特許第5876499号(P5876499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5876499メソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法及びこれから製造された燃料電池用触媒の担持体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876499
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】メソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法及びこれから製造された燃料電池用触媒の担持体
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20160218BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C01B31/02 101F
   C01B31/02 101B
   H01M4/96 M
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-539755(P2013-539755)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公表番号】特表2014-502248(P2014-502248A)
(43)【公表日】2014年1月30日
(86)【国際出願番号】KR2011008750
(87)【国際公開番号】WO2012067421
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0113661
(32)【優先日】2010年11月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507286840
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ エナジー リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ドゥファン
(72)【発明者】
【氏名】キム サンギョン
(72)【発明者】
【氏名】イム ソンヨプ
(72)【発明者】
【氏名】ベク ドンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リ ビョンロク
(72)【発明者】
【氏名】ナム キドン
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/149540(WO,A1)
【文献】 特開2002−126537(JP,A)
【文献】 特開2005−154268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/36
H01M 4/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成する段階;
(S2)前記(S1)段階での炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体を混合する段階;
(S3)前記(S2)段階で製造された、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体の混合物を熱処理して炭化させる段階;及び
(S4)前記(S3)段階で製造された物質から前記セラミックナノ粒子を除去する段階を含むことを特徴とする、メソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項2】
前記セラミックナノ粒子は、SiO、A1、MgO、CaCO、ゼオライト、アルミノケイ酸塩及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項3】
前記セラミックナノ粒子の粒径は2〜100nmであることを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項4】
前記(S1)段階では、セラミックナノ粒子を電気炉に投入した後、気相炭素含有化合物を注入して350〜950℃で熱分解することにより、セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜が形成されることを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項5】
前記(S1)段階では、セラミックナノ粒子の表面に金属成分を含む化合物を塗布した後、前記セラミックナノ粒子を電気炉に投入し、気相炭素含有化合物を注入し、350〜950℃で熱分解することにより、前記セラミックナノ粒子の表面に炭素ナノチューブまたは炭素ナノ纎維が成長した炭素被膜を形成することを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項6】
前記金属成分を含む化合物は、Ni、CoまたはFeを主成分として含む化合物であることを特徴とする、請求項5に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項7】
前記Ni、CoまたはFeを主成分として含む化合物は、Ni、Co及びFeよりなる群から選ばれた1種以上の金属とMo、Cu、Cr、Pt、Ru及びPdよりなる群から選ばれた助触媒成分でなる二成分系または三成分系合金触媒を含む硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩または有機金属化合物であることを特徴とする、請求項6に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項8】
前記合金触媒は、NiFe、NiMo、NiCu、CoMo、CoCu、FeMo、NiCr、NiPt及びNiFeMoよりなる群から選ばれた1種であることを特徴とする、請求項7に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項9】
前記金属成分を含む化合物は、セラミックナノ粒子重量に対し、0.001〜0.1の重量比でセラミックナノ粒子の表面に塗布されることを特徴とする、請求項5に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項10】
前記(S1)段階で、炭素被膜はセラミックナノ粒子の表面に1〜10nmの厚さに形成されることを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項11】
前記気相炭素含有化合物は、気相の炭素数が1〜4である炭化水素、一酸化炭素、アルコール、アセトン、アセトニトリル及びアクリロニトリルよりなる群から選ばれた1種またはこれと水素を混合した混合気体であることを特徴とする、請求項4または5に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項12】
前記炭素前駆体は、等方性ピッチ、中間相ピッチ、多環芳香族混合物、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂及びこれらの混合物よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項13】
前記(S2)段階で製造された混合物は、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子10〜80重量%及び炭素前駆体20〜90重量%を混合して製造されることを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項14】
前記(S3)段階は、(S2)段階で製造された混合物に対して200〜400℃で0.5〜24時間熱処理して安定化させた後、非活性雰囲気の下で700〜1200℃で1〜3時間熱処理して炭化させることで行われることを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項15】
前記(S4)では、(S3)段階で製造された物質を酸性溶液またはアルカリ性溶液に浸漬させてセラミックナノ粒子を除去することを特徴とする、請求項1に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項16】
前記酸性溶液は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸及びフッ酸よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項15に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【請求項17】
前記アルカリ性溶液は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを含む水溶液であることを特徴とする、請求項15に記載のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法及びこれから製造された燃料電池用触媒の担持体または電極素材にかかり、より詳しくはセラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成し、これを炭素前駆体と混合し熱処理して炭化させた後、セラミックナノ粒子を除去することで製造される多孔性炭素材料の製造方法及びこれから製造された燃料電池用触媒の担持体または電極素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、触媒の研究動向を調べると、表面積の広い触媒担持体の開発と触媒金属のナノサイズ化に大別される。このうち、表面積が広いながらも製造コストが低い新触媒担持体物質を開発することは非常に高い付加価置を持つと言える。
【0003】
多孔性炭素材料は産業的利用価値が高く、現在多様な分野で活用されている。例えば、分離工程、吸着除去及びガス貯蔵などにおける選択的吸着材、バッテリー、燃料電池、高容量コンデンサーなどの電極物質、そして主要触媒工程において触媒の担持体または触媒などの機能に活用されている。
【0004】
IUPAC(International
Union of Pure and Applied Chemistry、国際純正応用化学連合)の定義によれば、多孔性炭素物質は気孔の大きさによって微小孔(micropore、気孔の大きさ<2nm)、メソ細孔(mesopore、2nm<気孔の大きさ<50nm)、及びマクロ孔(macropore、気孔の大きさ>50nm)に分類できる。既存の多孔性炭素として常用化されているものはほとんどが微小孔でなった活性炭であり、石炭、石油ピッチ、木材タール、果物皮、各種の高分子などの多様な有機物原料を炭素化しながら酸化性気体や腐食性化合物を用いて気孔を導入することが既存の製造工程の基本概念である。
【0005】
微小孔を主にする活性炭は非常に高い比表面積及び気孔容積、そしてこれによる相当な吸着容量が特徴である。しかし、微小孔炭素は、小さすぎる気孔で空間制約によって分子の物質移動速度が著しく落ちるということ、莫大な表面官能基(surface
functional groups)及び構造欠陥によって電気伝導度の相当な部分的損失があるということ、高温処理などによって気孔構造が易しく変形するとか崩壊しやすいということなどの致命的な欠点も指摘されて来た。特に、電気化学応用で高比表面積による活性面積の増大と適切な電気伝導度の維持の折衷が大きなイシュー(問題)として挙論されることもある。また、イオン及び分子の円滑な出入に関連し、気孔の大きさの制御に関する問題も主な論点となっている。このような微小孔を主とする既存の活性炭の欠点を補うとともに、悪臭、VOC(volatile
organic chemical)の除去及びタンパク質などの大きな分子の選択的吸着のような特定の応用分野での要求などによって、近年メソ細孔炭素材料の製造と応用に関する研究開発が活発に進んでいる。
【0006】
メソ細孔炭素の製造方法として、高分子あるいは単量体をメソ細孔を持つセラミック鋳型(テンプレート、Template)に注入して炭化熱処理した後、酸及びアルカリ処理によってセラミック鋳型を除去することで製造するテンプレート法(鋳型法、Template
method)が提案された。このような方法で製造された多孔性炭素はメソ細孔の大きさの分布が非常に均一であり、全体気孔の大きさを易しく制御することができるということが利点である。しかし、微細構造が精巧に制御されたテンプレート、例えばゼオライトまたはメソ細孔シリカは大量生産に難しさがあり、価格の高い欠点があり、メソ細孔炭素の製造後、テンプレートの除去にフッ酸を用いるなど、高くて煩わしい工程があるため、メソ細孔炭素を量産するとか汎用材料として活用するのに難しさを経験して来た。
【0007】
他の製造方法としては、ナノサイズのセラミック粒子を有機系前駆体に混練させた後、適切な温度で炭化熱処理した後、酸及びアルカリでセラミックナノ粒子を除去することで製造する動的鋳型法(Movable
template method)がある。粒子の大きさが均一に制御された数ナノメートルないし数十ナノメートルのセラミックナノ粒子を用いて既存のテンプレート方法に次ぐ均一な気孔分布を持つ多孔性炭素を製造することもでき、製造コスト及び量産を考慮し、粒子の大きさが多少不均一であるが製造及び除去処理が比較的簡単なMgO、CaCOなどの粒子を用いて価格で有利で大量に活用しやすい方法も開発されている。このような場合、テンプレートであるナノ粒子物質を炭素原料より多量使うとか粒子分散を安定化させる界面活性剤を用いるなど、製造中に物質の密度差によって発生することができる粒子分布(それによる気孔分布)の不均一化を防止することができる方法が備えられなければならない。
【0008】
近年には、既存の金属酸化物テンプレート方法の欠点を解消するために、界面活性剤またはブロック共重合体(block
copolymer)などの両親媒性(amphiphi1ic)分子を活用して自己集合(self−assembly)性質を用いる、いわゆるソフトテンプレート(soft
template)方法が脚光を浴びている。合成法が非常に簡単ながらも均一なメソ細孔を導入することができるという点は大きな利点であるが、現技術としてはブロック共重合体などの価格的負担を解消することができなかった状態である。
【0009】
メソ細孔を持つ触媒担持体は、反応物及び生成物、特に液状物質の円滑な出入の面で、燃料電池電極触媒などに適すると期待され、燃料電池の性能を向上させた事例も多数報告されて来た。燃料電池用触媒担持体は、触媒との物理化学的吸着のための比表面積、気孔の大きさ、気孔の分布、気孔の形状及び表面の官能基などが触媒の高分散と触媒の活性に影響を及ぼすと知られており、さらに電気伝導度、化学的耐久性、機械的強度なども要求される。これまでカーボンブラック及び多くの形態のナノ構造を持つ炭素材料が燃料電池用触媒担持体に活用されて来たが、高活性の低価触媒の開発のために改善の余地は依然として多く残っている。
【0010】
本発明者らは低費用で高活性の触媒を開発するために、メソ細孔を持つ触媒担持体に関する研究を繰り返した。その結果、セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成した後、炭素前駆体と混合し、熱処理して炭化させる場合、独特なメソ細孔構造を持ち、多数の気孔が形成された多孔性炭素材料を製造することができるということが分かって本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、燃料電池用触媒担持体として使用可能な、メソ細孔の分布が均一な多孔性炭素材料の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、独特なメソ細孔構造を持ち、多数のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、製造コストを低めることができ、大量生産に適したメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、
(S1)セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成する段階;
(S2)前記(S1)段階での炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体を混合する段階;
(S3)前記(S2)段階で製造された、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体の混合物を熱処理して炭化させる段階;及び
(S4)前記(S3)段階で製造された物質から前記セラミックナノ粒子を除去する段階を含むことを特徴とするメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記製造方法によって製造されたメソ細孔が形成された炭素材料を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記メソ細孔が形成された多孔性炭素材料を含む燃料電池用触媒の担持体または電極素材を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記燃料電池用触媒の担持体及び前記担持体に担支された触媒を含む燃料電池用電極を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記燃料電池用電極素材を細孔層の主要材料として活用する燃料電池用電極を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成し、これを炭素前駆体と混合し熱処理して炭化させた後、セラミックナノ粒子を除去することで製造される多孔性炭素材料の製造方法及びこれから製造された燃料電池用触媒の担持体または電極素材を提供する。本発明の多孔性弾素材料の製造方法によれば、メソ細孔の分布が均一な多孔性炭素材料を低い製造コストで大量生産することができる。また、本発明によって製造された、メソ細孔が形成された多孔性炭素材料は、燃料電池用触媒担持体として使用されて燃料電池用電極の製造に使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1によってナノサイズのMgO及びMgO/CNTを用いた多孔性炭素材料の製造工程を概略的に示す図である。
図2】本発明の実施例1によって製造したメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の透過電子燎微鏡(TEM)写真である。
図3】本発明の実施例1によって製造したメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の透過電子燎微鏡(TEM)写真である。
図4】本発明の実施例1によって製造したメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の窒素吸着等温曲線である。
図5】本発明の実施例2によって製造したメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の透過電子燎微鏡(TEM)写真である。
図6】炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体の混合物を熱処理して炭化させることでメソサイズの気孔が形成される過程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。本発明の実施例を説明するにあたり、関連の公知構成または機能についての詳細な説明は省略する。本明細書及び特許請求範囲に使用された用語や単語は通常的で辞書的意味に限定されて解釈されてはいけなく、本発明の技術的事項に合う意味及び概念に解釈されなければならない。
【0022】
本明細書に記載した実施例と図面に示した構成は本発明の好適な実施例で、本発明の技術的思想を全て表出するものではないので、本出願の時点でこれらを置き換えることができる多様な均等物と変形例があり得る。
【0023】
本発明のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法は、
(S1)セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成する段階;
(S2)前記(S1)段階での炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体を混合する段階;
(S3)前記(S2)段階で製造された、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体の混合物を熱処理して炭化させる段階;及び
(S4)前記(S3)段階で製造された物質から前記セラミックナノ粒子を除去する段階を含む。
【0024】
以下に、本発明によるメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の製造方法を具体的に説明する。
【0025】
まず、セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成する(S1)。
【0026】
本発明では、メソ細孔が形成された多孔性炭素材料を製造するためのテンプレートとしてセラミックナノ粒子を使う。
【0027】
前記セラミックナノ粒子としては、SiO、A1、MgO、CaCO、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、これらの混合物などを使うことができる。
【0028】
前記セラミックナノ粒子としては、2〜100nmの粒径を持つことが好ましい。粒径が2nm未満のセラミックナノ粒子は、ナノ粒子への製造が容易でないだけではなく、このようなセラミックナノ粒子をテンプレートとして使って形成される多孔性炭素材料の気孔はマイクロの大きさに形成されるため本発明の目的に適合しない。また、粒径が100nmを超えるセラミックナノ粒子を使用して多孔性炭素材料を製造する場合、多孔性炭素材料に形成される炭素の気孔は非常に大きく形成されるため、メソサイズの気孔が形成された多孔性炭素材料を製造するための本発明の目的に適合しないこともある。
【0029】
前述したセラミックナノ粒子を電気炉に投入した後、気相炭素含有化合物を注入して熱分解過程を行う場合、セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成することができる。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成する段階は、セラミックナノ粒子を電気炉に投入した後、気相炭素含有化合物を注入し、350〜950℃で熱分解することで遂行することができる。
【0031】
前記セラミックナノ粒子を電気炉に投入し、気相炭素含有化合物を注入して熱分解する過程での熱分解温度は炭素含有化合物の種類によって350〜950℃の範囲で調節することができ、このように炭素含有化合物の種類によって熱分解温度を調節することは本発明が属する技術分野の通常の知識を持つ者に明らかなものである。
【0032】
前記気相炭素含有化合物としては、炭素数が1〜4の炭化水素、一酸化炭素、アルコール、アセトン、アセトニトリル及びアクリロニトリルよりなる群から選ばれた1種を気化させて使うことができ、あるいはこれと水素が混合された混合気体を気化させて使うことができる。
【0033】
本発明の他の実施形態において、前記セラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成する段階は、セラミックナノ粒子の表面に金属成分を含む化合物を塗布した後、前記セラミックナノ粒子を電気炉に投入し、前記気相炭素含有化合物を注入して350〜950℃で熱分解することで遂行することができる。
【0034】
金属成分を含む化合物をセラミックナノ粒子の表面に塗布した後、炭素被膜を形成する場合、セラミックナノ粒子の表面には炭素ナノチューブまたは炭素ナノ纎維が成長した炭素被膜が形成されることができる。
【0035】
前記金属成分を含む化合物が塗布されたセラミックナノ粒子の表面には気相炭素含有化合物の種類によって単壁炭素ナノチューブ(SWNT)または多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)が成長することができる。例えば、気相炭素含有化合物として気相メタンを使う場合、セラミックナノ粒子の表面には単壁炭素ナノチューブが成長した炭素被膜が形成されることができ、気相炭素含有化合物として気相アセトンを使う場合、セラミックナノ粒子の表面には多重壁炭素ナノチューブが成長した炭素被膜が形成されることができる。金属成分を含む化合物としては、Ni、CoまたはFeを主成分として含む化合物を使うことができる。
【0036】
本発明の一実施形態において、Ni、CoまたはFeを主成分として含む化合物は、Ni、Co及びFeよりなる群から選ばれた1種以上の金属とMo、Cu、Cr、Pt、Ru及びPdよりなる群から選ばれた助触媒成分からなる二成分系または三成分系合金触媒、例えばNiFe、NiMo、NiCu、CoMo、CoCu、FeMo、NiCr、NiPt、NiFeMoなどを含む硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩または有機金属化合物(フェロセン、ニッケロセンなど)を使うことができる。
【0037】
前記Ni、CoまたはFeを主成分として含む化合物は、セラミックナノ粒子の重量に対し、0.001〜0.1の重量比でセラミックナノ粒子の表面に塗布されることが好ましい。
【0038】
(S1)段階で、炭素被膜はセラミックナノ粒子の表面に1:10nm(1〜10nm)厚さで形成されることができる。
【0039】
ついで、前記(S1)段階で炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体を混合する(S2)。
【0040】
炭素前駆体としては、等方性ピッチ、中間相ピッチ、多環芳香族混合物、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、これらの混合物などの疎水性の強い有機化合物を使うことができ、炭化収率が約80%程度のピッチを使うことが産業的面で好ましい。
【0041】
前述したセラミックナノ粒子そのものは親水性で、前記炭素前駆体は疎水性であるので、混合が容易でないが、(S1)段階でセラミックナノ粒子の表面に炭素被膜を形成する場合、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子は疎水性を示して炭素前駆体と均一に混合されることができる。このように炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体を均一に混合した混合物を(S3)段階で熱処理して炭化させる場合、メソ細孔が均一な気孔分布で形成された多孔性炭素材料を製造することができる。
【0042】
(S2)段階で製造された、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体の混合物は、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子10〜80重量%及び炭素前駆体20〜90重量%を混合して製造することが好ましい。
【0043】
前記混合物の製造の際、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子が10重量%未満で含まれる場合、最終に製造される多孔性炭素材料に気孔数が少なく形成され、閉気孔が多数形成される。また、前記混合物の製造の際、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子が80重量%を超えて含まれる場合、最終に製造される多孔性炭素材料に多孔性構造が形成されないこともある。
【0044】
ついで、前記(S2)段階で製造された、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体の混合物を熱処理して炭化させる(S3)。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記(S3)段階は前記混合物に対して200〜400℃で0.5〜10時間熱処理して安定化させる段階を遂行した後、非活性雰囲気の下で700〜1200℃で1〜3時間熱処理して炭化させることで遂行することができる。
【0046】
前述した条件で炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子及び炭素前駆体の混合物に対して安定化段階及び炭化段階を行う場合、前記炭素前駆体に含まれた炭素以外の成分、例えば酸素、水素、窒素、硫黄などの多様な成分を気化させて除去することができる。このように炭素以外の成分が気化して除去され、炭素原子も一部分解される一方、炭化しながらさらに緻密な固形物、つまり高密度の固形物である多孔性炭素材料が形成される。
【0047】
図6は炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体の混合物を熱処理して炭化させることによりメソサイズの気孔が形成される過程を概略的に示す図である。
【0048】
図6を参照すれば、炭素被膜が形成されたセラミックナノ粒子と炭素前駆体の混合物を熱処理して炭化させる過程で、見掛けから見れば、炭素前駆体の体積が急激に減る。炭化過程で体積及び組成の変化がある部分は炭素前駆体ばかりで、セラミックナノ粒子とその表面に形成された炭素ナノ纎維または炭素ナノチューブ(黒色で表示された部分)は見掛け上の変化がほとんどない。すなわち、熱処理による炭化反応が起こる炭素前駆体を中心として収縮が発生するため、熱的変形の少ないセラミックナノ粒子とその表面に付いている炭素ナノ纎維または炭素ナノチューブの外部に空間が生成して独特な構造のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料を製造することができる。
【0049】
最後に、前記(S3)段階で製造された物質からセラミックナノ粒子を除去する(S4)。
【0050】
(S4)段階では、(S3)で製造された物質を酸性溶液またはアルカリ性溶液に浸漬させてセラミックナノ粒子を除去することができる。
【0051】
本発明において、セラミックナノ粒子としてMgOまたはCaCOを使う場合、(S4)段階で塩酸を使ってセラミックナノ粒子を除去することがナノ粒子の残留物を最少化することができる。また、セラミックナノ粒子としてSiO、A1、ゼオライトを使う場合、(S4)段階で強アルカリ性水溶液またはフッ酸を使ってセラミックナノ粒子を除去することがナノ粒子の残留物を最少化することができる。
【0052】
前記酸性溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸などを使うことができ、前記アルカリ性溶液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを含む水溶液を使うことができるが、セラミックナノ粒子を効率よく除去することができる溶液であれば制限なしに使うことができる。
【0053】
本発明は前述した本発明によってメソ細孔が形成された多孔性炭素材料を提供することができる。本発明のメソ細孔が形成された多孔性炭素材料は触媒担持体として使用して燃料電池用電極を製造するのに使うことができる。
【0054】
また、本発明の多孔性炭素材料は、カーボンペーパー、カーボンフェルトなどの気体拡散層基材上に形成される細孔層(Microporous
layer、MPL)の材料として使うことができる。
【0055】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
<実施例1>
ナノサイズのMgO粒子を製造するために、Mg(NO・6HO(99%)を前駆体として使い、炭素被膜を形成させるために、(ΝHMo24・4HOとFe(NO・9HOを触媒前駆体として使用してC(citric
acid)と反応させてMoFe触媒をMgOに含浸させた。Mg(NO・6HOと(ΝΗMo24・4HO、Fe(NO・9ΗOを蒸溜水にそれぞれ溶解させ、Cと混合し、90℃で撹拌させ、乾燥させた。この乾燥された粉末は、MgO粒子の形成のために、窒素雰囲気で180℃で2時間熱処理した。多様なナノサイズのMgO粒子を製造するために、10℃/minで昇温させ、350〜950℃でさらに熱処理した。ここで、気相炭素含有化合物であるメタンと窒素を混合して流し(CH/N(100/500ml/min))、350〜950℃で熱分解してMgO粒子上に炭素被膜(単壁炭素ナノチューブ)を形成した。
【0056】
多孔性炭素材料を製造するために、中間相ピッチ(Misuibishi
AR pitch)を炭素前駆体として使い、THF 500mL溶液に溶解させた後、サイズ別のナノMgO粉末と炭素被膜が形成されたMgOナノ粒子MgO粉末をそれぞれ入れ、24時間密封状態で撹拌し、乾燥させた。この混合物を空気雰囲気で1℃/minで昇温させ、260℃で48時間安定化させた後、窒素雰囲気に変換し、0.5℃/minで昇温させ、1000℃で4時間維持させて炭化させた。この炭化された炭素材料を1MのHCl水溶液中で24時間撹拌してMgOを除去し、蒸溜水で数回繰り返し洗浄することで残っているHCl及び不純物を除去し、80℃で乾燥してメソ細孔を持つ多孔性炭素材料を製造した(図1図3)。
【0057】
図1は本発明の実施例1によってナノサイズのMgO及びMgO/CNTを用いた多孔性炭素材料の製造工程を概略的に示す図、図2及び図3は本発明の実施例1によって製造したメソ細孔が形成された多孔性炭素材料の透過電子燎微鏡(TEM)写真である。
【0058】
<実施例2>
気相炭素含有化合物としてアセトンを使ったことを除き、実施例1と同様に行って本発明のメソ細孔を持つ多孔性炭素材料を製造し、これを透過電子燎微鏡写真で撮影して図5に示した。
【0059】
図1及び図2を参照すれば、本発明によって製造されたメソ細孔を持つ多孔性炭素材料は表面に多孔性構造を持ち、図1及び図3を参照すれば、メソ細孔を持つ多孔性炭素材料の表面に単壁炭素ナノチューブが成長したことが分かる。
【0060】
図4を参照すれば、窒素熱処理によってナノサイズのMgOが形成され、これから製造された多孔性炭素材料は非常に多いメソ細孔(ヒステリシス)とともに比表面積も443m/gまで増加することを確認することができる(MPC(NIO))。また、メタンを使って形成された単壁炭素ナノチューブとナノサイズのMgOを使って製造された多孔性炭素材料はメソ細孔ともっと増加した比表面積551〜578m/gを確認することができる(MPC(C1〜30))。
【0061】
図5を参照すれば、本発明によって製造されたメソ細孔を持つ多孔性弾素材料は表面に多孔性構造を持ち、多重壁炭素ナノチューブが成長したことが分かる。
【0062】
以上、本発明を好適な実施例に基づいて説明したが、本発明は前述した特定の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者であれば、その技術的思想を逸脱しないで多様に変形して実施可能である。したがって、本発明の権利範囲は特定の実施例ではなく、添付の特許請求範囲によって決まるものに解釈されなければならない。

図2
図3
図5
図1
図4
図6