(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876615
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】飛散塩分捕獲装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
G01N1/02 F
G01N1/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-513543(P2015-513543)
(86)(22)【出願日】2014年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2014051650
(87)【国際公開番号】WO2015111212
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2015年3月11日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】住谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和文
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
【審査官】
後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3163165(JP,U)
【文献】
特開平10−318908(JP,A)
【文献】
実開昭54−178586(JP,U)
【文献】
実公昭49−044153(JP,Y1)
【文献】
特開平09−210942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中に飛散している塩分を捕獲可能であるとともに通気性を有する素材と、該素材を筒状にして立てた状態で保持する保持体とを有する飛散塩分捕獲体と、
前記飛散塩分捕獲体を収容し、前記素材に導風する導風口が設けられた箱と、
を備え、
前記保持体は、
前記素材が巻き付けられ、網状に設けられた筒部と、
前記素材の下に設けられ、前記素材から落ちた塩分を受ける受け皿と、を有し、
前記導風口が前記筒部の径方向外側において前記素材の周囲を囲うように前記箱に設けられている飛散塩分捕獲装置。
【請求項2】
前記保持体は、
前記筒部の下部から下方に延び、前記受け皿を支持する軸部
を備える請求項1に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項3】
前記導風口にはガラリが設けられている請求項1に記載の飛散塩分捕獲装置。
【請求項4】
前記飛散塩分捕獲体には、方位を示す指標が記されている請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の飛散塩分捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛散塩分量を測定するために大気中に飛散している塩分を捕獲する飛散塩分捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電系統の絶縁碍子や鉄塔等の海塩粒子による塩害の予測を行うために、大気中に飛散している塩分(以下、単位体積あたりに含まれる塩分を気中塩分量、これに風速を乗じたものを飛散塩分量という)の量(飛散塩分量)を測定する必要があり、そのためには、大気中に飛散している塩分を捕獲する必要がある。JIS Z2382で規定されているドライガーゼ法は、窓が空いた木枠にガーゼをはめ込んで雨に濡れない風通しの良い場所に設置し、ガーゼに付着した塩分の量を測定するというものである。また、特許文献1に記載の海塩粒子(気中塩分)の捕捉分析方法は、海塩粒子よりも目が細かいフィルタを通して大気を吸引することにより、海塩粒子をフィルタで捕捉するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−112719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の気中塩分捕獲装置では、風速に関わらず空気の吸引量が一定であることから、飛散塩分量を求めるためには風速を測定してその測定値に基づいて計算を行う必要がある。また、上記ドライガーゼ法では、ガーゼを百葉箱内に設置する場合には、面状に張られたガーゼを一方向に向けて設置していたため、特定方向から飛来する飛散塩分しか捕獲できない。従って、飛散塩分の捕獲量が少なくなることで飛散塩分量を正確に測定できない、飛来方向毎に飛散塩分量を測定できないといった課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、風速に応じた量の塩分を捕獲できると共に、様々な方向から飛来する飛散塩分を捕獲できる飛散塩分捕獲装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る飛散塩分捕獲装置は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能であるとともに通気性を有する素材と、該素材を筒状にして立てた状態で保持する保持体とを有する飛散塩分捕獲体
と、前記飛散塩分捕獲体を収容し、前記素材に導風する導風口が設けられた箱と、を備え、前記保持体は、前記素材が巻き付けられ、網状に設けられた筒部
と、前記素材の下に設けられ、前記素材から落ちた塩分を受ける受け皿と、を有
し、前記導風口が前記筒部の径方向外側において前記素材の周囲を囲うように前記箱に設けられている。
【0007】
前記飛散塩分捕獲装置において
、前記保持体は、前記筒部の下部から下方に延び、前記受け皿を支持する軸部を備えてもよい。
【0008】
前記飛散塩分捕獲装置において、前記導風口にはガラリが設けられてもよい。さらに、前記飛散塩分捕獲体には、方位を示す指標が記されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、風速に応じた量の塩分を捕獲できると共に、様々な方向から飛来する飛散塩分を捕獲できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置を示す縦断面図である。
【
図3】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置の内部を示す斜視図である。
【
図4】一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置の作用を示す平断面図である。
【
図5】一実施形態に係る飛散塩分捕捉装置の作用を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10を示す斜視図である。また、
図2は、飛散塩分捕獲装置10を示す縦断面図であり、
図3は、飛散塩分捕獲装置10の内部を示す斜視図である。これらの図に示すように、飛散塩分捕獲装置10は、百葉箱1と、百葉箱1内に設置された飛散塩分捕獲体20とを備えている。
【0012】
百葉箱1は、直方体状の箱であり、四つの側面にガラリ2が設けられている。ガラリ2は、奥側へかけて上側に約45°で傾斜する整流板が縦に並んだ構成である。また、百葉箱1の上面には、飛散塩分捕獲体20を箱内に出し入れするための蓋3が設けられている。この蓋3の一辺がヒンジ8(
図2参照)を介して百葉箱1の上端の一辺に取り付けられており、蓋3のヒンジ8とは反対側の一辺と百葉箱1の上端の一辺とが蝶番9で着脱可能に固定されている。なお、飛散塩分捕獲体20を百葉箱1の下部から取り替えるようにして、蓋3を省略してもよい。
【0013】
図2及び
図3に示すように、飛散塩分捕獲体20は、通気性を有し、飛散する塩分を捕獲可能であるガーゼ22と、ガーゼ22が巻き付けられたガーゼホルダー24と、ガーゼホルダー24に支持された受け皿26とを備えている。ガーゼ22には、非導電性のインクにより方位が記されている。
【0014】
ガーゼホルダー24は、網状の円筒体24Aと、円筒体24Aの上下両端を閉塞する円板状の蓋部24B、24Cと、蓋部24B、24Cの上下の同軸上に設けられた軸部28A、28Bとを備えている。蓋部24Bの中心に軸部28Aの下端が結合され、蓋部24Cの中心に軸部28Bの上端が結合されている。また、受け皿26は、有底の円筒状の部材であり、その中心に軸部28Bが結合されている。この受け皿26は、蓋部24Bよりも大径であり、ガーゼ22から落ちた塩分が溜まるように蓋部24Bの近傍に配されている。
【0015】
百葉箱1の底部には、一組の対辺の中央部同士を結合する梁材4が設けられており、この梁材4の長手方向中央部に円筒状の軸受部5が鉛直に取り付けられている。この軸受部5に飛散塩分捕獲体20の軸部28Bが挿入されることにより、飛散塩分捕獲体20が、百葉箱1内で鉛直に保持される。
【0016】
また、百葉箱1の上部には、一組の対辺の中央部同士を結合する細長い板材6が設けられており、この板材6の長手方向中央部には、幅方向一端から中央まで延びる長穴6Aが形成されている。また、板材6の長手方向中央部にはロック板7が鉛直軸周りに回転可能に設けられている。このロック板7は、細長い板材であり、長手方向一端部に回転軸7A(
図3参照)が設けられ、長手方向他端部にロックピン7Bが設けられている。このロックピン7Bは、ロック板7の長手方向他端部と板材6とに開けられた孔に抜き挿しされ、当該孔に挿入されると拡径した頭部がロック板7に係合する。ここで、ロック板7が長穴6Aと直交する状態で、ロック板7と板材6とのロックピン7Bの挿入孔の位置が揃い、ロック板7と長穴6Aの一端部とが軸部28Aを挟み込んで固定する。一方、ロック板7が長穴6Aと重ならない状態で、軸部28Aを長穴6Aから抜き出すことが可能になる。
【0017】
ここで、軸部28Bの軸受部5への挿入長さは、上側の蓋部24Bと板材6との間隔より短くなっている。また、板材6と百葉箱1の側面との間隔は、ガーゼホルダー24の直径よりも広くなっている。これにより、ロック板7により軸部28Aの固定を解除し、飛散塩分捕獲体20を、軸部28Bが軸受部5から抜き出されるように引き上げて軸部28Aを長穴6Aから抜き出してから、板材6と百葉箱1の側面との間を通して引き上げることにより、百葉箱1内から取り出すことができる。一方、飛散塩分捕獲体20を、板材6と百葉箱1の側面との間を通して降ろし、軸部28Aを長穴6Aの奥まで挿入してから、軸部28Bが軸受部5に挿入されるように降ろし、ロック板7により軸部28Aを固定することにより、百葉箱1内に設置できる。
【0018】
図4は、飛散塩分捕獲装置10の作用を示す平断面図である。この図に示すように、百葉箱1の四面にガラリ2が設けられているため、風向にかかわらず風が百葉箱1内を吹き抜ける。また、百葉箱1の中心において、ガーゼ22がガーゼホルダー24により円筒状に立てた状態で保持されているため、風向にかかわらず百葉箱1内を吹き抜ける風がガーゼ22を通過する。これにより、風向に関わらずガーゼ22には飛散塩分が付着する。また、風速に応じた量の飛散塩分がガーゼ22に付着する。
【0019】
図5は、飛散塩分捕獲装置10の作用を示す縦断面図である。この図に示すように、百葉箱1の四面のガラリ2は、奥側へかけて上側に約45°で傾斜する整流板が縦に並んだ構成であることから、百葉箱1内を風が吹き抜ける一方で、百葉箱1内への雨の降り込みが防止される。これにより、設置場所の屋根の有無にかかわらず、風速に応じた量の飛散塩分がガーゼ22に付着すると共に、ガーゼ22に付着した塩分が雨により洗い流されることが防止される。
【0020】
以上説明したように、本実施形態に係る飛散塩分捕獲装置10は、大気中に飛散している塩分を捕獲可能であるガーゼ22と、ガーゼ22を筒状にして立てた状態で保持するガーゼホルダー24とを有する飛散塩分捕獲体20を備える。即ち、ガーゼ22を全方位に向けて曝露することによって、風速に応じた量の飛散塩分を、その飛来方向にかかわらずガーゼ22で捕獲できる。
【0021】
また、ガーゼホルダー24は、ガーゼ22が巻き付けられる円筒体24Aと、円筒体24Aの下部から下方に延びる軸部28Bとを備え、軸部28Bに支持され、ガーゼ22から落ちた塩分を受ける受け皿26を備える。これによって、ガーゼ22から受け皿26に落ちた塩分量を加算してガーゼ22の捕獲塩分量を測定することができ、飛散塩分量の測定の精度を高めることができる。
【0022】
また、飛散塩分捕獲体20が、側面にガラリ2が設けられた百葉箱1内に設置されていることにより、ガーゼ22に、設置場所の屋根の有無にかかわらず雨の影響を受けることがないように、風速に応じた量の塩分を付着させることができる。
【0023】
さらに、飛散塩分捕獲体20には、方位を示す指標が記されていることにより、各方位毎に飛散塩分量を測定することが可能になる。
【0024】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、上記実施形態では、飛散塩分捕獲体20を円筒状としたが角筒状等の他の筒形状としてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 百葉箱、2 ガラリ、3 蓋、4 梁材、5 軸受部、6 板材、6A 長穴、7 ロック板、7A 回転軸、7B ロックピン、8 ヒンジ、9 蝶番、10 飛散塩分捕獲装置、20 飛散塩分捕獲体、22 ガーゼ、24 ガーゼホルダー、24A 円筒体、24B、24C 蓋部、26 受け皿、28A、28B 軸部