(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された流水用管の凍結防止構造では、流水用管が直管状であるので、流水用管に保温材を容易に取り付けることが可能である一方、直管状の流水用管(直管部)の一部に流水用管の延びる方向に対して垂直方向に管(垂直部)を設けて流水用管をT字形状に形成した場合には、流水用管の形状(T字形状)に対応するように保温材を予め成形する必要があると考えられる。
【0006】
例えば、流水用管のT字形状に対応するように半割り(2分割)された保温材を予め成形して、この成形された保温材を流水用管に装着する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、半割り(2分割)された保温材を成形するための金型が必要になるという不都合が考えられる。
【0007】
他の方法として、例えば、流水用管の外周面形状(T字形状)に基づいて、発泡樹脂シート(保温材)を切り出して流水用管を包囲するという方法が考えられる。この方法では、流水用管の直管部の外周面形状に基づいて発泡樹脂シートからシート状直管部を切り出すとともに、流水用管の垂直部の外周面形状に基づいて発泡樹脂シートからシート状垂直部を切り出す。そして、シート状直管部を流水用管の直管部回りに湾曲させ、その突き合わせ部を融着して管状水平部を形成する。また、シート状垂直部を流水用管の垂直部回りに湾曲させ、その突き合わせ部を融着して管状垂直部を形成する。そして、管状水平部および管状垂直部の突き合わせ部を溶接する。これにより、流水用管のT字形状に対応するように保温材が形成される。しかしながら、この方法では、発泡樹脂シートの肉厚が薄いため発泡樹脂シート同士の融着を行うことが困難であるとともに、溶接を行う際には溶接棒を鞍型に3次元的な複雑な軌跡で動かす必要があるため、自動化が困難である。また、手動溶接を行った場合には、品質のバラツキが大きくなるという問題点がある。
【0008】
また、上記特許文献1に開示された流水用管の凍結防止構造では、流水用管を包囲している保温材の外周面は、部分的に剥き出しの状態であるため、外的な衝撃等により保温材が変形しやすいという問題点がある。これらの観点から、外的な衝撃に対して保温層が変形するのを抑制するとともに、品質のバラツキが少ない保温層付き管およびその製造方法が望まれている。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、外的な衝撃に対して保温層が変形するのを抑制することが可能な保温層付き
管の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するための手段として、本発明による保温層付き管の製造方法は、以下のように構成されている。
【0011】
すなわち、本発明による保温層付き管の製造方法は、外側直管部と前記外側直管部から分岐する外側分岐部とを含む外管本体を形成する工程と、前記外管本体内に挿入され、前記外側直管部に対応する内側直管部と、前記内側直管部から分岐するとともに前記外側分岐部に対応する内側分岐部とを含む内管本体を形成する工程と、
前記内管本体を形成する工程中に、前記内側分岐部の外周面に発泡体からなる保温シートを取り付けることにより前記外側分岐部と前記内側分岐部との間に発泡体からなる分岐部側保温層を形成する工程と、前記内管本体を形成する工程の後に、前記外管本体と前記内管本体との間に発泡体からなる保温材を注入することにより前記外側直管部と前記内側直管部との間に発泡体からなる直管部側保温層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成を備える保温層付き管の製造方法によれば、保温層により内管本体内を流れる水が凍結するのを抑制することができ、かつ、外管本体により保温層の外周面が剥き出しになるのを抑制することができるので、外管本体により外的な衝撃に対して保温層が変形するのを抑制することができる。また、流水用管のT字形状に対応するように保温材(保温層)を切り出すという方法や発泡樹脂シート(保温層)同士を手動で溶接する場合と異なり品質のバラツキが大きくなるのを抑制することができる。
また、このように構成すれば、2種類の発泡体からなる保温層(直管部側保温層および分岐部側保温層(保温シート))により、内管本体内を流れる水が凍結するのを抑制することができる。
【0013】
また、本発明による保温層付き管の製造方法において、好ましくは、前記内管本体を形成する工程は、前記内側直管部の外周面に第1係合部を形成して前記外管本体の外側直管部内に挿入するとともに、前記内側分岐部の端部近傍に第2係合部を形成して前記外管本体の外側分岐部内に挿入した後に、前記内側直管部の第1係合部と前記内側分岐部の第2係合部とを係合することにより、前記内管本体を形成する工程を含むことを特徴とする。このように構成すれば、外管本体内において、内側直管部の第1係合部と内側分岐部の第2係合部とを係合することにより、容易に内管本体を組み立てることができる。
【0014】
この場合、好ましくは、前記内管本体の内側直管部の第1係合部は、第1ネジ部を含み、前記内管本体の内側分岐部の第2係合部は、前記内側直管部の第1ネジ部と係合する第2ネジ部を含み、前記内管本体を形成する工程は、前記内側直管部の第1ネジ部に前記内側分岐部の第2ネジ部をねじ込むことにより、前記内管本体を形成する工程を含むことを特徴とする。このように構成すれば、外管本体内において、内側直管部の第1ネジ部に内側分岐部の第2ネジ部をねじ込むことにより、容易に内管本体を組み立てることができる。
【0015】
また、本発明による保温層付き管の製造方法において、好ましくは、前記
直管部側保温層を形成する工程は、前記外側直管部の両端部を塞ぐように蓋部材を取り付けた後に、前記蓋部材に形成された注入孔から発泡体からなる保温材を注入することにより前記
外側直管部と前記
内側直管部との間に発泡体からなる
直管部側保温層を形成する工程を含むことを特徴とする。このように構成すれば、外側直管部の両端部に取り付けられた蓋部材により、外管本体内に注入された保温材が外側にはみ出すのを抑制することができるので、容易に、外管本体内に発泡体からなる保温層を形成することができる。
【0016】
また、本発明による保温層付き管の製造方法において、好ましくは、前記
直管部側保温層を形成する工程は、前記内管本体を形成する工程の後に、前記外側直管部の両端部の各々に円環形状の接続部材を介して前記外側直管部よりも径の小さい外側短管部を融着させて、前記外管本体と前記内管本体との間に発泡体からなる保温材を注入することにより前記外側短管部と前記内側直管部との間に発泡体からなる短管部側保温層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする。このように構成すれば、外側短管部と内側直管部との間に容易に発泡体からなる短管部側保温層を形成することができるとともに、外側短管部により短管部側保温層が外的な衝撃に対して変形するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外的な衝撃に対して保温層が変形するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の
参考例および実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(
第1参考例)
図1〜
図3を参照して、
第1参考例による保温層付き管100の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、
第1参考例による保温層付き管100は、略T字形状を有する外管本体1を備えている。この外管本体1は、ポリエチレン管などからなる。また、外管本体1内には、外管本体1よりも小さい径を有する内管本体2が挿入されている。この内管本体2は、外管本体1の形状に対応する略T字形状を有している。また、外管本体1と内管本体2との間には、保温層3が充填されている。この保温層3は、発泡体などからなり、より具体的には、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレンまたは発泡ポリスチレンなどからなる。この保温層3により、内管本体2内を流れる水が凍結するのを抑制している。
【0022】
また、外管本体1の上方には、4つのネジ取付孔4aが形成されたフランジ部4が取り付けられている。また、フランジ部4には、空気弁(図示せず)が取り付けられるように構成されている。
【0023】
図2に示すように、外管本体1は、X方向に延びる外側直管部11と、外側直管部11の中央部近傍から略垂直方向(Y方向)に延びる外側分岐部12とを備えている。また、外側直管部11の中央部近傍には、開口部11aが形成されており、この開口部11aは、外側直管部11の延びる方向(X方向)に対して略垂直方向(Y方向)に向かって突出するように形成されている。
【0024】
また、外側直管部11と外側分岐部12とは、境界部分10において接続されている。具体的には、外側直管部11の開口部11aと、外側分岐部12の下端部12aとが融着により接続されている。なお、外側直管部11の開口部11a近傍には、ビード部11bが形成されている。外側分岐部12の下端部12a近傍には、ビード部12bが形成される。
【0025】
外管本体1内に挿入された内管本体2は、外管本体1の外側直管部11内に配置された内側直管部21と、外管本体1の外側分岐部12内に配置された内側分岐部22とを備えている。内側直管部21のX方向の長さは、外側直管部11のX方向の長さよりも長く形成されており、内側直管部21の両端部21aは、外側直管部11の両端部11cから所定の長さ突出している。
【0026】
外管本体1と内管本体2との間に設けられた保温層3は、外側直管部11の両端部11cに対応する位置から外側分岐部12の上端部12cに対応する位置まで充填(注入)されている。また、外側分岐部12と内側分岐部22との間に設けられた保温層3は、フランジ部4の下面4bと接触する位置まで充填されている。また、外側直管部11と内側直管部21との間に設けられた保温層3の上側の厚みD1と下側の厚みD2とは、略等しい。
【0027】
内管本体2の内側直管部21の中央部近傍には、開口部21bが形成されている。また、内側直管部21には、開口部21bを囲むように分岐継手23が取り付けられている。この分岐継手23は、後述するEF(エレクトロフュージョン)接合により、開口部21bを囲むように内側直管部21の外周面に取り付けられている。また、分岐継手23の内面には、内管本体2の内側分岐部22を取り付けるためのネジ部23aが形成されている。なお、ネジ部23aは、本発明の「第1係合部」および「第1ネジ部」の一例である。
【0028】
図3に示すように、内側分岐部22は、内側直管部21の分岐継手23に取り付けられるブッシング24を備えている。このブッシング24の外面の下端部近傍には、溝部24aが形成されている。溝部24aには、Oリング25が取り付けられている。なお、Oリング25は、本発明の「シール部材」の一例である。また、溝部24aの上方には、平行ネジなどのネジ部24bが形成されている。なお、ネジ部24bは、本発明の「第2係合部」および「第2ネジ部」の一例である。また、ブッシング24の上端部近傍には、ネジ部24cが形成されている。
【0029】
ブッシング24の上方には、ソケット26が取り付けられている。このソケット26の内面の下端部近傍には、ネジ部26aが形成されており、ネジ部26aがブッシング24のネジ部24cにねじ込まれることにより、ソケット26とブッシング24とが固定されている。また、ソケット26の内面の上端部近傍には、ネジ部26bが形成されている。
【0030】
ソケット26の上方には、ニップル27が取り付けられている。このニップル27の外面の下端部近傍には、ネジ部27aが形成されており、ネジ部27aがソケット26のネジ部26bにねじ込まれることにより、ニップル27とソケット26とが固定されている。また、ニップル27の上端部27bの外周面には、フランジ部4の内周面4cが接触するように取り付けられている。また、
図2に示すように、外側分岐部12の上端部12cは、ニップル27の上端部よりも低く形成されており、フランジ部4の下面4bは、外側分岐部12の上端部12cと接触している。
【0031】
また、内側分岐部22のブッシング24のネジ部24bが内側直管部21に取り付けられた分岐継手23のネジ部23aにねじ込まれることにより、内側直管部21と内側分岐部22とが固定され、ブッシング24の段差部24dは、分岐継手23の上端部23bと接触した状態で配置される。また、ブッシング24の溝部24aに取り付けられたOリング25により、ブッシング24(内側分岐部22)と分岐継手23(内側直管部21)との間がシール(封止)される。
【0032】
次に、
図2および
図4〜13を参照して、
第1参考例による保温層付き管100の製造方法について説明する。
【0033】
まず、外管本体1の外側直管部11を形成する工程において、
図4に示すように、押出成形などにより成形された外側直管部11の一部(中央部近傍)に開口部11aを形成する。このとき、開口部11aの下側に椀型の金型5を配置する。次に、開口部11aの近傍を管材料の融点以下で加熱する。その後、金型5を上方に引き抜くことにより、開口部11aは、上方に向かって突出するように形成される。これにより、外管本体1の外側直管部11(
図2参照)が形成される。
【0034】
次に、外管本体1を形成する工程において、外側直管部11と外側分岐部12とをバット融着により接続する。この工程では、外側直管部11の開口部11aと、外側分岐部12の下端部12aとの間にヒーター板(図示せず)を配置して、開口部11aと下端部12aとの互いの端面を加熱溶融させた後に、端面同士を圧着することにより融着する。これにより、
図5に示すように、外側直管部11の開口部11aと、外側分岐部12の下端部12aとが境界部分10において融着(接続)される。このとき、外側直管部11の開口部11a近傍には、ビード部11bが形成され、外側分岐部12の下端部12aの近傍には、ビード部12bが形成される。なお、必要に応じて、外側直管部11および外側分岐部12の内面に形成されるビード部をホルソー等により除去してもよい。これにより、外管本体1が形成される。
【0035】
次に、
図6に示すように、内側直管部21の製造方法としては、内管本体2の内側直管部21を形成する工程において、管210の中央部近傍にEF(エレクトロフュージョン)接合により、分岐継手230を融着させる。すなわち、コントローラ(図示せず)から通電して分岐継手230に埋め込まれた電熱線を発熱させ、分岐継手230の内面と管210の外面とを加熱溶融して融着し、管210と分岐継手230とを一体化させる。その後、分岐継手230の2つのターミナル230aを切断する。次に、管210の外周面のうち分岐継手230に囲まれている部分に、管210と分岐継手230とが接続されるように開口部21bを形成する。これにより、内側直管部21が形成される。
【0036】
次に、
図7に示すように、内管本体2を形成する工程において、外管本体1の外側直管部11内に、内側直管部21を挿入する。このとき、内側直管部21の分岐継手23が外管本体1の外側分岐部12と重なる位置に配置する。
【0037】
次に、
図8に示すように、上述した内側分岐部22を外管本体1の外側分岐部12内に挿入する。そして、内側分岐部22のブッシング24のネジ部24bを、内側直管部21に取り付けられた分岐継手23のネジ部23aにねじ込む。これにより、内側直管部21と内側分岐部22とが固定される。そして、ブッシング24の段差部24dは、分岐継手23の上端部23bと接触した状態となる。また、ブッシング24の溝部24aに取り付けられたOリング25により、ブッシング24(内側分岐部22)と分岐継手23(内側直管部21)との間がシール(封止)される。また、外側直管部11と内側直管部21との間には、所定の隙間が形成される。また、外側分岐部12と内側分岐部22との間には、所定の隙間が形成される。
【0038】
次に、
図9に示すように、保温層3を形成する工程において、外管本体1と内管本体2との間に保温材を注入(充填)することにより、保温層3が形成される。具体的には、
図9および
図10に示すように、円環形状を有する金属製の2つの蓋部材6を外側直管部11の両端部11cに取り付ける。この蓋部材6は、円環部61と、円環部61に対して略垂直方向に延びる直立部62とを有している。円環部61には、内側直管部21に取り付けられる取付孔6aと、保温材を注入する注入孔6bとが形成されている。この蓋部材6の取付孔6aを内側直管部21に挿入して、外側直管部11の両端部11cに接触させる。その後、2つの蓋部材6に形成された注入孔6bのうち一方を塞ぎ、他方の注入孔6bから発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレンまたは発泡ポリスチレンなどの発泡体からなる保温材を注入する。そして、保温材の注入が終了した後に、蓋部材6を取り外す。これにより、
図2に示す保温層付き管100が形成される。
【0039】
以上説明したように、
第1参考例による保温層付き管100によれば、以下に列記するような効果が得られる。
【0040】
第1参考例では、上記のように、保温層付き管100は、外側直管部11と、外側直管部11から分岐する外側分岐部12とを含む外管本体1と、外管本体1内に配置され、外側直管部11に対応する内側直管部21と、内側直管部21から分岐するとともに外側分岐部12内に対応する内側分岐部22とを含む内管本体2と、外管本体1と内管本体2との間に設けられた発泡ポリウレタン等を含む保温層3とを備える。これにより、保温層3により内管本体2内を流れる水が凍結するのを抑制することができ、かつ、外管本体1により保温層3の外周面が剥き出しになるのを抑制することができるので、外管本体1により外的な衝撃に対して保温層3が変形するのを抑制することができる。
【0041】
また、
第1参考例では、上記のように、内管本体2を、内側直管部21のネジ部23aに内側分岐部22のネジ部24bをねじ込むことにより構成する。これにより、外管本体1内において、内側直管部21のネジ部23aと内側分岐部22のネジ部24bとを係合することにより、容易に内管本体2を構成することができる。
【0042】
また、
第1参考例では、上記のように、内側直管部21のネジ部23aと内側分岐部22のネジ部24bとが係合した状態で、内側直管部21のネジ部23aと内側分岐部22のネジ部24bとの係合部分がOリング25によりシールされる。これにより、内管本体2内に水を流した際に、内側直管部21のネジ部23aと内側分岐部22のネジ部24bとの係合部分から水が漏れるのを抑制することができる。
【0043】
また、
第1参考例では、上記のように、保温層3を、外管本体1と内管本体2との間のうち外側直管部11の両端部11c近傍から外側分岐部12の上端部12c近傍まで設ける。これにより、外側直管部11と内側直管部21とが重なっている部分全体、および、外側分岐部12と内側分岐部22とが重なっている部分全体に発泡ポリウレタン等からなる保温層3が注入(充填)されるので、内管本体2内に流れる水が凍結するのを効果的に抑制することができる。また、外側直管部11および外側分岐部12により、保温層3が外的な衝撃に対して変形するのを抑制することができる。
【0044】
また、
第1参考例では、上記のように、外側直管部11の両端部11cを塞ぐように蓋部材6を取り付けた後に、蓋部材6に形成された注入孔6bから発泡ポリウレタン等からなる保温材を注入することにより、発泡ポリウレタン等からなる保温層3を形成する。これにより、外側直管部11の両端部11cに取り付けられた蓋部材6により、外管本体1内に注入された保温材が外側にはみ出すのを抑制することができるので、容易に、外管本体1内に保温層3を形成することができる。
【0045】
(
第2参考例)
次に、
図11および
図12を参照して、
第2参考例について説明する。この
第2参考例では、外側直管部の直径が比較的小さい(保温層の厚みが薄い)ことに起因して、内側直管部を外側直管部内に挿入する際に、内側直管部の一部が外側直管部に接触して挿入困難な場合の挿入方法について説明する。
【0046】
この
第2参考例による保温層付き管101では、
図11に示すように、外側直管部111の直径が比較的小さい(保温層の厚みが薄い)場合には、内側直管部21を外側直管部111内に挿入する際に、内側直管部21の外周面に融着された分岐継手23の角部230bが外側直管部111に接触することに起因して挿入することが困難となる。この場合には、外側直管部111の下端部11dを軸方向に沿って切断することにより、外側直管部111の下端部11dを径方向に開くことが可能となる。これにより、外側直管部111の内径を大きくすることが可能となる。すなわち、外側直管部111の下端部11dを径方向に開きながら内側直管部21(分岐継手23)を外側直管部111内に挿入することが可能となる。
【0047】
そして、外側直管部111内に内側直管部21を挿入した後に、
図12に示すように、外側直管部111の下端部11dを溶接することにより切断部分を接合する。なお、
第2参考例のその他の構成および製造方法は、上記
第1参考例と同様である。
【0048】
以上説明したように、
第2参考例による保温層付き管101によれば、以下に列記するような効果が得られる。
【0049】
第2参考例では、上記のように、内側直管部21の外周面にネジ部23aを形成して外側直管部11に挿入する際に、ネジ部23aが形成された内側直管部21が外側直管部11に対して挿入困難な場合には、外側直管部11の外側分岐部12とは反対側の部分を軸方向(X方向)に切断して、切断部分(下端部11d)を径方向に広げることにより内側直管部21を外側直管部11内に挿入した後に、外側直管部11の切断部分(下端部11d)を溶接により接合する。これにより、ネジ部23aが形成された内側直管部21の径方向の長さが外側直管部11の径方向の長さよりも部分的に大きい場合に、容易に、外側直管部11内に内側直管部21を収めることができる。なお、
第2参考例のその他の効果は、上記
第1参考例と同様である。
【0050】
(第
1実施形態)
次に、
図13を参照して、本発明の第
1実施形態について説明する。この第
1実施形態では、外管本体1と内管本体2との間に保温材を注入して全体的に保温層を設けた上記
第1参考例とは異なり、外側直管部と内側直管部との間に保温層を設けるとともに、外側分岐部と内側分岐部との間に保温シートを設ける例について説明する。
【0051】
この第
1実施形態による保温層付き管102では、
図13に示すように、外管本体1と内管本体2との間のうち、外側直管部11と外側分岐部12との境界部分10近傍から下側の部分には、保温材が注入されることにより形成される保温層3aが設けられている。外管本体1と内管本体2との間のうち、外側直管部11と外側分岐部12との境界部分10近傍から上側の部分には、帯状の保温シート3bが設けられている。この保温シート3bは、発泡体などからなり、より具体的には、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレンまたは発泡ポリスチレンなどからなる。この保温シート3bにより、外管本体1と内管本体2との間のうち、外側直管部11と外側分岐部12との境界部分10近傍から上側の部分を流れる水が凍結するのを抑制している。また、保温シート3bは、ソケット26およびニップル27の外周を一体的に包囲するように取り付けられている。また、保温シート3bの外周面は、外側分岐部12の内周面と全面接触している。なお、保温層3aは、本発明の「直管部側保温層」の一例であり、保温シート3bは、本発明の「分岐部側保温層」の一例である。
【0052】
また、保温シート3bのソケット26およびニップル27への取付方法としては、内管本体2を形成する工程において、内側分岐部22を外側分岐部12内に挿入する前に、保温シート3bをソケット26およびニップル27の外周に取り付ける。その後、保温シート3bが取り付けられたソケット26およびニップル27(内側分岐部22)を外側分岐部12内に挿入する。そして、内側分岐部22のブッシング24のネジ部24bを、内側直管部21に取り付けられた分岐継手23のネジ部23aにねじ込む。これにより、内側直管部21と内側分岐部22とが固定され、内管本体2が形成される。その後、上述した
第1参考例の保温層を形成する工程と同様に保温材を注入することにより、外側直管部11と内側直管部21との間に保温層3aが形成される。なお、第
1実施形態のその他の構成および製造方法は、上記
第1参考例と同様である。
【0053】
以上説明したように、第
1実施形態による保温層付き管102によれば、以下に列記するような効果が得られる。
【0054】
第
1実施形態では、上記のように、外側直管部11と内側直管部21との間に発泡ポリウレタン等からなる保温層3aを設けるとともに、外側分岐部12と内側分岐部22との間に発泡ポリウレタン等からなる保温シート3bを設ける。これにより、2種類の保温層(保温層3aおよび保温シート3b)により、内管本体2内を流れる水が凍結するのを抑制することができる。なお、第
1実施形態のその他の効果は、上記
第1参考例と同様である。
【0055】
(第
2実施形態)
次に、
図14を参照して、第
2実施形態について説明する。この第
2実施形態では、外側直管部の両端部に段差部を設ける例について説明する。
【0056】
この第
2実施形態による保温層付き管103は、外側直管部11の両端部11cの各々には、円環形状の接続部材7が配置されている。この接続部材7の直径は、外側直管部11の直径と略等しく形成されている。また、接続部材7の外縁部7aは、ホットメルト(接着剤)などにより外側直管部11の両端部11cに接着された後に、超音波融着(超音波溶着)により融着されている。
【0057】
また、接続部材7の内縁部7bは、内側直管部21の外周面と所定の間隔を隔てて配置されている。また、接続部材7の外側直管部11とは反対側の部分には、外側短管部13が配置されている。この外側短管部13は、外側直管部11の内径よりも小さく、かつ、外側直管部11の軸方向の長さよりも短く形成されている。外側短管部13の接続部材7側の端部13aは、ホットメルト(接着剤)などにより接続部材7の内縁部7bに接着された後に、超音波融着(超音波溶着)により融着されている。これにより、外側直管部11と外側短管部13との間に段差部14が形成される。
【0058】
また、上記段差部14を形成する工程は、内管本体2を形成する工程において、外側直管部11内に内側直管部21を挿入し、外側分岐部12内に内側分岐部22を挿入した後に行われる。そして、段差部14が形成された後に、外管本体1と内管本体2との間に保温材を注入することにより、外側直管部11と内側直管部21との間に保温層3aが形成されるとともに、外側短管部13と内側直管部21との間に保温層3cが形成される。なお、保温層3cは、本発明の「短管部側保温層」の一例である。また
、第2実施形態のその他の構成および製造方法は、上記
第1参考例と同様である。
【0059】
以上説明したように、第
2実施形態による保温層付き管103によれば、以下に列記するような効果が得られる。
【0060】
第
2実施形態では、上記のように、外側短管部13と内側直管部21との間に発泡ポリウレタン等からなる保温層3cを設ける。これにより、外側短管部13により発泡ポリウレタン等からなる保温層3cが外的な衝撃に対して変形するのを抑制することができる。なお、第
2実施形態のその他の効果は、上記
第1参考例と同様である。
【0061】
−他の実施形態−
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0062】
例えば、上記第1
および第
2実施形態では、外側直管部と外側直管部に対して略垂直方向に延びる外側分岐部とから外管本体が構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、外側直管部と外側分岐部とが分岐していれば外側分岐部が外側直管部に対して略垂直方向に延びている場合に限られない。
【0063】
また、上記第1
および第
2実施形態では、内側直管部と内側直管部に対して略垂直方向に延びる内側分岐部とから内管本体が構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、内側直管部と内側分岐部とが分岐していれば内側分岐部が内側直管部に対して略垂直方向に延びている場合に限られない。
【0064】
また、上記第1
および第
2実施形態では、内側直管部の第1係合部および内側分岐部の第2係合部の一例として、内側直管部の外周面にネジ部を有する分岐継手を設けるとともに、内側分岐部の下端部にネジ部を形成して、互いのネジ部を係合させることにより内管本体を構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、内側直管部と内側分岐部とを係合させることが可能であれば、内側直管部の外周面に直接ネジ部を形成して、内側分岐部のネジ部と係合させてもよい。また、内側直管部と内側分岐部とを係合させることが可能であれば、ネジ部以外の係合部を内側直管部および内側分岐部に設けて、互いに係合させて内管本体を構成してもよい。
【0065】
また、上記第1
および第
2実施形態では、シール部材の一例としてOリングを示したが、本発明はこれに限られない。例えば、内側直管部と内側分岐部との間をシールすることが可能であれば、Oリング以外のシール部材を用いてもよい。
【0066】
また、上記第1
および第
2実施形態では、外管本体を形成する工程の一例として、外側直管部と外側分岐部とを押出成形により別個に形成した後に、融着することにより、外管本体を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、外管本体を形成する工程の一例として、外管本体を射出成形などにより一体的に形成することも可能である。