特許第5876622号(P5876622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリエンタル鍍金株式会社の特許一覧

特許5876622めっき積層体の製造方法及びめっき積層体
<>
  • 特許5876622-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図000004
  • 特許5876622-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図000005
  • 特許5876622-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図000006
  • 特許5876622-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図000007
  • 特許5876622-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図000008
  • 特許5876622-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図000009
  • 特許5876622-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図000010
  • 特許5876622-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876622
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】めっき積層体の製造方法及びめっき積層体
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/12 20060101AFI20160218BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20160218BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C25D5/12
   C25D7/00 H
   H01R13/03 D
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-522487(P2015-522487)
(86)(22)【出願日】2014年4月16日
(86)【国際出願番号】JP2014002168
(87)【国際公開番号】WO2014199547
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-121772(P2013-121772)
(32)【優先日】2013年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-238009(P2013-238009)
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-51783(P2014-51783)
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598098434
【氏名又は名称】オリエンタル鍍金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100148426
【弁理士】
【氏名又は名称】森貞 好昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏▲禎▼
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−055521(JP,A)
【文献】 特開2009−076322(JP,A)
【文献】 特開2011−026677(JP,A)
【文献】 特開2011−231369(JP,A)
【文献】 特開2001−003194(JP,A)
【文献】 特開2009−228033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/12
C25D 5/50
C25D 7/00
H01R 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材の表面に形成された錫めっき層の上に銀めっき層を形成させるめっき積層体の製造方法であって、
前記錫めっき層の表面の任意の領域に電解ニッケルめっき処理を施してニッケルめっき層を形成させる第一工程と、
前記ニッケルめっき層の表面の任意の領域に銀ストライクめっき処理を施す第二工程と、
前記銀ストライクめっき処理を施した後の前記ニッケルめっき層の表面の少なくとも一部に電解銀めっき処理を施す第三工程と、を含み、
前記第一工程の前処理として、前記ニッケルめっき層を形成させる前記錫めっき層の表面の任意の領域に、銀ストライクめっき、金ストライクめっき、パラジウムストライクめっき、ニッケルストライクめっき、銅ストライクめっきの群より選ばれる1または2以上のストライクめっきを施すこと、
を特徴とするめっき積層体の製造方法。
【請求項2】
前記ニッケルめっき層の厚さが0.05μm〜10μmであること、
を特徴とする請求項1に記載のめっき積層体の製造方法。
【請求項3】
前記銀めっき層の厚さが0.1μm〜50μmであり、
前記銀めっき層のビッカース硬度が10HV〜250HVであること、
を特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のめっき積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はめっき積層体の製造方法及びその製造方法により得られるめっき積層体に関し、より具体的には、優れた耐摩耗性、電導性、摺動性及び低摩擦性を有し、かつ、めっき層の脆化を抑制するのに好適な錫めっき/銀めっき積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀めっきは電導性、低接触抵抗性及び耐熱性等に優れた特性を有し、各種接点、端子、コネクタ、スイッチ等の電気・電子部品に広く利用されている(例えば、特許文献1(特開2001−3194号公報)参照)。
【0003】
近年、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の普及が進んでおり、それに伴って家庭用充電装置及び急速充電装置等の充電装置の普及も進んでいる。自動車と充電装置とを連結する充電コネクタの端子は、高電圧及び高電流下での使用に加え、数万回にも及ぶ抜き差し動作に耐えなければならない。
【0004】
ここで、上述の電気・電子部品の端子には、銅基板の上に錫めっきやリフロー錫めっきを施した材料が用いられることが多く、当該材料の表面に良好な銀めっきを施すことができれば、端子に優れた耐摩耗性と電導性を付与することができると思われる。
【0005】
しかしながら、卑な金属である錫の上に貴な金属である銀をめっきすることは極めて困難であり、錫と銀との電位差により錫と銀との置換が発生し(互いに拡散し合い)、銀めっきの剥離等が生じてしまう。このような理由から、錫めっきの上に良好な銀めっきを積層させる技術は存在しないのが現状である。
【0006】
この点、例えば特許文献2(特開平8−176883号公報)においては、銅または銅合金からなる母材表面の少なくとも一部にSnめっき層を設け、該Snめっき層の上に、Cu、In、Ag、Zn、Sbのうち、1種または2種以上を多層めっきする工程を含むめっき材の製造方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載の製造方法はSn合金めっき材を製造することが目的であり、上述の工程で得られる多層めっきを非酸化性雰囲気中で加熱することにより、母材表面の少なくとも一部に、Sn80〜99%を含むSn合金めっき層(但し、めっき層中のCu、Zn、Sbの合計量は10%以下とする)を形成することを特徴とするものである。当該手法は加熱によって錫と銀とを合金化させるものであり、錫めっきと銀めっきとの乏しい密着性は深刻な問題とはならない(即ち、錫めっきの上に良好な銀めっきを積層させる技術ではない。)。
【0008】
加えて、錫めっき層と銀めっき層とが直接接している場合、錫と銀との拡散及び反応に伴う金属間化合物(例えば、Ag3Sn)の形成により、錫めっき層及び/又は銀めっき層が脆化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−3194号公報
【特許文献2】特開平8−176883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、優れた耐摩耗性、電導性、摺動性及び低摩擦性を有し、かつ、めっき層の脆化を抑制するのに好適な錫めっき/銀めっき積層体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記目的を達成すべく、錫めっき上に銀めっきを積層させる方法について鋭意研究を重ねた結果、錫と銀との拡散及び反応を抑制し、密着性に優れた錫めっき/銀めっき積層体を得るためには、銀めっきの予備処理として、錫めっきに対してニッケルめっきを施してニッケルめっき層を形成させ、当該ニッケルめっき層に対して銀ストライクめっきを施すことが極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明は、
金属基材の表面に形成された錫めっき層の上に銀めっき層を形成させるめっき積層体の製造方法であって、
前記錫めっき層の表面の任意の領域(即ち、所望する所定の領域)にニッケルめっき処理を施してニッケルめっき層を形成させる第一工程と、
前記ニッケルめっき層の表面の任意の領域に銀ストライクめっき処理を施す第二工程と、
前記銀ストライクめっき処理を施した後の前記ニッケルめっき層の表面の少なくとも一部に銀めっき処理を施す第三工程と、を含むこと、
を特徴とするめっき積層体の製造方法を提供する。
【0013】
本発明のめっき積層体の製造方法においては、前記第一工程の前処理として、前記ニッケルめっき層を形成させる前記錫めっき層の表面の任意の領域に、銀ストライクめっき、金ストライクめっき、パラジウムストライクめっき、ニッケルストライクめっき、銅ストライクめっきの群から選ばれる1または2以上のストライクめっきを施すこと、が好ましい。錫めっき層のニッケルめっき層を形成させる領域にストライクめっき処理を施すことで、錫めっき層とニッケルめっき層との密着性をより確実に向上させることができる。
【0014】
ここで、第一工程のニッケルめっき処理によって形成されるニッケルめっき層は、連続する膜形状であることが好ましく、当該ニッケルめっき層の厚さは0.05μm〜10μmであることが好ましい。また、より好ましいニッケルめっき層の厚さは0.5μm〜2μmである。0.05μm未満であるとバリア効果に乏しく、10μm以上であると曲げ加工時にクラックが発生しやすくなる。なお、ニッケルめっき層は、本発明の効果を損なわない範囲で、粒状や島状の不連続な膜形状であってもよい。後者の場合、粒状及び島状部分が部分的に連続していてもよい。
【0015】
また、第二工程の銀ストライクめっき処理によって形成される銀ストライクめっき層は、連続する膜形状であっても、本発明の効果を損なわない範囲で、粒状や島状の不連続な膜形状であってもよい。後者の場合、粒状及び島状部分が部分的に連続していてもよい。なお、第三工程の銀めっき処理によって、銀ストライクめっき層の上に銀めっき層が形成され、概略的には単一の銀めっき層が得られる。銀ストライクめっき層の厚さは0.01μm〜0.5μmであることが好ましい。
【0016】
また、本発明のめっき積層体の製造方法においては、上記第三工程の銀めっき処理を経て得られる上記単一の銀めっき層の厚さが0.1μm〜50μmであること、が好ましい。なお、当該厚さは銀ストライクめっき層と銀めっき層とを合わせた値である。
【0017】
第三工程の銀めっき処理を経て得られる上記単一の銀めっき層は基本的に一定の厚さを有するが、本発明の効果を損なわない範囲で、部分的に薄くなっていたり厚くなっていたりしてもよい。また、上記銀めっき層のビッカース硬度が10HV〜250HVであることが好ましい。
【0018】
なお、本発明における錫めっき層とは、電着後そのままの錫めっき層と、電着後リフロー処理を施したリフロー錫めっき層とを含む概念である。なお、リフロー錫めっき層とは、電着した錫めっき層を加熱して一旦溶融し、急冷する処理を施された錫めっき層を意味する(以下、同様)。
【0019】
また、本発明は、上記の本発明のめっき積層体を製造するためのめっき積層体前駆体も提供する。本発明のめっき積層体前駆体は、金属基材の表面に形成された錫めっき層と、前記錫めっき層の上に形成されたストライクめっき層と、を有すること、を特徴とする。上記のストライクめっき層は、銀ストライクめっき、金ストライクめっき、パラジウムストライクめっき、ニッケルストライクめっき、銅ストライクめっきの群から選ばれる1または2以上のストライクめっき層であればよい。
【0020】
本発明のめっき積層体前駆体は、錫めっき層の表面に銀ストライクめっき、金ストライクめっき、パラジウムストライクめっき、ニッケルストライクめっき、銅ストライクめっきの群から選ばれる1または2以上のストライクめっき層が形成されているため、当該ストライクめっき層の上に、密着性に優れたニッケルめっき層等のめっき層を容易に形成させることができる。
【0021】
したがって、本発明のめっき積層体前駆体は、金属基材の表面に形成された錫めっき層と、前記錫めっき層の上に形成されたストライクめっき層と、更に、前記ストライクめっき層の上に形成されためっき層と、を有するものであってもよい。
【0022】
本発明は、上記のめっき積層体前駆体の製造方法にも関する。即ち、本発明のめっき積層体前駆体の製造方法は、金属基材の表面に形成された錫めっき層の表面の任意の領域(即ち、所望する所定の領域)にストライクめっきを施す工程を有すること、を特徴とする。錫めっき層のニッケルめっき層を形成させる領域にストライクめっき処理を施すことで、錫めっき層とニッケルめっき層との密着性をより確実に向上させることができる。
【0023】
この本発明のめっき積層体前駆体の製造方法は、更には、前記領域にニッケルめっき処理を施してニッケルめっき層を形成させる工程を具備する。
【0024】
また、本発明は、上記のめっき積層体の製造方法により得られるめっき積層体も提供するものであり、当該めっき積層体は、
金属基材の表面に形成された錫めっき層と、
前記錫めっき層の上に形成されたニッケルめっき層と、
前記ニッケルめっき層の上に形成された銀めっき層と、を有し、
前記銀めっき層は前記ニッケルめっき層に対して冶金的に接合され、
前記ニッケルめっき層は前記錫めっき層に対して冶金的に接合されていること、
を特徴とする。
【0025】
冶金的な接合とは、錫めっき層と銀めっき層とがアンカー効果等の機械的接合や接着剤等の異種接合層を介して接合されているのではなく、お互いの金属同士が直接接合されていることを意味する。冶金的な接合とは結晶学的整合(エピタキシー)による接合を当然に含む概念であり、本発明において、各めっき層は互いに結晶学的整合(エピタキシー)による接合が達成されていることが好ましい。
【0026】
また、本発明は上記本発明のめっき積層体を含む接続端子にも関し、当該接続端子は、雄端子及び/又は雌端子が上記の本発明のめっき積層体で構成されている。
【0027】
上記の本発明の接続端子においては、耐摩耗性が要求される嵌合部の最表面を錫めっき層とし、電導性が要求される接点部の最表面を銀めっき層とすること、が好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のめっき積層体の製造方法によれば、優れた耐摩耗性、電導性、摺動性及び低摩擦性を有し、かつ、めっき層の脆化を抑制するのに好適な錫めっき/銀めっき積層体及びその製造方法を提供することができる。また、本発明の錫めっき/銀めっき積層体は、優れた耐摩耗特性と電導性とを必要とする接続端子用の材料として好適に用いることができ、優れた耐摩耗性と電導性、及び嵌合性を兼ね備えた接続端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のめっき積層体の製造方法の工程図である。
図2】本発明の銀めっき積層体の第一実施形態の概略断面図である。
図3】本発明の銀めっき積層体の第二実施形態の概略断面図である。
図4】本発明の銀めっき積層体の第三実施形態の概略断面図である。
図5】本発明の銀めっき積層体の第四実施形態の概略断面図である。
図6】本発明の接続端子の一例を示す概略図である。
図7】本発明の実施例における試料の断面観察の写真である。
図8】本発明の実施例における試料の元素分析(線分析)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明のめっき積層体の製造方法、めっき積層体、及び接続端子の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0031】
≪めっき積層体の製造方法≫
図1は、本発明のめっき積層体の製造方法の工程図である。本発明のめっき積層体の製造方法は、金属基材の表面に形成された錫めっき層の上に銀めっき層を形成させるめっき積層体の製造方法であって、錫めっき層の表面の任意の領域にニッケルめっき処理を施してニッケルめっき層を形成させる第一工程(S01)と、ニッケルめっき層の表面の任意の領域に銀ストライクめっき処理を施す第二工程(S02)と、銀ストライクめっき処理を施した後のニッケルめっき層の表面の少なくとも一部に銀めっき処理を施す第三工程(S03)と、を含んでいる。
【0032】
金属基材に用いる金属は、電導性を有している限り特に限定されず、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、鉄及び鉄合金、チタン及びチタン合金、ステンレス、銅及び銅合金等を挙げることができるが、なかでも、電導性・熱伝導性・展延性に優れているという理由から、銅及び銅合金を用いることが好ましい。
【0033】
金属基材に錫めっきを施したものに対し、洗浄処理を行い、第一工程(S01)、第二工程(S02)、及び第三工程(S03)を経てめっき積層体を得ることができる。以下、各処理について詳細に説明する。
【0034】
(1)錫めっき処理
金属基材に錫めっきを施した材料については市販のものを使用することができる。また、錫めっきには、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の錫めっき手法を用いることができる。
【0035】
なお、錫めっきへのリフローは時間の経過に伴うウィスカー(針状金属結晶)の成長を抑制するための処理であり、一般的には電着した錫めっき層を加熱して一旦溶融し、急冷する方法が用いられている。錫めっき層を溶融することによって、めっき時の応力(歪み)を除去し、金属基材との拡散層を形成することで経時的な変化を低減することができる。
【0036】
錫めっき浴としては、酸性浴、中性浴、アルカリ性浴があり、いずれの浴も使用出来る。酸性浴としては硫酸浴や有機スルホン酸浴、中性浴はピロリン酸浴やグルコン酸浴、アルカリ性浴としてはスズ酸カリウム浴やスズ酸ナトリウム浴が一般的である。
【0037】
リフロー処理は、金属基材表面の一部又は全体に施された錫めっき層を錫の融点以上に加熱して溶融させればよい。錫めっき層の内部応力を緩和するために、好ましい処理温度は250〜600℃であり、より好ましくは300〜500℃、更に好ましくは350〜450℃である。また、めっき外観をよくするために、好ましい処理時間は3〜40秒間であり、より好ましくは5〜30秒間、更に好ましくは5〜20秒間である。その他、加熱処理は還元雰囲気または不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0038】
(2)洗浄処理
洗浄工程は、任意の工程であり、図1には示していないが、錫めっき層を有する金属基材のうちの少なくとも錫めっき層の表面を洗浄する工程である。ここでは、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の洗浄処理液及び処理条件を用いることができる。
【0039】
洗浄処理液には一般的な非鉄金属用の浸漬脱脂溶液や電解脱脂溶液を使用することができるが、両性金属である錫の腐食を防止するため、pHが2超11未満の洗浄処理溶液を使用することが好ましく、pHが2以下の強酸浴やpHが11以上の強アルカリ浴の使用は避けることが好ましい。
【0040】
具体的には、第三リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムまたはオルトケイ酸ナトリウム等10〜50g/Lを水溶した弱アルカリ性の浴に界面活性剤0.1〜10g/Lを加えた浴で浴温20〜70℃、10〜60秒間浸漬する。または陽極にステンレス鋼、チタン白金板、及び酸化イリジウム等の不溶性陽極を用いて、陰極電流密度2〜5A/dm2で陰極電解脱脂を行ってもよい。
【0041】
(3)ストライクめっき処理
ニッケルめっき処理(第一工程(S01))の予備処理としてのストライクめっき処理は任意の工程であり、図1には示していないが、銀ストライクめっき、金ストライクめっき、パラジウムストライクめっき、ニッケルストライクめっき、銅ストライクめっきの群から選ばれる1または2以上のストライクめっきを施すことで、ニッケルめっきの密着性をより確実に向上させることができる。
【0042】
(A)銀ストライクめっき
銀ストライクめっき浴としては、例えば、シアン化銀及びシアン化銀カリウム等の銀塩と、シアン化カリウム及びピロリン酸カリウム等の電導塩と、を含むものを用いることができる。
【0043】
銀ストライクめっき処理には、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の銀めっき手法を用いることができるが、通常の銀めっきと比較して、めっき浴中の銀塩の濃度を低く、電導塩の濃度を高くすることが好ましい。
【0044】
銀ストライクめっき処理に好適に用いることができる銀ストライクめっき浴は、銀塩と、シアン化アルカリ塩と、電導塩と、により構成され、必要に応じて光沢剤が添加されていてもよい。各構成要素の好適な使用量は、銀塩:1〜10g/L、シアン化アルカリ塩:80〜200g/L、電導塩:0〜100g/L、光沢剤:〜1000ppmである。
【0045】
銀塩としては、例えば、シアン化銀、ヨウ化銀、酸化銀、硫酸銀、硝酸銀、塩化銀等が挙げられ、電導塩としては、例えば、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヨウ化カリウム、チオ硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
光沢剤としては金属光沢剤及び/又は有機光沢剤を用いることができる。また、金属光沢剤としては、アンチモン(Sb)、セレン(Se)、テルル(Te)等を例示でき、有機光沢剤としては、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸化合物、メルカプタン類等を例示することができる。
【0047】
銀ストライクめっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等の銀ストライクめっき条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、ステンレス鋼、チタン白金板、及び酸化イリジウム等の不溶性陽極を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:15〜50℃、電流密度:0.5〜5A/dm2、処理時間:5〜60秒を例示することができる。
【0048】
なお、銀ストライクめっきは錫めっき層の全面に施してもよく、第一工程(S01)においてニッケルめっきを形成させたい領域のみに施してもよい。
【0049】
(B)金ストライクめっき
金ストライクめっき浴としては、例えば、金塩、電導塩、キレート剤及び結晶成長剤を含むものを用いることができる。また、金ストライクめっき浴には光沢剤が添加されていてもよい。
【0050】
金塩には、例えば、シアン化金、シアン化第一金カリウム、シアン化第二金カリウム、亜硫酸金ナトリウム及びチオ硫酸金ナトリウム等を用いることができる。電導塩には、例えば、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム及びチオ硫酸カリウム等を用いることができる。キレート剤には、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びメチレンホスホン酸等を用いることができる。結晶成長剤には、例えば、コバルト、ニッケル、タリウム、銀、パラジウム、錫、亜鉛、銅、ビスマス、インジウム、ヒ素及びカドミウム等を用いることができる。なお、pH調整剤として、例えば、ポリリン酸、クエン酸、酒石酸、水酸化カリウム及び塩酸等を添加してもよい。
【0051】
光沢剤としては、金属光沢剤及び/又は有機光沢剤を用いることができる。また、金属光沢剤としては、アンチモン(Sb)、セレン(Se)、テルル(Te)等を例示でき、有機光沢剤としては、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸化合物、メルカプタン類等を例示することができる。
【0052】
金ストライクめっき処理に好適に用いることができる金ストライクめっき浴の各構成要素の好適な使用量は、金塩:1〜10g/L、電導塩:0〜200g/L、キレート剤:0〜30g/L、結晶成長剤:0〜30g/Lである。
【0053】
金ストライクめっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等の金ストライクめっき条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、チタン白金板及び酸化イリジウム等の不溶性陽極等を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:20〜40℃、電流密度:0.1〜5.0A/dm2、処理時間:1〜60秒、pH:0.5〜7.0を例示することができる。
【0054】
なお、金ストライクめっきは金属基材の全面に施してもよく、第一工程(S01)においてニッケルめっきを形成させたい領域のみに施してもよい。
【0055】
(C)パラジウムストライクめっき
パラジウムストライクめっき浴としては、例えば、パラジウム塩及び電導塩を含むものを用いることができる。また、パラジウムストライクめっき浴には光沢剤が添加されていてもよい。
【0056】
パラジウム塩には、例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、ジクロロテトラアンミンパラジウム、ジアミノジクロロパラジウム等を用いることができる。電導塩には、例えば、リン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、塩化アンモニウム、クエン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、クエン酸カリウム等を用いることができる。キレート剤には、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びメチレンホスホン酸等を用いることができる。
【0057】
光沢剤としては、サッカリンナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホミド、ブチンジオール、ベンゾアルデヒドスルホン酸ナトリウム等を例示することができる。
【0058】
パラジウムストライクめっき処理に好適に用いることができるパラジウムストライクめっき浴の各構成要素の好適な使用量は、パラジウム塩:0.5〜20g/L、電導塩:50〜200g/L、光沢剤:0〜50g/Lである。
【0059】
パラジウムストライクめっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等のパラジウムストライクめっき条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、チタン白金板及び酸化イリジウム等の不溶性陽極等を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:20〜50℃、電流密度:0.1〜5.0A/dm2、処理時間:1〜60秒を例示することができる。
【0060】
なお、パラジウムストライクめっきは金属基材の全面に施してもよく、第一工程(S01)においてニッケルめっきを形成させたい領域のみに施してもよい。
【0061】
(D)ニッケルストライクめっき
ニッケルストライクめっき浴としては、例えば、ニッケル塩、陽極溶解促進剤及びpH緩衝剤を含むものを用いることができる。また、ニッケルストライクめっき浴には添加剤が添加されていてもよい。
【0062】
ニッケル塩には、例えば、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル及び塩化ニッケル等を用いることができる。陽極溶解促進剤には、例えば、塩化ニッケル及び塩酸等を用いることができる。pH緩衝剤には、例えば、ホウ酸、酢酸ニッケル及びクエン酸等を用いることができる。添加剤には、例えば、1次光沢剤(サッカリン、ベンゼン、ナフタレン(ジ、トリ)、スルホン酸ナトリウム、スルホンアミド、スルフィン酸等)、2次光沢剤(有機化合物:ブチンジオール、クマリン、アリルアルデヒドスルホン酸等、金属塩:コバルト、鉛、亜鉛等)及びピット防止剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等を用いることができる。
【0063】
ニッケルストライクめっき処理に好適に用いることができるニッケルストライクめっき浴の各構成要素の好適な使用量は、ニッケル塩:100〜300g/L、陽極溶解促進剤:0〜300g/L、pH緩衝剤:0〜50g/L、添加剤:0〜20g/Lである。
【0064】
ニッケルストライクめっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等のニッケルストライクめっき条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、電解ニッケル、カーボナイズドニッケル、デポライズドニッケル、サルファニッケル等の可溶性陽極等を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:20〜30℃、電流密度:1.0〜5.0A/dm2、処理時間:1〜30秒、pH:0.5〜4.5を例示することができる。
【0065】
なお、ニッケルストライクめっきは金属基材の全面に施してもよく、第一工程(S01)においてニッケルめっきを形成させたい領域のみに施してもよい。
【0066】
(E)銅ストライクめっき
銅ストライクめっき浴としては、例えば、シアン化銅浴を用いることができる。シアン化銅浴は、銅塩、シアン化アルカリ塩及び電導塩により構成され、添加剤が添加されてもよい。
【0067】
銅塩には、例えば、シアン化銅等を用いることができる。シアン化アルカリ塩には、例えば、シアン化カリウム及びシアン化ナトリウム等を用いることができる。電導塩には、例えば、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等を用いることができる。添加剤には、例えば、ロッシェル塩、亜セレン酸カリウム、亜セレン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、酢酸鉛、酒石酸鉛等を用いることができる。
【0068】
銅ストライクめっき処理に好適に用いることができるシアン系浴の各構成要素の好適な使用量は、銅塩:10〜80g/L、シアン化アルカリ酸:20〜50g/L、電導塩:10〜50g/L、添加剤:0〜60g/Lである。
【0069】
銅ストライクめっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等の銅ストライクめっき条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、電解銅等の可溶性陽極、及び/又は、ステンレス鋼、チタン白金板、酸化イリジウム等の不溶性陽極等を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:25〜70℃、電流密度:0.1〜6.0A/dm2、処理時間:5〜60秒を例示することができる。
【0070】
なお、銅ストライクめっきは金属基材の全面に施してもよく、第一工程(S01)においてニッケルめっきを形成させたい領域のみに施してもよい。
【0071】
上記各種ストライクめっきは1種類のみを施しても、複数のストライクめっきを積層させてもよい。また、金属基材の表面状態により、ストライクめっき処理なしでもニッケルめっきの密着状況が良好となる場合は、当該ストライクめっき処理を省略することができる。
【0072】
(4)ニッケルめっき処理(第一工程(S01))
ニッケルめっき処理は、錫めっき層と銀めっき層との間において、錫と銀との拡散及び反応を防止するバリア層として機能するニッケルめっき層を形成させるために施される処理である。錫めっき層と銀めっき層との間にニッケルめっき層が存在することで、錫と銀との拡散及び反応に伴う金属間化合物(例えば、Ag3Sn)の形成による、錫めっき層及び/又は銀めっき層の脆化を抑制することができる。
【0073】
ニッケルめっき浴としては、例えば、ワット浴やスルファミン酸浴を用いることができるが、電着応力の低いスルファミン酸浴を用いることが好ましい。なお、強酸性のウッドストライク浴は避ける方が好ましい。ニッケルめっき処理には、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々のニッケルめっき手法を用いることができる。例えば、ニッケルめっき浴は硫酸ニッケル・スルファミン酸ニッケル・塩化ニッケル等のニッケル塩と、塩化ニッケル等の陽極溶解剤と、ホウ酸・酢酸・クエン酸等のpH緩衝剤とで構成された液に、添加剤として少量の光沢剤やレベリング剤、ピット防止剤等を添加したものを用いることができる。各構成要素の好適な使用量は、ニッケル塩:100〜600g/L、陽極溶解剤:0〜50g/L、pH緩衝剤:20〜50g/L、添加剤:〜5000ppmである。
【0074】
なお、前述のとおり、第一工程のニッケルめっき処理によって形成されるニッケルめっき層は、連続する膜形状であることが好ましく、当該ニッケルめっき層の厚さは0.05μm〜10μmであることが好ましい。0.05μm未満であるとバリア効果に乏しく、10μm以上であると曲げ加工時にクラックが発生しやすくなる。なお、ニッケルめっき層は、本発明の効果を損なわない範囲で、粒状や島状の不連続な膜形状であってもよい。後者の場合、粒状及び島状部分が部分的に連続していてもよい。
【0075】
(5)銀ストライクめっき処理(第二工程(S02))
銀ストライクめっき処理は、第一工程(S01)によって形成されたニッケルめっき層と銀めっき層との密着性を改善するために施される処理である。銀ストライクめっき浴としては、例えば、シアン化銀及びシアン化銀カリウム等の銀塩と、シアン化カリウム及びピロリン酸カリウム等の電導塩と、を含むものを用いることができる。
【0076】
銀ストライクめっき処理には、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の銀めっき手法を用いることができるが、通常の銀めっきと比較して、めっき浴中の銀塩の濃度を低く、電導塩の濃度を高くすることが好ましい。
【0077】
銀ストライクめっき処理に好適に用いることができる銀ストライクめっき浴は、銀塩と、シアン化アルカリ塩と、電導塩と、により構成され、必要に応じて光沢剤が添加されていてもよい。各構成要素の好適な使用量は、銀塩:1〜10g/L、シアン化アルカリ塩:80〜200g/L、電導塩:0〜100g/L、光沢剤:〜1000ppmである。
【0078】
銀塩としては、例えば、シアン化銀、ヨウ化銀、酸化銀、硫酸銀、硝酸銀、塩化銀等が挙げられ、電導塩としては、例えば、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヨウ化カリウム、チオ硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0079】
光沢剤としては金属光沢剤及び/又は有機光沢剤を用いることができる。また、金属光沢剤としては、アンチモン(Sb)、セレン(Se)、テルル(Te)等を例示でき、有機光沢剤としては、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸化合物、メルカプタン類等を例示することができる。
【0080】
銀ストライクめっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等の銀ストライクめっき条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、ステンレス鋼、チタン白金板、及び酸化イリジウム等の不溶性陽極を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:15〜50℃、電流密度:0.5〜5A/dm2、処理時間:5〜60秒を例示することができる。
【0081】
なお、銀ストライクめっきはニッケルめっき層の全面に施してもよく、第三工程(S03)において銀めっきを形成させたい領域のみに施してもよい。
【0082】
(6)銀めっき処理(第三工程(S03))
銀めっき処理は第二工程(S02)において銀ストライクめっきされた領域のうちの少なくとも一部に、概略的には単一のより厚い銀めっき層を形成させるための処理である。
【0083】
銀めっき処理には、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の銀めっき手法を用いることができるが、通常の銀ストライクめっきと比較して、めっき浴中の銀塩の濃度を高く、電導塩の濃度を低くすることが好ましい。
【0084】
銀めっき処理に好適に用いることができる銀めっき浴は、銀塩と、シアン化アルカリ塩と、電導塩と、により構成され、必要に応じて光沢剤が添加されていてもよい。各構成要素の好適な使用量は、銀塩:30〜150g/L、シアン化アルカリ塩:15〜160g/L、電導塩:500〜200g/L、光沢剤:〜100ppmである。
【0085】
銀塩としては、例えば、シアン化銀、ヨウ化銀、酸化銀、硫酸銀、硝酸銀、塩化銀等が挙げられ、電導塩としては、例えば、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヨウ化カリウム、チオ硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0086】
光沢剤としては金属光沢剤及び/又は有機光沢剤を用いることができる。また、金属光沢剤としては、アンチモン(Sb)、セレン(Se)、テルル(Te)等を例示でき、有機光沢剤としては、芳香族スルホン酸化合物、メルカプタン類等を例示することができる。
【0087】
めっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等のめっき条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、可溶性陽極、ステンレス鋼、チタン白金板、及び酸化イリジウム等の不溶性陽極を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:20〜60℃、電流密度:0.5〜15A/dm2、処理時間:0.5〜10000秒を例示することができる。
【0088】
なお、銀めっきは金属基材、錫めっき層、及びニッケルめっき層の全面に施してもよく、第二工程(S02)において銀ストライクめっきを形成させた領域のみに施してもよい。
【0089】
≪めっき積層体前駆体≫
本発明のめっき積層体前駆体は、金属基材の表面に形成された錫めっき層と、当該錫めっき層の上に形成された、銀ストライクめっき、金ストライクめっき、パラジウムストライクめっき、ニッケルストライクめっき、銅ストライクめっきの群から選ばれる1または2以上のストライクめっき層と、を有している。
【0090】
本発明のめっき積層体前駆体は、錫めっき層の表面に銀ストライクめっき、金ストライクめっき、パラジウムストライクめっき、ニッケルストライクめっき、銅ストライクめっきの群から選ばれる1または2以上のストライクめっき層が形成されているため、当該ストライクめっき層の上に、密着性に優れたニッケルめっき層を容易に形成させることができ、本発明のめっき積層体の製造に好適に用いることができる。
【0091】
≪めっき積層体≫
(1)第一実施形態
図2は、本発明のめっき積層体の第一実施形態の概略断面図である。めっき積層体1は、金属基材2の表面に錫めっき層4が形成され、錫めっき層4の表面全体にニッケルめっき層6が形成されている。更に、ニッケルめっき層6の表面全体に銀ストライクめっき層8が形成され、銀ストライクめっき層8の表面全体に銀めっき層10が形成されている。なお、必要に応じて、錫めっき層4とニッケルめっき層6の間には銀ストライクめっき層8と同様の銀ストライクめっき層が形成されている(図示せず)。
【0092】
金属基材2の金属は、電導性を有している限り特に限定されず、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、鉄及び鉄合金、チタン及びチタン合金、ステンレス、銅及び銅合金等を挙げることができるが、なかでも、電導性・熱伝導性・展延性に優れているという理由から、銅及び銅合金を用いることが好ましい。
【0093】
錫めっき層4は電着後そのままの場合と、電着後にリフロー処理が施されている場合が存在するが、リフロー処理が施されている場合は金属基材2と錫めっき層4との界面近傍に拡散層が形成されている。
【0094】
ニッケルめっき層6は、連続する膜形状であることが好ましく、ニッケルめっき層6の厚さは0.05μm〜10μmであることが好ましい。また、より好ましいニッケルめっき層の6の厚さは0.5μm〜2μmである。なお、ニッケルめっき層6は、本発明の効果を損なわない範囲で、粒状や島状の不連続な膜形状であってもよい。後者の場合、粒状及び島状部分が部分的に連続していてもよい。
【0095】
また、銀ストライクめっき層8は連続する膜形状であっても、本発明の効果を損なわない範囲で、粒状や島状の不連続な膜形状であってもよい。後者の場合、粒状及び島状部分が部分的に連続していてもよい。なお、銀ストライクめっき条件によっては、銀ストライクめっき層8の識別が困難な場合も存在する。銀ストライクめっき層8の厚さは0.01μm〜0.5μmであることが好ましい。
【0096】
銀ストライクめっき層8の表面には、銀めっき層10が形成されている。銀めっき層10の厚さは0.1μm〜50μmであることが好ましく、ビッカース硬度は10HV〜250HVであることが好ましい。0.1μm未満では銀めっき層10の耐摩耗性を利用することができず、50μmより厚い場合は銀の使用量が増加するため経済的でない。
【0097】
(2)第二実施形態
図3は、本発明のめっき積層体の第二実施形態の概略断面図である。めっき積層体1は、金属基材2の表面に錫めっき層4が形成され、錫めっき層4の表面全体にニッケルめっき層6が形成されている。更に、ニッケルめっき層6の表面全体に銀ストライクめっき層8が形成され、銀ストライクめっき層8の表面の一部に銀めっき層10が形成されている。なお、銀ストライクめっき層8の一部に銀めっき層10が形成されている以外は、第一実施形態と同様である。
【0098】
(3)第三実施形態
図4は、本発明のめっき積層体の第三実施形態の概略断面図である。めっき積層体1は、金属基材2の表面に錫めっき層4が形成され、錫めっき層4の表面の一部にニッケルめっき層6が形成されている。更に、ニッケルめっき層6の表面全体に銀ストライクめっき層8が形成され、銀ストライクめっき層8の表面全体に銀めっき層10が形成されている。なお、錫めっき層4の表面の一部にニッケルめっき層6が形成され、ニッケルめっき層6の表面全体に銀ストライクめっき層8が形成され、銀ストライクめっき層8の表面全体に銀めっき層10が形成されている以外は、第一実施形態と同様である。
【0099】
(4)第四実施形態
図5は、本発明のめっき積層体の第四実施形態の概略断面図である。めっき積層体1は、金属基材2の表面に錫めっき層4が形成され、錫めっき層4の表面全体にニッケルめっき層6が形成されている。更に、ニッケルめっき層6の表面の一部に銀ストライクめっき層8が形成され、銀ストライクめっき層8の表面全体に銀めっき層10が形成されている。なお、錫めっき層4の表面全体にニッケルめっき層6が形成され、ニッケルめっき層6の表面の一部に銀ストライクめっき層8が形成され、銀ストライクめっき層8の表面全体に銀めっき層10が形成されている以外は、第一実施形態と同様である。また、第一実施形態〜第四実施形態においては錫めっき層4が金属基材2の全面に形成されているが、錫めっき層4は金属基材2の一部に形成されていてもよい。
【0100】
≪接続端子≫
本発明のめっき積層体は、各種接続端子に好適に用いることができる。具体的には、耐摩耗性が要求される嵌合部の最表面を錫めっき層4とし、電導性が要求される接点部の最表面を銀めっき層10とすることで、安価で高性能な接続端子を製造することができる。ここでいう嵌合部とは、屈曲やカシメ等により他の部材を挟む等して、他の部材と接続される部分のことである。
【0101】
図6は、本発明の接続端子の一例を示す(透視)概略図である。図6に示されている接続端子12は高圧端子であるが、接続端子12において電導性が要求される接点部分14の最表面は銀めっき層10となっており、耐摩耗性を要求されるハーネスとの接続部分16は最表面が錫めっき層4となっている。
【0102】
従来、接続端子には軸受性及び加工性に優れたリフロー錫めっきが多く用いられてきたが、耐摩耗性に乏しい、電気抵抗が高い、といった問題が存在した。これに対し、最表面を銀めっき層10とすることで、銀めっき層10が有する優れた耐摩耗性、低い電気抵抗、及び良好な耐熱性を利用することができる。
【0103】
本発明のめっき積層体1では錫めっき層4と銀ストライクめっき層8又は銀めっき層10との間にニッケルめっき層6が存在するため、錫めっき層4と銀ストライクめっき層8又は銀めっき層10との間において、ニッケルめっき層6が錫と銀との拡散及び反応を防止するバリア層として機能する。つまり、錫めっき層4と銀ストライクめっき層8又は銀めっき層10との間にニッケルめっき層6が存在することで、錫と銀との拡散及び反応に伴う金属間化合物(例えば、Ag3Sn)の形成による、錫めっき層及び/又は銀めっき層の脆化を抑制することができる。
【0104】
また、本発明のめっき積層体1では銀めっき層10と金属基材2との間に錫めっき層4及びニッケルめっき層6が存在し、加えて、錫めっき層4がリフロー錫めっき層の場合は拡散層及び/又は反応層も存在するため、金属基材2(例えば銅又は銅合金)から銀めっき層10への金属基材2に起因する金属(例えば銅)の拡散(乃至は置換)が抑えられ、めっき積層体1の経時変化を抑制することができる。
【0105】
更に、摺動摩耗が顕著な領域の最表面を銀めっき層10とすることで、摺動摩耗によって飛散した錫めっき層4の破片を原因とする、発火及び感電等の重大な事故を防止することができる。
【0106】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0107】
≪実施例1≫
市販の錫めっき材(厚さ0.6mmの銅合金材へ錫めっきを施し、リフローを施したもの)に以下の工程で0.05μmのニッケルめっき層及び1μmの銀めっき層を形成させた。キザイ株式会社製のマックスクリーンNG−30を40g/L含有する50℃の洗浄処理液に、上記錫めっき材を60秒間浸漬させることで、錫めっき層の表面に洗浄処理を施した。
【0108】
次に、300g/Lのスルファミン酸ニッケル、5g/Lの塩化ニッケル・6水和物、10g/Lのホウ酸、及び0.2g/Lのラウリル硫酸ナトリウムを含むニッケルめっき浴を用い、陽極材料をサルファニッケル板、陰極材料を洗浄処理後の錫めっき材として、浴温:50℃、電流密度:2A/dm2の条件で10秒間のニッケルめっき処理を施した(第一工程)。
【0109】
ついで、3g/Lのシアン化銀、150g/Lのシアン化カリウム、及び15g/Lの炭酸カリウムを含む銀ストライクめっき浴を用い、陽極材料をチタン白金板、陰極材料をニッケルめっき処理後の錫めっき材として、浴温:室温、電流密度:2A/dm2の条件で10秒間の銀ストライクめっき処理を施した(第二工程)。
【0110】
その後、40g/Lのシアン化銀、30g/Lのシアン化カリウム、及び30g/Lの炭酸カリウムを含む銀めっき浴を用い、陽極材料をチタン白金板、陰極材料を銀ストライクめっき処理後の錫めっき材として、浴温:30℃、電流密度:4A/dm2の条件で26秒間の処理を施し、1μmの単一の銀めっき層を形成させた(第三工程)。
【0111】
[評価]
(1)密着性評価
上記のようにして作製しためっき積層体について密着性の評価を行った。セロハンテープ(ニチバン株式会社製の#405)を指圧にて銀めっき層に押し付け、当該セロハンテープを引き剥がした後に銀めっき層の剥がれや膨れが発生しなかった場合は○、発生した場合は×とし、得られた結果を表1に示した。
【0112】
(2)金属間化合物(Ag3Sn)相の確認
上記のようにして作製しためっき積層体について金属間化合物(Ag3Sn)相が形成しているか否かを確認した。具体的には、室温で50時間放置しためっき積層体に対するX線回折結果により、金属間化合物(Ag3Sn)相に由来する回折ピークの有無を確認した。用いた装置は株式会社リガク製のUltima IV(検出器D/teX Ultra、CuKα線使用)であり、40kV−40mA、ステップ角0.1°、スキャン角度範囲20°〜100°の条件で測定した。金属間化合物(Ag3Sn)相に由来する回折ピークが確認された場合は×、確認されなかった場合は○とし、得られた結果を表1に示した。
【0113】
≪実施例2≫
ニッケルめっき処理の時間を20秒間とし、厚さ0.1μmのニッケルめっき層を形成させた以外は、実施例1と同様にしてめっき積層体を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0114】
≪実施例3≫
銀めっき処理の時間を130秒間とし、厚さ5μmの銀めっき層を形成させた以外は、実施例2と同様にしてめっき積層体を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0115】
≪実施例4≫
銀めっき処理の時間を260秒間とし、厚さ10μmの銀めっき層を形成させた以外は、実施例2と同様にしてめっき積層体を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0116】
≪実施例5≫
ニッケルめっき処理の時間を2000秒間とし、厚さ10μmのニッケルめっき層を形成させた以外は、実施例1と同様にしてめっき積層体を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0117】
≪実施例6≫
市販のリフロー錫めっき材(厚さ0.6mmの銅合金材へ錫めっきを施し、リフロー処理を施したものをキザイ株式会社製のマックスクリーンNG−30を40g/L含有する50℃の洗浄処理液に、60秒間浸漬させることで、錫めっき層の表面に洗浄処理を施した。
【0118】
次に、3g/Lのシアン化銀、150g/Lのシアン化カリウム、及び15g/Lの炭酸カリウムを含む銀ストライクめっき浴を用い、陽極材料をチタン白金板、陰極材料を剥離処理後の錫めっき材として、浴温:室温、電流密度:2A/dm2の条件で10秒間の銀ストライクめっき処理を施した。
【0119】
ついで、300g/Lのスルファミン酸ニッケル、5g/Lの塩化ニッケル・6水和物、10g/Lのホウ酸、及び0.2g/Lのラウリル硫酸ナトリウムを含むニッケルめっき浴を用い、陽極材料をサルファニッケル板、陰極材料を銀ストライクめっき処理後の錫めっき材として、浴温:50℃、電流密度:2A/dm2の条件で200秒間のニッケルめっき処理を施し、1μmのニッケルめっき層を形成させた。
【0120】
その後、3g/Lのシアン化銀、150g/Lのシアン化カリウム、及び15g/Lの炭酸カリウムを含む銀ストライクめっき浴を用い、陽極材料をチタン白金板、陰極材料をニッケルめっき処理後の錫めっき材として、浴温:室温、電流密度:2A/dm2の条件で10秒間の銀ストライクめっき処理を施した。
【0121】
次に、40g/Lのシアン化銀、30g/Lのシアン化カリウム、及び30g/Lの炭酸カリウムを含む銀めっき浴を用い、陽極材料をチタン白金板、陰極材料を銀ストライクめっき処理後の錫めっき材として、浴温:30℃、電流密度:4A/dm2の条件で130秒間の処理を施し、5μmの単一の銀めっき層を形成させた。
【0122】
[評価]
(1)密着性評価
1mmのカット間隔で碁盤目状にカット(クロスカット試験)を行った後、セロハンテープ(ニチバン株式会社製の#405)を指圧にて銀めっき層に押し付け、当該セロハンテープを引き剥がした後に銀めっき層の剥がれや膨れが発生しなかった場合は○、発生した場合は×とし、得られた結果を表2に示した。
【0123】
(2)断面観察
日本エフイー・アイ株式会社製の集束イオンビーム加工装置(Versa 3D Dual Beam)を用い、試料の断面観察を行った。結果を図7に示す。基材及び全てのめっき層間において、ボイドや剥離等は認められず、良好な密着性を示している。なお、銀ストライクめっき層は極めて薄いため、集束イオンビーム加工装置では明瞭に観察することができなかった。
【0124】
(3)元素分析
日本電子株式会社製の電解放出形分析走査電子顕微鏡(JSM−7001F)を用い、加速電圧20kV、WD15.0mmの条件で上記断面観察試料の元素分析(線分析)を行った。最表面の銀めっき層から基材(銅合金材)方向への線分析結果を図8に示す。なお、図8の横軸において、0は最表面の銀めっき層内である。基材と錫めっき層の間には合金層の形成が認められる。また、錫めっき層とニッケルめっき層との間、及びニッケルめっき層と銀めっき層との間には各金属元素の拡散が観察され、良好な冶金的接合が達成されていることが分かる。
【0125】
≪実施例7≫
ニッケルめっき層を形成させるための予備処理として、銀ストライクめっき処理の代わりに金ストライクめっき処理を施したこと以外は、実施例6と同様にしてめっき積層体を作製し、密着性評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0126】
上記金ストライクめっき処理には、シアン化金カリウム2g/L、クエン酸カリウム100g/L、キレート剤5g/L、硫酸コバルト2g/Lを含む金ストライクめっき液を用い、陽極材料をチタン白金板、陰極材料を上記洗浄処理後のリフロー錫めっき材として、浴温40℃、電流密度1A/dm2、処理時間10秒間の処理条件を用いた。
【0127】
≪実施例8≫
ニッケルめっき層を形成させるための予備処理として、銀ストライクめっき処理の代わりにパラジウムストライクめっき処理を施したこと以外は、実施例6と同様にしてめっき積層体を作製し、密着性評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0128】
上記パラジウムストライクめっき処理には、ジクロロジアンミンパラジウム3g/L、リン酸カリウム100g/Lを含むパラジウムストライクめっき浴を用い、陽極材料をチタン白金板、陰極材料を上記洗浄処理後のリフロー錫めっき材として、浴温40℃、電流密度1A/dm2、処理時間10秒間の処理条件を用いた。
【0129】
≪実施例9≫
ニッケルめっき層を形成させるための予備処理として、銀ストライクめっき処理の代わりにニッケルストライクめっき処理を施したこと以外は、実施例6と同様にしてめっき積層体を作製し、密着性評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0130】
上記ニッケルストライクめっき処理には、塩化ニッケル100g/L、塩酸50ml/Lを含むニッケルストライクめっき液を用い、陽極材料をニッケル板、陰極材料を上記洗浄処理後のリフロー錫めっき材として、浴温20℃、電流密度2A/dm2、処理時間10秒間の処理条件を用いた。
【0131】
≪実施例10≫
ニッケルめっき層を形成させるための予備処理として、銀ストライクめっき処理の代わりに銅ストライクめっき処理を施したこと以外は、実施例6と同様にしてめっき積層体を作製し、密着性評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0132】
上記銅ストライクめっき処理には、10g/Lのシアン化銅、30g/Lのシアン化カリウム、及び15g/Lの炭酸カリウムを含む銅ストライクめっき浴を用い、陽極材料をチタン白金板、陰極材料を上記洗浄処理後のリフロー錫めっき材として、浴温:室温、電流密度:2A/dm2の条件で10秒間の銅ストライクめっき処理を施した。
【0133】
≪比較例1≫
銀ストライクめっき処理を施さない以外は、実施例2と同様にして厚さ1μmの銀めっき層を有するめっき積層体を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0134】
≪比較例2≫
ニッケルめっき処理を施さない以外は、実施例1と同様にして厚さ1μmの銀めっき層を有するめっき積層体を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0135】
≪比較例3≫
ニッケルめっき処理の時間を2秒間とし、厚さ0.01μmのニッケルめっき層を形成させた以外は、実施例1と同様にしてめっき積層体を作製し、各種評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0136】
≪比較例4≫
ニッケルめっき処理の予備処理として、銀ストライクめっき処理を施さなかったこと以外は、実施例6と同様にしてめっき積層体を作製し、実施例6と同様の密着性評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
表1に示す結果から、本発明の実施例に関しては、ニッケルめっき層及び銀めっき層の厚さに係らず、各めっき層間(錫めっき層/ニッケルめっき層、及びニッケルめっき層/銀めっき層)が良好に接合されていることが分かる。これに対し、銀ストライクめっきを施さない場合は密着性評価によって銀めっき層が剥離しており、銀めっき層とニッケルめっき層とが良好に接合されていないことが確認される(比較例1)。
【0139】
また、本発明の実施例に関しては、金属間化合物(Ag3Sn)相が形成されていない。これに対し、ニッケルめっき層が存在しない場合(比較例2)及び薄い場合(比較例3)においては、金属間化合物(Ag3Sn)相が形成されており、錫めっき層及び銀めっき層の脆化が進行している。
【0140】
【表2】
【0141】
ニッケルめっき処理の予備処理として、各種ストライクめっき処理を施した実施例6〜実施例9で得られためっき積層体は、良好なクロスカット試験結果が得られており、基材及び全てのめっき層間において密着性に問題がないことが分かる。一方で、ニッケルめっき処理の予備処理として、ストライクめっき処理を施していない比較例4で得られためっき積層体では、クロスカット試験において錫めっき層とニッケルめっき層の間で剥離が認められた。
【符号の説明】
【0142】
1・・・めっき積層体、
2・・・金属基材、
4・・・錫めっき層、
6・・・ニッケルめっき層、
8・・・銀ストライクめっき層、
10・・・銀めっき層、
12・・・接続端子、
14・・・接点部分、
16・・・接続部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8