特許第5876725号(P5876725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5876725車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール構造およびシール方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876725
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール構造およびシール方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/14 20060101AFI20160218BHJP
   F16B 37/06 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   F16J15/14 Z
   F16B37/06 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-288695(P2011-288695)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137072(P2013-137072A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】安井 理
(72)【発明者】
【氏名】原 仁美
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−037132(JP,A)
【文献】 特開2005−060412(JP,A)
【文献】 特許第2500069(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/14
F16B 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構成部材に溶接された溶接ねじ部品に、少なくとも一部が熱溶融可能とされたリング状のシール用シートが外嵌され、かつこのシール用シートによって、前記溶接ねじ部品の座面と前記車両構成部材の溶接対象面との境界部の周囲が覆われており、
前記シール用シートの外周縁寄り領域の全周は、前記溶接対象面のうち、前記溶接ねじ部品の外周囲に溶着されており、
前記シール用シートの前記溶着の領域よりも内周縁寄り領域は、前記溶接ねじ部品の外面に沿うように前記溶接対象面から立ち上がった状態とされ、前記内周縁寄り領域の全周は、前記溶接ねじ部品の外面に溶着されていることを特徴とする、車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール構造。
【請求項2】
溶接ねじ部品が溶接された車両構成部材に電着塗装を施す前の段階において、熱溶融可能なメルト層を有し、かつ下面が油面粘着性をもつリング状のシール用シートを、前記溶接ねじ部品に外嵌し、前記シール用シートの外周縁寄り領域の全周を、前記溶接対象面のうち、前記溶接ねじ部品の外周囲に接触させるとともに、前記シール用シートの前記接触の領域よりも内周縁寄り領域については、前記溶接ねじ部品の外面に沿うように前記溶接対象面から立ち上がった状態として、前記シール用シートによって、前記溶接ねじ部品の座面と前記車両構成部材の溶接対象面との境界部の周囲を覆う工程を有しており、
この工程の後に電着塗装を施してから塗装乾燥処理を行なう際には、前記シール用シートのメルト層を加熱溶融させて、前記シール用シートの内周縁寄り領域の全周および外周縁寄り領域の全周を、前記溶接ねじ部品の外面および前記溶接対象面にそれぞれ溶着させることを特徴とする、車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の構成部品に溶接ナット(ウェルドナット)や溶接ボルト(ウェルドボルト)などの溶接ねじ部品が付設されている箇所をシールするための構造および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の車両構成部材にウェルドナットを溶接する場合、ウェルドナットの全周溶接は困難であるため、溶接対象面とウェルドナットの座面との境界部には、隙間を生じるのが通例である。ウェルドナットの付設箇所如何では、雨水やその他の水を被る場合があるが、このウェルドナットと溶接対象面との境界部に隙間を生じていたのでは、境界部に水が進入し、さらにはこの水がウェルドナットの下方に流れ落ちて、その部分が汚染し、あるいは腐食し易くなるといった不具合を生じる場合がある。
前記した隙間を無くすための手段としては、溶接前において、溶接対象面にシーラ材を厚く塗布することが考えられるが、このような手段を採用したのでは、ウェルドナットについての適正な溶接強度が得られなくなる。また、溶接後において溶接対象面とウェルドナットとの境界部の周囲に、シーリング材を塗布することも考えられるが、この手段では、前記境界部の周囲の全周を塞ぐようにシーリング材を丁寧に塗布する必要がある。したがって、その作業は面倒であって、作業コストが高価となる。とくに、車両の組み立てが進行し、ウェルドナットが外部から見えないような位置に存在する場合には、シーリング材の塗布作業を行なうことは実質的に困難である。
【0003】
一方、従来においては、特許文献1に記載のウェルドナットが提案されている。このウェルドナットは、溶接対象面に食い込ませるための環状のシール用突起が座面に形成された構成を有している。このような構成によれば、環状のシール用突起の外方からその内方に向けて水が進入することを防止することが可能である。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の手段によれば、ウェルドナットを溶接する際には、溶接用のプロジェクション部(突起部)に加えて、環状のシール用突起も溶接対象面に接触するために、溶接時においてウェルドナットに印加される電圧が分散し、プロジェクション部の溶け込みが不十分となり易い。これでは、溶接強度が低くなり、高強度が要求される部位には適用することができない。また、前記したウェルドナットを溶接する際には、それ専用の大型の溶接治具を用いる必要が生じるといった不利もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2500069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、ウェルドナットなどの溶接ねじ部品の溶接強度が低下するといった不具合を生じさせることなく、溶接ねじ部品と溶接対象面との境界部のシールを容易な作業によって適切に図ることが可能な車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール構造およびシール方法を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール構造は、車両構成部材に溶接された溶接ねじ部品に、少なくとも一部が熱溶融可能とされたリング状のシール用シートが外嵌され、かつこのシール用シートによって、前記溶接ねじ部品の座面と前記車両構成部材の溶接対象面との境界部の周囲が覆われており、前記シール用シートの外周縁寄り領域の全周は、前記溶接対象面のうち、前記溶接ねじ部品の外周囲に溶着されており、前記シール用シートの前記溶着の領域よりも内周縁寄り領域は、前記溶接ねじ部品の外面に沿うように前記溶接対象面から立ち上がった状態とされ、前記内周縁寄り領域の全周は、前記溶接ねじ部品の外面に溶着されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、溶接ねじ部品の座面と車両構成部材の溶接対象面との境界部は、その全周がシール用シートによって覆われて密閉された状態となる。したがって、優れたシール性能が得られ、シール用シートの周辺部分から前記の境界部に水が進入することは適切に防止される。
第2に、溶接ねじ部品として、環状のシール用突起が座面に設けられていた特殊な溶接ねじ部品を用いる必要はない。したがって、溶接ねじ部品の溶接強度を高くし、高強度が要求される箇所にも適切に対応することができる。また、溶接用治具も小型の汎用のものを用いることができる。
第3に、本発明のシール構造は、リング状のシール用シートを溶接ねじ部品に外嵌した後に、このシール用シートを加熱することにより得ることができる。これら一連の作業は、容易であり、作業コストを廉価にすることができる。本発明によれば、たとえば溶接ねじ部品と溶接対象面との境界部の全周にわたってシーリング材を塗布する手段と比較すると、その作業は格段に容易であり、作業コストも大幅に低減することが可能である。シール用シートの加熱は、後述するように、電着塗装の乾燥作業を利用して行なうことが可能であるため、作業コストをより低減することが可能である。
【0010】
本発明の第2の側面により提供される車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール方法は、溶接ねじ部品が溶接された車両構成部材に電着塗装を施す前の段階において、熱溶融可能なメルト層を有し、かつ下面が油面粘着性をもつリング状のシール用シートを、前記溶接ねじ部品に外嵌し、前記シール用シートの外周縁寄り領域の全周を、前記溶接対象面のうち、前記溶接ねじ部品の外周囲に接触させるとともに、前記シール用シートの前記接触の領域よりも内周縁寄り領域については、前記溶接ねじ部品の外面に沿うように前記溶接対象面から立ち上がった状態として、前記シール用シートによって、前記溶接ねじ部品の座面と前記車両構成部材の溶接対象面との境界部の周囲を覆う工程を有しており、この工程の後に電着塗装を施してから塗装乾燥処理を行なう際には、前記シール用シートのメルト層を加熱溶融させて、前記シール用シートの内周縁寄り領域の全周および外周縁寄り領域の全周を、前記溶接ねじ部品の外面および前記溶接対象面にそれぞれ溶着させることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される前記のシール構造を適切に得ることができる。加えて、次のような効果も得られる。
すなわち、シール用シートの下面は油面粘着性を有しているが、金属製の車両構成部材は、多くの場合、防錆油がその表面に塗布されている。したがって、このような車両構成部材を対象とする場合において、シール用シートを溶接ねじ部品に外嵌させた際には、このシール用シートを車両構成部材の溶接対象面に確実に接着(仮接着)させることができる。これは、シール用シートが溶接対象面から剥離するといったことを防止するのに役立ち、その後の加熱時においてシール用シートを溶接対象面に適切に溶着させる上でも好ましい。また、前記構成によれば、シール用シートの加熱手段として、電着塗装後の塗装乾燥処理工程を利用しているために、シール用シートを溶接ねじ部品などに溶着させるための専用の加熱工程は不要であり、合理的である。さらに、シール用シートを所定箇所にセットする作業は、電着塗装前であればいずれの時期であってもよく、作業融通性にも優れる。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形
態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明に係る車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール構造の一例を示す要部平面図であり、(b)は、(a)のIb−Ib断面図である。
図2】(a)は、図1に示すシール構造を得るための方法を示す要部断面図であり、(b)は、その平面断面図である。
図3】(a)は、本発明の他の例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)に示す構造を得るための方法を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1に示す車両における溶接ねじ部品の付設箇所のシール構造(以下、「シール構造」と適宜簡略する)は、溶接ねじ部品として、ウェルドナット1が用いられている。このウェルドナット1は、車両構成部材2に溶接されており、これら両者の境界部4が、シール用シート3を用いてシールされている。以下、これらの点について詳細に説明する。
【0016】
ウェルドナット1は、従来既知のものと同様であり、ネジ孔11を有するたとえば六角ナット状の本体部10の下部に、上面が傾斜した円板状などのフランジ部12が一体的に形成された構成である。このフランジ部12の外周縁には、溶接時に溶融する複数のプロジェクション部13が設けられている。ウェルドナット1の溶接対象となる車両構成部材2は、たとえば車両のフレーム部材80にスポット溶接などによって接合される金属製のブラケットであり、他の車両構成部材81を支持するのに利用される。もちろん、ウェルドナット1の溶接対象は、このようなブラケットに限定されない。車両構成部材2は、鈑金製である。ウェルドナット1は、複数のプロジェクション部13を利用して、車両構成部材2の上面20(本発明でいう溶接対象面の一例)に溶接されている。ウェルドナット1の座面14と車両構成部材2の上面20との境界部4のうち、プロジェクション部13が存在しない部分には、隙間が生じている。
【0017】
シール用シート3は、前記した境界部4の周囲を塞ぐための部材であり、円形リング状である。このシール用シート3は、たとえば3層構造であり、基材フィルム32の上側にメルト層31が積層し、かつ下側に油面接着層33が積層した構成である。図1(b)の部分拡大図は、シール用シート3の後述する加熱処理後の状態を示している(加熱処理前については、図2(a)の部分拡大図を参照)。
【0018】
メルト層31は、後述する電着塗装の乾燥処理温度である180℃以下の温度で溶融可能な層である。このメルト層31は、たとえばアクリルフォームとエポキシ樹脂との混合樹脂からなり、熱硬化性を有している。また、加熱前の厚みは、たとえば0.5〜1.5mmである。油面接着層33は、シール用シート3の加熱前において、車両構成部材2の上面20への接着性をもつ層であり、後述の加熱処理前の状態においては軟質である。この油面接着層33は、たとえばアクリル樹脂とエポキシ樹脂との混合樹脂からなり、熱硬化性を有している。油面接着層33の加熱前の厚みは、0.3mm程度、またはそれ以下である。基材フィルム32は、油面接着層33とメルト層31とを接合するための媒体としての役割を果たすものであり、たとえばその材質はPETであって、メルト層としての役割は果たさない。したがって、この基材フィルム32の厚みは、できる限り薄くされている。
【0019】
シール用シート3は、ウェルドナット1の本体部10に外嵌されており、このシール用シート3の内周縁寄り領域30aは、ウェルドナット1のフランジ部12の上面上に位置
している。シール用シート3の外周縁寄り領域30bは、フランジ部12の周囲にはみ出しており、車両構成部材2の上面20上に位置している。このことにより、ウェルドナット1と車両構成部材2との境界部4の周囲は、シール用シート3によって覆われている。さらに、シール用シート3は、後述の加熱処理が施されており、メルト層31が一旦溶融してから硬化している結果、内周縁寄り領域30aの全周は、フランジ部12の上面に溶着し、かつ外周縁寄り領域30bの全周は、車両構成部材2の上面20に溶着している。メルト層31については、加熱溶融時において流動させて、図1(b)の部分拡大図に示すように、メルト層31の一部を基材フィルム32の外方および内方にはみ出させることが可能である。このことにより、シール用シート3の外周縁および内周縁の溶着に利用される樹脂の量を多くし、溶着部の強度やシール性をより高めることが可能である。油面接着層33については、前記した加熱処理によって熱硬化し、フランジ部12の上面や車両構成部材2の上面20への接着がより強固なものとなる。
【0020】
前記したシール構造は、次の方法により得ることが可能である。
【0021】
まず、図2に示すように、車両構成部材2にウェルドナット1が溶接された状態において、未加熱状態のシール用シート3をウェルドナット1の本体部10に外嵌する。この場合、図1を参照して説明したように、シール用シート3の内周縁寄り領域30aをフランジ部12上に配置し、かつ外周縁寄り領域30bを車両構成部材2の上面20上に配置させる。シール用シート3の下面部分は、油面接着層33とされているために、シール用シート3を前記した部分に位置ずれを生じないように仮接着させておくことが可能である。車両構成部材2は、多くの場合防錆油がその表面に塗布されているのが通例である。シール用シート3が油面接着層33を有していれば、シール用シート3を加熱してウェルドナット1や車両構成部材2に溶着させる以前の段階において、シール用シート3が剥離、脱落するといったことを適切に防止することが可能である。
【0022】
前記した車両構成部材2を含む部位の電着塗装は、前記したシール用シート3のセッティングを終えた後に行なう。電着塗装の後には、塗装乾燥処理が実行されるが、この処理を、シール用シート3の加熱に利用し、この加熱によりメルト層31を加熱溶融させるとともに、油面接着層33を熱硬化させる。このことにより、図1を参照して説明したシール構造を効率よく、かつ合理的に得ることが可能であり、シール用シート3を加熱するための専用工程は不要となる。
【0023】
図1に示したシール構造によれば、ウェルドナット1と車両構成部材2との境界部4は、その全周がシール用シート3によって密閉状態に閉塞された状態にある。したがって、優れたシール性能が得られ、シール用シート3の周辺部分から境界部4に水が進入することは適切に防止される。また、ウェルドナット1としては、座面14に環状のシール用突起を設けたものを用いる必要がないために、ウェルドナット1の溶接強度を高くし、高トルクが作用する箇所にもウェルドナット1を用いることができる。また、大型の特殊な溶接用治具を用いる必要もなくすことができる。
【0024】
さらに、図2を参照して説明した方法から理解されるように、本実施形態のシール構造は、実質的には、シール用シート3をウェルドナット1に外嵌させた後に、電着塗装の乾燥処理工程を利用してシール用シート3を加熱することにより得られる。これら一連の作業は容易であり、作業コストが廉価となる利点も得られる。シール用シート3をウェルドナット1に外嵌させる作業は、電着塗装前であれば、いずれの時期に行なってもよく、融通性にも優れる。
【0025】
図3は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0026】
図3に示すシール構造においては、ウェルドナット1Aの本体部10は、平面視矩形状であり、この本体部10の下部の四隅部分に、プロジェクション部13が設けられた構成である。一方、シール用シート3Aは、ウェルドナット1Aに対応した矩形のリング状であり、その内周縁の四隅部分には、外周縁側に向けて延びたスリット39が設けられている。シール用シート3Aは、ウェルドナット1Aの本体部10に外嵌されているが、この外嵌に際しては、シール用シート3Aの内周縁寄り領域30aが、外周縁寄り領域30bに対して比較的大きな角度で屈曲し、ウェルドナット1Aの本体部10の外面に沿っている。スリット39は、シール用シート3に大きな皺などを生じさせることなくなく、前記した屈曲を容易にするのに役立つ(なお、ウェルドナットの外面にシール用シートの内周縁側を沿わせることを容易にするためのスリットを設ける手段は、図1および図2に示した実施形態においても用いることができる)。シール用シート3Aは、前記実施形態と同様に、電着塗装後の乾燥処理工程において加熱された結果、内周縁寄り領域30aの全周はウェルドナット1の本体部10の外面に溶着し、かつ外周縁寄り領域30bの全周は車両構成部材2の上面20に溶着している。
【0027】
本実施形態においても、前記実施形態と同様な効果が得られる。本実施形態から理解されるように、本発明においては、ウェルドナットの具体的な形態はとくに限定されるものではない。シール用シートは、リング状とされるが、その具体的な形状は、ウェルドナットの形状に対応させて円形リング状や矩形リング状など、適宜変更することができる。
【0028】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るシール構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更可能である。また、本発明に係るシール方法の各作業工程の具体的な構成も、種々に変更可能である。
【0029】
本発明でいう「溶接ねじ部品」の概念には、ウェルドナットに加え、ウェルドボルトも含まれる。ウェルドボルトの頭部は、ウェルドナットと同様な構成を有しているために、上述したウェルドナットについてのシール構造をウェルドボルトの頭部にそのまま適用すれば、本発明が意図する効果が得られることとなる。
【0030】
シール用シートは、少なくとも一部が熱溶融可能とされたリング状であって、溶接ねじ部品に外嵌されて加熱された状態において、シール用シートの内周縁寄り領域の全周および外周縁寄り領域の全周が所定部位に溶着可能な構成であればよい。したがって、シール用シートは、必ずしも前記したような3層構造のものに限らず、たとえば全体がメルト層のみの単層とされた構成とすることもできる。溶接ねじ部品の溶接対象となる車両構成部材については、既述したように、その具体的な種類・部材の名称を問うものではない。
【符号の説明】
【0031】
1,1A ウェルドナット(溶接ねじ部品)
2 車両構成部材
3,3A シール用シート
4 境界部
20 上面(溶接対象面)
30a 内周縁寄り領域(シール用シートの)
30b 外周縁寄り領域(シール用シートの)
31 メルト層(シール用シートの)
33 油面接着層(シール用シートの)
図1
図2
図3