【文献】
星野 正巳 他,5型高リポ蛋白血症による急性膵炎を繰り返した1例,第40回日本腹部救急医学会総会抄録,2004年,p.532,示-233
【文献】
DRUG DEVELOPMENT AND INDUSTRIAL PHARMACY,1992年,Vol.18, No.9,p.919-937
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脂質異常症が高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高低比重リポ蛋白コレステロール血症、高非高比重リポ蛋白コレステロール血症および低高比重リポ蛋白コレステロール血症からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の配合乳剤。
前記a)イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物が、イコサペント酸エチルエステルである請求項1または2に記載の配合乳剤。
前記乳剤中の、イコサペント酸、その製薬学上許容しうる塩およびエステル、ならびに/またはトコフェロールニコチン酸エステルの含有量が0.1〜30質量%である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の配合乳剤。
前記乳剤中の乳化剤が、卵黄レシチン、大豆レシチン、卵黄リン脂質、大豆リン脂質、精製ラノリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリソルベートエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドの有機酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウムおよび非イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の配合乳剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、脂質異常症、特に高Cho血症、高TG血症、高LDLCho血症、高非HDLCho血症および低HDLCho血症の改善または治療ならびにメタボリックシンドロームや心・脳血管イベントへの進行を抑制するための、安全性が高く、有効性に優れ、使いやすい、脂質異常症の改善または治療薬およびその使用方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、脂質異常症に伴う末梢血行障害、特にASO、バージャー病、レイノー病およびレイノー病症候群の改善または治療ならびに四肢末梢潰瘍や壊疽への進行を抑制するための、安全性が高く、有効性に優れ、使いやすい、末梢血行障害の改善または治療薬およびその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つとニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体とを併用すると、それぞれの単独投与時には見られなかった安全性や格別に顕著な効果を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明で提供する脂質異常症の改善または治療薬あるいは脂質異常症に伴う末梢血行障害の改善または治療薬は、有効成分としてEPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つとニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体とを組み合わせて用いる組み合せ薬、組み合せ組成物を含む。このような本発明の態様例を以下に示す。
(1)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、並びに、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を有効成分として併用する脂質異常症の改善または治療薬。
(2)脂質異常症が高Cho血症、高TG血症、高LDLCho血症、高超低比重リポ蛋白(以下、VLDLと記す)Cho血症、高非HDLCho血症、高中間比重リポ蛋白(以下、IDLと記す)Cho血症、高遊離脂肪酸血症、高リン脂質血症、高カイロミクロン血症、高ApoB血症、高リポプロテイン(a)(以下、Lp(a)と記す)血症、高レムナント様リポ蛋白(以下、RLPと記す)Cho血症、高小型高密度(以下、sdと記す)LDLCho血症、低HDLCho血症、低超高比重リポ蛋白(以下、VHDLと記す)Cho血症および脂質異常症に伴う末梢血行障害からなる群から選ばれる少なくとも1つである上記(1)に記載の改善または治療薬。
(3)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルがEPA−Eである上記(1)または(2)に記載の改善または治療薬。
【0011】
(4)ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体が、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、トコフェロールニコチン酸エステル、ニセリトロール、ニコモール、およびイノシトールヘキサニコチン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の改善または治療薬。
(5)ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体が、ニコチン酸あるいはトコフェロールニコチン酸エステルである上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の改善または治療薬。
【0012】
(6)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルがEPA−Eであり、かつ、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体が、ニコチン酸あるいはトコフェロールニコチン酸エステルである上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の改善または治療薬。
【0013】
(7)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物およびニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を併用した治療効果が併用の場合と同じ用量のEPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物またはニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を単独で用いて得られる治療効果の和よりも大きい上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の改善または治療薬。
【0014】
(8)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物およびニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体の配合剤である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の改善または治療薬。
【0015】
(9)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の改善または治療薬であって、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を投与される患者の脂質異常症の改善または治療薬。
(10)ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を有効成分として含有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の改善または治療薬であって、EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを投与される患者の脂質異常症の改善または治療薬。
【0016】
(11)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を投与される患者に投与することで、EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、並びに、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を併用する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の改善または治療薬。
(12)ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を、EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を投与される患者に投与することで、EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、並びに、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を併用する上記(1)ないし(8)および(10)のいずれかに記載の改善または治療薬。
【0017】
(13)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物およびニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体の別個の製剤からなるキットである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の改善または治療薬。
【0018】
(14)第三の有効成分として、高脂血症治療薬、抗酸化剤、血流改善剤、胆汁酸誘導体、特定保健用食品や栄養機能食品の成分からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物をさらに併用する上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の改善または治療薬。
【0019】
(15)第三の有効成分として、ポリエンフォスファチジルコリン、大豆油不けん化物(ソイステロール)、ガンマオリザノール、酪酸リボフラビン、デキストラン硫酸ナトリウムイオウ18、パンテチン、エラスターゼ、プラバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチン、シンフィブラート、クロフィブラート、クリノフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラート、オルリスタット、セチリスタット、コレスチラミン、コレスチミド、エゼチミブ、ビタミンC、ビタミンE、Nアセチルシステイン、プロブコール、シロスタゾール、チクロピジン塩酸塩、アルプロスタジル、リマプロスト、塩酸イソクスプリン、バトロキソビン、ジヒドロエルゴトキシンメシル酸塩、塩酸トラプロストナトリウム、サルポグレラート塩酸塩、アルガトロバン、ナフチドロフリルラゾリン、ヘプロニカート、四物湯エキス、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、胆汁末、デオキシコール酸、コール酸、胆汁エキス、熊胆、牛黄、デヒドロコール酸、ビオチン、シアノコバラミン、パントテン酸、葉酸、チアミン、ビタミンK、チロシン、ピロドキシン、ロイシン、イソロイシン、バリンからなる群から選ばれる少なくとも1つをさらに併用する上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の改善または治療薬。
(16)前記有効成分が、ポリエンフォスファチジルコリン、大豆油不けん化物(ソイステロール)、ガンマオリザノール、酪酸リボフラビン、デキストラン硫酸ナトリウムイオウ18、パンテチン、エラスターゼ、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、胆汁末、デヒドロコール酸、ビオチン、シアノコバラミン、パントテン酸、葉酸、チアミン、ビタミンK、チロシンからなる群から選ばれる少なくとも1つである上記(15)に記載の改善または治療薬。
【0020】
(17)乳剤の形態である上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の改善または治療薬。
この態様において、上記有効成分が別々の製剤である場合には、少なくとも一方が乳剤の形態であり、一方のみが乳剤の形態でも、両方とも乳剤の形態でもよい。
(18)下記(a)、(b)および(c)からなる群より選ばれる少なくとも1つの乳化剤を含有する上記(17)に記載の改善または治療薬:
(a)レシチンおよび任意にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール
(b)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(c)ショ糖脂肪酸エステル。
(19)上記(a)のレシチンが、大豆レシチン、酵素分解大豆レシチン、水素添加大豆レシチンおよび卵黄レシチンからなる群から選ばれる少なくとも1つである上記(18)に記載の改善または治療薬。
(20)上記(a)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが、ポリオキシエチレン(3)ポリオキシプロピレン(17)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコールおよびポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコールからなる群から選ばれる少なくとも1つである上記(18)または(19)に記載の改善または治療薬。
(21)上記(a)のレシチンが大豆レシチンまたは酵素分解大豆レシチンであり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールがポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコールである上記(18)ないし(20)のいずれかに記載の乳化組成物。
【0021】
(22)上記(b)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油およびポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油からなる群から選ばれる少なくとも1つである上記(18)に記載の改善または治療薬。
(23)上記(b)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油である上記(18)または(22)に記載の改善または治療薬。
【0022】
(24)上記(c)のショ糖脂肪酸エステルがショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルおよびショ糖ステアリン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つである上記(18)に記載の改善または治療薬。
【0023】
(25)上記乳化剤の親水性親油性バランス(以下、HLBと記す)が10ないし18の範囲である上記(17)ないし(24)のいずれかに記載の改善または治療薬。
(26)上記乳化剤のHLBが12ないし16の範囲である上記(17)ないし(25)のいずれかに記載の改善または治療薬。
【0024】
(27)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルの含量が0.01ないし50質量%の範囲である上記(17)ないし(26)のいずれかに記載の改善または治療薬。
(28)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルの含量が0.1ないし30質量%の範囲である上記(17)ないし(27)のいずれかに記載の改善または治療薬。
(29)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルの含量が9質量%以下である上記(17)ないし(28)のいずれかに記載の改善または治療薬。
【0025】
(30)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステル100質量部に対する乳化剤の含量が5ないし100質量部である上記(17)ないし(29)のいずれかに記載の改善または治療薬。
(31)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステル100質量部に対する乳化剤の含量が10ないし50質量部である上記(17)ないし(30)のいずれかに記載の改善または治療薬。
(32)上記乳化剤の含有量が2質量%以下である上記(17)ないし(31)に記載の乳化組成物。
【0026】
(33)上記平均乳化滴径が2μm以下である上記(17)ないし(32)のいずれかに記載の改善または治療薬。
(34)改善または治療薬中の平均乳化滴径が0.3μm以下である上記(17)ないし(33)のいずれかに記載の改善または治療薬。
【0027】
(35)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを投与する工程、およびニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を投与する工程を含む、脂質異常症を改善または治療するための方法。
(36)前記2つの投与工程を同時に行う上記(35)に記載の方法。
(37)前記2つの投与工程を別々の時期に行う上記(35)に記載の方法。
(38)血清総Cho、TG、LDLCho、HDLCho、VLDLCho、非HDLCho、IDLCho、VHDLCho、遊離脂肪酸、リン脂質、カイロミクロン、ApoB、Lp(a)、RLPChoおよびsdLDLChoからなる群から選ばれる少なくとも1つの値を測定あるいは算出してその値が正常範囲内になるまで、投与を継続する上記(35)に記載の方法。
【0028】
(39)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つを投与する工程、およびニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を投与する工程を含む、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体による副作用を軽減するための方法。
(40)前記2つの投与工程を同時に行う上記(39)に記載の方法。
(41)前記2つの投与工程を別々の時期に行う上記(39)に記載の方法。
(42)顔面紅潮の発現観察や血清クレアチンホスホキナーゼ(以下、CPKと記す)、インスリン抵抗性を測定してこれらの副作用が発現した場合に、それら副作用が消失あるいは測定値が正常範囲内になるまでニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体の投与量を減少させる、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を休薬させる、およびEPAの投与量を増加させることからなる群から選ばれる少なくとも1つを行う上記(39)に記載の方法。
(43)EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、並びに、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を有効成分として併用する、血中脂質が高めのヒト用または末梢血行が不順なヒト用の保健機能食品。
【発明の効果】
【0029】
EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、並びに、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体の併用により、安全で効果の高い脂質異常症の改善または治療薬およびその使用方法を提供することができる。
具体的には、各々単独で使用した場合に比べて相乗的な脂質異常症の改善または治療効果を示すことが期待される。特に、血中総Cho、TG、LDLCho、非HDLChoおよびHDLChoなどの血漿中脂質マーカーの改善あるいは末梢血行障害に起因する四肢末梢皮膚温度上昇、歩行距離延長や関節痛、筋肉疲労、眼精疲労、しびれ、冷感、疼痛およびかゆみなどの諸症状の改善において相乗的な脂質異常症の改善または治療効果を示すことが期待される。また、Lp(a)高値の脂質異常症の患者において、Lp(a)低下を含めた改善または治療効果を示すことが期待される。
【0030】
ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体は、主な副作用である掻痒感、顔面紅潮および熱感の発現頻度が高く、服薬コンプライアンスを低下させる要因となっており、また、インスリン抵抗性悪化、肝臓障害悪化、消化性潰瘍悪化や眼内圧の上昇が報告され、肝機能障害、消化性潰瘍、緑内障、糖尿病などの患者には慎重投与とされ、さらに、スタチンとの併用で血清CPK上昇、筋肉痛や横紋筋融解症が現れやすいとの報告がある。本発明により各々の薬剤、特にニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体の服薬量を低減することができ、掻痒感、顔面紅潮および熱感などの副作用を軽減することにより、服薬コンプライアンスを高めることができる。また、特に上記の既往歴のある患者やスタチンを投与中の患者で血清CPK上昇、筋肉痛や横紋筋融解症などの副作用を軽減することができ、副作用のためにニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体投与を行えなかった患者や中断せざるを得なかった患者において治療を継続することができる。
また、配合剤やキット剤とすることで患者の服薬の負担を軽減し、服薬コンプライアンスをより高めることで更に改善または治療効果を高めることができる。
また、乳剤とすることで吸収性が向上するので、食中、食後あるいは食直後以外の時間、例えば食前、食直前、就寝前に投与した場合、腸管での吸収能低下した患者(高齢者、腸疾患患者、腸手術後、末期癌患者、リパーゼ阻害剤服用時)に投与した場合あるいは、投与量を減量した場合も本発明の効果を発現させることができる。
【0031】
日米欧などの先進諸国において補完代替医療が増加しており、特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品および栄養機能食品)や健康食品(サプリメント)などが利用されている。EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、並びに、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体の併用により、安全で効果の高い、血中脂質(総Cho、TG、LDLCho、VLDLCho、非HDLCho、IDLCho、遊離脂肪酸、リン脂質、カイロミクロン、ApoBおよびLp(a)、RLPCho、sdLDLCho)が高めのヒト用、HDLChoおよびVHDLChoが低めのヒト用あるいは末梢血行が不順なヒト用の保健機能食品を提供することができる。メタボリックシンドロームあるいはその予備軍のヒトが更なる心・脳血管イベントや四肢末梢潰瘍や壊疽などへの進行することを抑制でき、生活の質を保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、並びに、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を有効成分として併用する、脂質異常症の改善または治療薬およびその使用方法である。本発明の改善または治療薬は、有効成分の、EPA、その製薬学上許容しうる塩およびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、並びに、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体を、組み合わせて用いる組み合わせ薬、組み合わせ組成物およびその使用方法である。
【0033】
本発明において、「脂質異常症」とは、血中の脂質成分の少なくとも1種が正常範囲を逸脱した病態である。血中の脂質成分としては、総Cho、TG、LDLCho、HDLCho、VLDLCho、非HDLCho、IDLCho、VHDLCho、遊離脂肪酸、リン脂質、カイロミクロン、ApoB、Lp(a)、RLPCho、sdLDLChoなどが例示される。特に、総Cho、TG、LDLCho、非HDLChoおよびHDLChoが臨床上重要な脂質成分として例示され、さらにTGが好適例とし挙げられる。また、脂質異常症に伴う末梢血行障害も本発明で用いられる「脂質異常症」に含まれる。特に断らない限りは、本発明における「脂質異常症」の語は、上記血中の脂質成分異常および脂質異常症に伴う末梢血行障害をすべて含む意味で用いられる。
【0034】
本発明において、「末梢血行障害」とは、何らかの原因により末梢の血流障害が起きている病態である。原因としては、例えば、ASO、バージャー病、レイノー病、レイノー病症候群、間欠性跛行症、四肢動脈塞栓症、静脈血栓症、四肢冷感症、血栓性静脈炎、振動病、高安病、糖尿病性網膜症、四十肩/五十肩、冷房病(冷房による冷えやのぼせなどの体調不良)、脱毛、凍瘡および凍傷などが例示され、その症状としては、間欠性跛行、歩行痛、関節痛、筋肉疲労、眼精疲労、しびれ、冷感、疼痛、安静時疼痛、チアノーゼ、発赤、しもやけ、肩こり、貧血、血色不良、掻痒および蟻走感などを伴い、四肢末梢の筋萎縮、阻血性潰瘍および壊死に進展する。本発明で用いられる「末梢血行障害」の語は、特に断らない限りは、上記疾患、それらの症状および進展した際の症状をすべて含む意味で用いられる。
【0035】
EPAは、炭素数20で分子内に5つの炭素−炭素二重結合を有し、メチル基側から数えて3番目の位置に最初の二重結合があるω3多価不飽和脂肪酸の全シス5,8,11,14,17イコサペント酸(all cis-5,8,11,14,17-Icosapentaenoic acid)である。本発明における「EPA」の語は、特に断らない限りは、EPAだけでなく、その製薬上許容される塩、あるいはエステル、アミド、リン脂質、グリセリドなどのEPA誘導体も含む意味で用いられる。
【0036】
本発明で用いられるEPAは、合成品、半合成品または天然品のいずれでもよく、これらを含有する天然油の形態でもよい。ここで、天然品とは、EPAを含有する天然油から公知の方法によって抽出されたもの、粗精製されたもの、あるいはそれらを更に高度に精製したものを意味する。半合成品は、微生物などにより産生された多価不飽和脂肪酸を含み、また該多価不飽和脂肪酸あるいは天然の多価不飽和脂肪酸にエステル化、エステル交換等の化学処理を施したものも含まれる。本発明では、EPAとして、これらのうちの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明では、EPAとして、具体的には、EPA、その製薬学上許容しうる塩としてナトリウム塩、カリウム塩などの無機塩基、ベンジルアミン塩、ジエチルアミン塩などの有機塩基、アルギニン塩、リジン塩などの塩基性アミノ酸との塩およびエステルとしてエチルエステル等のアルキルエステルやモノ−、ジ−およびTG等のエステルが例示される。好ましくはエチルエステル、すなわちEPA−Eである。
【0038】
EPAの純度は特に限定されないが、通常、本剤組成物の全脂肪酸中のEPAの含量として、好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上、とりわけ好ましくは96.5質量%以上である。
【0039】
また、本剤組成物はドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、αリノレン酸などのEPA以外のω3多価不飽和脂肪酸、それらの製薬学上許容される塩またはエステルを含んでいても良く、EPA−EとDHA−Eとの組合せが好ましい例として挙げられる。例えば、EPA−EとDHA−Eを用いる場合、EPAの本剤組成物の純度が上記であれば、EPA−E/DHA−Eの組成比および全脂肪酸中のEPA−E+DHA−Eの含量比は特に問わないが、好ましい組成比として、EPA−E/DHA−Eは、0.8以上であることが好ましく、更に好ましくは、1.0以上、より好ましくは、1.2以上である。EPA−E+DHA−Eは高純度のもの、例えば、全脂肪酸およびその誘導体中のEPA−E+DHA−E含量比が40質量%以上のものが好ましく、55質量%以上のものがさらに好ましく、84質量%以上のものがさらに好ましく、96.5質量%以上のものが更に好ましい。すなわち、本剤組成物は、全脂肪酸中のω3多価不飽和脂肪酸純度が高いことが好ましく、ω3多価不飽和脂肪酸であるEPA+DHA純度が高いことが更に好ましく、EPAの純度が高いことがより好ましい。ω3多価不飽和脂肪酸以外の脂肪酸含量は少ないことが好ましく、長鎖不飽和脂肪酸でもω6多価不飽和脂肪酸、特にアラキドン酸含量は少ないことが望まれ、2質量%未満が好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、アラキドン酸を実質的に含まない態様がとくに好ましい。
【0040】
本発明の改善または治療薬に用いられるEPA−Eは、魚油あるいは魚油の濃縮物に比べ、飽和脂肪酸やアラキドン酸等の心血管イベントに対して好ましくない不純物が少なく、栄養過多やビタミンA過剰摂取の問題もなく作用効果を発揮することが可能である。また、エステル体のため主にTG体である魚油等に比べて酸化安定性が高く、通常の酸化防止剤添加により十分安定な組成物を得ることが可能である。
【0041】
このEPA−Eは、日本において、ASOおよび高脂血症治療薬として入手可能な高純度EPA−E(96.5質量%以上)含有軟カプセル剤(商品名エパデール:持田製薬社製)を用いることができる。また、EPA−EとDHA−Eの混合物は、たとえば、米国で高TG血症治療薬として市販されているロバザ(Lovaza(登録商標):グラクソ・スミス・クライン:EPA−E約46.5質量%、DHA−E約37.5質量%含有する軟カプセル剤)を使用することもできる。
EPAとして、精製魚油も使用できる。また、EPAのモノグリセリド、ジグリセリド、TG誘導体またはこれらの組合せなども好ましい態様の一つである。例えばインクロメガ(lncromega)F2250、F2628、E2251、F2573、TG2162、TG2779、TG2928、TG3525およびE5015(クローダ インターナショナル ピーエルシー (Croda International PLC, Yorkshire, England))、および EPAX6000FA、EPAX5000TG、EPAX4510TG、EPAX2050TG、EPAX7010EE、K85TG、K85EEおよびK80EE (プロノバ バイオファーマ(Pronova Biopharma, Lysaker, Norway) )などの種々のEPA、その塩およびエステルを含有する製品が市販されており、これらを入手して使用することもできる。
【0042】
本発明において、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体は、ニコチン酸、ニセリトロール、ニコモール、トコフェロールニコチン酸エステル、ニコチン酸アミド、イノシトールヘキサニコチン酸エステルが例示される。好ましくはニコチン酸あるいはトコフェロールニコチン酸エステルが例示され、さらに好ましくはトコフェロールニコチン酸エステルが例示される。本発明においてニコチン酸誘導体とは、特に断らない限りは、上記のようなニコチン酸およびその誘導体をすべて含む意味で用いられる。
【0043】
なお、ニコチン酸はナイクリン(登録商標)(トーアエイヨー)、ニセリトロールはペリシット(登録商標)(三和化学)、ニコモールはコレキサミン(登録商標)(杏林製薬)、トコフェロールニコチン酸エステルはユベラ(登録商標)N(エーザイ)、ニコチン酸アミドはニコチン酸アミド散ゾンネ(鳥居薬品)、イノシトールヘキサニコチン酸エステルはニコキサチン(登録商標)(扶桑薬品工業)の各商品名で日本で市販されており、これらを入手して使用することもできる。また、副作用軽減の観点では、米国で市販されているニコチン酸の徐放剤(Niaspan、Kos Pharmaceuticals)を使用することも好ましい。また、高脂血症剤であるロバスタチンとの配合剤としてAdvicor(登録商標)(Kos Pharmaceuticals)、シンバスタチンとの配合剤としてSimcor(登録商標)(Abbott)が市販されており、重症な脂質異常症患者の場合、これらを入手して使用することも好ましい。
【0044】
上記のようなEPAおよびニコチン酸誘導体併用の本発明薬剤において、好ましい態様は、EPA−Eとニコチン酸あるいはトコフェロールニコチン酸エステルとの組合せであり、特に好ましい態様は、EPA−Eとトコフェロールニコチン酸エステルとの組合せである。
【0045】
本発明において、有効成分の「併用」とは、有効成分を組合せて用いることであり、EPAおよびニコチン酸誘導体を共に含む配合剤として投与すること、および、EPAとニコチン酸誘導体とがそれぞれ別個の製剤として同時期にもしくは時間差をおいて別々に投与されることを含む。「別個の製剤として同時期にもしくは時間差をおいて別々に投与される」態様には、(1)EPAを投与される患者に、ニコチン酸誘導体を有効成分として含有する組成物を投与する態様、および、(2)ニコチン酸誘導体を投与される患者に、EPAを有効成分として含有する組成物を投与する態様が含まれる。また、「併用」とは必ずしも患者の体内、例えば血中において同時に存在する場合に限られないが、本発明において「併用」とは、いずれか一方の薬剤の作用・効果が患者の体内に発現している状態で他方の薬剤を投与する使用態様をいう。本発明の改善または治療薬を用いて脂質異常症の改善または治療効果が得られるような使用態様である。好ましくは、患者の体内、例えば血中において同時に存在する使用態様が望ましく、また好ましくは、患者に対して、一方の薬剤を投与してから24時間以内に他方の薬剤を投与する使用態様が好ましい。
【0046】
本発明の改善または治療薬における併用の形態は、特に限定されず、有効成分が組み合わされていればよく、組み合わせて用いる組み合せ薬、組み合せ組成物などを含む。このような薬剤の形態としては、例えば(1)有効成分を同時製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)有効成分を別々に製剤化して得られる2種類の製剤を組合せてキットとし、または組み合わせないで別々に用意し、同一投与経路での同時投与に使用する。(3)有効成分を別々に製剤化して得られる2種類の製剤を組合せてキットとし、または組み合わせないで別々に用意し、同一投与経路で時間差をおいて投与する。(4)有効成分を別々に製剤化して得られる2種類の製剤を組合せてキットとし、または組み合わせないで別々に用意し、異なる投与経路(同一患者の異なる部位から投与する)で同時に投与する。(5)有効成分を別々に製剤化して得られる2種類の製剤を組合せてキットとし、または組み合わせないで別々に用意し、異なる投与経路(同一患者の異なる部位から投与する)で時間差をおいて投与する。
【0047】
これらの時間差をおいて投与する場合は、例えば、EPAとニコチン酸誘導体の順序での投与、または逆の順序での投与がある。同時に投与する場合、投与経路が同一であれば投与直前に両薬剤を混合してもよく、別々に投与しても良い、また種々の目的で計画的に投与時期をずらして用いることができる。具体的な例としては、一方の薬剤を投与し、その効果が発現し始める時期もしくは十分に発現している間に、他方の薬剤を投与して作用させる方法がある。また、一方の薬剤、特にニコチン酸誘導体を1日1回投与とし、他方の薬剤、特にEPAを1日複数回、例えば2ないし3回投与としてもよいし、同様に1日1回投与としてもよい。両薬ともに1日1回投与、さらには1日1回同時投与あるいは配合剤とすれば、患者の服薬の負担を軽減し、服薬コンプライアンスが向上して改善・治療効果および副作用軽減効果も増すことが期待され、好ましい。また、例えば、両薬剤を投与し、その効果が発現し始める時期もしくは十分発現している時期に、一方の薬剤の投薬を中止する方法がある。薬剤の投薬を中止する場合には、段階的に薬剤の用量を減量してもよい。また、例えば、一方の薬剤の休薬期間に他方の薬剤を投与する方法が挙げられる。
【0048】
本発明の脂質異常症の改善または治療薬には、有効成分として少なくともEPAおよびニコチン酸誘導体の1種ずつを併用した治療効果が得られる態様で使用すれば、その使用態様は制限されない。たとえば、EPAおよびニコチン酸誘導体のみを使用することを特徴とするもの、すなわち、EPAと、ニコチン酸誘導体とを組み合わせてなる脂質異常症の改善または治療薬のほか、さらに他の有効成分を組み合わせて使用する脂質異常症の改善または治療薬も含まれる。
【0049】
望ましくは、EPAおよびニコチン酸誘導体を併用した治療効果が、併用の場合と同じ用量のEPAおよびニコチン酸誘導体を個々に用いて得られる治療効果の和よりも大きな効果を得られる態様が好ましい。ここでの治療効果とは、脂質異常症に関連する生化学的マーカーや病態の改善または治療効果あるいはメタボリックシンドロームや心・脳血管イベントや四肢末梢潰瘍や壊疽などへの進行抑制であれば特に限定されないが、例えば、血漿中の脂質マーカー(総Cho、TG、LDLCho、HDLCho、VLDLCho、非HDLCho、IDLCho、VHDLCho、遊離脂肪酸、リン脂質、カイロミクロン、ApoB、Lp(a)、RLPCho、sdLDLCho等)の濃度改善、サーモグラフィーなどで測定できる四肢末梢の皮膚温度上昇、歩行距離の延長、血清CPK上昇などの検査値、あるいは関節痛、筋肉疲労、眼精疲労、しびれ、冷感、疼痛、安静時疼痛、かゆみ、チアノーゼ、発赤、しもやけ、肩こり、貧血、血色不良、掻痒および蟻走感などの諸症状の改善が例示される。その他の脂質異常症や末梢血行障害に関連する生化学的・病理学的あるいは病態パラメータにより改善または治療効果をモニタリングしてもよい。
【0050】
本発明の改善または治療薬に用いられるEPAおよびニコチン酸誘導体の投与量および投与期間は対象となる作用を現すのに十分な量および期間とされるが、その剤形、投与方法、1日当たりの投与回数、症状の程度、体重、年齢等によって適宜増減することができる。
【0051】
経口投与する場合は、例えばEPA−Eとして0.1〜5g/日、好ましくは0.2〜3g/日、より好ましくは0.4〜1.8g/日、さらに好ましくは0.6〜0.9g/日を1ないし3回に分けて投与するが、必要に応じて全量を1回あるいは数回に分けて投与してもよい。また、ニコチン酸誘導体の投与量に応じて減量することも可能である。EPA−Eの吸収は食事が影響するため、投与時間は食中ないし食後が好ましく、食直後(30分以内)投与が更に好ましい。吸収率を向上させる目的で、乳剤化すること、あるいはウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、胆汁末、デオキシコール酸、コール酸、胆汁エキス、熊胆、牛黄やデヒドロコール酸などの胆汁酸誘導体を併用することも好ましい。乳剤化すると、あるいは胆汁酸誘導体を併用すると吸収率が向上するので、食中、食後あるいは食直後以外の時間、例えば食前、食直前、就寝前に投与した場合、腸管での吸収能低下した患者(高齢者、腸疾患患者、腸手術後、末期癌患者、リパーゼ阻害剤服用時)に投与した場合あるいは、投与量を減量した場合も本発明の効果を発現させることができる。
上記投与量を経口投与する場合、投与期間は症状の程度および改善度により適宜決定され、限定されるものではないが、例えば1年以上、好ましくは2年以上、より好ましくは3.5年以上、更に好ましくは5年以上であるが、脂質異常症や末梢血行障害に関連する病態あるいは生化学的指標の異常値などが継続している間、脂質異常症やそれに伴う末梢血行障害の発症および/または再発の危険度が高い状態が続いている間は投与を継続することが望ましい。また、例えば1日おきに投与する、1週間に2〜3日投与する態様や、場合により1日〜3ヵ月程度、好ましくは1週間〜1ヵ月程度の休薬期間を設けることもできる。
【0052】
本発明の改善または治療薬に用いられるニコチン酸誘導体の投与量は、その薬剤単独での用法・用量の範囲内で使用されることが好ましいが、その種類、剤形、投与方法、1日当たりの投与回数は、症状の程度、体重、性別、年齢等によって適宜増減することができる。経口投与する場合は、例えばニコチン酸として20〜2000mg/日、好ましくは50〜1000mg/日、さらに好ましくは100〜500mg/日を、トコフェロールニコチン酸エステルとして6〜600mg/日、好ましくは60〜300mg/日、さらに好ましくは100〜200mg/日を、1回ないし2回に分けて投与するが、必要に応じて全量を数回に分けて投与してもよい。また、顔面紅潮の副作用が発現しやすい患者には就寝前に1回投与としてもよい。
【0053】
トコフェロールニコチン酸エステルの吸収は食事が影響するため、食中、食後あるいは食直後投与が好ましい。吸収率を向上させる目的で、乳剤化すること、あるいはウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、胆汁末、デオキシコール酸、コール酸、胆汁エキス、熊胆、牛黄やデヒドロコール酸などの胆汁酸誘導体を併用することも好ましい。乳剤化すると、あるいは胆汁酸誘導体を併用すると吸収率が向上するので、食中、食後あるいは食直後以外の時間、例えば食前、食直前、就寝前に投与した場合、腸管での吸収能低下した患者(高齢者、腸疾患患者、腸手術後、末期癌患者、リパーゼ阻害剤服用時)に投与した場合あるいは、投与量を減量した場合も本発明の効果を発現させることができる。
【0054】
医師の指示によっては、投与開始日に、1日の推奨用量よりも低い用量(例えばニコチン酸の場合100〜400mg)を経口投与し、その後、維持量として、1日の最高投与量(例えばニコチン酸の場合2000mg)まで漸増して経口投与してもよい。また、EPAの投与量に応じて減量することも可能である。副作用軽減の観点で1日投与量をできるだけ減量し、1日1回投与とすることがより好ましく、徐放化した製剤を用いることがより好ましく、アスピリンやラロピプリアント(laropiprant)などのニコチン酸の顔面紅潮軽減剤を併用することも好ましい。
【0055】
上記投与量を経口投与する場合、投与期間は症状の程度および改善度により適宜決定され、限定されるものではないが、例えば1年以上、好ましくは2年以上、より好ましくは3.5年以上、更に好ましくは5年以上であるが、脂質異常症やそれに伴う末梢血行障害に関連する病態あるいは生化学的指標の異常値などが継続している間、脂質異常症やそれに伴う末梢血行障害の発症および/または再発の危険度が高い状態が続いている間は投与を継続することが望ましい。また、例えば1日おきに投与する、1週間に2〜3日投与する態様や、場合により1日〜3ヵ月程度、好ましくは1週間〜1ヵ月程度の休薬期間を設けることもできる。
【0056】
EPAおよびニコチン酸誘導体の併用による本発明では、EPAおよび/またはニコチン酸誘導体の用量を一般的に使用される通常の用量より低く設定することも可能である。例えば、個々の薬剤を単独で治療効果を得るには不十分な用量を用いることも可能である。これにより、薬剤、特にニコチン酸誘導体による副作用を軽減することができる利点を有する。
【0057】
EPAおよび/またはニコチン酸誘導体単独の用量が、治療効果を得るには不十分な用量であって、EPAおよびニコチン酸誘導体を併用した治療効果が、併用の場合と同じ用量のEPAおよびニコチン酸誘導体を個々に用いて得られる治療効果の和よりも大きな効果を得られるような使用態様も望ましい。
【0058】
また、EPAおよび/またはニコチン酸誘導体単独の用量が、治療効果を得るには不十分な用量であって、EPAおよびニコチン酸誘導体を併用した際の副作用が、併用の場合と同じ用量のEPAおよびニコチン酸誘導体を個々に用いて発現する副作用の和よりも小さいような使用態様も望ましい。
【0059】
EPA単独の用量が、治療効果を得るには不十分な用量とは、患者の個々の状態、年齢、体重や体型により変動し、限定されるものではないが、例えば、EPA−Eおよび/またはDHA−Eの場合、1日あたりの投与量が、0.1g以上2g未満、好ましくは0.2g以上1.8g以下、さらに好ましくは0.3g以上〜0.9g以下、また好ましくは、0.3g以上〜0.6g以下である。
【0060】
ニコチン酸誘導体単独の用量が、治療効果を得るには不十分な用量とは、患者の個々の状態、年齢、体重や体型により変動し、限定されるものではないが、例えば、ニコチン酸の1日あたりの投与量が推奨用量の1日500mg未満であり、好ましくは5mg以上400mg以下、より好ましくは10mg以上200mg以下、さらに好ましくは25mg以上100mg以下、トコフェロールニコチン酸エステルの1日あたりの投与量が推奨用量の1日300mg未満であり、好ましくは3mg以上200mg以下、より好ましくは6mg以上100mg以下、さらに好ましくは15mg以上50mg以下が例示される。
本発明の効果は、ニコチン酸誘導体単独で血清脂質低下作用およびそれに伴う末梢血行障害改善作用を示す用量より少ない低用量で現れることが期待される。
【0061】
EPAおよびニコチン酸誘導体の投与量の比率は、特に限定されないが、好ましいEPAとニコチン酸誘導体の投与量の比率は、EPA:ニコチン酸=0.4〜50:1、好ましくは0.6〜20:1、さらに好ましくは、0.8〜10:1、最も好ましくは1〜3:1、EPA:トコフェロールニコチン酸エステル=1〜100:1、好ましくは2〜40:1、さらに好ましくは、2.5〜20:1、最も好ましくは3〜6:1が例示され、ニコチン酸誘導体による副作用軽減の観点ではニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体の量をさらに1/2〜1/10量とすることもできる。ヒトにおいてEPA1800mgに対してニコチン酸500〜2000mg、トコフェロールニコチン酸エステル300〜600mgの比率で投与されることが望ましい。配合剤とする場合にも、この比率で配合されることが望ましい。
【0062】
EPAおよびニコチン酸誘導体の1日投与量、投与回数あるいは投与比率は、血漿中の脂質マーカー(総Cho、TG、LDLCho、HDLCho、VLDLCho、非HDLCho、IDLCho、VHDLCho、リン脂質、カイロミクロン、ApoB、遊離脂肪酸、Lp(a)、RLPCho、sdLDLCho等)の濃度、サーモグラフィーなどで測定できる四肢末梢の皮膚温度上昇、歩行距離の延長、血清CPK上昇などの検査値、あるいは関節痛、筋肉疲労、眼精疲労、しびれ、冷感、疼痛、安静時疼痛、かゆみ、チアノーゼ、発赤、しもやけ、肩こり、貧血、血色不良、掻痒および蟻走感などの諸症状を確認しながら適宜増減できる。例えば、ニコチン酸誘導体を単独で投与したときに血清TG値を測定し、この測定値を指標にして、その後、ニコチン酸誘導体の投与量を減少してEPAの投与を開始し、本発明の治療効果を得ることもできる。本発明の改善または治療薬を用いた場合の各種副作用発現は、本発明と同じ治療効果を得るためにニコチン酸誘導体単独投与で必要とする用量で発現する副作用、例えば顔面紅潮の発現頻度を超えないことが望ましい。
【0063】
本発明の脂質異常症の改善または治療薬は、有効成分を化合物(精製の際に不可避的に含まれる他の成分を含む場合もある)をそのまま投与するか、或いは一般的に用いられる適当な担体または媒体、賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、香味剤、必要に応じて滅菌水や植物油、更には無害性有機溶媒あるいは無害性溶解補助剤(たとえばグリセリン、プロピレングリコール)、乳化剤、懸濁化剤(例えばツイーン80、アラビアゴム溶液)、等張化剤、pH調整剤、安定化剤、無痛化剤、嬌味剤、着香剤、保存剤、酸化防止剤、緩衝剤、着色剤、吸収促進剤などの添加剤と適宜選択組み合わせて適当な医薬用製剤に調製することができる。添加剤として、たとえば乳糖、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール、トコフェロール、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、タルク、ジメチルポリシロキサン、二酸化ケイ素、カルナウバロウ、デスオキシコール酸ナトリウムなどを含有しうる。
【0064】
特に、EPAは高度に不飽和であるため、油溶性の酸化防止剤たとえばブチレート化ヒドロキシトルエン、ブレチート化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、没食子酸プロピル、医薬として許容されうるキノン、アスタキサンチンおよびα−トコフェロールから選ばれる少なくとも1種を酸化防止剤として有効量含有させることが望ましい。水分を含む乳剤においては酸化を受けやすく、特に乳化滴径を小さくすることで酸化されやすくなるため、水溶性の酸化防止剤および/または油溶性の酸化防止剤を酸化防止剤として有効量含有させることが望ましく、水溶性の酸化防止剤と油溶性の酸化防止剤の両方を含有させることが好ましい。水溶性の酸化防止剤としてはアスコルビン酸およびその誘導体、エリソルビン酸およびその誘導体、亜硝酸塩、クエン酸などが例示され、油溶性の酸化防止剤としてはブチレート化ヒドロキシトルエン、ブレチート化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、没食子酸プロピル、医薬として許容されうるキノン、アスタキサンチンおよびα−トコフェロールなどが例示される。また、乳化組成物調製後は容器内を窒素置換して密封保存することが好ましい。保存温度は、室温が好ましく、冷暗所がさらに好ましく、凍結すると乳化安定性が悪くなる恐れがあるため、冷凍保存は避けることが好ましい。
【0065】
製剤の剤形は、本発明の有効成分の併用形態によっても異なり、特に限定されないが、経口製剤としては、例えば、錠剤、フィルムコーティング錠、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、乳剤、自己乳化型製剤、経口用液体製剤、シロップ剤、ゼリー剤、吸入剤の形で、非経口製剤としては、例えば、軟膏、坐剤、注射剤(乳濁性、懸濁性、非水性)あるいは用時乳濁または懸濁して用いる固形注射剤、輸液製剤、経皮吸収剤などの外用剤で、経口および静脈内あるいは動脈内、吸入、直腸内、膣内あるいは外用を問わず患者に投与されるが、経口服用できる患者に対しては、簡便な経口製剤が望ましく、とりわけカプセルたとえば、軟質カプセルやマイクロカプセルに封入して、あるいは錠剤、フィルムコーティング錠での経口投与が好ましい。また、腸溶製剤や徐放化製剤として経口投与してもよく、透析患者や嚥下困難な患者などにはゼリー剤として経口投与することも好ましい。
【0066】
また、自己乳化型製剤や乳剤などの経口用液体製剤として経口投与すると吸収が促進され、服薬時間の制約なく投与でき、かつ投与量を減量できて好ましい。乳剤とする場合は、乳濁粒子の直径は小さいほうが好ましく、平均直径2μm以下、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下が例示される。
【0067】
乳化剤としては、医薬製剤に使用される乳化剤であればいずれの乳化剤も用いることができるが、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、卵黄リン脂質、大豆リン脂質、精製ラノリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリソルベートエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドの有機酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤などが例示され、好ましくは卵黄レシチン、大豆レシチン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。さらに好ましくは、レシチンおよび任意にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。また、HLBが10ないし18の範囲の乳化剤が好ましく、HLBが12ないし16の範囲の乳化剤がより好ましい。乳化剤は単独でまたは2種以上を併用して含有させることができる。
【0068】
また、乳化補助剤、安定化剤、界面活性剤、抗酸化剤などを含有させることもできる。乳化補助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、リノレン酸、ミリスチン酸などの炭素数12ないし22の酸脂肪酸またはそれらの塩などが例示される。安定化剤としては、フォスファチジン酸、アスコルビン酸、グリセリン、セタノール、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、トレハロース、乳糖、白糖、ブドウ糖、マルトースなどが例示される。界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが例示される。抗酸化剤としては、ブチレート化ヒドロキシトルエン、ブレチート化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、没食子酸プロピル、医薬として許容されうるキノン、アスタキサンチンおよびα−トコフェロールなどの油溶性の抗酸化剤およびアスコルビン酸およびその誘導体、エリソルビン酸およびその誘導体、亜硝酸塩、クエン酸などの水溶性の抗酸化剤が例示される。
【0069】
乳剤中のEPAおよび/またはニコチン酸誘導体の含有量は0.1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは3〜30質量%が例示される。乳化剤の含有量は0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%、さらに好ましくは0.3〜3質量%が例示される。
【0070】
本発明の乳剤は、例えば有効成分、乳化剤、グリセリン、精製水および必要により抗酸化剤などの他の添加剤を混合、加熱して溶液とし、通常のホモジナイザー、例えばマントンゴーリン型ホモジナイザーのような加圧噴射型ホモジナイザーを用いて、例えば圧力50ないし700kg/cm2で1ないし50回程度、好ましくは2ないし20回程度通過させて乳化する、高速撹拌機(泡レスミキサー、美粒製)を用い15000rpmにて乳化する、高圧乳化装置(DeBee2000、BEE インターナショナル製)を用い20000PSIにて高圧乳化する、あるいは、マイクロフルイダイザー、薄膜旋回型高速ミキサー、高圧ジェット流反転型乳化機、超音波型ホモジナイザーなどを用いて均質化して製造することができる。これに先立って、ホモミキサーなどを用いて予備乳化を行っても良い。
【0071】
また、本発明の保健機能食品は、有効成分を上記の種々の剤形にして食品に添加、混合して製造、使用することができる。好ましくは、シロップ剤、ゼリー剤、乳剤、懸濁剤、軟質カプセル剤やマイクロカプセル剤が例示され、さらに好ましくはゼリー剤、乳剤、マイクロカプセル剤である。
【0072】
本発明の改善または治療薬は、両薬剤を別々に製剤して得られる2種類の製剤を組み合わせて使用する場合には、それぞれ公知の方法により製剤化する。また、本発明の改善または治療薬は、EPAとニコチン酸誘導体とを有効成分とする配合剤とすることができる。
【0073】
配合剤の有効成分として、第三の薬剤を含有することも可能である。第三の薬剤は特に限定されないが、本発明の効果を減弱しないことが好ましく、例えば、高脂血症治療薬、抗酸化剤、血流改善剤、胆汁酸誘導体などが例示される。
好ましい第三の薬剤としては、高脂血症治療薬のうち、例えば、ポリエンフォスファチジルコリン、大豆油不けん化物(ソイステロール)、ガンマオリザノール、紅花油(リノール酸)、酪酸リボフラビン、デキストラン硫酸ナトリウムイオウ18、パンテチン、エラスターゼが挙げられる。また、プラバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチンのようなスタチンやシンフィブラート、クロフィブラート、クリノフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラートのようなフィブラート系薬剤、あるいはオルリスタット、セチリスタットのような脂肪分解酵素阻害剤、コレスチラミンやコレスチミドのようなレジン、エゼチミブなども挙げられる。
【0074】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)やトコフェロール(ビタミンE)等のビタミン類、Nアセチルシステイン、プロブコールなどが挙げられる。
【0075】
血流改善剤としては、例えば、シロスタゾール、チクロピジン塩酸塩、アルプロスタジル、リマプロスト、ベラプロストナトリウム、サルポグレラート塩酸塩、アルガトロバン、ナフチドロフリル、塩酸イソクスプリン、バトロキソビン、ジヒドロエルゴトキシンメシル酸塩、塩酸トラゾリン、ヘプロニカート、四物湯エキスなどが挙げられる。
【0076】
胆汁酸誘導体としては、例えば、ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、胆汁末、デオキシコール酸、コール酸、胆汁エキス、熊胆、牛黄やデヒドロコール酸などが挙げられる。また、ビオチン(ビタミンB7)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、パントテン酸(ビタミンB5)、葉酸(ビタミンB9)、チアミン(ビタミンB1)、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンK、チロシン、ピロドキシン(ビタミンB6)、ロイシン・イソロイシン・バリンなどの分岐鎖アミノ酸類、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムなどが好ましい例として挙げられる。また、大豆たんぱく質、キトサン、低分子アルギン酸ナトリウム、サイリウム種皮由来の食物繊維、リン脂質結合大豆ペプチド、植物ステロールエステル、植物スタノールエステル、ジアシルグリセロール、グロビン蛋白分解物、茶カテキンなどの特定保健用食品や栄養機能食品の成分が挙げられる。
【0077】
配合剤の剤形は、特に限定されず、経口製剤としては、例えば、錠剤、フィルムコーティング錠、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、乳剤、自己乳化型製剤、経口用液体製剤、シロップ剤、ゼリー剤の形で、非経口製剤としては、例えば、注射剤、輸液製剤、経皮吸収剤などの外用剤で患者に投与される。例えば、徐放化した製剤、あるいは、2剤を時間差で放出する製剤なども含む。
本発明の配合剤は、有効成分に加え、薬学的に許容され得る賦形剤を含むことができる。適宜、公知の酸化防止剤、コーティング剤、ゲル化剤、嬌味剤、着香剤、保存剤、乳化剤、pH調整剤、緩衝剤、着色剤などを含有させてもよい。配合剤の好ましい剤形および賦形剤の態様は、上記の併用時の態様と同様である。
【0078】
本発明の配合剤は、常法に従って製剤化することが可能である。EPAの粉末は、例えば、(A)EPA−E、(B)食物繊維、(C)デンプン加水分解物及び/又は低糖化還元デンプン分解物、及び(D)水溶性酸化防止剤を含有する水中油型乳化液を、高真空下で乾燥させ、粉砕処理する(特開平10−99046号)など公知の方法により得られる。EPA−Eの粉体と、ニコチン酸あるいはその製薬学上許容しうる誘導体の粉体とを用いて、常法に従い、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、フィルムコーティング錠、チュアブル錠、徐放錠、口腔内崩壊錠(OD錠)などを得ることができる。
チュアブル錠であれば、例えば、EPA−Eをヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性高分子溶液中に乳化し、得られた乳化液を乳糖などの添加剤に噴霧して粉粒体を得て(特開平8−157362号参照)、ニコチン酸誘導体の粉体と混合して打錠することなど公知の方法により得ることができる。
徐放錠であれば、例えば(1)EPA−Eおよびニコチン酸誘導体のいずれかを内層に、他方を外層に形成する、(2)各成分を含有する円盤状のマトリックスを2層に重ねる、(3)一成分を含有する粒状カプセルを他方の成分を含有するマトリックス中に埋め込む、(4)両剤を予め混合した後に何らかの徐放のための工夫が施される、などが挙げられる。各有効成分は放出速度を調整されていることが望ましく、両剤同時に放出されてもよいし、別々に時間差で放出されてもよい。
口腔内崩壊錠であれば、例えば特開平8−333243号記載の技術など、口腔用フィルム製剤であれば、例えば特開2005−21124号記載の技術など、公知の方法に準じて製造することができる。単純にはEPAに溶解しないニコチン酸誘導体で、例えば、軟カプセル剤、液剤などにする場合には実施例に記載の工夫が必要である。本発明の配合剤は、このようにEPAとニコチン酸誘導体とを1剤に配合するための工夫をしている製剤を含む。
【0079】
本発明の配合剤は、有効成分の薬理作用を発現できるように、放出、吸収されることが望ましい。本発明の配合剤は、有効成分の放出性に優れる、有効成分の吸収性に優れる、有効成分の分散性に優れる、配合剤の保存安定性に優れる、患者の服用利便性、あるいはコンプライアンスに優れる製剤の少なくともいずれか1以上の効果を持つことが望ましい。
【0080】
本発明の改善または治療薬は、動物とりわけ哺乳動物の脂質異常症の改善または治療、再発予防あるいはメタボリックシンドロームや心・脳血管イベントや四肢末梢潰瘍や壊疽などへの進行抑制に有効である。哺乳動物とは、例えば、ヒトやウシ、ウマ、ブタなどの家畜動物やイヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどの家庭用動物等があげられ、好ましくはヒトである。特に、メタボリックシンドローム患者など、血中脂質が増加している、インスリン抵抗性を発現している、あるいは血圧が上昇している脂質異常症患者において相乗的な脂質異常症の改善または治療効果を示すことが期待される。また、ニコチン酸誘導体による掻痒感、顔面紅潮および熱感の副作用やインスリン抵抗性悪化、肝臓障害悪化、消化性潰瘍悪化、眼内圧の上昇、血清CPK上昇、筋肉痛や横紋筋融解症などの副作用が懸念され、肝機能障害、消化性潰瘍、緑内障、糖尿病を併発している患者およびスタチンを併用している患者において、副作用を軽減することができ、また、これらの副作用のためにニコチン酸誘導体投与を行えなかった患者や中断せざるを得なかった患者において治療を継続することができる。
また、配合剤やキット剤とすることで患者の服薬の負担を軽減し、服薬コンプライアンスを高めることで更に改善または治療効果を高めることができる。
【実施例】
【0081】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実験例1)
Cho食家兎における有効性
脂質異常症をきたすことが知られているCho食(以下、HCD食と記す)負荷家兎を用いてEPA−Eおよび/またはトコフェロールニコチン酸エステルの血漿脂質、耳介皮膚温度、血小板凝集に対する薬理作用を確認する。
体重2.7〜3.3kgの日本白色雄性家兎(船橋農場)を通常食(F−1、船橋農場)あるいはHCD食(1%Cho添加RC−4、オリエンタル酵母)を1日100g、12週間自由摂取させて12時間明暗周期、23℃で飼育する。正常群(通常食負荷)、対照群(HCD食負荷)、EPA−E群(HCD食負荷+EPA−E投与)、トコフェロールニコチン酸エステル群(HCD食負荷+トコフェロールニコチン酸エステル投与)および併用群(HCD食負荷+EPA−E投与+トコフェロールニコチン酸エステル投与)の5群(各群10匹)を設定する。飼育期間中、EPA−E群にはEPA−Eを1000mg/kg、トコフェロールニコチン酸エステル群にはトコフェロールニコチン酸エステルを300mg/kgおよび併用群にはEPA−E1000mg/kgおよびトコフェロールニコチン酸エステル30mg/kgを5%アラビアゴム水溶液に懸濁して1日1回経口投与する。正常群および対照群には5%アラビアゴム水溶液を1日1回経口投与する。投与開始時および12週間飼育後、耳介皮膚温度をサ−モグラフィーで測定し、採血して血漿中の生化学検査を行う。また、12週間飼育後に血小板コラーゲン凝集能を吸光度法で測定する。
【0082】
対照群は正常群に比べて、12週間飼育後に血漿中の総Cho、TG濃度が有意に上昇して脂質異常症を呈する。また、耳介皮膚温度が低下し、血小板コラーゲン凝集能が亢進する。
EPA−E群およびトコフェロールニコチン酸エステル群は対照群に比べて、血漿中の総Cho、TG濃度の上昇が抑制される。また、耳介皮膚温度の低下および血小板コラーゲン凝集能の亢進も抑制される。
上記測定値の抑制効果において、併用群はEPA−E群およびトコフェロールニコチン酸エステル群個々で得られる治療効果の和よりも顕著に大きい効果が認められる。よって本発明の改善または治療薬は脂質異常症およびそれに伴う末梢血行障害の改善または治療等に有用である。
【0083】
(実験例2)
高TG血症ラットにおける有効性
6週齢の雄性Zucker Diabetic Fatty ラット(日本チャールズ・リバー株式会社)を糖尿病誘発性飼料(Purina5008(粗蛋白質23.5%、粗脂肪6.5%))を自由摂取させて12時間明暗周期、23℃で飼育する。対照群、EPA−E群(EPA−E投与)、トコフェロールニコチン酸エステル群(トコフェロールニコチン酸エステル投与)および併用群(EPA−E投与+トコフェロールニコチン酸エステル投与)の4群(各群10匹)を設定する。飼育期間中、EPA−E群にはEPA−Eを300mg/kg、トコフェロールニコチン酸エステル群にはトコフェロールニコチン酸エステルを100mg/kgおよび併用群にはEPA−E300mg/kgおよびトコフェロールニコチン酸エステル100mg/kgを1日1回経口投与する。薬剤は、製剤例8に準じて乳剤を作製して使用する。対照群には製剤例8に準じた乳剤基剤を1日1回経口投与する。投与開始時および4週間飼育後に採血して血漿中の生化学検査を行う。
【0084】
対照群は、4週間飼育後に血漿中のTGおよび遊離脂肪酸濃度が有意に上昇する。
EPA−E群およびトコフェロールニコチン酸エステル群は対照群に比べて、血漿中のTGおよび遊離脂肪酸濃度の上昇が抑制される。上記測定値の抑制効果において、併用群はEPA−E群およびトコフェロールニコチン酸エステル群個々で得られる治療効果の和よりも顕著に大きい効果が認められる。よって本発明の改善または治療薬は脂質異常症の改善または治療等に有用である。
【0085】
(実験例3)
ラウリン酸誘発末梢動脈閉塞高TG血症ラットにおける有効性
4週齢の雄性Wistar系ラット(日本エスエルシー)を高スクロール食(AIN−76A、PURINA MILLS)を4週間自由摂取させて12時間明暗周期、23℃で飼育する。偽手術群、対照群、EPA−E群(EPA−E投与)、トコフェロールニコチン酸エステル群(トコフェロールニコチン酸エステル投与)および併用群(EPA−E投与+トコフェロールニコチン酸エステル投与)の5群(各群10匹)を設定する。飼育期間中、EPA−E群にはEPA−Eを300mg/kg、トコフェロールニコチン酸エステル群にはトコフェロールニコチン酸エステルを100mg/kgおよび併用群にはEPA−E300mg/kgおよびトコフェロールニコチン酸エステル100mg/kgを5%アラビアゴム水溶液に懸濁して1日1回経口投与する。偽手術群および対照群には5%アラビアゴム水溶液を1日1回経口投与する。飼育開始2週間後にラットをペントバルビタールナトリウム60mg/kgを腹注して麻酔後、右大腿動脈を露出してラウリン酸ナトリウム水溶液(10mg/ml、pH9.5)を0.1ml注入し、穿刺部位をアロンアルファ(登録商標)(東亜東亞合成化学)で止血して切開部を縫合する。偽手術群のみラウリン酸ナトリウム水溶液の代わりに生理食塩水0.1mlを注入する。注射局部より末梢側にあたる両肢の病変進行度を湿性壊疽および乾性壊疽についてスコア化し、手術2週間後まで毎日肉眼で判定する。病変進行度のスコアは下記の基準による。
スコア0:変化なし、スコア1:病巣は爪のみに限局、スコア2:病巣は指のみに限局、スコア3:病巣は足蹠に波及、スコア4:病巣は下肢に波及。
【0086】
手術2週間後、偽手術群はスコア0であるが、対照群では明確な下肢壊死や脱落病変が認められる。
EPA−E群およびトコフェロールニコチン酸エステル群は対照群に比べて、スコアの改善が認められ、併用群はEPA−E群およびトコフェロールニコチン酸エステル群個々で得られる改善効果の和よりも顕著に大きい効果が認められる。よって本発明の改善または治療薬は脂質異状症に伴う末梢血行障害の改善または治療等に有用である。
【0087】
(実験例4)
脂質異常症と診断された患者を3群(各群15名)に分けて、EPA−E群にはエパデールS(登録商標)900(EPA−E900mg含有)を1日2回合計1800mg、トコフェロールニコチン酸エステル群にはユベラN(登録商標)ソフトカプセル200mg(トコフェロールニコチン酸エステル200mg含有)を1日1ないし3回、併用群にはエパデールS(登録商標)900を1日2回合計1800mgおよびユベラN(登録商標)ソフトカプセル200mgを1日1ないし3回服用させる。ユベラN(登録商標)ソフトカプセル200mgは1日に1回1カプセル投与で開始し、投与開始後2週目以降は1日2回合計2カプセル服用まで、さらに投与開始後4週目以降は1日3回合計3カプセル服用まで、患者の状況に応じて投与量を適宜増減する。投与開始時および6ヵ月後に血漿脂質などの血液生化学検査、体脂肪率および内臓脂肪レベル(体重体組織計HBF−361(オムロン))、腹囲および下肢皮膚温度(サーモグラフィー)の測定を行う。
【0088】
いずれの群でも血漿中ChoおよびTG濃度は治療前に比べ低下し、血漿中HDLChoは治療前に比べ上昇する。また、体脂肪率、内臓脂肪レベルおよび腹囲は減少し、下肢皮膚温度は上昇する。各々の指標は併用群において相乗的に改善される。また、併用群ではトコフェロールニコチン酸エステル群に比べてユベラN(登録商標)ソフトカプセル200mgの投与量増加が少なく、顔面紅潮などの副作用発現が抑制される。よって本発明の改善または治療薬は脂質異常症およびそれに伴う末梢血行障害の改善または治療に有用であり、かつトコフェロールニコチン酸エステルによる顔面紅潮などの副作用軽減に有用である。
【0089】
(実験例5)
胆汁酸誘導体のEPA−Eおよびトコフェロールニコチン酸エステル吸収への影響
6週齢の雄性Wistar系ラット(日本エスエルシー)を通常食(F−1、船橋農場)を自由摂取させて12時間明暗周期、23℃で飼育する。対照群、EPA−E+トコフェロールニコチン酸エステル群(EPA−E投与+トコフェロールニコチン酸エステル投与)、ウルソデオキシコール酸併用群(EPA−E投与+トコフェロールニコチン酸エステル投与+ウルソデオキシコール酸投与)の3群(各群3匹)を設定する。1日絶食後、EPA−E+トコフェロールニコチン酸エステル群にはEPA−Eを300mg/kgおよびトコフェロールニコチン酸エステルを100mg/kgを、およびウルソデオキシコール酸併用群にはEPA−E300mg/kg、トコフェロールニコチン酸エステル100mg/kgおよびウルソデオキシコール酸10mg/kgを5%アラビアゴム水溶液に懸濁して経口投与する。対照群には5%アラビアゴム水溶液を経口投与する。薬物投与前および投与3時間後に頸静脈より採血し、血漿中のEPAおよびトコフェロールの濃度をガスクロマトグラフィーで測定する。
【0090】
対照群では投与前後で血漿中のEPAおよびトコフェロールの濃度変化はない。EPA−E+トコフェロールニコチン酸エステル群では血漿中のEPAおよびトコフェロールの濃度は上昇する。ウルソデオキシコール酸併用群では、EPA−E+トコフェロールニコチン酸エステル群に比べて血漿中のEPAおよびトコフェロールの濃度は数倍以上上昇する。よって、胆汁酸誘導体を併用することにより本発明の改善または治療薬の吸収が促進され、さらに本発明の効果が向上することが期待される。
【0091】
(実験例6)
高ショ糖食ハムスターにおける有効性
高ショ糖食飼育ハムスターを用いてEPA−Eおよび/またはトコフェロールニコチン酸エステルの血漿脂質に対する薬理作用を確認した。
6週齢の雄性シリアン(Syrian)ハムスター(日本エスエルシー株式会社)を12時間明暗周期、23℃で飼育し、魚粉抜きF−1飼料(船橋農場)を2週間自由摂取させた後、高ショ糖食(D11511、リサーチダイエット社(Research Diet Inc.))を2週間自由摂取させた。対照群、EPA−E300群、EPA−E1000群、トコフェロールニコチン酸エステル1000群(以下、TN1000群と記す)、低用量併用群および高用量併用群の6群(各群6匹)を設定した。
高ショ糖食飼育期間中、EPA−E300群にはEPA−E(持田製薬)を300mg/kg、EPA−E1000群にはEPA−Eを1000mg/kg、TN1000群にはトコフェロールニコチン酸エステル(和光純薬工業株式会社)を1000mg/kgおよび低用量併用群にはEPA−E300mg/kgおよびトコフェロールニコチン酸エステル1000mg/kgおよび高用量併用群にはEPA−E1000mg/kgおよびトコフェロールニコチン酸エステル1000mg/kgを5%アラビアゴム水溶液に懸濁して1日1回経口投与した。対照群には5%アラビアゴム水溶液を1日1回経口投与した。
投与開始前日および14日目に採血し、遠心分離にて血漿を分離した。生化学分析装置(A0400、オリンパス株式会社)および市販の測定試薬(和光純薬工業株式会社)を用いて、血漿中のTG、総ChoおよびHDLChoの濃度を各々測定した。また、非HDLCho濃度(総Cho−HDLCho)を算出した。投与開始前日の血漿中各脂質濃度は全群間で統計学的に有意な差はなかった。
薬剤投与14日目における各群血漿中のTG、総Choおよび非HDLCho濃度の対照群からの増減率を次の式で算出し、表1に示した。増減率(%)=(各群の脂質濃度−対照群の脂質濃度)×100/対照群の脂質濃度。また、併用群においては、EPA−E単独投与群およびトコフェロールニコチン酸エステル単独投与群の増減率の和算値を併用群の増減率の理論値とし、表1に示した。測定値の増減率が負でかつ理論値より低値を示した場合を、併用による脂質低下の相乗効果があると判断した。
【0092】
【表1】
【0093】
EPA−E投与による脂質低下作用は認められなかった。TN1000群投与では、TGおよび非HDLCho低下作用が認められた。併用群では、全ての血漿脂質が減少しており、かつ併用の理論値より測定値が低値を示した。
高ショ糖食飼育ハムスターにおいて、EPA−E単独投与では血漿脂質低下効果を得るには不十分な用量であったにもかかわらず、併用群ではTN1000群で得られた血漿脂質低下作用よりも顕著に大きい作用が得られ、1日1回投与で併用による相乗効果が認められた。よって本発明の改善または治療薬は、脂質異常症およびそれに伴う末梢血行障害の改善または治療等に対して相乗的に効果を示すこと、特に併用することによりEPA-Eおよび/またはトコフェロールニコチン酸エステルの用量を低くすることができ、また1日1回投与で相乗的に効果を示すことが期待され有用である。
【0094】
(実験例7)
ビーグル犬における薬物動態
EPA−Eおよびトコフェロールニコチン酸エステルを雄性ビーグル犬(約18ヶ月齢、北山ラベス)各群4例に絶食条件下で経口投与し、EPAおよびトコフェロールニコチン酸エステルの血中濃度の推移を評価した。なお、各被験動物は投与の18時間以上前より絶食とし、各動物にはEPA−Eとして600mgおよびトコフェロールニコチン酸エステルとして200mgとなる量の組成物を投与した。乳剤投与群には製剤例8に準じて作製した乳剤を、対照群にはEPA−E1%およびトコフェロールニコチン酸エステル0.33%を5%アラビアゴム水に懸濁した組成物を投与した。投与前、投与後1、2、3、4、8および24時間に採血を行い、血漿を分取して処理を行った後、血漿中のEPA濃度およびトコフェロールニコチン酸エステル濃度を各々LC/MS/MSおよびLC/MSにより測定した。
各血中濃度より血中濃度最大値(Cmax)、0時間から2時間までの血中濃度曲線下面積(AUC0−2)および0時間から24時間までの血中濃度曲線下面積(AUC0−24)を算出した。なお、各パラメーターの算出の際には各血中濃度より投与前の血中濃度を減じた補正を行っている。
【0095】
乳剤投与群ではEPAおよびトコフェロールニコチン酸エステルともに、吸収速度のパラメーターであるCmaxおよびAUC0−2、吸収量のパラメーターであるAUC0−24のいずれも対照群よりも高くなった。EPAに関して、乳剤投与群の投与直後の血中濃度上昇のパラメーターとなるAUC0−2は対照群の約6倍、同様にAUC0−24は対照群の約2倍であった。一方、トコフェロールニコチン酸エステルに関して、乳剤投与群のAUC0−2は対照群の約17倍、同様にAUC0−24は対照群の約5倍であった。絶食下乳剤投与によるEPAおよびトコフェロールニコチン酸エステルの吸収性は、EPA−E原液あるいはトコフェロールニコチン酸エステル製剤であるユベラNを給餌下投与した場合とほぼ同等であった(薬理と治療、1980年、2:410−414参照)。さらに、絶食下乳剤投与によるトコフェロールニコチン酸エステルの最大血中濃度到達時間(Tmax)は、ユベラNを給餌下投与した場合に比べ半分未満であり、吸収速度が速かった。
すなわち、EPA−Eおよびトコフェロールニコチン酸エステルを乳剤で投与した場合、対照群に比べて経口投与後速やかに吸収され、かつ吸収量も多いことが確認された。従って、本発明のEPA−Eおよびトコフェロールニコチン酸エステル乳剤は、食前や就寝前などの空腹時に服用した場合でも血中EPA濃度およびトコフェロールニコチン酸エステル濃度が速やかに、かつより上昇し、その薬理作用を速やかに、かつより効果的に発揮することが期待され有用である。
【0096】
常法に従い、EPA−Eおよびニコチン酸誘導体の配合剤を製造する。
【0097】
(製剤例1)軟カプセル剤
【表2】
【0098】
上記表2の組成の濃グリセリン、ニコチン酸および精製水を加えて撹拌し、水酸化ナトリウムを用いてpHを7付近に調整する。この液にゼラチンおよびD−ソルビトールを添加し60℃に加温・攪拌して溶解させる。この溶解液を減圧脱泡した後、精製水で粘度を調整して軟カプセル剤皮用液を得る。この軟カプセル剤皮用液と、EPA−Eを用いて、1カプセルあたりEPA−Eとして300mg、ニコチン酸として100mg含有する軟カプセルを得る。
同様にして、ニコチン酸に換えてニセリトロール125mg、ニコモール50mgあるいはイノシトールヘキサニコチネート100mgを用いて、軟カプセルを得る。
【0099】
(製剤例2)軟カプセル剤
【表3】
【0100】
上記表3のBの組成の濃グリセリンに水を加え、さらに、ゼラチンおよびD−ソルビトールを添加し60℃に加温・攪拌して溶解させる。この溶解液を減圧脱泡した後、精製水で粘度を調整して軟カプセル剤皮用液を得る。上記Aの組成のEPA−Eおよびトコフェロールニコチン酸エステルを40℃に加温・混合して軟カプセル内容液を得る。これらの軟カプセル剤皮用液および軟カプセル内容液を用いて、1カプセルあたりEPA−Eとして300mg、トコフェロールニコチン酸エステルとして100mgを含有する軟カプセルを得る。
同様にして、上記Aの組成にさらにウルソデオキシコール酸5mgあるいはα−トコフェロール1mgを混合した軟カプセルを得る。
【0101】
(製剤例3)液剤
【表4】
【0102】
上記表4のBの組成の各成分に精製水を加えて溶解し、水酸化ナトリウムでpHを7付近に調整する。この液にAの各成分を加え、減圧下、高速で撹拌して得られる乳化液を、アルミラミネートフィルム製スティック包装に1.5gずつ分注し、包装内部を窒素置換して密封し、1包あたりEPA−Eとして300mg、トコフェロールニコチン酸エステルとして100mgを含有する液剤を得る。
同様にして、上記Aの組成にさらにウルソデオキシコール酸5mgを混合した液剤を得る。
【0103】
(製剤例4)ゼリー剤
【表5】
【0104】
上記表5のBの組成の各成分に精製水を加えて溶解し、水酸化ナトリウムでpHを7付近に調整する。この液に組成Aの各成分を加え、減圧下、高速で撹拌して乳化液を得る。この乳化液を85℃に加温し、組成Cの各成分を混合撹拌して均一分散した液を加え、均一に練合する。この調製液を、アルミラミネートフィルム製スティック包装に4.5gずつ分注し、包装内部を窒素置換して密封した後、冷却固化し、1包あたりEPA−Eとして900mg、ニコチン酸として250mgを含有するゼリー剤を得る。
同様にして、ニコチン酸に換えてトコフェロールニコチン酸エステル200mg、ニセリトロール400mg、ニコモール200mgあるいはイノシトールヘキサニコチネート400mgを用いて、ゼリー剤を得る。
【0105】
(製剤例5)分包配合剤
EPA−Eとして20mgあるいはトコフェロールニコチン酸エステル20mgを含有する、直径約4mmのゼラチン皮膜を有するシームレスソフトカプセルを製する。EPA−E含有シームレスソフトカプセル45カプセルとトコフェロールニコチン酸エステル15カプセルを、アルミラミネートフィルム製スティック包装に入れ、包装内部を窒素置換して密封し、1包あたりEPA−Eとして900mg、トコフェロールニコチン酸エステルとして300mgを含有する分包配合剤を得る。
Niaspan(登録商標)500mg錠(1錠中にニコチン酸として500mg含有)1錠とEPA−E含有シームレスソフトカプセル90カプセルを、アルミラミネートフィルム製スティック包装に入れ、包装内部を窒素置換して密封し、1包あたりEPA−Eとして1800mg、ニコチン酸として500mgを含有する分包配合剤を得る。
【0106】
(製剤例6)乳剤
EPA−E9g、トコフェロールニコチン酸エステル1gにリン脂質3.6g、オレイン酸ナトリウム0.15gおよびホスファチジン酸0.15gを加えて40ないし75℃で加熱溶解させる。これに精製水200mlを加え、次いでグリセリン7,5gを加え、20ないし40℃の精製水で全量を300mlとし、ホモミキサーを用いて予備乳化する。これをマントンゴーリン型ホモジナイザーを用いて、1段目120kg/cm2、合計圧500kg/cm2の加圧下で10回通過させて乳化する。これにより、平均粒子径0.2μm以下の保存安定性に優れる乳化液を得る。この乳化液を30mlずつアンプルに分注し、1アンプルあたりEPA−Eとして900mg、トコフェロールニコチン酸エステルとして100mgを含有する乳剤を得る。
【0107】
(製剤例7)乳剤
ω3脂肪酸(Lovaza(登録商標)(K85EE):ω3脂肪酸約90%、EPA−E+DHA−E約84%含有、EPA−E:DHA−E=約1.2:1)100g、トコフェロールニコチン酸エステル5g、濃グリセリン25g、卵黄リン脂質12gを秤量し、注射用蒸留水を加えて1Lとし、ホモミキサーで分散させる。これをマントンゴーリン型ホモジナイザーを用いて、1段目100kg/cm2、2段目50kg/cm2の加圧下で通過させて乳化する。これにより、平均粒子径1μm以下の保存安定性に優れる乳化液を得る。この乳化液を40mlずつガラスボトルに分注し、1ボトルあたりEPA−E+DHA−Eとして約3.36g、トコフェロールニコチン酸エステルとして200mgを含有する乳剤を得る。
【0108】
(製剤例8)乳剤
大豆レシチン2.4gに濃グリセリン80.0gと精製水80.0gを加えて混合し、これにトコフェロールニコチン酸エステル5.3gをEPA−E16.0gに溶解させた溶液を少量ずつ攪拌しながら加えた(調製液A)。別に、精製水1233.1gにエリソルビン酸ナトリウム20.8g、トレハロース160.0g、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール2.4gを溶解した(調製液B)。次に、調製液Aに調製液Bを少しずつ攪拌しながら加えた。これを高速攪拌器(泡レスミキサー、美粒製)を用い15000rpmにて乳化し乳化物を得た。次に、この乳化物を高圧乳化装置(DeBee2000、BEE インターナショナル製)を用い20000PSIにて高圧乳化し乳化組成物を得た。調製した乳化組成物は容器内を窒素置換して、評価を実施するまで密封して室温にて保管した。表6に乳化組成物の処方(質量%)を示す。
【0109】
【表6】
【0110】
粒度分布測定装置(Nanotorac、日機装製)により、分散媒として水を使用し、乳化組成物中の平均乳化滴径(体積平均径)を測定した。調製直後の平均乳化滴径は0.20μmであった。表7に乳化組成物中の平均乳化滴径の経時変化を示す。冷蔵庫(2−10℃)、25℃および40℃4週間保存後も平均乳化滴径の変化は認められず、保存安定性に優れていた。
【0111】
【表7】
【0112】
この乳化組成物を100mlずつガラスボトルに分注し、1ボトルあたりEPA−Eとして1000mg、トコフェロールニコチン酸エステルとして330mgを含有する乳剤を得た。
【0113】
(製剤例9)乳剤
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油4.8g、エリソルビン酸ナトリウム20.8g、濃グリセリン80.0g、トレハロース160.0g、精製水1313.1gを量り取り、溶解する。これに、トコフェロールニコチン酸エステル5.3gを溶解したLovaza(登録商標)(K85EE)16.0gを加える。以下、製剤例8に記載の方法と同様にして乳化して、平均粒子径0.3μm以下の保存安定性に優れる乳化液を得る。この乳化液を50mlずつガラスボトルに分注し、1ボトルあたりEPA−E+DHA−Eとして約420mg、トコフェロールニコチン酸エステルとして165mgを含有する乳剤を得る。表8に乳化組成物の処方(質量%)を示す。
【0114】
【表8】
【0115】
(製剤例10)
ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ SE PHARMA J−1816、三菱化学フーズ)3.84g、ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープ SE PHARMA J−1805、三菱化学フーズ)0.96g、エリソルビン酸ナトリウム20.8g、濃グリセリン80.0g、トレハロース160.0g、精製水1313.1gを量り取り、70℃に加温して溶解する。これに、トコフェロールニコチン酸エステル5.3gをEPA−E16.0gに溶解させた溶液を少量ずつ攪拌しながら加える。以下、製剤例8に記載の方法と同様に乳化して、平均粒子径0.3μm以下の保存安定性に優れる乳化組成物を得る。調製した組成物は容器内を窒素置換して、評価を実施するまで密封して室温にて保管する。表9に乳化組成物の処方(質量%)を示す。この乳化組成物を60mlずつアンプルに分注し、1アンプルあたりEPA−Eとして600mg、トコフェロールニコチン酸エステルとして約200mgを含有する乳剤を得る。
【0116】
【表9】