特許第5876589号(P5876589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876589
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】ヒドロシランの製造システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/04 20060101AFI20160218BHJP
   C01B 33/107 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C01B33/04
   C01B33/107 Z
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-547487(P2014-547487)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-504838(P2015-504838A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】US2012069758
(87)【国際公開番号】WO2013090726
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】13/328,820
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507002985
【氏名又は名称】アールイーシー シリコン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム シー ブレネマン
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−513325(JP,A)
【文献】 特開昭58−217422(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047553(WO,A1)
【文献】 特開2001−122610(JP,A)
【文献】 特開平01−257118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の多段分留塔(2)であって、
複数の蒸留段を画定する容器と、
反応物質流入口(1)と、
前記反応物質流入口(1)の上に位置する第1の留出液流出口(5)と、
前記反応物質流入口(1)と前記第1の留出液流出口(5)の間に位置する第1の製品流入口(8)と、
底部出口(31)と、
前記第1の留出液流出口(5)の上に位置する蒸気流出口(32)とを備える第1の多段分留塔(2)と、
(b)第1の触媒再分配反応器(7)であって、
チャンバを画定する容器と、
入口(7a)と、
前記入口(7a)から離間された製品流出口(7b)と、
前記入口(7a)と前記製品流出口(7b)の間の前記チャンバ内に配置された固定床触媒とを備え、
前記製品流出口(7b)は、前記第1の多段分留塔(2)の前記第1の製品流入口(8)に連通し、
圧力平衡出口または蒸気戻り出口を含まない、第1の触媒再分配反応器(7)と、
(c)第1の留出液流(B)を前記第1の留出液流出口(5)から前記第1の触媒再分配反応器(7)に注入するよう動作可能な第1のポンプ(6)と、
(d)前記第1の多段分留塔(2)の前記蒸気流出口(32)に連通するコンデンサ(28)とを備える、ヒドロシランの製造システム。
【請求項2】
前記コンデンサ(28)の出口に流体連通する第2のコンデンサ(29)をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記反応物質流入口(1)に動作可能に連結され、前記第1の多段分留塔(2)に反応物質流(A)を供給することができる反応物質源をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
(d)第2の触媒再分配反応器(12)であって、
チャンバを画定する容器と、
入口(12a)と、
前記入口(12a)から離間された製品流出口(12b)と、
前記入口(12a)と前記製品流出口(12b)の間の前記チャンバ内に配置された固定床触媒とを備え、
圧力平衡出口または蒸気戻り出口を含まない、第2の触媒再分配反応器(12)と、
(e)凝縮液(F)を前記コンデンサ(28)から前記第2の触媒再分配反応器(12)に注入するよう動作可能な第2のポンプ(11)とをさらに備える、請求項1〜3のいずれか一に記載のシステム。
【請求項5】
(f)第2の多段分留塔(14)であって、
複数の蒸留段を画定する容器と、
前記第2の触媒再分配反応器(12)の前記製品流出口(12b)に動作可能に連結される第2の多段分留塔入口(13)と、
前記入口(13)の上に位置する第2の出口(19)と、
前記第2の出口(19)の上に位置するパージ流出口(18)と、
底部出口(20)とを備える第2の多段分留塔(14)をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
トリハロシランおよび四ハロゲン化シリコンを含む反応物質流(A)を、第1の蒸留段(Z1)および該第1の蒸留ゾーン(Z1)上に位置する第2の蒸留段(Z2)を含む複数の蒸留段を画定する容器を備える第1の多段分留塔(2)に供給し、前記反応物質流(A)が、前記第1の蒸留段(Z1)の高さに対応する高さに位置する反応物質流入口(1)を経て前記第1の多段蒸留塔(2)に供給される工程と、
前記容器内の圧力における前記反応物質流の沸点に対応する温度Tで前記第1の蒸留段(Z1)を維持する工程と、
前記第2の蒸留段(Z2)内の液体および/または蒸気における、ハロゲンのシリコンに対するモル比が2.8〜3.2となる、温度Tで前記第2の蒸留段(Z2)を維持する工程と、
第1の留出液流(B)を、前記第1の多段分留塔(2)から、前記第2の蒸留段(Z2)の高さに対応する高さに位置する第1の留出液流出口(5)を経て、圧力平衡出口または蒸気流出口を含まない第1の固定床触媒分配反応器(7)を通して送り出して第1の製品流(C)を生成し、その後前記第1の留出液流出口(5)の下かつ前記反応物質流入口(1)の上に位置する第1の製品流入口(8)を経て前記第1の多段分留塔(2)内に送り戻す工程と、
蒸気(E)を前記第1の多段分留塔(2)の上部からコンデンサ(28)に供給してジハロシランを含む凝縮液(F)を発生させる工程とを備える方法。
【請求項7】
前記反応物質流(A)がトリクロロシラン含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の製品流(C)が、前記第1の留出液流(B)よりも少なくとも5%少ないトリクロロシランを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記凝縮液(F)がジクロロシランを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記容器内の圧力が450kPa〜1750kPaである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
が60℃〜150℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ハロゲンのシリコンに対する前記モル比が2.8〜3.1である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記凝縮液(F)を、圧力平衡出口または蒸気流出口を含まない第2の固定床触媒再分配反応器(12)から送り出して第2の製品流(G)を発生させ、続いて複数の蒸留段を画定する容器を備えるとともに前記第2の多段分留塔(14)内に位置する蒸留段(Z3)と対応する高さに位置する第2の多段分留塔入口(13)を備える第2の多段分留塔(14)に供給し、前記蒸留段(Z3)が、前記領域内の圧力における、前記第2の製品流(G)の沸点に対応する温度を有する工程と、
シラン(H)を前記第2の多段蒸留塔から前記第2の多段分留塔入口(13)の上に位置する第2の多段分留塔出口(19)を通して取り出す工程とをさらに備える、請求項6〜12のいずれか一に記載の方法。
【請求項14】
不純物ガスを含むパージ流(I)を前記第2の多段分留塔(14)の頂部出口(18)から取り出す工程をさらに備える請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2011年12月16日に出願された米国特許出願番号第13/328,820号の一部継続出願であり、その全体は本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、シランおよび一般式HSiX4−y(y=1、2、または3)のヒドロハロシランを製造するためのシステムおよび反応蒸留方法の実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
シラン(SiH)、クロロシラン(HSiCl)およびジクロロシラン(HSiCl)は、高純度結晶シリコンを主要素とする電子デバイスの製造に有用な化学物質である。これらのシリコンを含むガスを熱分解して高純度シリコン材料を形成する。現在、高純度シランの製造は、図1に概して示されるとともに、米国特許第4,676,967号に概して記載されるプロセスによって工業規模で実施されており、上記特許では、まず、金属級シリコンを水素と四塩化シリコンの反応により気化させて揮発性トリクロロシランを含む以下の混合物を生成させる、
2H + 3SiCl + Si → 4HSiCl (1)
【0004】
その後、第2の工程では、四塩化シリコンも副産物として発生させる一連の蒸留分離および触媒再分配反応で、トリクロロシランが高純度シラン生成物に変換される。その四塩化シリコンは、第1の工程に再生利用される。
4HSiCl → 3SiCl + SiH (2)
【0005】
シランはその後、超高純度シリコンを形成するいくつかの方法のいずれかにおいて熱分解され、プロセスが緊密な場合、副生水素が第1の工程で再生利用される。
【0006】
全体として、このプロセスは、原材料の使用効率が非常に高いという特徴がある。しかしながら、このプロセスは、やや複雑であることも特徴とし、所望の成果を達成するために高圧で動作する必要があるものも含む、多くの蒸留塔を用いる。米国特許第3,968,399号には、固体再分配触媒が、分留塔内の接触面の役割も果たす単一工程プロセスで、直接トリクロロシランからシランを製造可能であることが記載されている。上記の特許ではそのように書かれてはいないが、このプロセスは、化学反応と蒸留分離の両方が同じ装置内で行われるという点で、「反応蒸留」プロセスにおいて、必須の実施形態であった。
【0007】
しかしながら、蒸留分離と触媒再分配反応を組み合わせる場合には、対処しなければならない実用上の制限も存在する。第1に、蒸留速度、すなわち、蒸気および液体が相互に作用して平衡混合物を生成する速度が非常に速く、1秒程度である一方、再分配反応の反応速度は、著しく活性な触媒を用いても、平衡状態になるまでに数分かかる。したがって、気液接触面積または蒸留分離段階に関連して、反応に十分な空間および時間をもたらすよう、反応領域に充てる容量、触媒量などをいかに決定するかという問題が生じる。固体触媒の場合、時間の経過とともに触媒の活性が徐々に変化し、反応速度が低下するため、当初の反応速度に基づいて慎重に考えられた設計が変化してしまい、この問題がより複雑になる。第2に、粒子の固定床により、時間の経過にともないトランプ固体によって、あるいはより小さな触媒粒子の移動から、流れの制限が生じる。これにより、実際のユニット動作のために対処しなければならない流れの制限が増加した。第3に、良好な反応の化学反応が見られ、望ましくない副反応をもたらさない温度範囲はかなり限られている。共存蒸留操作においては、動作圧力および組成が触媒の場所を制約する。米国特許第3,968,399号では、例えば、周囲温度を下回る温度で反応蒸留操作が実施されたため、シラン製造速度が非常に遅かった。一方、米国特許第4,676,967号は、化学反応速度を最大化するよう選択された温度で再分配反応を操作するため、必要な触媒の容量が最小となる。蒸留操作における、これに関連する温度は、全体のシステム圧力とともに気/液組成にも依存するため、化学反応に対する温度制限は、化学試薬が触媒に接触して通過する場所とともにシステムの動作圧力の制限にもつながる。試薬流が触媒床を通過する前に試薬流を調整し、その後、反応生成物が蒸留環境に戻る前にその熱作用を反転するよう、加熱器または冷却器を加えることにより、追加的エネルギーおよびプロセスに対する複雑性の負担が課される。第4に、熱エネルギーの排除がいずれの蒸留分離にも必要であるため、経済的に利用可能な周囲の空気または利用可能な冷却水にエネルギーを放出すると、周囲温度を下回る温度またはさらに低温でエネルギーを放出するよりも大幅に好ましい。この温度制限は、反応蒸留システムにおける動作圧力および組成をさらに制限する。
【0008】
米国特許第6,905,576号は、「中間コンデンサ」を用いる反応蒸留システム内でシランを製造する方法を提示する。しかし、米国特許第6,905,576号の発明者らは、第1の反応領域における低沸点要素(SiHおよびHSiCl)の製造を意図的に制限することにより、冷却およびプロセスのポンプ要件の緩和にともないプロセスの複雑性を大幅に減じうることを認識していない。最後に、シランを製造するための経済的なプロセスでは、経済的に利用可能な熱放出手段を用いるとともに、周囲温度を下回る温度を可能な限り避けるために、プロセスの少なくとも一部を高い圧力で実施しなければならない。米国特許第3,968,399号は大気圧で説明されているが、製造速度は非常に遅く、蒸留に作用する冷却要件は、−70℃をはるかに下回る冷却材温度となった。米国特許第6,905,576号は、高い圧力での動作を要求するが、ガスポンプ(コンプレッサ)を必要とするかまたはより低温の冷却を使用することにより、その高い圧力を達成する。米国特許第6,905,576号に記載されるプロセスは、凝縮された液体のみを供給する低温コンデンサか、蒸気をより高い圧力に圧縮するためのコンプレッサのいずれかを用いることを必要とする、「第1の再分配反応器」内でのシランの製造を意図的に強制する。コンプレッサに頼って反応性の高いシランガスを圧送するのではなく、ポンプを用いてシステムを通して液体クロロシラン試薬を給送することにより、より高い圧力が最も良好に達成される。シランまたはクロロシランの蒸気の圧縮には、コンプレッサのハードウェアのための、特殊で非常に高価な構成を必要とする。
【0009】
プロセス手順は、任意の汚染物質をシランから除去する少なくとも1つの方法を提示しなければならない。想定される汚染物質の数が非常に多いため、合わせて、シラン10億部に対し約100部を超えるレベルで不純物が存在しないようにする精錬技術群を用いなければならず、電子機器用途の条件を満たす最終シリコン製品を提供するために、ホウ素およびリンなどの、一部の選択された不純物については、不純物のレベルがシラン1兆部に対し約20を下回らなければならない。少量の化合物のみがシランの沸点に近い沸点を有することは幸運であり、蒸留により、シランの精錬のための非常に強力な手段が提供される。しかし、重要な不純物が存在し、それは主に、シランと沸点が非常近いために電子用途に有用な超高純度シランに求められる極度の精製を不可能にする、ホウ素およびリンの水素化物である。これらの不純物、場合により他の不純物、特に、プロセス中にそれ自体が化学的に変換されうる不純物については、最終シラン製品が、最も要求が厳しい用途に求められる格段の純度を有することを保証するよう、追加の精製手段を全体のプロセス手順に含めなければならない。各追加処理工程が、プロセスの資本コストおよび運転コストを増大させる場合、処理工程またはハードウェアを組み合わせるか省略しうる方法により、魅力的で経済的な代替案が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書では、新規の構成内で、ヒドロハロシランの分留分離とヒドロハロシランの触媒再分配を組み合わせたシステムおよびプロセスの実施形態を説明し、その構成は、処理用機器部品の物理的寸法および数を最小にし、周囲のヒートシンクをほぼすべての熱放出に使用可能にし、再分配触媒の有効性の監視を可能にするとともに、その活性が低下した際には容易に交換可能にし、ありとあらゆる致命的な不純物をシランから除去するための複数の手段の精製方法を取り入れて超高純度製品を提供するものである。詳細な説明(発明を実施するための形態)により、プロセス要素の新規な構成が、構成要素の物理的特性および化学的安定性の制約の中で、いかに、超高純度シラン製品を提供するとともに設計が強力であり、エネルギー、原材料および資本設備利用率の観点から経済的であるプロセスを提供するかを示す。プロセスは、ハロゲンのシリコンに対するモル比が反応物質流よりも低い製品組成物も提供する。言い換えれば、反応物質流が、式HSiX4−y(Xはハロゲン、yは1、2、または3)の1種または複数種のヒドロハロシランを含むとき、製品組成物は、顕著な濃度のHSiX4−z(z=y+1)を含む。例えば、反応物質流がトリクロロシランを含む場合、製品組成物は、反応物質流と比較して、含まれるトリクロロシランの量が少なく、含まれるジクロロシランの量が多い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
システムの実施形態は、第1の多段分留塔と、第1の触媒再分配反応器と、第1の留出液流を再分配反応器に注入するよう動作可能な第1のポンプとを含む。第1の多段分留塔は、反応物質流入口と、第1の留出液流出口と、第1の生成物流入口と、底部出口と、蒸気流出口とを備える。少なくとも1つのコンデンサは、蒸気流出口に連通している。第1の触媒分配反応器は、チャンバを画定する容器と、入口と、該入口から離間された製品流出口とを含む。触媒再分配反応器は、圧力平衡出口または蒸気戻り出口を含まない。
【0012】
一実施形態では、第2の触媒再分配反応器と、第1の多段分留塔から凝縮液を第2の再分配反応器に注入するよう動作可能な第2のポンプとを含む。第2の触媒分配反応器は、チャンバを画定する容器と、入口と、該入口から離間された製品流出口とを含むが、圧力平衡出口または蒸気戻り出口を含まない。別の実施形態では、システムは、第2の触媒再分配反応器の製品流出口に動作可能に連結される入口を備えた第2の多段分留塔と、入口の上に位置する出口と、パージ流出口と、底部出口とをさらに含む。
【0013】
ある実施形態では、式HSiX4−y(Xはハロゲン、yは1、2、または3)の1種または複数種のヒドロハロシランを含む反応物質流を、反応物質流入口を経由して、少なくとも第1の蒸留段(ゾーン)および第2の蒸留段を有する第1の多段蒸留塔に供給し、第1の蒸留段は、塔内の圧力における反応物質流の沸点に対応する温度Tで維持される。第1の留出液流は、第2の蒸留段から、留出液流出口を経由して第1の触媒再分配反応器へ送り出され、第2の蒸留段は、第2の蒸留段内の液体および/または蒸気におけるハロゲンのシリコンに対するモル比が2.8〜3.2となる温度Tで維持される。第1の製品流は、第1の触媒再分配反応器により製造され、第1の製品流は、反応物質流入口と留出液流出口の間の箇所の第1の多段蒸留塔に戻す。蒸気を蒸留塔(HSiX4−z)の上部からコンデンサに供給してHSiX4−z(z=y+1)を含む凝縮液を発生させる。
【0014】
ある実施形態では、凝縮液を、第2の固定床触媒再分配反応器から送り出して第2の製品流を発生させ、続いて第2の多段分留塔内に位置する蒸留段と対応する高さに位置する入口を経て第2の多段分留塔に供給され、蒸留段は、その領域内の圧力における第2の製品流の沸点に対応する温度を有する。シランは第2の多段蒸留塔から入口の上に位置する出口を通して取り出される。ある実施形態において、不純物ガスを含むパージ流は、第2の蒸留塔の頂部出口から取り出される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】工業規模で現在実施されているシラン製造のためのプロセスのブロック図である。
図2】シランの製造に適したシステムの概略図である。
図3】クロロシランおよびジクロロシランの製造のための二塔分離システムの概略図である。
図4】多段分留塔の一実施形態の、製品のモル分率−底部からの位置のグラフである。
図5図4の多段分留塔の、温度−底部からの位置のグラフである。
図6】所定のCl:Siモル比を有する反応物質流を触媒再分配反応器に供給した後の、ヒドロクロロシランの所期の平衡組成を示すグラフである。
図7】653kPaの圧力で動作する多段分留塔の一実施形態の、塔温度−Cl:Siモル比のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、金属級シリコンおよび水素からのシラン製造のためのプロセス全体のうち、式HSiX4−y(Xはハロゲン、yは1、2、または3)のヒドロハロシランの混合物をシランおよび四ハロゲン化シリコンに転換する部分に関する。例えば、ガス化プロセス(反応(1))により得られたトリクロロシランおよび四塩化シリコンを、シランおよび四塩化シリコンに変換(反応(2))してもよい。ジハロシラン(HSiX)およびハロシラン(HSiX)を含む中間製品はまた、プロセスの様々な時点で単離することもできる。
【0017】
特に、2つの固定床触媒再分配反応器と組み合わされた2つの多段分留塔の独自の構成を開示する。この構成では、ハロゲンのシリコンに対するモル比が2.8〜3.9で、例えば2.8を超え、HSiXが多く、ハロゲンのシリコンに対するモル比が2.0未満である凝縮液を生成するよう第1の反応器への供給が調製され、さらなる処理のために第2の触媒再分配反応器に供給される。
【0018】
多段蒸留塔の設計により得られるこの構成により、十分に濃度が低いシラン(SiH)が第1の反応器内で生成され、通常の冷却材温度で動作する全縮器を、第1の多段蒸留塔で用いることができる。システム動作圧力、ひいては精留塔温度分布を選択することにより、周囲の空気または一般的に入手可能な冷却水をコンデンサ動作に使用して、安定した、予測可能な様式で組み合わせられた蒸留および反応の動作を行うことが可能である。
【0019】
この第1の蒸留/反応器の組合せの中間製品は、シランがヒドロハロシランの混合物内で発生する、第2の固定床触媒再分配反応器を通って送り出される。第2の多段蒸留塔に供給される混合ヒドロハロシラン流のすべては、この第2の反応器を通過する。弱塩基であることが最も望ましく、巨大網状イオン交換樹脂である再分配触媒は、ホウ素不純物をヒドロハロシランから容易に除去する(例えば米国特許第6,843,972号参照)。反応器床はまた、大型の砂ろ過器として機能し、工業プロセス内に存在する微量の酸素または水分から生成される微量の固体シリカを捕捉する。シリカはまた、ホウ素および他の金属種を化学吸着により引き寄せる役割を果たす(例えば、米国特許第4,713,230号参照)。化学吸着および触媒床の物理的ろ過作用と組み合わされた触媒再分配反応により、電子的に活性な不純物のシラン精製システムへの侵入を防ぐ。この二次精製を、最終シラン蒸留の直前に行うことにより、不純物を除去する複数の手段を提供し、さらに、最高純度のシランの製造を保証する。高純度シランは、高効率多段蒸留塔内で、側流液として回収され、その間、少量のシランは、蒸気として非凝縮性不純物ガスとともに分縮器を通って放出される。これらの特徴を組み合わせた結果、エネルギー使用量が減少し、資本設備投資が低減されたプロセスが得られ、またプロセス動作の特性を容易に監視することが可能になる。後者は、ユニットの製造量および質を最大化するために特に重要である。
【0020】
本開示はまた、シリコンのヒドロハロゲン化によりトリハロシランが生成されるか、最終生成物が少量の超高純度ジハロシラン(HSiX)またはハロシラン(HSiX)も含みうるプロセスに関する。ジハロシランまたはハロシランの場合、これらの要素は第2の多段蒸留塔の底部流中に高い濃度で存在する。中間留出液をここで取り出して二次の蒸留塔セットに送り、所望の量および質のこれらの2つのヒドロハロシランを届けると有利でありうる(図3)。
【0021】
図1は、プロセスの全体のブロックフロー図である。金属級シリコンがトリハロシランおよび四ハロゲン化シリコンの混合物に変換されるシリコンガス化段(ゾーン1)が示されている。反応蒸留段(ゾーン2)では、トリハロシランが、シランおよび四ハロゲン化シリコンに変換され、後者は、ゾーン1で再生利用してもよい。最終段(ゾーン3)では、シランが高純度多結晶シリコン金属および水素に変換される。後者は、ガス化段(ゾーン1)で再生利用される。必要に応じて、ゾーン2内の内部ヒドロハロシラン流のごく一部の供給先を、個別のハロシランの純粋な留分が得られる蒸留分離段に変更してもよい。
【0022】
粗シリコン供給原料からの不純物は、ゾーン1および2で放出される。不純物流は、放出された不純物に加えてハロゲン化合物値を含む。両方の不純物放出で失われたハロゲン化合物および副生されたハロシランおよび/またはジハロシラン流に含まれるハロゲン化合物を置換するのに十分なハロゲン化合物を供給するため、ハロゲン化合物の補充源が必要である。プロセスのゾーン1に四ハロゲン化シリコン、トリハロシラン、ハロゲン化水素またはハロゲンを加えることによりハロゲン化合物を補給してもよい。
【0023】
必要に応じて、以下のように、ハロゲン化水素とシリコンの反応により、金属級シリコンをヒドロハロゲン化することによりトリハロシランを生成してもよい。
3HX + Si → HSiX + H (3)
式中、Xはハロゲンである。反応(3)の顕著な副産物は、一般的にハロシラン流全体の約15%で存在するSiXである。この手段を用いてHSiXを生成することにより、シランSiHを調製するための反応蒸留プロセスにより発生する副産物SiXのための代替出口がさらに必要とされる。代替出口の手段として、SiXの焼成シリカへの変換、ならびに有機アルコキシシラン、シリカ系樹脂および他の有用な材料の調製が挙げられる。いずれのプロセスにおいても、混合HSiX/SiX流は、反応蒸留プロセスに先立って、さらに精製してHSiX/SiXの比率を変更する必要がない。反応蒸留塔の軽微な構成の変更のみが必要であり、ハロシランの粗混合物をさらに精製しないことにより大量のエネルギーが節約される。
【0024】
太陽電池級シリコンの製造に適した等級のシランは、図2に示すプロセスおよびシステムにより製造することができる。反応蒸留段は、多段精留塔2によりもたらされる。第1の多段分留塔2は、少なくとも第1の蒸留段(Z1)および該第1の蒸留段(Z1)の上に位置する第2の蒸留段(Z2)を含む複数の蒸留段を画定する容器と、反応物質流入口1と、第1の留出液流出口5と、第1の生成物流入口8と、底部出口31と、蒸気流出口32とを備える。塔2は、リボイラ3および全縮器28をさらに備える。ある構成において、塔2は、図2に示すように、連続する2つのコンデンサ28および29を有し、水素および/または窒素が出口4で排気される。コンデンサ29は、水素/窒素を排気する前に、残留する微量のハロシランを除去する。回収タンク/凝縮液受槽30は、コンデンサ28および/またはコンデンサ29に流体連通される。凝縮液受槽30は、他の流体/蒸気流で除去されずに凝集された微量のハロシランを収集する。
【0025】
式HySiX4−y(Xはハロゲン、yは1、2、または3)の1種または複数種のヒドロハロシランを含む、SiXの水素化により生成されたかまたはヒドロハロゲン化反応により生成された、ゾーン1からの反応物質流(A)は、反応物質流入口1で、第1の多段蒸留塔2に入る。ある実施形態では、反応物質流(A)はHSiXとSiXの混合物を含む。特定の例では、反応物質流(A)はHSiClとSiClの混合物を含む。反応物質流(A)では、ハロゲンのシリコンに対するモル比が2.8よりも大きくてもよく、例えば2.8〜3.9、3.1〜3.9、3.5〜3.8、または3.6〜3.8であってもよい。反応物質流(A)は、液体、蒸気、またはそれらの組合せであってもよい。反応物質流入口1は、第1の蒸留段(Z1)に対応する高さに位置する。反応物質流Aは、1時間に生成されるシランのモルに関連して、4〜22.2kg−mole/hrの速度、例えば11〜22kg−mole/hrまたは11〜16kg−mole/hrの速度で蒸留塔2に供給してもよい。
【0026】
ある実施形態では、容器内の圧力は450kPa〜1750kPaである。特定の実施形態では、容器内の圧力は450kPa〜650kPaである。第1の蒸留段(Z1)は、容器内の圧力における反応物質流の沸点に近い温度Tに維持される。ある実施形態では、Tは82℃〜100℃である。第2の蒸留段(Z2)は、第2の蒸留段(Z2)内の液体および/または蒸気における、ハロゲンのシリコンに対するモル比(X:Si)が2.8〜3.2となる、温度Tに維持される。ある例では、この比は3である。Tは、容器内の圧力に応じて調節される。ある実施形態では、Tは60℃〜150℃、例えば80℃〜100℃である。
【0027】
第1の留出液流出口5を設け、第1のポンプ6を用いて第1の留出液流を第1の触媒再分配反応器7に移す。第1の触媒分配反応器7は、チャンバを画定する容器と、入口7aと、該入口7aから離間された製品流出口7bと、入口7aと出口7bの間のチャンバ内に配置された固定床触媒とを含む。製品流出口7bは塔2の第1の生成物流入口8に連通している。図2に示す構成では、入口7aは反応器7の上部に位置し、出口7bは反応器7の下部に位置する。一方、別の構成(図示せず)では、入口7aは反応器7の下部に位置し、出口7bは反応器7の上部に位置する。第1の触媒再分配反応器7は、圧力平衡出口または蒸気戻り出口を含まない。ポンプ6により、重力に依存しない頑健なプロセスがもたらされ、反応器7における流動抵抗が克服される。図2に示す構成では、ポンプ6は、第1の留出液流出口5と第1の触媒再分配反応器入口7aの間に位置する。別の構成(図示せず)では、ポンプ6は、第1の触媒再分配反応器出口7bと第1の生成物流入口8の間に位置する。再分配反応器7は、450kPa〜650kPaの圧力、60℃〜100℃の温度で動作してもよい。
【0028】
流(B)と同じX:Si比をもつが、流(B)よりもトリハロシランが少なく、実質的にシランSiHを含有しない、ヒドロハロシランの混合物を含む反応器製品(C)は、反応物質流入口1と第1の留出液流出口5の間に位置する第1の生成物流入口8において、多段精留塔2に戻される。ある構成では、第1の生成物流入口8の位置は、第1の留出液流出口5を通って流れる第1の留出液流(B)の量を最小化するよう選択される。ある実施形態において、反応器製品(C)では、流(B)よりもトリハロシランが少なくとも5%少ないか、流(B)よりもトリハロシランが少なくとも10%少ないか、または流(B)よりもトリハロシランが少なくとも20%少ない。図6はヒドロクロロシラン再分布の平衡組成の一例を示すグラフであり、各要素のモル分率−全体のCl:Siモル比が示されている。
【0029】
実質的にシランおよび四ハロゲン化シリコンを含有しないヒドロハロシランの混合物を含む凝縮液(F)は、凝縮された液体として全縮器28から取り出され、ポンプ11により第2の充填床触媒再分配反応器12に給送される。凝縮液(F)は、HzSiX4−z(z=y+1)を含む。例えば、反応物質流(A)がHSiXを含む場合であれば、凝縮液(F)はHSiXを含む。ある実施形態においては、凝縮液(F)では、ハロゲンのシリコンに対するモル比が2.0より少なく、例えば1.5〜2.0である。
【0030】
第2の充填床触媒分配反応器12は、チャンバを画定する容器と、入口12aと、該入口12aから離間された製品流出口12bと、入口12aと出口12bの間のチャンバ内に配置された固定床触媒とを含む。図2に示す構成では、入口12aは反応器12の上部に位置し、出口12bは反応器12の下部に位置する。一方、別の構成(図示せず)では、入口12aは反応器12の下部に位置し、出口12bは反応器12の上部に位置する。第2の触媒再分配反応器12は、圧力平衡出口または蒸気戻り出口を含まない。再分配反応器12は、2000kPa〜3500kPaの圧力、30℃〜60℃の温度で動作してもよい。流(F)のヒドロハロシランと同じX:Si比をもつが、かなりの量のシランSiHを含有するヒドロハロシランの混合物を含む、第2の再分配反応器からの第2の製品流(G)が、入口13において第2の多段分留塔14に入る。例えば、第2の製品流(G)は、5〜20%のシラン、例えば8〜15%のシランを含みうる。図2に示す一構成では、ポンプ11は、コンデンサ28と第2の触媒再分配反応器入口12aの間に位置する。別の構成(図示せず)では、ポンプ11は、第2の触媒再分配反応器出口12bと第2多段分留塔入口13の間に位置する。
【0031】
第2の多段分留塔14は、複数の蒸留段を画定する容器と、第2の触媒再分配反応器12の製品流出口12bに動作可能に連結される入口13と、入口13の上に位置する出口19と、出口19の上に位置する分縮器17と、分縮器17の上に位置するパージ流出口18と、底部出口20とを含む。入口13は、塔14内に位置する第1の蒸留段(Z3)に対応する高さに位置し、蒸留段(Z3)は、その領域内の圧力における第2の製品流(G)の沸点に対応する温度を有する。ある実施形態では、その温度は、動作圧力2000kPa〜2500kPaで0℃〜50℃の範囲内、例えば5℃〜35℃である。超高純度シラン(H)は、入口13と分縮器17の間に位置する出口19で、蒸気または凝縮液製品として生成される。「超高純度」は、少なくとも99.995%の純度であり、例えば99.995〜99.9999%の純度である。微量のシランとともに、シランよりも沸点が低い非凝縮性ガス(水素、窒素、メタン)を含む少量のパージ流(I)を、分縮器17の上のパージ流出口18から取り出してもよい。流(I)は、流(H)の10%未満の量であり、沸点が低いガスをシステムから排出する。流(I)は、最も要求が厳しい電子機器品質用途には不適当であるかもしれないが、最高純度のシランを必要としない、太陽電池用または他の用途用のシリコン製造には有用な十分な純度である。
【0032】
ヒドロハロシラン(例えば10〜20%のモノハロシラン、40〜50%のジハロシラン、および30〜40%のトリハロシラン)の混合物を含み、実質的にシランを含有しない底部流(D)は、圧力制御装置21を経て第1の多段分留塔2に流れ、第1の留出液流出口5の上に位置する入口21aに入る。四ハロゲン化シリコン(K)は、底部製品として塔2から給送され、水素添加ゾーンで再生利用されるか、または販売可能となる。塔2の出口31は、塔の廃水および/または不揮発性要素の除去のための出口となる。
【0033】
反応物質流(A)の、蒸留塔2への供給地点、すなわち入口1は、所期の組成の供給混合物および塔2の分離プロファイルにより決定される。HSiX濃度が高いほど、塔内の供給地点が高くなりうる。上述したとおり、最適な供給地点は、塔の温度が、塔の動作圧力における反応物質流(A)の沸点に近くなる場所でありうる。ある実施形態では、供給地点は、塔の温度が供給反応物質流の沸点である50℃以下、例えば40℃以下、30℃以下、または20℃以下である場所である。実際の適用では、通常、上流プロセスの効率に応じて調節を容易に行えるように、幾つかの供給地点を設ける。同様に、第1の留出液流出口5の場所も、塔2に沿った幾つかの地点の1つから変更しうる。
【0034】
図4および図5は、塔2などの多段分留塔内の位置の関数として、それぞれ、液体/蒸気組成および温度変動の一例を示すグラフである。留出液流が少なくとも多少のジハロシランを含むよう第1の留出液流出口を配置すると有利である。ある構成において、留出液流(B)では、ジハロシランのモル分率が、0.01〜0.15でありうる。図4および図5に示す例において、第1の留出液流出口5は、塔温度が90℃となる位置に配置してもよい。出口の場所は、ヒドロハロシランの塔組成において、X:Siモル比が2.8〜3.2、例えば2.8〜3.1である地点である。ある実施形態では、X:Siモル比は3である。このモル比において、触媒再分配反応により、HSiXがより効率的に調製され、ごくわずかなシランが生成される。これにより、ひいては、全縮器28が、通常の冷却材温度(周囲の空気または一般的な冷却水)において効率的に動作することが可能になる。
【0035】
図6は、クロロシランを含む反応物質流を再分配反応器、例えば反応器7または反応器12に通すことよって得られた組成内の各要素の所期の平衡組成モル分率を示すグラフである。X軸は、流入する流れ、すなわち再分配反応器7に流れ込む流(B)または再分配反応器12に流れ込む流(F)のCl:Siモル比を表す。Y軸は、反応器が定常状態条件で動作する際の再分配反応器からの流出組成(すなわち、流(C)または流(G))を表す。そのため、流(B)におけるCl:Siモル比が3のとき、例えば、流出組成(C)はトリクロロシラン、ジクロロシラン、および四塩化ケイ素を主成分として含み、モノクロロシランまたはシランをほとんどまたはまったく含まない。流(F)のCl:Siモル比が2のとき、例えば、流(G)は、ジクロロシランおよびトリクロロシランとともにシランおよびモノクロロシランを含む。図7は、多段分留塔が653kPaの圧力で動作する場合の、所期のCl:Siモル比を温度の関数として示す。
【0036】
第2の蒸留塔14からの再生流(D)は、かなりの量のハロシラン(HSiX)およびジハロシラン(HSiX)を含むが、実質的にシランSiHを含有しない。流(D)は、第1の留出液流(B)のための出口5の上の塔2に入るため、第1の留出液流(B)のX:Si比が目標範囲である2.8〜3.2を下回ることが防止される。
【0037】
第1の多段分留塔2の動作圧力が450〜1750kPa、例えば450〜650kPaとなるように選択することにより、第1の留出液流出口5における温度が60〜150℃、例えば60〜90℃となるように選択することができる。この範囲は、速い反応速度のために十分高く、触媒として一般的に用いられる弱塩基巨大網状イオン交換樹脂の動作寿命を長くするために十分に低いものである。より耐熱性の高い触媒を用いることにより、高い動作圧力、ひいては高い側流温度を用いることが可能となる。ただし、顕著な量のシランがこの第1の反応器内で発生することを防ぐために、X:Si比は2.8〜3.2のままである。
【0038】
ハロシランおよび/またはジハロシランが副生される場合、流(D)の一部または全体を、流(J)として二塔分離システム(図3)に送ってもよい。システムは、第3および第4の蒸留塔27,24を備える。第3の蒸留塔27は、複数の蒸留ゾーンを画定する容器と、第2の多段分留塔14の底部出口20に連通する入口27aと、該入口27aの下に位置する底部出口22aと、入口27aの上に位置する頂部出口22bとを備える。入口27aは、塔27内に位置する領域に対応する高さに位置し、その領域は、領域内の圧力における第1の底部流(J)の沸点に対応する温度を有する。
【0039】
第4の蒸留塔24は、複数の蒸留ゾーンを画定する容器と、底部流(L)を第3の蒸留塔27から受容するために出口22aに連通する入口23と、該入口23の下に位置する底部出口25aと、入口23の上に位置する頂部出口25bとを備える。入口23は、第4の蒸留塔内に位置する領域に対応する高さに位置し、その領域は、領域内の圧力における第2の底部流(L)の沸点に対応する温度を有する。
【0040】
図3に示すように、第3の蒸留塔27からモノハロシランを塔頂留出製品(M)として生成し、その間、ジハロシランを多く含む流(L)を塔27の底部から放出し、第4の蒸留塔24に送る。塔24では、ジハロシランを高純度の塔頂留出製品(N)として取り出し、一方で、トリハロシランおよび少量の四ハロゲン化シリコンを含む底部流(O)を反応物質流(A)と合流させて反応蒸留主システムの塔2に戻す(図2)。これらの2つの追加の蒸留塔は、塔14および塔2の圧力の中間の圧力で動作させることができるため、プロセス中にハロシランを移動させるためのポンプは必要とされず、圧力が十分に高いため、コンデンサのための従来の周囲冷却が可能となる。
【0041】
触媒再分配反応器7,12の各々を、流れの向きを反転させる手段とともに設けてもよい。流れ反転または逆流置換を周期的に行って、プロセスに侵入する少量の水分から形成されうるシリカなどのトランプ固体不純物を除去する。
【実施例】
【0042】
以下の非限定的な例により、このプロセスの実施態様を説明する。
【0043】
図2のように構成された処理システムには、25%のHSiClおよび75%のSiClからなる混合クロロシラン供給材料(A)が、600kPaの圧力で動作する多段分留塔2の反応物質流入口1に、28.57kg−mole/hrの速度で供給される。第1の留出液流出口5から、液体側流(B)が、66.46kg−mole/hrの速度で取り出される。側流(B)の組成は、HSiClが2%、HSiClが97.2%、SiClが0.6%であり、Cl:Siモル比は2.96となった。側流(B)は、液体としてジメチルアミン−機能性スチレン−ジビニルベンゼン巨大網状樹脂(DOWEX MWA−1)を含む充填層反応器7を通して供給される。反応器製品(C)である、0.01%のSiH、0.3%のHSiCl、8.7%のHSiCl、77.6%のHSiCl、13.3%のSiClを含む液体混合物を、反応物質流入口1と第1の留出液流出口5の間に位置する地点8で、第1の蒸留塔2に戻した。第2の蒸留塔14の底部から再生利用され、15.18kg−mole/hrの、0.09%のSiH、17.0%のHSiCl、48.3%のHSiClおよび34.5%のHSiClを含む液体混合物からなる供給材料流(D)は、第1の蒸留塔2の入口21aに入る。HSiClが0.8%、SiClが99.2%の液体混合物からなる底部流(K)は、第1の蒸留塔2の底部から26.45kg−mole/hrの速度で取り出され、水素添加反応セクションに送られる。塔2上の全縮器28から凝縮液(F)を16.80kg−mole/hrの速度で取り出し、昇圧ポンプ11を用いて、2600kPaの圧力、35℃の温度で動作する第2の触媒固定床反応器12に供給する。凝縮液流(F)の組成は、SiHが0.09%、HSiClが11.6%、HSiClが77.1%、HSiClが11.1%である。この、Cl:Siモル比が2.0未満の流(F)は、第2の触媒再分配反応器12に供給され、そこで、4.1%のSiH、10.2%のHSiCl、43.8%のHSiClおよび41.9%のHSiClからなる液体混合物(G)に変換される。第2の再分配反応器12の流出流(G)は、第2の多段分留塔14の下部3分の1に供給される。再分配反応器14は、2516kPaの圧力、−33.3℃のコンデンサ温度で動作した。底部流(D)は、リボイラ16から14.68kg−mole/hrの速度で流出し、第1の蒸留塔2で再生利用される。少量のパージ流(I)が蒸気として、塔のコンデンサ17から0.01kg−mole/hrの速度で取り出される。パージ流(I)は、90%のSiHおよび10%のHからなる。主たるシラン積(H)は、塔14の出口19から液体側流として2.13kg−mole/hrの速度、−29.4℃の温度で取り出される。シラン製品流(H)は、SiHが99.998%、HSiClが1ppm未満、Hが20ppm未満の組成をもつ。パージ流は、厳しくないシラン用途、例えば、太陽電池または建築用ガラスの調節された透過コーティングのための粒状シリコンに用いることができる。最も主要なシラン製品(H)は、極度の純度のもであり、電子産業グレードポリシリコンの製造などの最も厳しい用途に用いることができる。
【0044】
ヒドロシランの製造システムの実施形態は、(a)第1の多段分留塔(2)であって、複数の蒸留段を画定する容器と、反応物質流入口(1)と、反応物質流入口(1)の上に位置する第1の留出液流出口(5)と、反応物質流入口(1)と第1の留出液流出口(5)の間に位置する第1の製品流入口(8)と、底部出口(31)と、第1の留出液流出口(5)の上に位置する蒸気流出口(32)とを備える第1の多段分留塔(2)と、(b)第1の触媒再分配反応器(7)であって、チャンバを画定する容器と、入口(7a)と、入口(7a)から離間された製品流出口(7b)と、入口(7a)と製品流出口(7b)の間のチャンバ内に配置された固定床触媒とを備え、製品流出口(7b)は、第1の多段分留塔(2)の第1の製品流入口(8)に連通し、圧力平衡出口または蒸気戻り出口を含まない、第1の触媒再分配反応器(7)と、(c)第1の留出液流(B)を第1の留出液流出口(5)から第1の触媒再分配反応器(7)に注入するよう動作可能な第1のポンプ(6)と、(d)第1の多段分留塔(2)の蒸気流出口(32)に連通するコンデンサ(28)とを備える。
【0045】
上に記載した実施形態のいずれか、またはすべてにおいて、システムは、反応物質流入口(1)に動作可能に連結され、第1の多段分留塔(2)に反応物質流(A)を供給することができる反応物質源をさらに備えうる。
【0046】
上に記載した実施形態のいずれか、またはすべてにおいて、システムは、(d)第2の触媒再分配反応器(12)であって、チャンバを画定する容器と、入口(12a)と、入口(12a)から離間された製品流出口(12b)と、入口(12a)と製品流出口(12b)の間のチャンバ内に配置された固定床触媒とを備え、圧力平衡出口または蒸気戻り出口を含まない、第2の触媒再分配反応器(12)と、 (e)凝縮液(F)をコンデンサ(28)から第2の触媒再分配反応器(12)に注入するよう動作可能な第2のポンプ(11)とをさらに備えうる。ある実施形態では、システムは、(f)第2の多段分留塔(14)であって、複数の蒸留段を画定する容器と、第2の触媒再分配反応器(12)の製品流出口(12b)に動作可能に連結される第2の多段分留塔入口(13)と、入口(13)の上に位置する第2の出口(19)と、第2の出口(19)の上に位置するパージ流出口(18)と、底部出口(20)とを備える第2の多段分留塔(14)をさらに備える。
【0047】
方法の実施形態は、化学式がHSiX4−y(Xはハロゲンであり、yは1、2、または3)の1種または複数種のヒドロハロシランを含む反応物質流(A)を、第1の蒸留段(Z1)および該第1の蒸留ゾーン(Z1)上に位置する第2の蒸留段(Z2)を含む複数の蒸留段を画定する容器を備える第1の多段分留塔(2)に供給し、反応物質流(A)が、第1の蒸留段(Z1)の高さに対応する高さに位置する反応物質流入口(1)を経て第1の多段蒸留塔(2)に供給される工程と、容器内の圧力における反応物質流の沸点に対応する温度Tで第1の蒸留段(Z1)を維持する工程と、第2の蒸留段(Z2)内の液体および/または蒸気における、ハロゲンのシリコンに対するモル比が2.8〜3.2となる、温度Tで第2の蒸留段(Z2)を維持する工程と、第1の留出液流(B)を、第1の多段分留塔(2)から、第2の蒸留段(Z2)の高さに対応する高さに位置する第1の留出液流出口(5)を経て、圧力平衡出口または蒸気流出口を含まない第1の固定床触媒分配反応器(7)を通して送り出して第1の製品流(C)を生成し、その後第1の留出液流出口(5)の下かつ反応物質流入口(1)の上に位置する第1の製品流入口(8)を経て第1の多段分留塔(2)内に送り戻す工程と、蒸気(E)を第1の多段分留塔(2)の上部からコンデンサ(28)に供給してHSiX4−z(z=y+1)を含む凝縮液(F)を発生させる工程とを備える。
【0048】
反応物質流(A)は、トリクロロシラン含みうる。反応物質流(A)が、トリクロロシラン含みうるある実施例において、第1の製品流(C)は、第1の留出液流(B)よりも少なくとも5%少ないトリクロロシランを含み、かつ/あるいは、凝縮液(F)はジクロロシランを含みうる。
【0049】
上に記載した実施形態のいずれか、またはすべてにおいて、容器内の圧力は450kPa〜1750kPaでありうる。ある実施形態では、Tは60℃〜150℃であり、かつ/あるいは、ハロゲンのシリコンに対するモル比は、2.8〜3.1である。
【0050】
上に記載した実施形態のいずれか、またはすべてにおいて、方法は、凝縮液(F)を、圧力平衡出口または蒸気流出口を含まない第2の固定床触媒再分配反応器(12)から送り出して第2の製品流(G)を発生させ、続いて複数の蒸留段を画定する容器を備えるとともに第2の多段分留塔(14)内に位置する蒸留段(Z3)と対応する高さに位置する第2の多段分留塔入口(13)を備える第2の多段分留塔(14)に供給し、蒸留段(Z3)が、領域内の圧力における第2の製品流(G)の沸点に対応する温度を有する工程と、シラン(H)を第2の多段蒸留塔から第2の多段分留塔入口(13)の上に位置する第2の多段分留塔出口(19)を通して取り出す工程とをさらに備えうる。ある実施形態では、不純物ガスを含むパージ流(I)は、第2の多段分留塔(14)の頂部出口(18)から取り出される。
【0051】
開示した発明の原理を適用することができる多くの実施可能な実施形態に鑑みて、説明された実施形態は、あくまでも本発明の好適な例であると認識するべきであって、本発明の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。正確には、本発明の範囲は以下に記載の特許請求の範囲により定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7