特許第5876616号(P5876616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5876616
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   H01M2/16 M
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-516296(P2015-516296)
(86)(22)【出願日】2015年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2015059065
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-82047(P2014-82047)
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510157580
【氏名又は名称】東レバッテリーセパレータフィルム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水野 直樹
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/133074(WO,A1)
【文献】 特開2013−122009(JP,A)
【文献】 特開2001−266942(JP,A)
【文献】 特開2012−104422(JP,A)
【文献】 特表2012−522669(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/114626(WO,A1)
【文献】 特許第4988973(JP,B1)
【文献】 特許第5129895(JP,B2)
【文献】 Fu LIU et al.,Progress in the production and modification of PVDF membranes,Journal of Membrane Science,2011年,375,pp. 1-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜の少なくとも片面にフッ素系樹脂と無機粒子を含む三次元網目状の電極接着性を有する改質多孔層が積層され、無機粒子の含有量はフッ素系樹脂と無機粒子の合計に対して40体積%以上、70体積%未満であり、フッ素系樹脂の結晶化度が36%以上、70%未満であるとともに、前記フッ素系樹脂が重量平均分子量0.9×10〜1.5×10のポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体である電池用セパレータ。
【請求項2】
式(1)を満足する請求項1に記載の電池用セパレータ。
20≦Y−X≦100・・・・・式(1)
Xは多孔質膜の透気抵抗度(sec/100ccAir)
Yは電池用セパレータ全体の透気抵抗度(sec/100ccAir)
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜の厚さが25μm以下である請求項1又は2に記載の電池用セパレータ
【請求項4】
前記無機粒子がアルミナ、チタニア、ベーマイトからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかに記載の電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極接着性に優れた改質多孔層を有する電池用セパレータであり、且つ、耐熱性に優れたセパレータに関する。特に、リチウムイオン電池用セパレータとして有用な電池用セパレータである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂微多孔膜は、物質の分離や選択透過及び隔離材等として広く用いられている。たとえば、リチウムイオン二次電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、又はポリマー電池に用いる電池用セパレータや、電気二重層コンデンサ用セパレータ、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、又は精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料などである。特にリチウムイオン二次電池用セパレータとしては、電解液含浸によりイオン透過性を有し、電気絶縁性、耐電解液性及び耐酸化性に優れ、電池異常昇温時に120〜150℃程度の温度において電流を遮断し、過度の昇温を抑制する孔閉塞効果をも備えているポリエチレン製多孔質膜が好適に使用されている。しかしながら、何らかの原因で孔閉塞後も昇温が続く場合、膜を構成するポリエチレンの粘度低下及び膜の収縮により、破膜を生じることがある。この現象はポリエチレンに限定された現象ではなく、他の熱可塑性樹脂を用いた場合においても、樹脂の融点以上では避けることができない。
【0003】
リチウムイオン電池用セパレータは電池特性、電池生産性及び電池安全性に深く関わっており、優れた機械的特性、耐熱性、透過性、寸法安定性、孔閉塞特性(シャットダウン特性)、溶融破膜特性(メルトダウン特性)等が要求される。さらに、セパレータは電池のサイクル特性向上のために電極材料との接着性向上、生産性向上のための電解液浸透性の向上などが要求される。そのため、これまでに多孔質膜にさまざまな改質多孔層を積層する検討がなされている。改質多孔層としては耐熱性及び電解液浸透性を併せ持つポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、電極接着性に優れたフッ素系樹脂などが好適に用いられている。なお、本発明でいう改質多孔層とは、少なくとも電極材料との接着性、熱収縮抑制機能(耐熱性)を有する多孔層をいう。
【0004】
フッ素系樹脂は一般に電極接着性に比較的優れる樹脂であるが、フッ素系樹脂からなる多孔質多孔層はポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂を用いた場合と比べ熱収縮率が大きくリチウムイオン電池に組み入れた際、安全性に劣る。この耐熱性を改良するために無機粒子、あるいは、有機粒子を添加する方法も提案されているが、重要な要求特性である電極接着性が低下する。すなわち、電極接着性と耐熱性を両立させるのは極めて困難であった。
【0005】
また、電気自動車用など過酷な使用環境が予想される電池においては安全性の確保のみならず、低コスト化、高容量化に伴い容器内に充填できる面積を増加させるためにセパレータの薄膜化がいっそう進むことが予想される。
【0006】
特許文献1の実施例では、ポリエチレンセパレータ膜上に無機物粒子とポリビニリデンフルオライドを含む共重合体からなるバインダーとの混合物(無機物粒子/バインダー=90/10(重量%))のアセトン溶液を塗布して得られる、熱的安定性と優れたイオン透過性を有する有無機複合多孔性セパレータ膜が開示されている。
【0007】
特許文献2では多孔質基材の少なくとも一方の面に形成された、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなり、結晶化度が20〜35%の接着性多孔質層が積層された非水系二次電池用セパレータが開示されており、実施例では、ポリエチレン微多孔膜の表裏両面にポリフッ化ビニリデン系樹脂のジメチルアセトアミド/トリプロピレングリコール混合溶媒溶液を塗布し、凝固液を浸漬することで固化させ、次いで水洗、乾燥することによって、接着性多孔質層を積層した、イオン透過性と電極との接着性を両立させた非水系二次電池用セパレータを得ている。
【0008】
特許文献3では樹脂多孔質膜表面に耐熱性微粒子を70体積%以上含有する耐熱多孔質層を形成させた非水電解質電池用セパレータが開示されており、具体的に実施例1ではポリエチレン製多孔質膜にPVDFのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(固形分比率15質量%):600gと、NMP:1000gとの溶解液にアルミナ粉末:3000gを加えた混合溶液を塗布し、乾燥させることによって高温時の寸法安定性に優れた非水電解質電池用セパレータを得ている。
【0009】
特許文献4の実施例ではポリエチレン多孔性膜上に無機物粒子、ポリフッ化ビニリデン系共重合体からなるバインダー及びアセトンの混合物を含むスラリーと前記バインダーとアセトンのみからなるスラリーを塗布し、同時に乾燥させることによって、多孔性有機無機複合内部層と多孔性高分子外郭層の2層を積層した電極に対する接着性が良好なセパレータを開示している。
【0010】
特許文献1〜4に開示されているセパレータはいずれもポリオレフィン系多孔質膜に電極との接着性機能を有するPVDF系樹脂、またはPVDF系樹脂と耐熱性微粒子を含む改質多孔層を積層したセパレータである。一般に、電極との接着性を向上させるには改質多孔層中のPVDF等の電極との接着性機能を有する樹脂の比率を高くする、例えば究極的には前記樹脂のみからなる改質多孔層が理想である。しかしながら、この場合、熱収縮を抑制する効果が低下し、非水二次電池に組み込んだ際に安全性が確保できない場合がある。反対に耐熱性微粒子の比率を高くすれば熱収縮を抑制する効果は大きくなるが、電極との接着性が低下する。すなわち、単に両者の比率を調整したのみでは電極との接着性と熱収縮を抑制する効果を十分に満足できないのが実情である。
【0011】
さらに、近年の非水二次電池の高性能化に伴い、セパレータには高いイオン透過性が求められる。しかしながら、ポリオレフィン系多孔質膜に改質多孔層を積層することによってポリオレフィン系多孔質膜が本来持つイオン透過性をある程度悪化させることは避けられない。予め透気抵抗度の小さい、換言すれば開孔率の大きいポリオレフィン系多孔質膜を用いて改質多孔層を積層する方法もあるが開孔率の大きいポリオレフィン系多孔質膜は機械的強度が低く、今後急速に進むであろう低コスト化、高容量化に伴う、高速加工化、セパレータの薄膜化の要求に対して、適当な手段とは言えない。
【0012】
すなわち、電極に対する接着性、熱収縮抑制(耐熱性)効果を両立させ、尚且つ、改質多孔層を積層することによる透気抵抗度の上昇幅を小さく抑えた電池用セパレータは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2008−524824号公報
【特許文献2】特許第4988973号公報
【特許文献3】特開2008−123996号公報
【特許文献4】特表2013−506259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らはリチウムイオン二次電池が電気自動車など、過酷な使用環境となる用途に広く展開されることを想定し、その安全性をよりいっそう高めるために、従来、両立が困難であった電極接着性と低熱収縮性を両立させ、且つイオン透過性の優れた電池用セパレータの提供を目指したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜に改質多孔層を積層したセパレータであるが、改質多孔層は特定のフッ素系樹脂と無機粒子との最適な比率からなり、さらに、フッ素系樹脂の結晶化度を特殊な制御技術をもって制御したものである。これにより、本発明のセパレータは電極接着性と低熱収縮性を両立させたものである。
【0016】
電極接着性と熱収縮性は後述する評価方法でそれぞれ以下の範囲が好ましい。電極接着性は200mN/10mm以上が好ましく、より好ましくは250mN/10mm以上、さらに好ましくは300mN/10mm以上である。熱収縮性は15%以下が好ましく、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは12%以下である。上記好ましい範囲であれば電池に組み込んだとき安全性を保ちやすい。
【0017】
上記課題を解決するために本発明の電池用セパレータは以下の構成を有する。
ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜の少なくとも片面にフッ素系樹脂と無機粒子を含む三次元網目状の電極接着性を有する改質多孔層が積層され、無機粒子の含有量はフッ素系樹脂と無機粒子の合計に対して40体積%以上、70体積%未満であり、フッ素系樹脂の結晶化度が36%以上、70%未満である電池用セパレータ、である。
【0018】
本発明の電池用セパレータの好ましい態様としては、前記フッ素系樹脂が重量平均分子量0.9×10〜1.5×10のポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体である前記電池用セパレータ、であることが好ましい。
【0019】
本発明の電池用セパレータの好ましい態様としては、式1を満足する前記電池用セパレータ、であることが好ましい。
20≦Y−X≦100・・・・・式1
Xは多孔質膜の透気抵抗度(sec/100ccAir)
Yは電池用セパレータ全体の透気抵抗度(sec/100ccAir)
【0020】
本発明の電池用セパレータの好ましい態様としては、前記ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜の厚さが25μm以下である前記電池用セパレータ、であることが好ましい。
【0021】
本発明の電池用セパレータの好ましい態様としては、前記無機粒子がアルミナ、チタニア及びベーマイトからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む前記電池用セパレータ、であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電極接着性と低熱収縮性を両立させ、且つイオン透過性の優れた電池用セパレータが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明はポリオレフィン多孔質膜に改質多孔層を積層した電池用セパレータであって、改質多孔層は特定の分子量を有するフッ素系樹脂及び粒子を特定の比率で含有しており、さらに前記フッ素系樹脂の結晶化度を高度な加工技術によって制御することにより優れた電極接着性と耐熱性、イオン透過性を具備した電池用セタレータを得ることができる。
【0024】
本発明のポリオレフィン多孔質膜と改質多孔層とを少なくとも有する積層多孔質膜及び電池用セパレータとして用いる前記積層多孔質膜について概要を説明するが、当然この代表例に限定されるものではない。
【0025】
まず、本発明のポリオレフィン多孔質膜について説明する。
本発明のポリオレフィン多孔質膜の厚さの上限は25μmが好ましく、より好ましくは20μm、さらに好ましくは16μmである。下限は7μmが好ましく、より好ましくは9μmである。ポリオレフィン多孔質膜の厚さが上記好ましい範囲であると、実用的な膜強度と孔閉塞機能を保有させることができ、電池ケースの単位容積当たりの面積が制約されず、今後、進むであろう電池の高容量化に適する。
【0026】
ポリオレフィン多孔質膜の透気抵抗度の上限は300sec/100ccAirが好ましく、より好ましくは200sec/100ccAir、さらに好ましくは150sec/100ccAirであり、下限は50sec/100ccAirが好ましく、より好ましくは70sec/100ccAir、さらに好ましくは100sec/100ccAirである。
【0027】
ポリオレフィン多孔質膜の空孔率については、上限は70%が好ましく、より好ましくは60%、さらに好ましくは55%である。下限は30%が好ましく、より好ましくは35%、さらに好ましくは40%である。ポリオレフィン多孔質膜は透気抵抗度および空孔率が上記好ましい範囲であると、電池用セパレータとして用いた場合、電池の充放電特性、特にイオン透過性(充放電作動電圧)および電池の寿命(電解液の保持量と密接に関係する)において、電池の機能を十分に発揮することができる。また前記ポリオレフィン多孔質膜は十分な機械的強度と絶縁性が得られることで、これを用いた電池は充放電時に短絡が起こる可能性が低くなる。
【0028】
ポリオレフィン多孔質膜の平均孔径については、孔閉塞性能に大きく影響を与えるため、好ましくは0.01〜1.0μm、より好ましくは0.05〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.3μmである。ポリオレフィン多孔質膜の平均孔径が上記好ましい範囲であると、機能性樹脂のアンカー効果により、改質多孔層との間で適度な剥離強度が得られる。また、改質多孔層を積層した際に、ポリオレフィン多孔質膜の透気抵抗度が大幅に悪化せず、ポリオレフィン多孔質膜の孔閉塞温度におけるシャットダウン応答が緩慢になることもなく、孔閉塞温度が高温側にシフトすることもない。
【0029】
ポリオレフィン多孔質膜を構成するポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。また、単一物又は2種以上の異なるポリオレフィン樹脂の混合物、例えばポリエチレンとポリプロピレンの混合物であってもよいし、異なるオレフィンの共重合体でもよい。上記樹脂により形成されるポリオレフィン多孔質膜は電気絶縁性、イオン透過性などの基本特性に加え、電池異常昇温時に電流を遮断し、過度の昇温を抑制する孔閉塞効果を具備する。
【0030】
特にポリエチレンは孔閉塞性能の観点から優れており、好ましい。以下、本発明で用いるポリオレフィン樹脂としてポリエチレンを例に詳述する。
ポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンなどが挙げられる。また重合触媒にも特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒やフィリップス系触媒やメタロセン系触媒などが挙げられる。これらのポリエチレンはエチレンの単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外のα−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン等が好適である。ポリエチレンは単一物でもよいが、2種以上のポリエチレンからなる混合物であることが好ましい。ポリエチレン混合物としては重量平均分子量(Mw)の異なる2種類以上の超高分子量ポリエチレン同士の混合物、同様な高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンの混合物を用いてもよいし、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた2種以上ポリエチレンの混合物を用いてもよい。
【0031】
なかでもポリエチレン混合物としては、Mwが5×10以上の超高分子量ポリエチレンとMwが1×10以上〜5×10未満のポリエチレンからなる混合物が好ましい。超高分子量ポリエチレンのMwは5×10〜1×10であることが好ましく、より好ましくは1×10〜5×10である。Mwが1×10以上〜5×10未満のポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンのいずれも使用することが出来るが、特に高密度ポリエチレンを使用することが好ましい。Mwが1×10以上〜5×10未満のポリエチレンとしてはMwが異なるものを2種以上使用してもよいし、密度の異なるものを2種以上使用してもよい。ポリエチレン混合物のMwの上限を15×10以下にすることにより、溶融押出を容易にすることが出来る。
【0032】
本発明においては超高分子量ポリエチレンの含有量の上限は40重量%が好ましく、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは10重量%であり、下限は1重量%が好ましく、より好ましくは2重量%、さらに好ましくは5重量%である。超高分子量ポリエチレンの含有量が上記好ましい範囲内であると、ポリエチレン多孔質膜の厚さを薄膜化させた場合であっても、十分な引っ張り強度が得られる。なお、引っ張り強度は100MPa以上が好ましい。上限は特に定めない。
【0033】
ポリエチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)は5〜200の範囲内であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。Mw/Mnの範囲が上記好ましい範囲であると、ポリエチレン樹脂溶液の押出が容易であり、ポリエチレン多孔質膜の厚さを薄膜化させた場合、十分な機械的強度が得られる。Mw/Mnは分子量分布の尺度として用いられるものであり、すなわち単一物からなるポリエチレンの場合、この値が大きい程分子量分布の幅が大きい。単一物からなるポリエチレンのMw/Mnはポリエチレンの多段重合により適宜調整することができる。またポリエチレンの混合物のMw/Mnは各成分の分子量や混合割合を調整することにより適宜調整することができる。
【0034】
ポリエチレン多孔質膜は、上記の各種特徴を満足する範囲内ならば、目的に応じた製造方法を自由に選択することができる。多孔質膜の製造方法としては、発泡法、相分離法、溶解再結晶法、延伸開孔法、粉末焼結法などがあり、これらの中では微細孔の均一化、コストの点で相分離法が好ましい。
【0035】
相分離法による製造方法としては、例えばポリエチレンと成形用溶剤とを加熱溶融混練し、得られた溶融混合物をダイより押出し、冷却することによりゲル状成形物を形成し、得られたゲル状成形物に対して少なくとも一軸方向に延伸を実施し、前記成形用溶剤を除去することによって多孔質膜を得る方法などが挙げられる。
【0036】
ポリエチレン多孔質膜は単層膜であってもよいし、分子量あるいは平均細孔径の異なる二層以上からなる層構成であってもよい。二層以上からなる多層膜の製造方法としては、例えばa層及びb層を構成するポリエチレンのそれぞれを成形用溶剤と溶融混練し、得られた溶融混合物をそれぞれの押出機から1つのダイに供給し各成分を構成するゲルシートを一体化させて共押出する方法、各層を構成するゲルシートを重ね合わせて熱融着する方法のいずれでも作製できる。共押出法の方が、高い層間接着強度を得やすく、層間に連通孔を形成しやすいために高い透過性を維持しやすく、生産性にも優れているためにより好ましい。二層以上からなる層構成の場合、少なくとも一つの最外層のポリエチレン樹脂の分子量、および分子量分布が前記を満足することが好ましい。
【0037】
ポリエチレン多孔質膜は、充放電反応の異常時に孔が閉塞する機能を有することが必要である。そのために、構成する樹脂の融点(軟化点)は、70〜150℃が好ましく、より好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは100〜130℃である。構成する樹脂の融点が上記好ましい範囲であると、正常使用時に孔閉塞機能が発現することにより電池が使用できなくなることを防ぎ、また、異常反応時に孔閉塞機能が発現することで安全性を確保できる。
【0038】
次に、本発明に用いる改質多孔層について説明する。
本発明の改質多孔層中のフッ素系樹脂の結晶化度は36%以上、70%未満が好ましい。結晶化度の下限はより好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上、結晶化度の上限はより好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下である。結晶化度が上記好ましい範囲内にすることによって、優れた耐熱性、電極接着性が得られる。
【0039】
本発明に用いるフッ素系樹脂は電極接着性、耐熱性、電解液浸透性を向上させるものであれば特に制限されないが、耐熱性および電極接着性の観点からはフッ化ビニリデン単独重合体、フッ化ビニリデン/フッ化オレフィン共重合体、フッ化ビニル単独重合体、及びフッ化ビニル/フッ化オレフィン共重合体からなる群より選ばれる1種以上を使用することが好ましい。特に好ましいものはポリフッ化ビニリデン樹脂及びポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンで共重合体ある。これらの重合体は、電極接着性を有し、非水電解液とも親和性が高く、非水電解液に対する化学的、物理的な安定性が高いため、高温下での使用にも電解液との親和性を十分維持できる。
【0040】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の分子量は結晶化度を制御する上で重要な因子である。分子量の下限としては、重量平均分子量(Mw)で0.9×10が好ましく、より好ましくは1.0×10、さらに好ましくは1.1×10、上限は2.0×10が好ましく、好ましくは1.5×10、より好ましくは1.4×10の範囲である。この範囲であるとポリフッ化ビニリデン系樹脂の結晶化度を上記好ましい範囲内にしやすくなる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂は市販されている樹脂を用いることができる。例えば、KFポリマーW#7300、KFポリマーW#9300((株)クレハ製)等が挙げられる。
【0041】
無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカ、ベーマイトなどが挙げられる。特にフッソ系樹脂の結晶成長性、コスト、入手のしやすさから二酸化チタン、アルミナ、ベーマイトが好適である。
【0042】
本発明における改質多孔層は少なくともフッ素系樹脂と無機粒子を含有する。改質多孔層のフッ素系樹脂と無機粒子の合計に対する無機粒子含有量は40体積%以上が好ましく、より好ましくは45体積%以上、さらに好ましく50体積%以上であり、70体積%未満が好ましく、より好ましくは65体積%以下、さらに好ましくは60体積%以下である。上記好ましい範囲にすることによって、電極接着性、耐熱性、透気抵抗度上昇幅の良好なバランスが得られやすい。
【0043】
無機粒子の平均粒径はポリオレフィン多孔質膜の平均細孔径の1.5倍以上、50倍以下であることが好ましい。より好ましくは2.0倍以上、20倍以下である。粒子の平均粒径が上記好ましい範囲であると、耐熱性樹脂と粒子が混在した状態でポリオレフィン多孔質膜の細孔を塞ぐことなく透気抵抗度を維持し、さらに電池組み立て工程において前記粒子が脱落し、電池の重大な欠陥を招くのを防ぐ。
【0044】
粒子の形状は真球形状、略球形状、板状、針状が挙げられるが特に限定されない。
改質多孔層の膜厚については1〜5μmが好ましく、より好ましくは1〜4μm、さらに好ましくは1〜3μmである。膜厚が1μm以上であれば、電極に対する接着性が確保され、ポリオレフィン微多孔膜が融点以上で溶融収縮することを防ぎ、破膜強度と絶縁性を確保できる。膜厚が5μm以下であれば、巻き嵩を抑えることができ、今後、進むであろう電池の高容量化に適している。さらに、カールが大きくなるのを防ぎ、電池組み立て工程での生産性の向上に繋がる。また、ポリオレフィン微多孔膜の占める割合を最適化することで十分な孔閉塞機能が得られ異常反応を抑制できる。
【0045】
改質多孔層の空孔率は30〜90%が好ましく、より好ましくは40〜70%である。空孔率が30%以上では、膜の電気抵抗の上昇を防ぎ、大電流を流すことができる。また、空孔率が90%以下では膜強度を維持できる。
【0046】
改質多孔層を積層して得られた電池用セパレータの全体の膜厚の上限は30μmが好ましく、より好ましくは25μmである。下限は5μmが好ましく、より好ましくは7μmである。上記好ましい範囲の下限値以上とすることで十分な機械強度と絶縁性を確保できる。上記好ましい範囲の上限値以下とすることで容器内に充填できる電極面積を確保できるため容量の低下を回避することができる。
【0047】
改質多孔層の積層方法について説明する。フッ素系樹脂に対して可溶で且つ水と混和する溶剤で溶解したフッ素系樹脂溶液と粒子を主成分とするワニスを前述で得られたポリオレフィン微多孔膜に塗布法を用いて積層し、続いて特定の湿潤環境下に置き、フッ素系樹脂と水と混和する溶剤を相分離させ、さらに水浴(凝固浴)に投入してフッ素系樹脂を凝固させることによって、改質多孔層は得られる。
【0048】
前記ワニスを塗布する方法としては、例えば、ディップ・コート法、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、マイヤーバーコート法、パイプドクター法、ブレードコート法およびダイコート法などが挙げられ、これらの方法は単独であるいは組み合わせて行うことができる。また、ワニスは塗工時まで極力外気に触れないように密閉保管することが重要である。
【0049】
本発明において、改質多孔層におけるフッ素系樹脂の結晶化度を36%以上、70%未満とするには前記のフッ素系樹脂を用いるだけではなく、塗布後に特定の湿潤環境下に一定時間置き、相分離させながら無機粒子を核として結晶化を促進させることが重要である。本明細書でいう湿潤環境下とは単に湿度が高い環境下という意味ではなく、微粒化した水滴が充満したゾーン(以下湿潤ゾーンと略記する場合がある。)を通過させることを言う。微粒化した水滴の粒径は50〜500μmが好ましい。水滴の粒径は公知のレーザー法によって求めることができる。また、微粒化した水滴が充満した状態とは30cmの間隔をおいて幅1cm、内径5cmの黒色リングが視認できない状態をいう。微粒化した水滴は気液混合方式の2流体ノズルから圧搾空気と水を供給することによって得ることができる。水の供給量は湿潤ゾーン容積にもよるが1m当たりおよそ2〜5L/hrの供給で前記充満状態を作ることができる。
【0050】
湿潤ゾーンの通過時間は1秒以上、好ましくは2秒以上、さらに好ましくは3秒以上である。上限は特に定めないが10秒もあれば十分である。また、前記ゾーンの通過後から凝固槽入り口までの時間は0.5秒以上10秒以下が好ましい。このようにすることによって塗膜表面のみならず塗膜の深部にまで結晶化度を高めることができる。なお、2流体ノズルから噴霧される気流は直接、塗工面にあたらないように配置するのが好ましい。気流が直接、塗工面にあたると透気抵抗度の上昇幅が大きくなる場合があるためである。
【0051】
凝固浴内では、フッ素系樹脂成分と無機粒子が三次元網目状に凝固する。凝固浴内での浸漬時間は3秒以上とすることが好ましい。3秒未満では、十分に樹脂成分の凝固が行われない場合がある。上限は制限されないが、10秒もあれば十分である。さらに、改質多孔層を構成するフッ素系樹脂に対する良溶媒を1〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%含有する水溶液中に上記の未洗浄微多孔膜を浸漬させ、純水を用いた洗浄工程、100℃以下の熱風を用いた乾燥工程を経て、最終的な電池用セパレータを得ることができる。
【0052】
溶剤を除去するための洗浄については、加温、超音波照射やバブリングといった一般的な手法を用いることができる。さらに、各浴槽内の濃度を一定に保ち、洗浄効率を上げるためには、浴間で微多孔膜内部の溶液を取り除く手法が有効である。具体的には、空気または不活性ガスで多孔層内部の溶液を押し出す手法、ガイドロールによって物理的に膜内部の溶液を絞り出す手法などが挙げられる。
【0053】
本発明の電池用セパレータは、乾燥状態で保存することが望ましいが、絶乾状態での保存が困難な場合は、使用の直前に100℃以下の減圧乾燥処理を行うことが好ましい。
【0054】
また、本発明の電池用セパレータは、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、銀−亜鉛電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等の二次電池などの電池用セパレータとして用いることができるが、特にリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いるのが好ましい。
【0055】
改質多孔層の空孔率は30〜90%が好ましく、より好ましくは40〜70%である。所望の空孔率にするには、無機粒子の濃度、バインダー濃度などを適宜調整することにより得られる。改質多孔層の空孔率が上記好ましい範囲であると、改質多孔層を積層して得られた積層多孔質膜は膜の電気抵抗が低く、大電流が流れやすく、また膜強度が維持される。
【0056】
電池用セパレータの透気抵抗度は、もっとも重要な特性のひとつであり、好ましくは50〜600sec/100ccAir、より好ましくは100〜500sec/100ccAir、さらに好ましくは100〜400sec/100ccAirである。所望の透気抵抗度にするには、改質多孔層の空孔率を調整し、バインダーのポリオレフィン多孔質膜への浸み込み程度を調整することにより得られる。電池用セパレータの透気抵抗度が上記好ましい範囲であると、十分な絶縁性が得られ、異物詰まり、短絡および破膜を防ぐ。また、膜抵抗を抑えることで実使用可能な範囲の充放電特性、寿命特性が得られる。
【0057】
透気抵抗度の上昇幅とは、ポリオレフィン多孔質膜の透気抵抗度と改質多孔層が積層された積層多孔質膜との透気抵抗度の差を意味する。すなわち、透気抵抗度の上昇幅はポリオレフィン多孔質膜の透気抵抗度(Xsec/100ccAir)と電池用セパレータの透気抵抗度(Ysec/100ccAir)の差(Y−X)であり、20sec/100ccAir≦Y−X≦100sec/100ccAirが好ましい。この範囲であれば十分な接着性と良好なイオン透過性が得られる。より好ましくは20sec/100ccAir≦Y−X≦80sec/100ccAir、さらに好ましくは20sec/100ccAir≦Y−X≦50sec/100ccAirである。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
【0059】
1.電極接着性(剥離強度)
次のようにして正極を作製した。リチウム含有複合酸化物であるLiCoMgO(正極活物質)94質量部に、導電助剤としてカーボンブラック3質量部を加えて混合し、この混合物に重量平均分子量が28万のポリフッ化ビニリデン(KFポリマーW#1100((株)クレハ製)を3質量部含むNMP溶液を加えて混合して正極合剤含有スラリーとした。この正極合剤含有スラリーを、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗付して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形して総厚さを100μmにし、正極を作製した。
正極および電池用セパレータをそれぞれ2cm×20cmの大きさに切り出した。次いで電池用セパレータの改質多孔層面にプロピレンカーボネートを十分染みこませ、正極の活物質面と電池用セパレータの改質多孔層面を合わせ、貼り合わせ面の温度を100℃に保持しながら1MPaの圧力で6分間プレスした。
その後、23℃、50%RH条件下で引張り試験機((株)エー・アンド・デイ製「テンシロンRTM−100」)を用いて、ピール法(剥離速度100mm/分、180°剥離)にて正極と電池用セパレータの剥離強度を測定した。測定開始から測定終了までの100mmの間において、経時的に測定し、測定値の平均値を算出し、幅10mm当たりの値に換算して剥離強度とした。なお、前記剥離界面において、ポリオレフィン多孔質膜側に改質多孔層の一部が残存する場合があるが、この場合も正極と電池用セパレータの剥離強度として算出した。
【0060】
2.結晶化度
実施例及び比較例で得た電池用セパレータの改質多孔層を片刃のカミソリ刃でかき取り、Si無反射板上にコロジオン-エタノール溶液で固定した。測定条件を以下に示す。
微小部X線回折法
X線源 CuKα線
出 力 50kV、22mA
スリット系 1.0mm ピンホール
検出器 2次元PSPC
カメラ長 約15cm
測定範囲中心 2θ=25°
積算時間 30分/1フレーム
【0061】
3.透気抵抗度
テスター産業(株)製のガーレー式デンソメーターB型を使用して、ポリオレフィン多孔質膜又は電池用セパレータをクランピングプレートとアダプタープレートの間にシワが入らないように固定し、JIS P8117に従って任意の5点を測定し、その平均値を透気抵抗度[sec/100ccAir]として用いた。
透気抵抗度上昇幅は次式より求めた。
透気抵抗度上昇幅 Y−X
Xはポリオレフィン多孔質膜の透気抵抗度(sec/100ccAir)
Yは電池用セパレータ全体の透気抵抗度(sec/100ccAir)
【0062】
4.熱収縮率
ポリオレフィン多孔質膜及び電池用セパレータの耐熱性は130℃のオーブンで60分間保管したときのMDとTDの初期寸法に対する変化率の平均値から求めた。
【0063】
5.膜厚
接触式膜厚計((株)ミツトヨ製“ライトマチック”(登録商標)series318)を使用して20点の測定値を平均することによって求めた。超硬球面測定子φ9.5mmを用い、加重0.01Nの条件で測定した。
【0064】
実施例1
(ワニスの調整)
フッ素系樹脂として、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VdF/HFP=92/8(重量比))(重量平均分子量が100万)を用いた。前記フッ素系樹脂及び平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、N−メチル−2−ピロリドンをアルミナ粒子がフッ素系樹脂とアルミナ粒子の合計に対して52体積%、固形分濃度が17重量%となるように配合し、樹脂成分を完全に溶解させた後、酸化ジルコニウムビーズ(東レ(株)製、“トレセラム”(登録商標)ビーズ、直径0.5mm)と共に、ポリプロピレン製の容器に入れ、ペイントシェーカー((株)東洋精機製作所製)で6時間分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し、ワニス(a)を調合した。また、ワニスは塗工時まで極力外気に触れないように密閉保管した。
(改質多孔層の積層)
前記ワニス(a)を浸漬コート法にてポリエチレン微多孔膜(厚さ9μm、透気抵抗度240sec/100ccAir)の両面に塗布し、引き続き温度25℃、微粒化した水滴が充満した湿潤ゾーン中に2秒間通過させ、連続して0.5秒後に水溶液中(凝固槽)に3秒間進入させ、純水で洗浄した後、70℃の熱風乾燥炉を通過させることで乾燥して最終厚み13μmの電池用セパレータを得た。
【0065】
実施例2
フッ素系樹脂及び平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、N−メチル−2−ピロリドンがフッ素系樹脂とアルミナ粒子の合計に対して43体積%、固形分濃度が16重量%となるように配合したワニス(b)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0066】
実施例3
フッ素系樹脂及び平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、N−メチル−2−ピロリドンがフッ素系樹脂とアルミナ粒子の合計に対して66体積%、固形分濃度が16重量%となるように配合したワニス(c)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0067】
参考例
フッ素系樹脂をポリフッ化ビニリデンのホモポリマーであるKFポリマーW#7300((株)クレハ製)に替えたワニス(d)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0068】
実施例5
フッ素系樹脂をポリフッ化ビニリデンの変性ポリマーであるKFポリマーW#9300((株)クレハ製)に替えたワニス(e)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0069】
実施例6
アルミナ粒子を平均粒子径0.38μmの二酸化チタン粒子に替えたワニス(f)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0070】
実施例7
アルミナ粒子を板状ベーマイト微粒子(平均粒子径1.0μm)替えた塗布液(g)を用いた以外は実施例1と同様にして、電池用セパレータを得た。
【0071】
実施例8
ポリオレフィン微多孔膜としてポリエチレン微多孔膜(厚さ16μm、透気抵抗度117sec/100ccAir)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0072】
実施例9
ポリオレフィン微多孔膜としてポリエチレン微多孔膜(厚さ20μm、透気抵抗度100sec/100ccAir)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0073】
実施例10
ポリオレフィン微多孔膜としてポリエチレン微多孔膜(厚さ7μm、透気抵抗度248sec/100ccAir)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0074】
実施例11
湿潤ゾーンの通過時間を1.5秒間通過させ、湿潤ゾーン出口から凝固槽入り口までの通過時間を0.4秒とした以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0075】
実施例12
湿潤ゾーンの通過時間を3.0秒間通過させ、湿潤ゾーン出口から凝固槽入り口までの通過時間を0.8秒とした以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0076】
比較例1
湿潤ゾーンを通過させず直接凝固槽に投入させた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0077】
比較例2
フッ素系樹脂及び平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、N−メチル−2−ピロリドンがフッ素系樹脂とアルミナ粒子の合計に対して82体積%、固形分濃度が64重量%となるように配合したワニス(h)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0078】
比較例3
フッ素系樹脂及び平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、N−メチル−2−ピロリドンがフッ素系樹脂とアルミナ粒子の合計に対して29体積%、固形分濃度が17重量%となるように配合したワニス(i)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0079】
比較例4
フッ素系樹脂を重量平均分子量が57万のポリフッ化ビニリデンであるSolvay社製のSolef1015に替え、フッ素系樹脂、N−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ54:46の重量比率で配合したワニス(j)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0080】
比較例5
フッ素系樹脂を重量平均分子量が28万のポリフッ化ビニリデンであるKFポリマーW#1100((株)クレハ製)に替えたワニス(k)を用いた以外は実施例1と同様にして電池用セパレータを得た。
【0081】
実施例1〜3、5〜12、比較例1〜5、参考例で得られた電池用セパレータの特性を表1に示す。
【表1】
【要約】
本発明はリチウムイオン二次電池が電気自動車など、過酷な使用環境となる用途に広く展開されることを想定し、その安全性をよりいっそう高めるために、従来、両立が困難であった電極接着性と低熱収縮性を両立させ、且つイオン透過性の優れた電池用セパレータの提供を目指したものである。
ポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜にフッ素系樹脂と無機粒子を含む改質多孔層が少なくとも片面に積層された電池用セパレータであって、該粒子の含有量はフッ素系樹脂と前記粒子の合計に対して40体積%以上、70体積%未満であり、フッ素系樹脂の結晶化度が36%以上、70%未満である電池用セパレータ。