(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876915
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】高強度単結晶超合金
(51)【国際特許分類】
C22C 19/05 20060101AFI20160218BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20160218BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20160218BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20160218BHJP
C22F 1/10 20060101ALN20160218BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20160218BHJP
【FI】
C22C19/05 C
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F01D5/28
!C22F1/10 H
!C22F1/00 602
!C22F1/00 607
!C22F1/00 611
!C22F1/00 630A
!C22F1/00 630G
!C22F1/00 630K
!C22F1/00 640A
!C22F1/00 640B
!C22F1/00 650A
!C22F1/00 651B
!C22F1/00 682
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 691C
!C22F1/00 692A
【請求項の数】9
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2014-213098(P2014-213098)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-214744(P2015-214744A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2014年10月31日
(31)【優先権主張番号】14/272,627
(32)【優先日】2014年5月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510318712
【氏名又は名称】キャノン−マスキーゴン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ハリス
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリーン ビー.ウォール
【審査官】
蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−310839(JP,A)
【文献】
特開2013−108166(JP,A)
【文献】
特開2013−119668(JP,A)
【文献】
特開2004−131844(JP,A)
【文献】
米国特許第5366695(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/00 〜 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶鋳造用のニッケル基超合金であって、
5.60重量%〜5.80重量%のアルミニウム、
9.4重量%〜9.8重量%のコバルト、
3.2重量%〜3.9重量%のクロム、
7.8重量%〜8.5重量%のタンタル、
5.3重量%〜5.7重量%のタングステン、
0.50重量%〜0.70重量%のモリブデン、
4.3重量%〜4.9重量%のレニウム、
0.75重量%〜0.90重量%のチタン、
0.08重量%〜0.15重量%のハフニウム
を含み、
アルミニウム、コバルト、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン、レニウム、チタン、ハフニウム及びニッケル以外の元素が1.1重量%未満に制限され、
残部がニッケルである、ニッケル基超合金。
【請求項2】
タンタル、モリブデン、タングステン及びレニウムの総量が、18.2重量%〜19.5重量%である、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項3】
アルミニウム、チタン及びタンタルの総量が、14.25重量%〜15.0重量%である、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項4】
重量で、以下の元素の最大量が、
100ppmの炭素、0.04%のケイ素、0.01%のマンガン、3ppmの硫黄、30ppmのリン、30ppmのホウ素、0.15%のニオブ、150ppmのジルコニウム、0.01%の銅、0.15%の鉄、0.10%のバナジウム、0.15%のルテニウム、0.25%の白金、0.20%のパラジウム、0.02%のマグネシウム、5ppmの窒素、5ppmの酸素、2ppmの銀、0.2ppmのビスマス、10ppmのガリウム、25ppmのカルシウム、1ppmの鉛、0.5ppmのセレン、0.2ppmのテルル、0.2ppmのタリウム、10ppmのスズ、2ppmのアンチモン、2ppmのヒ素、5ppmの亜鉛、2ppmの水銀、0.2ppmのカドミウム、0.2ppmのインジウム、2ppmのゲルマニウム、2ppmの金、20ppmのナトリウム、10ppmのカリウム、10ppmのバリウム、2ppmのトリウム、及び2ppmのウラン
に制限される、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたニッケル基超合金。
【請求項5】
0.02重量%〜0.05重量%の炭素及び50重量ppm〜100重量ppmのホウ素を含有する、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項6】
単結晶鋳造用のニッケル基超合金であって、
5.60重量%〜5.80重量%のアルミニウム、
9.4重量%〜9.8重量%のコバルト、
3.2重量%〜3.9重量%のクロム、
7.8重量%〜8.5重量%のタンタル、
5.3重量%〜5.7重量%のタングステン、
0.50重量%〜0.70重量%のモリブデン、
4.3重量%〜4.9重量%のレニウム、
0.75重量%〜0.90重量%のチタン、
0.08重量%〜0.15重量%のハフニウム、
アルミニウム、コバルト、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン、レニウム、チタン、ハフニウム及びニッケル以外の元素が1.1重量%未満に制限され、
残部がニッケルであり、
タンタル、モリブデン、タングステン及びレニウムの総量が、18.2重量%〜19.5重量%であり、
アルミニウム、チタン及びタンタルの総量が、14.25重量%〜15.0重量%である、
ニッケル基超合金。
【請求項7】
重量で、以下の元素の最大量が、
100ppmの炭素、0.04%のケイ素、0.01%のマンガン、3ppmの硫黄、30ppmのリン、30ppmのホウ素、0.15%のニオブ、150ppmのジルコニウム、0.01%の銅、0.15%の鉄、0.10%のバナジウム、0.15%のルテニウム、0.25%の白金、0.20%のパラジウム、0.02%のマグネシウム、5ppmの窒素、5ppmの酸素、2ppmの銀、0.2ppmのビスマス、10ppmのガリウム、25ppmのカルシウム、1ppmの鉛、0.5ppmのセレン、0.2ppmのテルル、0.2ppmのタリウム、10ppmのスズ、2ppmのアンチモン、2ppmのヒ素、5ppmの亜鉛、2ppmの水銀、0.2ppmのカドミウム、0.2ppmのインジウム、2ppmのゲルマニウム、2ppmの金、20ppmのナトリウム、10ppmのカリウム、10ppmのバリウム、2ppmのトリウム、及び2ppmのウラン
に制限される、請求項6に記載されたニッケル基超合金。
【請求項8】
0.02重量%〜0.05重量%の炭素及び50重量ppm〜100重量ppmのホウ素を含有する、請求項6に記載されたニッケル基超合金。
【請求項9】
単結晶鋳造用のニッケル基超合金であって、
最大100重量ppmの炭素、
最大0.04重量%のケイ素、
最大0.01重量%のマンガン、
最大3重量ppmの硫黄、
最大30重量ppmのリン、
最大30重量ppmのホウ素、
最大0.15重量%のニオブ、
最大150重量ppmのジルコニウム、
最大0.01重量%の銅、
最大0.15重量%の鉄、
最大0.10重量%のバナジウム、
最大0.15重量%のルテニウム、
最大0.25重量%の白金、
最大0.20重量%のパラジウム、
最大0.02重量%のマグネシウム、
最大5重量ppmの窒素、
最大5重量ppmの酸素、
最大2重量ppmの銀、
最大0.2重量ppmのビスマス、
最大10重量ppmのガリウム、
最大25重量ppmのカルシウム、
最大1重量ppmの鉛、
最大0.5重量ppmのセレン、
最大0.2重量ppmのテルル、
最大0.2重量ppmのタリウム、
最大10重量ppmのスズ、
最大2重量ppmのアンチモン、
最大2重量ppmのヒ素、
最大5重量ppmの亜鉛、
最大2重量ppmの水銀、
最大0.2重量ppmのカドミウム、
最大0.2重量ppmのインジウム、
最大2重量ppmのゲルマニウム、
最大2重量ppmの金、
最大20重量ppmのナトリウム、
最大10重量ppmのカリウム、
最大10重量ppmのバリウム、
最大2重量ppmのトリウム、
最大2重量ppmのウラン、
5.60重量%〜5.80重量%のアルミニウム、
9.4重量%〜9.8重量%のコバルト、
3.2重量%〜3.9重量%のクロム、
7.8重量%〜8.5重量%のタンタル、
5.3重量%〜5.7重量%のタングステン、
0.50重量%〜0.70重量%のモリブデン、
4.3重量%〜4.9重量%のレニウム、
0.75重量%〜0.90重量%のチタン、
0.08重量%〜0.15重量%のハフニウムを含み、
残部がニッケルであり、
タンタル、モリブデン、タングステン及びレニウムの総量が、18.2重量%〜19.5重量%であり、
アルミニウム、チタン及びタンタルの総量が、14.25重量%〜15.0重量%であるニッケル基超合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優れた諸特性がバランス良く組合せられた、単結晶鋳造物用のニッケル基超合金を開示する。
【背景技術】
【0002】
より低い燃料燃焼と、それに相応する二酸化炭素の排ガスの低下を実現する高度なガスタービンが、絶えず必要とされている。したがって、より高いガス温度及び金属温度で操作できる複雑な冷却されたタービンのブレード及びベーンに鋳造できる超合金に対する強い要求が今なお存在する。これらの鋳造物は、高強度、優れた高温クリープ破断特性、及び良好な相安定性の組合せを示すことが望ましい。
【0003】
単結晶ニッケル基超合金は、通常は、高温クリープ破断特性を改善するために、モリブデン、タングステン、レニウム及びタンタルなどの難揮発性元素を多量に含有する。しかし、これらの元素含有が高いと、高温での応力に曝されている間にトポロジー最密充填(TCP:topologically close−packed)相が形成される場合があり、そのことが早期亀裂開始部位の発現と伴い、長期的なクリープ破断特性の劣化に至ることがある。したがって、難揮発性元素とクロム含有量の適切な選択には、強度特性と長期的な相安定性との微妙なバランスを保つことが必要である。TCP相は、レニウム及びタングステンが豊富であり、クロムをいくらか含む。TCP相が過度に形成されると、材料が脱合金化され、そのためクリープ破断強度が低下する。
【0004】
飛行機エンジンで使用する単結晶鋳造物用の最も強度が大きいニッケル基超合金は、約5重量%〜約7重量%のレニウムを含有している。これらの合金には、米国特許第5,366,645号及び米国特許第5,540,790号に記載されている、Cannon−Muskegon Corporationが開発し同社から利用可能なCMSX−10K(R:登録商標)及びCMSX−10N(R:登録商標)合金、並びにGeneral Electric Companyが開発したRene N−6合金が含まれる。
【0005】
しかし、これらの特製の高強度ニッケル基超合金は、特定の用途ではいくつかの望ましくない特性を示す。これらの合金は、レニウム含有量が多いので、コーティングに隣接する基体合金に観測される二次反応帯(SRZ:secondary reaction zone)の不安定性として知られている、ある種の相不安定性を生じる傾向があり、それによってコーティング適合性及び薄肉機械特性に問題が生じる。さらに、CMSX−10K(R)及びCMSX−10N(R)合金は、高レニウム含有量に対応してクロム含有量が非常に少なく(それぞれ1.5重量%及び2.2重量%)、その結果、低温での耐内部酸化性及び高温での耐食性が低下する。また、これらの合金は、高いγ’ソルバス温度を有しており、非常に高温での溶体化熱処理を要し、それによって表面溶融問題が引き起こされるおそれがある。またこれらの合金は、相対的に密度が高い傾向があり、このことは、飛行機エンジン、特に回転タービンブレードにとって、重量及び慣性上の大きな不利益となる。また、非常に高強度で特製のこれらの合金は、過去20年間でおよそ4倍も高騰したレニウムが高価格であるために高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,366,695号明細書
【特許文献2】米国特許第5,540,790号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
開示される合金は、約5重量%〜約7重量%のレニウムを含有する非常に高強度のニッケル基超合金と類似のクリープ特性及び疲労特性を有するが、実質的にそれよりもレニウム含有量が少なく、それによってSRZ相不安定性の問題を排除し、低温での耐内部酸化性及び高温での耐食性を改善し、γ’ソルバス温度を低下させ、密度を低減させ、価格を抑え、これらの利点の組合せをもたらすと同時に、3重量%のレニウムを含有するCMSX−4(R:登録商標)合金と比較して著しく改善された高温クリープ破断特性ももたらす単結晶鋳造物を提供するように設計され、開発された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
改善された特性を示す開示の合金は、5.60重量%〜5.80重量%のアルミニウム、9.4重量%〜9.8重量%のコバルト、3.2重量%〜3.9重量%のクロム、7.8重量%〜8.5重量%のタンタル、5.3重量%〜5.7重量%のタングステン、0.50重量%〜0.70重量%のモリブデン、4.3重量%〜4.9重量%のレニウム、0.75重量%〜0.90重量%のチタン、0.08重量%〜0.15重量%のハフニウム、並びに
アルミニウム、コバルト、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン、レニウム、チタン
、ハフニウム及びニッケル以外の
トランプ元素が1.1重量%未満
に制限され、残部がニッケルである。
【0009】
本開示の特定の態様では、ニッケル基超合金は、タンタル、モリブデン、タングステン及びレニウムを総量で18.2重量%〜19.5重量%含有する。
【0010】
本開示の特定の態様では、ニッケル基超合金は、アルミニウム、チタン及びタンタルを総量で14.25重量%〜15.0重量%含有する。
【0011】
本開示の特定の態様のニッケル基超合金では、以下の元素の最大量(重量基準)が以下の通り
に制限される。
100ppmの炭素、0.04%のケイ素、0.01%のマンガン、3ppmの硫黄、30ppmのリン、30ppmのホウ素、0.15%のニオブ、150ppmのジルコニウム、0.01%の銅、0.15%の鉄、0.10%のバナジウム、0.15%のルテニウム、0.25%の白金、0.20%のパラジウム、0.02%のマグネシウム、5ppmの窒素、5ppmの酸素、2ppmの銀、0.2ppmのビスマス、10ppmのガリウム、25ppmのカルシウム、1ppmの鉛、0.5ppmのセレン、0.2ppmのテルル、0.2ppmのタリウム、10ppmのスズ、2ppmのアンチモン、2ppmのヒ素、5ppmの亜鉛、2ppmの水銀、0.2ppmのカドミウム、0.2ppmのインジウム、2ppmのゲルマニウム、2ppmの金、20ppmのナトリウム、10ppmのカリウム、10ppmのバリウム、2ppmのトリウム、及び2ppmのウラン。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書に開示される合金の温度の関数としての耐力及び極限引張強さのグラフ。
【
図2】本明細書に開示の合金の、伸び及び断面収縮率のグラフである。
【
図3】本開示の合金を、高温、高応力ガスタービン用途で広く使用されている市販の合金と比較する、Larson−Millerプロット。
【
図4】本開示の合金を、高温、高応力ガスタービン用途で広く使用されている市販の合金と比較する、Larson−Millerプロット。
【
図5】完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD A)単結晶試験棒(#52JFT)の光学顕微鏡写真。
【
図6】完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD A)単結晶試験棒(#52JFT)の光学顕微鏡写真。
【
図7】完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD A)単結晶試験棒(#52JFT)の走査型電子顕微鏡写真。
【
図8】完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD A)単結晶試験棒(#52JFT)の走査型電子顕微鏡写真。
【
図9】溶体化させ、一次時効したCMSX−4(R))PLUS(MOD B)単結晶試験棒(#M975)の光学顕微鏡写真。
【
図10】溶体化させ、一次時効したCMSX−4(R)PLUS(MOD B)単結晶試験棒(#M975)の光学顕微鏡写真。
【
図11】溶体化させ、一次時効したCMSX−4(R)PLUS(MOD B)単結晶試験棒(#M975)の走査型電子顕微鏡写真。
【
図12】溶体化させ、一次時効したCMSX−4(R)PLUS(MOD B)単結晶試験棒(#M975)の走査型電子顕微鏡写真。
【
図13】完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒(#B981)の光学顕微鏡写真。
【
図14】完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒(#B981)の光学顕微鏡写真。
【
図15】完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒(#N978)の走査型電子顕微鏡写真。
【
図16】完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒(#N978)の走査型電子顕微鏡写真。
【
図17】完全に熱処理し、応力−破断試験したCMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒(#N978)の光学顕微鏡写真。
【
図18】完全に熱処理し、応力−破断試験したCMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒(#N978)の光学顕微鏡写真。
【
図19】本開示のCMSX−4(R)plus MOD C合金の1.0%クリープにおける応力を、市販のCMSX−4(R)合金と比較する、Larson−Millerプロット。
【
図20】2種類の市販の合金と、本開示のCMSX−4(R)plus MOD Cと指定した合金の、応力対1.0%クリープまでの時間の対数プロット。
【
図21】本開示のCMSX−4(R)Plus MOD C合金の破断応力を、2種類の市販の合金(CMSX−4(R)合金及び「Rene N−5」合金)と比較する、Larson−Millerプロット。
【
図22】単結晶鋳造用に作製された、約8%のタンタルを含有する様々なニッケル基超合金の、2.0%クリープまでの時間対レニウム重量パーセントのグラフ(試験片は248MPa(36.0ksi)及び982℃(1800°F)で試験した)。
【
図23】単結晶鋳造用に作製された、約12%のタンタルを含有する様々なニッケル基超合金の、2.0%クリープまでの時間対レニウム重量パーセントのグラフ(試験片は379MPa(55ksi)及び899℃(1650°F)で試験した)。
【
図24】単結晶鋳造用に作製された、約8%のタンタルを含有する様々なニッケル基超合金の、応力破断までの時間対レニウム重量パーセントのグラフ(試験片は248MPa(36.0ksi)及び982℃(1800°F)で試験した)。
【
図25】4種類の市販の合金及び本開示の合金の、応力対破断までの時間を示す対数プロット。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の単結晶鋳造用の高強度ニッケル基超合金を、「CMSX−4(R)PLUS」合金と命名する。
【0014】
この合金の化学組成は、CMSX(R:登録商標)−8合金の化学組成から開発したものである(CM Tech Papers TMS Seven Spring Superalloy Symposium、2012年9月及びASME Turbo Expo、デュッセルドルフ、2014年6月)。CMSX(R)−8合金は、優れた単結晶への鋳造性及び耐高温酸化性を示す。1.5重量%のレニウムを含有するこの合金は、CMSX−4(R)合金に近いクリープ破断特性を有するが、いくらかそれよりも低い。
【0015】
レニウム含有量は、CMSX−4(R)よりもかなり改善された高温クリープ破断特性と、高温高応力に曝される間に促進される、タービン部品のコーティング下の望ましくないSRZ相の発生及び過度のTCP相の形成との間に、望ましいバランスをもたらす目的で、約4%を選択した。
【0016】
Cr含有量は、低温酸化性及び高温耐食性(硫化)を促進するために約3%〜約4%を選択した。
【0017】
Mo含有量は、酸化問題を回避するために、非常に少なく0.60%に抑えた。これには、γ/γ’ミスマッチ及び界面化学的性質を確保し、それにより溶体化/均質化され高温で一次時効熱処理されたミクロ組織にとって適切なおよそ0.5μmの整列した立方晶γ’を確保するために、合金に0.75〜0.90%の範囲のTiを使用することが必要であった。これによって、クリープ破断特性が最大化される。Tiは、合金密度も低減させる。さらにTi含有量は、原料構成の一部として潜在的な変態可能性を改善する。
【0018】
Ta含有量は、「フレックル(freckle)鎖」という粒子欠損の傾向を最小限に抑え、過度に高いW含有量の必要性を回避することによって(5.0〜5.5%の範囲に維持した)、単結晶の鋳造性/翼部品の鋳造収率を最大化するために、8%範囲のCMSX(R)−8合金に維持した。Wが多いと、「フレックル」の形成を助長し、耐酸化性を低減させる。またTaは、強力な大きな原子であるため固溶強化元素であることに加えて、活性なγ’形成元素(簡素化したγ’組成はNi
3(Al、Ti、Ta))である。
【0019】
Hfは、これらの高合金化されたCMSX−4(R)Plusの化学組成に対して許容される溶体化熱処理「窓」を確保するために、約0.10%に維持した。Hfは、酸化条件下でのコーティング性能を改善するが、γ’のソルバス温度の低下よりも、初期融点をより低下させる。この作用は、Hf量が大きくなるほど増大する。
【0020】
213kg(470ポンド)の100%未使用(100V)VIM溶鋼を、この合金開発プログラムで最高技術水準の溶解実務、及び有害な微量元素に対して以下の厳格な制御によってすべて製造された非常に高純度な材料を使用して、Cannon−Muskegon Corporationで製造した。
【0022】
CMSX−4(R)PLUS(MOD A)
213kg(470ポンド)のVIM溶鋼(100V)[5V0603]を、2013年2月にCMのV−5炉で製造した。設計目標に非常に近かった溶鋼組成を以下に示す。
【0024】
単結晶試験棒((001)の10°以内)を、確立されたCMSX−4(R)鋳造パラメータを使用して、2つの単結晶製造鋳造所(Rolls−Royce Corporation及びSMP(PCC Airfoils))において、高収率及び優れた化学組成保持率で首尾よく鋳造した。
【0026】
選択した溶体化−均質化ピーク温度は、2435°F(1335℃)で6時間であり、一次時効は、2085°F(1140℃)で6時間行った。
【0027】
単結晶試験片の機械加工(低応力研削)及びクリープ応力破断試験のすべてを、Joliet Metallurgical Labs、イリノイ州ジョリエットによって行った。
【0028】
Mod Aを用いて達成された、1922℃(1050℃)までのクリープ破断特性はCMSX−4(R)と比較して改善されたが、目標特性をはるかに下回っていた(表1、表4、表5及び表6)。
【0029】
CMSX−4(R)PLUS(MOD B)
より高いクリープ破断特性を目標にするために、213kg(470ポンド)溶鋼(100V)[5V0636]を、2013年7月にCMのV−5炉で製造した。
設計目標に非常に近かった溶鋼組成を以下に示す。
【0031】
ここで、Mod Bを用いて達成されたクリープ破断特性は一層興味深く、1922°F(1050℃)までCMSX−4(R)をはるかに上回っている(表2、表4、表5及び表6)。
【0032】
完全な熱処理条件は、先のMod Aの研究を「微調節」した。溶体化/均質化ピーク温度は2435°F(1335℃)で6時間とし、一次時効は2085°F(1140℃)で6時間にした。
【0033】
Mod B組成物の密度を英国のNPLで求めると、CMSX−10K(R)(6.3%Re)9.05kg/dm
3及びPWA1484(3%Re)8.95kg/dm
3と比較して、8.89kg/dm
3であった。
【0034】
CMSX−4(R)PLUS(MOD C)
この新しい合金系の化学組成の開発/性能概念の潜在的可能性を完全に調査するために、さらに213kg(470ポンド)溶鋼[100V][5V0660]を、2013年10月にCannon−Muskegon CorporationのV−5炉で製造した。再び、設計目標に非常に近かった溶鋼の化学組成を以下に示す。
【0036】
Mod Cの化学組成のクリープ破断特性(表3、表4、表5及び表6)は、非常に顕著であり、目標化学組成の変化が相対的に小さかった割には驚くべきものである。標準であるCMSX−4(R)を上回る、Mod Cの応力破断能の金属温度は、1800°F(982℃)で40°F(22℃)であり、1.0%クリープ能については50°F(28℃)である(密度補正あり)。15.0ksi/2050°F(103MPa/1121℃)の非常に高温の試験条件では、Mod Cは、この試験条件で非常に優れた応力破断寿命を有するCMSX−4(R)と同等であるが、CMSX−4(R)と比較して破断延性が改善されている(17〜28%の伸び(4D)及び38〜39%のRA)。
【0037】
意外なことに、Mod Cの密度補正したクリープ破断特性は、36.0ksi/1800°F(248MPa/982℃)ではCMSX−10K(R)(6.3%Re)のクリープ破断特性と近く、15.0ksi/2050°F(103MPa/1121℃)ではCMSX−10K(R)よりも優れている(表7)。
【0038】
熱処理として、2435°F(1335℃)で6時間のピーク溶体化/均質化の段階、並びに2つの異なる一次時効(a)2100°F(1149℃)で6時間及び(b)2125°F(1163℃)で6時間を使用した。Mod A、B及びCのすべての試験棒に、1600°Fで20時間の最終的な時効処理を施した。2125°F(1163℃)の一次時効(Mod CのRe含有量はより高く、4.8%であることに留意されたい)では、2100°F(1149℃)の一次時効と比較して、15.0ksi/2050°F(103MPa/1121℃)の試験条件でより高い応力破断特性が得られることが表3から明らかである。両方の一次時効条件に関して、36.0ksi/1800°F(248MPa/982℃)における特性は同じである。
【0039】
単結晶試験棒鋳型には、Mod B合金及びMod C合金については、DSC液相線データに基づいてCMSX−4(R)条件を+30°F(17℃)上回る温度で鋳込んだ。
【0040】
Mod A及びMod B単結晶試験棒を、以下の各初期の段階、2395°F(1313℃)/2時間+2405°F(1318℃)/2時間+2415°F(1324℃)/2時間+2425°F(1329℃)/2時間で予め均質化し/部分溶体化させ、その後、最終的なピークの段階では2435°F(1335°)/6時間ACを選択した。
【0041】
SMP SX鋳造所製のMod B単結晶棒には、この試験棒鋳物のより大きいデンドライトアーム間隔を考慮するために、2440°F(1338℃)/2時間ACの追加のピークの段階を施した。
【0042】
Mod C単結晶棒も前述の通り予め溶体化させたが、2425°F(1329℃)、6時間の段階を用い、その後2435°F(1335℃)/6時間ACの最終的なピークを施した。
【0043】
CMSX−4(R)PLUS MOD B及びMOD C
化学組成(WT%又はPPM)
【0045】
単結晶のベーン部分又は大型IGT翼部品のために、小傾角粒界(low angle boundary)(LAB)の強化のためには、炭素(C)0.02〜0.05%及びホウ素(B)50〜100ppmを必要とする。
【0058】
英国のNational Physical Laboratoriesによって求めた、CMSX−4(R)Plus Mod B(5V0636)の室温における密度は、8.887kg/dm
3である。他のSX合金との比較を示した以下の表を参照されたい。
【0061】
開示のMOD B合金から調製した単結晶鋳造試験片の様々な温度における0.2%耐力(YS)、極限引張強さ(UTS)、極限引張強さにおける伸び(伸び%)、及び極限引張強さにおける断面収縮率(RA%)を表8に示し、
図1及び
図2に図示する。これらのデータは、強度及び延性に関して高温で優れた引張特性を示している。
【0062】
図3及び
図4は、Larson−Millerの応力−破断図であり、新しく開示した合金(CMSX−4(R)PLUS[MOD B]合金及びCMSX−4(R)PLUS[MOD C]合金)を、単結晶鋳造用の周知の市販のニッケル基超合金(CMSX−4(R)合金及びRENE N−5合金)と比較している。示された結果は、開示の合金の応力破断寿命が、高温、高応力が適用されるタービン部品を鋳造するのに好ましい材料として認識されており現在使用されている公知の合金と比較して、実質的に改善されたことを示している。
【0063】
CMSX−4(R)PLUS(MOD A)単結晶試験棒の光学顕微鏡写真(
図5及び
図6)は、γ/γ’共晶相を示しておらず、完全に熱処理した(すなわち、溶体化させ、二重時効した)後も初期溶融を示していない。
【0064】
完全に熱処理した(溶体化させ、二重時効した)CMSX−4(R)PLUS(MOD A)単結晶試験棒の走査型電子顕微鏡写真(
図7及び
図8)は、約0.55マイクロメータの平均サイズを有する整列した立方晶γ’粒子を示し、適切なγ/γ’ミスマッチを示している。
【0065】
溶体化させ、一次時効したCMSX−4(R)PLUS(MOD B)単結晶試験棒の光学顕微鏡写真(
図9及び
図10)は、非常に少量の残留γ/γ’共晶相を示し、初期溶融を示していない。
【0066】
溶体化させ、一次時効したCMSX−4(R)PLUS(MOD B)単結晶試験棒の走査型電子顕微鏡写真(
図11及び
図12)は、約0.45の平均サイズを有する暗色の整列した立方晶γ’粒子を示し、適切なγ/γ’ミスマッチを示している。
【0067】
完全に熱処理した(溶体化させ、2125°F(1163℃)で6時間かけて一次時効した)CMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒の光学顕微鏡写真(
図13及び
図14)は、少量の残留γ/γ’共晶相(白色点)を示し、初期溶融を示していない。
【0068】
完全に熱処理したCMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒の走査型電子顕微鏡写真(
図15及び
図16)は、約0.45マイクロメータの平均粒径を有する暗色の整列した立方晶γ’粒子を示し、適切なγ/γ’ミスマッチを示している。
【0069】
完全に熱処理し(溶体化させ、2125°F(1163℃)で6時間かけて一次時効した)、15ksi(103MPa)及び2050°F(1121℃)で応力破断試験すると寿命が669.7時間であったCMSX−4(R)PLUS(MOD C)単結晶試験棒の光学顕微鏡写真(
図17及び
図18)は、最小のTCP線形暗色エッチング相を示し、良好な合金相安定性を示している。
【0070】
図19に示されている通り、本開示のCMSX−4(R)Plus MOD C合金では、市販のCMSX−4(R)合金と比較して、1.0%クリープで著しい改善が実現される。
【0071】
図20に示されている通り、1.0%クリープまでの時間は、市販の合金(CMSX−4(R)合金)よりも本開示の合金(CMSX−4(R)plus MOD C)の方が数百時間長く、別の市販の合金(CM247LC(R:登録商標)合金)よりも数千時間長い。
【0072】
図21に示されている通り、CMSX−4(R)Plus MOD C合金は、市販の合金(CMSX−4(R)合金及び「Rene N−5」合金)よりも実質的に高い破断応力を示す。
【0073】
図22に示されている通り、約8重量%のタンタル及び約4.3重量%〜4.9重量%のレニウムを含有する、単結晶鋳造用に作製されたニッケル基超合金では、約8重量%のタンタル及び約1.5重量%〜約3重量%のレニウムを含有する市販の合金と比較して、2.0%クリープまでの時間が相対的に急増している。
【0074】
図23に示されている通り、約12%のタンタルを含有する単結晶ニッケル基超合金では、レニウムの含有量が次第に増大するにつれて(最大約6%)、2.0%クリープまでの時間が相対的に漸増している。
【0075】
図24に示されている通り、約8重量%のタンタル及び約4.3重量%〜4.9重量%のレニウムを含有する、単結晶鋳造用に作製されたニッケル基超合金では、約8重量%のタンタル及び2重量%未満のレニウムを含有する市販の合金と比較して、破断までの時間が相対的に急増している。
【0076】
図25に示されている通り、本開示の合金(CMSX−4(R)plus MOD C)では、単結晶鋳造用に作製された市販のニッケル基超合金よりも、破断までの時間が数百時間から数千時間長い。