(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876633
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】可変の蔓巻角を有する歯内治療用ヤスリ
(51)【国際特許分類】
A61C 5/02 20060101AFI20160218BHJP
A61C 1/00 20060101ALI20160218BHJP
A61C 8/00 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
A61C5/02
A61C1/00 Z
A61C8/00 Z
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2007-52157(P2007-52157)
(22)【出願日】2007年3月2日
(65)【公開番号】特開2007-229474(P2007-229474A)
(43)【公開日】2007年9月13日
【審査請求日】2010年1月5日
【審判番号】不服2013-18946(P2013-18946/J1)
【審判請求日】2013年10月1日
(31)【優先権主張番号】11/366,059
(32)【優先日】2006年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506270617
【氏名又は名称】ウィリアム・ビー・ジョンソン
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ビー・ジョンソン
【合議体】
【審判長】
高木 彰
【審判官】
山口 直
【審判官】
関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−56961(JP,A)
【文献】
特開2001−170075(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/122941(WO,A1)
【文献】
実開昭59−19120(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯根管を清浄化し/整形するための回転可能な歯科治療用ヤスリであって、
基端部分(14)と、末端(16)と、回転軸線を有しているテーパーが付けられた軸作動部分(18)であって、前記基端部分(14)から前記末端(16)まで延びている軸作動部分(18)と、を備えている細長い軸部を含み、
前記軸作動部分(18)の外面は、複数少なくとも2つの螺旋状の等間隔に隔置された連続している凹状の螺旋溝(22)を備えており、当該螺旋溝(22)は、それらの間に同じ数の螺旋状の隔置されたフランジ(26)を有し、各フランジ(26)は、前記軸作動部分(18)の長さに沿って延びている連続した螺旋状の掻き取り/切削端縁(30)を形成している外方端面(28)を有しており、前記螺旋溝(22)は、各々、前記軸作動部分(18)の長さに沿って選択された各位置において前記軸部の回転軸線に対して測定して10°〜30°の蔓巻角を有しており、
前記軸作動部分(18)の前記螺旋溝(22)の蔓巻角が、前記基端部分(14)側から前記末端(16)までの全長(L)のうち、前記基端部分(14)から第1の長さ(L1)の部分の第1の蔓巻角(36D)が残りの末端側第2の長さ(L2)の部分の第2の蔓巻角(36E)より小さく、又は、
前記軸作動部分(18)の前記螺旋溝(22)の蔓巻角が、前記全長(L)のうち、前記末端(16)から第3の長さ(L3)の部分の第3の蔓巻角(36F)が残りの基端側長さ(L4)の部分の第4の蔓巻角(36G)より小さい、ことを特徴とするヤスリ。
【請求項2】
歯根管を清浄化し/整形するための回転可能な歯科治療用ヤスリのセットであって、
各々が、基端部分(14)と、末端(16)と、回転軸線を有しているテーパーが付けられ且つ前記基端部分(14)から前記末端(16)まで延びている軸作動部分(18)と、を備えている細長い軸部を備えている、複数のヤスリを含み、
各ヤスリの前記軸作動部分(18)の外面が、複数少なくとも2つの螺旋状の等間隔に隔置された連続している凹状の螺旋溝(22)を備えており、当該螺旋溝(22)は、それらの間に同じ数の螺旋状の隔置されたフランジ(26)を有し、各フランジ(26)は、前記軸作動部分(18)の長さに沿って延びている連続した螺旋状の掻き取り/切削端縁(30)を形成しており、各ヤスリの前記螺旋溝(22)は、各々、前記軸作動部分(18)の長さに沿って選択された各位置において前記軸部の回転軸線に対して測定して10°〜30°の蔓巻角を有しており、少なくとも一つの前記ヤスリは、前記軸作動部分(18)の前記螺旋溝(22)の蔓巻角が、前記基端部分(14)側から前記末端(16)までの全長(L)のうち、前記基端部分(14)から第1の長さ(L1)の部分の第1の蔓巻角(36D)が残りの末端側第2の長さ(L2)の部分の第2の蔓巻角(36E)より小さく、しかも少なくとも一つの他の前記ヤスリは、前記軸作動部分(18)の前記螺旋溝(22)の蔓巻角が、前記全長(L)のうち、前記末端(16)から第3の長さ(L3)の第3の蔓巻角(36F)が残りの基端側長さ(L4)の第4の蔓巻角(36G)より小さい、ことを特徴とするヤスリのセット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯科治療用ヤスリであって、
前記大きい第2又は第4の蔓巻角(36E、36G)を有する螺旋溝(22)を備えた前記軸作動部分(18)の領域(L2、L4)は、前記軸部が回転されるときに、大きな螺入作用と小さな掻き取り作用とを達成し、前記小さい第1又は第3の蔓巻角(36D、36F)を有する螺旋溝(22)を備えている前記軸作動部分(18)の領域(L1、L3)は、前記軸部が回転されるときに小さな螺入作用と大きな掻き取り作用とを達成するようになされているヤスリ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の歯科治療用ヤスリであって、
前記フランジ(26)の各々の前記外方端面(28)が、一つの領域に正のすくい角を有する掻き取り/切削端縁(30)を有し、別の領域に負のすくい角を有する掻き取り/切削領域を有しているヤスリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、歯内治療用ヤスリに関し、より特定すると、人間の歯の歯根管内に存在する物質の洗浄に使用され且つ充填材を受け入れるように準備されるように歯根管を広げ且つ整形するための歯根管用ヤスリ又はリーマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ半世紀の間に、歯科医業の著しい改良が歯内治療すなわち歯根管の治療による膿瘍ができた歯の治療分野においてなされて来ている。比較的それどころか更に困難な歯科処置は、清浄化、整形及び患者の歯の歯根管の処置である。歯根管の作業においては、典型的には、最初に歯冠又は歯の露出部分に穴が開けられる。歯冠に開けられた穴は、歯の内側へのアクセス、特に歯根管へのアクセスを提供する。歯を治療するためには、歯根管は、膿瘍ができた歯の場合には、典型的には感染している歯髄物質を完全に清浄化しなければならない。専門技術者又は歯科医師は、感染を緩和するために、歯髄物質を除去しなければならない。次に専門技術者又は歯科医師は、歯根管がガッタパーチャのような充填材を効率良く充填することができるように歯根管を清浄化し且つ整形しなければならない。
【0003】
歯根管の効率の良い治療のための器具の必要性のために、多くの作業がなされて来た。歯根管は、典型的には、歯内治療用ヤスリによって処置される。本願において使用される“ヤスリ”という用語は、歯根管内に挿入可能であり且つ歯根管を清浄化し且つ整形するために手動によって又は機械によって操作することができる細長い器具を意味する。ヤスリは、最初に歯の内部から歯髄物質を除去する役目を果たす。第二に、これは、充填材をより効率良く充填することができるように、歯根管を整形する機能を果たす。従って、典型的な歯科用ヤスリはまた、清浄化機能に加えて、歯根管を広げ且つ整形するための器具であるリーマーとしても機能する。本願においては、“ヤスリ”という用語は、歯根管から歯髄物質を掻き出して清浄化するばかりでなく歯根管を整形し又は広げるように機能するので、“リーマー/ヤスリ”を意味するように意図されている。この特許出願の主題であるタイプの歯科用ヤスリに関する背景情報のために、以下の登録された米国特許及び公開公報を参考にすることができる。
特許番号 発明者 登録日 発明の名称
4,443,193 Roane 04/17/1984 歯科用器具
4,536,159 Roane 08/20/1985 歯科用器具
4,934,934 Arpaio,Jrら 06/97/1990 歯科用ヤスリ/リーマー器具
5,380,200 Heathら 01/07/1995 所定の可撓性を有する歯科用器具
5,464,362 Heathら 11/07/1995 歯科用器具
5,503,554 Schoeffel 04/02/1196 歯科用ヤスリ
5,658,145 Mailleferら 08/19/1997 歯根管に穴を開けるための器具セット
及び方法
5,676,541 Mailleferら 10/14/1997 歯根管の穴の大きさを広げる器具セット
5,692,902 Aeby 12/02/1997 歯根管の穴開けのための器具セット
5,873,719 Calasら 02/23/1999 歯科用リーマ
5,897,316 Buchanan 04/27/1999 歯科治療用装置
5,921,775 Buchanan 07/13/1999 歯科治療用装置
5,975,899 Badozら 11/02/1999 歯科用リーマ
6,012,921 Riitano 01/11/2000 3つのセットの専用器具による歯根管
の解剖学的断面及び前進烏口先端
の準備のための歯科治療用装置
6,074,209 Johnson 06/13/2000 低トルクの歯科治療用ヤスリ
6,217,335 Riitanoら 04/17/2001 最小先端貫入による解剖学的断面及び
前進性の烏口先端の準備のための
歯科治療用装置及び方法
6,267,592 Mays 07/31/2001 歯科用途のための高可撓性の器具
6,312,261 Mays 11/06/2001 取り外し可能なキャリアによる
歯科治療用閉塞装置
6,315,558 Farzin-Niaら 11/13/2001 超弾性の歯科治療用ヤスリの製造方法
6,390,819 Riitano 05/21/2002 専用のステンレス鋼器具及び専用の
ニッケル/チタン器具による解剖学
的断面及び前進烏口先端の準備の
ための歯科治療用装置及び方法
6,419,488 MeSpaddenら 07/16/2002 たがね先端を有する歯科治療用器具
6,514,076 Bleiweissら 02/04/2003 早急硬化可能なステンレス鋼歯科治療用
器具及び当該器具の製造方法及び使用方法
6,520,774 Mays 02/18/2003 医療用途のための高可撓性器具
6,644,972 Mays 11/11/2003 取り外し可能なキャリアを備えた
歯科治療用閉塞装置及びその使用方法
6,746,245 Riitanoら 06/08/2004 解剖学的形態の非対称な歯根管を
清浄化し且つ整形する方法
2004/0121283 Mason 06/24/2004 精密鋳造歯科用器具
2003/0077553 Brock 04/24/2003 切り込みのある切断面を備えた
歯科治療用器具
2004/0058297 Danger 03/02/2004 歯根管用器具
2004/0043357 Garman 03/04/2004 歯科治療用器具
2004/0023186 MeSpadden 02/05/2004 多傾斜面付き歯科治療用ヤスリ
Re.34,439 Heath 11/09/1993 歯科用圧縮器具
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、可変の蔓巻角の溝を有する歯科治療用ヤスリに関する。本発明のヤスリは、人間の口の中の歯根管を清浄化し且つ/又は整形するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
当該改良されたヤスリは、基端部分、末端部分及び回転軸線を有する傾斜が付けられ且つ前記基端部分から末端部分まで延びている作動部分を備えている細長い軸形状である。当該軸の作動部分の外面は、少なくとも2つの複数の螺旋状に巻かれた等間隔の連続する凹状の螺旋状の溝を有している。当該隔置された溝は、凹状の溝面を有している。溝面は、相互の間に等しい数の螺旋状の隔置された連続するフランジを備えている。各フランジは、回転軸線に直角な面内に、連続する螺旋状の掻き取り/切削端縁を形成している外側端面を備えている。掻き取り/切削端縁は、軸の作動部分の全長に渡って延びている。
【0006】
当該溝は、回転軸線に対して蔓巻角を有している。この螺旋状の溝の蔓巻角は約10°乃至約30°の範囲で変えることができる。好ましい実施形態においては、当該蔓巻角は典型的には10°乃至20°の範囲で変えることができる。軸の作動部分は、典型的には、基端部分に隣接した比較的大きな直径部分から、末端に隣接した比較的小さい直径部分まで傾斜が付けられている。幾つかのヤスリにおいては、蔓巻角は、軸の作動部分の断面の直径に比例して変わる。
【0007】
一言で言えば、今日使用されている典型的な歯科治療用ヤスリは、同一の蔓巻角を備えた溝を備えており、前記同一の蔓巻角は、傾斜作動部分の一端から他端まで同じ蔓巻角が存在する場合又は蔓巻角がヤスリの直径に比例して変わる場合である。更に、当該ヤスリは、各フランジの外側端面を有することができ、当該外側端面は、一つの領域においては積極的な掻き取り/切削端縁を提供し、別の領域においては消極的な掻き取り/切削端縁を提供する。本発明の重要な特徴は、溝の蔓巻角がヤスリの長さ方向に沿った選択された領域において選択可能に変更されて、ヤスリの特性を変えることができる手段である。
【0008】
殆どの消極的なヤスリは、軸の先端から頂部まで一定である蔓巻角を有している。より小さなサイズにおいては、このことは幾つかの問題を提起する。しかしながら、約100分の30又は35ミリメートル以上の先端直径のサイズにおいては、歯根管の側壁に接触する半径領域の表面積が比較的大きくて、ヤスリはそれ自体が歯根管内に螺入するか又は歯根管から抜け出る傾向がある。蔓巻角を小さくすることによって、歯根管の側壁に接触する半径領域の表面積が小さくされ、回転しているヤスリの滑りが起こって、歯根管内へのヤスリの給送速度を遅くさせる。
【0009】
付加的な実施形態においては、各セット内のヤスリの全てが本質的に同じ蔓巻角を有し、種々のセットが可変の直径及び/又は傾斜部を有している。
【0010】
本発明のより良い理解は、添付図面と組み合わせてなされている好ましい実施形態の以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から得られるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで説明されるべき本発明は、添付図面に示されている部品の構造及び配置の細部に限定されないことは理解されるべきである。本発明は、他の実施形態によって可能であり且つ種々の方法で実施することができる。ここで採用されている表現及び用語は、説明目的のものであり、限定的なものではない。
【0012】
図面に示されている部材は以下の番号によって特定されている。
10 歯科治療用ヤスリ 24 溝面
12 チャック軸 26 フランジ
14 基端 28 フランジ端面
16 末端 30 掻き取り/切削端縁
18 軸作動部分 32A−D 平面状端面
20 長手/回転軸線 34A−B 掻き取り端縁
22 溝 36A−F 蔓巻角
まず最初に
図1を参照すると、歯科治療用ヤスリが参照番号10によって特定されている。当該ヤスリは、基端14に設けられたチャック軸12を含んでいる。末端16は、基端と比較して小さい直径を有している。基端14と末端16との間には、番号18によって示された細長い軸作動部分が設けられている。
【0013】
チャック軸12は、典型的には、金属製のヤスリと一体的に形成されており且つヤスリが回転され且つ歯科医によって歯根管内で且つ歯根管からヤスリを操作することができる歯科用ハンドピースのチャック(図示せず)内に受け入れられる構造とされている小さなプラスチック製のハンドルに置換することができる。チャック軸が使用されるかハンドル部分が使用されるかは、ここでは本発明には無関係であり、チャック軸12の特別な構造は本発明の一部分ではない。その代わりに、本発明の重要な特徴は、ヤスリの軸作動部分18の外面形状である。例示的な断面形状が
図2,3及び4の断面図に示されている。
【0014】
図2は、
図1の線2−2に沿った断面図である。この断面図に示された断面は、チャック軸12の長手軸線でもあるヤスリの作動部分18の長手軸線20に直角である。この長手軸線はまた、ヤスリの作動部分18が歯根管内に配置されたときに回転せしめられる軸線でもあるので回転軸線と称することもできる。回転軸線20は、これらの断面図の各々において見ることができる。
【0015】
軸作動部分18の外面には、複数(少なくとも2つ)の螺旋状の溝22が形成されている。図示された構造においては、3つの隔置された螺旋溝22が設けられている。これらの螺旋溝は、ヤスリの軸作動部分18の外面に形成されている。螺旋溝の各々がヤスリ面24を備えている。3つの螺旋溝22が図示されているけれども、ヤスリは、ただ2つの溝によって操作するか又は3つ以上の溝によって操作することができる。しかしながら、実際問題としては、ヤスリは、典型的には、2又は3個の溝によって形成され、3つの溝が理想的である。4つ以上の溝を採用することができるけれども、付加的な溝は、工具に性能を著しく付加することなく、操作の複雑さを増大させる。従って、実用目的のためには、本発明の原理を取り入れている理想的なヤスリ構造は、3つの溝22を採用するであろう。これらの溝には、それらの間に3つの螺旋状のフランジ26が設けられている。
【0016】
螺旋状のフランジ26の各々は、外方端部に端面28を有している。各端面28は、断面図において、対向する溝面24と接している。各端面28の外方端部には、連続している螺旋状の掻き取り/切削端縁30が形成されており、この位置で各端面28は対向する溝面24と接している。
【0017】
図2のフランジ端面28の各々は、弓形形状であり、各々が、回転軸線が長手/回転軸線20に対してずらされている以外は、
図2の断面図が断面されている領域の軸作動部分の基部の曲率半径にほぼ等しい曲率半径を有している弧によって形成されている。このようにして、フランジの端面28の各々は掻き取り/切削端縁30を提供している。この構造は小さなすくい角を付与する。すなわち、掻き取り/切削30におけるフランジ端面28の接線は、
図2の断面図が断面されている領域における軸作動部分の回転の接線からほんの若干外れている。
図2の実施形態においては、3つのフランジ端面28の各々が同一である。
【0018】
図3は、
図2に示されているものと本質的同じ全ての部材を備えている
図1の代替的な実施形態であり、各々が掻き取り/切削端縁30を有している2つの弓形のフランジ端面28が設けられているが、フランジ部分26のうちの一つが弓形の端面で終端していない点で異なっている。その代わりに、
図3においては、フランジ26Aが、交差している面32A及び32Bによって規定されている外方端面によって終端していて、掻き取り端縁34Aが面32Aと32Bとの交線に形成されている。
【0019】
図示された
図3の実施形態においては、螺旋状掻き取り端縁34Aは、
図2に関して記載した掻き取り/切削端縁30と本質的に等しい長手/回転軸線20から半径が伸長している。掻き取り端縁34Aは、掻き取り/切削端縁30と異なる種類の掻き取り作用を有する。典型的には、
図3の螺旋状の切削端縁を備えているヤスリは、
図2の実施形態よりも積極的な掻き取り切削作用を提供する。
【0020】
図4は、フランジ26Bが平らな端面32C及び32Dを備えた外方端部で終端している点においてのみ異なっている
図3の代替的な実施形態である。
図4の実施形態と
図3の実施形態との間の唯一の重要な違いは、
図3の平らな端面32C及び32Dが、
図3の端面32A及び32Bの端面よりも尖った角度で交差していることである。これは、より積極的な切削/掻き取り端縁を提供するより尖った螺旋状に切られた切削端縁34Bと、若干異なる掻き取り/切削作用を有する相応するヤスリとを提供する。
【0021】
図5は、基本的な差異を有する
図1に示された歯科治療用ヤスリ10の一実施形態である。両者の違いは、著しく小さい蔓巻角にある。
図5において点線で示されているように、歯科治療用ヤスリは、螺旋溝面24と螺旋溝間に形成されたフランジ26とを備えた螺旋溝22を備えている。各フランジは外方端面28を有している。
図5と
図1との違いは、
図5においては、断面に対して取られた長手軸線20に対する螺旋状フランジの角度が極めて小さいことである。
図5の実施形態においては、断面に対して取られた長手軸線20に対する螺旋状フランジの角度が極めて小さいことである。
図5の実施形態においては、長手/回転軸線20の面に対するフランジ26の角度は約10°である。
【0022】
図6乃至9は、各々、
図1及び5に示されたタイプの歯科治療用ヤスリの軸作動部分18の正面図である。
図6は、螺旋状のヤスリのフランジが、ヤスリの長手/回転軸線20の面に対して30°の角度を有している。
図5における10°の蔓巻角は、
図6における30°の蔓巻角と対比することができる。
図6においては、蔓巻角36Bは30°であるけれども、
図7においては蔓巻角36Cは24°である。このように、
図5,6及び7は、螺旋溝及びフランジがヤスリの長手/回転軸線の面に対して高度に選択可能な角度を有することができることを示している。この選択された蔓巻角は、歯科治療処置を行う際に使用されるヤスリの動作に対して大きな衝撃を付与する。20°の蔓巻角を有するヤスリは、歯根管内で回転されるときに大きな推進作用を有する傾向がより強い。すなわち、これらのヤスリは、歯根管の先端端部に向かって螺入する傾向がある。他方、20°未満のような小さな蔓巻角を有しているヤスリは、強い推進作用を有しているけれども、より大きな強い掻き取り作用を有している。歯科治療処置を行う際に、ヤスリの推進作用と掻き取り作用との両方に対して利点が存在する。掻き取り作用は、歯根管を清浄化し且つ整形するために歯髄物質及び歯根管の内側へ突出している部分を取り除く傾向がある。しかしながら、歯根管からほぐされた物質を除去するための手段がない場合には、掻き取り作用は不完全である。すなわち、歯根管の壁部分は、掻き取られてほぐされなければならないだけでなく取り出されなければならない。ヤスリの推進作用は、歯根管内から取り除かれた物質を取り出す強い傾向を有している。従って、ヤスリのための蔓巻角を選択する際には、良好な掻き取り作用を行うことと良好な除去作用を行うこととの間に妥協が常に存在する。
【0023】
更に、蔓巻角は、歯の中を取り除くヤスリの能力に対して大きな効果を有している。すなわち、際立った推進作用を有しているヤスリは、歯の先端領域に向かってより深く螺入する傾向があり且つ更なる回転が破壊された部片内へヤスリを捩れさせることができるように歯内のある位置に容易に突き刺された状態となる傾向がある。歯根管内でのヤスリの破壊は、常に深刻な問題である。本発明の重要な概念のうちの一つは、フランジの蔓巻角の利点が利用されて、より大きな蔓巻角とより小さな蔓巻角との両方の利点がヤスリ内で組み合わせられ得るようにすることである。
【0024】
図8は、概して符号18によって示されている軸作動部分のほぼ下半分から延びている軸の部分を示している。軸作動部分18は、既に説明した実施形態と同様に、間にフランジ部分26を有している互いに隔置された螺旋溝22を備えており、前記フランジの各々が掻き取り/切削端縁30を提供している。図示された作動部分は長手/回転軸線20を有している。
図8の特有の特徴は、ヤスリの作動部分の長さの一部分の蔓巻角36Dが末端16に隣接している部分の蔓巻角36Eとは異なる手段である。
【0025】
図8の構造は、歯根管を清浄化し且つ整形するために使用されるときに歯根管ヤスリの特有の特性を提供する。13°の蔓巻角36Dを有している上方部分
(長さL1)は改良された掻き取り作用を提供し、一方、末端16に隣接している17°の蔓巻角36E
(即ち、蔓巻角36D<36E)を有している部分
(長さL2)は、ヤスリを歯根管内のより深い位置から掻き出す傾向があるより大きな螺入作用を有している。
【0026】
図9は、
図8の軸作動部分の一部分を示しており、当該ヤスリは、
図8と本質的に同じ基部直径とテーパーとを有しているが、末端16に隣接している部分
(長さL3)は13°の蔓巻角36F
(即ち、蔓巻角36F<36G)を有しており、軸作動部分の末端から更に遠くに位置する部分
(長さL4)は17°の蔓巻角36Gを有している。従って、
図9の構造は、末端16に隣接している作動面部分が小さな蔓巻角を有し、それによって、高い螺入作用と低い掻き取り作用とを提供する17°の蔓巻角を有している作動面の中間部分と対照的に、より大きな掻き取り作用とより小さな螺入作用とを提供するヤスリを提供している。
【0027】
図8及び9は、歯科治療用軸作動部分の長さに沿って蔓巻角を変化させることによって、破壊を最少化し、すなわち、軸の長さのある部分の螺入作用を減じ且つ掻き取り作用を増大させて、ヤスリの最大効率が達成できるようにすることによって実施することができる方法を示している。言い換えると、当該ヤスリは、最も効率良く清浄化すると同時に歯根管の内側から破砕片をねじ形式で取り除く一方で、ヤスリが捻られるようにさせ得る高いトルク抵抗を受ける機会を最少化し且つ歯根管内にヤスリの一部分を残すような構造とすることができる。
【0028】
以上、本発明をある程度特定して説明したけれども、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、構成部品の構造及び配置の細部に多くの変更を加えることができることは明らかである。本発明は、例示目的で本明細書に記載された実施形態に限定されず、各部材に当てはまる等価物の全範囲を含む添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきであることは理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、典型的な歯科治療用ヤスリの正面外面図である。この図に示されているヤスリは、歯科治療用ヤスリが機械的に回転され、ヤスリを患者の歯根管内で操作することができるハンドピースによって使用するためのものである。歯科治療用ヤスリは、基本的には2つのタイプがある。すなわち、手動によって操作するものと機械的に操作するものとがある。
図1は、機械的操作によるヤスリの例を示している。
【
図2】
図2は、
図1の歯科治療用ヤスリの線2−2に沿った断面図である。当該断面は、ヤスリの長手/回転軸線に直角であり且つ本質的に消極的な切削/掻き取り作用を有する構造を示している。
【
図3】
図3は、
図2と同様の断面図であるが、更に積極的な切削/掻き取り作用を提供するヤスリの代替的な実施形態を示している。
【
図4】
図4は、
図1の歯科治療用ヤスリの断面形状の別の代替的な実施形態であり、
図2及び3のものよりも更に積極的な切削/掻き取り作用をもたらす断面構造を示している。
【
図5】
図5は、歯科医によって採用されるハンドピースによって回転して使用できるように設計された軸部分を備えている歯科治療用ヤスリの正面図であり、ヤスリの作動部分の代替的な構造を示している。
図5の実施形態においては、一対の等間隔に隔置された凹状の螺旋溝が作動部分内に形成されており、当該螺旋溝は、約10°の小さな蔓巻角を有している。
図5は、主として穴開け又は切削作用ではなく歯根管内での掻き取り作用ができるように設計されたヤスリを示している。
図5の設計は、主として歯根管を整形するためのものであり且つ歯根管内から物質を取り除くという限られた機能を有している。
【
図6】
図6は、歯科治療用ヤスリの軸作動部分の一部を示しており且つ作動面を形成している複数の螺旋溝を示しており、当該螺旋溝は、ヤスリの長手/回転軸線の面に対して30°の蔓巻角を有している。
【
図7】
図7は、
図6における歯科治療用ヤスリの作動部分の外側形状を示しており、当該作動部分は、等間隔に隔置された連続している凹状の螺旋溝によって規定されており、当該溝は、ヤスリの長手/回転軸線の面に対して24°の蔓巻角を有している。
図6及び7は同じ直径及び同じ傾斜のヤスリが種々の蔓巻角を有し得るという事実を示している。
【
図8】
図8は、複数の螺旋状の等間隔に隔置された連続した凹状の螺旋溝を有している歯科治療用ヤスリの作動部分の外側面を示しており、当該ヤスリは、それらの間に等しい数の螺旋状の隔置された連続しているフランジを備えており、当該フランジは、ヤスリの基端と末端との間の中間の部分に、長手/回転軸線の面に対して13°の蔓巻角を有しており、軸作動部分の末端に隣接している別の部分は、螺旋溝を有しており、螺旋状のフランジは、ヤスリの作動部分の長さに沿って選択可能に変化することができるという事実を示している。
【
図9】
図9は、
図8と同様に、螺旋状の隔置された連続したフランジを間に有する少なくとも2つの複数の隔置された螺旋状の連続した溝を有している軸作動部分の一部分の外面図を示しており、前記軸作動部分の長さの中間部分において、前記フランジは、長手/回転軸線の面に対して17°の蔓巻角を有しており、一方、前記軸作動部分における末端に隣接した部分は、前記長手/回転軸線の面に対して13°の蔓巻角を有している。