【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されているが、その範囲を制限することは意図されていない。
【0038】
(実施例1)
生成物の温度を下げることと、細孔拡大に対する間隙凍結の効果
凍結乾燥された10%の蔗糖水溶液に対する細孔拡大に対する間隙凍結の効果を調べた。複数の20mLショットチュービングバイアルに10%の蔗糖水溶液7mLを充填した。これらの充填されたバイアルを、一番上の棚(ヒートシンク面)と直接接触しているか、または6mmの間隙を有するトレイ上のLyoStar II(商標)(ニューヨーク州ストーンリッジ所在のFTS SYSTEMS,INC.社)フリーズドライヤー内に置いた。例えば、
図1を参照。溶液中に2つの熱電対を挿入し、一方をバイアルの底部中心のところに、他方を液体表面から約2mm下に置くことによって複数のプローブ付きバイアルを生成した。
図5を参照。次いで、充填されたバイアルを以下の手順で凍結乾燥した。
【0039】
1)棚を5℃まで冷却し、60分間この温度に保持した。次に、
2)棚を−70℃まで冷却し、200分間この温度に保持した(凍結中に熱電対を入れたバイアルの内部温度を記録した)。
【0040】
3)凍結した後、6mmの間隙を有するトレイを取り出し、これらのバイアルを一番下の棚に直に置いた(これにより、バイアルは一番上と一番下の棚に載り、凍結乾燥の間に棚の伝熱速度は同じになるため、異なる凍結方法の効果の直接的な比較を実行することが可能であった)。次に、
4)凍結乾燥室を70mTorrの設定点まで排気した。
【0041】
5)一次乾燥サイクルを開始し、その期間に凍結された試料の内部温度を記録した。一次乾燥サイクルは、(a)−70℃および70mTorrで10分間、試料を保持することと、次いで(b)70mTorrを維持しながら1℃/分の速度で−40℃まで温度を上げることと、次いで(c)−40℃および70mTorrで60分間、試料を保持することと、次いで(d)70mTorrを維持しながら0.5℃/分の速度で−25℃まで温度を上げることと、次いで(e)−25℃および50mTorrで64時間、試料を保持することとを伴った。
【0042】
6)二次乾燥が続き、0.5℃/分の速度で温度を30℃まで上げ100mTorrにすることと、次いで30℃および100mTorrで5時間、試料を保持することとを伴った。
【0043】
一次乾燥における一番上と一番下の(間隙を有するトレイ)棚にあるバイアル内の凍結された試料に対する平均生成物温度は、
図8に表されている。一番下の棚の試料の温度分布は、一番上の棚のものに比べてかなり低く、これは一番下の棚の試料の乾燥した層の細孔サイズは、「間隙凍結」の効果により一番上の棚のものに比べてかなり大きいことを意味することがわかる。理論的には、これらの温度は、より大きな細孔サイズの蒸発冷却および/または断熱効果により設定点温度と異なる。
【0044】
個別の凍結乾燥ケーキに対する実効細孔半径r
eは、細孔拡散モデルによって決定された。Kuuら、「Product Mass Transfer Resistance Directly Determined During Freeze−Drying Using Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy (TDLAS) and Pore Diffusion Model.」、Pharm. Dev. Technol.、2010年(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20387998からオンラインで入手可能)を参照。結果は、
図9に表されており、これを見ると、一番下の棚のケーキの細孔半径は、一番上の棚のケーキの細孔半径よりかなり大きいことがわかる。これらの結果は、6mmの間隙を有するトレイが細孔拡大に非常に効果的であることを示している。
【0045】
(実施例2)
棚の温度を上げることによる間隙を有するトレイに対する乾燥速度の加速
フリーズドライの速度および現在開示されている方法に対するスループットを高めるために代替的な凍結乾燥手順を開発した。実施例1で調製された溶液の試料を6mmの間隙を有するトレイに置き、以下の手順に従ってトレイ上で凍結乾燥した。
【0046】
1)棚を5℃まで冷却し、60分間この温度に保持した。次に、
2)棚を−70℃まで冷却し、70分間この温度に保持した(凍結中に熱電対を入れたバイアルの内部温度を記録した)。
【0047】
3)次に棚を−50℃まで温め、100分間この温度に保持した。次に、
4)凍結乾燥室を50mTorrの設定点まで排気した。
【0048】
5)一次乾燥サイクルを開始し、その期間に凍結された試料の内部温度を記録した。一次乾燥サイクルは、(a)−50℃および50mTorrで10分間、試料を保持することと、次いで(b)50mTorrを維持しながら1℃/分の速度で−40℃まで温度を上げることと、次いで(c)−40℃および50mTorrで60分間、試料を保持することと、次いで(d)50mTorrを維持しながら0.5℃/分の速度で−5℃まで温度を上げることと、次いで(e)−5℃および50mTorrで40時間、試料を保持することとを伴った。
【0049】
6)二次乾燥が続き、0.5℃/分の速度で温度を35℃まで上げ100mTorrにすることと、次いで35℃および100mTorrで7時間、試料を保持することとを伴った。
【0050】
図10は、実施例1および実施例2の間隙凍結試料に対する平均生成物温度分布を示している。この2つの分布は、棚の温度を−25℃から−5℃に上げたときに、乾燥速度がより速くなることを示している。これは、一番下の棚から間隙を有するトレイ上のバイアルへの熱伝達速度は、棚の温度を上げることによって容易に加速できることを示している。間隙を有するトレイの新しい熱伝達率K
sを決定し、最適化されたサイクルを素早く取得して、最適な棚温度と室圧力の両方のバランスをとることができる。
【0051】
一連の非限定的な実施形態を以下の番号を振った項で説明する。
1.液体溶液を含む容器をヒートシンクを備える凍結乾燥室内に装填し、液体溶液は溶質と溶媒とを含み頂面と底面とによって特徴付けられることと、
容器とヒートシンクとの間に断熱材を設けることと、
ヒートシンクの温度を下げ、それによって容器と断熱材を含む凍結乾燥室内の周囲温度をほぼ同じ速度で頂面および底面から液体溶液を凍結し、凍結された溶液を形成するのに十分な温度まで下げることとを含む、方法。
2.室内の周囲圧力を下げて凍結された溶液を凍結乾燥させることをさらに含む項11に記載の方法。
3.容器はバイアルを備える前記項のいずれか1つに記載の方法。
4.凍結乾燥室は、複数のヒートシンクを備える前記項のいずれか1つに記載の方法。
5.液体溶液を含む容器を2つの平行なヒートシンクの間の凍結乾燥室に装填することを含む前記項のいずれか1つに記載の方法。
6.ヒートシンクは、ヒートシンク面を備え、容器は、底部を備え、断熱材は、ヒートシンク面と容器の底部との間に間隙を備える前記項のいずれか1つに記載の方法。
7.液体溶液を含む容器をトレイ面上に装填することをさらに含み、断熱材は、トレイ面とヒートシンクとの間に配設される前記項のいずれか1つに記載の方法。
8.液体溶液をその後の凍結乾燥のために凍結する方法において、液体は頂面と底面とを備え容器内に配設され、凍結乾燥室内に配設された容器はヒートシンクを備え、改善は、容器をヒートシンクと直接接触しないように隔て、それによって頂面および底面からの溶液をほぼ同じ速度で凍結することを備える、改善。
9.凍結乾燥材料と、
実質的に同じ細孔サイズを有する凍結乾燥材料中の複数の細孔と
を備える、項2の方法によって作製される凍結乾燥ケーキ。
10.細孔サイズは、参照凍結乾燥ケーキの細孔サイズより実質的に大きく、参照凍結乾燥ケーキは凍結乾燥ケーキと同じ材料を含むが、液体溶液を含む容器をヒートシンクを備える凍結乾燥室内に装填することと、液体溶液はその材料と溶媒とを含むことと、容器とヒートシンクとの間の断熱材を除外することと、ヒートシンクの温度を下げ、それによって液体溶液を含む容器を備える凍結乾燥室内の周囲温度を液体溶液を凍結するのに十分な温度まで下げることと、液体溶液を凍結することと、凍結された溶液を凍結乾燥することとを含む方法によって作製される項(エラー!参照元見当たらず)に記載の凍結乾燥ケーキ。
11.凍結乾燥室で使用するように適合された物品であって、
冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を備えるヒートシンクと、
トレイ面と、
ヒートシンク面とトレイ面との間に配設された断熱材とを備える物品。
12.ヒートシンクは、ヒートシンク面と熱的に連通する冷媒導管を備える項1に記載の物品。
13.ヒートシンクは、冷媒導管とヒートシンク面との間に配設されたヒートシンク媒体をさらに備える項2に記載の物品。
14.ヒートシンク面およびトレイ面は、約0.5mmを超える固定距離で隔てられる項11〜13のいずれか1つに記載の物品。
15.ヒートシンク面とトレイ面との間に配設されたスペーサをさらに備える項11〜14のいずれか1つに記載の物品。
16.スペーサは、約0.5mmを超える厚さを有する項6に記載の物品。
17.スペーサは、トレイ面が載るトレイを支持する項15または16に記載の物品。
18.断熱材に、トレイ面が載る項11〜16のいずれか1つに記載の物品。
19.冷媒と熱的に連通するヒートシンク面を個別に有する複数のヒートシンクであって、前記ヒートシンクのうちの少なくとも1つは他のヒートシンクの上に配設され、これにより上側ヒートシンクと下側ヒートシンクとを形成し、下側ヒートシンク面は、上側ヒートシンクと下側ヒートシンクとの間に配設される、複数のヒートシンクと、
上側ヒートシンクと下側ヒートシンク面との間に配設されたトレイ面と、
トレイ面と下側ヒートシンクとの間に配設された断熱材とを備える凍結乾燥デバイス。
20.ヒートシンクは、ヒートシンク面と熱的に連通する冷媒導管を備える項19に記載のデバイス。
21.ヒートシンクは、冷媒導管とヒートシンク面との間に配設されたヒートシンク媒体をさらに備える項20に記載のデバイス。
22.ヒートシンク面およびトレイ面は、約0.5mmを超える固定距離で隔てられる項19〜21のいずれか1つに記載のデバイス。
23.ヒートシンク面とトレイ面との間に配設されたスペーサをさらに備える項19〜22のいずれか1つに記載のデバイス。
24.スペーサは、約0.5mmを超える厚さを有する項23に記載のデバイス。
25.スペーサは、トレイ面が載るトレイを支持する項23または24に記載のデバイス。
26.断熱材に、トレイ面が載る項19〜24のいずれか1つに記載のデバイス。
27.トレイ面が載るトレイは、凍結乾燥デバイスの内壁に貼り付けられた支えによって支持される項19〜26のいずれか1つに記載のデバイス。
28.頂部と底部とを備えるバイアルと、
バイアルの底部に貼り付けられた、25℃で約0.2W/mK未満の熱伝導率を有する断熱支持材とを備える試料容器。
29.バイアルおよび断熱支持材は、互いに異なる材料を含む項28に記載の試料容器。
【0052】
前記の説明は、理解しやすくするために掲載したにすぎず、そこから不要な制限があるとは一切理解すべきでなく、本発明の範囲内の改変は、当業者には明白なことと思われる。