特許第5876489号(P5876489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876489
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】熱に安定な誘電性流体
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/20 20060101AFI20160218BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20160218BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20160218BHJP
   C07C 69/58 20060101ALN20160218BHJP
   C07C 39/15 20060101ALN20160218BHJP
   C07C 211/55 20060101ALN20160218BHJP
【FI】
   H01B3/20 T
   C08L91/00
   C08K5/13
   !C07C69/58
   !C07C39/15
   !C07C211/55
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-529327(P2013-529327)
(86)(22)【出願日】2011年9月15日
(65)【公表番号】特表2013-543632(P2013-543632A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】US2011051787
(87)【国際公開番号】WO2012037366
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年7月11日
(31)【優先権主張番号】61/384,057
(32)【優先日】2010年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハン,スー ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シュミト,デール シー.
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,クリストファー ジェー.
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0001330(US,A1)
【文献】 特表2002−523864(JP,A)
【文献】 特開昭59−030893(JP,A)
【文献】 特表2010−532084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/00−3/56
C08K 5/13
C08L 91/00
C07C 39/15
C07C 69/58
C07C 211/55
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)藻類油、脂肪酸エステル、微生物油、鉱物油、植物系油および植物種子油からなる群より選択される油、
(b)以下の構造のメチレン架橋を通じて互いに共有結合した少なくとも2つの置換クレゾール基を持つ置換ヒンダードフェノール酸化防止剤であって、
【化3】
式中、R〜R10は水素、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基またはアリール基であり、R〜Rの少なくとも1つおよびR〜R10の少なくとも1つは水酸基、R〜Rの少なくとも1つおよびR〜R10の少なくとも1つはメチル基、R〜Rの少なくとも1つおよびR〜R10の少なくとも1つは直鎖でも分岐でもよいアルキル、アルケニルもしくはアルコキシ基またはアリール基で、前記アルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリール基は置換されていても置換されていなくてもよい置換ヒンダードフェノール酸化防止剤、ならびに
(c)以下の構造のアミン架橋を通じて互いに共有結合した少なくとも2つの置換フェニル基を持つ置換ジフェニルアミン酸化防止剤であって、
【化4】
式中、R〜R10は独立して水素、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基またはビニルベンジル基であり、R〜R10がアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基の場合、これらの基は直鎖でも分岐でもよく、および置換されていても置換されていなくてもよく、ならびにR〜R10がアリール基の場合、これらの基は置換されていても置換されていなくてもよい置換ジフェニルアミン酸化防止剤
を含み、
前記置換ヒンダードフェノール酸化防止剤および前記置換ジフェニルアミン酸化防止剤を組み合わせた総量は、0.1%〜5.0重量パーセントである、誘電性流体。
【請求項2】
天然藻類酸化防止剤、金属不活性化剤または流動点降下剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項3】
油がキャノーラ油および高オレイン酸キャノーラ油から選択される植物種子油である、請求項1または2に記載の誘電性流体。
【請求項4】
植物種子油が高オレイン酸キャノーラ油である、請求項3に記載の誘電性流体。
【請求項5】
(a)電気部品、および
(b)電気部品と動作的に連通する請求項1から4のいずれかに記載の誘電性流体
を含むデバイス。
【請求項6】
電気部品が変圧器、コンデンサ、スイッチギヤ、送電部品、配線部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動再閉路器およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
(a)請求項1から4のいずれかに記載の誘電性流体を電気部品と動作的に連通するように設置するステップ、および
(b)誘電性流体を使用して電気部品を冷却するステップ
を含む方法。
【請求項8】
(a)請求項1から4のいずれかに記載の誘電性流体を電気部品と動作的に連通するように設置するステップ、および
(b)誘電性流体を使用して電気部品を絶縁するステップ
を含む方法。
【請求項9】
電気部品が変圧器、コンデンサ、スイッチギヤ、送電部品、配線部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動再閉路器およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記置換ヒンダードフェノール酸化防止剤及び前記置換ジフェニルアミン酸化防止剤の組み合わせが、前記誘電性流体の唯一の酸化防止剤を構成する、請求項1に記載の誘電性流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
誘電性流体は種々の用途において用いられる非導電性の流体である。それらの用途としては、変圧器、コンデンサ、スイッチギヤ(switching gear)、送電部品、配線部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動再閉路器ならびに他の電気デバイスおよび電気部品が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
誘電性流体は特に変圧器において有用である。変圧器が動作している時、電力損失が生じて熱として現れる。過剰な温度上昇を防ぐため、変圧器は相対的に大量の生成熱を放散するように誘電性流体で充填される。
【0003】
変圧器において、誘電性流体はまた電気的な絶縁性を内部の変圧部品に与える。とりわけ、変圧器は電気的絶縁体を含有するが、これは電圧を加えられた部品またはコンダクタが他の部品、コンダクタまたは他の内部回路に接触またはアーク放電することを防ぐために利用される。熱は絶縁体を劣化させる。高温は絶縁寿命を短くすることがある。
【0004】
したがって、変圧器の熱管理は変圧器の安全な動作に決定的に重要である。
【0005】
誘電性流体の熱安定性もまた、所望の変圧器耐用寿命のために重要である。例えば、変圧器は20年を超える耐用寿命を持つのが望ましい。誘電性流体は、熱を放散して20年を超える期間にわたって絶縁体を保護することができるよう、熱に安定でなければならない。
【0006】
ポリ塩化ビフェニル化合物(「PCB」としても知られる)は、かつて誘電性流体として変圧器において用いられたが、その毒性および環境への負の影響が原因で漸次廃止されている。PCBと置き換えられた非毒性の変圧器油としては、脂肪酸エステル、フッ化炭化水素油、微生物油、鉱物油、シリコーン系炭化水素油、植物系油および植物種子油が挙げられる。これらの非毒性油には、粘度、引火点、燃焼点、流動点、水飽和点、誘電強度および/または誘電性流体としてのそれらの有用性を限定する他の性質に関する欠点がある。
【0007】
例えば、植物油は環境に優しく、卓越した誘電特性、高温安定性、優れた引火および燃焼耐性を持ち、固体絶縁材料と互換性がある。しかしながら、植物油は流動点が高く、そのため−15℃から110℃という、植物油系誘電性流体の典型的な温度動作ウインドウ(temperature operating window)を産み出す。さらに、鉱物油と比較した場合、植物はより粘性があり、より熱に安定でない。
【0008】
鉱物油系誘電性流体は関心外ではない。鉱物油の重要な不利な点は150℃近いその燃焼点であり、これは植物油または他のより可燃性が低い流体、例えばシリコンオイルなどのそれよりもはるかに低い。
【0009】
その結果として、PCB系誘電性流体と同一または実質的に同一の化学的、機械的および/または物理的な性質を持つ、非毒性、生分解性の、PCBを含まない電気部品用の誘電性流体へのニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、変圧器、スイッチギヤ、電気ケーブル、発電、送電および配電設備における使用のための、熱に安定な誘電性流体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの実施形態において、誘電性流体が提供され、これは(a)油、(b)置換ヒンダードフェノール酸化防止剤、および(c)置換ジフェニルアミン酸化防止剤を包含する。
【0012】
別の実施形態において、デバイスが提供され、これは電気部品および電気部品と動作的に連通する熱に安定な誘電性流体を包含する。
【0013】
別の実施形態において、第一の方法が提供され、これは熱に安定な誘電性流体を電気部品と動作的に連通するように設置することを包含する。本方法は、熱に安定な誘電性流体を使用して電気部品を冷却することをさらに包含する。
【0014】
別の実施形態において、第二の方法が提供され、これは熱に安定な誘電性流体を電気部品と動作的に連通するように設置することを包含する。第二の方法は、熱に安定な誘電性流体を使用して電気部品を絶縁することをさらに包含する。
【0015】
本開示の有利な点は、熱に安定な誘電性流体である。
【0016】
本開示の有利な点は、誘電性流体用途のための改良された酸化防止剤組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は誘電性流体に関する。本明細書において提供される誘電性流体は、電気部品および特に変圧器と共に使用するのに適している。
【0018】
逆に述べられたり、内容から暗示されたり、または当分野において通例でない限り、全ての部分およびパーセントは重量ベースであり、全ての試験方法は本開示の出願日現在のものである。米国特許実務の目的のため、引用されるあらゆる特許、特許出願または出版物の内容は、とりわけ合成技術、製品および加工デザイン、ポリマー、触媒、定義(本開示において具体的に与えられるあらゆる定義と矛盾しない限度で)、ならびに当分野における一般知識の開示に関して、参照によりその全体が組み込まれる(またはその同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0019】
本開示における数値範囲はおおよそであり、したがって特に指示がない限り範囲の外側の値を包含することができる。任意の下限値および任意の上限値の間に少なくとも2単位の分離があるという条件で、数値範囲は下限および上限値からの、ならびに下限および上限値を包含する全ての値を1単位ずつ包含する。例として、組成的、物理的または他の性質、例えば、引火点、粘度、誘電強度、パーセント重量などが100から1,000であるなら、その意図は全ての個々の値、例えば100、101、102など、および部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200などが明示的に列挙されるということである。1未満の値または1より大きい分数(例として1.1、1.5など)を含有する値を含有する範囲の場合、1単位は適宜0.0001、0.001、0.01または0.1とみなされる。10未満の一桁の数(例として1から5)を含有する範囲の場合、1単位は典型的に0.1とみなされる。これらは具体的に意図されることの単なる例であり、列挙される最も小さい値と最も大きい値の間にある全ての可能な数値の組み合わせは本開示において明示的に述べられるものとみなされる。数値範囲は本開示内で、中でも流体および/または組成物中の成分、添加物および組成物中の様々な他の成分の量ならびにこれらの成分により定義される様々な特性および性質について与えられる。
【0020】
化合物に関して用いられるように、特に具体的に指示がない限り、単数形は全ての異性体型を包含し、逆もまた同様である(例えば「ヘキサン」は全てのヘキサン異性体を個々にまたは集団的に包含する)。用語「化合物」および「複合体」は有機、無機および有機金属化合物をいうのに交換可能に用いられる。
【0021】
用語「含む(comprising)」、「包含する(including)」、「持つ(having)」およびそれらの派生体は、同じものが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の付加的な成分、ステップまたは手順の存在を除外することを意図しない。あらゆる疑いを避けるため、用語「含む(comprising)」の使用を通じて特許請求の範囲に記載される全ての組成物は、逆に述べられない限り、任意の付加的な添加物、補助剤またはポリマーもしくは他である化合物を包含することができる。対照的に、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、任意の後続の記述の範囲から、実現性に必須でないもの以外のあらゆる他の成分、ステップまたは手順を除外する。用語「からなる(consisting of)」は、具体的に描写または列挙されていないあらゆる成分、ステップまたは手順を除外する。用語「または(or)」は、特に述べられない限り、個々に列挙されるメンバーを、同様に任意の組み合わせをいう。
【0022】
本明細書において用いられる「藻類」は、水(淡水および/または海水のいずれか)の中に生息する光合成能力がある任意の独立栄養生物である。用語「藻類」は、ケイ藻類(Bacillariophyceae)、緑藻類(Chlorophyceae)、ラン藻類(Cyanophyceae)、黄金藻類(Chrysophyceae)、褐藻類および/または紅藻類を包含する。藻類は、大型藻類、微細藻類、海藻類または淡水藻類を包含する任意の藻類種であることが可能である。適切な藻類の限定されない例としては、キアレラブルガリス(chiarella vulgaris)、ヘマトコッカス(haematococcus)、スティココッカス(stichochoccus)、バキッラリオピュタ(bacillariophyta)(黄金藻類)、シアノピュケアエ(cyanophyceae)(ラン藻類)、クロロピュテス(chlorophytes)(緑藻類)、クロレラ(chlorella)、ボトリオコッカスブラウニ(botryococcus braunii)、シアノバクテリア(cyanobacteria)、プリュムネシオピュテス(prymnesiophytes)、コッコリソフォラッド(coccolithophorads)、ネオクロリスオレオアブンダンス(neochloris oleoabundans)、セネデスムスジモルファス(scenedesmus dimorphus)、アテロプスジモルファス(atelopus dimorphus)、ユーグレナグラシリス(euglena gracilis)、ドナリエラ(dunalielia)、ドナリエラサリナ(dunaliella salina)、ドナリエラターティオレクタ(dunaliella tertiolecta)、ケイ藻類、バキッラリオピュタ(bacillariophyta)、クロロピュキアエ(chlorophyceae)、フェオダクチラムトリコルナトゥナム(phaeodactylum tricornutunum)、スティグマトピュテス(stigmatophytes)、ジクテュオコピュテス(dictyochophytes)およびペラゴピュテス(pelagophytes)が挙げられる。藻類は単一の細胞、コロニー、凝集塊、糸状およびそれらの組み合わせであることができる。
【0023】
本明細書において用いられる「藻類油」は藻類由来の油である。藻類油は不飽和/飽和脂肪酸トリグリセリドの混合物である。脂肪酸は16個から22個の炭素原子の範囲である炭素鎖を持つ。炭素鎖が二重結合を持たない場合、それは飽和油であり、Cn:0と呼ばれるが、ここでnは炭素原子の数である。1つの二重結合を有する鎖は一価不飽和であり、Cn:1と呼ばれる。2つの二重結合を有する鎖はCn:2であり、3つの二重結合を有する鎖はCn:3である。例えば、オレイン酸はC18:1の脂肪酸であり、一方エルカ酸はC22:1の脂肪酸である。藻類は遺伝子改変されていてもよく、またはそうでなくても高含量の一価不飽和トリグリセリドまたは低含量の多価不飽和トリグリセリドを有する藻類油を生産するよう選択されたものであってもよい。同様に、藻類油は部分的もしくは全体的に水素添加されていてもよく、またはそうでなくてもトリグリセリドの飽和を増加させるように加工されていても、もしくは化学基で官能基化されていてもよい。例えば、遺伝子改変藻類および/または抽出後の藻類油水素添加は、20重量%超から90重量%のオレイン酸(C18:1)を有するトリグリセリドから構成される藻類油を生産することができる。藻類からトリグリセリドを抽出するのに適した限定されない手順としては、エキスペラー/プレス、溶媒抽出、超臨界流体抽出、酵素抽出、浸透圧ショック、電気機械的抽出および前述の手順の任意の組み合わせが挙げられる。藻類油は官能基化することが可能である。藻類油についての適切な官能基化の限定されない例としては、水素添加(全体または部分的)、アセチル化、エポキシ化、エステル交換およびアミド化が挙げられる。
【0024】
「酸化防止剤」は他の分子の酸化を遅くするまたは防ぐ能力がある分子である。
【0025】
「ブレンド」、「流体ブレンド」および同様の用語は、2以上の流体のブレンド、同様に様々な添加物を伴う流体のブレンドである。かかるブレンドは混和性であってもなくてもよい。かかるブレンドは相分離していてもしていなくてもよい。かかるブレンドは光散乱および当分野で公知の任意の他の方法から決定される1またはそれ以上の領域構成を含有してもしなくてもよい。
【0026】
「組成物」および同様の用語は、2以上の成分の混合物またはブレンドである。
【0027】
「絶縁破壊電圧」、「誘電強度」、「絶縁破壊」または「破壊強度」(MV/mまたはkV/mmで表す)は、誘電性流体が破壊されずに本来的に耐えることが可能な最大電界強度であり、不具合なく電気的ストレスに耐える液体の能力の測定値である。誘電強度は、100〜150mlの油試料を試験セルの中に取って、指定された間隔で隔てられた試験電極間に電圧をかけることにより測定される。試験は好ましくは5回実施され、平均値が計算される。絶縁破壊電圧または誘電強度はASTM D 877またはASTM D 1816を用いて決定される。
【0028】
「誘電性流体」は、ASTM D 1816(VDE電極、1mm間隔)に従って測定される絶縁破壊が20kV超、ならびに/またはASTM D 924(60Hz、25℃)に従って測定される誘電正接が0.2%未満および100℃で4未満(ASTM D 924、60Hz)の非導電性流体である。誘電性流体は電気部品と動作的に連通するように設置される場合、冷媒および/または絶縁性をもたらす。
【0029】
「誘電正接」、「比誘電率」または「電力定数(power constant)」は、導電性種に起因する電気損失の測定値であり、静電容量ブリッジを用いて試験セル中で流体の静電容量を測定することにより試験される。誘電正接はASTM D 924に従って決定される。
【0030】
「導電率」は導電率計、例えばEmceeメーターなどを用いて測定される。導電率はASTM D 2624に従って決定される。
【0031】
本明細書において用いられる「脂肪酸エステル」は、限定されない例として、ミリストレイン酸エステル、パルミトレイン酸エステル、サピエン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アラキドン酸エステル、エイコサペンタエン酸エステル、エルカ酸エステル、ドコサヘキサエン酸エステル、ステアリン酸メチルエステル、パルミチン酸メチルエステル、オレイン酸メチルエステルおよびラウリン酸メチルエステルを包含する。
【0032】
「引火点」は、空気および点火源に曝露された場合に流体蒸気の着火に至るであろう流体の温度である。引火点は、引火点テスター中に流体試料を置き、それが着火する温度をASTM D 92に従って決定することにより、決定される。
【0033】
「燃焼点」は、空気および点火源に曝露された場合に持続的に燃焼が起こる流体の温度である。燃焼点はASTM D−92に従って決定される。
【0034】
本明細書において用いられる「金属不活性化剤」は、金属イオンを不活性化することにより流体を安定化するのに用いられる添加物を包含する。本質的に、金属不活性化剤はかかる金属イオンの触媒作用を阻害すると考えられる。
【0035】
本明細書において用いられる「微生物」は、原核生物、光合成を行う微生物、微細藻類細胞、酵母および/または真菌類を包含する。微生物は遺伝子改変であっても脂質経路酵素を発現するよう選択されたものであってもよい。例えば、微生物は、リパーゼ、スクローストランスポーター、スクロースインベルターゼ、フルクトキナーゼ、多糖分解酵素、脂肪酸アシル−ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシル−CoA/アルデヒドレダクターゼ、脂肪酸アシル−CoAレダクターゼ、脂肪アルデヒドレダクターゼ、脂肪アルデヒドデカルボニラーゼおよびアシルキャリアタンパク質(ACP)から選択されるタンパク質をコードする外因性遺伝子を含有する微細藻類細胞、油性酵母、または真菌類であることができる。適切な微生物の限定されない例としては、chromydomonas属の微生物またはchromydomonas reinhardtiiおよびE.coliが挙げられる。
【0036】
本明細書において用いられる「微生物油」は微生物由来の油である。藻類油微生物油は官能基化が可能である。微生物油についての適切な官能基化の限定されない例としては、水素添加(全体または部分的)、アセチル化、エポキシ化、エステル交換およびアミド化が挙げられる。
【0037】
本明細書において用いられる「鉱物油」は主としてアルカンから構成される。鉱物油の限定されない例としてはポリαオレフィンが挙げられる。ポリ(α−オレフィン)はα−オレフィン、例えばブタン(C4)、ヘキサン(C6)、オクタン(C8)、デセンス(decence)(C10)またはドデデンス(dodedence)(C12)以上の炭化水素分岐α−オレフィンなどの重合に由来する。ポリ(α−オレフィン)は単一のオリゴマーであることもα−オレフィンオリゴマーの混合物であることも可能である。
【0038】
本明細書において用いられる「天然藻類酸化防止剤」は藻類により生産される酸化防止剤である。天然藻類酸化防止剤の限定されない例としては、アスタキサンチン、β−カロテン、トコフェロール、多価不飽和トリグリセリドおよびそれらの組み合わせが挙げられる。天然でアスタキサンチンを生産する藻類の限定されない例は、Haematococcus pluvialis、微細緑藻類である。アスタキサンチンは天然で緑藻類の中に蓄積する。
【0039】
「酸化」は物質から酸化剤へと電子を移動させる化学反応である。酸化反応は反応性のフリーラジカルを生産することが可能であり、これは組成物を分解することが可能である。酸化防止剤はフリーラジカルを消滅させることが可能である。
【0040】
「酸化誘導時間」または「OIT」は誘電性流体の酸化に対する抵抗性を決定する一次的な手段である。重さ10〜15mgの油検体が用意される。示差走査分析(DSC)機器を用いて室温で開始し、油検体の温度を10℃/分という一定の傾斜率で窒素環境中で上昇させる。温度を特定の等温度に上昇させ、検体の融解を完了した後、窒素環境を酸化環境が生じるように変える。発熱性酸化曲線がサーモグラム中に観察されると、試験は終了する。
【0041】
「酸素安定性指数法」は酸化率の最大の変化ポイントである。AOCSの公式法Cd 12b−92においては、精製空気流を温浴中に保持された油の試料に通過させる。油試料からの流出空気は次いで泡を形成させて脱イオン水を含有する容器を通過させる。水の導電率は連続的にモニターする。油試料からのあらゆる揮発性有機酸は流出空気により一掃される。流出空気中の揮発性有機酸の存在は、酸化が進行するにつれて水の導電率を増加させる。
【0042】
「流動点」は液体が所定の条件下で流れ出るまたは流動する最も低い温度である。流動点はドライアイス/アセトンを使用して油試料を冷却し、液体が半固体になる温度を決定することにより決定される。流動点はASTM D 97を用いて決定される。
【0043】
「トリグリセリド」は3つの脂肪酸分子に連結されたグリセロール骨格である。
【0044】
本明細書において用いられる「植物系油」は植物由来の脂質性物質を包含する。適切な植物油の限定されない例としては、ヤシ油、コーン油、麻実油、オリーブ油、パーム油、菜種/キャノーラ油、ベニバナ油、大豆油、ヒマワリ油および小麦胚芽油が挙げられる。
【0045】
本明細書において用いられる「植物種子油」は植物の種子由来の脂質性物質を包含する。適切な植物種子油の限定されない例としては、カシス種子油、ルリジサ種子油、ヒョウタン油、バッファローゴード(buffalo gourd)油、イナゴマメの莢、ヤシ油、コリアンダー種子油、コーン油、綿実油、アマ種子油/アマニ油、ブドウ種子油、麻実油、カポック種子油、ケナフ種子油、メドウフォーム種子油、オクラ/ハイビスカス種子油、オリーブ油、パーム油、パパイヤ種子油、シソの実油、ペクイ種子油(pequi seed oil)、ケシ油、カボチャ種子油、ラムティル種子油(ramtil seed oil)、菜種/キャノーラ油、ロイル種子油(royle seed oil)、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、茶実油/ツバキ油、トマト種子油、スイカ種子油および小麦胚芽油の種子から抽出される油が挙げられる。
【0046】
「粘度」は流動に対する流体の抵抗の測定値である。粘度はASTM D 445に従って、Brookfield粘度計で測定される。
【0047】
本明細書において用いられる「粘度−エイジング」は、誘電性流体を空気中で100℃で7週間エイジングした後の粘度の測定値である。
【0048】
「体積抵抗」は絶縁材料の本体を流れる漏洩電流への抵抗である。材料中の電流に沿った電位勾配の電流密度に対する比。国際単位系のもとで、体積抵抗は材料でできた1メートルの立方形の対面間の直流抵抗(Ω−m)に数値的に等しい。より小さい体積抵抗は絶縁媒体中のより大きい導電を指し示す。
【0049】
「水飽和点」は誘電性流体中の水飽和のパーセンテージである。水飽和点は、誘電性流体の温度と化学構造との関数である。水飽和点が上昇すると、誘電強度は一般に減少する。水飽和点はASTM D 1533に従って決定される。
【0050】
本開示は誘電性流体を提供する。誘電性流体は(a)藻類油、脂肪酸エステル、微生物油、鉱物油、植物系油および植物種子油からなる群より選択される油、(b)以下の構造のメチレン架橋を通じて互いに共有結合した少なくとも2つの置換クレゾール基を持つ置換ヒンダードフェノール酸化防止剤であって、
【化1】
式中、R1〜R10は水素、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基またはアリール基であり、R1〜R5の少なくとも1つおよびR6〜R10の少なくとも1つは水酸基、R1〜R5の少なくとも1つおよびR6〜R10の少なくとも1つはメチル基、R1〜R5の少なくとも1つおよびR6〜R10の少なくとも1つは直鎖でも分岐でもよいアルキル、アルケニルもしくはアルコキシ基またはアリール基で、前記アルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリール基は置換されていても置換されていなくてもよい置換ヒンダードフェノール酸化防止剤、ならびに(c)以下の構造のアミン架橋を通じて互いに共有結合した少なくとも2つの置換フェニル基を持つ置換ジフェニルアミン酸化防止剤であって、
【化2】
式中、R1〜R10は独立して水素、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基またはビニルベンジル基であり、R1〜R10がアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基の場合、これらの基は直鎖でも分岐でもよく、および置換されていても置換されていなくてもよく、ならびにR1〜R10がアリール基の場合、これらの基は置換されていても置換されていなくてもよい置換ジフェニルアミン酸化防止剤を包含する。好ましくは、アルキル基は約16個までの炭素原子を持つ。好ましいアルキル置換基としては、t−ブチル、1−ペンチル、ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、ノニル、デシルおよびドデシルが挙げられる。
【0051】
誘電性流体において用いられる油は、藻類油、脂肪酸エステル、微生物油、鉱物油、植物系油および高オレイン酸の植物種子油を包含する植物種子油からなる群より選択される。油は好ましくは植物種子油、より好ましくはキャノーラ油、なおより好ましくは「高オレイン酸」キャノーラ油である。本明細書において用いられる「高オレイン酸」は、油のオレイン酸(C18:1)含量が油の総重量ベースで少なくとも70重量パーセント、例としてオレイン酸含量が油の総重量ベースで71から75重量パーセントの間であることを意味する。
【0052】
好ましくは、置換ヒンダードフェノール酸化防止剤および置換ジフェニルアミン酸化防止剤を組み合わせた総量は、誘電性流体組成物の総重量ベースで0.1%から5.0重量パーセント(重量%)である。より好ましくは、総量は0.5から3.0重量%、最も好ましくは0.8から2.0重量%である。
【0053】
本実施形態において、適切な置換ヒンダードフェノール酸化防止剤の限定されない例としては、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)および4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−ターシャリー−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0054】
本実施形態において、適切な置換ジフェニルアミン酸化防止剤の限定されない例としては、N,N’ジオクチルジフェニルアミン、ジ−β−ナフチル−パラ−フェニレンジアミン、n−フェニルベンゼンアミンおよび2,4,4−トリメチルペンタンの反応産物(IRGANOX l−57)、ノニルジフェニルアミン(Naugalube 438L)、ブチルオクチルジフェニルアミンおよびジクミルジフェニルアミンが挙げられる。
【0055】
本実施形態において、誘電性流体は天然の藻類酸化防止剤をさらに包含する。
【0056】
本実施形態において、誘電性流体は金属不活性化剤をさらに包含することができる。適切な金属不活性化剤の限定されない例としては、銅不活性化剤およびアルミニウム不活性化剤が挙げられる。銅不活性化剤の例はベンゾトリアゾール誘導体である。他の適切な金属不活性化剤の限定されない例としては、2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロポニオヒドラジン、ベンゾ−トリアゾール脂肪アミン塩、1−(ジ−イソオクチルアミノメチル)−1,2,4−トリアゾール、1−(2−メトキシプロパ−2−イル)トリルトリアゾール、1−(1−シクロヘキシルオキシプロピル)トリルトリアゾール、1−(1−シクロヘキシルオキシヘプチル)トリルトリアゾール、1−(1−シクロヘキシルオキシブチル)トリルトリアゾール、1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル−4−メチルベンゾトリアゾール、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリブチルボレート、トリペンチルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリイソオクチルボレートおよびN,N−ビス(2−エチルヘキシル)−ar−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メタンアミンが挙げられる。
【0057】
本実施形態において、低い流動点が望まれる場合、誘電性流体は流動点降下剤をさらに包含することができる。(誘電性流体総重量ベースで)2重量パーセント以下の流動点降下剤は誘電性流体の流動点を10から15℃典型的に低減させるであろう。適切な流動点降下剤の限定されない例としては、メタクリル酸エステル、ポリメタクリレート(PMA)、ポリアルキルメタクリレート、脂肪酸からの脂肪酸アルキルエステル、ポリビニルアセテートオリゴマーおよびアクリルオリゴマーが挙げられる。
【0058】
本実施形態において、流動点は、誘電性流体に防寒処理をすることによりさらに降下させることができる。誘電性流体は、温度を0℃近くまたは0℃未満にまで低下させ、凝固した成分を除去することにより防寒処理される。防寒処理プロセスは、一連の温度降下およびそれに続く様々な温度での固体の除去として行うことができる。防寒処理は温度を連続的に5、0および−12℃へと数時間かけて降下させ、ケイソウ土を使用して固体を濾過することにより行うことができる。
【0059】
本誘電性流体は本明細書において開示される2以上の実施形態を含むことができる。
【0060】
本開示はデバイスを提供する。デバイスは、電気部品および電気部品と動作的に連通する本誘電性流体を包含する。適切な電気部品の限定されない例としては、変圧器、コンデンサ、スイッチギヤ、送電部品、配線部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動再閉路器もしくは同様の部品など、および/またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
誘電性流体は電気部品と動作的に連通する。本明細書において用いられる「動作的連通」は、誘電性流体が電気部品を冷却および/または絶縁するのを可能にする構成および/または空間的関係である。動作的連通はそのため、誘電性流体が電気部品の中にある構成、上にある構成、周辺にある構成、電気部品に隣接する構成、接触する構成、電気部品を(全体的または部分的に)包囲する構成、電気部品を貫く構成および/または電気部品に近接する構成、ならびに電気部品が誘電性流体中に(全体的または部分的に)浸漬される構成を包含する。
【0062】
1つの実施形態において、電気部品は変圧器である。変圧器は1つの回路から別の回路へと誘導結合コンダクタ、すなわち変圧器のコイルを通じて電気エネルギーを移動させるデバイスである。変圧器は電力容量または系統電圧の面から分類され、結果として電力網における変圧器の用途に関係する。配電変圧器の系統電圧は典型的に36kV以下の範囲である。電力変圧器の系統電圧は典型的に36kV以上の範囲である。
【0063】
1つの実施形態において、変圧器は配電変圧器である。配電変圧器はハウジングまたはタンク中の一次および2次コイルまたは巻線ならびに巻線と動作的に連通するタンク中の誘電性流体を包含する。巻線は誘電性流体を介して互いに絶縁され、磁気的に適切な材料、例えば鉄または鋼などの共通コアの周囲に巻かれる。コアおよび/または巻線はまた、さらなる絶縁および熱吸収のために層状構造、絶縁コーティングまたは絶縁紙材料を持つことができる。コアおよび巻線は誘電性流体中に浸漬され、流体の自由な循環を可能とする。誘電性流体はコアおよび巻線を覆って包囲する。誘電性流体は絶縁体中の全ての小さい空隙およびハウジング内の他の場所を完全に満たす。変圧器ハウジングは、寄せ集まって変圧器の不具合を最終的に引き起こすであろう空気および/または汚染物質が入ってくるのを防ぐ気密および液密のシールをタンク周辺に備える。
【0064】
コアおよびコイルアセンブリからの熱伝達率を改善するため、変圧器は冷却増加をもたらすための付加的な構造、例えば冷却をもたらすのに利用できる表面領域の増加をもたらすタンク上のフィン、またはタンク上部に上昇する熱流体がチューブを通じて循環し、タンク底部に戻ることにより冷えることができるように備えられるタンクに付着されたラジエータもしくはチューブなどを包含することができる。これらのチューブ、フィンまたはラジエータは、タンク壁単独によりもたらされるものを超えた付加的な冷却表面をもたらす。ファンはまた、熱せられた変圧器格納容器のいたる所に、または熱い誘電性流体および熱せられたタンクから周辺大気へと熱をより良好に移動させるためのラジエータもしくはチューブのいたる所に気流を強制的に吹き込むために備えられてもよい。また、いくつかの変圧器は強制油冷却システムを包含するが、これは誘電性流体をタンク底部からパイプまたはラジエータを通じてタンク上部まで循環させる(またはタンクから別個の離れた冷却デバイスへと循環させ、その後に変圧器に戻す)ポンプを包含する。
【0065】
他の実施形態もまた可能であり、変圧器における使用に限定されない。
【0066】
1つの実施形態において、本開示は電気部品と動作的に連通するように誘電性流体を設置することを含む方法を提供する。本方法は誘電性流体を使用して電気部品を冷却することをさらに包含する。電気部品は、変圧器、コンデンサ、スイッチギヤ、送電部品、配線部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動再閉路器など、および/またはそれらの組み合わせの任意の1つを包含することができる。
【0067】
1つの実施形態において、本開示は電気部品と動作的に連通するように誘電性流体を設置することを含む方法を提供する。本方法は誘電性流体を使用して電気部品を絶縁することをさらに包含する。電気部品は、変圧器、コンデンサ、スイッチギヤ、送電部品、配線部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動再閉路器など、および/またはそれらの組み合わせの任意の1つを包含することができる。
【実施例】
【0068】
以下の限定されない例は本発明を説明する。
【0069】
比較例1〜8および実施例9〜14
実施例について、Dow AgroSciences LLCにより製造された高オレイン酸キャノーラを用いた。油のオレイン酸(C18:1)含量は71から75重量パーセントの間で、170℃での酸素誘導時間は7分間であった。評価された酸化防止剤としては、(a)R.T.Vanderbilt Company,Inc.から市販されているVANOX MBPC 2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、(b)BASF Corporationから市販されているIRGANOX L−109 ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマート、(c)BASF Corporationから市販されている、n−フェニルベンゼンアミンおよび2,4,4−トリメチルペンタンのIRGANOX L−57反応産物、もの、(d)BASF Corporationから市販されているIRGANOX L−74 ジアルキルジフェニルアミン、および(e)Chemtura Corporationから市販されているNaugalube 438L ノニルジフェニルアミン、があった。
【0070】
実施例(実施例9〜14)はそれら各々の比較例(比較例2〜7)よりも酸化誘導時間が長いことを実証した。また、例示された組成物のいずれも空気中での100℃で7週間のエイジング後にゲル化流体に至らなかった。
【表1】
【0071】
実施例15〜17
実施例について、Dow AgroSciences LLCにより製造された高オレイン酸キャノーラを用いた。油のオレイン酸(C18:1)含量は71から75重量パーセントの間で、170℃での酸素誘導時間は7分間であった。評価された酸化防止剤としては、(a)R.T.Vanderbilt Company,Inc.から市販されているVANOX MBPC 2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、および(b)Chemtura Corporationから市販されているNaugalube 438L ノニルジフェニルアミンがあった。
【表2】
【0072】
実施例(実施例15〜18)は、熱に安定な高オレイン酸キャノーラ系油が(a)0.2%未満の25℃での誘電正接、(b)少なくとも3.5未満の25℃での比誘電率、(c)1×10Ω・m超の25℃での体積抵抗、(d)少なくとも20kV/1mm間隔の破壊強度、(e)少なくとも−15℃の流動点および(f)300℃より高い燃焼点をもたらすことを実証した。
【0073】
本開示は本明細書に含有される実施形態および説明に限定されないが、以下の特許請求の範囲内に含まれる実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組み合わせを包含するこれらの実施形態の改変形を包含することが具体的に意図される。
なお、本発明には以下の態様も含まれる。
[1](a)藻類油、脂肪酸エステル、微生物油、鉱物油、植物系油および植物種子油からなる群より選択される油、
(b)以下の構造のメチレン架橋を通じて互いに共有結合した少なくとも2つの置換クレゾール基を持つ置換ヒンダードフェノール酸化防止剤であって、
【化3】
式中、R〜R10は水素、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基またはアリール基であり、R〜Rの少なくとも1つおよびR〜R10の少なくとも1つは水酸基、R〜Rの少なくとも1つおよびR〜R10の少なくとも1つはメチル基、R〜Rの少なくとも1つおよびR〜R10の少なくとも1つは直鎖でも分岐でもよいアルキル、アルケニルもしくはアルコキシ基またはアリール基で、前記アルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリール基は置換されていても置換されていなくてもよい置換ヒンダードフェノール酸化防止剤、ならびに
(c)以下の構造のアミン架橋を通じて互いに共有結合した少なくとも2つの置換フェニル基を持つ置換ジフェニルアミン酸化防止剤であって、
【化4】
式中、R〜R10は独立して水素、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基またはビニルベンジル基であり、R〜R10がアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基の場合、これらの基は直鎖でも分岐でもよく、および置換されていても置換されていなくてもよく、ならびにR〜R10がアリール基の場合、これらの基は置換されていても置換されていなくてもよい置換ジフェニルアミン酸化防止剤
を含む、誘電性流体。
[2] 天然藻類酸化防止剤、金属不活性化剤または流動点降下剤のうちの少なくとも1つをさらに含む[1]に記載の誘電性流体。
[3] 油がキャノーラ油および高オレイン酸キャノーラ油から選択される植物種子油である、[1]または[2]に記載の誘電性流体。
[4] 植物種子油が高オレイン酸キャノーラ油である、[3]に記載の誘電性流体。
[5] (a)電気部品、および
(b)電気部品と動作的に連通する[1]から[4]のいずれかに記載の誘電性流体
を含むデバイス。
[6] 電気部品が変圧器、コンデンサ、スイッチギヤ、送電部品、配線部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動再閉路器およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、[5]に記載のデバイス。
[7] (a)[1]から[4]のいずれかに記載の誘電性流体を電気部品と動作的に連通するように設置するステップ、および
(b)誘電性流体を使用して電気部品を冷却するステップ
を含む方法。
[8] (a)[1]から[4]のいずれかに記載の誘電性流体を電気部品と動作的に連通するように設置するステップ、および
(b)誘電性流体を使用して電気部品を絶縁するステップ
を含む方法。
[9] 電気部品が変圧器、コンデンサ、スイッチギヤ、送電部品、配線部品、スイッチ、レギュレータ、回路遮断器、自動再閉路器およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、[7]または[8]に記載の方法。