(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876485
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】水発泡ポリウレタンスプレーフォーム用のNPEを含まない乳化剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20160218BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20160218BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/22
C08G18/40
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-524222(P2013-524222)
(86)(22)【出願日】2011年8月11日
(65)【公表番号】特表2013-533372(P2013-533372A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】US2011047363
(87)【国際公開番号】WO2012021675
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2013年4月10日
(31)【優先権主張番号】61/373,419
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー デール アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジーン ルイス ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ジェイ.ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラン ザルコブ
【審査官】
杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−137494(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/144272(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0312447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のイソシアネートを、30〜200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のポリオール、水、少なくとも1種の触媒、及び少なくとも1種の乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物と接触させることを含み、得られたフォームが6〜32kg/m3の密度を有するポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記イソシアネート反応性混合物は2〜30質量%が水であり、1〜30質量%が乳化剤であり、かつノニルフェノールエトキシレート(NPE)を実質的に含まず(実質的に含まずとは、NPEが乳化剤の5質量%未満であることを意味する)、前記乳化剤が少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレートを含み、かつ10〜15の平均HLB計算値を有し、前記乳化剤が該乳化剤の全体の平均分子量の10質量%以下のプロピレンオキシド量を有し、前記乳化剤が、ダイズ、ヤシ、トウモロコシ、又はバイオマスから得られた再生可能な炭素を含む親油性部分とエチレンオキシド反復単位を含む親水性部分とを有する、方法。
【請求項2】
前記乳化剤が2種以上のアルキルアルコールエトキシレートの混合物を含み、該混合物の平均HLBが10〜15である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルキルアルコールエトキシレートの混合物が、10未満のHLB計算値を有する1又は複数の構造体を少なくとも5質量%含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルキルアルコールエトキシレートが、分子式R−(OCH2CH2)xOH(式中、Rは5〜20個の炭素原子を有する直鎖、分岐、飽和又は部分不飽和の炭化水素であり、xは1〜40である)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イソシアネート反応性混合物が物理的発泡剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記発泡剤が、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、及びヒドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種の要素を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記乳化剤が、平均HLBが10〜15である2峰性分布のHLBを有するアルキルエトキシレートアルコールの混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記乳化剤が5〜50質量%の水をさらに含み、その水の量が前記乳化剤の凝固点を抑えて前記乳化剤が20℃で液体であるようにするのに十分なものである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、1又は複数の三級アミン及び金属カルボキシレートから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種のイソシアネートとイソシアネート反応性混合物の接触生成物をスプレーすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリウレタンフォームが6〜16kg/m3の密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
30〜200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のイソシアネートと、少なくとも1種のポリオール、水、少なくとも1種の物理的発泡剤、少なくとも1種の触媒、及び10〜15のHLB計算値を有する少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレート乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物とを含み、前記乳化剤が該乳化剤の全体の平均分子量の10質量%以下のプロピレンオキシド量を有し、前記乳化剤が、ダイズ、ヤシ、トウモロコシ、又はバイオマスから得られた再生可能な炭素を含む親油性部分とエチレンオキシド反復単位を含む親水性部分とを有する、組成物。
【請求項13】
ノニルフェノールエトキシレート(NPE)を実質的に含まない(実質的に含まないとは、NPEが乳化剤の5質量%未満であることを意味する)、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記乳化剤が、以下の化学構造:
【化1】
(式中、xは4〜19であり、yは1〜20である)を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記イソシアネート反応性混合物が、スズ、カリウム、又はビスマスの金属触媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アルキルアルコールエトキシレートの混合物が、15超のHLB計算値を有する1又は複数の構造体を少なくとも5質量%含む、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年8月13日付で出願された米国特許仮出願番号第61/373,419号の利益を主張する。出願番号第61/373,419号の開示を参照により本明細書中に援用する。
【0002】
本願発明の内容は、水又は水共発泡ポリウレタンフォーム(例えば、建築向け適用における内壁や天井内の空気又は音の障壁)、並びに梱包用フォームなどの間隙充填適用、スプレー式の内壁の音及び空気の障壁、断熱用スプレー式屋根用フォーム、現場注入型フォーム、及びその他の建築向けフォームに使用されるフォーム前駆体に関する。本発明はさらに、水又は水共発泡ポリウレタン(PUR)フォーム、特に低密度スプレー式PURフォームの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
従来のポリウレタンフォーム製法では、低密度水発泡ポリウレタン配合物のイソシアネート部分をA液と呼び、それに対してイソシアネート反応部分をB液と呼ぶ。スプレー式PUR配合物では、A液とB液は別々に保存され、そして高圧スプレー塗布器を通して塗布点にて通常は組み合わせられる。通常、B液は、すべてが前もって混合されている水、ポリオール、難燃剤、抗酸化剤、シリコーン界面活性剤、セルオープナー、及びその他の添加剤を含んでいる。このタイプの物質塗布のための配合物は、B液に約2〜約30質量%の範囲の量の水を含む。水は、イソシアネートと反応して、CO
2ガスを発生することによる化学発泡剤、並びにポリウレタン及びポリ尿素形成化学反応の熱を蒸気として放出することによる物理的発泡剤の両方として作用する。この比較的に高い配合物中の水のパーセンテージは、相不安定性につながる可能性があり、そしてここで、水をB液の他の成分中にこれ以上は完全に溶解できない。相分離は、55ガロンのドラム缶でB液プレミックスを調製し、保存し、そして出荷する調合者にとって問題になり得る。当該技術分野のスプレー塗布器には、相分離を可視化するためのスチール製ドラムの内側を見る方法がなく、さらに、当該技術分野において物質の混合は非常に難しいので、完全な混合が達成されたかどうかが、いつもわかるわけではない。成分の相分離は、反応性、セル構造、物理的特性、並びにスプレーされたPURフォームの一貫性の相違につながる可能性がある。
【0004】
これらの問題に対処するために、乳化剤を配合物に加えることができる。一般に、乳濁液は、2種以上の非混和性(immiscible)又は非混合性(unblendable)液体の安定した混合物と規定される。従来技術では、ノニルフェノールエトキシレートとして知られている化学物質のクラスにある乳化剤、すなわちNPE(NPEの一般構造は
図1に示されている)が説明されている。米国特許第1139510号、同第1001946号及び同第886636号、並びに国際公開第00/46266号には、NPE乳化剤の実例があり、そしてポリウレタンの一般的な調製方法が記載されているが、それには、オキシエチル化脂肪族アルキルフェノール(NPE)、オキシエチル化脂肪族アルコール(アルキルエトキシル化アルコール)などの界面活性剤、シリコーンポリエーテルなどの安定化剤、その他の従来の添加剤及び作用物質を含めた様々な添加剤の取り込みが含まれることもある。従来技術では、界面活性剤の使用の仕方、界面活性剤に対するHLBの範囲、特定の構造が高水系においてより効果的であること、又はNPEを含まない若しくは実質的に含まない配合物を教示していない。
【0005】
先に特定した特許及び特許出願の開示を、参照により本明細書中に援用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、一部のNPEが、天然のエストロゲンであるエストラジオールに比べれば当然のことながらはるかに弱いが、弱いエストロゲン様特性を示し得ること、又は内分泌撹乱物質となり得ることに関心が高まった。現在、合衆国では使用制限はないが、NP及びNPEは、新しい化学作用プラン(CAP)プログラムの下で環境保護庁によって審査されている。そのため、当該技術分野ではNPEを含まないスプレーフォーム配合物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、NPEを含まない又は実質的に含まない発泡組成物を提供することによって、従来のフォーム及びフォーム前駆体に関連する問題を解決する。「実質的に含まない」とは、乳化剤の約5質量%未満、場合によっては約0質量%がNPEであることを意味する。
【0008】
本発明の組成物は、少なくとも1種のポリイソシアネートを、約30〜約200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のポリオール、水、触媒、及び約10〜約15のHLB計算値を有する乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物と接触させることを含み、得られたフォームが約6〜約32kg/m
3の密度を有する本発明の方法において使用することができる。イソシアネート反応性混合物は約2〜約30質量%が水であり、約1〜約30質量%が乳化剤であり、かつノニルフェノールエトキシレート(NPE)を含まないか又は実質的に含まない。本発明の乳化剤は少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレート又は複数種のアルキルアルコールエトキシレートの混合物を含む。
【0009】
本願発明の一態様は、約30〜約200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のポリオール、水、少なくとも1種の触媒、及び約10〜約15のHLB計算値を有する少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレート乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物を含む組成物に関する。
【0010】
本願発明のもう1つの態様は、NPEを実質的に含まないアルキルアルコールエトキシレートを用いて水又は水共発泡ポリウレタン配合物のB液を安定させる方法に関する。さらに、本願発明の特定の態様には、アルキルアルコールエトキシレートが配合物のB液成分を乳化するのにより効果的であり、かつNPEと比較してより低い使用レベルしか必要としないという予期していなかった利点がある。
【0011】
本発明の更なる態様は、少なくとも1種のイソシアネートを、30〜200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のポリオール、水、少なくとも1種のアミン触媒、及び少なくとも1種の乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物と接触させることを含み、得られたフォームが約6〜約32kg/m
3の密度を有するポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記イソシアネート反応性混合物は約2〜約30質量%が水であり、約1〜約30質量%が乳化剤であり、かつノニルフェノールエトキシレート(NPE)を実質的に含まず、前記乳化剤が少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレートを含み、かつ約10〜約15の平均HLB計算値を有する方法に関する。
【0012】
本発明のもう1つの態様は、フォーム形成可能な組成物、フォームを作る方法、低密度であり、かつ水発泡又は水共発泡のいずれかであるポリウレタンフォームに関する。「低密度」とは、約6個のkg/m
3〜約16kg/m
3の密度を有するフォームを意味する。「水発泡又は水共発泡」とは、配合物のB液中の水の総量が約2〜約30%であるように、発泡剤としての水か、又はハイドロフルオロカーボンなどの補助発泡剤と組み合わせた水のいずれかを含むフォームを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】NPE−9の相安定度パーセントのグラフ表示である。
【
図5】本発明の乳化剤の相安定度パーセントのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、NPEを含まないか、又は実質的に含まない乳化剤が採用されているフォーム、フォーム前駆体、及びフォームを作る方法に幅広く関連する。本発明の組成物及び方法は、NPEに関連している問題を解決できないとすれば、それを低減するポリウレタンフォームを生み出すことができると同時に、フォームを生じさせるのに必要な乳化剤の量をも減らす。
【0015】
本発明の方法は、約30〜約200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のポリイソシアネートが(A液)と、少なくとも1種のポリオール、水、触媒、及び約10〜約15のHLB計算値を有する乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物(B液)とを接触させることを含み、そして得られたフォームは約6〜約32kg/m
3の密度を有する。B液は、約2〜約30質量%が水であり、かつ約1〜約30質量%が乳化剤であり、そしてノニルフェノールエトキシレート(NPE)を実質的に含まない。乳化剤は、少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレート又はアルキルアルコールエトキシレートの混合物を含む。
【0016】
本発明の目的のために、イソシアネート指数は、以下の方程式で表される:イソシアネート指数=(Eq NCO/活性水素のEq)×100(式中、Eq NCOはポリイソシアネートのNCO官能基の数であり、そして活性水素のEqは活性水素原子の当量数である)。約30〜約200のイソシアネート指数を用いて生み出されるPURフォーム製品は、本願発明の範囲内にある。イソシアネートA液対イソシアネート反応性B液の体積比は、典型的に体積で約0.5/1〜1.5/1の範囲に及び、最も典型的に体積で1/1である。
【0017】
あらゆる好適なイソシアネートが使用できる一方で、本願発明における使用に好適なイソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート異性体(MDI)、水和MDI及び1,5−ナフタレンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種のメンバーを含む。例えば、2,4−TDI、2,6−TDI、及びその混合物は本発明で容易に用いることができる。ジイソシアネートの他の好適な混合物には、これだけに限定されるものではないが、より高級なポリイソシアネートのその他の異性体や類似体を伴った4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを含む未精製のMDI又はPAPIとして当該技術分野で知られているものが含まれる。本願発明のもう一つの態様において、ポリイソシアネートとポリエーテル又はポリエステルポリオールとの部分的に事前に反応させた混合物を含むポリイソシアネートのプレポリマーは好適である。さらにもう1つの態様において、ポリイソシアネートは、MDIを含むか、又は実質的にMDI又はMDI’sの混合物からなる。イソシアネートの量は、典型的に、全フォーム配合物の約40質量%〜約60質量%の範囲に及ぶ。
【0018】
あらゆる好適なポリオールが使用できる一方で、本願発明における使用に好適なポリオールの例には、ポリアルキレンエーテル及びポリエステルポリオールからなる群より選択される少なくとも1種のメンバーを含む。ポリアルキレンエーテルポリオールには、ジオールやトリオールを含めた多水酸基化合物から誘導される末端ヒドロキシル基を持つポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)ポリマーやコポリマーなどのポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが含まれる。これらには、これだけに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジオール、及び低分子量ポリオールのようなショ糖などの糖類が含まれる。アミンポリエーテルポリオールは本発明に使用される。これらは、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、又はトリエタノールアミンなどのアミンが、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドと反応したときに調製される。本発明のもう一つの態様において、単一の高分子量ポリエーテルポリオール、あるいは異なった多官能性物質、及び/又は異なった分子量又は異なった化学組成物質の混合物などの高分子量ポリエーテルポリオールの混合物が使用できる。本発明のさらにもう1つの態様において、ジカルボン酸を過剰なジオールと反応させたとき生じるものを含めたポリエステルポリオールが使用できる。制限されることのない例には、エチレングリコール又はブタンジオールと反応させたアジピン酸、フタル酸又は無水フタル酸が含まれる。本発明で有用なポリオールは、ラクトンを過剰なジオールと反応させることによって、例えば、カプロラクトンをプロピレングリコールと反応させることによって製造することができる。更なる態様において、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール、及びその組み合わせなどの活性水素含有化合物は、本発明において有効である。本発明におけるその他の有用なポリオールには、ダイズ油、ヤシ油、キャノーラ油などの天然油から製造できるもの、糖、ショ糖、又はバイオマスから製造できるものが含まれる。ポリオールの量は、典型的に、総フォーム配合物の約10%〜約60質量%に及ぶ。
【0019】
あらゆる好適な触媒が本発明において使用できる一方で、本願発明における使用に好適な触媒の例には、t−カリウムオクトアート、第一錫オクトアート、ジブチルスズラウレート、ビスマスネオデカノエートなどの金属触媒、トリエチレンジアミン(TEDA)、N−メチルイミダゾール、1,2−ジメチル−イミダゾール、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、N,N’−ジメチル−ピペラジン、1,3,5−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノ−メチル)フェノール、N−メチルジシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)−エチル−ピペラジン、トリブチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘプタメチルテトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリス(3−ジメチルアミノ)プロピルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)−N’−メチルアミン、などのアミン化合物、及び酸でブロックしたそれらの誘導体、並びにあらゆるその混合物からなる群より選択される少なくとも1種のメンバーを含む。触媒の量は、典型的に、総フォーム配合物の約0.1質量%〜約10質量%の範囲に及ぶ。
【0020】
本願発明における使用に好適な他の添加剤には、1若しくは複数のシリコーン界面活性剤、有機界面活性剤、難燃剤、粘度低下剤、発泡剤、鎖延長剤、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、増量剤、顔料、又はあらゆるその組み合わせを含むことができる。他の添加剤の量には、典型的に、総フォーム配合物の約1質量%〜約40質量%が含まれ、そして添加剤は、典型的にイソシアネート反応性B液中への混合によって配合物中に組み込まれるが、それらがイソシアネートA液中に組み込まれ得ることもあると理解されている。当該技術分野で知られている他の混合物又は物質がフォーム配合物中に含まれることは理解されており、そしてそれは本発明の範囲内にある。
【0021】
[乳化剤]
乳化剤は、通常、それらの化学構造に親水性(水適合)部分と親油性(油適合)部分の両方を持っている。スプレーフォーム配合物に使用されることが多い乳化剤はノニルフェノールエトキシレートすなわちNPEであり、その一般構造は
図1に示されている。NPEでは、親水部分はヒドロキシル末端を持つエチレンオキシド鎖を含み、その長さが分子の親水性に影響を及ぼす。本願発明の比較例で使用されるNPEは、鎖内にで9モルのエチレンオキシドを持っている(NPE−9)。乳化剤の親油性な部分は、脂肪族鎖を含んでいることが多い。NPEに関しては、親油性部分はノニルフェノールである。乳化剤の親水性部分と親油性部分のバランスは、一般的に、HLB数(親水性−親油性バランス)とも呼ばれる。方程式(1)に示されているように、HLBは、5で割ることによって、乳化剤の親水部分の質量%から計算できる。HLB数は約1〜約20の範囲をとることができ、番号が小さいほど非常に親油性が強い構造を表し、そしてより大きな数がより親水性の構造を表す。乳化剤のHLBが、全組成物の平均親水性内容物から計算され、かつ乳化剤がいくつかの分子組成を有する配合製品であることに留意しなければならない。さらに、HLBは、単純に乳化剤の疎水性部分と親油性部分のバランスの序列を提供するのに使用されるので、2種類の大きく異なった構造物が同じ計算HLBを有する場合がある。
【化1】
【0022】
[本発明の乳化剤]
本発明の乳化剤は、
図2に示した一般構造のアルキルアルコールエトキシレートである。分子の親油性部分は、脂肪族炭素鎖から成り、そしてそれは、直鎖であっても分岐していてもよく、5〜30個の炭素を含んでいる。親油性部分は、石油から誘導された炭素、又はダイズ、ヤシ、トウモロコシなどの天然油起源、若しくはバイオマスなどの他の再生可能な資源から得られた再生可能な炭素のいずれかを含む。分子の親水部分は、実質的に、1〜40のエチレンオキシド反復単位を含むエチレンオキシドである。分子の親水部分はヒドロキシル基で終わっている。分子のエチレンオキシド部分は、実質的にエチレンオキシドであるが、分子は、全体の融点を下げるために最少量のプロピレンオキシド又はブチレンオキシドを含むこともある。プロピレンオキシド又はブチレンオキシドの量は、乳化剤の全体の平均分子量の約10質量%以下にすぎない。
【0023】
本発明の乳化剤は、約10〜約15のHLB計算値を有し、かつ1又は複数のアルキルアルコールエトキシレート構造体を含むこともできる。典型的には、乳化剤の平均計算HLBは、約10〜約15、好ましくは約11〜約14である。本発明の一実施形態において、乳化剤は、混合物の加重平均HLBが約11〜約14であるような、約10未満の計算HLBを有する1又は複数のアルキルアルコールエトキシレート構造体、及び約10超の計算HLBを有する1又は複数のアルキルアルコールエトキシレート構造体を含む。本発明のもう1つの実施形態において、乳化剤は、全体の平均HLBが約11〜14である、HLB値の2峰性分布があるような2種以上のアルキルアルコールエトキシレートを含む。
【0024】
乳化剤組成物はNPEを実質的に含まない。実質的に含まないとは、NPEが乳化剤の約5質量%以下でしかないことを意味する。
【0025】
本発明の乳化剤は、B液の1〜30質量%にてポリウレタンフォーム配合物のB液に組み込まれる。好ましくは、乳化剤は、B液の約5〜約15質量%の量にて組み込まれる。本発明の乳化剤は、室温にて液体として供給するために乳化剤の融点を抑えるように、B液への取り込み前に約5〜約50%の水と事前に混合されてもよい。
【0026】
本発明の特定の態様は、ここに添付した請求項の範囲を制限することのない以下の実施例によって例示される。
【実施例】
【0027】
本明細書中に例示したすべての実施例に利用された配合物を、表1に示す。ポリオールは、低密度オープンセル水発泡スプレーフォームのために産業で使用されるものを代表する一般的なポリエーテルトリオールである。難燃剤は、リンベースのTCPPであり、そして、界面活性剤は、シリコーンポリエーテルコポリマーである。触媒は、平衡型アミン触媒であり、そして実施例を通じて一貫している。この検討で使用される比較乳化剤は、平均9モルのエチレンオキシドを有するノニルフェノールエトキシレート(NPE)である(本明細書中ではNPE9とも呼ぶ)。乳化剤Aは、13.1の計算HLBを有する
図2の構造タイプのアルキルアルコールエトキシレートである。乳化剤Bは、その質量の>50%が再生可能炭素源から誘導され、かつ12.4のHLBを有する、
図2の構造タイプのアルキルアルコールエトキシレートである。
【0028】
【表1】
【0029】
[スプレーフォーム適用]
B液プレミックスを、5ガロン容のバケット内でポリオール、難燃剤、乳化剤、界面活性剤、触媒、及び水を一緒に混ぜ合わせることによって調製した。約5ガロンのそれぞれのプレミックスとイソシアネートを機械のポット内に入れた。スプレーに使用される装置は、住宅及び市販適用のポリウレタンスプレーフォーム向けにその分野で利用されるものと同等である。ここに示したすべての作業を、標準的な換気型スプレーブース内で1対1の体積比のポリオールプレミックス対イソシアネートにておこなった。段ボールの挿入物を、壁の間柱の間にスプレーするための基板として使用した。機械スプレー作業に使用される装置と処理パラメータを表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
k係数は、BTU in/hr・ft
2・°F(W/m・℃)で報告し、そしてそれをLasercomp Fox200熱流計により20×20×2.54cmのサンプルで計測した。寸法安定性及び密度を、(高さ、長さ、及び幅)の3つのエームズ空気マイクロメーターを備えた体積ステーションによって計測した。セル/表面の圧挫なしに極低密度硬質ポリウレタンフォームの正確な測定を達成するために、接触圧力を測るサンプルは、十分に調整可能である。
【0032】
本発明の乳化剤A及びBの使用レベルは、これらの実験のためのNPE−9と比較してその使用量より25%少なかった。得られたフォーム・サンプルの反応性、縮小、及び物理的特性を、表3に列挙する。この検討でスプレーした3つの乳化剤すべてに関して、クリーム時間、ストリングゲル時間、及び半硬化乾燥時間は非常に類似している。後退を、フォームの表面から段ボールの基板まで、較正した深さゲージを使用して、スプレーの向きのフォームの縮小量として計測した。横方向の縮小を、フォームが冷えた後に間柱間の段ボール挿入物がフォーム縮小によって引き寄せられた量として計測した。本発明の乳化剤A及び乳化剤Bの両方に関して、スプレーの実施、後退及び横方向の縮小は、NPE−9の比較例について観察されたものと同等か、又はそれよりわずかに少なかった。このことは、フォームが所望の量のセル展開に達したことを意味する。密度、断熱値(k係数)、及び寸法安定性もすべて、本検討で調べた3つの乳化剤に関して非常に良好であったので、低い使用レベルにおける本発明の乳化剤のいずれの使用に関して負の効果がないことが示唆された。
【0033】
【表3】
【0034】
[液相安定性の検討]
表1で列挙した配合物の一連の相安定度サンプルを、様々なレベルの比較例NPE−9と本発明の乳化剤Aを使用して調製した。不十分な乳化系は室温にてわずか24時間後には分離し得るので、相安定度に関して一部の判定はすぐにできた。しかしながら、ポリオールプレミックスの貯蔵安定度の要件は、当該技術分野において最長で3〜6カ月になる可能性がある。この検討におけるサンプルを、45℃のオーブンに入れ、そして最長8日間、静置した。サンプルをオーブンから定期的に取り出し、生じた分離の量を定量化するために計測をおこなった。
図3に示したように、相分離の程度をパーセント安定度として計測した。パーセント安定性度を、全サンプルの高さに対する分離した層の底面の高さを計測することによって決定した。
【0035】
図4は、乳化剤を使用しないときに生じ、かつ初日以降に計測される相分離を伴う相分離を例示し、そしてそれが約3日後も一定なままであった。これは、10.9部にてNPE−9を使用することで得られた相安定度と比較でき、そしてそれは、45℃にて少なくとも3日間、90%を超える相安定のままであった。25%、8.2部までNPE−9のレベルを下げることで高レベルの分離が起きたと判断した。同様の安定度の検討を本発明の乳化剤Aを使用して実施したとき、乳化剤なし又は同等の使用レベルのNPE−9(10.9部)に対して延長された期間、相が安定したままのサンプルが見つかった。さらに、NP9に対して乳化剤Aの乳化剤使用レベルを25%減量した配合物において、相安定度が有意に改良した。
図5に示すように、Dabco Emulsifier Aを用いた標準的な乳化剤使用レベルの50%減量でさえ、比較的安定したサンプルを作り出した。
【0036】
特定の態様又は実施形態を参照して本発明を説明したが、様々な変更がなされることがあり、かつ同等物が本発明の範囲から逸脱することなくその要素と置換されることもあることを当業者は理解する。加えて、特定の状況又は物質を、本質的なその範囲から逸脱することなく本発明の教示に適合させるために、多くの修飾形態が作り出されることもある。そのため、本発明は、本願発明を実施するために企図された最良の態様として開示した特定の実施形態に制限されることは意図していないが、本発明には、添付した請求項の範囲内にあるすべての実施形態が含まれることは意図している。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)少なくとも1種のイソシアネートを、約30〜約200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のポリオール、水、少なくとも1種の触媒、及び少なくとも1種の乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物と接触させることを含み、得られたフォームが約6〜約32kg/m3の密度を有するポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記イソシアネート反応性混合物は約2〜約30質量%が水であり、約1〜約30質量%が乳化剤であり、かつノニルフェノールエトキシレート(NPE)を実質的に含まず、前記乳化剤が少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレートを含み、かつ約10〜約15の平均HLB計算値を有する、方法。
(付記2)前記乳化剤が、ダイズ、ヤシ、キャノーラ、又は他の天然油糧種子由来の再生可能な炭素量を有するアルコールエトキシレートを含む、付記1に記載の方法。
(付記3)前記乳化剤が2種以上のアルキルアルコールエトキシレートの混合物を含み、該混合物の平均HLBが約10〜約15である、付記1に記載の方法。
(付記4)前記アルキルアルコールエトキシレートの混合物が、約10未満のHLB計算値を有する1又は複数の構造体を少なくとも約5質量%含む、付記3に記載の方法。
(付記5)前記アルキルアルコールエトキシレートが、分子式R−(OCH2CH2)xOH(式中、Rは5〜20個の炭素原子を有する直鎖、分岐、飽和又は部分不飽和の炭化水素であり、xは1〜40である)を含む、付記1に記載の方法。
(付記6)B液が物理的発泡剤をさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記7)前記発泡剤が、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、及びヒドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも1種の要素を含む、付記6に記載の方法。
(付記8)前記乳化剤が、平均HLBが約10〜約15である2峰性分布のHLBを有するアルキルエトキシレートアルコールの混合物を含む、付記3に記載の方法。
(付記9)前記乳化剤が、非種子供給源由来の再生可能な炭素量を含む、付記1に記載の方法。
(付記10)前記非種子供給源がバイオマス及びショ糖のうち1又は複数を含む、付記9に記載の方法。
(付記11)前記乳化剤が約5〜約50%の水をさらに含み、その水の量が前記乳化剤の凝固点を抑えて前記乳化剤が約20℃で液体であるようにするのに十分なものである、付記1に記載の方法。
(付記12)前記触媒が、1又は複数の三級アミン及び金属カルボキシレートから選択される、付記1に記載の方法。
(付記13)ポリウレタンフォームがスプレー塗布される、付記1に記載の方法。
(付記14)前記ポリウレタンフォームが6〜16kg/m3の密度を有する、付記1に記載の方法。
(付記15)約30〜約200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のポリオール、水、少なくとも1種の触媒、及び約10〜約15のHLB計算値を有する少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレート乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物を含む、組成物。
(付記16)NPEを実質的に含まない、付記15に記載の組成物。
(付記17)前記乳化剤が、以下の化学構造:
【化1】
(式中、xは4〜19であり、yは1〜20である)を有する、付記15に記載の組成物。
(付記18)少なくとも1種のイソシアネートを、30〜200のイソシアネート指数にて、少なくとも1種のポリオール、水、少なくとも1種の触媒、及び少なくとも1種の乳化剤を含むイソシアネート反応性混合物と接触させることを含み、得られたフォームが約6〜約32kg/m3の密度を有するポリウレタンフォームを製造する方法であって、前記イソシアネート反応性混合物は約2〜約30質量%が水であり、約1〜約30質量%が乳化剤であり、かつノニルフェノールエトキシレート(NPE)を実質的に含まず、前記乳化剤が少なくとも1種のアルキルアルコールエトキシレートを含み、かつ約10〜約15の平均HLB計算値を有する、方法。
(付記19)前記イソシアネート反応性混合物が、スズ、カリウム、又はビスマスの金属触媒をさらに含む、付記1に記載の方法。
(付記20)前記アルキルアルコールエトキシレートの混合物が、約15超のHLB計算値を有する1又は複数の構造体を少なくとも約5質量%含む、付記3に記載の方法。
(付記21)付記18に記載の方法によって製造されたフォーム。