(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変性ブタジエンゴム(A1)が、(A1a)スズ原子含有基を有するスズ化合物により変性された変性ブタジエンゴム、(A1b)アルコキシシリル基を有する化合物により変性された変性ブタジエンゴム、及び、(A1c)分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物により変性された変性ブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の空気入りタイヤ。
前記ゴム組成物における、反応性のノボラック型フェノール樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して1質量部以下である請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を1.0〜10質量部、不溶性硫黄を3.5〜7.0質量部含む請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ゴム成分100質量%中、(A1)シス含量50質量%以下の変性ブタジエンゴムを10〜75質量%、(A2)1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するポリブタジエンゴムを5〜40質量%、(A3)(A1)及び(A2)以外のジエン系ゴムを10〜40質量%含有するゴム成分(A)と、BET比表面積が18〜50m
2/gのカーボンブラック(B)をゴム成分(A)100質量部に対して35〜65質量部含むゴム組成物を用いて作製した、ビードエイペックス及び/又はサイドウォール補強層を有する空気入りタイヤである。
空気入りタイヤの内部部材をこのようなものとすることによって、高硬度、破断伸び、自己発熱をバランス良く改善でき、良好なランフラット耐久性が得られる。
なお、空気入りタイヤを高硬度なものとすることにより、操縦安定性能を向上させることが可能となる。
また、ランフラット耐久性が良好とは、パンク後の無内圧走行時に車輌の荷重を支え、一定距離を走行できることを示す。
【0018】
上記変性ブタジエンゴム(A1)は、シス含量が50質量%以下である。好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると、低発熱性が充分とならないおそれがある。また、該シス含量の下限は特に限定されないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、組成物の加工性が良好とならないおそれがある。
上記変性ブタジエンゴム(A1)のシス含量(シス成分量)は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定することができる。
【0019】
上記変性ブタジエンゴム(A1)の重量平均分子量(Mw)は、20万以上であることが好ましく、40万以上であることがより好ましい。20万未満であると、耐摩耗性、破断伸びに劣るおそれがある。Mwは、90万以下であることが好ましく、70万以下であることがより好ましい。90万を超えると、加工性が低下してカーボンブラックの分散性が悪化し、破断伸び、亀裂成長性に劣り、自己発熱が充分低くならないおそれがある。
【0020】
上記変性ブタジエンゴム(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。Mw/Mnが2を超えると、カーボンブラックの分散性が悪くなるおそれがあり、またtanδが増大する傾向がある。分子量分布の下限は特に限定されないが、1以上であることが好ましい。
上記変性ブタジエンゴム(A1)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0021】
上記変性ブタジエンゴム(A1)のビニル含量は、50質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。50質量%を超えると、カーボンブラックの分散性が悪くなるおそれがあり、破断伸びが低下したり、tanδが増大したりする傾向がある。また、ビニル含量は、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。5質量%未満であると、変性ブタジエンゴムの製造が困難となる場合がある。
上記変性ブタジエンゴム(A1)のビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法により測定される。
【0022】
上記変性ブタジエンゴム(A1)の含有量は、ゴム成分100質量%中、10〜75質量%である。好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上である。10質量%未満であると、tanδが増大する傾向があるため、自己発熱が充分低くならず、更には破断伸びも低下し、ランフラット耐久性に劣る傾向がある。また、該含有量は、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは65質量%以下である。75質量%を超えると、加工性、破断伸びが低下する傾向がある。
【0023】
上記変性ブタジエンゴム(A1)としては、官能基を有する化合物により変性された、シス含量50質量%以下のブタジエンゴムであれば特に制限されない。例えば、ブタジエンゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ブタジエンゴムや、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ブタジエンゴム、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ブタジエンゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ブタジエンゴム)などが挙げられるが、末端変性ブタジエンゴムが好ましい。
【0024】
上記官能基としては、例えば、スズ原子含有基、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基などが挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。中でも、低発熱性の観点から、スズ原子含有基、グリシジルアミノ基、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、水酸基、エポキシ基が好ましい。
【0025】
上記変性ブタジエンゴム(A1)としては、中でも、低発熱性、加工性の観点から、スズ原子含有基を有するスズ化合物(例えば、四塩化スズ)により変性された(カップリングされた)変性ブタジエンゴム、アルコキシシリル基を有する化合物により変性された変性ブタジエンゴム、分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物により変性された変性ブタジエンゴムがより好ましい。すなわち、変性ブタジエンゴム(A1)が、(A1a)スズ原子含有基を有するスズ化合物により変性された変性ブタジエンゴム、(A1b)アルコキシシリル基を有する化合物により変性された変性ブタジエンゴム、及び、(A1c)分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物により変性された変性ブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。そして更には、カーボンブラックとの結合力の強さ、低発熱性の観点から変性ブタジエンゴム(A1a)が特に好ましい。スズ化合物により変性された変性ブタジエンゴム(A1a)を使用することにより、低発熱性、破断伸びをより向上でき、より良好なランフラット耐久性が得られる。
【0026】
上記変性ブタジエンゴム(A1a)は、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンゴムの重合を行った後、スズ化合物を添加することにより得られ、更に該変性ブタジエンゴム(A1a)分子の末端はスズ−炭素結合で結合されていることが好ましい。
【0027】
上記リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、アリルリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウム及び有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物が挙げられる。1,3−ブタジエンゴムの重合にこのようなリチウム開始剤を用いることにより、ビニル含量が高く、シス含量の低い変性ブタジエンゴム(A1a)を作製することができる。
上記リチウム開始剤としては、当該リチウム系化合物の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p−トリブチルスズスチレンなどが挙げられる。上記スズ化合物としてはこれらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記変性ブタジエンゴム(A1a)におけるスズ原子の含有量は、50ppm以上であることが好ましく、60ppm以上であることがより好ましい。50ppm未満では、変性ブタジエンゴム(A1a)中のカーボンブラックの分散を促進する効果が小さくなるおそれがあり、tanδが増大する傾向がある。また、スズ原子の含有量は、3000ppm以下であることが好ましく、2500ppm以下であることがより好ましく、250ppm以下であることが更に好ましい。3000ppmを超えると、混練り物の押出し加工性が悪化する傾向がある。
【0030】
上記変性ブタジエンゴム(A1b)としては、上記リチウム開始剤により1,3−ブタジエンゴムの重合を行った後、下記一般式(1)で表される化合物により変性された変性ブタジエンゴム(以降、S変性ブタジエンゴムとも称する。)が好ましい。
【0032】
上記一般式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R
4及びR
5は結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表す。
【0033】
上記S変性ブタジエンゴムとしては、特開2010−111753号公報などに記載されているものが挙げられる。
【0034】
上記一般式(1)において、優れた破断伸びが得られ、自己発熱が充分に低くなるという点から、R
1、R
2及びR
3としてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)。R
4及びR
5としてはアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3である。また、R
4及びR
5が結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4〜8員環であることが好ましい。なお、上記アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。上記一般式(1)で表される化合物を使用することにより、本発明の効果が良好に得られる。
【0035】
上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、前述の性能を良好に改善できる点から、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記一般式(1)で表される化合物(変性剤)によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を使用できる。例えば、ブタジエンゴムと該化合物とを接触させることで変性でき、具体的には、アニオン重合によるブタジエンゴムの調製後、該ゴム溶液中に該化合物を所定量添加し、ブタジエンゴムの重合末端(活性末端)と該化合物とを反応させる方法などが挙げられる。
【0037】
上記変性ブタジエンゴム(A1c)としては、上記リチウム開始剤により1,3−ブタジエンゴムの重合を行った後、分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物により変性された変性ブタジエンゴムが好ましい。
当該低分子化合物としては、例えば、下記一般式で示される低分子化合物が好適に用いられる。
【0039】
上記一般式中、R
11及びR
12は、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R
13及びR
14は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R
15は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。mは1〜6の整数を表す。
【0040】
上記一般式におけるR
11及びR
12は、炭素数1〜10のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜3)が好ましい。R
13及びR
14は、水素原子が好ましい。R
15としては、炭素数3〜20の炭化水素基(好ましくは炭素数6〜10、より好ましくは炭素数8)が挙げられ、下記式などで表されるシクロアルキル基、シクロアルキレン基が好ましく、シクロアルキレン基がより好ましい。
【0042】
また、上記一般式におけるmは2〜3であることが好ましい。
上記一般式で表される化合物としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が好適に用いられる。
【0043】
上記変性ブタジエンゴム(A1c)としては、上記リチウム開始剤により1,3−ブタジエンゴムの重合を行った後、分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物と、この低分子化合物の2量体以上のオリゴマーとの混合物により変性された変性ブタジエンゴム(以降、A変性ブタジエンゴムとも称する。)がより好ましい。
上記A変性ブタジエンゴムとしては、特開2009−275178号公報などに記載されているものが挙げられる。
【0044】
上記オリゴマーは、上記低分子化合物の2量体〜10量体が好ましい。また、上記低分子化合物は、分子量が1000以下の有機化合物であり、下記一般式(2)の化合物が好適なものとして挙げられる。
【0046】
上記一般式(2)において、Rは2価の炭化水素基またはエーテル、エポキシ、ケトン等の酸素を含む極性基、チオエーテル、チオケトン等の硫黄を含む極性基、3級アミノ基、イミノ基等の窒素を含む極性基から選ばれる少なくとも一種の極性基を有する2価の有機基である。
【0047】
上記Rにおける2価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖状、分岐状、環状であってもよく、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、フェニレン基などを含む。具体的には、例えば、メチレン、エチレン、ブチレン、シクロヘキシレン、1,3−ビス(メチレン)−シクロヘキサン、1,3−ビス(エチレン)−シクロヘキサン、o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニレン、m−キシレン、p−キシレン、ビス(フェニレン)−メタンなどが挙げられる。
【0048】
上記一般式(2)で表される低分子化合物の具体例としては、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、4,4−メチレン−ビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ビス(ジグリシジルアミノ)ベンゾフェノン、4−(4−グリシジルピペラジニル)−(N,N−ジグリシジル)アニリン、2−[2−(N,N−ジグリシジルアミノ)エチル]−1−グリシジルピロリジン等が挙げられる。なかでも、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0049】
上記オリゴマー成分としては、下記一般式(3)で表される2量体や、下記一般式(4)で表される3量体が好適な例として挙げられる。
【0052】
上記低分子化合物と、上記オリゴマーとの混合物により変性する場合、変性剤(混合物)100質量%中、上記低分子化合物の含有量は75〜95質量%、上記オリゴマーの含有量は25〜5質量%であることが好ましい。
【0053】
変性剤中の低分子化合物とオリゴマー成分の比率はGPCにより測定できる。
具体的には、低分子化合物からオリゴマー成分まで測定できるカラムを選択し、測定する。得られたピークにおいて、低分子化合物由来のピークの高分子側の最初の変曲点から垂線を下ろし、低分子側成分の面積と高分子側成分の面積比を求める。この面積比が低分子化合物とオリゴマー成分の比率に相当する。
なお、オリゴマー成分の高分子側ピークは、標準ポリスチレン換算分子量から求めた該低分子化合物の分子量の10倍以下の分子量となる点、あるいは該低分子化合物の分子量の10倍以下の分子量となる点までに成分ピークが0となる場合は成分ピークが0となる点までを積算する。
【0054】
リチウム化合物などの重合開始剤を用いたアニオン重合により合成された活性末端を有するブタジエンのポリマーと変性剤との反応は、上記変性剤をポリマーの活性末端と反応させることにより行う。分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物、又は該化合物とそのオリゴマーとの混合物によるブタジエンゴムの変性方法としては、一般式(1)で表される化合物(変性剤)による変性の方法に準じて行うことができる。
【0055】
上記1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するポリブタジエンゴム(A2)(以降、SPB含有BRとも称する。)としては、タイヤ工業において汎用されているものを使用でき、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶がブタジエンゴムと化学結合し、分散しているものが好ましい。含まれる1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶により、充分な複素弾性率が得られ、剛性を向上できる。これにより、良好な操縦安定性が得られる。
【0056】
上記1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の融点は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である。180℃未満では、ゴム練り時に1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶が融解し、剛性が低下するおそれがある。また、該融点は、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下である。220℃を超えると、ゴム組成物中での分散性が悪化する傾向がある。
【0057】
上記SPB含有BR中において、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は、2.5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましい。2.5質量%未満であると、ゴム組成物に充分な硬度が得られないおそれがある。また、該沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量は、22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることが更に好ましい。22質量%を超えると、ブタジエンゴム自体の粘度が高く、ゴム組成物中におけるブタジエンゴム及びフィラーの分散性が悪化する傾向がある。
なお、上記沸騰n−ヘキサン不溶物とは、SPB含有BR中における1,2−シンジオタクチックポリブタジエンを示している。
【0058】
上記SPB含有BR中において、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶の含有量は、2.5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。2.5質量%未満では、剛性を充分に向上できないおそれがある。また、該含有量は、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましい。20質量%を超えると、SPB含有BRがゴム組成物中に分散しにくくなる傾向がある。
【0059】
上記SPB含有BRのシス含量は、90質量%以上であることが好ましい。より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。90質量%未満であると、耐摩耗性、破断伸びが低下するおそれがある。
上記SPB含有BRのシス含量(シス成分量)は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定することができる。
【0060】
上記SPB含有BRの含有量は、ゴム成分100質量%中、5〜40質量%である。上記SPB含有BRの含有量がこのような範囲であることにより、ゴム組成物の押出し成形時にストリップワインド用ゴム生地や、平板通常押出しシート生地を改善することができ、良好なランフラット耐久性が得られる。上記SPB含有BRの含有量として好ましくは7質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、加工性が低下し、また、剛性を充分に向上できないおそれがある。該SPB含有BRの含有量は、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以下である。40質量%を超えると、他のゴム成分の割合が少なくなり、高硬度、破断伸び、自己発熱をバランス良く改善できないおそれがある。特に自己発熱が充分とはならず、破断伸びが低下する傾向がある。
【0061】
上記(A1)及び(A2)以外のジエン系ゴム(A3)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、変性ブタジエンゴム(A1)及びSPB含有BR(A2)以外のハイシス1,4−ポリブタジエンゴム、エポキシ化天然ゴム(ENR)などが挙げられるが、これらの中でも、NR、IR、ENR等のイソプレン系ゴムが、破断伸び、加工性の点で好ましい。このように、上記ジエン系ゴム(A3)が、イソプレン系ゴムであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。そして中でも、より低分子量であり、かつ粘着性、粘度が安定しており、不純物の含量が少ないことから、イソプレンゴムが特に好ましい。
なお、上記ハイシス1,4−ポリブタジエンゴムとは、得られたゴムのブタジエン部分に対するシス1,4−結合の含有率が90%以上のブタジエンゴムである。
【0062】
上記NRとしては、特に制限されず、ゴム工業において汎用されているものを用いることができ、例えば、RSS#3、TSR20、UPNRなどが挙げられる。
上記IRとしても、特に制限されず、タイヤ工業において汎用されているものを用いることができる。
【0063】
上記ジエン系ゴム(A3)の含有量は、ゴム成分100質量%中、10〜40質量%である。上記ジエン系ゴム(A3)の含有量がこのような範囲であると、ゴム組成物の破断伸びが改善され、練り排出ゴムのまとまりも改善できて、成形時や成形前に引張応力が作用しても切れにくくなる。上記ジエン系ゴム(A3)の含有量として好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、充分な破断伸びが得られないおそれや、粘着性が低下し加工性が悪化するおそれがある。該ジエン系ゴム(A3)の含有量は、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。40質量%を超えると、tanδが増大する傾向があり、また、硬度が充分とはならないおそれがある。更には、他のゴム成分の割合が少なくなり、高硬度、破断伸び、自己発熱をバランス良く改善できないおそれがある。
【0064】
上記ゴム成分は更に変性スチレン−ブタジエンゴム(変性SBR)を含有していてもよい。
該変性スチレン−ブタジエンゴムとしては、上述の変性ブタジエンゴム(A1b)の骨格部分であるブタジエンゴムをスチレン−ブタジエンゴムに置き換えたものを使用すればよい。中でも、変性スチレン−ブタジエンゴムとしては、上記一般式(1)で表される化合物により変性された溶液重合の変性スチレン−ブタジエンゴム(以降、S変性スチレン−ブタジエンゴムとも称する。)が好ましく、特に、溶液重合のスチレン−ブタジエンゴムの重合末端(活性末端)を上記一般式(1)で表される化合物により変性したもの(例えば、特開2010−111753号公報に記載の変性スチレン−ブタジエンゴム)が好適に用いられる。
【0065】
上記変性スチレン−ブタジエンゴムの結合スチレン量は、40質量%以下が好ましく、38質量%以下がより好ましく、36質量%以下が更に好ましい。40質量%を超えると、自己発熱が充分低くならないおそれがある。また、該結合スチレン量は、8質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。8質量%未満であると、リバージョン性、高温破壊特性が劣る傾向がある。
上記変性スチレン−ブタジエンゴムの結合スチレン量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定できる。
【0066】
上記ゴム成分が変性スチレン−ブタジエンゴムを含有する場合の、変性スチレン−ブタジエンゴムの含有量は、ゴム成分100質量%中、8質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。8質量%未満であると、リバージョン性、高温破壊特性が充分とならないおそれがある。また、該含有量は、75質量%以下が好ましく、72質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。75質量%を超えると、破断伸びが低下し、自己発熱が充分低くならない傾向がある。ただし、変性SBRを用いずとも変性ブタジエンゴムにより充分低発熱化できる場合には、充分なランフラット耐久性が得られる。
【0067】
本発明におけるゴム組成物は、BET比表面積が18〜50m
2/gのカーボンブラック(B)を含む。このようなカーボンブラックを配合することにより、良好な低発熱性が得られると共に良好な補強効果も得られ、本発明の効果が良好に得られる。カーボンブラックは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記カーボンブラック(B)のBET比表面積は18〜50m
2/gである。好ましくは20m
2/g以上であり、より好ましくは30m
2/g以上である。18m
2/g未満では、充分な補強効果が得られないおそれがある。また、該BET比表面積は、好ましくは45m
2/g以下であり、より好ましくは40m
2/g以下である。50m
2/gを超えると、発熱性が悪化し、燃費性、高温での破断伸び、ランフラット耐久性に劣る傾向がある。
なお、カーボンブラックのBET比表面積は、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0069】
上記カーボンブラック(B)のジブチルフタレート吸油量(COAN)は、50ml/100g以上が好ましく、60ml/100g以上がより好ましく、70ml/100g以上が更に好ましい。50ml/100g未満では、充分な補強効果が得られないおそれがある。また、該COANは、200ml/100g以下が好ましく、135ml/100g以下がより好ましく、90ml/100g以下が更に好ましい。200ml/100gを超えると、加工性が低下するおそれがある。
なお、カーボンブラックのCOANは、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
【0070】
上記カーボンブラック(B)の含有量は、ゴム成分(A)100質量部に対して、35〜65質量部である。好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上である。35質量部未満では、押出後、成型までに収縮が起こり、加工性が低下する場合があり、破断伸び(EB)が低下する傾向がある。また該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下である。65質量部を超えると、発熱性が悪化し、燃費性、ランフラット耐久性が悪化する傾向がある。
【0071】
本発明におけるゴム組成物には、シリカを配合してもよい。シリカを配合することにより、スコーチ性能、自己発熱、破断伸び(EB)が改善される。上記シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0072】
シリカのBET比表面積は、好ましくは40m
2/g以上、より好ましくは70m
2/g以上、更に好ましくは110m
2/g以上である。40m
2/g未満であると、破壊強度が低下する傾向がある。また、シリカのBET比表面積は、好ましくは220m
2/g以下、より好ましくは200m
2/g以下である。220m
2/gを超えると、シリカが分散しにくくなり、加工性が悪化するおそれがある。
なお、シリカのBET比表面積は、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0073】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合の、シリカの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは12質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。10質量部未満であると、シリカを配合した効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは65質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。65質量部を超えると、シリカが分散しにくくなり、加工性、高温での破断伸びが低下するおそれがある。
【0074】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカとともにシランカップリング剤を配合することが好ましい。
上記シランカップリング剤としては、ゴム工業において、一般にシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0075】
上記シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。0.1質量部未満では、破断伸びが大きく低下する傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。10質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0076】
本発明におけるゴム組成物は、反応性のノボラック型フェノール樹脂を実質的に含まないことが好ましい。このようなフェノール樹脂は、発熱性が高く、その結果ランフラット耐久性が低下するために、特にサイドウォール補強層用に用いるのは好ましくない。
なお、上記反応性のノボラック型フェノール樹脂とは、フェノールなどのフェノール類と、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類との縮合反応により得られた樹脂であって、メチレンドナー等と反応し、ポリマー架橋を促進するものを意味する。なお、変性されていてもよい。
例えば、本発明におけるゴム組成物の反応性のノボラック型フェノール樹脂の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることが更に好ましい。特に好ましくは、本発明におけるゴム組成物が反応性のノボラック型フェノール樹脂を含有しないことである。
【0077】
上記反応性のノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、住友ベークライト(株)製のスミライトレジンPR−12686(カシュ―変性フェノール樹脂、軟化点:94℃)、PR−50731(非変性、軟化点:120℃)などのノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
【0078】
本発明におけるゴム組成物は、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含むことが好ましい。アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を配合することにより、ゴム組成物の硬度を高めることができ、高硬度、発熱性、破断伸びの両立の面で優れたものとなる。通常、類似の性能を示す架橋剤として、ハイブリッド架橋剤であるフレキシス社製のPK900、HTSやバイエル社製のKA9188なども用いられるが、これらよりも上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物はtanδの面で優れている。
【0079】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物としては、特に限定されないが、低発熱性、硬度などが良好に得られ、破断伸びの点から、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0081】
上記一般式(5)中、R
21、R
22及びR
23は、同一又は異なって、炭素数4〜12のアルキル基を表す。x及びyは、同一又は異なって、2〜4の整数を表す。tは0〜500の整数を表す。
【0082】
上記一般式(5)におけるtは、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性がよく、本発明の効果がより好適に得られるという点から、10〜400の整数が好ましく、42〜300の整数がより好ましい。x及びyは、高硬度が効率よく発現でき、本発明の効果がより好適に得られるという点から、ともに2が好ましい。R
21〜R
23は、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物のゴム成分中への分散性が良く、本発明の効果がより好適に得られる(特にスコーチ性能)という点から、炭素数4〜12のアルキル基が好ましく、炭素数6〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜12のアルキル基が更に好ましい。
【0083】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは0.8万〜10万、より好ましくは0.9万〜8.0万、更に好ましくは1.0万〜7.0万、特に好ましくは1.1万〜5.9万である。Mwが0.8万未満であると、吸湿安定性、スコーチ性能、低発熱性、操縦安定性、破断時伸びが充分に得られないおそれがある。Mwが10万を超えると、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の分散性が悪化する傾向があり、また、製造効率、低発熱性が低下するおそれがある。
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0084】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の軟化点は、好ましくは60〜127℃、より好ましくは80〜127℃、更に好ましくは85〜125℃、特に好ましくは90〜120℃である。軟化点が127℃を超えると、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の分散性が悪化する傾向がある。軟化点が60℃未満であると、吸湿安定性、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の分散性が悪化する傾向がある。
軟化点が上記温度範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
なお、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0085】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物は、公知の方法で調製でき、例えば、アルキルフェノールと塩化硫黄とを、モル比1:0.9〜1.25などで反応させる方法などが挙げられる。アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の具体例として、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(下記一般式(6)で表される化合物)、TS3108、TS3109、TS3101、Arkema社製のVultac3などが挙げられる。
【0087】
上記一般式(6)中、tは0〜100の整数を表す。
【0088】
本発明におけるゴム組成物が上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を含有する場合の、上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。そして、スコーチ時間が8.0分以上で加工性に問題のない配合系である場合には5.0質量部以上であることが特に好ましい。1.0質量部未満であると、架橋密度が充分とはならず、操縦安定性の改善効果が充分に得られないおそれがあり、自己発熱が充分低くならないおそれがある。該含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下である。10質量部を超えると、加硫速度が早くなりすぎゴム焼けが生じるおそれがある。また、却って高温での破断伸びが低下する傾向がある。
【0089】
本発明におけるゴム組成物はまた、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物に代えて或いは一部置換して、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とクマロンインデン樹脂との溶融混合物を含むことも好ましい。当該溶融混合物を配合することにより、更に良好なスコーチ性能(適度に長いスコーチタイム)、破断時伸びを得ることができ、当該溶融混合物は、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とオイルとの溶融混合物と比べても、破断時伸びに優れたものとなる。また、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を溶融混合物として配合することにより、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を単に配合した場合に比べて低発熱性、破断伸びをより改善でき、より良好なランフラット耐久性が得られる。
【0090】
上記アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0091】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む(主体とする)樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれる微量モノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0092】
上記クマロンインデン樹脂の軟化点は、好ましくは−20〜140℃、より好ましくは−20〜105℃、更に好ましくは−15〜80℃、特に好ましくは−10〜60℃、最も好ましくは−5〜45℃、より好ましくは0〜18℃である。軟化点が140℃を超えると、低発熱性が悪化する傾向がある。軟化点が−20℃未満であると、揮発性が大きく、溶融混合物が容易に揮発してしまい、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。軟化点が上記温度範囲内であると、特に、軟化点が−20〜45℃であると、本発明の効果がより好適に得られ、より良好な低発熱性、破断時伸びが得られる。
上記クマロンインデン樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0093】
上記溶融混合物において、クマロンインデン樹脂及びアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の質量比(クマロンインデン樹脂/アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.02〜0.50、より好ましくは0.02〜0.30、更に好ましくは0.04〜0.25である。上記質量比が0.50を超えると、物性安定性が低下し、溶融混合物の軟化点が後述する好適な範囲(特に、80〜127℃)から外れ、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。一方、0.02未満であると、良好なスコーチ性能、破断時伸びの向上効果が充分に得られないおそれがある。
【0094】
上記溶融混合物は、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とクマロンインデン樹脂とをそれぞれの融解温度以上で混合することで調製でき、例えば、150〜250℃で5〜30分間、例えば、200℃で10分間の条件で溶融混合を実施すればよい。溶融混合は公知の加熱装置、混合装置を用いて行うことができ、例えば、油浴バス、保温チャンバーなどを用いてアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物とクマロンインデン樹脂を加熱しながら、攪拌融解させることにより溶融混合物を調製できる。
【0095】
得られた溶融混合物は、常温(23℃)において、好ましくは約60℃まで、粘性のない固体状態であることが、自動計量や手動でのハンドリングの面で好ましい。
【0096】
上記溶融混合物の軟化点は、好ましくは60〜127℃、より好ましくは80〜127℃、更に好ましくは85〜125℃、特に好ましくは90〜120℃である。軟化点が127℃を超えると、溶融混合物の分散性が悪化する傾向がある。軟化点が60℃未満であると、吸湿安定性、溶融混合物の分散性が悪化する傾向がある。
軟化点が上記温度範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
上記溶融混合物の軟化点を上記範囲内とするためには、クマロンインデン樹脂及びアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の質量比を調整したり、使用するクマロンインデン樹脂、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の軟化点や重量平均分子量を調整したりすればよく、当業者であれば、適宜調整可能である。
なお、上記溶融混合物の軟化点も、上述したクマロンインデン樹脂の軟化点と同様に測定できる。
【0097】
上記溶融混合物中のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは0.8万〜10万、より好ましくは0.9万〜8.0万、更に好ましくは1.0万〜7.0万、特に好ましくは1.1万〜5.9万である。Mwが0.8万未満であると、吸湿安定性、スコーチ性能、低発熱性、操縦安定性、破断時伸びが充分に得られないおそれがある。Mwが10万を超えると、溶融混合物の分散性が悪化する傾向があり、また、製造効率、低発熱性が低下するおそれがある。
なお、上記溶融混合物中のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の重量平均分子量(Mw)も、上述したアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の重量平均分子量と同様に測定できる。
【0098】
上記溶融混合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは1.0質量部以上である。0.2質量部未満では、本発明の効果が充分に得られないおそれがある。また、該溶融混合物の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8.0質量部以下である。20質量部を超えると、スコーチ性能、破断時伸びが低下するおそれがある。
【0099】
なお、本発明におけるゴム組成物が上記溶融混合物を含有する場合、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、クマロンインデン樹脂は溶融混合物の他に別途配合してもよい。
【0100】
本発明におけるゴム組成物には、ゴム工業において一般的に用いられている加硫剤である粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを配合してもよい。なかでも、不溶性硫黄を配合することが好ましい。また、不溶性硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3.5質量部以上、より好ましくは4.0質量部以上、更に好ましくは4.5質量部以上であり、特に好ましくは5.0質量部以上である。また、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下である。上記範囲内であると、高硬度、発熱性、破断伸びを両立することができる。不溶性硫黄の含有量が3.5質量部未満であると、特に硬度が低かったり、高温での破断伸びが悪化したりする傾向がある。また、不溶性硫黄の含有量が7.0質量部を超えると、硬度が上りにくくなり、かえって、硫黄のブルーミングや粘着性の低下が問題となる場合がある。
ここで、本明細書において、不溶性硫黄の含有量とは、不溶性硫黄中に含まれる硫黄成分の含有量を意味する。
【0101】
本発明におけるゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、レジン、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫促進剤などを必要に応じて配合してもよい。
【0102】
上記酸化亜鉛は、硫黄のブルーミング、及びそれによる押出し物の粘着性の低下を防ぐために、ゴム成分100質量部に対して、6〜12質量部配合されることが好ましい。酸化亜鉛の配合量がこのような範囲であると、加工性、低発熱性がより良好なものとなる。より好ましくは7質量部以上である。
また、酸化亜鉛と不溶性硫黄との配合比は、押出し成形時のどれだけ薄く高温で圧延するかに依存するが、大きいほど加工中に硫黄がブルーミングし難くなる。例えば、酸化亜鉛と不溶性硫黄との配合比(酸化亜鉛/不溶性硫黄)としては、サイドウォール補強層用、ビードエイペックス用の場合には1.0以上が好ましく、1.15以上がより好ましい。
【0103】
上記加硫促進剤としては、グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンデート系の化合物などが挙げられる。これら加硫促進剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スコーチタイムの低下をより好適に抑制でき、低発熱性、破断伸びを向上でき、耐久性を向上させることができるという理由から、下記一般式(7)で表される化合物が好ましい。
【0105】
上記一般式(7)中、R
31は炭素数2〜16のアルキル基を表す。R
32は炭素数3〜16の分岐構造を有するアルキル基又はベンゾチアゾリルスルフィド基を表す。
【0106】
上記一般式(7)中のR
31のアルキル基としては、分岐構造を有するものが好ましい。該分岐構造を有するアルキル基としては、後述するR
32の炭素数3〜16の分岐構造を有するアルキル基と同様のものが好ましい。
【0107】
上記一般式(7)中のR
31のアルキル基の炭素数は、4〜16が好ましく、4〜12がより好ましい。2未満では、吸着してしまう傾向があり、17以上では、硬度が低くなる傾向がある。
【0108】
上記一般式(7)中のR
31の好ましいアルキル基としては、エチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−エチルプロピル基、2−エチルブチル基、2−エチルペンチル基、2−エチルヘプチル基、2−エチルオクチル基などが挙げられる。
【0109】
上記一般式(7)中のR
32の炭素数3〜16の分岐構造を有するアルキル基としては、−(CH
2)
k−CH
3(kは1〜14の整数)で表される直鎖アルキル基における炭素鎖(CH
2)
kを構成する少なくとも1個の水素原子をアルキル基で置換した分岐構造を有するもの(分岐構造を有する直鎖アルキル基)が好ましい。
【0110】
上記一般式(7)中のR
32の分岐構造を有するアルキル基の炭素数は、4〜16が好ましく、6〜12がより好ましい。3未満では、吸着してしまう傾向があり、17以上では、硬度が低くなる傾向がある。
【0111】
上記一般式(7)中のR
32の好ましいアルキル基としては、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−エチルプロピル基、2−エチルブチル基、2−エチルペンチル基、2−エチルヘプチル基、2−エチルオクチル基などが挙げられる。
【0112】
上記一般式(7)中のR
32のベンゾチアゾリルスルフィド基は、下記式で表される基である。
【0114】
上記一般式(7)中のR
32はベンゾチアゾリルスルフィド基であることが好ましい。また、優れた硬度が得られるという点から、R
31がt−ブチル基の場合、R
32はベンゾチアゾリルスルフィド基であることが好ましい。
【0115】
上記一般式(7)で表される化合物としては、川口化学工業(株)製のBEHZ(N,N−ジ(2−エチルヘキシル)−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、川口化学工業(株)製のBMHZ(N,N−ジ(2−メチルヘキシル)−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)、フレキシス(株)製のサントキュアーTBSI(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンイミド)、大内新興化学工業(株)製のETZ(N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド)などが挙げられる。
【0116】
上記加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。加硫促進剤の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
【0117】
本発明におけるゴム組成物は、一般的な方法で製造される。例えば、前記各成分をバンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。なお、ゴム組成物に上記溶融混合物を配合する場合には、混練工程の最高到達温度までに、好ましくは、ゴム混練装置の電力消費量の大きい段階、すなわち、フィラーの分散が集中的に起こっている混練温度が100〜140℃の時点で、溶融混合物が融解しゴム配合中に充分に分散させることが望ましく、これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0118】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、上述のように前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練して作製したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのビードエイペックス及び/又はサイドウォール補強層の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて他のタイヤ部材とともに貼り合わせることで未加硫タイヤを形成し、更に、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。これにより、前述の成分を配合したビードエイペックス及び/又はサイドウォール補強層(加硫ゴム組成物)を有するタイヤが得られる。
【0119】
上記ビードエイペックスとは、カーカスの折り返しの間に配置され、タイヤのサイドウォール方向に向かって延びる部位であり、具体的には、特開2009−001681号公報の
図1等に示される部材である。
【0120】
また、上記サイドウォール補強層(インサート)とは、ランフラットタイヤのサイドウォール部の内側に配置されたライニングストリップ層のことをいう。補強ゴム層の配置形態としては、具体的には、カーカスプライの内側に接してビード部からショルダー部にわたって配置され、両端方向に厚さを漸減する三日月状の補強ゴム層が挙げられる。また、カーカスプライ本体部分とその折返し部の間にビード部からトレッド部端にわたって配置される補強ゴム層、複数のカーカスプライ又は補強プライの間に配置される2層の補強ゴム層等も挙げられる。具体的には、当該補強層は、特開2007−326559号公報の
図1、特開2004−330822号公報の
図1などに示される部材である。すなわち、前述の成分を配合したサイドウォール補強層はランフラットタイヤに特に好適に用いることができる。すなわち、本発明におけるゴム組成物を用いて作製したサイドウォール補強層を有するランフラットタイヤもまた、本発明の1つである。
【0121】
上記空気入りタイヤとしては、特に、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶をタイヤ周方向に配向でき、複素弾性率E
*の異方性効果により優れた操縦安定性、乗り心地性が得られるという点から、カレンダーロールなどの公知のロールを用いて上記ゴム組成物(未加硫)から厚さ0.2〜1.5mmの短冊状のゴムシートを作製する工程1と、該ゴムシートをタイヤ成形機上で積層し、ビードエイペックス及び/又はサイドウォール補強層を成形する工程2とを含むストリップワインド方式の製造方法により製造されることが好ましい。該製造方法としては、特開2009−202865号公報などに記載の製造方法が挙げられる。このような製造方法においては、ゴム組成物が高温の状態で積層、成形されることとなるため、隣接部材との成形粘着性、また、当該ゴム組成物同士の粘着性を充分に確保することが可能となる。これにより、粘着不足や隣接共架橋不全による問題が解決でき、良好なランフラット耐久性を有するタイヤを生産性良く製造することが可能である。
このように、空気入りタイヤを構成するビードエイペックス及び/又はサイドウォール補強層が、上記ゴム組成物からストリップワインド方式を用いて形成されることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0122】
上記積層ゴムシートの厚さの上限としては1.2mmがより好ましい。ストリップ厚は、生産性、ハンドリング性、中途のストレッチ、段差部のゴム流れ不良ベアを考慮して、0.8〜1.2mm程度に設定される。
また、上記工程2で積層して得られるサイドウォール補強層断面の厚みとしては、軽量化、乗り心地性、ランフラット耐久性の観点から、通常、3〜9mmに設定される。
【実施例】
【0123】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0124】
以下で製造するポリマーの物性については次のように測定した。
〔シス含量〕
日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。測定は、ゴム試料を1gずつ15mlのトルエンに溶解させ、それぞれ30mlのメタノール中にゆっくり注ぎ込んで精製後、乾燥させて精製したものについて行った。
【0125】
〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)〕
下記装置、条件でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定した測定値を基に標準ポリスチレン換算によりMw、Mnを求め、Mw/Mnを算出した。
装置:東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、
検出器:示差屈折計、
カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M
【0126】
〔ビニル含量〕
赤外吸収スペクトル分析法により測定した。
【0127】
〔ガラス転移温度〕
JIS−K7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0128】
〔結合スチレン量〕
日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。
【0129】
<末端変性剤の作製>
窒素雰囲気下、250mlメスフラスコに3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)を20.8g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を250mlにして作製した。
【0130】
<共重合体製造例1>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にシクロヘキサン(関東化学(株)製)を18L、ブタジエン(高千穂商事(株)製)を2000g、ジエチルエーテル(関東化学(株)製)を53mmol加え、60℃に昇温した。次に、ブチルリチウム(関東化学(株)製)を16.6mL加えた後、3時間撹拌した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を12ml加え、30分撹拌を行った。次に、上記末端変性剤を13mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、S変性BRを得た。Mwは550,000であり、ビニル含量は13質量%であり、シス含量は38質量%であった。
【0131】
<共重合体製造例2>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にシクロヘキサン(関東化学(株)製)を18L、ブタジエン(高千穂商事(株)製)を2000g、ジエチルエーテル(関東化学(株)製)を53mmol加え、60℃に昇温した。次に、ブチルリチウム(関東化学(株)製)を16.6mL加えた後、3時間撹拌した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を12ml加え、30分撹拌を行った。次に、上記末端変性剤を13mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性BRを得た。Mwは835,000であり、ビニル含量は11.9質量%であり、シス含量は37.7質量%であった。
【0132】
<共重合体製造例3>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を540g、ブタジエンを1460g、テトラメチルエチレンジアミンを17mmol加え、40℃に昇温した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を3.5ml加え、30分撹拌を行った。次に、ブチルリチウムを10.5mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、上記末端変性剤を30mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性SBRを得た。結合スチレン量は25質量%であった。Mwは400,000であり、ビニル含量は58質量%であった。
【0133】
<共重合体製造例4>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を740g、ブタジエンを1260g、テトラメチルエチレンジアミンを17mmol加え、40℃に昇温した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を3.5ml加え、30分撹拌を行った。次に、ブチルリチウムを10.5mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、上記末端変性剤を30mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性SBRを得た。結合スチレン量は37質量%であった。Mwは410,000であり、ビニル含量は55質量%であった。
【0134】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
<VCR617>:宇部興産(株)製のVCR617(SPB含有BR、SPBの含有量:17質量%、SPBの融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有量:15〜18質量%、シス含量:98質量%)
<変性BR1>:日本ゼオン(株)製のBR1250H(リチウム開始剤を用いて重合した後、スズ化合物により変性された変性BR、ビニル含量:10質量%、シス含量:40質量%、Mw/Mn:1.40、Mw:460,000、スズ原子の含有量:250ppm)
<変性BR2>:共重合体製造例1で作製したS変性BR(ビニル含量:13質量%、シス含量:38質量%、Mw:550,000、Tg:−83℃)
<変性BR3>:共重合体製造例2で作製した変性BR(ビニル含量:11.9質量%、シス含量:37.7質量%、Mw:835,000、Tg:−93℃)
<変性SBR1>:共重合体製造例3で作製した変性SBR(ビニル含量:58質量%、結合スチレン量:25質量%、Mw:400,000、Tg:−27℃)
<変性SBR2>共重合体製造例4で作製した変性SBR(ビニル含量:55質量%、結合スチレン量:37質量%、Mw:410,000、Tg:−15℃)
<IR>:JSR社製のIR2200
<NR>:TSR20
<N660>:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN660(カーボンブラック、BET比表面積:36m
2/g、COAN:74ml/100g)
<S204>:エボニックデグッサ社製のS204(カーボンブラック、BET比表面積:20m
2/g、COAN:76ml/100g)
<N550>:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN550(カーボンブラック、BET比表面積:40m
2/g、COAN:82ml/100g)
<N351H>:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351H(カーボンブラック、BET比表面積:67m
2/g、COAN:102ml/100g)
<シリカ>:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(BET比表面積:175m
2/g)
<6PPD>:住友化学(株)製のアンチゲン6C(老化防止剤、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
<TMQ>:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(老化防止剤、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
<ステアリン酸>:日油(株)製の椿
<亜鉛華>:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
<Si75>:エボニックデグッサ社製のSi75(シランカップリング剤、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
<反応性ノボラック型フェノール樹脂>:住友ベークライト(株)製のスミライトレジンPR−12686(カシュ―変性フェノール樹脂)
<メチレンドナーHMT>:三新化学工業(株)製のサンセラーH−T(加硫促進剤、ヘキサメチレンテトラミン)
<20%オイル含有不溶性硫黄>:四国化成工業(株)製のミュークロンOT−20(二硫化炭素による不溶物60%以上の不溶性硫黄、オイル分:20質量%)
<TBBS>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS−P(加硫促進剤、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<TBSI>:フレキシス(株)製のサントキュアーTBSI(加硫促進剤、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンイミド)
<粘着レジン>:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(C5系石油樹脂、軟化点:102℃)
<液状レジン>Ruetgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)
<製品A−1>:田岡化学工業(株)製のTS3108(上記一般式(5)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、R
21、R
22及びR
23=C
8H
17、x,y=2、硫黄含有率:27質量%、Mw=1.3万、軟化点:128℃)
<製品A−2>:製品A−1に、Ruetgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)を8質量%添加し、溶融混合して得られる溶融混合物(Mw=1.3万、軟化点:100℃)
<製品B−1>:田岡化学工業(株)製のタッキロールV200(上記一般式(5)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、R
21、R
22及びR
23=C
8H
17、x,y=2、硫黄含有率:24質量%、Mw=9000、軟化点:105℃)
<製品B−2>:製品B−1に、Ruetgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)を8質量%添加し、溶融混合して得られる溶融混合物(Mw=9000、軟化点:78℃)
<製品C−1>:田岡化学工業(株)製のTS3109(上記一般式(5)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、R
21、R
22及びR
23=C
8H
17、x,y=2、硫黄含有率:31質量%、Mw=5.6万、軟化点:137℃)
<製品C−2>:製品C−1に、Ruetgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)を16質量%添加し、溶融混合して得られる溶融混合物(Mw=5.6万、軟化点:102℃)
<製品D>:製品A−1に、H&R(株)製のVivaTec400(TDAEオイル)を8質量%添加し、溶融混合して得られる溶融混合物(Mw=1.3万、軟化点:102℃)
<製品E>:Arkema社製のVultac3(上記一般式(5)で表されるアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、R
21、R
22及びR
23=C
5H
11、x,y=2、硫黄含有率:21質量%、Mw=8000、軟化点:110℃)
【0135】
なお、上記製品A−2、B−2、C−2、Dの溶融混合物の調製方法は次のとおりである。
上述した配合に従い、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の入ったフラスコをオイルバスに浸漬し、軟化点以上の温度に昇温し、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物を完全溶解させたのち、クマロンインデン樹脂又はオイルを、所定量添加し、電子スターラーで数10分間撹拌し、取り出し、冷却・すり鉢で粉砕し、均一な溶融混合物を得た。
【0136】
また、上記製品A−2、B−2、C−2、Dの溶融混合物中のアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物の重量平均分子量(Mw)、軟化点の測定は以下のようにして行った。
【0137】
〔重量平均分子量(Mw)〕
下記装置、条件でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定した測定値を基に標準ポリスチレン換算によりMwを求めた。
装置:東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、
検出器:示差屈折計、
カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M
【0138】
〔軟化点〕
JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度を軟化点とした。
【0139】
(実施例1〜17、19〜26、28、比較例1、3〜9)
表1及び2に示す配合内容に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、溶融混合物及び加硫促進剤以外の材料を5分間、排出温度170℃になるまで混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、溶融混合物及び加硫促進剤を添加し、二軸オープンロールを用いて、4分間、105℃になるまで混練し、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をストリップワインド式押出し機に供して、幅20mm、厚さ1mmのゴムシート(未加硫ゴム組成物)を押出し、高温状態(60〜100℃)のまま該ゴムシートを積層(ストリップワインド工法〔STW工法〕)し、170℃で12分間プレス加硫して加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をストリップワインド式押出し機に供して、幅20mm、厚さ1mmのゴムシート(未加硫ゴム組成物)を押出し、高温状態(60〜100℃)のまま該ゴムシートをタイヤ成形機上で積層(STW工法)し、所定の形状の生厚み(最大厚み:7mm)のサイドウォール補強層に成形し、他のタイヤ部位と貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、加硫することで試験用ランフラットタイヤを製造した(タイヤサイズ:245/40ZRI8)。
【0140】
(実施例18、27、比較例2)
得られた未加硫ゴム組成物を所定の形状に押出し成形(コンベンショナル工法〔CONVL工法〕)した以外は、前述と同様の方法で、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物を所定の厚みでサイドウォール補強層の形状に成形(CONVL工法)した以外は、前述と同様の方法で、試験用ランフラットタイヤを得た。
【0141】
上記得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用ランフラットタイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表1及び2に示す。
【0142】
(シート加工性)
各未加硫ゴム組成物について、押出し後の各未加硫ゴム組成物を所定のサイドウォール補強層の形状に成形した成形品のエッジ状態がきれいで、平坦であり、所定の寸法で均一に作成できているか、ゴムの焼け、ビッツ、凹凸がないか、ゴムの収縮が起こっていないか、成形粘着性が充分であるか、を目視、触覚により評価し、比較例1を100として指数表示(加工性指数)した。数値が大きいほど、シート加工性が優れることを示している。
なお、エッジ状態については、最もエッジが真っ直ぐで凹凸のない状態を良好とし、平坦さについては、該シートが平坦で平面板に密着する状態を良好とし、ゴムの焼け度合いについて、上記成形品から切り出した15cm角の2mmシートにおいて、ピッツ焼けゴム塊による凹凸がない状態を良好とし、ゴムの収縮については、シート押出し後6時間経過後も、不均一なシュリンクがなく、問題なく成型ジョイントできる状態を良好とし、成形粘着性については、隣接部材との粘着、同コンポーネント同士のジョイントで剥離やめくれがない状態を良好として評価した。
【0143】
(ランフラット耐久性)
製造した試験用ランフラットタイヤを、空気内圧0kPaにてドラム上を80km/hで走行させ、タイヤが破壊するまでの走行距離を測定し、比較例1のランフラット耐久性指数を100とし、下記計算式により、各配合の走行距離を指数表示した。なお、ランフラット耐久性指数が大きいほど、ランフラット耐久性に優れることを示す。
(ランフラット耐久性指数)=(各配合の走行距離)/(比較例1の走行距離)×100
【0144】
(スコーチタイム)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に記載されている振動式加硫試験機(キュラストメーター)を用い、測定温度170℃で加硫試験を行って、時間とトルクとをプロットした加硫速度曲線を得た。加硫速度曲線のトルクの最小値をML、最大値をMH、その差(MH−ML)をMEとしたとき、ML+0.1MEに到達する時間t10(スコーチタイム)(分)を読み取った。スコーチタイムが短いと早期加硫が発生し、ゴム焼けが生じるおそれがある。
【0145】
(粘弾性試験)
粘弾性スペクトロメータVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%及び動歪2%の条件下で、加硫ゴム組成物の複素弾性率(E
*)及び損失正接(tanδ)を測定した。E
*が目標値の範囲内であれば、ランフラット性に有利な充分な硬度であることを示し、操縦安定性が良好であるといえ、tanδが小さいほど、低発熱性に優れる(自己発熱が低い)ことを示す。
【0146】
(引張試験)
上記加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温(23℃)及び高温(150℃)にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。EBが大きいほど、破断時伸び(耐久性)に優れることを示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
表1及び2中の、工法の略号は以下の通りである。
STW:ストリップワインド工法
CONVL:コンベンショナル工法
【0150】
表1及び2の結果から以下のことが分かる。
特定のゴム構成を有するゴム成分と、特定量の特定のカーボンブラックとを含む本願発明におけるゴム組成物から構成される実施例は、良好な加工性を維持しつつ、高硬度、破断伸び、自己発熱をバランス良く改善することができ、良好なランフラット耐久性が得られ、更には加工性に有利な良好なスコーチ性能を得ることができることが明らかとなった。
また、実施例1と実施例18は、配合は同様であるが、工法の異なるものである。これらを比較すると、STW工法(ストリップワインド方式)とすることにより加工性がより良好となることが分かる。これは、STW工法では、高温状態の短冊状のゴムシートを未加硫タイヤカバーに貼り付けるため、粘着性が向上し、不均一なシュリンクの問題が発生しにくいことが一因であると考えられる。