(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加熱部材に装着された管体と、該管体に挿通された絶縁電線とを備え、該絶縁電線に交流電流を通電することで前記管体に誘導電流を生じさせ前記管体を発熱させるようにした誘導加熱装置であって、
前記管体は、肉厚が零或いは肉厚が他の部分の肉厚よりも薄く形成された装着部を有し、該装着部が前記被加熱部材に装着され、
前記被加熱部材は、加熱が要求される本体部と、該本体部に取り付けられた補強部とを有し、
該補強部に前記管体が装着され、
前記補強部の材質が前記絶縁電線に交流電流を通電したとき誘導電流が生じる磁性体であり、
前記本体部の材質が防錆を有する非磁性体のステンレスであり、
前記被加熱部材の本体部が、水門の扉体に設けられた止水シールが接する戸当たり水密板であり、水に晒されるものであり、
前記管体が、前記被加熱部材の補強部に2本併設され、少なくとも伝熱セメントによって前記補強部に装着され、
前記伝熱セメントが、前記管体同士の間に各管体の表面および前記被加熱部材の補強部に接するように配設され、
前記伝熱セメントが、前記水門の駆体としてのコンクリートで覆われた、
ことを特徴とする誘導加熱装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(第1実施形態:誘導加熱装置)
本発明の第1実施形態に係る誘導加熱装置を説明する。
図1(a)に第1実施形態に係る誘導加熱装置1を示し、
図1(b)に従来例に係る誘導加熱装置1xを示す。
【0020】
第1実施形態に係る誘導加熱装置1は、被加熱部材2に装着された管体3と、管体3に挿通された絶縁電線4とを備え、絶縁電線4に交流電流を通電することで管体3に誘導電流を生じさせ管体3を発熱させる技術を前提とする。この誘導加熱装置1の特徴は、管体3を内部が露出するように一部を切除した形状の切除管体3aとし、切除管体3aを切除により形成された開口31が閉じられるようにして被加熱部材2に装着し、被加熱部材2の材質を誘導電流が生じ得る材質とした点にある。
【0021】
かかる構成によれば、絶縁電線4に交流電流を通電すると、交流電流による交番磁束によって開口31の部分の被加熱部材2に誘導電流(渦電流)が生起され、被加熱部材2が直接発熱することになる。このため、従来(
図1(b)参照)、管体3から被加熱部材2への熱伝導の際に生じていたエネルギー損失を軽減できる。以下、第1実施形態に係る誘導加熱装置1を構成要素毎に説明する。
【0022】
(被加熱部材)
被加熱部材2は、加熱が要求される本体部21と、本体部21に取り付けられた補強部22とを備えている。本体部21は例えば板厚10〜20mm程度の板状の部材からなり、補強部22は本体部21よりも薄い板状の部材からなる。但し、補強部22の板厚は、本体部21の板厚と同等若しくはそれよりも厚くても構わない。補強部22の一方の面(
図1の下面)には本体部21が溶接等によって取り付けられ、補強部22の他方の面(
図1の上面)には管体3が装着されている。
【0023】
補強部22は本体部21を補強するものである。従って、本体部21のみで十分な強度を発揮できる場合、補強部22を省略してもよい。補強部22を省略した場合、本体部21に直接管体3を装着することになる。但し、本体部21に直接管体3を装着することは施工上困難なケースがあるため、その場合、補強部22に管体3を装着したものを本体部21に取り付けるようにしてもよい。
【0024】
本体部21の材質は、防錆等を考慮して、誘導電流が生じ難いステンレス材(非磁性体)が用いられている。このため、絶縁電線4に交流電流を通電しても、本体部21での発熱は期待できない。本体部21を加熱するには、補強部22に誘導電流を生じさせて補強部22を発熱させ、その熱で本体部21を加熱する必要がある。
【0025】
このため、補強部22の材質には、誘導電流が生じやすい磁性体(SS材、SM材、SN材等の炭素鋼の他、コバルト、ニッケル等)が用いられている。但し、本体部21に防錆要求がなければ、本体部21にも誘導電流が生じ易い磁性体(SS材等)を用いてもよい。
【0026】
本体部21には、例えば、水門設備の扉体に設けられた止水シールやダストシール等が摺接、押付又は離反される。この場合、扉体の止水シール等が摺接等される本体部21が戸当り水密板に相当し、それを補強する補強部22が戸当り補強材に相当する。なお、補強部22は、SS材等が用いられているため、ステンレス材からなる本体部21よりも錆び易い。よって、補強部22での錆びの発生を防止するため、補強部22を図示しないコンクリートや樹脂等で覆うようにしてもよい。
【0027】
(管体)
管体3は、内部が露出するように一部が切除された形状の切除管体3aからなり、切除により形成された開口31が閉じられるようにして被加熱部材2に装着されている。具体的には、切除管体3aは、断面円形管を直径の部分で半分に分割した形状の半割管であり、半割の両端部32が被加熱部材2の補強部22に装着されている。なお、断面円形管を直径の部分で分割することで、分割した双方を切除管体3aとして利用でき、歩留まりがよい。
【0028】
切除管体3aの材質には、絶縁電線4に交流電流を通電したとき、誘導電流が生じやすい材質である磁性体(SGP管、STK材、STKN材等の炭素鋼の他、コバルト、ニッケル等)が用いられている。よって、絶縁電線4に交流電流が通電されると、交流電流によって生じる交番磁束により切除管体3aに交流周波数に応じた誘導電流が生起され、電気抵抗によるジュール熱によって切除管体3aが発熱する。
【0029】
従来の管体3は、
図1(b)に示すように、周方向に沿って肉厚が均一な状態で被加熱部材2に取り付けられていたが、本実施形態に係る切除管体3aは、
図1(a)に示すように、切り欠きによって形成された開口31(肉厚が零の部分)を有し、その部分(開口31)が被加熱部材2に装着されている。すなわち、本実施形態の切除管体3aにおいては、肉厚が零である開口31が装着部33に相当し、その装着部33である開口31が閉じられるように被加熱部材2に装着されている。
【0030】
このため、切除管体3aと被加熱部材2とで区画された空間に挿通された絶縁電線4に交流電流を通電すると、切除管体3aのみならず開口31の近傍の被加熱部材2にも、交流周波数に応じた誘導電流が生起される。よって、被加熱部材2にその電気抵抗に応じたジュール熱が発生し、被加熱部材2が直接加熱される。この結果、従来(
図1(b)参照)、管体3の熱を被加熱部材2に伝導する際に生じていたエネルギー損失が軽減される。加えて、切除管体3aにも誘導電流が生起されるので切除管体3aも発熱するところ、切除管体3aの熱は、開口31の両端部32から被加熱部材2に伝わると共に、後に詳述する伝熱セメント5を介しても被加熱部材2に伝わる。
【0031】
すなわち、絶縁電線4に交流電流を通電すると絶縁電線4の周囲に交番磁束が生じるところ、その交番磁束は、切除管体3aの開口31を覆う被加熱部材2に誘導電流を生起させて被加熱部材2を直接加熱すると共に、開口31を除く絶縁電線4の周囲においては切除管体3aに捉えられて切除管体3aに誘導電流を生起させ切除管体3aを加熱する。切除管体3aの熱は、開口31の両端部32から被加熱部材2に伝導されると共に、伝熱セメント5を介して被加熱部材2に伝導される。この結果、絶縁電線4に交流電流を通電した際、絶縁電線4の周囲に発生する交番磁束は、被加熱部材2の加熱に有効に利用されることになる。
【0032】
切除管体3aの肉厚は、絶縁電線4に交流電流を通電することで発生する交番磁束を切除管体3aの肉厚内にて確実に捉え、その交番磁束を的確に誘導電流に転換させることができる十分な肉厚(所定肉厚)に設定されている。仮に、切除管体3aの肉厚が余りに薄いと、絶縁電線4に交流電流を通電した際に生じる交番磁束を切除管体3aの肉厚内で十分に捉えきれず、誘導電流が小さくなり、切除管体3aでの発熱量が小さくなり、切除管体3aから被加熱部材2への伝熱量が小さくなってしまう。
【0033】
切除管体3aは、被加熱部材2に溶接され一体化されている。切除管体3aと被加熱部材2とを一体化して電気的に接続することで、被加熱部材2での誘導電流の発生が促進されるからである。但し、一体化せずとも被加熱部材2において誘導電流が生じ得るため、一体化は必須ではない。例えば、切除管体3aを接着したり、ボルト、バンド又は押さえ金具等を用いて被加熱部材2に取り付けたり、切除管体3aを被加熱部材2と電気的に接続する状態としても、接続しない状態としてもよい。
【0034】
(伝熱セメント)
切除管体3aは、溶接によって被加熱部材2に装着された後、伝熱セメント5によっても被加熱部材2に固定される。但し、溶接を省略し、切除管体3aを伝熱セメント5のみによって被加熱部材2に装着してもよい。伝熱セメント5は、粉末状の炭素、セラミック、珪酸ソーダ、カルシウムシリケイト等から構成されており、誘導電流によって発熱した切除管体3aの熱を被加熱部材2に伝導させる機能を発揮する。
【0035】
図1(a)に示すように、本実施形態の伝熱セメント5は、切除管体3aである半割管の両端部32が被加熱部材2に接した状態で、半割管の側面と被加熱部材2の上面とで形成される角部(略直角)に断面略三角形状に設けられている。一方、
図1(b)に示す従来例においては、管体3に断面円形のものを用いているので、管体3と被加熱部材2とが線接触することになり、その接触部の付け根に形成される窪み部を埋めるように伝熱セメント5を設ける必要があり、伝熱セメント5の使用量が本実施形態の使用量よりも増大してしまう。伝熱セメント5は高価なため、本実施形態の方が従来例よりもコストダウンを推進できる。なお、伝熱セメント5は省略してもよい。
【0036】
(絶縁電線)
切除管体3aと被加熱部材2とで区画された空間には、絶縁電線4が挿通されている。絶縁電線4には、交流電源が接続されており、交流電流が通電されるようになっている。交流電源には、50Hz又は60Hzの商用周波数の交流電源を用いてもよいが、これに限られるものではない。
【0037】
絶縁電線4には、耐熱絶縁電線(耐熱絶縁ケーブル)が用いられる。絶縁電線4に交流電流を通電した際、切除管体3a及び被加熱部材2が発熱するため、絶縁電線4が熱損傷することを回避する必要があるからである。なお、絶縁電線4は、絶縁性を有しているため、交流電流を通電した際、その交流電流が切除管体3aや被加熱部材2に漏電することを防止できることは勿論である。
【0038】
(被加熱部材の加熱)
以上説明したように、本実施形態に係る誘導加熱装置1においては、管体3が肉厚零の装着部33(開口31)を有する切除管体3aであり、切除管体3aが開口31が閉じられるように被加熱部材2に装着され、被加熱部材2が誘導電流の生じる材質(磁性体)を有している。このため、切除管体3aに挿通された絶縁電線4に交流電流を通電することで、開口31を閉じる被加熱部材2に誘導電流が生起され、被加熱部材2が直接発熱する。この結果、従来(
図1(b)参照)、管体3から被加熱部材2への熱伝導の際に生じていたエネルギー損失を軽減できる。
【0039】
また、絶縁電線4に交流電流を通電することで絶縁電線4の周囲に生じる交番磁束は、切除管体3aの開口31を除く絶縁電線4の周囲においては切除管体3aに捉えられ、切除管体3aに誘導電流を生起させて切除管体3aを加熱する。切除管体3aの熱は、開口31の両端部32から被加熱部材2に伝導されると共に、伝熱セメント5を介して被加熱部材2に伝導される。よって、絶縁電線4に交流電流を通電した際、絶縁電線4の周囲に発生する交番磁束を、被加熱部材2の加熱に有効に利用できる。
【0040】
すなわち、この誘導加熱装置1によれば、エネルギー損失が少なく高効率であり、絶縁電線4の周囲に発生する交番磁束を有効に利用できるので、
図1(b)に示す従来の誘導加熱装置1xと比べると、同じ消費電力で被加熱部材2をより高温に加熱でき、逆を言えば、被加熱部材2を同じ温度に加熱する際に必要となる電力を低減できる。
【0041】
(第2実施形態)
図2に、本発明の第2実施形態に係る誘導加熱装置11を示す。第2実施形態の誘導加熱装置11は、水門設備に組み込まれており、水を堰き止める扉体6が凍結によって開閉不能となることを防止するものである。
【0042】
本実施形態の誘導加熱装置11は、
図1(a)を用いて説明した第1実施形態の誘導加熱装置1と基本的な構成要素は同一であり、切除管体3aを被加熱部材2に2本併設した点のみが第1実施形態と相違している。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施形態の被加熱部材2は、第1実施形態のものと同様に、加熱が要求される板状の本体部(戸当り水密板)21と、本体部21に取り付けられたH型鋼から成る補強部(戸当り補強材)22とを有し、本体部21には、水門設備の扉体6に設けられた止水シール61やダストシール等が、扉体6の開閉動作に伴って摺接、押付又は離反されるようになっている。
図2にて、止水シール61の左方には、止水シール61及び扉体6によって水7が堰き止められている。切除管体3aは、止水シール61の近傍に位置して、被加熱部材2の補強部22に2本並列に取り付けられている。
【0044】
本実施形態によれば、絶縁電線4に交流電流を通電すると、第1実施形態で述べたようにして被加熱部材2が加熱されるため、止水シール61の近傍の水7の温度が凍結温度以上に保たれる。よって、止水シール61の近傍の水7が凍結することによる扉体6の開閉不能を防止できる。なお、
図2において、8は水門の駆体としてのコンクリートであり、誘導加熱装置11及び被加熱部材2は、コンクリート8で覆われていてもよいが、覆われていなくても構わない。本実施形態の基本的な作用効果は第1実施形態と同様である。
【0045】
(第3〜5実施形態)
図3(a)に本発明の第3実施形態に係る誘導加熱装置12を示す。第3実施形態の誘導加熱装置12は、
図1(a)に示す第1実施形態の誘導加熱装置1と基本的な構成要素は同一であり、切除管体3aが断面円形管を直径の半分に分割した半割管ではなく、切除管体3aが断面円形管を直径の半分以下の部分を切除して内部が露出する形状とした点のみが、第1実施形態と相違する。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態の作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0046】
図3(b)に本発明の第4実施形態に係る誘導加熱装置13を示す。第4実施形態の誘導加熱装置13は、
図1(a)に示す第1実施形態の誘導加熱装置1と基本的な構成要素は同一であり、管体3に切除管体3aを用いるのではなく、管体3に肉厚が他の部分の肉厚よりも薄く形成された装着部34を形成した特殊管体3bを用い、特殊管体3bの装着部34を被加熱部材2に装着した点のみが、第1実施形態と相違する。よって、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。特殊管体3bは、被加熱部材2と面接触するように平坦に形成されたフラット部35を有し、フラット部35の肉厚t1が他の部分の肉厚t2よりも薄く形成され、フラット部35が、装着部34として被加熱部材2に装着されている。フラット部35は、断面円形管を内部が露出しないように切削して形成される。
【0047】
本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、絶縁電線4に交流電流を通電すると絶縁電線4の周囲に交番磁束が生じるところ、その交番磁束は、フラット部35に誘導電流を生起させるのみならず、肉厚の薄いフラット部35を通過してフラット部35で覆われた被加熱部材2に誘導電流を生起させて被加熱部材2を直接加熱する。更に、交番磁束は、フラット部35を除く絶縁電線4の周囲においては、特殊管体3bに捉えられて特殊管体3bに誘導電流を生起させ特殊管体3bを加熱する。特殊管体3bの熱は、装着部34であるフラット部35から被加熱部材2に伝導されると共に、伝熱セメント5を介しても被加熱部材2に伝導される。よって、絶縁電線4に交流電流を通電した際、絶縁電線4の周囲に発生する交番磁束を、被加熱部材2の加熱に有効に利用できる。なお、フラット部35に生起された誘導電流によってフラット部35も発熱するため、その熱も被加熱部材2に伝導する。
【0048】
図3(c)に本発明の第5実施形態に係る誘導加熱装置14を示す。第5実施形態の誘導加熱装置14は、
図3(b)に示す第4実施形態の誘導加熱装置13と基本的な構成要素は同一であり、特殊管体3cに断面円形管ではなく断面角形管を用いた点のみが、第4実施形態と相違する。本実施形態においても第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0049】
また、
図3(b)に示す第4実施形態に係る誘導加熱装置13、
図3(c)に示す第5実施形態に係る誘導加熱装置14においては、管体3に開口31(
図3(a)参照)が存在しないため、管体3の内部の防水性が高まる。例えば、伝熱セメント5を施工する場合に、管体3の内部に伝熱セメント5が誤って進入してしまうことはない。また、絶縁電線4は、メンテナンス時に管体3から引き抜かれるが、引き抜かれる絶縁電線4は、管体3の内周面(滑らかに形成された内周面)に接触するのみであり、被加熱部材2の表面の細かな凹凸や伝熱セメント5に接して損傷することが回避される。
【0050】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。