(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
醤油麹は製麹装置により、大豆と小麦から造られる。醤油は、仕込みタンクと呼ばれる設備で、醤油麹と塩水から製造される。通常、製麹装置から仕込みタンクへ醤油麹を輸送する際、仕込みに使用する塩水と醤油麹を混合して輸送している。
【0003】
醤油麹と塩水を混合した出麹塩水混合物の輸送には、出麹塩水混合物の輸送中に醤油麹が塩水を吸収して次第に膨潤していくため、以下のような問題があった。例えば、停電などによって輸送ポンプが停止した状態がしばらく続いた場合には、配管内で膨潤した醤油麹が配管に詰まる可能性が高い。配管に詰まると、配管を分解して詰まった出麹塩水混合物を取り除かなければならない。配管は100m以上に達する場合もあり、その作業に要する労力は膨大である。
【0004】
本出願人は、固体と液体を混合した固液混合物を安全に輸送するために、輸送ポンプの二次側(送出側)の配管に圧縮空気を供給する高圧エアタンクやエアバルブを有する補助輸送手段を備えた固液混合物輸送装置を提案している(特許文献1)。
【0005】
圧縮空気による補助輸送手段を備えた固液混合物輸送装置では、正常運転時には、輸送ポンプによって固液混合物が輸送され、その輸送状態に異常が発生した場合には、高圧エアタンクからエアバルブを通って圧縮空気が配管に供給され、該圧縮空気によって配管内の固液混合物が輸送されるようになる。この固液混合物輸送装置を用いると、固液混合物の詰まりを未然に防ぐことが可能になる。さらに、特許文献1には、補助輸送手段に補助液体タンクを設け、圧縮空気の吹込みのみでは補助輸送が困難であると判断した場合に、高圧エアタンクから圧縮空気を補助液体タンクに供給して、配管内に水を押出すようにすることについても記載されている。
【0006】
しかし、醤油麹の出麹塩水混合物を輸送する場合は、塩水を吸収した醤油麹が膨潤することにより、流動性が低下し、配管抵抗も大きくなる結果、特許文献1の補助輸送手段では膨大な量の圧縮空気が必要となる。とりわけ、出麹塩水混合物の輸送量が多い場合や輸送距離が長い場合は、大容量の高圧エアタンクを設ける必要があり、設備コストが増大する。また、上記の補助液体タンクを設けても、水の押出しに圧縮空気を用いることには変わりなく、大容量の高圧エアタンクが必要になる点は同様である。
【0007】
特許文献1の発明は、停電することで輸送ポンプが停止した場合も考慮している。近年、醤油工場の規模が拡大していて、停電してもすぐに自家発電により重要な機械装置には電気を供給するようにしている工場が多くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、重要な機械装置には常に電気を供給できることを前提に、圧縮空気を用いて補助輸送を行う装置に比べて、出麹塩水混合物を輸送する配管の詰まりによるトラブルの発生を確実に防止し、設備コストを抑えることのできる出麹塩水混合物輸送装置及び出麹塩水混合物輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の出麹塩水混合物輸送装置は、醤油麹と塩水を混合した出麹塩水混合物を輸送ポンプで仕込みタンクへ輸送する装置において、出麹塩水混合物を輸送する配管に設けた主輸送ポンプと、前記主輸送ポンプの二次側配管に対して塩水を送る補助輸送ポンプとを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の出麹塩水混合物輸送方法は、醤油麹と塩水を混合した出麹塩水混合物を輸送ポンプで仕込みタンクへ輸送する方法において、正常運転時は出麹塩水混合物を輸送する配管に設けた主輸送ポンプにより出麹塩水混合物を輸送し、出麹塩水混合物の輸送状態に異常が生じ、前記主輸送ポンプが停止した場合は、補助輸送ポンプにより前記主輸送ポンプの二次側配管に対して塩水を送ることを特徴とする。
【0012】
本発明の出麹塩水混合物輸送装置及び出麹塩水混合物輸送方法は、補助輸送に圧縮空気を用いるのではなく、補助輸送ポンプを用いて塩水を直接送るので、出麹塩水混合物の多い場合や、輸送距離が長い場合であっても、配管を詰まらせることなく、補助輸送を可能とする。また、補助輸送に圧縮空気を用いる装置のように大容量の高圧エアタンクを設ける必要がないので、設備コストを抑えることも可能になる。さらに、本発明の出麹塩水混合物輸送方法では、出麹塩水混合物の輸送状態の異常を検出するので、主輸送ポンプが停止した場合に自動的に補助輸送を行うことも可能になる。この出麹塩水混合物輸送方法は、上記の出麹塩水混合物輸送装置を用いて好適に実施することができる。
【0013】
上記の出麹塩水混合物輸送方法において、「出麹塩水混合物の輸送状態に異常が生じ」とは、主輸送ポンプ自体の異常が原因である場合だけでなく、主輸送ポンプの異常以外が原因の場合も含むものとする。主輸送ポンプ自体の異常が原因である場合としては、老朽化や異物混入などによる主輸送ポンプの故障や、醤油麹の噛み込みなどによる主輸送ポンプの詰まりなどが例示される。また、主輸送ポンプの異常以外が原因である場合としては、配管や、該配管に設けたバルブなど、主輸送ポンプの二次側に原因がある場合のほか、醤油麹と塩水とを混合する出麹塩水混合装置や、前記出麹塩水混合装置と主輸送ポンプとの間に設けられたバッファタンクなど、主輸送ポンプの一次側に異常がある場合などが例示される。これら異常の種類や、その検知方法については、後で詳しく説明する。一方、「正常運転時」とは、主輸送ポンプにより出麹塩水混合物が正常に輸送されている状態であって、上記のような異常が発生していない場合をいう。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、圧縮空気を用いて補助輸送を行う装置に比べて、出麹塩水混合物を輸送する配管の詰まりによるトラブルの発生を確実に防止し、設備コストを抑えることのできる出麹塩水混合物輸送装置及び出麹塩水混合物輸送方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の出麹塩水混合物輸送装置及び出麹塩水混合物輸送方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。
図1は、本発明の出麹塩水混合物輸送装置10を示したフロー図である。本実施態様の出麹塩水混合物輸送装置10は、
図1に示すように、出麹塩水混合装置20から供給された出麹塩水混合物M
3を仕込みタンク30へ輸送するものとなっている。出麹塩水混合装置20と出麹塩水混合物輸送装置10との間には、バッファタンク40を設けており、出麹塩水混合物M
3が出麹塩水混合物輸送装置10へ安定して供給されるようになっている。
【0017】
出麹塩水混合装置20は、ベルトコンベア50により搬送された醤油麹M
1と塩水供給装置60から供給された塩水M
2とを出麹塩水混合装置20内に設けた出麹塩水混合スクリュー21を用いて混合する。また、ベルトコンベア50は、図示省略の製麹装置で製麹され、出麹された醤油麹M
1を出麹塩水混合装置20まで搬送する。
【0018】
本実施態様において、塩水供給装置60は、塩水M
2を貯留するための主輸送用塩水貯留タンク61と、塩水M
2を主輸送用塩水貯留タンク61から出麹塩水混合装置20へ送るための塩水供給ポンプ62と、出麹塩水混合装置20へ供給される塩水M
2の流量を制御するための自動弁63と、出麹塩水混合装置20へ供給される塩水M
2の流量を測定する流量計64を備えたものとなっている。
【0019】
出麹塩水混合物輸送装置10についてさらに詳しく説明する。本実施態様の出麹塩水混合物輸送装置10は、配管11と、主輸送ポンプ12と、分岐管13と、補助輸送用塩水貯留タンク14と、補助輸送ポンプ15と、自動弁16とを備えたものとなっている。配管11は、出麹塩水混合物M
3をバッファタンク40から仕込みタンク30まで輸送するための配管で、配管11の長さは100mを超えることもある。
【0020】
主輸送ポンプ12は、配管11に設けられ、正常運転時は出麹塩水混合物M
3の輸送を行う。主輸送ポンプ12として用いるポンプの種類は、出麹塩水混合物M
3を所定時間内に仕込みタンク30まで輸送できる能力を有するものであれば特に限定されないが、容積式ポンプを用いると好ましい。容積式ポンプは、粘性の高い液体や、固液混合物を輸送するのに適している。また容積式ポンプは、比較的定量性があるため、所定時間内に所定量の被搬送物を輸送することができる。また、本実施態様の出麹塩水混合物輸送装置10において、主輸送ポンプ12は1個としているが、複数個設けても良い。
【0021】
分岐管13は、主輸送ポンプ12の二次側の配管11に対して、補助輸送用塩水貯留タンク14から塩水M
4を供給するための配管である。
図1では、出麹塩水混合物輸送装置10における補助輸送用塩水貯留タンク14と塩水供給装置60における主輸送用塩水貯留タンク61は別個に設けているが、1箇所に集約してもよい。自動弁16は、配管11へ供給される塩水M
4の流量を制御する。
【0022】
補助輸送ポンプ15は、分岐管13に設けられており、異常発生時(主輸送ポンプ12による出麹塩水混合物M
3の輸送状態に異常が生じ、主輸送ポンプ12が停止した時)に、補助輸送用塩水貯留タンク14から塩水M
4を主輸送ポンプ12の二次側の配管11へ送る。すなわち、異常発生時には、補助輸送ポンプ15によって配管11に供給された塩水M
4により、配管11内に残留する出麹塩水混合物M
3が強制的に押出され、仕込みタンク30まで輸送される。このような構成を採用することにより、主輸送ポンプ12による出麹塩水混合物M
3の輸送状態に異常が生じ、主輸送ポンプ12が停止した場合であっても、出麹塩水混合物M
3が膨潤して配管11内で詰まる前に、仕込みタンク30まで輸送することが可能になる。
【0023】
補助輸送ポンプ15として用いるポンプの種類は、塩水M
4を高圧で輸送できるポンプであれば特に限定されない。したがって、主輸送ポンプ12と同じ種類のポンプを用いても問題はないが、出麹塩水混合物M
3を輸送する主輸送ポンプ12として用いるのに適した容積式ポンプは非常に高価であるため、塩水M
4のみを輸送する補助輸送ポンプ15としては過剰仕様である。補助輸送ポンプ15として用いるポンプは、粘性の低い被搬送物を高圧で輸送することができ、容積式ポンプよりも安価である遠心ポンプが好ましい。
【0024】
主輸送ポンプ12による出麹塩水混合物M
3の輸送状態に異常が生じたことは、出麹塩水混合物輸送装置10に異常検知手段を設けると、自動的に検知することができる。異常検知手段としては、主輸送ポンプ12の駆動回路に組み込まれたリレー(サーマルリレーやモーターリレーなど)や、主輸送ポンプ12の駆動部であるモーターを制御するインバーターや、主輸送ポンプ12の回転軸の回転数を検知する回転計や、前記モーターの回転部に記された目印(マークだけでなく突起なども含む)を読み取ることにより前記モーターの回転数を間接的に計測する光電センサや近接センサ(エンコーダに組み込まれたものを含む)などが例示される。また、主輸送ポンプ12などの振動を検知する振動計や、配管11を流れる出麹塩水混合物M
3の流量を計測する流量計や、配管11の内部圧力を計測する圧力計なども例示される。
【0025】
また、主輸送ポンプ12による出麹塩水混合物M
3の輸送状態に異常が生じたことを検知する異常検知手段としては、上述したように、出麹塩水混合物輸送装置10自体に設けられる場合だけでなく、出麹塩水混合物輸送装置10以外に設けられる場合もある。出麹塩水混合物輸送装置10以外に設けられる異常検知手段としては、出麹塩水混合装置20における出麹塩水混合スクリュー21の異常(回転停止など)を検知する各種センサや、塩水供給装置60の異常(自動弁63や流量計64の異常など)を検知する各種センサや、バッファタンク40の液面上昇を検知する各種センサなどが例示される。これらの異常検知手段によって異常が検知された結果として、主輸送ポンプ12が停止する。異常検知手段は、上述したもののうち、1種類のみを用いてもよいが、複数種類を用いると好ましい。これにより、発生した異常をより確実に検知し、主輸送ポンプ12を停止することが可能になる。
【0026】
出麹塩水混合スクリュー21の異常を検知するセンサとしては、出麹塩水混合スクリュー21の駆動回路に組み込まれたリレー(サーマルリレーやモーターリレーなど)や、出麹塩水混合スクリュー21の駆動部であるモーターを制御するインバーターや、該モーターの回転軸の回転数を検知する回転計や、該モーターの回転部に記された目印(マークだけでなく突起なども含む)を読み取ることにより該モーターの回転数を間接的に計測する光電センサや近接センサ(エンコーダに組み込まれたものを含む)などが例示される。また、塩水供給装置60の異常を検知するセンサとしては、自動弁63の弁開度を検知する検知回路などが例示される。さらに、バッファタンク40の液面上昇を検知するセンサとしては、バッファタンク40の内部圧力を測定する圧力計などが例示される。
【実施例】
【0027】
続いて、実施例を説明しながら、本発明の出麹塩水混合物輸送装置10についてさらに詳しく説明する。本発明の出麹塩水混合物輸送装置10は、醤油製造設備に設けられており、具体的には
図1に示したものを使用した。醤油麹M
1は、割砕小麦と脱脂大豆を原料として製麹された醤油麹を用いた。総出麹量は30ton、塩水M
2の輸送量は、46kL/hであった。総輸送距離は100mで、全ての出麹塩水混合物M
3をバッファタンク40から仕込みタンク30まで輸送するのに約2時間を要する。また、配管11の配管口径は200mm、分岐管13の配管口径は150mmであった。
【0028】
主輸送ポンプ12には、吐出量が50m
3/hのロータリーポンプを使用した。前記ロータリーポンプは容積式ポンプに属する。主輸送ポンプ12による出麹塩水混合物M
3の輸送速度は、0.5〜0.6m/sであり、出麹塩水混合物M
3が主輸送ポンプ
12を出てから仕込みタンク30に到達するまでの所要時間は約3分であった。一方、補助輸送ポンプ15には、吐出量が72m
3/hで吐出圧力が最大0.7MPaの多段遠心ポンプを用いた。
【0029】
上記の条件で、主輸送ポンプ12により出麹塩水混合物M
3を仕込みタンク30へ輸送した。正常運転時にあっては、図示省略の製麹装置、ベルトコンベア50、塩水供給装置60及び出麹塩水混合装置20が駆動され、バッファタンク40から主輸送ポンプ12へ出麹塩水混合物M
3が連続的に供給されていた。出麹塩水混合物輸送装置10では、主輸送ポンプ12が駆動され、配管11を出麹塩水混合物M
3が輸送されているのが確認できた。また、自動弁16が閉じた状態となっていること、及び補助輸送ポンプ15が停止した状態となっていることが確認でき、分岐管13から配管11へは塩水M
4は送られていなかった。
【0030】
主輸送ポンプ12の運転開始から約60分経過後に、主輸送ポンプ12が停止し、主輸送ポンプ12による出麹塩水混合物M
3の輸送が停止した。主輸送ポンプ12の停止から約10秒経過後に、自動弁16が開き、補助輸送ポンプ15が起動して、補助輸送用塩水貯留タンク14から分岐管13を介して塩水M
4が主輸送ポンプ12の二次側の配管11に供給された。その結果、主輸送ポンプ12の二次側の配管11内に残留していた出麹塩水混合物M
3が仕込みタンク30へ輸送されるのが確認できた。その後、主輸送ポンプ12が停止した原因を調べたところ、主輸送ポンプ12の駆動部であるモーターの故障が原因であることがわかった。つまり、主輸送ポンプ12のモーターが故障して主輸送ポンプ12の回転軸が停止したことにより、前記回転軸に設けられた回転計(図示省略)がそれを検知して、出麹塩水混合物輸送装置10の制御部であるシーケンサー(図示省略)に異常信号を送った結果、前記シーケンサーより自動弁16の開信号、及び補助輸送ポンプ15の起動信号が発せられたことになる。以上のことから、本発明の出麹塩水混合物輸送装置10が、出麹塩水混合物M
3の輸送状態に異常が生じ、主輸送ポンプが停止した場合に、配管11内で出麹塩水混合物M
3が詰まるのを防止するために非常に有効であることが確認できた。
【0031】
また、本発明の出麹塩水混合物輸送装置10は、主輸送ポンプ12自体の異常以外が原因となる場合でも適応可能である。例えば、主輸送ポンプ12の二次側の配管11内に設けた圧力計(図示省略)が所定圧力を超えた場合を例に挙げる。このような場合には、前記圧力計からの信号を出麹塩水混合物輸送装置10の制御部であるシーケンサー(図示省略)が異常信号として受け取り、前記シーケンサーより主輸送ポンプ12の停止信号、自動弁16の開信号、及び補助輸送ポンプ15の起動信号が発せられることになる。これ以降は、実施例にて説明した流れと同様に、補助輸送ポンプ15により塩水M
4が補助輸送用塩水貯留タンク14から分岐管13を経由して、主輸送ポンプ12の二次側の配管12へと輸送されることになる。
【0032】
本実施例では、出麹塩水混合物輸送装置10の制御部として、シーケンサーを用いた場合を想定して説明したが、前記制御部と同様の制御は、シーケンサー以外の電子制御機器や、電気式リレー回路や、エア式作動回路や、機械バネ式作動回路などでも実現することができる。