【実施例】
【0106】
例1
以下に示す処方を有する、脊髄投与によって注入可能なアセトアミノフェン過飽和溶液:
アセトアミノフェン 15mg
注入用滅菌水 1ml
溶液のpHは5.7であった。
【0107】
例2
以下に示す処方を有する、脊髄投与によって注入可能なアセトアミノフェン過飽和緩衝液:
アセトアミノフェン 20mg
注入用滅菌水 1ml
クエン酸 0.45mg
リン酸二水素ナトリウム 0.91mg
溶液のpHはおよそ5.5であった。
【0108】
例3
以下に示す処方を有する、脊髄投与によって注入可能なアセトアミノフェン過飽和緩衝液:
アセトアミノフェン 80mg
注入用滅菌水 1ml
クエン酸 0.45mg
リン酸二水素ナトリウム 0.91mg
溶液のpHはおよそ5.5であった。
【0109】
例4
以下に示す処方を有する、脊髄投与によって注入可能な、麻酔・鎮痛複合製剤:
アセトアミノフェン 20mg
クロロプロカイン 10mg
注入用滅菌水 5ml
【0110】
例5
濃度が異なる3つのアセトアミノフェン溶液について研究した:
10mg/ml(1.0%)のアセトアミノフェンを含有する不飽和溶液
15mg/ml(1.5%)のアセトアミノフェンを含有する過飽和溶液
20mg/ml(2.0%)のアセトアミノフェンを含有する過飽和溶液
25mg/ml(2.5%)を含有する超飽和溶液
及び2つの製剤:水中のアセトアミノフェンと水+クエン酸塩緩衝剤中のアセトアミノフェン
【0111】
アセトアミノフェン溶液は、窒素のフラッシングによって脱酸素化した水を用いて調製された(酸素残分<200ppb);アセトアミノフェン単独の溶液の場合、およそ6.0の初期pH値をアセトアミノフェン自体の濃度に関係なく得、どんな場合でも4.5〜6.5であった。
【0112】
規定された条件(およそ50℃)において、加熱した水中、活性成分を可溶化した。そのようにして得られた溶液は、広範囲の温度で、アセトアミノフェンの再沈殿及び/又は化学的変質がなく、長期間保存できる。
【0113】
20℃でのアセトアミノフェンの溶解度は、およそ13mg/ml(1.3%w/v)であった。
【0114】
以下に示す概略工程を必要とする方法によって、アセトアミノフェン溶液を得た:
a)窒素流れにおいて脱気することによって脱酸素化した水中における、活性成分と、存在する製剤の賦形剤の溶解
b)その溶液の窒素流れにおけるろ過
c)その溶液の窒素流れにおける分配
d)そのバイアルの121℃にて15分間の滅菌
【0115】
以下に示す注入用溶液を得た:
【0116】
【表1】
【0117】
溶解機の中に投入したら、沸騰により注入用水を脱気し、次いで60℃に冷却した。アセトアミノフェンと、緩衝液についてはクエン酸及びリン酸2ナトリウムとを加えた。その溶液を、撹拌下、一定の窒素流入を維持して、25分間放置した。
【0118】
この調製過程で測定されたpH値は以下に示す結果を示した:
【0119】
【表2】
【0120】
活性成分及び賦形剤の添加から25分して40℃に到達した後、その溶液を窒素圧下でろ過し、不活性ガス(N
2)で予めパージしたフラスコ中に集めた。窒素流れにおいてその溶液をバイアル中に分配し、過剰殺菌条件(121℃15分間)のオートクレーブ中においてそのバイアルを最終滅菌した。
【0121】
滅菌後のバイアルに対して行った分析は、以下に示す結果を提供した:
【0122】
【表3】
【0123】
研究したアセトアミノフェン溶液の安定性
安定性:それぞれのアセトアミノフェン濃度が1%、1.5%及び2%w/vである3つのバッチを4℃、25℃、30℃、40℃及び60℃に置いた。
【0124】
4℃のサンプルに対しては物理化学分析を行わなかった。低温保存の目的は、活性成分のあらゆる再結晶を確認することにあった。この目的のため、サンプルは、週に一度の視覚分析を受けた。3ヶ月後、沈殿物の存在は、テストした溶液のいずれにおいても見られなかった。
【0125】
25及び30℃で9ヶ月後、40℃で6ヶ月後、並びに60℃で3ヶ月後、物理化学的観点から溶液に変化はなかった。
【0126】
緩衝化していない溶液のpHは、上昇傾向を示し、およそ6.0の値から開始して、最大ストレスの条件(60℃)下で6.5に達する。
【0127】
アセトアミノフェンの力価には変化がない。酸化の生成物である4−アミノフェノールは、常に、分析に用いたHPLC法の検出限界を下回ったままである。二量体の濃度は、常に0.10%未満のままである。他の不純物は観察されない。
【0128】
例6
濃度が異なるアセトアミノフェンの溶液5つを分析した。
アセトアミノフェン含有量が20mg/ml(2.0%)である過飽和溶液、5mlバイアルに3mlまで入れた
アセトアミノフェン含有量が25mg/ml(2.5%)である過飽和溶液、5mlバイアルに3mlまで入れた
アセトアミノフェン含有量が30mg/ml(3.0%)である過飽和溶液、5mlバイアルに3mlまで入れた
アセトアミノフェン含有量が50mg/ml(5.0%)である過飽和溶液、5mlバイアルに3mlまで入れた
アセトアミノフェン含有量が80mg/ml(8.0%)である過飽和溶液、5mlバイアルに3mlまで入れた
【0129】
アセトアミノフェン溶液は、ニトロ化によって脱酸素化した水を用いて調製された(残留酸素<200ppb)。およそ5.5の初期pH値を得、アセトアミノフェン自体の濃度に関係なく、それぞれの場合において4.5〜6.5であった。
【0130】
55〜70℃の温度に維持された注入用水中において、活性成分の可溶化を行った。そのようにして得られた溶液は、これらの温度条件下で、アセトアミノフェンの沈殿及び/又は化学的変質がなく、長期に保存できる。
【0131】
以下に示す概略工程に備える方法によって、アセトアミノフェン溶液を得た:
a)55〜70℃の温度での窒素流れにおける、脱気による脱酸素水中での活性成分の溶解
b)70〜80℃の温度での窒素流れにおける、その溶液のろ過
c)55〜75℃の温度での窒素流れにおける、その溶液の分配
d)そのバイアルの121℃にて15分間の滅菌
【0132】
以下に示す注入用溶液を作った:
【0133】
【表4】
【0134】
溶解機に取り込んだら、沸騰により注入用水を脱気し、次いで70℃に冷却した。アセトアミノフェンを加えた。その溶液を、撹拌下、一定の窒素流入と55℃以上の温度を維持しながら、25分間放置した。
【0135】
この調製時の約55℃で測定されたpH値は以下に示す結果を与えた:
【0136】
【表5】
【0137】
活性成分を加えて25分後に、溶液を80℃にし、窒素圧下でろ過し、不活性ガス(N
2)で予めパージされているフラスコ中に集めた。窒素流れにおいてバイアル中への分配を行い、過剰殺菌条件(121℃15分間)下、オートクレーブ中においてそのバイアルを最終滅菌した。
【0138】
滅菌を受けたバイアルに対して行った分析は、以下に示す結果を与えた:
【0139】
【表6】
【0140】
研究したアセトアミノフェン溶液の安定性
安定性:アセトアミノフェン濃度がそれぞれ2.0%、2.5%、3%、5%及び8%w/vである5つのバッチを4℃、25℃及び40℃に置いた。
【0141】
4℃のサンプルに対しては物理化学分析を行わなかった。低温保存の目的は、活性成分のあらゆる再結晶をチェックすることにあった。この目的のため、サンプルは、週に一度の視覚分析を受けた。2ヶ月後、テストした溶液において沈殿物の存在の証拠はなかった。
【0142】
25、40及び4℃で2ヶ月後、物理化学的観点から溶液に変化はなかった。
【0143】
溶液のpHは、増加傾向を示し、約5.5の値から開始して、最大ストレスの条件(40℃)下で6.0に達する。
【0144】
アセトアミノフェンの力価には変化がない。4−アミノフェノール不純物は、常に、分析に用いたHPLC法の検出限界を下回ったままである。二量体の濃度は、常に0.1%未満である。他の不純物は検出されなかった。
【0145】
例7
アセトアミノフェンと脊髄用の局所麻酔薬の混合物の物理化学的安定性
例5のアセトアミノフェン濃度が1.5%と2%w/vの溶液と、脊髄用の各種麻酔薬(アミド類及びエステル類からのもの、例えばブピバカインHCl、リドカインHCl、プリロカインHCl、クロロプロカインHCl、メピバカインHCl、ロピバカインHCl)を、これら麻酔薬それぞれの既知の全用量範囲と10mg〜60mgのアセトアミノフェンの用量範囲とをカバーするために様々な割合で、混合した。
【0146】
かかる混合物は、麻酔医によって一般的に使用される装置及び手順を用いて調製された(シリンジ、針及び成分の添加順序)。
【0147】
行われたテストでは、以下に示す脊髄用の麻酔薬を含んだ:
・クロロプロカイン1%:最小用量:4ml;最大用量5ml
・クロロプロカイン3%:最小用量:1.3ml;最大用量1.7ml
・高圧プリロカイン2%:最小用量:2ml;最大用量3ml
・プリロカイン2%:最小用量:2.5ml;最大用量4ml
・ロピバカイン5mg/ml:最小用量:3ml;最大用量5ml
・ロピバカイン10mg/ml:最小用量:1.5ml;最大用量2.5ml
・高圧ブピバカイン0.5%:最小用量:1.5ml;最大用量4ml
・メピバカイン2%:最小用量:1ml;最大用量3ml
・メピバカイン4%:最小用量:0.5ml;最大用量1.5ml
・リドカイン0.5%:最小用量:8ml;最大用量16ml
・リドカイン2%:最小用量:2ml;最大用量4ml
【0148】
用量が10mg〜60mgであるアセトアミノフェン1.5%及び2%の溶液との混合物は、脊髄用の各麻酔薬の最小及び最大の用量それぞれについて調製された:
・アセトアミノフェン1.5%:最小用量:0.7ml;最大用量4ml
・アセトアミノフェン2%:最小用量:0.5ml;最大用量3ml
【0149】
上記2つの製品(麻酔薬及びアセトアミノフェン)を、麻酔薬の分野において一般的に使用される作業手順に従って混合した。その溶液は、同一の滅菌シリンジを用いて直径18Gの針を通し、また、このようにして作られた混合物を脊髄麻酔薬用の針(使用した直径は24G、25G及び27Gであった)を用いてガラスバイアル中に分注することによって、引き出された。
【0150】
記録と結果混合物の両方を評価するために何回も溶液を引き出す順番(最初が麻酔薬、次にアセトアミノフェン、及びその逆)を変え、沈殿物がないことを評価するために10日間監視した。
【0151】
調製から10日に至るまでで沈殿物の存在を示す調製溶液はなかった。
【0152】
高圧ブピバカイン0.5%の最小用量(1.5ml)とアセトアミノフェン2%の最大用量(3ml)の混合物を3回調製した。1回目は通常の作業手順に従い、2回目はシリンジ中に混合物を残し、それを4℃の温度にて10日間置いておき、3回目は混合物を15℃の温度にて調製した。これらのケースではいずれも結晶及び/又は沈殿物の存在が観察されなかった。
【0153】
麻酔薬を加えないがアセトアミノフェン2%を取り込んだ2つのテストも行った。最初のテストでは、18Gの針を通してシリンジによってアセトアミノフェンを引き出し、27Gの針を通してガラスバイアル中に分注した。溶液の分注から1時間後、結晶及び/又は沈殿物の存在の兆候はなかった;調製から19時間後、針状の結晶の存在が観察された。
【0154】
2回目のテストでは、18Gの針を通してシリンジによってアセトアミノフェン2%を引き出し、該シリンジ中に放置した。30分後に溶液内での結晶の形成が観察された。
【0155】
アセトアミノフェンと麻酔薬の活性成分について、化学的観点から、このようにして作られたすべての混合物を分析した。いずれの場合も、24時間以内で、分解についての重要な事実は観察されなかった。
【0156】
例8
カラギーナン(50μl 1%)の足底内注入(左後足での注入、以下、「炎症部位」と称される)によって誘発される、マウスの炎症性疼痛のモデルにおける予備実験によって、脊髄投与(IT)によって投与されたアセトアミノフェン過飽和溶液の有効性をテストした。
【0157】
機械的刺激を受けた疼痛閾値(グラムで表される)を炎症の誘発から2、4、6及び24時間後に測定した。この閾値は、炎症性疼痛の指標と見なされるものである。
【0158】
炎症部位での浮腫の発達を測定し、炎症部位の体積(mL)の増加として表した。
【0159】
マウスでの脊髄投与をFairbanks(2003)に記載されるように行った。
【0160】
実験群
N=5マウスは、脊髄ビヒクル(IT;プラセボとして理解される)及びカラギーナンの足底内投与を受けた
N=7マウスは、アセトアミノフェンIT(10μg)及びカラギーナンの足底内投与を受けた
N=7マウスは、アセトアミノフェンIT(100μg)及びカラギーナンの足底内投与を受けた
【0161】
結果
マウスにつき用量100μgのITアセトアミノフェンは、マウスの炎症性疼痛の減少において効果的であった。ITアセトアミノフェンが100μgの用量で投与されたマウスは、炎症部位の機械的刺激を受けて著しく高い疼痛閾値を有していた(
図1)。
【0162】
マウスにつき用量100μgのITアセトアミノフェンは、誘発を受けて最初の2時間で、炎症部位の浮腫の発達のわずかな減少のみ(およそ20%)を生じた(
図2)。
【0163】
マウスにつき用量10μgのITアセトアミノフェンは、炎症性疼痛の減少において効果的ではなく、コントロールマウス群と比較してわずかであった(
図1)。
【0164】
テストされた全ての用量で、ITアセトアミノフェンは、毒性の明確な兆候も行動及び運動上の明確な変化も生じなかった。
【0165】
添付の
図1は、プラセボ、アセトアミノフェン10μg及びアセトアミノフェン100μgのIT投与後に炎症部位で機械的衝撃を受けた疼痛閾値を示す。
【0166】
図2は、プラセボ、アセトアミノフェン10μg及びアセトアミノフェン100μgのIT投与後に、誘発後の最初の2時間における炎症部位の浮腫の発達を示す。例6の生データと相対的統計分析を以下に示す。
【0167】
【表7】
【0168】
【表8】
【0169】
各カラムは異なる実験対象を表す
【0170】
例9
ラットの手術後の痛みのモデルにおける予備実験によって、脊髄投与(IT)によって投与されたアセトアミノフェン過飽和溶液の有効性をテストした。手術後の痛みは、Timothy J.Brennan(1996)に記載されるように、左後足の足底下部(subplantar region)の切開及びその後の縫合によって引き起こされた。
【0171】
機械的刺激を受けた疼痛閾値(グラムで表される)を切開から2、4、6及び24時間後に測定した。この閾値は、外科的介入の影響を受ける領域の痛み及び痛覚過敏の指標であると見なされる。
【0172】
実験群
N=5ラットは、外科的処置の直前に脊髄ビヒクル(IT;プラセボとして理解される)を受けた
N=5ラットは、外科的処置の直前にアセトアミノフェンIT(200μg)を受けた
【0173】
結果
ラットにつき用量200μgのITアセトアミノフェンは、
図3に示されるように、手術後の痛みの減少において効果的であった。ITアセトアミノフェンが200μgの用量で投与されたラットは、切開部位の機械的刺激を受けて著しく高い疼痛閾値を有していた(
図3)。用量200μgのITアセトアミノフェンは、24時間に亘って著しい累積的な鎮痛を生じた。
【0174】
ITアセトアミノフェンは、毒性の明確な兆候も行動又は運動上の明確な変化も生じなかった。本例に従う生データと相対的統計分析を以下に示す。
【0175】
【表9】
【0176】
例10
ラットの手術後の痛みのモデルにおける予備実験によって、脊髄投与(IT)によって投与されたアセトアミノフェン過飽和溶液の有効性を、クロロプロカイン3%の溶液と組み合わせて、テストした。
【0177】
手術後の痛みは、Timothy J.Brennan(1996)に記載されるように、左後足の足底下部の切開及びその後の縫合によって引き起こされた。
【0178】
機械的刺激を受けた疼痛閾値(グラムで表される)を切開から4時間後に測定した。この期間内で、脊髄クロロプロカインの麻酔効果の完全な減少を予期する。疼痛閾値の減少は、外科的介入の影響を受ける領域の痛み及び痛覚過敏の指標であると見なされる。
【0179】
実験群
N=5ラットは、外科的処置の直前に脊髄ビヒクル(IT;プラセボとして理解される)を受けた
N=5ラットは、外科的処置の直前にアセトアミノフェンIT(200μg)を受けた
N=4ラットは、外科的処置の直前にクロロプロカインIT(3%、20μL)を受けた
N=4ラットは、外科的処置の直前にアセトアミノフェンIT(200μg)+クロロプロカインIT(3%、20μL)を受けた
【0180】
結果
ラットにつき用量200μgのITアセトアミノフェンは、
図4に示されるように、手術後の痛みの減少において効果的であった。ITアセトアミノフェンが200μgの用量で投与されたラットは、切開部位の機械的刺激を受けて著しく高い疼痛閾値を有していた(
図4)。
【0181】
ラットに対するITクロロプロカイン(3%、20μL)は、切開部位の機械的刺激を受けて疼痛閾値の変化がなく、麻酔効果の終了を示した。
【0182】
ラットに対して用量200μgのITアセトアミノフェンは、クロロプロカイン(3%、20μL)との同時投与において、切開部位の機械的刺激を受けて疼痛閾値の著しい上昇を生じ、追加の鎮痛効果を示唆する傾向があった。
【0183】
ラットに対して用量200μgのITアセトアミノフェンは、クロロプロカイン(3%、20μL)との同時投与において、毒性の明確な兆候も行動又は運動上の明確な変化も生じなかった。クロロプロカイン(3%、20μL)を受けたラットは、4時間後、後ろ肢の歩行及び張力の観点から完全な回復を有していた。
【0184】
本例に従う生データを以下に示す。
【0185】
【表10】