(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒートパイプの作動流体の加熱源が、前記ガス流通路内を流通するガスであり、前記ヒートパイプの作動流体の冷却源が、前記ガス流通路外の大気であることを特徴とする請求項1に記載の分析試料採取装置。
前記ガス採取管は、少なくとも前記ガス流通路の壁を跨ぐ部分及びその前後が、前記ヒートパイプにより前記化合物が析出しない温度に保持されていることを特徴とする請求項3に記載の分析試料採取装置。
前記ガス採取管は、少なくとも前記ガス流通路の壁を跨ぐ部分及びその前後が、前記ヒートパイプにより前記化合物が析出する温度に保持されていることを特徴とする請求項3に記載の分析試料採取装置。
前記液供給手段を介して洗浄用の液を、前記ガス採取管の先端部側に流し、前記ガス採取管のうち前記化合物が析出しない温度領域と前記化合物が析出する温度領域との境界部を洗浄することを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の分析試料採取装置の使用方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法は、アンモニア(含むアンモニア化合物)の付着の可能性のある部分を洗浄し、その洗浄液も分析対象とするので、洗浄によりアンモニア(含むアンモニア化合物)が完全に除去されている場合、アンモニア濃度を高精度で分析することができる。しかしながら実際には、ガス採取管に付着したアンモニア(含むアンモニア化合物)を洗浄操作により完全に除去することができない場合もある。
【0007】
洗浄操作を十分に行うべく、多量の洗浄液で洗浄することも考えられるが、多量の洗浄液で洗浄すると回収された洗浄液中のアンモニア濃度が低く、分析精度が低下する。また廃液を増やす原因となる。以上のように、特許文献1に記載の方法は優れた方法ではあるが、より安定的に、またより正確に排ガス中のアンモニア濃度を測定するには更なる改善が必要である。このような課題は、排ガス中のアンモニア濃度測定に限らず、他の分析用ガスの採取及び分析の際にも当てはまる。
【0008】
本発明の目的は、簡単な装置構成で、ガスに含まれる分析対象成分を正確に採取することが可能な分析試料採取装置、分析試料採取装置の使用方法、ガスに含まれる分析対象成分を正確に分析することができる採取試料分析装置及び採取試料分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、先端部側がガス流通路に挿入され前記ガス流通路内のガスを採取するガス採取管と、前記ガス採取管を所定の温度に保持する温度保持手段と、前記ガス採取管内及び/又は前記ガス採取管の出口部に接続される部材に液を供給する液供給手段と、
前記ガス採取管を介して採取される採取ガスと前記液供給手段を通じて前記ガス採取管内及び/又は前記ガス採取管の出口部に接続される部材に供給される前記液とを分離する気液分離手段と、前記ガス採取管と前記気液分離手段とを結ぶ導管と、を含み、前記ガスは、温度が低下するとガスに含まれる一部の化合物が析出するガスであり、前記温度保持手段がヒートパイプであ
り、前記導管は、内壁面が親水性であり、前記導管内を流通する前記液は、前記導管の内壁面に液膜を形成しながら流通することを特徴とする分析試料採取装置である。
【0010】
ヒートパイプを介してガス採取管を所定温度に保持することのできる本発明の分析試料採取装置は、化合物が析出する領域を限定することができる。このような分析試料採取装置の場合、化合物が析出する領域が特定されているので洗浄液による洗浄も容易である。さらに液供給手段を介して化合物が析出する温度領域に常時、液を流しておくことで化合物の析出及び/又は付着を防止することが可能であり、分析試料を安定的に採取可能であると共にガスに含まれる分析対象成分を正確に採取することができる。またヒートパイプは、熱伝達性、温度の均一性に優れる一方で、温度を均一化させるための手段さらには電源も不要であるから分析試料採取装置を簡素化することができる。
ガス採取管の出口部に接続され、ガス採取管から排出される採取ガスと液とを気液分離手段に導く導管に、内壁面が親水性を有する導管を使用すると、導管の内壁面側を液が、中心部側を採取ガスが流れる。このため液と採取ガスとの接触面積が大きくなり、少ない液で採取ガスに含まれる分析対象成分を効率的に吸収し、又は少ない液量で採取ガスを効率的に洗浄することができる。
【0011】
本発明において、前記ヒートパイプの作動流体の加熱源が、前記ガス流通路内を流通するガスであり、前記ヒートパイプの作動流体の冷却源が、前記ガス流通路外の大気であることが好ましい。
【0012】
ヒートパイプの作動流体の加熱源にガス流通路内を流通するガスを、ヒートパイプの作動流体の冷却源に大気を使用することができれば、特別の熱源を用意する必要がなく現場で直ちに使用することができる。このような分析試料採取装置は、実用性に優れる。
【0013】
本発明において、前記ガス採取管は、前記ヒートパイプにより前記化合物が析出しない温度領域と前記化合物が析出する温度領域とに区分けされ、前記液は、前記ガス採取管に対しては化合物が析出する温度領域にのみ供給されることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記ガス採取管は、少なくとも前記ガス流通路の壁を跨ぐ部分及びその前後が、前記ヒートパイプにより前記化合物が析出しない温度に保持されているのが好ましい。
【0015】
本発明において、前記ガス採取管は、少なくとも前記ガス流通路の壁を跨ぐ部分及びその前後が、前記ヒートパイプにより前記化合物が析出する温度に保持されているのが好ましい。
【0016】
本発明のようにヒートパイプを介して化合物が析出しない温度領域と化合物が析出する温度領域とに区分されたガス採取管の場合、ガス採取管に対し化合物が析出する温度領域にのみ、常時、洗浄液又は吸収液を供給すれば、少ない洗浄液量又は吸収液量で化合物の析出及び/又は付着を防止することができる。また少ない吸収液量で採取ガス中の分析対象成分を吸収すれば分析対象成分の濃度が低下せず、分析精度を高く維持することができる。さらに化合物が析出しない温度領域には、液が供給されないのでその領域の温度が低下せず、その領域に化合物が析出することはない。これにより予期せぬ場所への化合物の析出が防止される。
【0017】
本発明において、前記ヒートパイプは、前記ガス採取管の外壁面に前記ガス採取管と一体的に設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明の分析試料採取装置のようにガス採取管とヒートパイプとを一体化すれば伝熱性能に優れ、さらに分析試料採取装置の構成がシンプルになる。
【0021】
本発明において、前記ガスが、アンモニアを含むガスであり、分析対象成分がアンモニアである。
【0022】
本発明において、前記ガス流通路が、ボイラ排ガスを処理する排煙脱硝装置の出口部の煙道であり、前記ガス流通路内のガスが、前記煙道内のボイラ排ガスである。
【0023】
火力発電所等に設置される排煙脱硝装置の出口部の煙道を流れるボイラ排ガスには、排煙脱硝装置に供給されたアンモニアのうち未消費のアンモニア、いわゆるリークアンモニアが低濃度で含まる。さらにボイラ排ガスには、硫黄酸化物SO
x、多くの煤塵が含まれ、温度が低下するとアンモニア化合物が析出する。これに対して本発明の分析試料採取装置は、常時、ガス採取管に液を流すことでアンモニア化合物の析出及び/又は付着を防止することができる。さらに煤塵、硫黄酸化物SO
xが除去された採取ガスが得られるので、分析装置に妨害物の存在を嫌う高感度の分析装置が使用可能となり、これらにより低濃度のアンモニアを精度よく分析することができる。
【0024】
また本発明は、前記液供給手段を介して洗浄用の液を、前記ガス採取管の先端部側に流し、前記ガス採取管のうち前記化合物が析出しない温度領域と前記化合物が析出する温度領域との境界部を洗浄することを特徴とする前記分析試料採取装置の使用方法である。
【0025】
本発明に係る分析試料採取装置を長時間使用すると、ガス採取管において化合物が析出しない温度領域と化合物が析出する温度領域との境界部に化合物が付着する恐れがある。このため定期的に洗浄用の液をガス採取管の先端部側に流し、前記境界部を洗浄することが好ましい。
【0026】
また本発明は、前記分析試料採取装置と、さらにガス体に含まれる分析対象成分を分析する分析装置と、を備え、前記分析試料採取装置における前記液が、前記化合物を溶解させ、かつ前記分析対象成分を吸収しない液であり、前記分析装置は、前記液で洗浄された採取ガスを分析することを特徴とする採取試料分析装置である。
【0027】
また本発明は、前記分析試料採取装置と、さらに液体に含まれる分析対象成分を分析する分析装置と、を備え、前記分析試料採取装置における前記液が、前記化合物を溶解させ、かつ前記分析対象成分を吸収する吸収液であり、前記分析装置は、前記分析対象成分を吸収した吸収液を分析することを特徴とする採取試料分析装置である。
【0028】
本発明の採取試料分析装置は、試料の形態がガスであっても液であってもよいので、実用的で使い勝手がよい。
【0029】
本発明の採取試料分析方法において、前記採取試料分析装置を用い、前記ガス採取管を介して一定流量のガスを連続的に採取しつつ、前記液供給手段を介して一定流量の前記液を連続的に前記ガス採取管内に供給し、前記液で洗浄された採取ガスをオンラインで分析することができる。
【0030】
本発明の採取試料分析方法において、前記採取試料分析装置を用い、前記ガス採取管を介して一定流量のガスを連続的に採取しつつ、前記液供給手段を介して一定流量の前記吸収液を連続的に前記ガス採取管内に供給し、前記分析対象成分を吸収した吸収液をオンラインで分析することができる。
【0032】
本発明の採取試料分析方法によれば、採取試料の分析をオンライ
ンで行うことが可能
であり、さらに試料の形態がガスであっても液であってもよいので種々の分析計を使用することが可能であり、使い勝手がよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の分析試料採取装置は、簡単な装置構成であり、本発明の分析試料採取装置及びその使用方法を用いることによりガスに含まれる分析対象成分を正確に採取することができる。また採取試料分析装置及び採取試料分析方法によりガスに含まれる分析対象成分を正確に分析することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る採取試料分析装置1の概略構成図である。
図2及び
図3は、
図1のII部拡大図、
図1のIII部の模式図である。また
図4は、本発明の第1実施形態に係る採取試料分析装置1の使用先である火力発電所100の概略構成図である。
【0036】
本発明の第1実施形態の採取試料分析装置1は、分析用の試料ガスを採取するガス採取管11と、ガス採取管11を一定の温度に保持するヒートパイプ25と、ガス採取管11に洗浄液を供給する液供給装置65と、分析可能に採取ガスと洗浄液とを分離するサイクロン60と、試料ガスを分析する分析装置81とを含む。
【0037】
採取試料分析装置1は、火力発電所100のボイラ排ガスの分析、特にボイラ排ガスに含まれる窒素酸化物NOxを除去する排煙脱硝装置109の出口側の排ガス中のアンモニア濃度測定に好適に使用することができる。以下、本発明の第1実施形態の採取試料分析装置1を用いて、排煙脱硝装置109の出口側の排ガス中のアンモニア濃度を測定する場合を例にとり、採取試料分析装置1の構成を詳細に説明する。但し、本発明の第1実施形態に係る採取試料分析装置1は、排煙脱硝装置109の出口側の排ガス中のアンモニア濃度の測定以外にも使用することが可能であり、火力発電所100の構成も以下に示す構成に限定されるものではない。
【0038】
火力発電所100は、微粉炭焚きボイラ101を有し、火炉103で発生する燃焼ガスは、加熱器などの伝熱管105を加熱し、さらに後部煙道部に設置された節炭器107で熱回収され、ボイラ101から排出される。ボイラ101から排出される温度を低下させた燃焼ガス(排ガス)は、排煙脱硝装置109に送られ、ここで排ガスに含まれる窒素酸化物NOxが除去される。
【0039】
排煙脱硝装置109は、選択接触還元方式の排煙脱硝装置であり、脱硝反応器内に脱硝触媒を収納し、脱硝反応器の上流側において排ガス中にアンモニアが供給される。排ガスに含まれる窒素酸化物NOxは、脱硝触媒上でアンモニアと反応し、窒素と水に還元される。
【0040】
排煙脱硝装置109で窒素酸化物NOxが除去された排ガスは、空気予熱器111に送られ、ここでボイラ101の燃焼用空気を予熱する。その後、電気集塵機113で排ガス中の煤塵が徐塵され、さらに排煙脱硫装置115で排ガス中の硫黄酸化物SOxが除去され、煙突117から大気中に放散される。
【0041】
ボイラ101、排煙脱硝装置109、空気予熱器111、電気集塵機113、排煙脱硫装置115及び煙突117は、煙道119で結ばれており、本実施形態では排煙脱硝装置109の出口側の排ガス中のアンモニア濃度を測定すべく、ガス採取管11が排煙脱硝装置109の出口部の煙道119に設置されている。
【0042】
ガス採取管11は、煙道119内を流れる排ガスを採取する装置であり、金属製の円筒パイプからなり、煙道壁(ダクト壁)121に設けられた採取口から先端部12が煙道119内に挿入されており、基端部13は、煙道壁121の外側(大気側)に位置している。煙道119を流れる排ガスは、温度が約300〜400℃であり、排ガス中には、窒素酸化物NOx、硫黄酸化物SOx、アンモニアの他、多量の煤塵を含むので、ガス採取管11は、それに耐えるものでなければならない。
【0043】
ガス採取管11に鉄Fe、バナジウムV、モリブデンMoなどの触媒成分が含まれる場合、排ガス中のアンモニアが、ガス採取管11内で分解する恐れがある。特に排ガス中のアンモニア濃度は、0.1〜5ppm程度と低いためアンモニアの分解には十分注意する必要がある。このためガス採取管11には、ステンレス製パイプ内にアルミニウム製パイプを挿入したガス採取管、又はステンレス製パイプの内面にアルミニウムを蒸着させたガス採取管が好ましい。
【0044】
ガス採取管11の長さ及び大きさは、特に限定されるものではない。ガス採取管11の内径を例示すれば、5〜25mmφ程度である。
【0045】
ガス採取管11のうち煙道壁121を跨ぐ部分及びその前後部分は、ヒートパイプ25を介して所定の温度に保持されている。以下、ヒートパイプ25を介して所定の温度に保持されている領域を温度保持領域15と言う。ガス採取管11の温度保持領域15の長さを例示すれば、煙道壁121を挟み、煙道119内側に100〜300mm程度、煙道119外側に100〜300mm程度であり、全長で400〜600mm程度である。なお、煙道壁121の厚さは200mm程度である。本実施形態においてガス採取管11の先端部12及び基端部近傍14は、非温度保持領域である。非温度保持領域は、ヒートパイプ25を介して所定の温度に保持されていない領域である。
【0046】
本実施形態では、温度保持領域15は、約300℃に保持される。この温度は、ガス採取管11の温度保持領域15でアンモニア化合物が析出しない温度である。なお、ガス採取管11の温度保持領域15の温度は、必ずしも300℃に限定されるものではなく、アンモニア化合物が析出しない温度であればよい。
【0047】
排煙脱硝装置109の出口側の排ガスの場合、アンモニア化合物として酸性硫安(硫酸水素アンモニウム)が生成する。
図5は、ボイラ排ガスにおける硫黄酸化物SO
3の濃度と酸性硫安(硫酸水素アンモニウム)生成温度との関係を示す。
図5より排ガス中のアンモニア濃度が1ppmで、排ガス中の硫黄酸化物SO
3の濃度が10ppmであれば、酸性硫安(硫酸水素アンモニウム)は、約230℃で生成することが分かる。酸性硫安は、アンモニア濃度及び硫黄酸化物SO
3濃度が高い程、高い温度で生成する。
【0048】
ヒートパイプ25は、ガス採取管11のうち温度保持領域15を覆うように、ガス採取管11に設けられており、煙道壁121を跨ぎ、煙道119内及び煙道119外に位置している。本実施形態では、ガス採取管11とヒートパイプ25とが一体化しており、ヒートパイプ25の外周壁35に設けられた固定用フランジ41を介して煙道壁121に固定されている。なお、ガス採取管11及びヒートパイプ25の煙道壁121に対する固定方法は、他の方法であってもよい。
【0049】
ヒートパイプ25は、ウィック式ヒートパイプであり、ガス採取管11と一体化された2重管構造であり、ガス採取管11の外壁19にコンテナと呼ばれる密閉容器を有する。密閉容器は、両端が封止された円筒パイプ27が、ガス採取管13の外壁19に気密状態で固着され形成されている。円筒パイプ27とガス採取管11とで形成される空間部29は、ウィックと呼ばれる毛細管構造となっており、当該空間部29には、作動流体31が充填されている。また円筒パイプ27には、作動流体31の作動状態を確認するために、前記空間部29内の圧力を検出する圧力計39が設けられている。
【0050】
ヒートパイプ25とガス採取管11とを一体化した構造とすると、ヒートパイプ25とガス採取管11との伝熱性に優れる。但し、ヒートパイプは、ガス採取管11と別体であってもよい。ヒートパイプの形状を、中心部をガス採取管11が挿通する挿通孔を設けたパイプ形状とし、ヒートパイプの中心部にガス採取管11を挿通させてもよい。さらにはガス採取管11を覆うようにヒートパイプを巻き付けてもよい。このような構成とすれば、ヒートパイプの製作が容易となり、又は市販のヒートパイプを使用することも可能である。この場合、ヒートパイプとガス採取管11との間に隙間が生じ、ヒートパイプとガス採取管11との間の伝熱性能が低下しないようにする必要がある。
【0051】
ヒートパイプは、ガス採取管13内に配置することも可能であるが、段差が生じるので、本実施形態のように煤塵が多い場合には、段差部に煤塵が溜まり好ましくない。
【0052】
ヒートパイプ25で使用する作動流体は、ガス採取管11を300℃に保持可能であればよい。作動流体としては、熱媒油が例示される。
【0053】
煙道119内に位置するヒートパイプ25の外周壁35には、煙道119内を流れる排ガスとヒートパイプ25との間の伝熱を促進すべく、加熱用フィン45が取り付けられている。加熱用フィン45を設けなくてもよいが、加熱用フィン45を設けることで煙道119内を流れる排ガスとヒートパイプ25との間の伝熱が促進され、結果、ヒートパイプ25をコンパクトにすることができる。
【0054】
上記ヒートパイプ25は、加熱用フィン45が取付けられた部分も含め煙道119内に位置する部分が加熱部となり、煙道119外に位置する部分が冷却部となる。
【0055】
ガス採取管11の基端部近傍14は、ヒートパイプ25で覆われていない。ガス採取管11の基端部近傍14の外壁には、大気によりガス採取管11内の採取ガス(試料ガス)を冷却すべく、冷却用フィン21が取り付けられている。
【0056】
ガス採取管11は、導管51を介して気液分離装置であるサイクロン60と接続する。またガス採取管11には、液供給装置65を介して洗浄液が送られる。
【0057】
導管51は、ガス採取管11の出口部にアダプタ58を介して接続され、ガス採取管11から送られる採取ガス及び洗浄液を気液分離装置であるサイクロン60に導く。導管51は、4フッ化エチレン樹脂の円筒チューブ52からなり、内面が親水性処理されている。円筒チューブ52の内面の親水性処理は、例えば内面に酸化チタンをコーティングし、親水性のコーティング層53を設けることで行える。なお、導管51は、4フッ化エチレン樹脂以外の円筒チューブ52であってもよく、内面の親水性処理もコーティング処理以外の方法であってもよい。
【0058】
導管51は、必ずしも内面が親水性の導管である必要はないが、内面が親水性を有する導管を使用すると、採取ガスと親水性の洗浄液とを同時に流したとき、洗浄液は、導管51の内周面を覆うように液膜54を形成し流れ、採取ガスは、導管51の中心部55を流れる。このように導管51内を洗浄液が液膜54を形成しながら流れる場合、採取ガスとの接触面積が大きく、採取ガスを効率的に洗浄することができる。またアンモニア化合物が析出し、導管51に付着することを防止することができる。
【0059】
アダプタ58は、ゴム弾性を有するフッ素樹脂系の円筒体であり、ガス採取管11及び導管51を差し込むことでガス採取管11及び導管51が連結される。アダプタは、上記アダプタ58に限定されるものではなく、ガス採取管11と導管51、さらには液供給管68を気密及び液密可能に連結できれば他のアダプタであってもよい。またガス採取管11と導管51、さらには液供給管68を気密及び液密可能に連結できればアダプタ以外の方法を用いてもよい。
【0060】
気液分離装置であるサイクロン60は、導管51から送られる採取ガスと洗浄液との混合物を、採取ガスと洗浄液とに分離する。サイクロン60は、内部にボール63を有し、サイクロンの円錐部62とボール63とでトラップを形成し、円錐部62に所定量の洗浄液が溜まると、ボール63が浮き洗浄液が排出され、洗浄液が排出されるとボール63が円錐部62に接し採取ガスの排出を防止する。これにより採取ガスを排出させることなく、洗浄液を排出することができる。
【0061】
サイクロン60で分離された採取ガス及び洗浄液は、それぞれ分析装置81及び液供給タンク66へ送られる。採取ガスと洗浄液とを分離する気液分離装置は、サイクロン60の他、慣性力を利用した衝突式気液分離装置、ルーバー式気液分離装置などを使用することができる。2台以上の気液分離装置を直列に配置してもよく、異なる型式の気液分離装置を直列に配置してもよい。
【0062】
液供給装置65は、液供給タンク66、液供給ポンプ67及び液供給管68とで構成され、液供給管68を通じて洗浄液をガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域に供給する。液供給管68は、L字型の管体70を有しこれがアダプタ58に突き刺され固定されている。液供給管68の先端69は、ガス採取管11の温度保持領域15とガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域との境界に位置するように設置されている。
【0063】
洗浄液は、循環使用されており、ガス採取管11に供給された洗浄液は、採取ガスと一緒に導管51を通じてサイクロン60に送られ、採取ガスと分離され、液供給タンク66に返送される。液供給タンク66は、密閉式のタンクであり、サイクロン60ともパイプ64を通じて気密可能に連結する。
【0064】
洗浄液には、アンモニア化合物を溶解可能でかつ、アンモニアを吸収しない洗浄液が使用される。本実施形態では、アンモニア化合物として酸性硫安(硫酸水素アンモニウム)が挙げられ、洗浄液としてアルカリ性の水、例えば水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。洗浄液で洗浄された採取ガスは、アンモニア化合物及び煤塵を含まず、アンモニアガスを含むこととなる。
【0065】
分析装置81は、サイクロン60で洗浄液が分離された採取ガス(試料ガス)に含まれるアンモニアを分析する。ここで使用可能な分析装置は、採取ガスに含まれるアンモニアをオンラインで分析可能であれば、特定の分析装置に限定されるものではない。要求される精度に応じた分析装置を使用することが必要なことは当然である。分析装置81に送られる採取ガス(試料ガス)は、煤塵、SO
xが除去されているため高精度の分析装置を使用することができる。
【0066】
ここで使用可能な分析装置としては、公知のガス分析計を使用することができる。ガス分析計としては、光源にレーザーを使用し吸光強度からアンモニア濃度を検出するレーザー式ガス分析計、NO
x−NH
3の還元反応によるNO
x濃度の減少を測定することでNH
3濃度を検出するNO
x−NH
3還元差動方式の煙道排ガスアンモニア測定装置(例えば株式会社島津製作所製)、酸化触媒処理後の増加窒素酸化物成分をアンモニア濃度として科学発効法により測定するアンモニア測定装置(例えば株式会社堀場製作所製)が例示される。
【0067】
分析装置81には、ガス流量計、吸引ポンプを備えないタイプの分析装置があるが、そのような分析装置の場合、別途、ガス流量計、吸引ポンプを設ければよい。
【0068】
次に上記採取試料分析装置1の排ガス中のアンモニア濃度測定要領について説明する。
【0069】
分析装置81を作動させ、ガス採取管11を通じて排ガスを連続的に一定の流量で採取する。同時に、液供給装置65を通じて、ガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域に洗浄液を一定の流量で連続的に供給する。ガス採取管11を通じて採取された採取ガスは、ガス採取管11及びサイクロン60につながる導管51を流通する過程で、洗浄液と接触し洗浄される。この過程で煤塵、SO
xは、洗浄液に吸収される。サイクロン60で洗浄液が分離された採取ガスは、ガス分析装置81でアンモニア濃度が測定される。
【0070】
以上のように採取試料分析装置1を使用し、一定流量の採取ガスを採取し、かつ一定流量の洗浄液を供給することで、オンラインで排ガス中のアンモニアガスを分析することができる。分析装置81に送られる採取ガスは、洗浄液で洗浄され、アンモニア化合物及び煤塵が除去されているので精度よく分析することができる。排ガスに含まれる煤塵がアンモニアを吸着している場合もあるが、本採取試料分析装置1を使用することで煤塵も洗浄されるので、煤塵に吸着するアンモニアも分析対象とすることができる。
【0071】
従来の採取試料分析装置においても、洗浄液による洗浄が行われているが、従来のガス採取管は、温度保持領域と非温度保持領域とに区分けされておらず、本実施形態の温度保持領域に該当する部分にも洗浄液が供給されていた。このため従来の方法では、ガス採取管の同じ場所が、約300℃の温度となったり100℃以下の温度になったりする。このように加温、冷却を繰り返すと、アンモニア化合物が析出し、ガス採取管内に付着し易くなる。さらに温度が大きく変化するため洗浄液による洗浄も難しく、析出したアンモニア化合物を十分に洗浄することができない。
【0072】
これに対して、本採取試料分析装置1は、ガス採取管11が温度保持領域15と非温度保持領域とに区分けされ、温度保持領域15は常に一定温度に保持されているのでこの領域にアンモニア化合物が析出することはない。一方、基端部13側の非温度保持領域は、アンモニア化合物が析出する温度領域であるが、この部分には洗浄液が常時供給されているので、アンモニア化合物が析出することはない。仮に析出したとしても洗浄液に溶解するためガス採取管11内にアンモニア化合物が付着することはない。これによりアンモニア化合物の析出、付着による不具合を解消することができる。
【0073】
ガス採取管11の温度保持領域15をヒートパイプ25に代え、電気ヒータ、熱媒装置を使用して行うことも考えられるが、共に温度保持手段として好ましくない。
【0074】
電気ヒータの場合、温度分布の大きさが懸念される。局所的に温度が低下するとアンモニア化合物が析出する。一方で、アンモニア化合物が析出しないように温度を高めに設定した場合、500℃以上の場所ができるとアンモニアが分解してしまう。さらに通常、煙道119付近には、電源がないため電気ヒータは使い難い。熱媒装置は、電気ヒータに比較して温度の均一性に優れるが、熱媒を加熱する装置、熱媒を循環又は撹拌する装置が必要となり、装置が大型化し、かつ構成が複雑化する。
【0075】
これに対してヒートパイプ25は、簡単な構造でコンパクトながら温度の均一性、熱伝達性に優れる。さらには電源も不要であり、ガス採取管11の温度保持手段として優れる。ヒートパイプ25を動作させるには、加熱源と冷却源が必要であるが、加熱源には煙道119内を流れる排ガスを、冷却源には大気を利用することができるので簡単に実用化することができる。
【0076】
本採取試料分析装置1も長期間の運転に伴い、ガス採取管11の温度保持領域15とガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域との境界部にアンモニア化合物が付着する恐れがある。よって定期的に、液供給装置65を介して洗浄用の液を、ガス採取管11の先端部12側に流し、ガス採取管11の温度保持領域15とガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域との境界部さらには温度保持領域15を洗浄することが好ましい。洗浄用の液としては、水が挙げられる。なおこの洗浄操作は、後述の他の実施形態に係る採取試料分析装置にも当てはまる。
【0077】
図6は、本発明の第2実施形態に係る採取試料分析装置2の概略構成図である。本発明の第1実施形態に係る採取試料分析装置1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0078】
第2実施形態に係る採取試料分析装置2は、第1実施形態に係る採取試料分析装置1と同様に、連続的に排ガスを採取しオンラインで分析する。但し、第1実施形態に係る採取試料分析装置1が洗浄後の採取ガスを分析するのに対して、第2実施形態に係る採取試料分析装置2では、吸収液を分析する。このため第1実施形態に係る採取試料分析装置1では、ガス採取管11に洗浄液を供給するが、第2実施形態に係る採取試料分析装置2では、ガス採取管11に吸収液を供給する。
【0079】
第2実施形態に係る採取試料分析装置2では、採取ガスと吸収液とを接触させ、採取ガスに含まれるアンモニアを吸収液で吸収し、この吸収液を分析装置で分析しアンモニア濃度を求める。吸収液は、第1実施形態に係る採取試料分析装置1の洗浄液と同様に供給される。供給された吸収液は、採取ガスに含まれるアンモニアを吸収する役目の他、ガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域内にアンモニア化合物が析出しないように当該領域を洗浄し、あるいは当該領域に析出したアンモニア化合物を溶解する役目を担う。
【0080】
ここで使用される吸収液は、採取ガスに含まれるアンモニアガスを吸収し、アンモニア化合物を溶解させ、アンモニア化合物に含まれるアンモニア、アンモニウムイオン等を吸収する必要がある。このような吸収液には、ホウ酸水溶液など酸性の水溶液が例示される。
【0081】
吸収液は、第1実施形態に係る採取試料分析装置1と同様にガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域に供給された後、導管51を介してサイクロン61に送られ、ここで採取ガスと分離されるが、分離された吸収液は、循環使用されることなく分析装置83に送られる。ここで使用されるサイクロン61は、ボール63が装着されておらず、吸収液は連続的に排出される。
【0082】
図1に示す第1実施形態に係る採取試料分析装置1では、基本的に分析装置81が備える吸引ポンプを使用し採取ガスを吸引するため、吸引ポンプが設けられていないが、第2実施形態に係る採取試料分析装置2では、サイクロン61の後流側に吸引ポンプ75を設置し、この吸引ポンプ75を用いて採取ガスを吸引する。さらに吸引ポンプ75の後流側にガスメータ76を設置し、吸引ガス量を測定する。
【0083】
分析装置83は、吸収液に含まれるアンモニアをオンラインで分析可能な公知の分析計を使用可能であり、分析精度等に応じて適宜選択して使用すればよい。分析装置83としては、フローインジェクション(FIA)分析装置が例示される。FIA分析装置は、分析対象成分を含む液体試料、本実施形態では、アンモニアを含む吸収液と試薬とにより発色(退色)反応を生じさせ、この溶液の吸光光度からアンモニア濃度を測定する。
【0084】
次に上記採取試料分析装置2の排ガス中のアンモニア濃度測定要領について説明する。
【0085】
吸引ポンプ75を作動させ、ガス採取管11を通じて排ガスを連続的に一定の流量で採取する。同時に、液供給装置65を通じて、ガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域に吸収液を一定の流量で連続的に供給する。ガス採取管11を通じて採取された採取ガスは、ガス採取管11及びサイクロン61につながる導管51を流通する過程で、吸収液と接触しアンモニアは吸収液に吸収される。サイクロン61で分離された吸収液は、分析装置83によりアンモニア濃度が測定される。
【0086】
以上のように採取試料分析装置2を使用し、一定流量の採取ガスを採取し、かつ一定流量の吸収液を供給することで、オンラインで排ガス中のアンモニアガスを分析することができる。ヒートパイプ25の効果、吸収液を供給することによるアンモニア化合物の析出防止効果は、第1実施形態に係る採取試料分析装置1のところで説明した通りである。また内面が親水性を有する導管51の作用効果も、第1実施形態に係る採取試料分析装置1のところで説明した通りであり、吸収液量を少なくすることができるので液中のアンモニア濃度が高まり、分析精度が向上する。
【0087】
図7は、本発明の第3実施形態に係る採取試料分析装置3の概略構成図である。
図8は、採取試料分析装置3を用いた採取ガスの分析手順を示すフローチャートである。本発明の第1及び第2実施形態に係る採取試料分析装置1、2と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
第3実施形態に係る採取試料分析装置3は、第1及び第2実施形態に係る採取試料分析装置1、2と異なり、排ガスの採取及び分析をバッチ操作で行う。このため第3実施形態に係る採取試料分析装置3は、ガス採取管11を介して採取された採取ガスに含まれるアンモニアを吸収液に吸収させるための吸収ビン77、採取ガスを吸引するための吸引ポンプ75、及びガスメータ76を備える。導管51の一端部が吸収液に浸漬するように吸収ビン77に挿入され、吸収ビン77の気相部と吸引ポンプ75とがチューブ78を介して接続する。ガスメータ76は、吸引ポンプ75の排気側に接続されている。
【0089】
第3実施形態に係る採取試料分析装置3では、ガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域が極端に短く、ガス採取管11の基端部13にボール弁タイプの三方弁79が取付けられている。本実施形態において、ガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域は、できるだけ短い方が好ましく、三方弁79を取付けることができるのであればない方がよい。三方弁79に液供給管68及び導管51が接続する。
【0090】
第3実施形態に係る採取試料分析装置3では、排ガス中のアンモニアを吸収した吸収液と三方弁79及び導管51を洗浄した洗浄液との混合液を分析する。アンモニアを吸収する吸収液は、第2実施形態に係る採取試料分析装置2で使用する吸収液と同じものを使用することができ、吸収液と洗浄液とは同じ種類の液を使用すればよい。
【0091】
吸収液と洗浄液との混合液に含まれるアンモニアの分析方法は、特定の方法に限定されるものではなく、公知の分析装置、例えば液体クロマトグラフを使用することができる。
【0092】
次に上記採取試料分析装置3の排ガス中のアンモニア濃度測定要領について説明する。
【0093】
ガス採取管11と導管51とが連通し、洗浄液は供給不能となるように三方弁79をセットし、吸引ポンプ75を作動させ、ガス採取管11を通じて所定量の排ガスを吸引し、吸収液に通じアンモニアを吸収させる(ステップS1:吸収工程)。その後、液供給管68と導管51とが連通し、ガス採取管11と導管51は連通しない状態となるように三方弁79を切替え、吸引ポンプ75を作動させた状態で、洗浄液を供給し三方弁79及び導管51を洗浄する(ステップS2:洗浄工程)。供給された洗浄液は、吸収ビン77に送られ吸収液と混合される。洗浄工程終了後、吸収ビン77の吸収液を十分に撹拌し(ステップS3:混合工程)、この吸収液(混合液)を分析する(ステップS4:分析工程)。
【0094】
以上のように採取試料分析装置3を使用し、一定量の採取ガスを採取し、かつ三方弁79及び導管51を洗浄液で洗浄することで、バッチ操作により排ガス中のアンモニアガスを精度よく分析することができる。本実施形態では、ガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域が非常に短いので、この部分の洗浄を省略することができる。ヒートポンプ25の効果、洗浄液の効果は、第1及び第2実施形態に係る採取試料分析装置1、2のところで説明した通りである。
【0095】
図7に示す採取試料分析装置3では、ガス採取管11の基端部13に三方弁79を接続し、これに液供給管68及び導管51を接続するが、ガス採取管11の基端部13に直接、液供給管68及び導管51を接続し、各々の管に弁を設け、切替えるようにしてもよい。排ガスには多くの煤塵が含まれるので、使用する弁は、ボール弁などのように煤塵で閉塞し難いものが好ましい。
【0096】
またガス採取管11の基端部13側の構造、導管51及び液供給管68の接続要領を第1実施形態に係る採取試料分析装置1と同じとし、一定量の排ガスを吸引後、洗浄液を供給してガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域及び導管51を洗浄するようにしてもよい。また洗浄液を供給するとき、吸引ポンプ75を作動させてもよい。
【0097】
また
図7に示す採取試料分析装置3では、吸収液及び洗浄液にアンモニアを吸収させ、アンモニアを吸収した吸収液(含む洗浄液)を分析するが、採取ガスを分析するようにしてもよい。具体的には、吸収液及び洗浄液に第1実施形態で使用した洗浄液を用い、洗浄液を通過した後の採取ガス及び洗浄時に発生するアンモニアガスをガスホルダー等に集め、このガスに含まれるアンモニアを分析してもよい。
【0098】
図9は、本発明の第4実施形態に係る採取試料分析装置4の概略構成図である。本発明の第1〜第3実施形態に係る採取試料分析装置1、2、3と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0099】
第4実施形態に係る採取試料分析装置4は、第1実施形態に係る試料ガス分析装置1と同様に、連続的に排ガスを採取し、かつ連続的に洗浄液を供給し、洗浄液で洗浄された後の採取ガスをオンラインで分析する。このため第4実施形態に係る採取試料分析装置4と第1実施形態に係る採取試料分析装置1とは、装置の基本構成は同一である。但し、第4実施形態に係る採取試料分析装置4と第1実施形態に係る採取試料分析装置1とでは、ガス採取管11の温度が大きく異なる。これに伴いヒートパイプ26の構造及び液供給管の先端位置が第1実施形態に係る採取試料分析装置1と異なる。
【0100】
第4実施形態に係る採取試料分析装置4では、ガス採取管11の温度保持領域の温度を100℃以下の温度に保持する。これは、ガス採取管11の温度保持領域をアンモニア化合物が析出する温度でかつ洗浄液が蒸気とならない温度とし、この温度保持領域を洗浄液で確実に洗浄可能とすることで、排ガスの安定採取及び分析精度向上を実現するものである。
【0101】
第4実施形態に係る採取試料分析装置4において、ガス採取管11の温度保持領域15は、煙道壁121を跨ぐ部分及びその前後部分であり、具体的にはヒートパイプ26で覆われた領域である。ガス採取管11の温度保持領域15の全長は、第1実施形態に係る採取試料分析装置1のガス採取管11と同じであるが、第1実施形態に係る採取試料分析装置1のガス採取管11に比較し、煙道119内側の長さが短く、逆に煙道119外側の長さが長い。ガス採取管11の先端部12及び基端部近傍14は、非温度保持領域である。非温度保持領域は、ヒートパイプ26を介して所定の温度に保持されていない領域である。
【0102】
ヒートパイプ26は、第1実施形態に係る採取試料分析装置1のヒートパイプ25と同様に、ガス採取管11の外壁19に一体的に設けられている。
【0103】
ヒートパイプ26は、ウィック式のヒートパイプであり、ガス採取管11を覆う円筒部28の他に、円筒部28に直交するように設けられた冷却部30を有する。冷却部30は、煙道119外に位置する円筒部28に、円筒部28と連通するように円筒部28と一体的に設けられている。また冷却部30の外周面には、放熱を促進するための冷却用フィン37が設けられている。
【0104】
ヒートパイプ26で使用する作動流体は、ガス採取管11を100℃以下に保持可能であればよく、水、メタノール、アセトンが例示される。なお、ヒートパイプ26とガス採取管11とを別体としてもよい点などは、第1実施形態に係る採取試料分析装置1のヒートパイプ25と同じであるので説明を省略する。
【0105】
液供給管68は、ガス採取管11の温度保持領域15全体を洗浄可能に、先端部69がガス採取管11の温度保持領域15の煙道119側端部に位置するように設けられている。その他、液供給装置65、導管51、サイクロン60の構造、仕様は、第1実施形態に係る採取試料分析装置1と同じである。また洗浄液も第1実施形態に係る採取試料分析装置1で使用する洗浄液と同じである。
【0106】
採取試料分析装置4の排ガス中のアンモニア濃度測定要領は、第1実施形態に係る採取試料分析装置1の排ガス中のアンモニア濃度測定要領と同じである。
【0107】
第1実施形態に係る採取試料分析装置1では、ガス採取管11の温度保持領域15をアンモニア化合物が析出しない温度とし、アンモニア化合物が析出する恐れがあるガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域を洗浄液で洗浄する。これに対して、第4実施形態に係る採取試料分析装置4では、ガス採取管11の温度保持領域15をアンモニア化合物が析出する温度でかつ洗浄液が蒸気とならない温度とし、この温度保持領域15を洗浄液で確実に洗浄する。なお、第4実施形態に係る採取試料分析装置4においてもガス採取管11の基端部13側の非温度保持領域は、洗浄液で洗浄される。
【0108】
上記のように第1実施形態に係る採取試料分析装置1と第4実施形態に係る採取試料分析装置4とでは、ガス採取管11の温度が大きく異なり、これに伴いヒートパイプ25、26の構造及び液供給管の先端部69の位置が異なる。しかしながらヒートパイプ25、26を用いて、ガス採取管11の特定の領域を温度保持領域15として常に一定の温度に保持し、かつアンモニア化合物が析出する温度領域を洗浄液で洗浄することで排ガスの安定採取及び分析精度向上を実現する点は同じである。
【0109】
図10は、本発明の第5実施形態に係る採取試料分析装置5の概略構成図である。本発明の第1〜第4実施形態に係る採取試料分析装置1、2、3、4と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0110】
第5実施形態に係る採取試料分析装置5は、第4実施形態に係る採取試料分析装置4と同様の装置を使用し、第2実施形態に係る採取試料分析装置2と同じく、オンラインで吸収液を分析する。このため第5実施形態に係る採取試料分析装置5は、第4実施形態に係る採取試料分析装置4と比較して、サイクロン61廻りの構成が異なり、サイクロン61廻りの構成は、第2実施形態に係る採取試料分析装置2と同一である。
【0111】
第5実施形態に係る採取試料分析装置5で使用する吸収液及び洗浄液は、第2実施形態に係る採取試料分析装置2で使用する吸収液及び洗浄液と同じである。
【0112】
第5実施形態に係る採取試料分析装置5の排ガス中のアンモニア濃度測定要領は、第2実施形態に係る採取試料分析装置2と同じである。第2実施形態に係る採取試料分析装置2と比較してガス採取管11の温度保持領域15の温度が異なるが、排ガスを安定的に採取できる点及び高い分析精度を実現できる点は同じである。
【0113】
図11は、本発明の第6実施形態に係る採取試料分析装置6の概略構成図である。本発明の第1〜第5実施形態に係る採取試料分析装置1、2、3、4、5と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0114】
第6実施形態に係る採取試料分析装置6は、第4実施形態に係る採取試料分析装置4と同様の装置を使用し、第3実施形態に係る採取試料分析装置3と同様に排ガスの採取及び分析をバッチ操作で行う。このため第6実施形態に係る採取試料分析装置6は、第4実施形態に係る採取試料分析装置4と比較して、ガス採取管11、ヒートパイプ26及び液供給管68の構造、配置は、同一であるが、導管51よりも下流側及び液供給タンク66は、第3実施形態に係る採取試料分析装置3と同じである。
【0115】
第6実施形態に係る採取試料分析装置6で使用する吸収液及び洗浄液は、第3実施形態に係る採取試料分析装置3で使用する吸収液及び洗浄液と同じである。
【0116】
分析計は、第3実施形態に係る採取試料分析装置3と同様に液体クロマトグラフを使用することができる。
【0117】
第6実施形態に係る採取試料分析装置6の排ガス中のアンモニア濃度測定要領は、第3実施形態に係る採取試料分析装置3のアンモニア濃度測定要領と基本的に同じである。
【0118】
第6実施形態に係る採取試料分析装置6は、第3実施形態に係る採取試料分析装置3と比較して、ガス採取管11の温度保持領域15の温度が低い点、ガス採取管11の出口部に切換弁である三方弁79が設けられていない点で、第3実施形態に係る採取試料分析装置3と異なるが、技術的思想、作用効果は基本的に同じであり、排ガスを安定的に採取しさらに高い分析精度を実現できる。
【0119】
また
図11に示す採取試料分析装置6では、吸収液及び洗浄液にアンモニアを吸収させ、アンモニアを吸収した吸収液(含む洗浄液)を分析するが、ガスを分析するようにしてもよい点、その要領は、第3実施形態に係る採取試料分析装置3のところに記した通りである。
【0120】
以上、第1〜第6実施形態に係る採取試料分析装置を用いて説明したように、本発明に係る採取試料分析装置は、ヒートパイプ25、26を介してガス採取管11を所定温度に保持することができるので、化合物が析出する領域が特定され洗浄液による洗浄が容易となる。さらに化合物が析出する温度領域に常時、液を流しておくことで化合物の析出及び/又は付着を防止することが可能であり、分析試料を安定的に採取可能であると共にガスに含まれる分析対象成分を正確に採取することができる。
【0121】
ヒートパイプ25、26は、熱伝達性、温度の均一性に優れる一方で、温度を均一化させるための手段さらには電源も不要であり、作動流体の加熱源にガス流通路内を流通するガスを、作動流体の冷却源に大気を使用すれば特別の熱源を用意する必要がなく実用性に優れる。なお、上記実施形態では、ウィック式のヒートパイプを使用する例を示したが、ヒートパイプは、他の種類のヒートパイプ、例えば自励振動ヒートパイプを用いてもよい。
【0122】
また本発明によれば、採取試料の分析をオンライン又はオフラインで行うことが可能なため用途に応じて好ましい方法を採用することができる。さらに試料の形態がガスであっても液であってもよいので種々の分析計を使用することが可能であり、使い勝手がよく実用性に優れる。なお、上記実施形態では、火力発電所の煙道排ガスを例として、本発明に係る採取試料分析装置を説明したが、本発明に係る分析試料採取装置及びその使用方法、採取試料分析装置及び採取試料分析方法は、他のガスの採取及び分析にも適用可能なことは言うまでもない。
【0123】
図面を参照しながら好適な採取試料分析装置及びその使用方法について説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。