特許第5876901号(P5876901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5876901-冬用タイヤ 図000004
  • 特許5876901-冬用タイヤ 図000005
  • 特許5876901-冬用タイヤ 図000006
  • 特許5876901-冬用タイヤ 図000007
  • 特許5876901-冬用タイヤ 図000008
  • 特許5876901-冬用タイヤ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876901
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】冬用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20160218BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20160218BHJP
   B60C 11/16 20060101ALI20160218BHJP
   B60C 11/12 20060101ALN20160218BHJP
【FI】
   B60C11/03 C
   B60C11/03 300C
   B60C11/13 A
   B60C11/16 Z
   !B60C11/12 C
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-138946(P2014-138946)
(22)【出願日】2014年7月4日
(65)【公開番号】特開2016-16694(P2016-16694A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】東浦 一樹
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−326707(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02243638(EP,A1)
【文献】 国際公開第2010/098092(WO,A1)
【文献】 特開2000−264016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/13
B60C 11/16
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、複数の溝と、前記溝で区分された複数のブロックとを具えた冬用タイヤであって、
前記溝は、
一方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって斜めにのびかつタイヤ赤道を越え他方のトレッド端に至ることなく終端する複数の第1傾斜主溝と、
前記各第1傾斜主溝間に設けられかつ前記一方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記第1傾斜主溝と同じ向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越えることなく終端する第1傾斜副溝と、
他方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記第1傾斜主溝と逆向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越え前記一方のトレッド端に至ることなく終端する複数の第2傾斜主溝と、
前記各第2傾斜主溝間に設けられかつ前記他方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記第2傾斜主溝と同じ向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越えることなく終端する第2傾斜副溝と、
前記第1傾斜主溝間に区分された各第1陸部を分割しかつ前記第1傾斜主溝と同じ向きに傾斜している複数の第1縦溝と、
前記第2傾斜主溝間に区分された各第2陸部を分割しかつ前記第2傾斜主溝と同じ向きに傾斜している複数の第2縦溝とを含み、
前記ブロックは、タイヤ赤道上に設けられた複数のセンターブロックを含み、
前記センターブロックの少なくとも一つには、スタッドピン又はスタッドピン用の孔が設けられていることを特徴とする冬用タイヤ。
【請求項2】
前記センターブロックは、略三角形状の踏面を有している請求項1記載の冬用タイヤ。
【請求項3】
前記ブロックは、最もトレッド端側に設けられた複数のショルダーブロックを含み、
タイヤ周方向で互いに隣り合う前記各ショルダーブロックは、タイヤ軸方向の幅が互いに異なっている請求項1又は2記載の冬用タイヤ。
【請求項4】
前記ショルダーブロックは、タイヤ軸方向にジグザグ状にのびる軸方向縁を有している請求項3記載の冬用タイヤ。
【請求項5】
前記第1縦溝及び前記第2縦溝は、溝底が隆起したタイバーを有し、
前記スタッドピン又は前記孔は、前記タイバーのタイヤ軸方向の両側に位置する一対の前記ブロックの内、いずれか一方のみに設けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の冬用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪上性能と氷上性能とを両立しうる冬用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部にスタッドピンが設けられた冬用タイヤが記載されている。このような冬用タイヤは、スタッドピンを効果的に氷路面に突き刺すことができるので、優れた氷上性能を発揮する。
【0003】
しかしながら、特許文献1のタイヤは、トレッド端からタイヤ赤道側に向かってのびる傾斜主溝が、全て、タイヤ赤道の手前で終端している。このような傾斜主溝は、大きな接地圧が作用するタイヤ赤道上で十分な雪柱せん断力が得られないので、雪上性能については、さらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−86651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、氷上性能と雪上性能とを両立しうる冬用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部に、複数の溝と、前記溝で区分された複数のブロックとを具えた冬用タイヤであって、前記溝は、一方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって斜めにのびかつタイヤ赤道を越え他方のトレッド端に至ることなく終端する複数の第1傾斜主溝と、前記各第1傾斜主溝間に設けられかつ前記一方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記第1傾斜主溝と同じ向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越えることなく終端する第1傾斜副溝と、他方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記第1傾斜主溝と逆向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越え前記一方のトレッド端に至ることなく終端する複数の第2傾斜主溝と、前記各第2傾斜主溝間に設けられかつ前記他方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記第2傾斜主溝と同じ向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越えることなく終端する第2傾斜副溝と、前記第1傾斜主溝間に区分された各第1陸部を分割しかつ前記第1傾斜主溝と同じ向きに傾斜している複数の第1縦溝と、前記第2傾斜主溝間に区分された各第2陸部を分割しかつ前記第2傾斜主溝と同じ向きに傾斜している複数の第2縦溝とを含み、前記ブロックは、タイヤ赤道上に設けられた複数のセンターブロックを含み、前記センターブロックの少なくとも一つには、スタッドピン又はスタッドピン用の孔が設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明の冬用タイヤにおいて、前記センターブロックは、略三角形状の踏面を有しているのが望ましい。
【0009】
本発明の冬用タイヤにおいて、前記ブロックは、最もトレッド端側に設けられた複数のショルダーブロックを含み、タイヤ周方向で互いに隣り合う前記各ショルダーブロックは、タイヤ軸方向の幅が互いに異なっているのが望ましい。
【0010】
本発明の冬用タイヤにおいて、前記ショルダーブロックは、タイヤ軸方向にジグザグ状にのびる軸方向縁を有しているのが望ましい。
【0011】
本発明の冬用タイヤにおいて、前記第1縦溝及び前記第2縦溝は、溝底が隆起したタイバーを有し、前記スタッドピン又は前記孔は、前記タイバーのタイヤ軸方向の両側に位置する一対の前記ブロックの内、いずれか一方のみに設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冬用タイヤは、トレッド部に、複数の溝と、前記溝で区分された複数のブロックとを具えている。前記溝は、一方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって斜めにのびかつタイヤ赤道を越え他方のトレッド端に至ることなく終端する複数の第1傾斜主溝、及び、他方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって第1傾斜主溝と逆向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越え一方のトレッド端に至ることなく終端する複数の第2傾斜主溝を含んでいる。
【0013】
このような各傾斜主溝は、タイヤ赤道を横切っているため、各傾斜主溝には、大きな接地圧が作用する。従って、雪上走行時、溝内の雪が強く押し固められ、大きな雪柱せん断力が発生する。しかも、このような各傾斜主溝は、優れたエッジ効果を発揮し、氷上性能も高めることができる。各傾斜主溝は、トレッド端からタイヤ赤道に向かって斜めにのびているため、タイヤ軸方向の摩擦力も得ることができ、雪上及び氷上での横滑りを抑制する。
【0014】
前記溝は、各第1傾斜主溝間に設けられかつ前記一方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記第1傾斜主溝と同じ向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越えることなく終端する第1傾斜副溝、及び、各第2傾斜主溝間に設けられかつ前記他方のトレッド端からタイヤ赤道側に向かって前記第2傾斜主溝と同じ向きで斜めにのびかつタイヤ赤道を越えることなく終端する第2傾斜副溝を含んでいる。
【0015】
このような各傾斜副溝は、タイヤ赤道を横切らないため、タイヤ赤道付近のブロックの剛性を維持してドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、雪上性能及び氷上性能を高める。
【0016】
前記溝は、第1傾斜主溝間に区分された各第1陸部を分割しかつ第1傾斜主溝と同じ向きに傾斜している複数の第1縦溝、及び、第2傾斜主溝間に区分された各第2陸部を分割しかつ前記第2傾斜主溝と同じ向きに傾斜している複数の第2縦溝を含んでいる。このような各縦溝は、溝のタイヤ周方向成分を補い、雪上及び氷上での横グリップをさらに高めることができる。しかも、これらの縦溝は、第1陸部及び第2陸部を分割しているため、接地時、陸部の変形を促し、各傾斜主溝及び各傾斜副溝の雪詰まりを防止することができる。
【0017】
ブロックの少なくとも一つには、スタッドピン又はスタッドピン用の孔が設けられている。このようなスタッドピンは、氷上性能を効果的に高める。
【0018】
以上のように、本発明の冬用タイヤは、雪上性能と氷上性能とを高い次元で両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の冬用タイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図1の第1陸部の拡大図である。
図4図1のセンターブロックの拡大図である。
図5図1のショルダーブロック及びミドルブロックの拡大図である。
図6】比較例の冬用タイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の冬用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1のトレッド部2が示されている。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の冬用タイヤとして好適に使用される。
【0021】
図1に示されるように、トレッド部2には、複数の溝3と、前記溝で区分された複数のブロック4とが設けられている。
【0022】
溝3は、傾斜主溝10と、傾斜副溝20と、縦溝30とを含んでいる。
【0023】
傾斜主溝10は、トレッド端Teからタイヤ赤道C側に向かって斜めにのび、タイヤ赤道Cを越えて終端している。
【0024】
トレッド端Teは、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0025】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0026】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0027】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0028】
傾斜主溝10は、第1傾斜主溝11と第2傾斜主溝12とを含んでいる。
【0029】
第1傾斜主溝11は、一方のトレッド端Te1からタイヤ赤道C側に向かってのびている。第1傾斜主溝11は、タイヤ赤道Cを越え、他方のトレッド端Te2に至ることなく終端している。
【0030】
第2傾斜主溝12は、他方のトレッド端Te2からタイヤ赤道C側に向かって第1傾斜主溝11と逆向きでのびている。第2傾斜主溝12は、タイヤ赤道Cを越え、一方のトレッド端Te1に至ることなく終端している。
【0031】
このような各傾斜主溝10は、タイヤ赤道Cを横切っているため、各傾斜主溝10には、大きな接地圧が作用する。従って、雪上走行時、溝内の雪が強く押し固められ、大きな雪柱せん断力が発生する。しかも、このような各傾斜主溝10は、優れたエッジ効果を発揮し、氷上性能も高めることができる。各傾斜主溝10は、トレッド端Teからタイヤ赤道Cに向かって斜めにのびているため、タイヤ軸方向の摩擦力も得ることができ、雪上及び氷上での横滑りを抑制する。
【0032】
傾斜副溝20は、タイヤ周方向で隣り合う各傾斜主溝10、10間に設けられている。傾斜副溝20は、トレッド端Teからタイヤ赤道C側に向かって斜めにのび、タイヤ赤道Cを越えることなく終端している。
【0033】
傾斜副溝20は、第1傾斜副溝21と第2傾斜副溝22とを含んでいる。
【0034】
第1傾斜副溝21は、タイヤ周方向で隣り合う第1傾斜主溝11、11の間に設けられている。第1傾斜副溝21は、一方のトレッド端Te1からタイヤ赤道C側に向かって第1傾斜主溝11と同じ向きで斜めにのびている。
【0035】
第2傾斜副溝22は、タイヤ周方向で隣り合う第2傾斜主溝12、12の間に設けられている。第2傾斜副溝22は、他方のトレッド端Te2からタイヤ赤道Cに向かって第2傾斜主溝12と同じ向きで斜めにのびている。
【0036】
このような各傾斜副溝20は、タイヤ赤道Cを横切らないため、タイヤ赤道C付近のブロックの剛性を維持してドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、雪上性能及び氷上性能を高める。
【0037】
上述の効果をさらに発揮させるために、傾斜主溝10の溝幅W1及び傾斜副溝20の溝幅W2は、例えば、トレッド接地幅TWの3.0〜8.5%が望ましい。トレッド接地幅TWは、前記正規状態のタイヤ1の一方のトレッド端Te1と他方のトレッド端Te2とのタイヤ軸方向の距離である。
【0038】
図2には、図1のA−A断面図が示されている。図2に示されるように、傾斜主溝10の溝深さd1及び傾斜副溝20の溝深さd2は、乗用車用の冬用タイヤの場合、例えば、3.0〜10.0mmが望ましい。
【0039】
図1に示されるように、本実施形態の第1傾斜主溝11は、例えば、第2傾斜主溝12と連通して終端する第1内端11iを有しているのが望ましい。本実施形態の第2傾斜主溝12は、例えば、第1傾斜主溝11と連通して終端する第2内端12iを有しているのが望ましい。これにより、第1傾斜主溝11と第2傾斜主溝12との接続部13で大きな雪柱が形成され易くなり、優れた雪上性能が得られる。
【0040】
第1傾斜主溝11と第2傾斜主溝12とは、例えば、タイヤ周方向に交互に設けられているのが望ましい。これにより、トレッド部2の偏摩耗が効果的に抑制される。
【0041】
本実施形態の傾斜主溝10は、トレッド端Te側に向かってタイヤ軸方向に対する傾斜角度θ1が漸減する円弧状であるのが望ましい。このような傾斜主溝10は、多方向に摩擦力を発揮し、とりわけ氷上での操縦安定性を高める。
【0042】
傾斜主溝10の前記傾斜角度θ1は、好ましくは35°以上、より好ましくは40°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは45°以下である。このような傾斜主溝10は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にバランス良く摩擦力を発揮する。
【0043】
同様の観点から、傾斜副溝20の傾斜角度θ2は、好ましくは20°以上、より好ましくは25°以上であり、好ましくは35°以下、より好ましくは30°以下である。
【0044】
縦溝30は、各傾斜主溝10、10間で区分された陸部5を分割してタイヤ周方向にのびる。縦溝30は、タイヤ周方向で隣り合う傾斜主溝10と同じ向きに傾斜している。
【0045】
縦溝30は、第1縦溝31と第2縦溝32とを含んでいる。
【0046】
第1縦溝31は、各第1傾斜主溝11、11間に区分された各第1陸部5Aを分割している。第1縦溝31は、第1傾斜主溝11と同じ向きに傾斜している。
【0047】
第2縦溝32は、各第2傾斜主溝12、12間に区分された各第2陸部5Bを分割している。第2縦溝32は、第2傾斜主溝12と同じ向きに傾斜している。
【0048】
このような各縦溝30は、溝のタイヤ周方向成分を補い、雪上及び氷上での横グリップをさらに高めることができる。しかも、これらの縦溝30は、第1陸部5A及び第2陸部5Bを分割しているため、接地時、陸部5の変形を促し、各傾斜主溝10及び各傾斜副溝20の雪詰まりを防止することができる。
【0049】
雪詰まりを抑制しつつ大きな雪柱せん断力を得るために、縦溝30の溝幅W3は、好ましくは5mm以上、より好ましくは8mm以上であり、好ましくは14mm以下、より好ましくは11mm以下である。
【0050】
本実施形態のトレッド部2には、タイヤ1周に亘ってタイヤ周方向に連続してのびる主溝が配されていない。このようなトレッド部2は、雪上でのワンダリング性能を効果的に高める。しかも、このようなトレッド部2は、スタッドピンのタイヤ軸方向の配置を均一にすることができ、優れた氷上性能が発揮される。
【0051】
本実施形態では、タイヤ周方向で隣り合う各縦溝30は、少なくともタイヤ周方向の各端部が互いにタイヤ軸方向に位置ずれして設けられている。
【0052】
具体的には、第1傾斜主溝11を介して隣り合う各第1縦溝31は、例えば、タイヤ軸方向の異なる位置で第1傾斜主溝11に連通している。第2傾斜主溝12を介して隣り合う各第2縦溝32は、例えば、タイヤ軸方向の異なる位置で第2傾斜主溝12に連通している。
【0053】
第1陸部5Aに設けられた第1縦溝31は、内側第1縦溝35と外側第1縦溝36とを含んでいる。
【0054】
内側第1縦溝35は、タイヤ赤道C側に配されている。内側第1縦溝35は、一端が第1傾斜主溝11に連通し、他端がタイヤ軸方向で隣り合う第2傾斜主溝12に連通している。
【0055】
外側第1縦溝36は、内側第1縦溝35のタイヤ軸方向外側に配されている。外側第1縦溝36は、タイヤ周方向で隣り合う第1傾斜主溝11、11の間を連通している。
【0056】
第2縦溝32は、内側第2縦溝37と外側第2縦溝38とを含んでいる。
【0057】
内側第2縦溝37は、タイヤ赤道C側に配されている。内側第2縦溝37は、一端が第2傾斜主溝12に連通し、他端がタイヤ軸方向で隣り合う第1傾斜主溝11に連通している。
【0058】
外側第2縦溝38は、内側第2縦溝37のタイヤ軸方向外側に配されている。外側第2縦溝38は、タイヤ周方向で隣り合う第2傾斜主溝12、12の間を連通している。
【0059】
このような第1縦溝31及び第2縦溝32は、接地時、陸部の変形をさらに促し、各傾斜主溝10及び各傾斜副溝20の雪詰まりを防止することができる。
【0060】
図3には、第1陸部5Aの拡大図が示されている。図3に示されるように、内側第1縦溝35のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ3、及び、外側第1縦溝36のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ4は、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であり、好ましくは20°以下、より好ましくは15°以下である。このような内側第1縦溝35及び外側第1縦溝36は、高い横グリップを発揮し、しかも、雪上走行時、溝内に入った雪を効果的に排出する。
【0061】
内側第1縦溝35と第1傾斜主溝11との交点P1は、その第1傾斜主溝11と第2傾斜主溝12との交点P2よりもタイヤ軸方向外側に位置しているのが望ましい。前記交点P1と前記交点P2との距離L1は、好ましくは15mm以上、より好ましくは18mm以上であり、好ましくは25mm以下、より好ましくは22mm以下である。これにより、交点P1と交点P2との間で大きな雪柱が形成され、雪上性能が向上する。
【0062】
内側第1縦溝35は、第1傾斜副溝21と交差している。これにより、第1傾斜副溝21は、内側第1縦溝35をタイヤ赤道C側に越えて終端している。内側第1縦溝35は、第1傾斜副溝21で区分された第1部分35Aと第2部分35Bとを含んでいる。
【0063】
内側第1縦溝35の第1部分35Aは、第1傾斜主溝11と第1傾斜副溝21との間で連通している。内側第1縦溝35の第2部分35Bは、第2傾斜主溝12と第1傾斜副溝21との間で連通している。
【0064】
本実施形態の内側第1縦溝35は、第1部分35Aと第2部分35Bとが滑らかに連続している。このような内側第1縦溝35は、ウェット走行時の排水性を高める。
【0065】
内側第1縦溝35の第1部分35Aと第2部分35Bとは、例えば、互いにタイヤ軸方向に位置ずれしても良い。この場合、内側第1縦溝35の第1部分35Aと第1傾斜副溝21との交点P3と、内側第1縦溝35の第2部分35Bと第1傾斜副溝21との交点P4との距離L2(図示しない)は、好ましくは5mm以上、より好ましくは8mm以上であり、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下である。このような内側第1縦溝35は、交点P3と交点P4との間で大きな雪柱を形成し、雪上性能をさらに高める。
【0066】
外側第1縦溝36と第1傾斜主溝11との交点P5と、タイヤ周方向で隣り合う外側第1縦溝36と第1傾斜主溝11との交点P6とは、例えば、タイヤ軸方向に互いに位置ずれしているのが望ましい。前記交点P5と前記交点P6との距離L3は、好ましくは20mm以上、より好ましくは23mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは27mm以下である。これにより、交点P5と交点P6との間で大きな雪柱が形成され、雪上性能が向上する。
【0067】
外側第1縦溝36は、例えば、第1傾斜副溝21と交差している。これにより、外側第1縦溝36は、第1傾斜副溝21で区分された第1部分36Aと第2部分36Bとを含んでいる。
【0068】
外側第1縦溝36の第1部分36Aと第2部分36Bとは、例えば、タイヤ軸方向に互いに位置ずれしているのが望ましい。外側第1縦溝36の第1部分36Aと第1傾斜副溝21との交点P7と、外側第1縦溝36の第2部分36Bと第1傾斜副溝21との交点P8との距離L4は、好ましくは10mm以上、より好ましくは13mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは17mm以下である。これにより、外側第1縦溝36と第1傾斜副溝21との交差部で大きな雪柱が形成され、優れた雪上性能が発揮される。
【0069】
図1に示されるように、内側第2縦溝37及び外側第2縦溝38は、内側第1縦溝35及び外側第1縦溝36に対し、タイヤ赤道Cを中心として実質的に内側第1縦溝35及び外側第1縦溝36と線対称の形状を有している。従って、上述した内側第1縦溝35及び外側第1縦溝36の各構成は、内側第2縦溝37及び外側第2縦溝38にも具備されている。内側第2縦溝37及び外側第2縦溝38、並びに、内側第1縦溝35及び外側第1縦溝36は、互いに半ピッチの位相差を有してタイヤ周方向に隔設されている。
【0070】
トレッド部2には、上述した複数の溝で区分された複数のブロック4が設けられている。ブロック4の少なくとも一つには、スタッドピン又はスタッドピン用の孔8が設けられている。本実施形態では、スタッドピン又はスタッドピン用の孔8が、ランダムに各ブロックに配されている。このようなスタッドピンは、氷上性能を効果的に高める。なお、本明細書の各図において、スタッドピンは省略されている。
【0071】
本実施形態の各ブロック4には、タイヤ軸方向にのびるサイプ49が複数本配されている。このようなサイプ49は、優れたエッジ効果を発揮し、氷上性能を効果的に高める。本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.0mm未満の切れ込みを意味し、排水用の溝とは区別される。
【0072】
ブロック4は、タイヤ赤道C上に設けられた複数のセンターブロック41、最もトレッド端Te側に設けられた複数のショルダーブロック43、及び、センターブロック41とショルダーブロック43との間のミドルブロック42を含んでいる。
【0073】
図4には、センターブロック41の拡大図が示されている。図4に示されるように、センターブロック41は、第1傾斜主溝11、第2傾斜主溝12、及び、内側第1縦溝35又は内側第2縦溝37で区分されている。センターブロック41は、例えば、略三角形状の踏面を有している。
【0074】
センターブロック41の少なくとも一つには、スタッドピン又はスタッドピン用の孔8が設けられているのが望ましい。センターブロック41には、大きな接地圧が作用するため、センターブロック41にスタッドピンが設けられることにより、効果的に氷上性能が高められる。
【0075】
図5には、ショルダーブロック43及びミドルブロック42の拡大図が示されている。図5に示されるように、ショルダーブロック43は、傾斜主溝10及び傾斜副溝20で区分され、タイヤ周方向に複数設けられている。
【0076】
タイヤ周方向で互いに隣り合う各ショルダーブロック43は、タイヤ軸方向の幅が互いに異なっているのが望ましい。このような各ショルダーブロック43は、接地時の変形量がそれぞれ異なるため、傾斜主溝10及び傾斜副溝20の雪詰まりをさらに防止することができる。
【0077】
ショルダーブロック43は、タイヤ軸方向にジグザグ状にのびる軸方向縁47を有しているのが望ましい。このよう軸方向縁47は、雪上でのワンダリング性能を効果的に高める。
【0078】
ミドルブロック42は、タイヤ周方向に複数設けられている。各ミドルブロック42は、互いにタイヤ軸方向に位置ずれして設けられている。このようなミドルブロック42は、スタッドピンが設けられた場合に、その位置をタイヤ軸方向に位置ずれさせることができ、氷上性能を効果的に高めることができる。
【0079】
ショルダーブロック43とミドルブロック42との間の縦溝30には、溝底が隆起したタイバー45が設けられているのが望ましい。このようなタイバー45は、ショルダーブロック43及びミドルブロック42のタイヤ軸方向の変形を抑制し、氷上での操縦安定性を高める。
【0080】
スタッドピン又はスタッドピン用の孔8は、タイバー45のタイヤ軸方向の両側に位置する一対のショルダーブロック43及びミドルブロック42の内、いずれか一方のみに設けられているのが望ましい。これにより、スタッドピンが設けられていないブロックが、比較的大きく変形することにより、溝内の雪詰まりを抑制しする。しかも、スタッドピンが設けられたブロックが、タイバーを介して隣り合うブロックの過度な倒れ込みを効果的に抑制する。従って、雪上性能と氷上性能とが、バランス良く高められる。
【0081】
以上、本発明の冬用タイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施しうるのはいうまでもない
【実施例】
【0082】
図1の基本パターンを有するサイズ205/60R16の乗用車用の冬用タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例1として、図6に示されるトレッドパターンを有するタイヤが試作された。各テストタイヤの雪上性能及び氷上性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6.5
タイヤ内圧:前輪240kPa、後輪220kPa
テスト車両:排気量2000cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0083】
<雪上性能、氷上性能>
各テストタイヤを装着したテスト車両の雪上及び氷上での走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上性能又は氷上性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
【0084】
【表1】
【0085】
テストの結果、本発明の冬用タイヤは、雪上性能と氷上性能とを高い次元で両立させていることが確認できた。
【符号の説明】
【0086】
1 冬用タイヤ
2 トレッド部
3 溝
4 ブロック
5A 第1陸部
5B 第2陸部
8 スタッドピン用の孔
11 第1傾斜主溝
12 第2傾斜主溝
21 第1傾斜副溝
22 第2傾斜副溝
31 第1縦溝
32 第2縦溝
Te1 一方のトレッド端
Te2 他方のトレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6