(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876494
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】自動化された嚢切開のための減衰されたRFパワー
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
A61F9/007 130H
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-531719(P2013-531719)
(86)(22)【出願日】2011年9月27日
(65)【公表番号】特表2013-540520(P2013-540520A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011053451
(87)【国際公開番号】WO2012044615
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年8月15日
(31)【優先権主張番号】12/893,149
(32)【優先日】2010年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】チャ コアンヤオ
(72)【発明者】
【氏名】アーマッド サレヒ
(72)【発明者】
【氏名】グレン アール.サスマン
(72)【発明者】
【氏名】アン ヤドロウスキ
【審査官】
石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−076562(JP,A)
【文献】
特表2002−538881(JP,A)
【文献】
特開2007−061627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切開部を通して目に挿入するために構成された嚢切開プローブと、
該嚢切開プローブに電気的に接続され、複数のピークを有した少なくとも1つの無線周波数(RF)パルスを前記嚢切開プローブに送るように構成されたパルス発生器と、を具備し、送られた前記RFパルスは、送られた該RFパルスのパワーレベルが前記RFパルスの継続時間に亘り略減衰されるような所定の減衰形状を有する嚢切開装置。
【請求項2】
所定の減衰形状は、送られた前記RFパルスの前記パワーレベルが前記RFパルスの継続時間に亘り少なくとも2分の1に減衰されるような減衰形状である請求項1に記載の嚢切開装置。
【請求項3】
前記所定の減衰形状は、送られた前記RFパルスが前記目の中で気泡核形成を生じるような減衰形状である請求項1に記載の嚢切開装置。
【請求項4】
切開部を通して目に挿入するために構成された嚢切開プローブと、
該嚢切開プローブに電気的に接続され、複数のピークを有した少なくとも1つの無線周波数(RF)パルスを前記嚢切開プローブに送るように構成されたパルス発生器と、を具備し、前記パルス発生器は、一連の2回目以降のパルスのそれぞれのエネルギが前のパルスのエネルギに対して略減衰されるような一連の2以上のRFパルスを前記目に送るように構成された、嚢切開装置。
【請求項5】
前記一連の2回目以降のパルスのそれぞれの振幅が、直前のパルスの振幅に対して略減衰される請求項4に記載の嚢切開装置。
【請求項6】
前記一連の2回目以降のパルスのそれぞれの振幅が、一連の1回目のパルスの振幅と略等しく、前記一連の2回目以降のパルスのそれぞれの長さは、直前のパルスの長さより略短い請求項4に記載の嚢切開装置。
【請求項7】
切開部を通して目に挿入するために構成された嚢切開プローブと、
パルス発生器であって、前記嚢切開プローブに電気的に接続され、且つ、一連の2回目以降のパルスのそれぞれのエネルギが直前のパルスのエネルギに対して略減衰されるような一連の2以上の無線周波数(RF)パルスを前記嚢切開プローブに送るように構成されたパルス発生器と、を具備する嚢切開装置。
【請求項8】
前記一連の2回目以降のパルスのそれぞれの振幅が、直前のパルスの振幅に対して略減衰される請求項7に記載の嚢切開装置。
【請求項9】
前記一連の2回目以降のパルスのそれぞれの振幅が、一連の1回目のパルスの振幅と略等しく、前記一連の2回目以降のパルスのそれぞれの長さは、前記直前のパルスの長さより略短い請求項7に記載の嚢切開装置。
【請求項10】
前記一連の2回目以降のパルスのそれぞれのエネルギが、前のパルスのエネルギに対して少なくとも20パーセント減衰される請求項7に記載の嚢切開装置。
【請求項11】
送られた前記RFパルスのそれぞれは、送られた該RFパルスのパワーレベルが前記RFパルスの継続時間に亘り略減衰されるような所定の減衰形状を有する請求項7に記載の嚢切開装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年9月29日に出願された米国特許出願公開第12/893149号明細書の優先権の効果を主張する。本発明は、概して白内障の手術の分野に関し、より詳細には、嚢切開を行うための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受け入れられている白内障のための治療は、水晶体の外科的除去及び水晶体機能の人工眼内レンズによる交換である。米国において、白内障水晶体の大多数は、水晶体超音波乳化吸引と呼ばれる外科技術によって取り除かれる。白内障水晶体を取り除く前に、前嚢が開口され又は切開されなければならない。水晶体超音波乳化吸引の間、水晶体核が乳化される一方で、前方の嚢切開の切開縁において大きな張力がかかる。従って、タグ(tags)のない連続的な切除又は裂傷(切開)は、安全且つ効果的な水晶体超音波乳化吸引治療において重要なステップである。
【0003】
嚢が多数の小さな嚢裂傷で開口された場合、残る小さなタグは、後嚢へと広がる放射状の嚢裂傷を生じさせ得る。こうした放射状の裂傷は、手術後に水晶体が、更に白内障除去され且つ水晶体嚢内の眼内レンズを安全に交換されるのを不安定とするため、合併症を引き起こす。次いで後嚢が更に裂孔されると、硝子体は、目の前房に侵入し得る。この場合、硝子体は、特別な器具を用いた付加的な治療によって取り除かれなければならない。硝子体の消失は、続発的網膜剥離及び/又は目の中の感染症の増加する確率とも関連する。重要なことに、これらの合併症は、失明に至る可能性がある。
【0004】
水晶体超音波乳化吸引に用いられる公知の設備は、取り付けられた切開刃を備えた超音波的に駆動されるハンドピースを有する。これらのハンドピースのいくつかにおいて、作用部は、中央に配置され、中空共鳴バー又はホーンは、直接圧電結晶の組に取り付けられる。圧電結晶は、水晶体超音波乳化吸引の間、ホーン及び取り付けられた切開刃の両方を駆動するための超音波振動を供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
嚢切開治療のために用いられる公知の装置及び方法の多くは、連続した曲線の嚢切開を生成する外科医の役割において多くの技術を必要とする。これは、装置の切開刃の経路を制御することの極度の困難性による。例えば、典型的な治療は、切開刀、例えば上述された切開刃による嚢切開から開始される。次いでこの切開部は、嚢内の切開部の先端を、切開形状というよりはむしろ楔のような切開刀を用いて押し込むことにより円形又は楕円形にされる。それとは別に、最初の嚢切開部は、微細口径フォーセップによって先端をつかまえることにより円形に引き裂かれ、切開部を広げてもよい。これらの方法のいずれかは、非常に困難な操作を伴い、引き裂き動作は、経験豊富な者であっても、水晶体の後方への望ましくない嚢の裂傷を生じさせることがある。
【0006】
更に、タグなく滑らかな嚢切開が最終的に生成されたとしても、嚢切開のサイズ、及び/又は位置は、問題を有し得る。例えば、小さすぎる嚢切開は、水晶体核及び水晶体皮質の安全な除去を阻害し、眼内レンズの、水晶体嚢への適切な挿入を妨げかねない。小さな又は誤った嚢切開操作を完了させるために必要な付加的な応力は、目を毛様小帯破損及び嚢破損の危険にさらす。これらの合併症のいずれかは、手術の長さ及び複雑さを増しかねず、硝子体を消失するかもしれない。
【0007】
連続的で適切な配置且つ円状の切開部は、(1)前嚢内の放射状損傷及びタグの顕著な低減、(2)レンズプロテーゼの適切な中央配置のために必要な嚢の完全性、(3)安全且つ効果的なハイドロディセクション、(4)視覚の悪い嚢を有する患者及び/又は小さな瞳孔開口部を有する患者における嚢治療の安全な利用、といった結果となるため非常に好適となる。更に、嚢切開は、後嚢混濁化とも呼ばれる二次的白内障の危険性を低減するために埋め込まれる眼内レンズの径に対して適切に寸法化されなければならず、提案された調節性眼内レンズ設計の使用のためにも適切に寸法化されなければならない。従って、前房嚢切開を行うための改良された装置の継続的必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
嚢切開プロセスを自動化するための様々な方法及び装置が提案されてきた。1つの方法は、2009年11月16日に出願された「パルス化された電界を用いた切開装置」という名称の米国特許出願公開第12/618805号明細書(以下’805出願)において説明された。全体の内容がここで参照によって組み込まれる’805出願は、単極電極を介して前水晶体嚢に与えられ高周波電流を用いて嚢切開を行うための方法及び装置を説明している。装置は、目の前嚢に対して配置され、リング電極を用いて生成される、切開動作を行うためのパルス化された電界と、目の内側又は外側の様々な位置に配置された接地電極と、を用いる。このシステムのある実施形態において、リング電極は、細い、導電性ワイヤを具備する。非常に小さな断面(例えば約0.25ミリメートルより小さい径)は、ワイヤ近傍の高強度電界を実現し、これらの電界は、ワイヤから離れると強度を更に低減する。切開電極より非常に大きな断面を有する接地電極がこのシステムにおいて用いられているため、電界は、接地電極において減衰されたままとなり、可能な切開エネルギの高い比率は、切開電極のワイヤ近傍の細い領域に残る。
【0009】
別のシステムは、米国特許出願公開第2006/0100617号明細書に示されており、その全体の内容は、ここで参照によって組み込まれる。この公開は、エラストマー、アクリル又は熱可塑性材料で作られた円形の可撓性リングを具備する自動嚢切開装置を示す。この可撓性リングの様々な実施形態のそれぞれに組み込まれているのは、環状リング内の嚢の部分の容易な剥離のために弱められた境界を画成するべく局所的加熱を前嚢に生じさせるために、公知の技術によって励起された抵抗加熱要素又は一対の双極電極である。他の様々な装置が提案されており、その多くは、2000年5月23日に特許された米国特許第6066138号明細書、1984年11月13日に特許された米国特許4481948号明細書、及び、2006年10月19日に公開された国際公開第2006/109290号のような焼灼要素による。このパラグラフで示されたそれぞれの参照の全体の内容は、本発明のために背景及び事情を提供するために参照によってここで組み込まれる。
【0010】
嚢切開装置は、切開部を通して目に挿入するために構成された嚢切開プローブと、少なくとも1つの無線周波数(RF)パルスを嚢切開プローブに送るように構成されたパルス発生器と、を有する。RFパルスは、送られたRFパルスのパワーレベルがRFパルスの継続時間に亘り略減衰されるような所定の減衰形状を有する。ある実施形態において、パルス発生器は、一連の2回目以降のパルスのそれぞれのエネルギが前のパルスのエネルギに対して略減衰されるような一連の2以上のRFパルスを目に送るように構成される。
【0011】
ある実施形態において所定の減衰形状は、送られたRFパルスのパワーレベルがRFパルスの継続時間に亘り少なくとも2分の1に減衰されるような減衰形状である。これらの実施形態及び他の実施形態において、所定の減衰形状は、目的とした領域を超えた水晶体嚢の過度の癒着又は過熱なく、目において送られたRFパルスが気泡核形成(bubble nucleation)を生じることを確実とするように設計されてもよい。いくつかの実施形態において、一連の2以上のRFパルスは、一連の2回目以降のパルスのそれぞれのエネルギが前のパルスのエネルギに対して略減衰されるように目に送られる。これらの実施形態のいくつかにおいて、一連の2回目以降のパルスのそれぞれの振幅は、直前のパルスの振幅に対して略減衰される。その他、2位回目以降のパルスのそれぞれの振幅は、一連の1回目のパルスの振幅と略等しいが、一連の2回目以降のパルスのそれぞれの長さは、直前のパルスの長さより略短い。
【0012】
パルスの継続時間に亘りパルスパワーが減衰されるパルス内減衰形状、又は、一連のパルスのそれぞれのエネルギが前のパルスのエネルギに対して減衰されるパルス間減衰形状の使用を含む方法が開示された。いくつの実施形態において、両方の技術が使用される。従って、嚢切開を行うための1つの例示的方法は、目の前房への嚢切開プローブの挿入、及び、目の前水晶体嚢と接触した嚢切開プローブの切開部の配置によって開始する。次いで少なくとも1つの無線周波数(RF)パルスは、所定の減衰形状によって嚢切開プローブを介して目に送られる。この形状は、送られたRFパルスのパワーレベルがRFパルスの継続時間に亘り略減衰されるような形状である。
【0013】
別の例示的方法も、目の前房への嚢切開プローブの挿入、及び、目の前水晶体嚢と接触した嚢切開プローブの切開部の配置によって開始する。次いで一連の2以上の無線周波数(RF)パルスは、一連の2回目以降のパルスのそれぞれのエネルギが前のパルスのエネルギに対して略減衰されるように、嚢切開プローブを介して目に送られる。いくつかの実施形態において、このパルス間減衰形状の使用は、パルス内減衰形状の使用と組合せられてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、ここで開示された発明に係る技術を行うための嚢切開装置は、切開部を介して目に挿入するために構成された嚢切開プローブと、その嚢切開プローブに電気的に接続されたパルス発生器と、を有する。パルス発生器は、送られたRFパルスが、所定の減衰形状であって送られたRFパルスのパワーレベルがRFパルスの継続時間に亘り略減衰されるような所定の減衰形状を有するように、少なくとも1つの無線周波数(RF)パルスを嚢切開プローブに送るように構成される。ある実施形態において、パルス発生器は、一連の2回目以降のパルスのそれぞれのエネルギが前のパルスのエネルギに対して略減衰されるような一連の2以上のRFパルスを目に送るようにも構成される。その他の実施形態において、両方の技術が使用される。
【0015】
当然のことながら、当業者は、本発明が上述した特徴、利点、事情又は例示に限定されるものではないことを理解し、以下の詳細な説明を読み且つ添付の図面を参照することにより、付加的特徴及び利点を理解する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】パルス発生器及び切開電極装置を含む本発明に係るいくつかの実施例による嚢切開装置を示す。
【
図4】嚢切開を行うための方法を示すプロセスフロー図である。
【
図6】所定の減衰形状を有する無線周波数パルスを示す。
【
図7】漸次的に減衰された一連の無線周波数パルスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したように、嚢切開プロセスを自動化するための様々な方法及び装置が提案されてきた。例えば、上述の参照によって組み込まれた’805出願は、単極電極を通して前水晶体嚢に適用される高周波電流を用いて嚢切開を行うための方法及び装置を示す。抵抗加熱要素又は一対の双極電極による他の嚢切開プローブ構成が可能であり、前嚢に局所的加熱を生じさせるための公知の技術によって励起される。これらのシステムの多くに公知なのは、調整されたパルスエネルギを手術部位に伝えるための高エネルギパルス発生器の使用である。
【0018】
当業者はここで開示された様々な発明に係る技術及び装置のより広い適用性を理解するが、それらの技術は、前水晶体嚢に対して配置された加熱要素に適用されるパルスを用いて嚢切開を行うための、既に開示された方法を参照にしつつ説明される。こうした方法の1つは、「可撓性加熱要素を備えた嚢切開装置」という発明の名称の米国特許出願公開第2010/0094278号明細書に示されており、その全体の内容は参照によりここに取り込まれる。この手段は、環状に形成され、電気的抵抗を有する超弾性ワイヤから形成された抵抗加熱要素を使用する。加熱要素は、短パルス又は一連のパルスの電流で励起される。環形状要素の加熱は、水晶体嚢を焼き、効果的に滑らかな連続切開部を嚢に設ける。
【0019】
一方、”805出願で示されたシステムは、切開手術を行うため、目の前嚢に対して配置されたリング電極と、目の内側又は外側の他の箇所に配置された接地電極と、を用いて生成されたパルス状の電解を用いる。非常に細いワイヤは切開効率を上げ遠電界効果を低減するため、リング電極は、細い導電性ワイヤを具備する。非常に小さな断面(例えば約0.25ミリメートル未満の径)は、ワイヤ近傍で高強度電界を実現し、更にこれらの電界は、ワイヤ遠隔で強度を低減する。接地電極は、切開電極より大きな断面を有するため、接地電極において電界は減衰されたままとなる。従って、高い比率で切開可能なエネルギが、切開電極の周りの細い領域に付与される。
【0020】
図1は、本発明に係るいくつかの実施形態による例示的嚢切開装置の構成要素を示す。図示されたシステムは、切開電極120を通して目に適用するための高周波パルスを発生するパルス発生器110を含む。
図2及び
図3は、例示的切開電極装置120の詳細を示す。切開電極装置120は、可撓性リング122を有し、1つの、リング形のワイヤ電極128がそれに組み込まれる。可撓性シャフト124は、可撓性リング122をハンドル126に接続する。電気的リード線(図示せず)は、シャフト124内及び電極128をパルス発生器110に接続するためのハンドル126内を通る。より簡易な実施形態は、裸のワイヤ環状部のみを加熱要素として使用してもよい。
【0021】
装置の可撓性リング部は、例えば約5ミリメートルの径を有する嚢切開の所望するサイズの寸法とされる。当業者は、開口部内の水晶体嚢の部分が動かされたときの裂傷を回避するために、
図2に示されたような環状開口部が好適であることを理解する。リング形のワイヤ電極128は、電極の励起によって直接加熱される水晶体嚢の部分の境界を画成する。
【0022】
切開強度及び伸縮性を改善するための過熱によって引き起こされる切開縁部への二次的損傷を低減するため、無線周波数(RF)電圧の減衰されたパルスとパルスシーケンスが上述した嚢切開プローブを励起するために使用されてもよい。既に当業者に公知なように、自動化された嚢切開装置は、白内障を摘出する間に角膜内皮を保護し、前房を維持するために手術部位に案内された粘弾性材料と共に用いられることが多い。嚢切開プローブが励起されたとき、結果として生じる熱は、粘弾性材料内に突沸を生じさせる。沸騰は、組織水でも生じ得る。励起されたプローブ周り近傍の粘弾性材料における熱的プロセスは、パルスの開始における気泡核形成、次いで気泡癒着、最後に気泡崩壊、といった3つのステップへと分けられ得る。
【0023】
粘弾性材料における相変化は、核形成ステージにおいて生じ、プロセスを開始するために高パワーが必要とされる。しかしながら、励起されたプローブ要素が泡によって液体から隔離されると、与えられた上昇温度を維持するのに必要なエネルギは、顕著に低下する。これは、周囲の粘弾性液体の熱伝導性と比較し、低い蒸気の熱伝導性によって生じた、顕著に低下された熱の消失の結果による。
【0024】
次いで、本発明に係る様々な実施形態において、嚢切開プローブに送られた無線周波数パルスは、それぞれのパルスの継続期間に亘り減衰される。このパルス内(intra-pulse)減衰は、パワー出力を、過熱によって引き起こされる切開縁部への二次的損傷を低減するための高速に変化する必要なパワーに調整する。RFパルスの減衰形状の例示は、
図4に示されている。パルスの最初の高電圧は、粘弾性材料及び組織水の沸騰をすぐに生じさせるために使用され得る。パルス振幅は、所定の比率で又は実験的に決定された形状に従って減衰され、それによって、嚢切開プローブ又はその近傍の温度は、切開縁部へのより小さな熱損傷によって水晶体嚢に貫通切開部を生成するのに適切なレベルで維持されることができる。
【0025】
好適な減衰比率又は減衰形状は、与えられたRFエネルギの特性、嚢切開プローブの正確な構成、又は、プローブ等を含む様々なファクターによる。しかしながら、当業者は、所定の物理構成に適した形状が、実験的に決定され得ることを理解する。例えば、様々なパルス減衰形状によって生じた核生成プロセスは、励起されたプローブ周りの大きな泡の癒着(coalescence)を最小化する減衰形状を識別するために観察され得る。同様に、切開自体は、嚢の拡張性の損傷のような過度の損傷がなく、効果的に水晶体嚢を切開するそれらの形状を決定するため直接観察され得る。
【0026】
図6は、上述した原理を利用する嚢切開を行うための方法を示すプロセスフロー図である。プロセスは、ブロック610で示されたような嚢切開プローブの、前房への挿入、及び、ブロック620で示されたような目の前水晶体嚢と接触したプローブの切開部への配置によって開始する。使用され得る多種多様の任意の嚢切開プローブ構成は、プローブがパルス生成されたRFエネルギで励起され得るように設けられたにすぎない。
【0027】
次いでブロック630に示されたように、少なくとも1つのRFパルスが、嚢切開プローブを介して目に送られる。送られるRFパルスは、送られるRFパルスのパワーレベルが、RFパルスの継続時間に亘り略減衰されるような所定の減衰形状を有する。「略減衰された」は、単に、パルスの経路に亘るパワーの減衰が、系統的且つ意図的に行われたことを意味する。当業者は、物理的負荷に対してパルス生成されたRFエネルギの発生及び送信が本質的に不正確であり、送信パワーの不確かさ及びパルス比率のばらつきが避けられないことを理解する。しかしながら、本発明に係るパルス内減衰技術を用いるシステムにおいて、与えられるパルスに亘る減衰の度合いは、これらの通常の不確かさ及びばらつきより大きい。
【0028】
ある場合において、所定の減衰形状は、送られたRFパルスのパワーレベルがRFパルスの継続時間に亘り、少なくとも3分の1、例えば3dBまで減衰されてもよい。その他の場合において、減衰の度合いは、例えばより実質的な10dB、20dB又は30dBであってもよい。上述したように、所定の外科手術の状況に適用された特定の減衰形状は、予め実験的に決定されてもよく、送られたRFパルスの開始部は、大きな泡の癒着を避けるため且つ水晶体嚢の過熱を避けるために切開部(trailing portion)が十分に減衰されるように目において気泡核形成を生じるように設計されてもよい。
【0029】
手術部位に送られる切開エネルギのより柔軟な制御を提供し、更に組織の熱変性によって引き起こされる二次的損傷を低減するため、RF電圧の複数のパルスが使用され得る。これらのパルスの継続時間及びそれらの間のタイミングは、熱緩和時間のコンセプトに基づいて設計されることができ、直接過熱された組織領域から熱が伝わるのに必要な時間を見積もるためによく用いられるパラメータである(例えば、B.Choi及びA.J. Welchらによる「組織のレーザー照射時における熱緩和の解析」、Las. Surg. Med. 29, 351-359 (2001)を参照のこと)。組織の特徴的熱緩和時間は、高局所化された領域へと密閉された嚢切開の熱効果を維持するのに好適であるため、加熱された粘弾性及び組織が冷却される一連のパルス間の時間と同様、与えられたRFパルスの最大長さを決定するのに有用な指針となる。
【0030】
図4及び
図6と関連して、上述したような個々のパルス内のRF電圧の減衰の代わりに或いは減衰に加え、「全体の」減衰形状は、熱の吸収によって引き起こされる熱損傷を低減するために
図7で示されたようなパルスシーケンスに重ね合わせられ得る(
図7は、パルスシーケンスのパワー形状である一方で、
図4は、内部パルス減衰を備えたパルスの電圧形状を示す)。この全体減衰形状は、
図4で示された「パルス内」減衰に対して「パルス間(inter-pulse)」減衰を定義するものとみなされてもよい。
図7に示されたように、図示されたシーケンスにおけるそれぞれの2回目以降のパルスは、概してその前のパルスに対して減衰される。従って、それぞれのパルスのエネルギは、前のパルスと比較して減衰される。例示にすぎないが、一連のパルスのそれぞれの最初のパワーレベルは、その前のパワーレベルに対して20パーセント減衰されてもよく(約1dB)、一方で、パルス間のパワーレベルは、パルスのコースに亘り例えば2分の1又はそれよりも減衰される。図示された一連のパルスは、単調な減衰パルスのみ有するが、他のシーケンスは、パルスのいくつかのサブシーケンスを有してもよく、それぞれのサブシーケンスにおけるそれぞれの2回目以降のパルスは、その前のパルスに対して略減衰されるが、パワーレベルは、それぞれのサブシーケンスの開始においてより高いレベルに「リセット」されてもよい。
【0031】
図8は、目に伝えられる一連のパルスのそれぞれによって運ばれるエネルギを減衰させるための別の方法を示す。
図8に示された一連のパルスにおいて、一連のパルスのそれぞれの振幅は略等しいが、2回目以降のパルスのそれぞれの継続時間が直前のパルスに対して減らされる。減らされたパルスの継続時間に加え、パルス間の時間も変えられ、それによって、任意の特定の間隔で目に運ばれるパワーの実効値は、好適な形状により減衰される。
図7と関連して説明された技術と同様、
図8において示された技術は、前述したパルス内減衰形状と組合せられてもよく、それによって、一連のパルスのそれぞれの振幅は、パルスの継続時間に亘り減衰される。
【0032】
あるシステムにおいて、パルス間減衰のみ又はパルス内減衰のみが使用されてもよい一方で、その他において、両方の技術が使用されてもよい。RF電圧の大きさの局所的減衰及び全体的減衰に加えて、変更されたパルス長さ、デューテー周期等が、RFパワー出力を、更により正確に、熱的プロセスの様々な段階で必要なパワーに調整するように使用され得る。更に、上述されたパワー構成は、更に熱的損傷を低減するための切開機構としての組織水の突沸の機能を強めるように変形され得る。(水晶体嚢は水を含む。加熱速度が十分に速い場合、組織で水の突沸が生じ、これは、組織の閉じ込め(confinement)によって、局所化された高い圧力、例えば応力を組織に生じさせる。こうした局所化された応力は、組織解剖における機能を果たし得る。従って、切開機構は、熱的効果と機械的効果の組合せであり、組織への二次的損傷は、単純な熱的切開と比較して低減され得る。)
【0033】
図5は、本発明に係るいくつかの実施形態によるパルス発生器110の機能的要素を示す。パルス発生器110は、外部の交流電源(例えば120ボルト、60Hz)又は直流電源から操作され得る主電源510を有する。パルス発生器530は、制御回路520によって制御された主電源510からRFパルスを生成する。RF高強度パルスは、リード線550を通して切開電極装置120に供給される。ユーザインタフェース540は、操作者に、パルス発生器110(例えばスイッチ又はタッチスクリーン入力等)を操作するための適した機構と、適したフィードバック(例えば装置状態等)と、を提供する。ここで説明された技術によって容易に構成され得る高強度パルス電界生成装置の更なる詳細は、2007年7月5日に公開された米国特許出願公開第2007/0156129号明細書において提供されており、その全体の内容は、参照によりここに組み込まれる。
【0034】
本発明に係るある実施形態において、パルス発生器110は、少なくとも1つの無線周波数(RF)パルスを嚢切開プローブへと送るように構成され、送られたRFパルスは、送られたRFパルスのパワーレベルが、RFパルスの継続時間に亘り略減衰されるような所定の減衰形状を有する。他の実施形態において、パルス発生器110は、一連の1又は複数の無線周波数(RF)パルスを、一連の2回目以降のパルスのそれぞれが前のパルスに対して略減衰されるように嚢切開プローブへと送るように構成される。更に別の実施形態は、両方の特徴を提供するように構成され、それによって、パルス内減衰形状及びパルス間減衰形状の両方が一連のパルスに適用される。
【0035】
嚢切開装置及びこれらの装置を使用する方法の様々な実施形態に係る前述した説明は、説明及び例示の目的のために与えられた。当然のことながら、当業者は、本発明が、本発明に係る本質的特徴から逸脱することなくここで詳細に説明された以外の他の方法で実行され得ることを理解する。従って、本実施形態は、全ての点において例示且つ非制限的なものとみなされ、添付された特許請求の範囲の意味の範囲内及び均等な範囲内において全ての変形例は、そこに包含されるものとみなされる。