特許第5876491号(P5876491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5876491間隙凍結を使用する凍結乾燥のための核生成および結晶化の最適化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876491
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】間隙凍結を使用する凍結乾燥のための核生成および結晶化の最適化
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/06 20060101AFI20160218BHJP
   B01D 9/04 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   F26B5/06
   B01D9/04
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-530419(P2013-530419)
(86)(22)【出願日】2011年9月27日
(65)【公表番号】特表2013-539004(P2013-539004A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】US2011053462
(87)【国際公開番号】WO2012054194
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年9月9日
(31)【優先権主張番号】61/387,295
(32)【優先日】2010年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(73)【特許権者】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare SA
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クー, ウェイ ワイ.
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−518640(JP,A)
【文献】 再公表特許第01/057121(JP,A1)
【文献】 実開平02−128095(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第2235483(DE,A1)
【文献】 米国特許第03270434(US,A)
【文献】 特表平05−502578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/06
B01D 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥デバイスであって、
一連のヒートシンクと、一連のトレイ面と、一連の断熱材とを含む室であって、前記一連のヒートシンクは、冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を個別に有し、これにより一連の上側ヒートシンクおよび下側ヒートシンクを形成し、各トレイ面は、上側ヒートシンクと下側ヒートシンク面との間に配設され、各断熱材は、トレイ面それぞれの下側ヒートシンクとの間に配設される、室と、
凍結乾燥室内の圧力を低下させるための真空ポンプと
を備えるデバイス。
【請求項2】
ヒートシンクは、前記ヒートシンク面と熱的に連通する冷媒導管を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ヒートシンクは、前記冷媒導管と前記ヒートシンク面との間に配設されたヒートシンク媒体をさらに備える請求項からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ヒートシンク面および前記トレイ面は、mmを超える固定距離で隔てられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ヒートシンク面と前記トレイ面との間に配設されたスペーサをさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記スペーサは、mmを超える厚さを有する請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記スペーサは、前記トレイ面が載るトレイを支持する請求項またはのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記トレイ面が載る前記トレイは、前記凍結乾燥室の内壁に貼り付けられた支えによって支持される請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記断熱材に、前記トレイ面が載る請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
凍結乾燥方法であって、
液体溶液を含む容器を請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイスのトレイ面上に装填する工程であって、前記液体溶液は溶質と溶媒とを含み頂面と底面とによって特徴付けられる、工程と、
前記ヒートシンクの温度を下げ、それによって前記容器およびデバイスを含む前記凍結乾燥室内の周囲温度をほぼ同じ速度で前記頂面および前記底面から前記液体溶液を凍結し、そして凍結された溶液を形成するのに十分な温度まで下げる工程と
前記室内の周囲圧力を低下させて前記凍結された溶液を凍結乾燥させる工程と
を含む方法。
【請求項11】
前記容器は、バイアルを備える請求項または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記容器は、少なくとも7mlの溶液を保持するサイズである、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液は、糖を含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶液は、活性薬剤を含む、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記凍結乾燥デバイスおよび断熱材は、約−2℃と約2℃の間の値の水/氷変化指数を提供する、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水/氷変化指数は、ゼロまたは正の値である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
2010年9月28日に出願された米国仮特許出願第61/387,295号の利益が、米国特許法§119(e)の下、主張される。この出願の開示はここで本明細書において参照として援用される。
【0002】
開示分野
本開示は、溶質の液体溶液を凍結乾燥するために使用される方法および装置に関するものである。本開示は、大きな一貫した細孔サイズを持つ溶質の凍結乾燥ケーキを生成するために凍結を行う間の液体溶液の核生成および結晶化の最適化を行うための方法を提供する。本開示は、さらに、この方法および凍結乾燥室とともに使用するための装置を提供する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の簡単な説明
材料の保存は、さまざまな方法を包含する。重要な方法の1つである、凍結乾燥(lyophilization)は、溶質のフリーズドライ(freeze−drying)を伴う。典型的には、溶液が凍結乾燥室内に装填され、溶液は凍結され、凍結された溶媒は減圧下で昇華によって取り除かれる。
【0004】
材料(例えば、糖)の凍結乾燥に付随する1つの周知の課題は、凍結された溶液の上に溶質(溶解材料)の1つまたは複数の層が形成することである。より悪い場合には、溶質は、ほぼ不浸透性であり、凍結された溶媒の昇華を妨げる無定形固体を形成する。濃縮溶質のこれらの層は凍結された溶媒の昇華を阻害する可能性があり、またより高い乾燥温度を使用し、および/またはより長い乾燥時間をかける必要がある場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明の一実施形態は、凍結乾燥室で使用するように適合された物品であり、凍結乾燥室は冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を持つヒートシンクと、トレイ面と、ヒートシンク面とトレイ面との間に配設された断熱材とを備える。この物品は、ヒートシンク面と熱的に連通する冷媒導管と、冷媒導管とヒートシンク面との間に配設されたヒートシンク媒体とを含むことができる。
【0006】
この物品は、ヒートシンク面とトレイ面とを隔てる約0.5mmを超える固定距離を有することができる。この距離は、ヒートシンク面とトレイ面との間に配設されたスペーサによって維持することができ、スペーサは例えば約0.5mmより大きい厚さを有する。スペーサがトレイ面が載るトレイを支持することができるか、または断熱材にトレイ面が載るものとしてよい。
【0007】
本発明の別の実施形態は、この物品を備える凍結乾燥デバイスである。この実施形態では、凍結乾燥デバイスは、冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を個別に有する複数のヒートシンクであって、上記ヒートシンクのうちの少なくとも1つは他のヒートシンクの上に配設され、これにより上側ヒートシンクと下側ヒートシンクとを形成し、下側ヒートシンク面は、上側ヒートシンクと下側ヒートシンクとの間に配設される、複数のヒートシンクと、上側ヒートシンクと下側ヒートシンク面との間に配設されたトレイ面と、トレイ面と下側ヒートシンクとの間に配設された断熱材とを備えることができる。
【0008】
凍結乾燥デバイスは、ヒートシンク面から、断熱材、スペーサ、または凍結乾燥デバイスの内壁に貼り付けられた支えによって固定されるトレイ面までの距離を有することができる。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態は、頂部および底部を有する封止可能な試料容器と封止可能な試料容器の底部に貼り付けられた断熱支持材とを備えるバイアルであって、断熱支持材は25℃で約0.2W/mK未満の熱伝導率を有する、バイアルである。試料容器と断熱支持材は、異なる材料で作られる。
【0010】
さらに別の実施形態は、本明細書で説明されている物品、凍結乾燥デバイス、および/またはバイアルを使用して液体溶液を凍結乾燥する方法である。この方法は、液体溶液を含む容器をヒートシンクを備える凍結乾燥室内に装填することと、液体溶液は溶質と溶媒とを含み頂面と底面とによって特徴付けられることと、容器とヒートシンクとの間に断熱材を設けることと、ヒートシンクの温度を下げ、それによって容器を含む凍結乾燥室内の周囲温度をほぼ同じ速度で頂面および底面から液体溶液を凍結し、凍結された溶液を形成するのに十分な温度まで下げることとを含む。次いで、この方法は、周囲圧力を下げることによって凍結された溶液を凍結乾燥することを含む。
【0011】
この方法は、凍結乾燥室が複数のヒートシンクを有することと、液体溶液を含む容器を2つの平行なヒートシンクの間にある凍結乾燥室内に装填することとを含むことができる。
【0012】
本発明のさらなる一実施形態は、液体溶液をその後の凍結乾燥のために凍結し、液体は頂面と底面とを備え容器内に配設され、凍結乾燥室内に配設された容器はヒートシンクを備え、改善は、容器をヒートシンクと直接接触しないように隔て、それによって頂面および底面から溶液をほぼ同じ速度で凍結することを備える方法を含む。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態は、実質的に乾燥している凍結乾燥材料を含む凍結乾燥ケーキであり、凍結乾燥材料内の複数の細孔が実質的に同じ細孔サイズを有し、凍結乾燥ケーキは本明細書で開示されている方法によって作製された。凍結乾燥ケーキは、凍結乾燥ケーキと同じ材料を含む参照凍結乾燥ケーキの細孔サイズより実質的に大きい細孔サイズを有するものとしてよいが、ただし、この参照凍結乾燥ケーキは液体溶液を含む容器をヒートシンクを備える凍結乾燥室内に装填することと、液体溶液はその材料と溶媒とを含むことと、容器とヒートシンクとの間の断熱材を除外することと、ヒートシンクの温度を下げ、それによって液体溶液を含む容器を備える凍結乾燥室内の周囲温度を液体溶液を凍結するのに十分な温度まで下げることと、液体溶液を凍結することと、凍結された溶液を凍結乾燥することとを含む方法によって作製される。
【0014】
本開示をより完全に理解するためには、以下の詳細な説明および添付図面の図を参照すべきである。
本明細書は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
凍結乾燥室で使用するように適合されたデバイスであって、
冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を備えるヒートシンクと、
トレイ面と、
上記ヒートシンク面と上記トレイ面との間に配設された断熱材と
を備えるデバイス。
(項目2)
上記ヒートシンクは、上記ヒートシンク面と熱的に連通する冷媒導管を備える上記項目のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目3)
冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を個別に有する複数のヒートシンクを提供するための1つまたは複数の追加ヒートシンクであって、上記ヒートシンクのうちの少なくとも1つは他のヒートシンクの上に配設され、これにより上側ヒートシンクと下側ヒートシンクとを形成し、上記下側ヒートシンク面は、上記上側ヒートシンクと上記下側ヒートシンクとの間に配設される、1つまたは複数の追加ヒートシンクをさらに備え、
上記トレイ面は上記上側ヒートシンクと下側ヒートシンク面との間に配設され、
上記断熱材は上記トレイ面と上記下側ヒートシンクとの間に配設される項目2に記載のデバイス。
(項目4)
上記ヒートシンクは、上記冷媒導管と上記ヒートシンク面との間に配設されたヒートシンク媒体をさらに備える項目2から3のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目5)
上記ヒートシンク面および上記トレイ面は、約0.5mmを超える固定距離で隔てられる上記項目のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目6)
上記ヒートシンク面と上記トレイ面との間に配設されたスペーサをさらに備える上記項目のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目7)
上記スペーサは、約0.5mmを超える厚さを有する項目6に記載のデバイス。
(項目8)
上記スペーサは、上記トレイ面が載るトレイを支持する項目6または7のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目9)
上記トレイ面が載る上記トレイは、凍結乾燥室の内壁に貼り付けられた支えによって支持される項目8に記載のデバイス。
(項目10)
上記断熱材に、上記トレイ面が載る項目1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
(項目11)
液体溶液を含む容器を凍結乾燥室内に設けられた上記項目のいずれか一項に記載のデバイスのトレイ面上に装填する工程であって、上記液体溶液は溶質と溶媒とを含み頂面と底面とによって特徴付けられる、工程と、
上記ヒートシンクの温度を下げ、それによって上記容器およびデバイスを含む上記凍結乾燥室内の周囲温度をほぼ同じ速度で上記頂面および上記底面から上記液体溶液を凍結し、凍結された溶液を形成するのに十分な温度まで下げる工程とを含む方法。
(項目12)
上記室内の周囲圧力を下げて上記凍結された溶液を凍結乾燥させる工程をさらに含む項目11に記載の方法。
(項目13)
上記容器は、バイアルを備える項目11または12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
上記デバイスは、少なくとも2つの平行なヒートシンクを備え、上記液体溶液を含む上記容器を上記2つの平行なヒートシンクの間の上記凍結乾燥室に装填する工程をさらに含む項目11から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
上記容器は、底部を備え、上記断熱材は、上記ヒートシンク面と上記容器の底部との間に間隙を備える項目11から14のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、凍結乾燥室および複数のヒートシンクを垂直の配置構成で示す凍結乾燥デバイスの内側の図面である。
図2図2は、ヒートシンク面とトレイ面の配置構成を示す物品の複合図面である。
図3図3は、複数のヒートシンクの配置構成ならびにヒートシンク面およびトレイ面の位置および隔離を示す物品の別の複合図面である。
図4図4は、トレイ上に位置決めされるか(4a)、断熱材上に直接位置決めされるか(4b)、または断熱支持材と組み合わせた(4c)、試料容器、ここではバイアルの図である。
図5図5は、溶液の頂部および底部の温度を測定するのに有用な熱電対の配置を示す液体溶液を含む試料バイアルの図面である。
図6図6は、核生成事象を示すヒートシンク面とトレイ(トレイは約1.2mmの厚さを有する)との間の3mmの間隙を使用して凍結された10wt.%の蔗糖水溶液の頂部および底部の温度、溶液の頂部と底部との間の温度の差、ならびに凝固点プラトーの後の溶液の頂部の温度の低下を示すグラフである。
図7図7は、ヒートシンク面からトレイ(トレイは約1.2mmの厚さを有する)までの距離の関数として5wt.%の蔗糖水溶液に対する水/氷変化指数のグラフである。
図8図8は、フリーズドライの間の生成物温度に対する間隙凍結の効果を例示する一次乾燥プロセスの間のバイアルの内部温度のグラフである。
図9図9は、6mmの間隙を有するトイレ上で凍結させた試料およびヒートシンク面上で直接凍結させた試料に対する実効細孔半径のグラフである。
図10図10は、フリーズドライプロセスに対するヒートシンク温度の上昇の効果を例示する一次乾燥プロセス中のバイアルの内部温度を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
開示されている方法および物品は、さまざまな形態の実施形態が可能であるが、これらの方法および物品の特定の実施形態が実施例および図に示されており(この後説明される)、本開示は例示的であることを意図され、本発明を本明細書で説明され例示されている特定の実施形態に制限することを意図されていないことが理解される。
【0017】
詳細な説明
材料(例えば、糖)の凍結乾燥に付随する1つの周知の課題は、凍結された溶液の上に溶質(溶解材料)の1つまたは複数の層が形成することである。これらの層は、溶液の凍結の間に形成されるが、それは、典型的には、溶液は、急速に温度を低下させ、溶液を下から上へ凍結させるヒートシンク上の凍結乾燥室内に位置決めされているからである。この下から上への凍結により、液相中の溶質は押されて溶液の頂部に近づけられ、まだ液体である溶液中の溶質濃度が上昇する。次いで、溶質の濃度が高いことで、中を通る気体の流れを阻害しうる固体塊が形成されうる。より悪い場合には、溶質は、ほぼ不浸透性であり、凍結された溶媒の昇華を妨げる無定形固体を形成する。濃縮溶質のこれらの層は凍結された溶媒の昇華を阻害する可能性があり、またより高い乾燥温度を使用し、および/またはより長い乾燥時間をかける必要がある場合がある。
【0018】
本明細書で開示されるのは、これらの層の形成を防ぎ、それにより凍結された溶媒の効率的昇華をもたらすことができる、例えば、その後の凍結乾燥のための、材料を凍結するための装置および方法である。
【0019】
溶質の凍結乾燥またはフリーズドライは、凍結された液体を昇華し、非昇華材料をその結果生じる生成物として残すものである。本明細書では、非昇華材料は、一般的に溶質と称される。ふつうの凍結乾燥手順は、少なくとも1つの溶質の液体溶液を含む容器を凍結乾燥室に装填することを伴う。次いで、液体溶液が凍結される。凍結した後、室内の圧力を、凍結された溶液から、水などの凍結された溶媒を昇華できるまで十分下げる。
【0020】
凍結乾燥デバイスまたは凍結乾燥室は、容器を支持するための少なくとも1つのトレイおよび室内の圧力を下げるための手段(例えば、真空ポンプ)を備えることによって容器内の試料のフリーズドライを行うように適合される。多くの凍結乾燥デバイスおよび凍結乾燥室が市販されている。
【0021】
図1〜3を参照すると、凍結乾燥室は、その室内の温度を下げやすくするヒートシンク101を備える。ヒートシンク101は、凍結乾燥室の内部容積に露出され、冷媒103と熱的に連通しているヒートシンク面102を備える。冷媒103は、ヒートシンク101中に、冷媒導管104内で運ばれ得る。冷媒導管104は、ヒートシンク面102を載せることができるか、または例えばヒートシンク媒体105を通してヒートシンク面102と流体的に連通され得る。ヒートシンク媒体105は、熱伝導体であって、断熱材でなく、好ましくは、25℃で約0.25W/mK、0.5W/mK、および/または1W/mKより大きい熱伝導率を有する。
【0022】
本明細書で説明されている新規の方法によれば、試料容器106は、ヒートシンク101上になく、ヒートシンク101と直接熱伝導状態にもない。一つの実施形態では、試料容器106は、ヒートシンク101から断熱されているトレイ面107上にあるか、またはトレイ面107に載せられる。別の実施形態では、試料容器106は、ヒートシンク101の上に吊り下げられる。
【0023】
トレイ面107は、断熱材108によってヒートシンク101から断熱される。断熱材108は、25℃で約0.2W/mK未満、0.1W/mK未満、および/または0.05W/mK未満の熱伝導率を有する。断熱材108は、ガス、不完全真空、紙、発泡体(例えば、低温で可撓性を有する発泡体)、ポリマー材料、またはこれらの混合体とすることができる。ポリマー材料は、連続気泡を含まないか、または実質的に含まないか、またはポリマー発泡体(例えば、硬化発泡体)とすることができる。本明細書で使用されているように、断熱材108は、ヒートシンク101からの断熱をもたらす材料、物体、および/または空間を指す。空気も、凍結乾燥室の排気により空気の圧力を減少させる方法または装置において断熱材とみなされる。
【0024】
断熱材108によってもたらされる断熱のレベルは、断熱材108の厚さに依存しうる。この厚さは、例えば、ヒートシンク面102からトレイ面107までの距離109によって測定することができる。この距離109は、凍結乾燥室の内部サイズによって制限され、例えば、約0.5から約50mmまでの範囲内とすることができる。この距離109は、特定の凍結乾燥室容積に対して最適化することができ、好ましくは約0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50mmより大きい。距離109は、約10mmより大きくてもよいが、凍結乾燥デバイス内の容積は、典型的には、この距離を約20mm未満に最適化することによってより良好に利用される。特に、ヒートシンク面102とトレイ面107との間の距離は、ヒートシンク面102と上側ヒートシンク101との間の距離からバイアル106の高さを引いた値によってのみ制限される。好ましい距離109は、凍結乾燥室、ヒートシンク、冷媒、および同様のものの特定のモデルまたは状態に依存するものとしてよく、本開示を考慮して当業者によって容易に最適化される。
【0025】
トレイ面107がガス、不完全真空、または完全真空によってヒートシンク101から断熱されている一実施形態では、トレイ面107は、トレイ110、好ましくは剛性トレイに載せられる。特に、トレイ面107は、断熱材(例えば、発泡ポリウレタン)または熱伝導体(例えば、ステンレス鋼)とすることができる。
【0026】
トレイ110は、好ましくは凍結の間にヒートシンク面102とトレイ面107との間で固定距離を維持する。トレイ110は、トレイ110とヒートシンク面102との間に位置決めされたスペーサ111によってヒートシンク面102から隔てられ得るか、または凍結乾燥室の内面113(例えば、壁)に貼り付けられたブラケット112上に据えることによってヒートシンク面102から隔てられ得る。スペーサ111がトレイ110を支持する一実施形態では、ヒートシンク面102からトレイ面107までの距離は、スペーサ111の厚さにトレイ110の厚さを足した値である。上で開示されている距離に従って、スペーサ111は、例えば約0.5mmから約10mm、約1mmから約9mm、約2mmから約8mm、および/または約3mmから約7mmの範囲内の厚さを有することができる。トレイ110は、ヒートシンク面102とトレイ110との間に置かれた1つまたは複数のスペーサ111に載せることができる。
【0027】
別の実施形態では、トレイ110は、剛性断熱材に載せることができる。例えば、トレイ110は、熱伝導体(例えば、ステンレス鋼)であってよく、断熱材(例えば、発泡ポリウレタン)によって支持する(例えば、上に据えるようにする)ことができる。剛性断熱材をスペーサと組み合わせてトレイを載せることができる。上で開示されている距離に従って、剛性断熱材(スペーサがある、またはない)は、例えば約0.5mmから約10mm、約1mmから約9mm、約2mmから約8mm、および/または約3mmから約7mmの範囲内の厚さを有することができる。
【0028】
凍結乾燥デバイスは、冷媒103と熱的に連通するヒートシンク面102を個別に有する複数のヒートシンク101を備えることができる。このような凍結乾燥デバイスでは、ヒートシンク101を互いに対して凍結乾燥室内に垂直に配設することができ、上側ヒートシンクおよび下側ヒートシンク101を形成する(例えば、図1を参照)。慣例的に、下側ヒートシンク面102は、上側ヒートシンクと下側ヒートシンクとの間に配設され、トレイ面107は、上側ヒートシンク101と下側ヒートシンク面102との間に配設される。この配置構成において、断熱材108は、トレイ面107と下側ヒートシンク101との間に配設される。
【0029】
別の実施形態では、それぞれの個別の試料容器106は、断熱材108上にあるか、または載せることができる(例えば、図4bを参照)。例えば、試料容器が、頂部および底部を有するバイアルである場合、バイアル115の底部に貼り付けられた断熱支持材114がありうる(例えば、図4cを参照)。断熱支持材114は、例えば、25℃で約0.2W/mK未満、約0.1W/mK未満、および/または約0.05W/mK未満の熱伝導率を有することができる。一つの実施形態では、バイアル106および断熱支持材114は、異なる材料である(例えば、バイアルはガラスを、断熱支持材は発泡体またはポリマーを含むことができる)。バイアルは、封止可能なバイアルを含むものとしてよい。
【0030】
本発明の別の実施形態は、その後の凍結乾燥のために液体溶液を凍結する方法を含む。この方法の一つの実施形態では、上で説明されているような凍結乾燥室は、溶質(例えば、活性薬剤)と溶媒とを含む容器内に保持されている液体溶液を装填される。液体溶液は、頂面116と底面とを有し、底面117は、ヒートシンク101の近位にある(図5を参照)。容器は、容器とヒートシンク101との間に、本明細書で説明されている特性を有する断熱材を設けることによってヒートシンク101から隔てられる。凍結乾燥室内に装填された後、液体溶液は、ヒートシンク101の温度を下げ、それにより凍結乾燥室内の周囲温度を下げることによって凍結され得る。液体溶液を有利には頂面と底面とからほぼ同じ速度で凍結することで、凍結された溶液を形成することができる。さらなる利点は、溶液の頂部と底部での水から氷への同時変化は、溶液の底部が頂部より早く凍結するときに観察される問題となる凍結濃縮および表皮形成を回避するという点である。ひとたび凍結されると、液体溶液(今は、凍結された溶液)は凍結乾燥され、凍結乾燥ケーキを生じることができる。
【0031】
この実施形態では、断熱材により、ほぼ同じ速度で凍結乾燥室内の頂部および底部から液体溶液の凍結をたやすく行える。頂部および底部からの液体溶液の凍結は、凍結プロセスの間の溶液の温度を測定することによって決定されうる。温度は、少なくとも2つの熱電対を、溶液を含むバイアル内に差し込むことによって測定されうる。第1の熱電対118は、例えばバイアルの中心あたりの溶液の底部のところに位置決めし、第2の熱電対119は、例えばバイアルの中心あたりの溶液の表面の真下の溶液の頂部のところに位置決めすることができる。
【0032】
断熱材は、約−2℃と約2℃の間、約−1℃と約1℃の間、および/または約−0.5℃と約0.5℃の間の値で水/氷変化指数をさらにもたらしうる。好ましくは、水/氷変化指数はゼロまたは正の値である。水/氷変化指数は、溶液の頂部のところ(T)と底部のところ(T)の熱電対によって報告される温度を時間の関数として最初にプロットすることを含む方法によって決定される。水/氷変化指数は、分を単位とする水/氷変化時間で割った水/氷変化の最初の核形成事象と終わりまでとの間の℃・分を単位とする曲線の間の面積である。水/氷変化時間は、溶液に対する凝固点プラトーより低い値で溶液の頂部(T)のところの温度が減少するのに要する時間である。
【0033】
溶液を満たしたバイアルを凍結乾燥室内に装填することによって温度データを収集する。次いで、t=0分において、凍結乾燥トレイを約−60℃まで冷却する。次いで、溶液の頂部と底部が凝固点プラトーより低い温度まで冷却するまで温度を記録することができる。
【0034】
正および負の面積は、両方の温度値が凝固点プラトー123より低く冷却されるまで第1の核形成事象(例えば、図6などの温度のグラフで見ることができる)122から測定される。これらの面積を足し合わせることで、曲線の間の面積が求められる。曲線の間の面積を計算するときに、バイアルの底部のところの温度(T)がバイアルの頂部のところの温度(T)120より高ければ値は正であり、バイアルの頂部のところの温度(T)がバイアルの底部のところの温度(T)121より高ければ値は負である。好ましくは、水/氷変化指数はゼロまたは正の値である。この状態は、溶液の底部のところの凍結速度が溶液の頂部のところの凍結速度に比べて著しく速いという結論を妨げる。特定の溶液および容器の構成に対して、冷却速度、トレイの温度、および断熱材を、0℃・分の、またはその近くの温度で曲線の間の面積を求めるように最適化することができる。例えば、図7は、ステンレス鋼トレイ上のバイアル内の5wt.%の蔗糖水溶液に対する水/氷変化指数をヒートシンク面からステンレス鋼トレイまでの距離の関数として示しており、空気はヒートシンク面とステンレス鋼トレイの底部との間の間隙によって断熱材として働く。トレイは、約1.2mmの厚さを有していた。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態は、本明細書で開示されている方法によって作製される凍結乾燥ケーキである。凍結乾燥ケーキは、実質的に乾燥している凍結乾燥材料および実質的に同じ細孔サイズを有する凍結乾燥材料中の複数の細孔を備えることができる。一つの実施形態では、凍結乾燥ケーキは、凍結乾燥ケーキと同じ材料を含む参照凍結乾燥ケーキの細孔サイズより実質的に大きい細孔サイズを有するが、ただし参照凍結乾燥ケーキは標準の凍結乾燥プロセスによって作製される(例えば、液体溶液を含むバイアル106を凍結乾燥室内のヒートシンク101上に置き、バイアルとヒートシンク101との間の断熱材を除去し、ヒートシンク101の温度を下げ、それにより液体溶液を凍結させ、次いで凍結された溶液を凍結乾燥する)。凍結乾燥ケーキの円筒形細孔の断面積は、参照凍結乾燥ケーキの断面積より、好ましくは少なくとも1.1、2、および/または3倍大きい。別の実施形態では、凍結乾燥ケーキは、ケーキ全体を通して実質的に一貫した細孔サイズを有する。
【0036】
凍結乾燥ケーキ内の細孔のサイズは、BET表面積分析器によって測定することができる。細孔サイズの尺度である、実効細孔半径(r)は、円筒形細孔であると仮定して測定された細孔の表面積(SSA)から計算することができる。実効細孔半径rは、式r=2ε/SSA・ρ・(1−ε)で決定することができ、式中、SSAは、細孔の表面積であり、εは、空隙体積分率または空隙率(ε=Vvoid/Vtotal=n・r/Vtotal)であり、(1−ε)は、体積分率単位の溶質濃度であり、ρは、固体の密度である。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されているが、その範囲を制限することは意図されていない。
【0038】
(実施例1)
生成物の温度を下げることと、細孔拡大に対する間隙凍結の効果
凍結乾燥された10%の蔗糖水溶液に対する細孔拡大に対する間隙凍結の効果を調べた。複数の20mLショットチュービングバイアルに10%の蔗糖水溶液7mLを充填した。これらの充填されたバイアルを、一番上の棚(ヒートシンク面)と直接接触しているか、または6mmの間隙を有するトレイ上のLyoStar II(商標)(ニューヨーク州ストーンリッジ所在のFTS SYSTEMS,INC.社)フリーズドライヤー内に置いた。例えば、図1を参照。溶液中に2つの熱電対を挿入し、一方をバイアルの底部中心のところに、他方を液体表面から約2mm下に置くことによって複数のプローブ付きバイアルを生成した。図5を参照。次いで、充填されたバイアルを以下の手順で凍結乾燥した。
【0039】
1)棚を5℃まで冷却し、60分間この温度に保持した。次に、
2)棚を−70℃まで冷却し、200分間この温度に保持した(凍結中に熱電対を入れたバイアルの内部温度を記録した)。
【0040】
3)凍結した後、6mmの間隙を有するトレイを取り出し、これらのバイアルを一番下の棚に直に置いた(これにより、バイアルは一番上と一番下の棚に載り、凍結乾燥の間に棚の伝熱速度は同じになるため、異なる凍結方法の効果の直接的な比較を実行することが可能であった)。次に、
4)凍結乾燥室を70mTorrの設定点まで排気した。
【0041】
5)一次乾燥サイクルを開始し、その期間に凍結された試料の内部温度を記録した。一次乾燥サイクルは、(a)−70℃および70mTorrで10分間、試料を保持することと、次いで(b)70mTorrを維持しながら1℃/分の速度で−40℃まで温度を上げることと、次いで(c)−40℃および70mTorrで60分間、試料を保持することと、次いで(d)70mTorrを維持しながら0.5℃/分の速度で−25℃まで温度を上げることと、次いで(e)−25℃および50mTorrで64時間、試料を保持することとを伴った。
【0042】
6)二次乾燥が続き、0.5℃/分の速度で温度を30℃まで上げ100mTorrにすることと、次いで30℃および100mTorrで5時間、試料を保持することとを伴った。
【0043】
一次乾燥における一番上と一番下の(間隙を有するトレイ)棚にあるバイアル内の凍結された試料に対する平均生成物温度は、図8に表されている。一番下の棚の試料の温度分布は、一番上の棚のものに比べてかなり低く、これは一番下の棚の試料の乾燥した層の細孔サイズは、「間隙凍結」の効果により一番上の棚のものに比べてかなり大きいことを意味することがわかる。理論的には、これらの温度は、より大きな細孔サイズの蒸発冷却および/または断熱効果により設定点温度と異なる。
【0044】
個別の凍結乾燥ケーキに対する実効細孔半径rは、細孔拡散モデルによって決定された。Kuuら、「Product Mass Transfer Resistance Directly Determined During Freeze−Drying Using Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy (TDLAS) and Pore Diffusion Model.」、Pharm. Dev. Technol.、2010年(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20387998からオンラインで入手可能)を参照。結果は、図9に表されており、これを見ると、一番下の棚のケーキの細孔半径は、一番上の棚のケーキの細孔半径よりかなり大きいことがわかる。これらの結果は、6mmの間隙を有するトレイが細孔拡大に非常に効果的であることを示している。
【0045】
(実施例2)
棚の温度を上げることによる間隙を有するトレイに対する乾燥速度の加速
フリーズドライの速度および現在開示されている方法に対するスループットを高めるために代替的な凍結乾燥手順を開発した。実施例1で調製された溶液の試料を6mmの間隙を有するトレイに置き、以下の手順に従ってトレイ上で凍結乾燥した。
【0046】
1)棚を5℃まで冷却し、60分間この温度に保持した。次に、
2)棚を−70℃まで冷却し、70分間この温度に保持した(凍結中に熱電対を入れたバイアルの内部温度を記録した)。
【0047】
3)次に棚を−50℃まで温め、100分間この温度に保持した。次に、
4)凍結乾燥室を50mTorrの設定点まで排気した。
【0048】
5)一次乾燥サイクルを開始し、その期間に凍結された試料の内部温度を記録した。一次乾燥サイクルは、(a)−50℃および50mTorrで10分間、試料を保持することと、次いで(b)50mTorrを維持しながら1℃/分の速度で−40℃まで温度を上げることと、次いで(c)−40℃および50mTorrで60分間、試料を保持することと、次いで(d)50mTorrを維持しながら0.5℃/分の速度で−5℃まで温度を上げることと、次いで(e)−5℃および50mTorrで40時間、試料を保持することとを伴った。
【0049】
6)二次乾燥が続き、0.5℃/分の速度で温度を35℃まで上げ100mTorrにすることと、次いで35℃および100mTorrで7時間、試料を保持することとを伴った。
【0050】
図10は、実施例1および実施例2の間隙凍結試料に対する平均生成物温度分布を示している。この2つの分布は、棚の温度を−25℃から−5℃に上げたときに、乾燥速度がより速くなることを示している。これは、一番下の棚から間隙を有するトレイ上のバイアルへの熱伝達速度は、棚の温度を上げることによって容易に加速できることを示している。間隙を有するトレイの新しい熱伝達率Kを決定し、最適化されたサイクルを素早く取得して、最適な棚温度と室圧力の両方のバランスをとることができる。
【0051】
一連の非限定的な実施形態を以下の番号を振った項で説明する。
1.液体溶液を含む容器をヒートシンクを備える凍結乾燥室内に装填し、液体溶液は溶質と溶媒とを含み頂面と底面とによって特徴付けられることと、
容器とヒートシンクとの間に断熱材を設けることと、
ヒートシンクの温度を下げ、それによって容器と断熱材を含む凍結乾燥室内の周囲温度をほぼ同じ速度で頂面および底面から液体溶液を凍結し、凍結された溶液を形成するのに十分な温度まで下げることとを含む、方法。
2.室内の周囲圧力を下げて凍結された溶液を凍結乾燥させることをさらに含む項11に記載の方法。
3.容器はバイアルを備える前記項のいずれか1つに記載の方法。
4.凍結乾燥室は、複数のヒートシンクを備える前記項のいずれか1つに記載の方法。
5.液体溶液を含む容器を2つの平行なヒートシンクの間の凍結乾燥室に装填することを含む前記項のいずれか1つに記載の方法。
6.ヒートシンクは、ヒートシンク面を備え、容器は、底部を備え、断熱材は、ヒートシンク面と容器の底部との間に間隙を備える前記項のいずれか1つに記載の方法。
7.液体溶液を含む容器をトレイ面上に装填することをさらに含み、断熱材は、トレイ面とヒートシンクとの間に配設される前記項のいずれか1つに記載の方法。
8.液体溶液をその後の凍結乾燥のために凍結する方法において、液体は頂面と底面とを備え容器内に配設され、凍結乾燥室内に配設された容器はヒートシンクを備え、改善は、容器をヒートシンクと直接接触しないように隔て、それによって頂面および底面からの溶液をほぼ同じ速度で凍結することを備える、改善。
9.凍結乾燥材料と、
実質的に同じ細孔サイズを有する凍結乾燥材料中の複数の細孔と
を備える、項2の方法によって作製される凍結乾燥ケーキ。
10.細孔サイズは、参照凍結乾燥ケーキの細孔サイズより実質的に大きく、参照凍結乾燥ケーキは凍結乾燥ケーキと同じ材料を含むが、液体溶液を含む容器をヒートシンクを備える凍結乾燥室内に装填することと、液体溶液はその材料と溶媒とを含むことと、容器とヒートシンクとの間の断熱材を除外することと、ヒートシンクの温度を下げ、それによって液体溶液を含む容器を備える凍結乾燥室内の周囲温度を液体溶液を凍結するのに十分な温度まで下げることと、液体溶液を凍結することと、凍結された溶液を凍結乾燥することとを含む方法によって作製される項(エラー!参照元見当たらず)に記載の凍結乾燥ケーキ。
11.凍結乾燥室で使用するように適合された物品であって、
冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を備えるヒートシンクと、
トレイ面と、
ヒートシンク面とトレイ面との間に配設された断熱材とを備える物品。
12.ヒートシンクは、ヒートシンク面と熱的に連通する冷媒導管を備える項1に記載の物品。
13.ヒートシンクは、冷媒導管とヒートシンク面との間に配設されたヒートシンク媒体をさらに備える項2に記載の物品。
14.ヒートシンク面およびトレイ面は、約0.5mmを超える固定距離で隔てられる項11〜13のいずれか1つに記載の物品。
15.ヒートシンク面とトレイ面との間に配設されたスペーサをさらに備える項11〜14のいずれか1つに記載の物品。
16.スペーサは、約0.5mmを超える厚さを有する項6に記載の物品。
17.スペーサは、トレイ面が載るトレイを支持する項15または16に記載の物品。
18.断熱材に、トレイ面が載る項11〜16のいずれか1つに記載の物品。
19.冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を個別に有する複数のヒートシンクであって、前記ヒートシンクのうちの少なくとも1つは他のヒートシンクの上に配設され、これにより上側ヒートシンクと下側ヒートシンクとを形成し、下側ヒートシンク面は、上側ヒートシンクと下側ヒートシンクとの間に配設される、複数のヒートシンクと、
上側ヒートシンクと下側ヒートシンク面との間に配設されたトレイ面と、
トレイ面と下側ヒートシンクとの間に配設された断熱材とを備える凍結乾燥デバイス。
20.ヒートシンクは、ヒートシンク面と熱的に連通する冷媒導管を備える項19に記載のデバイス。
21.ヒートシンクは、冷媒導管とヒートシンク面との間に配設されたヒートシンク媒体をさらに備える項20に記載のデバイス。
22.ヒートシンク面およびトレイ面は、約0.5mmを超える固定距離で隔てられる項19〜21のいずれか1つに記載のデバイス。
23.ヒートシンク面とトレイ面との間に配設されたスペーサをさらに備える項19〜22のいずれか1つに記載のデバイス。
24.スペーサは、約0.5mmを超える厚さを有する項23に記載のデバイス。
25.スペーサは、トレイ面が載るトレイを支持する項23または24に記載のデバイス。
26.断熱材に、トレイ面が載る項19〜24のいずれか1つに記載のデバイス。
27.トレイ面が載るトレイは、凍結乾燥デバイスの内壁に貼り付けられた支えによって支持される項19〜26のいずれか1つに記載のデバイス。
28.頂部と底部とを備えるバイアルと、
バイアルの底部に貼り付けられた、25℃で約0.2W/mK未満の熱伝導率を有する断熱支持材とを備える試料容器。
29.バイアルおよび断熱支持材は、互いに異なる材料を含む項28に記載の試料容器。
【0052】
前記の説明は、理解しやすくするために掲載したにすぎず、そこから不要な制限があるとは一切理解すべきでなく、本発明の範囲内の改変は、当業者には明白なことと思われる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10