン、セルロプラスミン、トランスフェリン、ヘモペキシン、クリスマス因子画分、チロキシン結合グロブリン、コリンエステラーゼ、ヒペルテンシノゲンおよびアルブミンなどの夾雑物はこれらの条件では沈殿しないであろう。
【0078】
アルコール添加の前に、または、アルコール添加と同時に、約−7℃と約−9℃の間の温度まで溶液をさらに冷却する。好ましい実施形態では、−7℃または約−7℃の温度まで溶液を冷却する。アルコール添加の完了の後に、溶液のpHを直ちに約6.8と約7.0の間に調整する。好ましい実施形態では、溶液のpHを6.9または約6.9に調整する。典型的には、前記沈殿事象は、より短い、または、より長い保持時間を用いることもできるけれども、少なくとも約10時間の保持時間を含むであろう。その後、理想的には脱クリオ血漿中に存在するIgG含有量の少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%を含有する沈殿物(改変フラクションII+III)を遠心分離法、濾過法または他の適切な方法によって上清から分離し、回収する。本発明は、いくつかの実施形態では、脱クリオ血漿のための第2の分画工程として用いられる従来の方法(Cohn et al., 上記; Oncley et al., 上記)と比較して、改変フラクションII+III沈殿物におけるIgGの収率を向上することになる方法を提供する。関連する実施形態では、本発明は、改変II+III上清におけるIgGの損失を低減することになる方法を提供する。
【0079】
本発明は、いくつかの実施形態では、脱クリオ血漿のための第2の分画工程として使用される従来の方法(Cohn et al., 上記; Oncley et al., 上記)と比較して、改変フラクションII+III沈殿物におけるIgGの収率を向上することになる方法を提供する。1つの実施形態では、前記改良はスプレーによるアルコール添加により実現される。別の実施形態では、前記改良はスプレーによるpH調整剤添加により実現される。別の実施形態では、前記改良はアルコール添加後に溶液のpHを調整することによって実現される。関連する実施形態では、前記改良はアルコール添加中に溶液のpHを調整することによって実現される。別の実施形態では、前記改良は約25%(体積/体積)までアルコール(例えば、エタノール)の濃度を増加することにより実現される。別の実施形態では、前記改良は沈殿工程の温度を約−7℃と−9℃の間の温度まで低下させることにより実現される。好ましい実施形態では、前記改良は約25%(体積/体積)までアルコール(例えば、エタノール)の濃度を増加し、そして、温度を約−7℃と−9℃の間の温度まで低下させることにより実現される。それに対し、沈殿物中の夾雑物のレベルを低減するために、コーンらとオンクレイらの両方が−5℃で沈殿を実行し、そして、オンクレイらは20%のアルコールを使用する。好都合なことに、本明細書において提供される方法は、最終産物中に高レベルの夾雑物が存在することなく最大のIgG収率を可能にする。
【0080】
沈殿用アルコールの添加の前に溶液のpHを約6.9のpHに調整するとき、部分的にはタンパク質の沈殿のために溶液のpHが6.9から約7.4と約7.7の間に変わることが明らかになっている(
図8を参照のこと)。溶液のpHが6.9から離れるので、IgGの沈殿はあまり順調でなくなり、ある夾雑物の沈殿がより順調になる。好都合なことに、発明者らは、沈殿用アルコールの添加の後に溶液のpHを調整することによってフラクションII+III沈殿物中により高いパーセンテージのIgGが回収されることを発見している。
【0081】
したがって、1つの態様では、前記改良は改変フラクションII+III沈殿工程の上清中において失われるIgGの量が減少する方法に関連する。言い換えれば、フラクションII+III沈殿物中に出発IgGのパーセンテージが増加して存在する。ある実施形態では、処理方法の改良は、沈殿用アルコールの添加直後に、または、添加中に約6.7と約7.1の間に溶液のpHを調整することによって実現される。別の実施形態では、処理方法の改良は、沈殿インキュベーション期間中、溶液のpHを約6.7と約7.1の間に絶えず維持することにより実現される。他の実施形態では、溶液のpHは、沈殿用アルコールの添加直後に、もしくは、添加中に約6.8と約7.0の間に調整される、または、沈殿用アルコールの添加直後に、もしくは、添加中に約6.7、6.8、6.9、7.0もしくは7.1のpHに調整される。特定の実施形態では、溶液のpHを、沈殿用アルコールの添加直後に、または、添加中に約6.9に調整する。ある実施形態では、溶液のpHは、沈殿インキュベーション期間中、約6.8から約7.0の間に絶えず維持される、または、沈殿インキュベーション期間中、約6.9のpHに絶えず維持される。したがって、ある実施形態では、沈殿用アルコールの添加の後ではなく前にpHが調整される類似の沈殿工程と比較して、または、溶液のpHが沈殿インキュベーション期間の全体にわたって維持されない類似の沈殿工程と比較して、第2沈殿工程における上清画分において失われるIgGの量が減少する。1つの実施形態では、溶液のpHを連続的に調整することにより沈殿保持またはインキュベーション時間の間に所望のpHにpHが維持される。1つの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0082】
別の実施形態では、処理方法の改良は、流動添加よりはむしろスプレーによって沈殿用アルコールおよび/またはpH調整用溶液を添加することによって実現される。したがって、ある実施形態では、アルコールおよび/またはpH調整用溶液が流動添加によって導入される類似の沈殿工程と比較して、第2沈殿工程の上清画分において失われるIgGの量が減少する。1つの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0083】
別の実施形態では、処理方法の改良は、約−7℃と約−9℃の間の温度で沈殿工程を実行することにより実現される。1つの実施形態では、前記沈殿工程は−7℃または約−7℃で実行される。別の実施形態では、前記沈殿工程は−8℃または約−8℃で実行される。別の実施形態では、前記沈殿工程は−9℃または約−9℃で実行される。ある実施形態では、前記沈殿工程のアルコール濃度は約23%と約27%の間である。好ましい実施形態では、前記アルコール濃度は約24%と約26%の間である。別の好ましい実施形態では、前記アルコール濃度は25%または約25%である。他の実施形態では、前記アルコール濃度は23%、24%、25%、26%もしくは27%、または、約23%、24%、25%、26%もしくは27%であり得る。特定の実施形態では、第2沈殿工程は25%または約25%のアルコール濃度を用いて−7℃または約−7℃の温度で実行される。1つの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0084】
第2の沈殿のアルコール濃度を、オンクレイら,上記,で用いられる20%から25%まで増加して、そして、インキュベーション温度を、コーン−オンクレイ法において用いられる−5℃から−7℃または約−7℃まで低下させることの効果は、改変フラクションII+III沈殿物のIgG含有量の5%〜6%の増加である。
【0085】
別の実施形態では、処理方法の改良は、沈殿用アルコールの添加直後に、または、添加中に溶液のpHを約6.7と約7.1の間に、好ましくは6.9または約6.9に調整し、沈殿インキュベーション期間中、連続的にpHを調整することによって溶液のpHを約6.7と約7.1の間のpHに、好ましくは6.9または約6.9に維持し、ならびに、流動添加よりはむしろスプレーによって沈殿用アルコールおよび/またはpH調整用溶液を添加することにより実現される。別の特定の実施形態では、処理方法の改良は、沈殿工程を約−7℃と約−9℃の間の温度で、好ましくは−7℃または約−7℃の温度で実行し、そして約23%と約27%の間のアルコール濃度、好ましくは25%または約25%のアルコール濃度を用いてIgGを沈殿させることによって実現される。さらに別の特定の実施形態では、処理方法の改良は上記の改変フラクションII+III改良の全てを組み込むことにより実現される。好ましい実施形態では、処理方法の改良は−7℃または約−7℃の温度でスプレーにより添加された25%または約25%のエタノールを用いてIgGを沈殿し、次に沈殿用アルコールの添加後に溶液のpHを6.9または約6.9に調整することにより実現される。さらに別の好ましい実施形態では、溶液のpHは、沈殿インキュベーションまたは保持時間の全体で6.9または約6.9に維持される。
【0086】
4.改変フラクションII+III沈殿物の抽出
改変フラクションII+III沈殿物のIgG内容物を可溶化するために、冷抽出緩衝液を用いて分画法II+III沈殿物を1部の沈殿物対15部の抽出緩衝液という典型的な比率で再懸濁する。その他の適切な再懸濁比率、例えば、約1:8から約1:30までの、または、約1:10から約1:20までの、または、約1:12から約1:18までの、または、約1:13から約1:17までの、または約1:14から約1:16までの比率が用いられ得る。ある実施形態では、再懸濁比率は、約1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30またはそれ以上であり得る。
【0087】
改変II+III沈殿物の抽出に適切な溶液は、一般的に約4.0と約5.5の間のpHを有するであろう。ある実施形態では、前記溶液は約4.5と約5.0の間のpHを有し、他の実施形態では、前記抽出溶液は約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4または5.5のpHを有するであろう。好ましい実施形態では、抽出緩衝液のpHは4.5または約4.5であろう。別の好ましい実施形態では、抽出緩衝液のpHは4.7または約4.7であろう。別の好ましい実施形態では、抽出緩衝液のpHは4.9または約4.9であろう。一般的に、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、1塩基リン酸塩、2塩基リン酸塩、およびこれらの混合物等から選択される緩衝化剤を用いることでこれらのpHの必要性と合致することができる。適切な緩衝液の濃度は、典型的には、約5mMから約100mMまでの範囲にあり、または、約10mMから約50mMまでの範囲にあり、または、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100mMの濃度の緩衝化剤である。
【0088】
抽出緩衝液は、好ましくは、約0.5mS・cm
−1から約2.0mS・cm
−1までの電気伝導度を有するであろう。例えば、ある実施形態では、抽出緩衝液の電気伝導度は約0.5mS・cm
−1または約0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または約2.0mS・cm
−1であろう。当業者は、適切な電気伝導度を有する抽出緩衝液の作成法がわかるであろう。
【0089】
1つの特定の実施形態では、抽出緩衝液の例は、pH4.5±0.2または約4.5±0.2および0.7〜0.9mS/cmまたは約0.7〜0.9mS/cmの電気伝導度で5mMまたは約5mMのリン酸1ナトリウムおよび5mMまたは約5mMの酢酸塩を含むことができる。
【0090】
一般的に、約0℃と約10℃の間、または、約2℃と約8℃の間の温度で抽出を実行する。ある実施形態では、約0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃で抽出を実行することができる。特定の実施形態では、約2℃と約10℃の間の温度で抽出を実行する.典型的には、懸濁液を絶えず撹拌しつつ、約60分と約300分の間または約120分と240分の間または約150分と210分の間の時間、抽出処理が進行するであろう。ある実施形態では、約60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290,または約300分の間、抽出処理が進行するであろう。好ましい実施形態では、少なくとも160分間、絶えず撹拌しつつ抽出処理が進行するであろう。
【0091】
5mMリン酸1ナトリウム、5mM酢酸塩および0.051%〜0.06%氷酢酸(体積/体積)を含有する抽出緩衝液を使用すると、最終IgG組成物の収率が、最終産物の純度を危うくすることなく、かなり増加することができることが明らかになっている。
図9に酢酸の量と抽出緩衝液のpHの相関関係が示されている。好ましい実施形態では、4.5±0.2または約4.5±0.2のpHで1:15または約1:15のペーストの緩衝液に対する比率を用いてフラクションII+III沈殿物を抽出する。
【0092】
好都合なことに、5mMリン酸1ナトリウム、5mM酢酸塩および0.051%氷酢酸(体積/体積)を含有する抽出緩衝液を用いる現在のGAMMAGARD(登録商標)LIQUID(BaxterHealthcare)の製造方法と比較して、0.06%(体積/体積)または約0.06%(体積/体積)に氷酢酸の含有量を増やすことにより、最終IgG組成物の収率がかなり増加することができることが明らかになっている。本発明は、いくつかの実施形態では、第2沈殿工程で形成された沈殿物の抽出のために以前に採用された方法(GAMMAGARD(登録商標)LIQUID)と比較して、改変フラクションII+III懸濁液におけるIgG収率を向上することになる方法を提供する。
【0093】
1つの態様では、前記改良は、改変フラクションII+III沈殿物の非可溶化画分において失われるIgGの量が減少する方法に関連する。1つの実施形態では、処理方法の改良は、5mMリン酸1ナトリウム、5mM酢酸塩および0.06%氷酢酸(体積/体積)を含有する溶液を用いて1:15(沈殿物対緩衝液)の比率で改変フラクションII+III沈殿物を抽出することにより実現される。別の実施形態では、前記改良は、抽出処理の期間中、溶液のpHを維持することにより実現される。1つの実施形態では、抽出処理の期間中、約4.1と約4.9間に溶液のpHを維持する。好ましい実施形態では、抽出処理の期間中、約4.2と約4.8の間に溶液のpHを維持する。より好ましい実施形態では、抽出処理の期間中、約4.3と約4.7の間に溶液のpHを維持する。別の好ましい実施形態では、抽出処理の期間中、約4.4と約4.6の間に溶液のpHを維持する。さらに別の好ましい実施形態では、抽出処理の期間中、4.5または約4.5に溶液のpHを維持する。
【0094】
別の態様では、前記改良は、フラクションII+III溶解工程においてフラクションII+III沈殿物から可溶化するIgGの量が増加する方法に関連する。1つの実施形態では、処理方法の改良は、1000Lあたり600mLの氷酢酸を含む溶解緩衝液中にフラクションII+III沈殿物を可溶化することによって実現される。別の実施形態では、前記改良は、フラクションII+III沈殿物中のIgGを可溶化した後に不純物を減少させる方法に関連する。1つの実施形態では、処理方法の改良は、少なくとも約30分間、微粉化した二酸化ケイ素(SiO
2)をフラクションII+III懸濁液と混合することにより実現される。
【0095】
5.改変フラクションII+III懸濁液の前処理および濾過
改変フラクションII+III沈殿物の非可溶化画分(すなわち、改変フラクションII+IIIフィルターケーキ)を除去するために、典型的には深層濾過を用いて懸濁液を濾過する。本明細書において提供される方法に用いることができる深層フィルターには、金属深層フィルター、ガラス深層フィルター、セラミック深層フィルター、(珪藻土などの)有機深層フィルターなどが含まれる。適切なフィルターの例には、Cuno50SAフィルター、Cuno90SAフィルターおよびCunoVR06フィルター(Cuno)が含まれるがこれらに限定されない。あるいは、濾過よりはむしろ遠心分離によって分離工程を実行することができる。
【0096】
上記の製造方法の改良は精製方法の初期の工程におけるIgGの損失を最小化するけれども、PKA活性、アミド分解活性およびフィブリノーゲン内容物を含む重要な不純物は、例えば、II+IIIペーストがpH4.5または4.6で抽出されるとき、約4.9〜5.0のpHで抽出が行われるときと比較してずっと多い(実施例2〜5を参照のこと)。
【0097】
本明細書において提供される方法において抽出される不純物に対処するために、濾過/遠心分離の前に前処理工程を加えることによりIgG組成物の純度が非常に高くなることが今では明らかになっている。1つの実施形態では、この前処理工程には、微粉化した二酸化ケイ素粒子(例えば、ヒュームドシリカ、アエロジル(登録商標))の添加とその後の懸濁液が絶え間なく混合される40分〜80分のインキュベーション期間が含まれる。ある実施形態では、インキュベーション期間は約50分と約70分の間、または、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80分またはそれ以上であろう。一般的に、約0℃と約10℃の間、または、約2℃と約8℃の間の温度で処理が行われるであろう。ある実施形態では、約0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃で処理を行うことができる。特定の実施形態では、約2℃と約10℃の間の温度で処理を行う。
【0098】
ヒュームドシリカでの処理の効果は実施例17に見られる結果によって例示される。この実施例では、フラクションII+III沈殿物を懸濁し、そして、2つの試料に分け、そのうちの1つを濾過の前に濾過助剤のみで清澄化し(
図7A)、そして、そのうちの1つを濾過助剤の添加と濾過の前にヒュームドシリカで処理する(
図7B)。クロマトグラフと定量化データに見ることができるように、ヒュームドシリカで前処理された濾過液試料は濾過助剤で処理されただけの試料よりもずっと高いIgGの純度を有した(68.8%対55.7%;それぞれ、表17と表18を比較のこと)。
【0099】
ある実施形態では、II+IIIペーストに対して約20g/kgと約100g/kgの間の濃度でヒュームドシリカを添加する(すなわち、1:15の比率で抽出される改変フラクションII+III沈殿物には、II+III懸濁液に対して約20g/16kgから約100g/16kgまでの濃度で、または、約0.125%(重量/重量)〜約0.625%(重量/重量)の終濃度でヒュームドシリカが加えられるであろう。)。ある実施形態では、II+IIIペーストに対して約20g/kgの濃度で、または、約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100g/kgの濃度でヒュームドシリカを添加することができる。1つの特定の実施形態では、改変フラクションII+III懸濁液に対して約40g/16kg II+IIIの終濃度でヒュームドシリカ(例えば、アエロジル380またはその同等物)を添加する。約2℃〜8℃で少なくとも50〜70分間混合を行う。
【0100】
ある実施形態では、深層濾過を促進するために二酸化ケイ素での処理の後に濾過助剤、例えば、Celpure C300(Celpure)またはHyflo−Supper−Cel(World Minerals)が加えられるであろう。II+IIIペーストに対して約0.1kg/kgから約0.07kg/kgまでの終濃度で、または、約0.2kg/kgから約0.06kg/kgまでの終濃度で、または、約0.3kg/kgから約0.05kg/kgまでの終濃度で濾過助剤を添加することができる。ある実施形態では、II+IIIペーストに対して約0.1kg/kgの終濃度で、または、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6,または0.7kg/kgの終濃度で濾過助剤が添加されるであろう。
【0101】
GAMMAGARD(登録商標)LIQUIDの製造方法の濾過工程中にかなりの画分のIgGが失われているところであった。加圧濾過機の構成部とラインをパージするためにデッドボリュームの1.8倍の懸濁液緩衝液を用いる現在の濾過後洗浄方法は、この工程でIgGの回収率を最大にするには不十分であることが明らかになった。驚くことに、改変フラクションII+III清澄化懸濁液中の全IgGを効率よく回収するためにデッドボリュームの少なくとも3.0倍、好ましくはデッドボリュームの3.6倍の懸濁液緩衝液が必要であることが明らかになった(実施例12および
図1を参照のこと)。ある実施形態では、任意の適切な懸濁液緩衝液で加圧濾過機を洗浄することができる。特定の実施形態では、洗浄緩衝液は、例えば、5mMリン酸1ナトリウム、5mM酢酸塩および0.015%氷酢酸(体積/体積)を含むであろう。
【0102】
1つの態様では、前記改良は、フラクションII+III懸濁液濾過工程中に失われるIgGの量が減少する方法に関連する。1つの実施形態では、処理方法の改良は、デッドボリュームの少なくとも約3.6倍の、1000Lあたり150mLの氷酢酸を含む溶解緩衝液を用いてフィルターを後洗浄することによって実現される。
図10に氷酢酸の量と後洗浄緩衝液中のpHとの間の関係が示される。1つの実施形態では、後洗浄抽出緩衝液のpHは約4.6と約5.3の間である。好ましい実施形態では、後洗浄緩衝液のpHは約4.7と約5.2の間である。別の好ましい実施形態では、後洗浄緩衝液のpHは約4.8と約5.1の間である。さらに別の好ましい実施形態では、後洗浄緩衝液のpHは約4.9と約5.0の間である。
【0103】
本発明は、いくつかの実施形態では、第2沈殿工程から形成された懸濁液の清澄化のために以前に採用された方法と比較して(GAMMAGARD(登録商標)LIQUID)、清澄化されたフラクションII+III懸濁液におけるIgGの収率と純度を向上することになる方法を提供する。1つの態様では、前記改良は、改変フラクションII+IIIフィルターケーキにおいて失われるIgGの量が減少する方法に関連する。他の態様では、前記改良は、清澄化されたフラクションII+III懸濁液において見られる不純物の量が減少する方法に関連する。
【0104】
1つの実施形態では、処理方法の改良は、改変フラクションII+III懸濁液の濾過または遠心清澄化の前にヒュームドシリカ処理を挿入することにより実現される。ある実施形態では、ヒュームドシリカ処理は、II+IIIペーストに対して約
0.01kg/kgから約0.07kg/kgまで、または、約
0.02kg/kgから約0.06kg/kgまで、または、約
0.03kg/kgから約0.05kg/kgまでの添加、または、約
0.02、
0.03、
0.04、
0.05、
0.06または
0.07kg/kgの添加を含むであろう。そして、その混合物は、約2℃と約8℃の間の温度で約50分と約70分の間の時間、または、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80分またはそれ以上の間保温されるであろう。別の実施形態では、処理方法の改良は、残存するフィブリノーゲン、アミド分解活性および/またはプレカリクレインアクチベーター活性のレベルを低減したフュームドシリカ処理の挿入によって実現される。
【0105】
別の実施形態では、処理方法の改良は、改変フラクションII+III懸濁液濾過工程の完了の後に深層フィルターのデッドボリュームの約3倍と約5倍の間の体積でそのフィルターを洗浄することによって実現される。ある実施形態では、フィルターのデッドボリュームの約3.5倍と約4.5倍の間の体積、または、少なくとも約2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0倍の体積でフィルターが洗浄されるであろう。特定の実施形態では、デッドボリュームの少なくとも約3.6倍の懸濁液緩衝液を用いて加圧濾過機が洗浄されるであろう。
【0106】
6.界面活性剤処理
改変フラクションII+III濾過液からその他の夾雑物を除去するために、試料を次に界面活性剤処理にかける。血漿由来画分の界面活性剤処理の方法は当技術分野において周知である。一般的に、本明細書において提供される方法と同時に任意の標準的な非イオン性界面活性剤処理を用いることができる。例えば、界面活性剤処理のプロトコルの例が以下に提供される。
【0107】
簡単に述べると、改変フラクションII+III濾過液に撹拌しながらポリソルベート−80を約0.2%(重量/体積)の終濃度で添加し、試料を約2〜8℃の間の温度で少なくとも30分間保温する。次にクエン酸ナトリウム無水物を約8g/Lの終濃度で溶液に混合し、そして、約2〜8℃の間の温度で絶えず撹拌しながら、試料をさらに30分間保温する。
【0108】
ある実施形態では、任意の適切な非イオン性界面活性剤を用いることができる。適切な非イオン性界面活性剤の例には、オクチルグルコシド、ジギトニン、C12E8、ルブロール、トリトンX−100、ノニデットP−40、ツイーン−20(すなわち、ポリソルベート−20)、ツイーン−80(すなわち、ポリソルベート−80)、アルキルポリ(エチレンオキシド)、ブリジ界面活性剤、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポロキサマー、オクチルグルコシド、デシルマルトシドなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0109】
1つの実施形態では、処理方法の改良は、流動添加よりはむしろスプレーによって洗浄性試薬(例えば、ポリソルベート−80およびクエン酸ナトリウム無水物)を添加することにより実現される。他の実施形態では、添加物が急速に分布することを確実にするために試料を混合している間に改変フラクションII+III濾過液に固形の洗浄性試薬を添加することができる。ある実施形態では、流動添加のように局所的な過度の集中が起こらないように、濾過液の非局在化された表面領域に固形試薬を散布することによって添加することが好ましい。
【0110】
7. 第3沈殿事象〜沈殿G
アルブミンおよびトランスフェリンなどの少量の残留部分を除去するために、25%のアルコール濃度で第3の沈殿を実行する。簡単に述べると、適切なpH調整溶液(例えば、1M水酸化ナトリウムまたは1M酢酸)を用いて界面活性剤で処理されたII+III濾過液のpHを約6.8と7.2の間、好ましくは約6.9と約7.1の間、最も好ましくは約7.0に調整する。次に、溶液に冷アルコールを約25%(体積/体積)の終濃度まで添加し、そして、撹拌しつつ混合物を約−6℃〜約−10℃の間の温度で少なくとも1時間保温して第3の沈殿物(すなわち、沈殿物G)を形成する。1つの実施形態では、混合物を少なくとも2時間、または、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間またはそれ以上の時間保温する。好ましい実施形態では、混合物を少なくとも2時間保温する。より好ましい実施形態では、混合物を少なくとも4時間保温する。さらにより好ましい実施形態では、混合物を少なくとも8時間保温する。
【0111】
1つの態様では、処理方法の改良は、第3沈殿工程の上清画分において失われるIgGの量が減少する方法に関連する。ある実施形態では、処理方法の改良は、沈殿用アルコールの添加直後に、または、添加中に約6.8と約7.2の間に溶液のpHを調整することによって実現される。別の実施形態では、処理方法の改良は、沈殿インキュベーション期間中、溶液のpHを約6.8と約7.2の間に絶えず維持することによって実現される。他の実施形態では、沈殿用アルコールの添加直後に、もしくは、添加中に約6.9と約7.1の間に溶液のpHを調整する、または、沈殿用アルコールの添加直後に、もしくは、添加中に約6.8、6.9、7.0、7.1もしくは7.2のpHに溶液のpHを調整する。特定の実施形態では、沈殿用アルコールの添加直後に、もしくは、添加中に約7.0に溶液のpHを調整する。ある実施形態では、沈殿インキュベーション期間中、約6.9〜約7.1の間に溶液のpHを絶えず維持する、または、沈殿インキュベーション期間中、約7.0のpHに溶液のpHを絶えず維持する。したがって、ある実施形態では、沈殿用アルコールの添加の後ではなく前にpHが調整される類似の沈殿工程、または、溶液のpHが沈殿インキュベーション工程の全体にわたって維持されない類似の沈殿工程と比較して、第3沈殿工程の上清画分において失われるIgGの量が減少する。1つの実施形態では、沈殿保持またはインキュベーション時間の間に溶液のpHを連続的に調整することにより所望のpHにpHを維持する。1つの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0112】
別の実施形態では、処理方法の改良は、流動添加よりはむしろスプレーによって沈殿用アルコールおよび/またはpH調整用溶液を添加することにより実現される。したがって、ある実施形態では、流動添加によってアルコールおよび/またはpH調整用溶液が導入される類似の沈殿工程と比較して、第3沈殿工程の上清画分中において失われるIgGの量が減少する。1つの実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0113】
8.沈殿物G(PptG)の懸濁および濾過
沈殿物GのIgG内容物を可溶化するために、冷抽出緩衝液を用いてPptGを再懸濁する。簡単に述べると、AU
280〜320値が約40〜95に達するように約0℃と約8℃の間の温度で沈殿物Gを1〜3.5の注射用水(WFI)に溶解する。次に、少なくとも2時間撹拌される溶液の最終pHを5.2±0.2または約5.2±0.2に調整する。1つの実施形態では、1M酢酸を用いてこのpH調整を実行する。IgGの溶解度を上昇させるために、懸濁液の電気伝導度を約2.5mS/cmと約6.0mS/cmの間の伝導度に上昇させる。1つの実施形態では、塩化ナトリウムを添加して電気伝導度を上昇させる。次に、溶解しなかったどんな粒子をも除去するために、約0.1μmと約0.4μmの間の公称ポアサイズを有する適切な深層フィルターを用いて懸濁PptG溶液を濾過する。1つの実施形態では、深層フィルターの公称ポアサイズは、清澄化濾過液を得るために、約0.2μmである(例えば、CunoVR06フィルターまたは同等物)。別の実施形態では、懸濁PptG溶液を遠心分離して清澄化上清を回収する。約2.5mS/cmと約6.0mS/cmの間の電気伝導度を有する塩化ナトリウム溶液を用いてフィルターの後洗浄を実行する。典型的には、沈殿物Gの抽出に適切な溶液はWFIおよび低電気泳動度緩衝液を含む。1つの実施形態では、低電気泳動度緩衝液は約10mS/cm未満の電気伝導度を有する。好ましい実施形態では、低電気泳動度緩衝液は約9、8、7、6、5、4、3、2、または1mS/cm未満の電気伝導度を有する。好ましい実施形態では、低電気泳動度緩衝液は約6mS/cm未満の電気伝導度を有する。別の好ましい実施形態では、低電気泳動度緩衝液は約4mS/cm未満の電気伝導度を有する。別の好ましい実施形態では、低電気泳動度緩衝液は約2mS/cm未満の電気伝導度を有する。
【0114】
9.溶媒界面活性剤処理
血漿由来産物中に存在し得る、様々なウイルス性夾雑物を不活化するために、次に清澄化PptG濾過液を溶媒界面活性剤(S/D)処理にかける。血漿由来画分の界面活性剤処理の方法は、当技術分野において周知である(検討用に、Pelletier JP et al., Best Pract Res Clin Haematol. 2006;19(1):205-42を参照のこと)。一般的に、本明細書において提供される方法と同時に任意の標準的なS/D処理を用いることができる。例えば、S/D処理のプロトコルの例が以下に提供される。
【0115】
簡単に述べると、トリトンX−100,ツイーン−20およびリン酸トリ(n−ブチル)(TNBP)を清澄化PptG濾過液に、それぞれ、約1.0%、0.3%および0.3%の終濃度で添加する。次に、混合物を約18℃と約25℃の間の温度で少なくとも約1時間撹拌する。
【0116】
1つの実施形態では、処理方法の改良は、流動添加よりはむしろスプレーによってS/D試薬(例えば、トリトンX−100、ツイーン−20およびTNBP)を添加することにより実現される。他の実施形態では、S/D成分の急速な分布を確実にするために混合されている清澄化PptG濾過液に固形の界面活性剤試薬を添加することができる。ある実施形態では、流動添加のように局所的な過度の集中が起こらないように、濾過液の非局在化された表面領域に固形試薬を散布することによって添加することが好ましい。
【0117】
10.イオン交換クロマトグラフィー
IgGをS/D処理したPptG濾過液からさらに精製し、そして、濃縮するために、陽イオン交換および/または陰イオン交換クロマトグラフィーを用いることができる。イオン交換クロマトグラフィーを用いるIgGの精製方法および濃縮方法は当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,886,154号は、(約3.8と4.5の間の)低pHでフラクションII+III沈殿物を抽出し、次にカプリル酸を用いてIgGを沈殿し、そして最後に2回の陰イオン交換クロマトグラフィー工程を実施する方法について記載している。米国特許第WO6,069,236号は、アルコール沈殿に全く依らないクロマトグラフィーによるIgG精製スキームについて記載している。国際公開第WO2005/073252号は、フラクションII+III沈殿物の抽出、カプリル酸処理、PEG処理および1回の陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含むIgG精製方法について記載している。米国特許第7,186,410号は、フラクションI+II+III沈殿物またはフラクションII沈殿物のどちらかの抽出とそれに続くアルカリ性のpHで実行される1回の陰イオン交換工程を含むIgG精製方法について記載している。米国特許第7,553,938号は、フラクションI+II+III沈殿物またはフラクションII+III沈殿物のどちらかの抽出、カプリル酸処理および1回か2回のどちらかの陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含む方法について記載している。米国特許第6,093,324号は、約6.0と約6.6の間のpHで操作されるマクロポーラス陰イオン交換樹脂の使用を含む精製方法について記載している。米国特許第6,835,379号は、アルコール分画なしで陽イオン交換クロマトグラフィーに依る精製方法について記載している。上記の出版物の開示をこれにより、全ての目的のためにその全体を参照して組み込む。
【0118】
本発明の方法の1つの実施形態では、S/D処理したPptG濾過液を陽イオン交換クロマトグラフィーと陰イオン交換クロマトグラフィーの両方にかけることができる。例えば、1つの実施形態では、S/D処理したPptG濾過液を、溶液中のIgGを結合する陽イオン交換カラムに通す。次に、吸着されたIgGからS/D試薬を洗い流すことができ、その後に約8.0と9.0の間のpHを有する高pH溶出緩衝液を用いてカラムからIgGが溶出される。この方法で、調製物からS/D試薬を除去するために、IgG含有溶液を濃縮するために、または、両方のために陽イオン交換クロマトグラフィー工程を用いることができる。ある実施形態では、pH溶出緩衝液は、約8.2と約8.8の間のpH、または、約8.4と約8.6の間のpH、または、約8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9または9.0のpHを有することができる。好ましい実施形態では、溶出緩衝液のpHは約8.5±0.1である。
【0119】
ある実施形態では、陽イオン交換カラムからの溶離液をより低いpH、例えば、約5.5と約6.5の間のpHに調整し、そして、溶液の電気伝導度が減少するように適切な緩衝液で希釈することができる。ある実施形態では、陽イオン交換溶離液のpHを約5.7と約6.3の間のpHまたは約5.9と約6.1間のpHまたは約5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4または6.5のpHに調整することができる。好ましい実施形態では、溶離液のpHを約6.0±0.1のpHに調整する。次に、調製物中に見られるいくつかの夾雑物を結合する陰イオン交換カラムに溶離液を負荷する。カラムへの負荷と洗浄の間にIgG画分を含むカラムの通過画分を回収する。ある実施形態では、本発明のイオン交換クロマトグラフィー工程をカラムモード、バッチモードまたはその2つの組合せで実行することができる。
【0120】
ある実施形態では、処理方法の改良は、流動添加よりはむしろスプレーによってpH調整用溶液を添加することにより実現される。
【0121】
11.ナノ濾過および限外/透析濾過
本明細書において提供されるIgG組成物のウイルス負荷をさらに低減させるために、適切なナノ濾過装置を用いて陰イオン交換カラム溶出液をナノ濾過することができる。ある実施形態では、ナノ濾過装置は約15nmと約200nmの間の平均ポアサイズを有するであろう。この使用法に適切なナノフィルターの例には、DVD、DV50、DV20(ポール)、Viresolve NFP、Viresolve NFR(ミリポア)、プラノバ15N、20N、35Nおよび75N(プラノバ)が含まれるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、ナノフィルターは、約15nmと約72nmの間、または、約19nmと約35nmの間、または、約15nm、19nm、35nmまたは72nmの平均ポアサイズを有することができる。好ましい実施形態では、ナノフィルターは、アサヒプラノバ35Nフィルターまたはその同等物のように約35nmの平均ポアサイズを有するであろう。
【0122】
所望により、ナノ濾過液をさらに濃縮するために限外濾過/透析濾過を実行することができる。1つの実施形態では、特別に計画された後洗浄と共にオープンチャンネル膜を使用し、そして、製造プロセスの終わり近くでの製剤化によって、収率と保存安定性に影響することなく、結果生じるIgG組成物のタンパク質濃度が最新式のIVIG(例えば、GAMMAGARD(登録商標)LIQUID)と比較して約2倍(200mg/mL)になる。市販の限外濾過膜の大半では、大幅なタンパク質の損失なくIgGの濃度を200mg/mLにすることはできない。これらの膜は早期に閉塞されるであろう。したがって、十分な後洗浄は達成するのが困難である。したがって、オープンチャンネル膜構造を用いなければならない。オープンチャンネル膜でも、タンパク質を著しく損失することなく(2%未満の損失)要求される濃度を得るためには特別に計画された後洗浄方法を用いなければならない。さらにずっと驚くべきことは、200mg/mLもの高いタンパク質濃度が低pH保存工程のウイルス不活化能力に影響を与えない事実である。
【0123】
ナノ濾過の次に、濾過液は限外濾過/透析濾過によってさらに濃縮され得る。1つの実施形態では、限外濾過によってナノ濾過液を約2%と約10%(重量/体積)の間のタンパク質濃度まで濃縮することができる。ある実施形態では、オープンチャンネルスクリーンを含むカセット中で限外濾過を実行し、そして、限外濾過膜は、約100kDa未満または約90、80、70、60、50、40、30kDa未満またはそれ以下の公称分画分子量(NMWCO)を有する。好ましい実施形態では、限外濾過膜は50kDa以下のNMWCOを有する。
【0124】
限外濾過工程が完了したら、静脈内または筋肉内投与に適切な溶液に対する透析濾過によって濃縮物をさらに濃縮することができる。ある実施形態では、透析濾過溶液は安定化剤および/または緩衝化剤を含むことができる。好ましい実施形態では、安定化剤および緩衝化剤は適切な濃度のグリシン、例えば、約0.20Mと約0.30Mの間の、または、約0.22Mと約0.28Mの間の、または、約0.24Mと約0.26mMの間の、または約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または3.0の濃度のグリシンである。好ましい実施形態では、透析濾過緩衝液は0.25Mまたは約0.25Mの濃度のグリシンを含む。
【0125】
典型的には、最小交換体積は元の濃縮物の体積の少なくとも約3倍、または、元の濃縮物の体積の少なくとも約4、5、6、7、8、9倍またはそれ以上である。約5%と約25%(重量/体積)の間の、または、約6%と約18%(重量/体積)の間の、または、約7%と約16%(重量/体積)の間の、または、約8%と約14%(重量/体積)の間の、または、約9%と約12%の間の最終タンパク質濃度に、または、約5%または6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%またはそれ以上の終濃度にIgG溶液を濃縮することができる。1つの実施形態では、後洗浄画分を濃縮溶液に加えることなく少なくとも約23%の最終タンパク質濃度が達成される。別の実施形態では、後洗浄画分を濃縮溶液に加えることなく少なくとも約24%の最終タンパク質濃度が達成される。後洗浄画分を濃縮溶液に加えることなく少なくとも約25%の最終タンパク質濃度が達成される。典型的には、濃縮処理の終わりに溶液のpHは約4.6〜5.1の間であろう。
【0126】
例示的な実施形態では、限外濾過の前にIgG組成物のpHは約4.5に調整される。限外濾過によって5±2%(重量/体積)のタンパク質濃度に溶液を濃縮する。限外濾過膜は50,000ダルトン以下の公称分画分子量(NMWCO)を有する(ミリポアペリコンポリエーテルスルホン膜)。濃縮物を10倍の体積のpH4.5±0.2の0.25Mグリシン溶液に対して透析濾過する。限外濾過〜透析濾過の操作を通して、約2℃〜約8℃の間の温度に溶液を維持する。透析濾過の後に、少なくとも11%(重量/体積)のタンパク質濃度に溶液が濃縮される。
【0127】
12.製剤化
透析濾過工程が完了したら、透析濾過緩衝液を用いて溶液のタンパク質濃度を約5%と約20%(重量/体積)の間、または、約6%と約18%(重量/体積)の間、または、約7%と約16%(重量/体積)の間、または、約8%と約14%(重量/体積)の間、または、約9%と約12%の間の終濃度に、または、約5%または6%,7%,8%,9%,10%,11%,12%,13%,14%,15%,16%,17%,18%,19%または20%の終濃度に調整する。好ましい実施形態では、溶液の最終タンパク質濃度は約9%と約11%の間、より好ましくは約10%である。
【0128】
約0.22μm以下の、例えば、約0.2μmの絶対ポアサイズを有する膜フィルターに通して濾過することによって、製剤化されたバルク溶液をさらに無菌化する。次に、試験のために試料をとっておきつつ、適切な密封用の最終容器に溶液を無菌的に分配する。
【0129】
1つの実施形態では、透析濾過緩衝液を用いてIgG組成物を約10.2±0.2%(重量/体積)の濃度にさらに調整する。必要に応じて、pHを約4.4〜約4.9に調整する。最後に、溶液を濾過滅菌し、そして、30℃または約30℃で3週間保温する。
【0130】
13.アルコール添加
好都合なことに、血漿からIgGを分画するために、流動添加よりはむしろスプレーによるアルコールの添加がIgG収量の損失の減少をもたらすことが明らかになっている。理論に縛られるものではないが、血漿画分への流動添加中に、流体の進入位置でのアルコールの一時的で局所的な過度の集中が、上清中にIgGが残っているであろう工程の間でのIgGのタンパク質変性および不可逆的な損失および/または沈殿に至る可能性がある。さらに、少なくとも100Lのプールされた血漿の分画を含む工業スケールの精製のように、大容量のアルコールが添加される必要があるとき、これらの効果は増幅される可能性がある。
【0131】
スプレーによるアルコール添加の効果は、流動添加(1および2)またはスプレー添加(3および4)のどちらかにより8%エタノールを導入して脱クリオ血漿試料を沈殿する実施例14で例示される。表14に見ることができるように、スプレーによって試料にエタノールを添加すると脱クリオ血漿中に存在する100%近くのIgGが上清中に回収され、一方、流動添加によりアルコールを添加すると4〜5%のIgGが失われる。これにより、この工程だけで約0.20g/Lと0.25g/Lの間のIgG喪失という結果になる。2007年の製造レベルで言えば、これは約530万グラム(5,300キログラム)のIgGの損失ということを意味する。現在のIVIG市場価格を前提とすると、グラムあたり$50と$100の間の範囲であるが、この工程での4〜5%の損失は年に5億ドルまでの世界的な経済的損失を意味する。
【0132】
したがって、本明細書において提供される方法の1つの態様では、アルコールのスプレー添加によって1つ以上の沈殿工程を実行する。ある実施形態では、いかなる加圧装置、例えば、スプレーヘッドまたはノズルを有し、そして手動でまたは自動で操作されて液体から微細な霧を発生させる容器(例えば、スプレーボトル)でも使用することによってスプレー添加を実行することができる。ある実施形態では、系内で液体の急速かつ均等な分配を確実にするために、系を連続的に撹拌するかまたは混合しながら、スプレー添加を実行する。
【0133】
14.pHの調整
血漿画分のタンパク質沈殿特性は、血漿タンパク質が沈殿させられている溶液のpHに大きく依存する。この事実は、それぞれ1946年および1949年にコーン法とオンクレイ法が導入されて以来、血漿タンパク質を分画する科学者に利用されてきた。伝統的には、目的の構成成分の最高の回収収率を促進するために、アルコール添加の前に血漿画分のpHが調整される。好都合なことに、アルコール添加直後またはアルコール添加と同時に溶液のpHを調整することによって、より確定的なかつ再現性のある沈殿がもたらされることが今では明らかになっている。血漿画分へのエタノール添加が、一般には溶液のpHを上昇させることによって、溶液のpHに変動をもたらすことが明らかになった。したがって、アルコール添加後ではなく添加前に血漿画分のpHを所定のpHに調整することによって、最適ではないpHで沈殿反応が起こるであろう。
【0134】
同様に、血漿画分からのタンパク質の沈殿は、静電的環境をもたらし、そしてそれによって溶液のpHを変化させるであろう。したがって、沈殿事象を進めさせておくと、目的のタンパク質種の最大の回収率を可能にする所定のpH値から溶液のpHが離れ始めるであろう。タンパク質の大きな分画が沈殿されつつある沈殿事象、高アルコール含量が用いられる沈殿事象、および、長いインキュベーション期間を必要とする沈殿事象にこれは特に当てはまる。
【0135】
血漿画分のpH調整の効果は、実施例16に見られる結果によって例示される。この実施例では、アルコールのスプレー添加の後に上清I画分の2つの試料からIgGを沈殿した。両方の試料のpHは、アルコール添加の前に6.7に調整され、アルコール添加の後であるが10時間の沈殿インキュベーション工程の前に6.9に再調整された。第1の試料(基準試料)では10時間のインキュベーション中にpHを調整しないが、一方、試料2(連続調整試料)では10時間の沈殿インキュベーション中にpH6.9にpHを絶えず調整した。表16に見ることができるように、試料から改変フラクションII+III沈殿物を除去した後に、第1の上清は1Lの血漿あたり0.2gのIgGを含み、一方、沈殿インキュベーション中にpHが一定に保持された第2試料は1Lの血漿あたり0.13gだけのIgGを含んだ。第2試料での1Lの血漿あたり0.07gのIgGという減少した損失は、2007年の製造レベルで言えば、約190万グラム(1,900キログラム)のIgGの損失を意味する。現在のIVIG市場価格を前提とすると、グラムあたり$50と$100の間の範囲であるが、この工程での1.5%の損失は年に2億ドルまでの世界的な経済的損失を意味する。
【0136】
したがって、本明細書において提供される方法の1つの態様では、アルコール添加の直後に血漿画分のpHを調整する。関連する実施形態では、アルコール添加の前後、または、アルコール添加中および添加後、または、アルコール添加前、添加中および添加後にpHを調整することができる。関連する実施形態では、1つ以上のアルコール沈殿事象またはインキュベーションの間に溶液のpHを連続的に調整する。ある実施形態では、系内でのpH調整剤の急速かつ均等な分配を確実にするために系を連続的に撹拌するかまたは混合しながら溶液のpHを連続的に調整する、または、維持する。
【0137】
流動アルコール添加の場合と同様に、大容量のpH調整剤の流動添加が一時的で局所的なpHの変化を引き起こす可能性があり、望まないタンパク質変性または沈殿という結果になることが今では明らかになっている。したがって、本明細書において提供される方法の1つの実施形態では、1つ以上の血漿分画工程にスプレー添加によってpH調整剤を導入することができる。本明細書において提供される方法の別の実施形態では、血漿画分または沈殿工程のpHはpH調整剤のスプレー添加によって調整されることができる。ある実施形態では、いかなる加圧装置、例えば、スプレーヘッドまたはノズルを有し、そして手動でまたは自動で操作されて液体から微細な霧を発生させる容器(例えば、スプレーボトル)をも使用することによってスプレー添加を実行することができる。ある実施形態では、系内で液体の急速かつ均等な分配を確実にするために系を連続的に撹拌するかまたは混合しながらスプレー添加を実行する。
【0138】
III.濃縮IgG組成物
ある自己免疫症状の治療について抗体全体を含むIVIG組成物が記述されている。(例えば、米国特許公開第US2002/0114802号、第US2003/0099635号および第US2002/0098182号を参照のこと。)これらの引用文献において開示されるIVIG組成物はポリクローナル抗体を含む。
【0139】
1.水性IgG組成物
1つの態様では、本発明は本明細書において提供される方法によって調製された水性IgG組成物に関連する。一般に、本明細書において記載される新しい方法で調製されたIgG組成物は、高いIgG含量および純度を有するであろう。例えば、本明細書において提供されるIgG組成物は、少なくとも約3%(重量/体積)のタンパク質濃度および約90%より高い純度のIgG内容物を有しうる。これらの高純度のIgG組成物は、治療的投与、例えば、IVIG療法、に好適である。1つの実施形態では、IgG濃度は約10%であり、静脈内投与に用いられる。別の実施形態では、濃度は約20%であり、皮下または筋肉内投与に用いられる。
【0140】
1つの実施形態では、本発明は、以下の各工程を含む方法によって調製された水性IgG組成物を含む:(a)第1の沈殿工程において、約6.7と約7.3との間のpHで、約6%と約10%との間のアルコールを用いて脱クリオ
血漿分画を沈殿させて、IgGが富化された上清を得る工程、(b)約6.7と約7.3との間のpHで、約20%と約30%との間のアルコールを用いて上清からIgGを沈殿させて、第1の沈殿を形成する工程、(c)工程(b)で形成された第1の沈殿を再懸濁し懸濁液を形成する工程、(d)工程(c)で形成された懸濁液を界面活性剤で処理する工程、(e)約6.7と約7.3との間のpHで、約20%と約30%との間のアルコールを用いて懸濁液からIgGを沈殿させて、第2の沈殿を形成する工程、(f)工程(e)で形成された第2の沈殿を再懸濁し、懸濁液を形成する工程、(g)工程(f)で形成された懸濁液を溶媒および/または界面活性剤で処理する工程、および(h)少なくとも1つのイオン交換クロマトグラフィー分画法を実施し、それによって濃縮されたIgG組成物を調製する工程。
【0141】
特定の実施形態では、以下の各工程を含む方法によって調製されたIgG組成物が提供される:(a)脱クリオ血漿分画のpHを約7.0に調整する工程、(b)約−5℃と約−9℃との間の温度で、工程(a)の脱クリオ血漿分画のエタノール濃度を約25%(体積/体積)に調整し、それによって混合物を形成する工程、(c)工程(b)の混合物から液体と沈殿とを分離する工程、(d)工程(c)の沈殿を、リン酸塩と酢酸塩とを含む緩衝液に再懸濁し、ここで緩衝液のpHは緩衝液1000Lあたり600mLの氷酢酸を用いて調整され、それによって懸濁液を形成する工程、(e)微粉化した二酸化ケイ素(SiO2)を工程(d)の懸濁液と少なくとも約30分間混合する工程、(f)懸濁液を加圧濾過機を用いて濾過し、それによって濾過液を形成する工程、(g)加圧濾過機を、加圧濾過機デッドボリュームの少なくとも3倍量の、リン酸塩および酢酸塩を含む緩衝液を用いて洗浄し、ここで緩衝液のpHは緩衝液1000Lあたり150mLの氷酢酸を用いて調整されており、それによって洗浄液を形成する工程、(h)工程(f)の濾過液を工程(g)の洗浄液と合わせ、それによって溶液を形成し、そしてその溶液を界面活性剤を用いて処理する工程、(i)工程(h)の溶液のpHを約7.0に調整し、そしてエタノールを最終濃度約25%で添加し、それによって沈殿を形成する工程、(j)工程(i)の混合物から液体と沈殿とを分離する工程、(k)沈殿を、溶媒または界面活性剤を含む水性溶液に溶解し、溶液を少なくとも60分間保持する工程、(l)工程(k)の後の溶液を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに通し、そしてカラムに吸着されたタンパク質を溶離液中に溶出する工程、(m)工程(l)の溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに通して溶出液を生成する工程、(n)工程(m)の溶出液をナノフィルターに通してナノ濾過液を生成する工程、(o)工程(n)のナノ濾過液を限外濾過膜に通して限外濾過液を生成する工程、および(p)工程(o)の限外濾過液を透析濾過緩衝液に対して透析濾過して、約8%(重量/体積)と約12%(重量/体積)との間のタンパク質濃度の透析濾過液を生成し、それによって濃縮されたIgG組成物を得る工程。
【0142】
ある実施形態では、水性IgG組成物は、上記の2つまたはそれ以上の分画処理工程における改善を含む、本明細書において提供される方法を用いて調製される。例えば、ある実施形態では、改善は、第1の沈殿工程、改変されたフラクションII+III沈殿工程、改変されたフラクションII+III溶解工程、および/または改変されたフラクションII+III懸濁液濾過工程、に見いだされ得る。
【0143】
1つの実施形態では、水性IgG組成物は、本明細書において記載される精製方法によって提供され、ここで、その方法は、他の方法では流動添加によって血漿分画に導入されるであろうが、1つ以上の溶液のスプレー添加を含む。例えば、ある実施形態では、方法は、スプレーによる血漿分画へのアルコール(例えば、エタノール)添加を含むであろう。他の実施形態では、スプレーによって血漿分画に添加され得る溶液は、これに限定されるものではないが、pH調整溶液、溶媒溶液、界面活性剤溶液、希釈緩衝液、伝導度調整溶液など、を含む。好ましい実施形態では、1つ以上のアルコール沈殿工程が、血漿分画へのスプレーによるアルコール添加によって実施される。第2の好ましい実施形態では、1つまたは複数のpH調整工程が、血漿分画へのスプレーによるpH調整溶液添加によって実施される。
【0144】
ある実施形態では、水性IgG組成物は、本明細書において記載される精製方法によって提供され、ここで、その方法は、沈殿剤(例えば、アルコールまたはポリエチレングリコール)添加の後または添加と同時に、沈殿させられる血漿分画のpHを調整することを含む。いくつかの実施形態では、プロセス改善がもたらされ、そこでは能動的に沈殿させられる血漿分画のpHが、pHの継続的監視および調整によって、沈殿インキュベーションまたは保持工程全体にわたって維持される。好ましい実施形態では、pHの調整は、pH調整溶液のスプレー添加によって実施される。
【0145】
1つの実施形態では、本発明は、約30g/Lと約250g/Lとの間の濃度のタンパク質を含む水性IgG組成物を提供する。ある実施形態では、IgG組成物のタンパク質濃度は、約50g/Lと約200g/Lとの間、または約70g/Lと約150g/Lとの間、または約90g/Lと約120g/Lとの間、またはこれらの範囲を含むあらゆる好適な濃度、例えば約30 g/L、または約35g/L、40g/L、45g/L、50g/L、55g/L、60g/L、65g/L、70g/L、75g/L、80g/L、85g/L、90g/L、95g/L、100g/L、105g/L、110g/L、115g/L、120g/L、125g/L、130g/L、135g/L、140g/L、145g/L、150g/L、155g/L、160g/L、165g/L、170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/L、200g/L、205g/L、210g/L、215g/L、220g/L、225g/L、230g/L、235g/L、240g/L、245g/L、250g/L、またはより高い、である。好ましい実施形態では、水性IgG組成物は、10%または約10%の濃度であろう。特に好ましい実施形態では、組成物は10.2±0.2%(重量/体積)の濃度であろう。他の好ましい実施形態では、水性IgG組成物は、20%または約20%の濃度であろう。
【0146】
本明細書において提供される方法は、非常に高いレベルの純度を有するIgG組成物の調製を可能にさせる。1つの実施形態では、本明細書において提供される組成物中の全タンパク質の少なくとも約95%がIgGであろう。他の実施形態では、タンパク質の少なくとも約96%がIgGであり、または組成物中の全タンパク質の少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、またはより高い、がIgGであろう。好ましい実施形態では、組成物中の全タンパク質の少なくとも97%がIgGであろう。別の好ましい実施形態では、組成物中の全タンパク質の少なくとも98%がIgGであろう。別の好ましい実施形態では、組成物中の全タンパク質の少なくとも99%がIgGであろう。
【0147】
同様に、本明細書において提供される方法は、非常に低いレベルの混入物を含むIgG組成物の調製を可能にさせる。例えば、表19は、本明細書において提供される改良された方法によって調製された3つのIgGバルク溶液の純度試験結果を提供する。ある実施形態では、約140mg/Lより少ないIgAを含むIgG組成物が提供される。他の実施形態では、IgG組成物は、約60mg/Lより少ないIgA、好ましくは約40mg/Lより少ないIgA、最も好ましくは約30mg/Lより少ないIgAを含むであろう。
【0148】
別の実施形態では、約50mg/Lより少ないIgMを含むIgG組成物が提供される。他の実施形態では、IgG組成物は、約25mg/Lより少ないIgM、好ましくは約10mg/Lより少ないIgM、より好ましくは約5mg/Lより少ないIgM、より好ましくは約4mg/Lより少ないIgM、より好ましくは約3mg/Lより少ないIgM、最も好ましくは約2.5mg/Lより少ないIgMを含むであろう。
【0149】
別の実施形態では、毎分約100 PL−1 nmol/mLより少ないアミド分解活性を含むIgG組成物が提供される。他の実施形態では、IgG組成物は毎分約50 PL−1 nmol/mLより少ないアミド分解活性、好ましくは毎分約25 PL−1 nmol/mLより少ないアミド分解活性、より好ましくは毎分約20 PL−1 nmol/mLより少ないアミド分解活性、より好ましくは毎分約15 PL−1 nmol/mLより少ないアミド分解活性、最も好ましくは毎分約10 PL−1 nmol/mLより少ないアミド分解活性を含むであろう。
【0150】
別の実施形態では、約20mg/Lより少ないフィブリノーゲンを含むIgG組成物が提供される。他の実施形態では、IgG組成物は約10mg/Lより少ないフィブリノーゲン、好ましくは約5mg/Lより少ないフィブリノーゲン、より好ましくは約2.5mg/Lより少ないフィブリノーゲン、より好ましくは約1mg/Lより少ないフィブリノーゲン、より好ましくは約0.5mg/Lより少ないフィブリノーゲン、最も好ましくは約0.25mg/Lより少ないフィブリノーゲン、を含むであろう。
【0151】
さらに別の実施形態では、主としてIgG単量体/二量体からなるIgG組成物が提供される。1つの実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%のIgGが単量体または二量体であるIgG組成物が提供される。好ましい実施形態では、少なくとも97%のIgGが単量体または二量体であるIgG組成物が提供される。より好ましい実施形態では、少なくとも99%のIgGが単量体または二量体である。より好ましい実施形態では、少なくとも99.5%のIgGが単量体または二量体である。より好ましい実施形態では、少なくとも99.7%のIgGが単量体または二量体である。
【0152】
2.医薬組成物
別の態様では、本発明は、本明細書において提供される方法によって調製された、精製されたIgGを含む医薬組成物および製剤を提供する。一般的に、本明細書において記載される新しい方法によって調製されたIgG医薬組成物および製剤は、高いIgG含量および純度を有するであろう。例えば、本明細書において提供されるIgG医薬組成物および製剤は、少なくとも約7%(重量/体積)のタンパク質濃度および約95%より高い純度のIgG含量を有する。これらの高純度IgG医薬組成物および製剤は、治療的投与、例えば、IVIG療法のために適している。好ましい実施形態では、医薬IgG組成物は、静脈内投与(例えば、IVIG療法)のために製剤化される。
【0153】
1つの実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、本明細書において提供される方法を用いて単離された水性IgG組成物を製剤化することによって調製される。一般的に、製剤化された組成物は、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、最も好ましくは少なくとも3つのウイルス不活化または除去工程を受ける。本明細書において提供される方法で使用され得るウイルス不活化または除去工程の非限定的な例は、溶媒界面活性剤処理(Horowitz et al., Blood Coagul Fibrinolysis 1994 (5 Suppl 3):S21-S28 and Kreil et al., Transfusion 2003 (43):1023-1028, いずれも、あらゆる目的のために、引用によりその全てが明示的に本明細書に組み入れられるものとする)、ナノ濾過(Hamamoto et al., Vox Sang 1989 (56)230-236 and Yuasa et al., J Gen Virol. 1991 (72 (pt 8)):2021-2024, いずれも、あらゆる目的のために、引用によりその全てが明示的に本明細書に組み入れられるものとする)、および高温下での低pHインキュベーション(Kempf et al., Transfusion 1991 (31)423-427 and Louie et al., Biologicals 1994 (22):13-19)を含む。
【0154】
ある実施形態では、約80g/L IgGと約120g/L IgGとの間のIgG含量を有する医薬製剤が提供される。一般的には、これらのIVIG製剤は、本明細書において記載される方法を使用して、血漿からIgG組成物を単離すること、組成物を濃縮すること、および静脈内投与に適した溶液中に濃縮された組成物を製剤化することによって調製される。IgG組成物は、当業者に知られている適切な方法を使用して濃縮され得る。1つの実施形態では、組成物は、限外濾過法/透析濾過法によって濃縮される。いくつかの実施形態では、組成物を濃縮するために使用される限外濾過装置は、約100kDaより小さいまたは約90、80、70、60、50、40、30より小さい、またはより小さいkDaの公称分画分子量(NMWCO)を有する限外濾過膜を用いるであろう。好ましい実施形態では、限外濾過膜は50kDa以下のNMWCOを有する。緩衝液交換は、当業者に知られている適切な方法によって達成され得る。特定の実施形態では、緩衝液交換は、透析濾過によって達成される。
【0155】
1つの特定の実施形態では、IgGの医薬組成物が提供され、ここで、IgG組成物は、以下の各工程を含む方法を使用して血漿から精製される:(a)第1の沈殿工程において、約6.7と約7.3との間のpHで、約6%と約10%との間のアルコールを用いて脱クリオ
血漿分画を沈殿させて、IgGが富化された上清を得る工程、(b)約6.7と約7.3との間のpHで、約20%と約30%との間のアルコールを用いて上清からIgGを沈殿させて、第1の沈殿を形成する工程、(c)工程(b)で形成された第1の沈殿を再懸濁して、懸濁液を形成する工程、(d)工程(c)で形成された懸濁液を界面活性剤で処理する工程、(e)約6.7と約7.3との間のpHで、約20%と約30%との間のアルコールを用いて懸濁液からIgGを沈殿させて、第2の沈殿を形成する工程、(f)工程(e)で形成された第2の沈殿を再懸濁して、懸濁液を形成する工程、(g)工程(f)で形成された懸濁液を溶媒および/または界面活性剤で処理する工程、(h)少なくとも1つのイオン交換クロマトグラフィー分画法を実施する工程;(i)溶媒界面活性剤処理を実施する工程;および(j)組成物をナノ濾過法にかけ、それによってIgG組成物を調製する工程。
【0156】
特定の実施形態では、IgGの医薬組成物が提供され、ここでIgG組成物は、以下の各工程を含む方法を用いて血漿から精製される:(a)脱クリオ血漿分画のpHを約7.0に調整する工程、(b)工程(a)の脱クリオ血漿分画のエタノール濃度を、約−5℃と約−9℃との間の温度で、約25%(体積/体積)に調整し、それによって混合物を形成する工程、(c)工程(b)の混合物から液体と沈殿とを分離する工程、(d)工程(c)の沈殿を、リン酸塩と酢酸塩とを含む緩衝液を用いて再懸濁し、ここで緩衝液のpHは緩衝液1000Lあたり600mLの氷酢酸を用いて調整する、それによって懸濁液を形成する工程、(e)微粉化した二酸化ケイ素(SiO2)を工程(d)の懸濁液と、少なくとも約30分間混合する工程、(f)懸濁液を加圧濾過機によって濾過し、それによって濾過液を形成する工程、(g)加圧濾過機を、加圧濾過機デッドボリュームの少なくとも3倍量の、リン酸塩および酢酸塩を含む緩衝液を用いて洗浄し、ここで緩衝液のpHは緩衝液1000Lあたり150mLの氷酢酸を用いて調整されており、それによって洗浄液を形成する工程、(h)工程(f)の濾過液を工程(g)の洗浄液と合わせ、それによって溶液を形成し、そしてその溶液を界面活性剤を用いて処理する工程、(i)工程(h)の溶液のpHを約7.0に調整し、そしてエタノールを最終濃度約25%で添加し、それによって沈殿を形成する工程、(j)工程(i)の混合物から液体と沈殿とを分離する工程、(k)沈殿を、溶媒または界面活性剤を含む水性溶液に溶解し、溶液を少なくとも60分間保持する工程、(l)工程(k)の後の溶液を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに通し、そしてカラムに吸着されたタンパク質を溶離液中に溶出する工程、(m)工程(l)の溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに通して溶出液を生成する工程、(n)工程(m)の溶出液をナノフィルターに通してナノ濾過液を生成する工程、(o)工程(n)のナノ濾過液を限外濾過膜に通して限外濾過液を生成する工程、および(p)工程(o)の限外濾過液を透析濾過緩衝液に対して透析濾過して、約8%(重量/体積)と約12%(重量/体積)との間のタンパク質濃度の透析濾過液を生成し、それによって濃縮されたIgGの組成物を得る工程。
【0157】
ある実施形態では、IgGの医薬組成物が提供される、ここでIgG組成物は、上記の2またはそれ以上の分画処理工程における改善を含む、本明細書において提供される方法を用いて調製される。例えば、ある実施形態では、改善は、第1の沈殿工程、改変されたフラクションII+III沈殿工程、改変されたフラクションII+III溶解工程、および/または改変されたフラクションII+III懸濁液濾過工程、に見いだされ得る。
【0158】
ある実施形態では、IgGの医薬組成物が提供される、ここでIgG組成物は本明細書において記載される精製方法を用いて調製され、その方法は、他の方法では流動添加によって血漿分画に導入されるであろうが、1つ以上の溶液のスプレー添加を含む。例えば、ある実施形態では、方法は、スプレーによる血漿分画へのアルコール(例えば、エタノール)添加を含むであろう。他の実施形態では、スプレーによって血漿分画に添加され得る溶液は、これに限定されるものではないが、pH調整溶液、溶媒溶液、界面活性剤溶液、希釈緩衝液、伝導度調整溶液など、を含む。好ましい実施形態では、1つ以上のアルコール沈殿工程が、血漿分画へのスプレーによるアルコール添加によって実施される。第2の好ましい実施形態では、1または複数のpH調整工程が、血漿分画へのスプレーによるpH調整溶液添加によって実施される。
【0159】
ある実施形態では、IgGの医薬組成物が提供される、ここで、IgG組成物は本明細書において記載される精製方法によって調製され、その方法は、沈殿剤(例えば、アルコールまたはポリエチレングリコール)添加の後または添加と同時の、沈殿させられる血漿分画のpHの調整を含む。いくつかの実施形態では、プロセス改善がもたらされ、そこでは能動的に沈殿させられる血漿分画のpHが、pHの継続的監視および調整によって、沈殿インキュベーションまたは保持工程全体にわたって維持される。好ましい実施形態では、pHの調整は、pH調整溶液のスプレー添加によって実施される。
【0160】
1つの実施形態では、本発明は、約70g/Lと約130g/Lとの間の濃度のタンパク質を含むIgGの医薬組成物を提供する。ある実施形態では、IgG組成物のタンパク質濃度は約80g/Lと約120g/Lとの間、好ましくは約90g/Lと約110g/Lとの間、最も好ましくは約100g/L、またはこれらの範囲中のあらゆる適切な濃度、例えば約70g/L、75g/L、80g/L、85g/L、90g/L、95g/L、100g/L、105g/L、110g/L、115g/L、120g/L、125g/L、または130g/Lである。好ましい実施形態では、タンパク質濃度が100g/Lまたは約100g/Lの医薬組成物が提供される。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、102g/Lまたは約102g/Lのタンパク質濃度を有するであろう。
【0161】
別の実施形態では、本発明は、約170g/Lと約230g/Lとの間の濃度のタンパク質を含むIgG医薬組成物を提供する。ある実施形態では、IgG組成物のタンパク質濃度は約180g/Lと約220g/Lとの間、好ましくは約190g/Lと約210g/Lとの間、最も好ましくは約200g/L、またはこれらの範囲中のあらゆる適切な濃度、例えば約170g/L、175g/L、180g/L、185g/L、190g/L、195g/L、200g/L、205g/L、210g/L、215g/L、220g/L、225g/L、または230g/Lである。好ましい実施形態では、200g/Lまたは約200g/Lのタンパク質濃度を有する医薬組成物が提供される。
【0162】
本明細書において提供される方法は、非常に高いレベルの純度を有するIgG医薬組成物の調製を可能にさせる。例えば、1つの実施形態では、本明細書において提供される組成物中の全タンパク質の少なくとも約95%がIgGであろう。他の実施形態では、タンパク質の少なくとも約96%がIgGであり、または組成物中の全タンパク質の少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、またはより高い、がIgGであろう。好ましい実施形態では、組成物中の全タンパク質の少なくとも約97%がIgGであろう。別の好ましい実施形態では、組成物中の全タンパク質の少なくとも約98%がIgGであろう。別の好ましい実施形態では、組成物中の全タンパク質の少なくとも約99%がIgGであろう。
【0163】
同様に、本明細書において提供される方法は、非常に低いレベルの混入物を含むIgG医薬組成物の調製を可能にさせる。例えば、ある実施形態では、約100mg/Lより少ないIgAを含むIgG組成物が提供される。他の実施形態では、IgG組成物は、約50mg/Lより少ないIgA、好ましくは約35mg/Lより少ないIgA、最も好ましくは約20mg/Lより少ないIgAを含むであろう。
【0164】
本明細書において提供される医薬組成物は、典型的には、静脈内、皮下、および/または筋肉内投与に適した1つ以上の緩衝剤またはpH安定剤を含むであろう。本明細書において提供されるIgG組成物の製剤化に適した緩衝剤の非限定的な例は、適切なpHに調整されたグリシン、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、ヒスチジンまたはその他のアミノ酸、グルコン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、炭酸塩、またはこれらの任意の組み合わせ、を含む。一般的に、緩衝剤は、製剤中で長期間にわたって適切なpHに維持するのに十分であろう。好ましい実施形態では、緩衝剤はグリシンである。
【0165】
いくつかの実施形態では、製剤中の緩衝剤の濃度は、約100mMと約400mMとの間、好ましくは約150mMと約350mMとの間、より好ましくは約200mMと約300mMとの間、最も好ましくは約250mMである。特に好ましい実施形態では、IVIG組成物は約200mMと約300mMとの間のグリシン、最も好ましくは、約250mMのグリシンを含むであろう。
【0166】
ある実施形態では、製剤のpHは約4.1と約5.6との間、好ましくは約4.4と約5.3との間、最も好ましくは約4.6と約5.1との間であろう。特定の実施形態では、製剤のpHは約4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、または5.6であり得る。好ましい実施形態では、製剤のpHは約4.6と約5.1との間であろう。
【0167】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、任意でさらに組成物の浸透圧を調節するための薬剤を含んでもよい。浸透圧調節剤の非限定的な例は、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、ショ糖、ブドウ糖、デキストロース、レブロース、果糖、乳糖、ポリエチレングリコール類、リン酸塩類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グルコノグルコヘプトン酸カルシウム、ジメチルスルホンなど、を含む。
【0168】
典型的には、本明細書において提供される製剤は、生理的な浸透圧と同程度の浸透圧、約285から295mOsmol/kgを有するであろう(Lacy et al., Drug Information Handbook - Lexi-Comp 1999:1254。ある実施形態では、製剤の浸透圧は約200mOsmol/kgと約350mOsmol/kgとの間、好ましくは約240と約300mOsmol/kgとの間であろう。特定の実施形態では、製剤の浸透圧は約200mOsmol/kg、または210mOsmol/kg、220mOsmol/kg、230mOsmol/kg、240mOsmol/kg、245mOsmol/kg、250mOsmol/kg、255mOsmol/kg、260mOsmol/kg、265mOsmol/kg、270mOsmol/kg、275mOsmol/kg、280mOsmol/kg、285mOsmol/kg、290mOsmol/kg、295mOsmol/kg、300mOsmol/kg、310mOsmol/kg、320mOsmol/kg、330mOsmol/kg、340mOsmol/kg、340mOsmol/kg、または350mOsmol/kgであろう。
【0169】
本明細書において提供されるIgG製剤は、通常液体形態で長期間安定である。ある実施形態では、製剤は、室温で少なくとも約3か月間、または室温で少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24か月間安定である。製剤はまた、冷蔵状態(典型的には約2℃と約8℃との間)で通常6または少なくとも約18ヶ月間、または冷蔵状態で少なくとも約21、24、27、30、33、36、39、42、または45か月間安定であろう。
【0170】
IV.治療方法
現代の医薬で通常実施されているように、濃縮された免疫グロブリン類(特にIgG類)の滅菌製剤は、3つの主要な種類に分類される疾患:免疫不全、炎症性および自己免疫疾患、ならびに急性感染症の治療に用いられる。これらのIgG製剤は、多発性硬化症(特に再発寛解型多発性硬化症またはRRMS)、アルツハイマー病、およびパーキンソン病の治療にもまた有用である。本発明の精製されたIgG製剤はこれらの目的の他に、治療的に認められているIgG製剤のその他の用途のためにも適している。
【0171】
FDAはIVIGの使用を、同種異系骨髄移植、慢性リンパ性白血病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、小児HIV、原発性免疫不全症、川崎病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、および高抗体レシピエントまたはABO型不適合ドナーにおける腎臓移植を含む様々な適応症について認可している。ある実施形態では、本明細書において提供されるIVIG組成物はこれらの疾患および状態の治療または管理のために有用である。
【0172】
さらにまた、IVIGの承認適応症外使用が、様々な適応症、例えば、慢性疲労症候群、クロストリジウム・ディフィシル大腸炎、皮膚筋炎および多発性筋炎、グレーブス眼症、ギラン・バレー症候群、筋ジストロフィー、封入体筋炎、ランバート-イートン症候群、エリテマトーデス、多巣性運動ニューロパシー、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、新生児同種免疫性血小板減少症、パルボウイルスB19感染症、天疱瘡、輸血後紫斑病、腎移植拒絶反応、自然流産/流産、全身硬直症候群、眼球クローヌスミオクローヌス、危篤状態の成人患者における重症敗血症および敗血症性ショック、中毒性表皮壊死症、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、X連鎖無ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症、の治療または管理のために、一般的に患者に提供されている。ある実施形態では、本明細書において提供されるIVIG組成物は、これらの疾患および状態の治療または管理のために有用である。
【0173】
最後に、原発性免疫不全症、RRMS、アルツハイマー病、およびパーキンソン病を含む疾患の治療または管理のための、IVIGの試験的な使用が提案されている(米国特許出願公開第2009/0148463号、ここで、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする)。ある実施形態では、本明細書において提供されるIVIG組成物は原発性免疫不全症、RRMS、アルツハイマー病、またはパーキンソン病の治療または管理のために有用である。連日投与を含むある実施形態では、患者に投与すべき有効量は、年齢、体重、疾患の重症度、投与経路(例えば、静脈内、対、皮下)および治療に対する反応性の個人差を考慮して医師により決定され得る。ある実施形態では、本発明の免疫グロブリン製剤は、対象者に対して1日あたり約5mg/kgから約2000mg/kg投与し得る。追加の実施形態では、免疫グロブリン製剤は、少なくとも約10mg/kg、少なくとも15mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なくとも25mg/kg、少なくとも30mg/kg、または少なくとも50mg/kgの量を投与し得る。追加の実施形態では、免疫グロブリン製剤は、対象者に対して、1日あたり最大で約100mg/kgまで、約150mg/kgまで、約200mg/kgまで、約250mg/kgまで、約300mg/kgまで、約400mg/kgまでの用量で投与し得る。他の実施形態では、免疫グロブリン製剤の用量は、より多くまたは少なくでき得る。さらに、免疫グロブリン製剤は、1日あたり1つ以上の用量で投与し得る。IgG製剤で治療される疾患に精通した臨床医は、この分野で知られている基準に従って、患者のための適切な用量を決定し得る。
【0174】
本発明に従って、一連の治療を完了するために必要な時間は、医師により決定することができ、1日ほどの短期間から1か月を超える期間であり得る。ある実施形態では、一連の治療は1から6か月間であり得る。
【0175】
有効量のIVIG製剤は、静脈内的な手段で患者に投与される。「有効量」という語は、対象者の疾患または状態の改善または修正をもたらすIVIG製剤の量を意味する。対象者に投与されるべき有効量は、年齢、体重、治療される疾患または状態、疾患の重症度および治療に対する反応性の個人差を考慮して医師により決定され得る。ある実施形態では、IVIG製剤は、投与あたり約5mg/kgから約2000mg/kgの用量で対象者に投与し得る。ある実施形態では、用量は、少なくとも約5mg/kg、または少なくとも約10mg/kg、または少なくとも約20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、250mg/kg、300mg/kg、350mg/kg、400mg/kg、450mg/kg、500mg/kg、550mg/kg、600mg/kg、650mg/kg、700mg/kg、750mg/kg、800mg/kg、850mg/kg、900mg/kg、950mg/kg、1000mg/kg、1100mg/kg、1200mg/kg、1300mg/kg、1400mg/kg、1500mg/kg、1600mg/kg、1700mg/kg、1800mg/kg、1900mg/kg、または少なくとも約2000mg/kgであり得る。
【0176】
IVIG治療の投与量および頻度は、他の要因の中で、治療される疾患または状態および患者の疾患または状態の重症度に依存するであろう。一般に、原発性免疫不全症のためには、約100mg/kgと約400mg/kg体重との間の用量が、およそ3から4週間ごとに投与されるであろう。神経系および自己免疫性疾患のためには、最大で2g/kg体重が、3から6か月間、1か月あたり5日の期間にわたって実施される。これには、一般的に約100mg/kgと約400mg/kg体重との間の、3から4週間ごとに約1回の投与を含む維持療法が追加される。一般に、患者は、およそ14から35日ごとに、またはおよそ21から28日ごとに約1回の用量または治療を受けるであろう。治療の頻度は、他の要因の中で、治療される疾患または状態および患者の疾患または状態の重症度に依存するであろう。
【0177】
好ましい実施形態では、その治療が必要なヒトにおける免疫不全、自己免疫疾患、または急性感染症を治療する方法が提供され、その方法は本発明のIVIG医薬組成物の投与を含む。関連する実施形態では、本発明は、免疫不全、自己免疫疾患、または急性感染症の治療が必要なヒトの治療のための、本明細書において提供される方法に従って製造されたIVIG組成物を提供する。
【0178】
ある実施形態では、免疫不全、自己免疫疾患、または急性感染症は、同種異系骨髄移植、慢性リンパ性白血病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、小児HIV、原発性免疫不全症、川崎病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、高抗体レシピエントまたはABO型不適合ドナーにおける腎臓移植、慢性疲労症候群、クロストリジウム・ディフィシル大腸炎、皮膚筋炎および多発性筋炎、グレーブス眼症、ギラン・バレー症候群、筋ジストロフィー、封入体筋炎、ランバート-イートン症候群、エリテマトーデス、多巣性運動ニューロパシー、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、新生児同種免疫性血小板減少症、パルボウイルスB19感染症、天疱瘡、輸血後紫斑病、腎移植拒絶反応、自然流産/流産、全身硬直症候群、眼球クローヌスミオクローヌス、危篤状態の成人患者における重症敗血症および敗血症性ショック、中毒性表皮壊死症、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、X連鎖無ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症、原発性免疫不全症、RRMS、アルツハイマー病、およびパーキンソン病、から選択される。
【実施例】
【0179】
以下の実施例は、限定ではなく例示として提供するものである。本質的に同様の結果を得るために変更または改変することができる種々の非重要なパラメータは、当業者であれば容易に認識するだろう。
【0180】
実施例1
本実施例は、濾過の前にアエロジルで処理することにより、多量のフィブリノーゲン、アミド分解活性、プレカリクレイン活性、およびリポタンパク質が抽出改変フラクションII+IIIペースト懸濁液から除去できることを明らかにする。
【0181】
現在のところ、ヒュームドシリカ(アエロジル380)は、フィブリノーゲン、アミド分解活性、プレカリクレイン活性、およびリポタンパク質の吸着に使用されている。より詳細にアエロジルの効果を調べるため、濾過の前に様々な量のアエロジルで6種の改変フラクションII+III懸濁液を処理した。簡単に言うと、改変II+IIIペーストを再懸濁させるために5mM酢酸ナトリウム/5mMリン酸二水素ナトリウム緩衝液pH4.5を含む溶解緩衝液を使用した。ここに説明するように、II+IIIペースト1gあたり溶解緩衝液15gの割合で調合した。ペースト添加後、pH制御環境下(pH IPC限界:4.9〜5.3)、2℃〜8℃で1時間、懸濁液を撹拌した。我々は、この懸濁液のpHが通常約pH5.1にシフトすることを発見したため、さらなるpH調整は不要であるとした。少なくとも120分間の追加の抽出を行った後、II+IIIペースト1gあたり0〜100mgのアエロジル380を容器に加え、懸濁液を1時間インキュベートした。Cuno50SAフィルターを用いた深層濾過の前に珪藻土を加えた。濾過後、フィルターを8gL
−1クエン酸塩および0.2%ポリソルベート80(pH5.0)を含む抽出緩衝液で洗浄し、その洗浄液を濾過液に加えた。その後、混合した濾過液と洗浄液をポリソルベート80で処理して、例えばリポタンパク質等の疎水性不純物を可溶化し、−8℃〜−10℃で25%エタノール(pH7)によりIgGを沈殿させた。その結果得られたPpt G沈殿物はほぼ白色であり、より高いIgG純度を持っていた。その後、沈殿物を純水でPpt G沈殿物2gあたり純水7gの割合で溶解した。
【0182】
IgG溶液はCuno濾過工程後にIgG回収および不純物を分析した。具体的には、アミド分解活性(PL−1)、PKA活性、およびフィブリノーゲンのレベルを測定した(表3)。表3に示すように、明らかに、II+IIIペースト1gあたり40〜60mgのアエロジル380を使用した抽出手順では、濾過液中のフィブリノーゲンのレベルにおける著しい減少とともに、アミド分解およびPKA活性の著しく減少した許容レベルのIgGを回収できた。アエロジル処理なしで行う抽出と比較すると、II+IIIペースト1gあたり40mgのアエロジル380を添加することにより、同様のIgG回収(73%)を保ちつつも、PKA活性およびフィブリノーゲン含有量はほぼ90%の減少、アミド分解活性は60%の減少となった。
【0183】
(表1)II+III Cuno濾過工程におけるアエロジル380の量の効果(GAMMAGARD(登録商標)LIQUIDでの抽出条件)
【0184】
実施例2
本実施例は、濾過の前にアエロジルで処理することにより、多量のフィブリノーゲンが抽出された改変フラクションII+IIIペースト懸濁液から除去できることを明らかにする。本実験の目的の1つは、IgGの著しい減少を負うことなく効率良くフィブリノーゲンを除去できる適切な条件を見つけることであった。
【0185】
ここで提供される方法により調合した改変II+IIIペーストを5mM酢酸ナトリウム/5mMリン酸一ナトリウム緩衝液pH4.5で溶かした。溶解比は、II+IIIペースト1kgあたり15kgの緩衝液とした。緩衝液に加える酢酸の量は60分間撹拌した後のpHが4.9になるように設定した。懸濁液を十分に均質化するために、表2に示すようにそれぞれ異なる量のアエロジル380がすでに入った100mlビーカーのそれぞれに50mlずつ6つに分ける前に、懸濁液を20時間まで、2℃〜8℃で撹拌した。その後、処理と分析の前に、II+III懸濁溶液をアエロジル存在下で80分間撹拌した。撹拌後、全てのサンプルを30分間、4℃、50mlファルコンチューブ内、4600RPMで、Heraeus Cryofuge 8500iにより遠心分離した。
【0186】
本実験において、II+III懸濁液に見られる高濃度のIgG測定は、ELISAテストに比べてより正確な値が得られることから選択された比濁分析テストを用いた。非特異的濁りによる刺激を最小限にするため、テスト前に0.45μmフィルターでサンプルを濾過した。IgM、IgAおよびフィブリノーゲンに対し、ELISAテストは懸濁液中のそれら不純物が低濃度であることが好ましかった。本実験の結果は以下の表2に示す。
【0187】
実施例1で述べたように、フィブリノーゲンの除去およびIgGの減少に関するアエロジル処理の効果をより特徴づけるため、アエロジル濃度を改変II+IIIペースト1gあたり0mg〜40mgの間で設定した。表2に示す結果は、大容量のアエロジルがこの画分におけるフィブリノーゲンを減少させることを裏付ける。とりわけ、II+IIIペースト1gあたり40mg使用すると、濾過ケーキ中のIgG回収が10%しか減少しなかった一方で、フィブリノーゲンがほぼ90%減少した。
【0188】
(表2)遠心分離後にII+IIIを5mM NaAc/5mM NaH
2PO
4 pH 4.5によりII+III1kg+緩衝液15kgの溶解比で抽出した後の溶解条件の変化による結果
【0189】
実施例3
本実施例は、弊害をもたらす不純物レベルを制限しつつ、改変フラクションII+IIIペーストからのIgGの高効率抽出を可能にする適切な条件を明らかにする。具体的に言うと、II+III溶解緩衝液に使用される酢酸濃度および濾過前の抽出溶液のアエロジル処理を含むパラメータを調べた。
【0190】
II+IIIペーストは、表1に示すように、5mM酢酸ナトリウム、5mMリン酸二水素ナトリウムおよび様々な量の濃縮酢酸で180分間、2℃〜8℃で抽出した。続いて、表1に示すようにアエロジル380を添加した。1時間の撹拌後、珪藻土の存在下、Cuno50SAによる濾過により懸濁液を清澄化した。表1に記載のように、フィルターの後洗浄は、濾過前の懸濁液の40%の容量を使用して、酢酸の量が異なることを除いて抽出用と同じ緩衝液を用いて行った。25%エチルアルコール、8gL
−1クエン酸ナトリウムおよび0.2%ツイーン80(pH7)の存在下、−8℃で沈殿物Gを沈殿させ、8時間の待機時間の後に、30分間、−10℃、4600RPMで、ステンレスビーカーの中で、Heraeus Cryofuge 8500iにより遠心分離した。沈殿物は純水中で1:2の割合で溶解した。
【0191】
(表3)抽出緩衝液のpH調整の酢酸量と、IgG収率、Ppt Gの純度および濾過ケーキ中のIgGの減少への清澄化におけるアエロジル量の影響
【0192】
表1から分かるように、II+IIIペースト懸濁液にアエロジルを添加すると、Ppt G画分におけるγ−グロブリン純度に著しい影響がある。アエロジル無しではγ−グロブリン純度は83.5%にとどまるが、II+IIIペースト1gあたり40mgのアエロジルをII+IIIペースト懸濁液に添加すると、γ−グロブリン純度は87.2%に上昇する。アエロジル処理がフィブリノーゲン、PKAおよびアミド分解活性の著しい減少を導くことから明らかである。アエロジルへの不純物吸着の欠点の1つは、アエロジルの量が増えるにつれ濾過ケーキ中のIgG減少が増す点である。しかしながら、表1に示すように、抽出緩衝液において酢酸の濃度が高いことが、濾過ケーキ中のIgG減少におけるアエロジルの効果、さらには減少した上清Ppt G画分中のIgG減少と部分的に釣り合いをとる。表1から分かるように、溶解緩衝液中の酢酸濃度がペースト1Lあたり400μLから510μLに増加すると、濾過ケーキ中のIgG減少の量がほぼ50%まで減少する。有利なことに、酢酸濃度が高いことはPpt G画分におけるγ-グロブリン純度に影響を及ぼさない(ペースト1Lあたり400μLで87.2%純度に対し、ペースト1Lあたり510μLで86.7%純度)。さらに、pka値が4.75付近である酢酸の高い緩衝能により(Merck)、異なる酢酸量により生じたpHの差は無視できることを結果が示している。これは、より精度のよい大規模製造のためには、酢酸を重量で加えるべきであることを示唆する。したがって、CAEにより測定されたγ−グロブリン含有量に示されるように、調べた範囲においては、純度に対しアエロジルの影響が酢酸の影響よりもはるかに高い。
【0193】
実施例4
実施例3での結果は、濾過ケーキ中のIgG減少量が抽出緩衝液のpH調整のために所定のアエロジル濃度で使用された酢酸の量に強く依存することを示している。この効果をさらに特徴づけるため、改変II+IIIペーストを約120分間純水中で抽出し均質な懸濁液を得、4つのパートに分けた。これらのパートは1M酢酸でそれぞれpH3.8、4.2、4.6、5.0に調整され、その後にさらに120分間の第2の抽出時間を続けた。その後、II+IIIペースト1gあたり40mgのアエロジル380でアエロジル処理を行った。1時間の撹拌後、珪藻土の存在下、Cuno50SAによる濾過により懸濁液を清澄化した。pHを上述のように調整した抽出緩衝液を用いた濾過の前に、100%容量の懸濁液でフィルターの後洗浄を行った。濾過液は、8gL
−1クエン酸ナトリウムおよびpH7.0に調整された0.2%ツイーン80で処理し、25%アルコール、−8℃でIgGを沈殿させた。Ppt G沈殿物は、Heraeus Cryofuge 8500iにおいて、4600RPM、30分間、−10℃でステンレスビーカーを用い遠心分離することにより回収した。その後、沈殿物を純水でPpt G沈殿物2gあたり純水7gの割合で溶解した。その後、関連の画分にIgG回収、PKA活性、フィブリノーゲン含有量およびアミド分解活性の分析を行い、回収のpH依存性を求めた(表4)。
【0194】
(表4)アエロジル処理での抽出および清澄化によるフィブリノーゲン、PKAおよびアミド分解活性のpH依存性の除去
【0195】
表4は、アエロジルを用いたPKA、アミド分解活性(PL−1)、およびフィブリノーゲンの除去が、清澄化の間低いpHでは効果が少ないことを示している。ここで得られた結果から、Ppt G画分において効率的なIgG回収を維持しつつも、PKA、アミド分解活性(PL−1)およびフィブリノーゲンの効果的な除去に対し最も効果的なpHが約pH5であることが分かる。濾過ケーキ中のIgG減少が最小化される一方で、高濃度の酢酸はPpt G上清における著しいIgG減少につながる(75mM酢酸の存在下で0.85gL
−1)。
【0196】
実施例5
実施例4で分かった結果におけるアエロジル処理の依存性を求めるため、実験を繰り返したが、アエロジル処理工程を省略した。簡単に言うと、II+IIIペーストを約120分間純水中で抽出し均質な懸濁液を得、4つのパートに分けた。これらのパートは1M酢酸でそれぞれpH3.8、4.2、4.6、5.0に調整され、その後にさらに120分間の第2の抽出時間を続けた。その後、珪藻土の存在下、Cuno50SAによる濾過により懸濁液を清澄化した。pHを上述のように調整した抽出緩衝液を用いた濾過の前に、100%容量の懸濁液でフィルターの後洗浄を行った。濾過液は、8gL
−1クエン酸ナトリウムおよびpH7.0に調整された0.2%ツイーン80で処理し、25%アルコール、−8℃でIgGを沈殿させた。Ppt G沈殿物は、Heraeus Cryofuge 8500iにおいて、4600RPM、30分間、−10℃でステンレスビーカーを用い遠心分離することにより回収した。その後、沈殿物を純水でPpt G沈殿物2gあたり純水7gの割合で溶解した。その後、関連の画分にIgG回収、PKA活性、フィブリノーゲン含有量およびアミド分解活性の分析を行い、回収のpH依存性を求めた(表5)。
【0197】
(表5)アエロジル処理なしでの抽出および清澄化によるフィブリノーゲン、PKAおよびアミド分解活性のpH依存性の除去
【0198】
実施例4で見られた結果と一致して、抽出および溶解緩衝液のpHが5.0に上昇しても、濾過ケーキ中のIgG減少は少ししか上昇しなかった。しかしながら、この減少はPpt G上清におけるIgG減少の大きな減少を補って余りあるものである。
【0199】
実施例4と実施例5の結果を比較すると、アエロジル処理が、II+IIIペーストがpH5.0ではなく、より低いpH(3.8、4.2および4.6)で抽出される時の溶解Ppt G画分中に見られる残留PKA活性の量を減少させることが分かる(
図2)。反対に、アエロジル処理は、II+IIIペーストがより高いpHで抽出される時の溶解Ppt G画分のフィブリノーゲン含有量を著しく減少させる(
図3:pH4.6および5.0とpH3.8および4.2を比較のこと)。アエロジル処理は、溶解Ppt G画分中に見られる残留アミド分解活性のレベルに影響しないと思われる(
図4)。特に、pH3.8、4.2および4.6と比較して、II+IIIペーストがpH5.0で抽出される時に溶解Ppt G画分中の3種の混入物質全てのレベルが著しく減少する。
【0200】
実施例6
上記実施例に見られるように、濾過ケーキおよびPpt G上清におけるIgG減少はII+IIIペーストがpH4.5から4.6付近で抽出されるときに最小化する。しかしながら、前の実施例においても明らかなように、PKA活性、アミド分解活性およびフィブリノーゲン含有量を含む重篤な不純物がII+IIIペーストがpH4.9から5.0付近にて抽出されるときと比較して、pH4.5から4.6にて抽出されるときの方が非常に多い。それに基づき、II+IIIペーストがpH4.5で抽出されるときに見られる非常に高い不純物レベルを、濾過ケーキおよびPpt G上清におけるIgG減少のレベルを低く維持しつつ、混入物質を吸着するのに用いるアエロジルの量を増やすことで相殺できるかどうかを確認するために本実施例を行った。
【0201】
この線に沿って、改変II+IIIペーストの抽出は以前と同じように、pH4.5の抽出緩衝液を用いて行った。その後、II+IIIペースト1gあたり200mgまでアエロジル380の量を増やして添加し、懸濁液を1時間撹拌した。サンプルのさらなる処理は上記のとおり行った。
【0202】
表6に見られるように、フィブリノーゲンおよびPKA活性の除去は大量のアエロジルによる清澄化によって著しく改善する。アエロジルへの結合による濾過ケーキ中のIgG減少は大量のアエロジルを用いると増加するが、この影響はPpt G上清におけるIgG減少が減ることによっていくぶん相殺される。しかしながら、重要なのは、II+IIIペーストがpH4.5で抽出されたときには大量のアエロジルでもアミド分解活性が減少しないことである。そのうえ、γ‐グロブリン純度は大量のアエロジルにて改善されるが、全ての場合においてPpt Gにおける>86%という規格限界をまだ下回っている。おそらく抽出および清澄化における低いpHが理由であろう。
【0203】
(表6)表6はpH4.5の抽出および清澄化におけるアエロジル濃度の変化の結果を提示する
【0204】
実施例7
本実施例では、II+IIIペースト再懸濁および清澄化に続く不純物の除去における抽出緩衝液のpHの影響について明らかにする。
【0205】
改変II+IIIペーストの低いpHでの抽出はII+IIIペースト1gあたり15gの緩衝液の比率を用いてpH4.2で行った。その後懸濁液を3つのパートに分け、3Mトリスを用いてそれぞれpH4.5、4.7、5.0に調整した。その後、各溶液をさらに2つのパートに分け、4℃または25℃で1時間インキュベートした。Cuno50(90)SAによる濾過をそれぞれの清澄化緩衝液と同じpHを持つ10mM酢酸ナトリウム後洗浄緩衝液を用いて行った。濾過液は8gL
−1クエン酸塩および0.2%ツイーン80で処理し、それからIgGを25%エチルアルコール添加により−10℃で少なくとも8時間沈殿させた。沈殿物は前述のように遠心分離によって回収し、2倍量の純水に溶解した。結果として得られた懸濁液をCunoVR06濾過装置を用いて濾過し、約1.3mScm
−1の伝導率を有する最終液となった。
【0206】
様々な条件を評価するためにIgG、IgA、IgM、トランスフェリン、フィブリノーゲン、およびその他の不純物のレベルについて確認した。II+IIIペースト懸濁液の清澄化のpH依存性について示した分析結果を表7に示す。pH4.5から5.0の範囲内では、IgAおよびIgM、トランスフェリン、およびフィブリノーゲン量は広範囲での変化はしなかったが、低pHの緩衝液を用いた場合には、他の不要なタンパク質が高いレベルで存在する。これらの他の不純物はpH5では全タンパク質の1%未満だが、pH4.5では10%と算出された。IgG含有量はpH5.0で最も高くなる一方、4℃〜25℃におけるIgG含有量と不純物レベルの温度依存性はごくわずかである。
【0207】
(表7)表7は、II+IIIペーストの再懸濁後の1時間のインキュベーションおよびそれに続く添加剤なしの低pH抽出後の濾過の間におけるII+IIIの溶解からVR06濾過までの不純物の減少をpHおよび温度を変化させることにより比較する
【0208】
表8から分かるように、溶解Ppt G画分およびVR06濾過のさらなる分析は、pH4.5の緩衝液をII+III清澄化およびII+III濾過処理工程に用いることにより、凝集体および低分子量成分のレベルが上昇することを示している。これらの工程は4℃よりも25℃で行うと、この効果がより高められる。反対に、サンプルをより高いpH(pH5.0)で処理すると、pH4.5での処理に比べ、得られるPpt G懸濁液および濾過液は〜350kDaの物質を高いレベルで(二量体IgGまたはIgA)を含む(表8)。さらに、より低いpHで処理すると、pH5.0での処理に比べ、より高いアミド分解活性レベルとなった。
【0209】
(表8)溶解した沈殿物GのPKAおよびアミド分解活性、VR06濾過における分子サイズ分布におけるII+IIIペースト懸濁液のインキュベーションおよび濾過の間のpHおよび温度の影響
【0210】
実施例8
表7および8に示された結果は、II+III沈殿物の再懸濁は冷蔵温度(2℃〜8℃)で行う必要があること、またアミド分解活性を有する成分と同様に、高(>450kDa)および低(>70kDa)分子量成分の溶解を最小限に抑えるためにpHをpH5.0に保つ必要があることを示している。II+IIIペースト懸濁後の効果的な清澄化は、Ppt Gの下流工程のクロマトグラフィーにおける不純物の負荷を減少させるため、IVIG最終容器の仕様書に再現性良く適合する鍵となる。この成果をより有効にするため、改変II+IIIペーストは上記のように溶解、処理し、改変II+IIIペーストをpH4.2で溶解し、その後pH4.5、4.7、5.0に調整した。表9に示すように、II+IIIペーストの懸濁および清澄化において、pH4.5よりもpH5.0の方がIgMはより効率良く除去される。この実験において、IgG収率はpH5.0と4.5ではよく似た結果となった。
【0211】
(表9)II+IIIペースト再懸濁、濾過、およびPpt G沈殿の種々の工程におけるIgG,IgA、IgM,トランスフェリン、およびフィブリノーゲンの収率
【0212】
実施例9
II+IIIペースト抽出工程におけるpHの最適条件を求めるため、濾過液中のタンパク質分解活性を最小限に抑える目的で、抽出および濾過におけるpHをpH3.8〜7.8の広い範囲にわたって変化を持たせた。この目的のため、改変II+IIIペーストを1+8の比率で低いpHで抽出した。短時間撹拌した後、均一化した分散液を得るため、懸濁液を8つのパートに分け、pHを酢酸またはトリス緩衝液を用いてそれぞれpH3.8、4.2、4.6、5.0、6.6、7.0、7.4,7.8に調整し、追加で120分間抽出した。その後、pHを5.1に調整し、清澄化を50mLのファルコンチューブ内での遠心分離により行った。Ppt G沈殿は標準条件下で行った。
図5および6に示されるように、アミド分解活性およびPKAはPpt G溶解画分中で測定した。
【0213】
図5の4℃で保管したサンプルにおいて見られるように、II+IIIペーストがpH5.0で抽出される時にアミド分解活性は最小限に抑えられる。さらに強調したい点は、Ppt G溶解画分を室温で1週間保管した後、アミド分解活性が上昇したことから、サンプルは長時間高温(室温)で保存するべきではないということである。同様に、
図6から分かるように、II+IIIペーストがpH5.0以上で抽出される時にPKA活性は最小限に抑えられる。
【0214】
実施例10
本実施例では、抽出および清澄化においてIgG収率減少のpH依存性を評価する。簡単に言うと、II+IIIペースト1gあたり15gの純水の比率で110gの改変II+IIIペーストを再懸濁させ、続いて120分間の抽出を行った。その後サンプルを4つのパートに分け、pHを酢酸でそれぞれpH3.8、4.2、4.6、5.0に調整した。4つの同一性を確保するために、4つのパートに分ける前にもとのpHで前抽出を行い、上述のpHに調整し、さらに追加で1時間抽出を行った。その後、サンプルをそれぞれの抽出およびPpt G沈殿に用いたものと同じpHでCuno50SA濾過により清澄化した。Cuno濾過の後、全てのパートを同じように処理した、つまり、全てのパートをpH7.0の標準的な沈殿物Gの沈殿処理をした。そのような実験の2つの結果は以下の表10および11に要約される。
【0215】
(表10)濾過液中のタンパク質およびIgG回収、および再溶解沈殿物G'sのMSDおよびCAEの結果
【0216】
(表11)抽出および清澄化におけるIgG減少、および再溶解沈殿物Gにおけるタンパク質分解活性およびフィブリノーゲン
【0217】
上記のデータは低いpHでの抽出によるタンパク分解酵素の活性化に関する
図5および6に示した結果を裏付けている。まとめると、そのデータは低pH抽出が全てのタンパク質の溶解性が増加することによってIgG減少がより少なくなることをもたらすということを明らかにしている。さらに、表11に見られるIgG減少は、より低いpHをもたらす高濃度の酢酸により、濾過ケーキ中のIgG減少はより低くなるが、沈殿物G上清においてはIgG減少はより高くなるということを示唆している。この現象は低いpHでの抽出後の沈殿工程における高濃度の酢酸によって説明できるかもしれない。
【0218】
実施例11
適切なII+III抽出条件を確認するために、酢酸でpH4.3に調整した純水で低いpHでの抽出を行い、濾過前にpH4.9に再調整する手順と、抽出緩衝液1000Lあたり600gの酢酸を用い、溶解液のpHが4.8〜4.9となる5mM酢酸ナトリウム/5mMリン酸二水素ナトリウムによる抽出を比較した。この実験はパイロットスケールで行われ、3.8〜5kgの改変II+IIIペーストを用いて開始した。全ての実験はII+IIIペースト1kgあたり40gのアエロジルを用いたアエロジル処理を含めた。清澄化には、Cuno50SAフィルターシートを備えたフィルター枠30cm
*30cmのストラスバーガー加圧濾過器を用いた。後洗浄は、緩衝液1000Lあたり150gの酢酸を用いた5mM酢酸ナトリウム/5mMリン酸二水素ナトリウムを用い、加圧濾過器の4デッドボリューム容量で行った。沈殿物Gの遠心分離はCepa(登録商標)Z61H遠心分離機を用いて17000RPM(ローター直径10.5cm)、1時間あたり40Lの流量で行った。3回実施されたその試験の結果は表12に示される。
【0219】
(表12)pH4.3での低いpHでの抽出およびアエロジル処理前にpH4.9にシフトしたものと抽出緩衝液1000Lあたり氷酢酸600gを用いた改良されたGAMMAGARD(登録商標)LIQUIDによる抽出との比較
【0220】
表12に見られるように、両抽出手順では同様のIgG回収であった。pH5.0でのII+IIIペーストの抽出によって様々な不純物が最小化された実施例3から10の結果を考えると、表12に与えられた結果は、抽出緩衝液1000Lあたり600gの氷酢酸を用いたpH4.8〜4.9での抽出が低pHでの抽出とその後のpH4.8〜5.0への調整よりも優れていることを示している。
【0221】
実施例12
製造の間、加圧濾過器の枠や、タンクへおよびタンクから結合している導管はかなりの空隙ボリュームを持っており、後洗浄が開始される前には懸濁液または濾過液でまだ満たされている。後洗浄が終了すると、この空隙ボリュームは加圧濾過器内に残ったままになる。標準手順は加圧濾過器の1と2デッドボリュームの間で洗浄することによって、この空隙ボリュームを占有する。標準的なフィルターの後洗浄が全IgGの効率的な回収に効果があるかどうか確認するために、大規模製造のIgG精製における様々な量の洗浄緩衝液を用いた実験を行った。
図1に、残存するIgGおよび全タンパク質のレベルについて、後洗浄容量(デッドまたは空隙ボリュームとして測定された)の依存性を示す。
【0222】
特に、
図1に見られるように、加圧濾過器のデッドボリュームの約2倍量を用いた濾過後洗浄はIgG回収がかなり減少する結果となり、洗浄液1Lあたり1.5gのIgGを含んでいる。驚くべきことに、IgGの効率的な回収には、加圧濾過器のデッドボリュームの3.6倍量の後洗浄緩衝液が必要となる(
図1に矢印で表示した)。加圧濾過器のデッドボリュームの3.6倍量を超えるさらなる後洗浄は得策ではなく、追加のIgG回収なしの濾過液の希釈につながる。
【0223】
実施例13
II+III沈殿工程の間、アルコール濃度は20から25%に上げられ、温度は−5℃から−7℃に下げられた。II+IIIペーストを溶解する際、以前は510mL氷酢酸/1000L緩衝液の比で用いたのに対し、II+IIIペースト再懸濁緩衝液のpHを調整するために少なくとも1000L容量あたり600mLの氷酢酸を使用した。その抽出比は酢酸緩衝液を用いて1+15であった。清澄化には、II+IIIペースト1gあたり0.04〜0.06gのアエロジル(通常この範囲で一番低い、例えば0.04g)が添加された。後洗浄には、加圧濾過器のデッドボリュームの約4倍量(4×)の後洗浄緩衝液を用いた。例えば、ある特定の試験ではデッドボリュームの4.3倍量が用いられた一方、別の試験ではデッドボリュームの3.6倍量が用いられた。4倍またはそれ以上のデッドボリュームでの後洗浄は以前に使用されていた1.8倍量のデッドボリュームから増やされた。その緩衝液は1000L緩衝液あたり150mLの氷酢酸を用いて調整され、以前の120mL氷酢酸/1000L緩衝液から増加している。これらの変化は8%のIgG収率向上および少なくとも純度86%のγ‐グロブリンをもたらした。0.1Mリン酸ナトリウム+150mM塩化ナトリウム(pH7.4、伝導率25.5mS/cm)抽出時には、濾過ケーキ抽出物中に極低量のIgGが見られた。
【0224】
実施例14
A.分画Iの最適化:スプレー法対変量的(fluent−wise)添加によるエタノール添加;エタノール添加後のpH7.0または7.5へのpHの調整
表13は現在使用している製造方法によるIgG収率を示しており、後述する実験における比較の参考を提供する。15〜20%のIgGがコーンプールから濾過液にかけて失われる。II+III上清において、血漿1Lあたり約0.4gのIgGが失われる。
【0225】
(表13)
*LA B5回収血漿コーンプール:saline chaseによる低IgG濃度.平均LA B1回収血漿コーンプール:8.52g/L.
【0226】
方法
14リットルのバケット中、24〜27℃で6〜7時間、コーンプールをとかした。その後、材料を2〜8℃で一晩混ぜ合わせた。プールをその後4つのパートに分けた(それぞれ800g)。
1:変量的エタノール添加、続いて7.0にpH調整
2:変量的エタノール添加、続いて7.5にpH調整
3:スプレー法によるエタノール添加、続いて7.0にpH調整
4:スプレー法によるエタノール添加、続いて7.5にpH調整
【0227】
まず、全てのパートを0℃に冷却した。その後、8%エタノールをパート1およびパート2に変量的に加え、パート3およびパート4にスプレーヘッドを用いてスプレー法により加えた。いずれの方法においてもエタノールはほぼ同じ速度で加えた。エタノール添加中、クライオスタットを−5℃に調整し、75mlのエタノールをそれぞれのパートにかき混ぜながら加えた。pHを1M酢酸により7.0または7.5に調整した。その後、溶液を1時間インキュベートした。インキュベーション後、溶液をビーカー遠心分離機で遠心分離した(4600rpm、30分間、−2℃)。
【0228】
結果
IgG収率を比濁分析法で測定し、その結果を表14に示す。従来のエタノール添加では0.2〜0.25g/L血漿が失われた一方で、改良された方法(エタノールスプレー法)では、分画I上清においてほぼ100%のIgG収率が得られた。これらの結果は、製造において、改良された方法がIgG収率を0.2g/L血漿まで上昇させることを示している。
【0229】
(表14)
【0230】
B.パイロットスケール:分画I(スプレー法対変量的;エタノール添加後7.4にpH調整)および分画II+III(エタノール添加前6.7にpH調整、エタノール添加後6.9に再調整)
【0231】
実施例15
方法
2℃でかき混ぜながら、2.8kgの血漿をとかした。フラクションI:8%エタノールを加え、5M酢酸を用いてpHを7.4に調整した。かき混ぜながら、懸濁液を−2℃の温度まで冷却した。スプレーの条件はスプレーヘッドを用いることで得られた。いずれの方法においても、エタノールおよび5M酢酸の添加はほぼ同じ速度で行った。1時間のインキュベーション後、溶液を−4℃の温度でCEPA遠心分離機を用いて遠心分離した。
【0232】
フラクションII+III:pH4緩衝液を用いてpHを6.7に調整し、従来行っていたように(1)スプレー法または(2)変量的に25%エタノールを添加した。その後、pHを6.9に再調整した。−7℃で10時間インキュベーションを行った。
【0233】
結果
25%エタノールを用いたフラクションII+IIIでのIgG減少を比濁分析法で測定し、その結果を表15に示す。IgG測定にはある程度の変動があるため、最適な方法での平均値を取り上げた。
【0234】
(表15)
【0235】
フラクションII+III沈殿物に至るまで、1Lの血漿あたり0.35gのIgGしか失わなかった。変量的25%エタノール添加と比べて、スプレー法を用いた分画II+IIIにおいて1Lの血漿あたり0.04gのIgGの収率増加が得られ、現在製造に使用している変量的20%エタノール添加と比べて、1Lの血漿あたり0.3gのIgGの収率増加が得られた(0.4から0.06g/Lの範囲から平均化)。濾過液中のIgG収率は参考に比べて著しく高く、II+III沈殿における変量的20%エタノール添加での製造において現在得られている80〜86%をはるかに超えている。
【0236】
C.分画II+III(20%エタノール):分画II+III全体にわたって初期のpHを維持
【0237】
実施例16
方法
17〜20℃で27時間かき混ぜながら、50Lの血漿をとかした。分画Iは上のセクションで述べたように最適な工程として行った。上清Iは以下の2つのパートに分けた。
(1)最悪なpH調整:インキュベーション期間ではなくエタノール添加前後のpH調整
(2)最適なpH調整:エタノール添加前後のpH調整およびさらに待機時間におけるpH再調整。待機時間中は溶液を絶えず撹拌した。
【0238】
Iの上清のpHは、どちらのパートにおいても、エタノール添加前にpH4緩衝液を用い6.7に調整した。エタノールはスプレー法で添加し、エタノール添加後にpHを6.9に再調整した。
【0239】
パート(1)において、最悪の事態を想定することなくpH調整を行った。エタノール添加後に、溶液のpHを直接調整し、インキュベーション期間は調整しなかった。パート(2)において、pHを10時間のインキュベーション期間に一定値6.8〜7.0となるように再調整した。
【0240】
結果
IgGを再び比濁分析法で測定し、その結果を表16に示す。待機時間中に約6.9の一定値へpHを一定に再調整することにより、大規模製造における平均である0.4g/L血漿と比較して、血漿1Lあたり0.13gのIgGしか失われなかった。参考(スプレー法は用いず、待機時間中絶えず撹拌)と比べて、血漿1Lあたり0.07gのIgGの収率増加を得た。現在使用されている従来法(1L血漿あたり0.38gのIgG減少、表13)と比べて、血漿1Lあたり約0.20gから約0.30gへのIgGの収率増加を得た。
【0241】
(表16)
【0242】
結論
II+III上清におけるIgG減少は、製造バッチにおける0.4g IgG/L血漿の現在のレベルから20%エタノールによる沈殿での0.13g/L血漿のレベルへ、およびエタノールをスプレー法で添加し沈殿の間pHが持続して6.9±0.1に維持されている場合、25%エタノールによる沈殿での0.08g/L血漿未満のレベルへ減少する。
【0243】
沈殿Iで、スプレー法によるpH調整前のエタノール添加は分画I上清中における0.1から0.2g/L血漿のIgG収率増加をもたらす。
【0244】
考察
IgGは全ての実験で比濁分析法にて測定し、少なくとも−/+5.0%の分散を有する(ネフェロメーター製造業者によって示された、ジーメンスAG)。それゆえ、製造において改良された方法で得られる実際の収率増加は、実施例中に示したものよりわずかに低い、または高いものとなるだろう。
【0245】
新しく改良された方法による収率増加のさらなる裏づけとして、沈殿物IgG重量を、製造における同じ血漿ソースから得られた平均の沈殿物IgG重量と比較した。製造において現在用いる方法により、1000LのUSソースコーンプールあたり18kgの沈殿物IgGが得られたのに対し、パイロットスケール研究(上述のセクションB)では、20.8kgの沈殿物IgGが得られた(20%エタノールおよび分画II+IIIの最適化されたpH調整、全ての緩衝液とエタノールのスプレー法による添加)。これが1000Lのコーンプールあたり2kg以上の沈殿物IgGの増加となる。
【0246】
実施例17
この実施例では、フラクションII+III懸濁物の濾過前のフュームドシリカ処理工程の追加が、より高い純度のIgG濾過液をもたらすことを明らかにする。簡単に言うと、脱クリオ血漿は上述の方法でフラクションII+III段階に分画化され、その時点で2つのサンプルに分けられた。第1のサンプルは標準フラクションII+III懸濁液濾過前に、濾過助剤の添加によってのみ清澄化される(
図7A)。第2のサンプルは、ここに記述したように、濾過助剤の添加および標準フラクションII+III懸濁液濾過前にフュームドシリカ前処理を受けた(
図7B)。
【0247】
濾過液のタンパク質成分は、酢酸セルロース電気泳動によりその後分離され、個々のピーク面積が標準法を用いて計算された。クロマトグラフおよび定量されたデータに見られるように、濾過前にフュームドシリカを用いて処理した第2のサンプルは、フュームドシリカで処理していないサンプルよりも非常に高いIgG純度を有する濾過液となった(68.8%対55.7γ‐グロブリン;表18と表16を比較のこと)。
【0248】
(表17)
図7Aに示した、濾過前に濾過助剤のみの添加によって清澄化された画分II+III懸濁液由来の酢酸セルロース電気泳動により分離されたタンパク質ピークの定量
【0249】
(表18)
図7Bに示した、フュームドシリカを用いた前処理および濾過前に濾過助剤の添加によって清澄化されたフラクションII+III懸濁液由来の酢酸セルロース電気泳動により分離されたタンパク質ピークの定量
【0250】
実施例18
本実施例では、限外濾過および20%IgG調製の処方が皮下注射に適していることを示す。この情報は生産スケールアップおよび非臨床の20%IgG調製の間に蓄積された。ナノ濾過工程前の20%ロットの製造に用いるプロセスは上述のとおりであった。限外/透析濾過は溶液を20%に濃縮するよう改良された。収率減少を最小にするため、透析濾過に用いる限外濾過装置の後洗浄液は、同じ膜を備えた第2のより小さな装置によって濃縮され、その後バルク溶液に加えられた。
【0251】
驚くべきことに、低いpHでの保管の間のウイルス不活性化は溶液のタンパク質濃度による影響を受けないことが示された。同様のウイルス減少が10%溶液(GAMMAGARD(登録商標)LIQUID)および20%溶液でも得られた。それゆえ、ウイルス減少工程としての低pHでの保管は20%生成物において維持された。
【0252】
ナノ濾過の前に、IgG溶液のグリシン濃度は目標の0.25Mに調整される。その後にその溶液を限外濾過(UF)でタンパク質濃度6±2%(重量/体積)に濃縮する。pHは5.2±0.2に調整する。使用したUF膜は公称分画分子量(NMWCO)が50,000ダルトン以下であり、高粘性の生成物のために特別に設計されている(例えば、ミリポアのVスクリーン)。
【0253】
その後、その濃縮物をpH4.2±0.2の0.25Mグリシン溶液に対して透析濾過する。最小交換容量は元の濃縮物容量の10倍である。限外濾過/透析濾過操作の間中、溶液は約4℃〜20℃の間に保たれる。
【0254】
透析濾過後、その溶液は少なくともタンパク質濃度22%(重量/体積)にまで濃縮される。その溶液の温度は2℃〜8℃に調整される。
【0255】
システム中の完全な残存タンパク質を回収するために、第1のより大きな限外濾過システムの後洗浄が、全てのタンパクが洗い落とされることを保証するために少なくとも再循環モードにおける2倍のデッドボリュームで行われる。それから、第1の限外濾過システムの後洗浄液は、第1のものの10分の1もしくはそれ未満の寸法の同じタイプの膜を備える第2の限外/透析濾過システムで、少なくともタンパク質濃度22%(重量/体積)まで濃縮される。後洗浄液の濃縮物はバルク溶液に加えられる。第2の限外濾過システムはその後、後洗浄される。この後洗浄液は、最終処方のタンパク質濃度の調整に用いられる。その溶液の温度は約2℃〜8℃に維持される。
【0256】
最終溶液を製剤化するために、そのタンパク質濃度は、第2のより小さな限外濾過システムの後洗浄液および/または透析濾過緩衝液を用いて、約20.4±0.4%(重量/体積)に調整される。必要であれば、pHは約4.4〜4.9に調整される。
【0257】
実施例19
現在のGAMMAGARD(登録商標)LIQUID製造プロセスにおけるフラクションII+IIIの濾過液中に回収されたIgGの画分を比較するために、ここに提供する改良されたフラクションII+III沈殿と溶解法を用いて、IgGの5つの製造スケール精製を行った。簡単に言うと、−7℃でfluent添加によって合わせられた25%エタノールを用い、現在の製造プロセスで採用されている−5℃および20%エタノールと比較して、IgG初期濃度約6.14g/LであるIgGのコーンプール沈殿を行った。改変フラクションII+III沈殿物はそれから、pH4.3の溶解緩衝液または0.06%氷酢酸を用いて調整された緩衝液を用いて1〜15を抽出し、その後溶解緩衝液の4.3倍のフィルターデッドボリュームの最終洗浄液を用いて深層フィルターを通して濾過した。表18に見られるように、ここに提供する改良された方法による改変フラクションII+III濾過液は、現在の製造プロセスにより調製された改変フラクションII+III濾過液よりも、初期のコーンプール中に存在するIgGを顕著に高い割合(少なくとも8.0%の増加)で含んでいた(それぞれ、91.1%対91.6%、83.1%対83.8%)。
【0258】
(表18)ここに提供する改良された方法により製造されたロットにおけるIgG回収と比較した、2008年および2009年の一部の間にウィーンにて行われたバクスターの全ての製造稼働のフラクションII+III濾過液におけるIgGの平均回収
【0259】
実施例20
ここに提供するIgG組成物の純度を求めるために、IgGの3つのロットをここに提供する改良された方法により調製した。これらの精製の最終IgG生成物は、最終組成物におけるIgG単量体/二量体の割合を求めるとともに、IgA、IgM、アミド分解活性、C3およびフィブリノーゲンを含むいくつかの混入物質について検査された。表19の下部に見られるように、ここに提供する改良された方法の製造により、初期物質の73.6%〜78.5%と、現在採用されている方法における60%〜70%と比較して、最終バルク組成物におけるIgG回収の増加をもたらす一方、不純物プロファイルが現在のIgG製造基準とはいわないまでも同じくらい良く維持された。
【0260】
(表19)ここに提供する改良された製造方法により調製されたIgG組成物中の不純物およびIgG単量体/二量体組成物のレベル
【0261】
本明細書に記載される実施例および実施形態は、単に説明目的のためのものであり、それらに照らし合わせて様々な修正または変更が、当業者に暗示されることになり、本出願の趣旨および権限ならびに付属の請求項の範囲内に含まれるべきであると理解される。本明細書で引用される全ての公報、特許、および特許出願は、全ての目的のために、参考としてそのまま本明細書に組み込まれている。